説明

円盤状摩擦部材

【課題】本発明の課題は、C/SiC複合材料からなる円盤状摩擦部材であって、従来のものよりも更に強度に優れた円盤状摩擦部材を提供することにある。
【解決手段】本発明は、C/SiC複合材料からなり、中心軸周りに締結部を備えるブレーキロータR1のロータ本体1(円盤状摩擦部材)であって、前記締結部は炭素繊維を円筒形状に巻回したブロック体13を埋め込んで形成したことを特徴とする。このロータ本体1は、例えばハット部に締結するための締結部の強度が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキロータ、クラッチディスク等に使用される円盤状摩擦部材に関し、特にC/SiC複合材料からなる円盤状摩擦部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、C/SiC複合材料(炭素/炭化ケイ素複合材料)で形成された円盤状摩擦部材を使用した自動車用のブレーキロータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この円盤状摩擦部材は、炭素繊維と有機バインダとを含む組成物を型内で成形してニヤネットシェイプの成形品を得、次いでこの成形品を焼成して炭素化したものに溶融Siを含浸させて、炭素を部分的にSiC化したものである。
この円盤状摩擦部材は、Siの溶融温度で炭素化物のSiC化が進行するのでその製造方法が容易であると共に、得られた円盤状摩擦部材は、C/C複合材料からなる円盤状摩擦部材よりも耐熱性及び耐摩耗性に一段と優れたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−522709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のC/SiC複合材料を円盤状摩擦部として使用したブレーキロータ(例えば、特許文献1参照)は、例えば円盤状摩擦部材を鋳造成形したブレーキロータと異なって、車輪のハブに円盤状摩擦部材を取り付けるためのハット部が別体となっている。そのため、C/SiC複合材料からなる円盤状摩擦部材には、その中心軸周りにハット部と締結するためのボルト挿入孔が設けられている。そして、従来のブレーキロータ(例えば、特許文献1参照)の円盤状摩擦部は、ブレーキパッドが摺接する制動時に、ボルト挿入孔が形成される締結部に多大な応力が集中する。したがって、制動時に多大な応力が締結部に集中した際に充分な強度を発揮する円盤状摩擦部が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、C/SiC複合材料からなる円盤状摩擦部材であって、従来のものよりも更に強度に優れた円盤状摩擦部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した本発明は、C/SiC複合材料からなり、中心軸周りに締結部を備える円盤状摩擦部材であって、前記締結部は炭素繊維を円筒形状に巻回したブロック体を埋め込んで形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、C/SiC複合材料からなる円盤状摩擦部材であって、従来のものよりも更に強度に優れた円盤状摩擦部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)は実施形態に係る円盤状摩擦部材を使用したブレーキロータの平面図、(b)は(a)のI−I断面図である。
【図2】図1(a)及び(b)に示すII方向からブロック体の近傍を見た様子を示す部分斜視図である。
【図3】(a)及び(b)は、制動時に、ロータ本体のブロック体に生起する熱応力を、シミュレーション試験を行って求めた結果を示す熱応力分布図である。
【図4】(a)及び(b)は、制動時に、ロータ本体のブロック体に生起するトルク応力を、シミュレーション試験を行って求めた結果を示すトルク応力分布図である。
【図5】(a)は他の実施形態に係る円盤状摩擦部材を使用したブレーキロータの平面図、(b)は(a)のV−V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の円盤状摩擦部材は、例えばブレーキロータやクラッチディスク等に使用される円盤状摩擦部材に適用することができるが、本実施形態では自動車用のブレーキロータに使用する円盤状摩擦部材について説明する。
【0010】
図1(a)及び(b)に示すように、ブレーキロータR1は、本発明の円盤状摩擦部材としてのロータ本体1と、ハット部2とを備えている。なお、図1(a)中、ハット部2は仮想線で示し、ロータ本体1と、ハット部2とを締結する締結具は、作図の便宜上省略している。また、図1(b)中、ハット部2及び締結具3(ボルト3a及びナット3b)は仮想線で示している。
【0011】
ロータ本体1は、平面視で略円形の中央孔12を有し、C/SiC複合材料で形成されている。
ロータ本体1には、中央孔12を囲む縁部に沿って円筒形状のブロック体13が等間隔に10箇所配置されている。このブロック体13は、後記するように、締結具3でハット部2と締結するための締結部を構成している。つまり、本実施形態でのロータ本体1は、その中心軸14周りに複数のブロック体13(締結部)を備えることとなる。
【0012】
ブロック体13は、炭素繊維を巻回したものであって、図2に示すように、ロータ本体1の厚さと同じ高さの円筒形状を呈している。本実施形態では、炭素繊維をテープ状に成形したテープ状繊維束16を巻回してブロック体13を形成しており、テープ状繊維束16の幅はロータ本体1の厚さと略同じに設定されている。
【0013】
このブロック体13は、図1(b)に示すように、炭素繊維の巻回軸17がロータ本体1の中心軸14に沿って配向するように配置されている。言い換えれば、巻回軸17がロータ本体1の盤面に対して垂直となるように、ブロック体13はロータ本体1に面一となるように埋め込まれて配置されている。
【0014】
このブロック体13は、炭素繊維の巻回軸17を中心とする貫通孔18(図1(a)参照)を有しており、貫通孔18はボルト3a(図1(b)参照)の挿入孔19を形成している。つまり、ボルト3aの挿入孔19が形成されたブロック体13は、ロータ本体1に埋め込まれることで特許請求の範囲にいう「締結部」を構成している。なお、本実施形態でのブロック体13は、後記するように、炭素繊維の巻回軸17(巻回中心)に貫通孔18を穿って形成することで円筒形状としたものである。
【0015】
ロータ本体1は、図1(a)に示すように、等間隔で隣接し合うブロック体13同士の間を部分的に切り欠いた切欠部11を有している。この切欠部11には、図1(a)及び(b)に示すように、冷却孔15の一端が臨んでいる。
【0016】
冷却孔15は、ロータ本体1の厚さ方向の略中程を切欠部11側からロータ本体1の外周面側に向かって延びると共に、外周面でその他端が開口している。本実施形態での冷却孔15の断面形状は、図1(b)に示すように、矩形を呈している。
【0017】
冷却孔15の延設方向は、図1(a)に示すように、ロータ本体1の遠心方向に対して所定の傾斜角θを成して傾斜している。このように冷却孔15が傾斜して形成されることによって、ブレーキロータR1が回転する際の冷却孔15内における空気の流通が促進されて、ロータ本体1に発生する摩擦熱は効率良く冷却されることとなる。
【0018】
ハット部2は、図1(b)に示すように、ロータ本体1の中央孔12を片側から覆うように配置されてロータ本体1と締結具3(ボルト3a及びナット3b)で締結される部材であって、ロータ本体1を車輪のハブ(図示省略)に取り付けるための部材である。
ハット部2は、図1(a)に示すように、平面視で略円形であり、図1(b)に示すように、側断面視でハット形状を呈している。
【0019】
このようなハット部2は、図1(b)に示すように、ロータ本体1に締結されるフランジ部21と、フランジ部21から立ち上がる円筒部22と、円筒部22に接続されてロータ本体1の中央孔12を覆うように配置されるハブ取付部23とを備えている。なお、フランジ部21には、ロータ本体1の挿入孔19に対応する位置にボルト挿通孔24が形成され、ハブ取付部23には、車輪のハブ(図示省略)側と締結するためのボルト挿通孔25が形成されている。
【0020】
次に、ロータ本体1の製造方法について説明する。
この製造方法では、ブロック体13の形状に対応するように、炭素繊維の巻回体を形成する。この巻回体を形成する炭素繊維は、前記したように、所定幅のテープ状に成形した炭素繊維(テープ状繊維束16(図2参照))が望ましい。
【0021】
炭素繊維をテープ状に成形する方法としては、例えば12000本から24000本の炭素繊維からなる繊維束をロールから繰り出して開繊し、次いで開繊してテープ状となった繊維束を合成樹脂液に浸漬した後に巻き上げることによって行われる。この際、テープ状繊維束16(図2参照)を構成する各炭素繊維の表面は、合成樹脂で満遍なく被覆されることとなる。
【0022】
前記合成樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。中でもレゾール型のフェノール樹脂が望ましい。ちなみに、レゾール型のフェノール樹脂は、pHを7.0〜12.5に調整することによって水溶性とすることができるのでその取り扱いが容易になる。
【0023】
本実施形態では、合成樹脂を含むテープ状の炭素繊維(繊維束)を円柱形状又は円筒形状に巻回し、その合成樹脂を硬化させて巻回体を形成する。この巻回体は、図2に示すブロック体13の外形とニヤネットシェイプのものとする。この際、合成樹脂が熱硬化性樹脂の場合には所定の硬化温度で加熱し、熱可塑性樹脂の場合にはガラス転移温度以下にすることで合成樹脂を硬化させる。
【0024】
次に、この製造方法では、巻回体をロータ本体1の型内で締結部に対応する位置に配置する。つまり、図1(a)に示すブロック体13の位置に巻回体が配置される。
【0025】
そして、この製造方法では、巻回体を配置したロータ本体1の型内に、合成樹脂で表面を被覆した炭素繊維の短繊維と有機バインダとを含む混合物を充填する。
【0026】
炭素繊維の短繊維は、例えば、巻回体に使用した樹脂被覆の炭素繊維を10mm以下に切断して作製することができる。
【0027】
有機バインダとしては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、エポキシ樹脂、ピッチ、有機ケイ素系ポリマー等が挙げられる。有機バインダは、固体又は流動体のいずれであっても良い。また、有機バインダとしては、熱分解後の炭素収率が高いものが好ましい。
【0028】
また、前記混合物には、炭素繊維及び有機バインダの他に、例えば、粒状のグラファイト、炭化ケイ素、金属炭化物、金属窒化物等の添加物を更に加えることができる。
【0029】
次に、この製造方法では、型内に配置した巻回体及び充填した混合物を、型内で所定の温度及び圧力の下に一体化させることによって、ロータ本体1の外形とニヤネットシェイプの成形体を得る。この際、有機バインダが熱硬化性樹脂の場合には所定の硬化温度で加熱する。
【0030】
次に、この製造方法では、前記した成形体を焼成して巻回体の合成樹脂と有機バインダとを炭素化してC/C化物を形成する。この焼成工程は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、900℃程度で加熱するのが好ましい。
【0031】
次に、この製造方法では、前記した焼成工程で得られたC/C化物を所定の炉内に配置し、その上に固形のSiを敷き詰める。固形のSiとしては、例えば、直径が1〜3mmの粒状ものや、直径が10〜30mmの塊状のものを好適に使用することができる。
【0032】
そして、真空中、1400℃以上で炉内を加熱することによって、固形のSiを溶融させると共に溶融したSiをC/C化物に含浸させる。この工程により、炭素化した有機バインダはSiと反応することでSiCとなって、SiCのマトリックス中に炭素繊維の短繊維を含むC/SiC複合材料が形成される。この際、前記した焼成工程で、炭素繊維の表面に形成された被覆樹脂(前記した合成樹脂)の炭素化物は、C/C物に含まれる炭素繊維の短繊維及びテープ状繊維束が溶融Siと接触してSiC化するのを防止する。次いで、超硬切削工具を使用してブロック体13に前記したボルト3aの挿入孔19を形成すると共に必要に応じて外形形状を整えてロータ本体1(図1(a)参照)が得られる。
【0033】
次に、本実施形態に係るロータ本体1(円盤状摩擦部材)の作用効果について説明する。
本実施形態に係るロータ本体1においては、自動車の車輪に制動力を加える際に、ロータ本体1の盤面に対して図示しないキャリパのブレーキパッドが圧接する。この際、ロータ本体1とハット部2とを締結する締結部、つまりボルト3aの挿入孔19が形成されたブロック体13に多大な応力が集中する。
【0034】
一方、ブロック体13は、炭素繊維を円筒形状に巻回して形成しているので、制動時に多大な応力が集中しても充分な強度を発揮する。このことはボルト3aからブロック体13に負荷が入力された際に巻回する炭素繊維が負荷を効果的に分散するためと考えられる。
【0035】
また、本実施形態に係るロータ本体1は、テープ状に成形した前記炭素繊維の繊維束を巻回してブロック体13を形成するので、円筒形状の周方向に沿って炭素繊維の配向が揃いやすい。したがって、ブロック体13に入力された負荷の分散がより効果的に行われる。
【0036】
また、本実施形態に係るロータ本体1は、炭素繊維をテープ状に成形したテープ状繊維束16を巻回してブロック体13を形成するので、円筒形状を容易に形成することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るロータ本体1は、炭素繊維の巻回中心(巻回軸17)に貫通孔18を穿ってブロック体13を形成するので、巻回中心を外れて貫通孔18を穿ったものと異なって、炭素繊維が貫通孔18で分断されることが避けられる。その結果、強度の高い締結部を構成することができる。
【0038】
次に、本実施形態に係るロータ本体1の前記した作用効果を実証するシミュレーション試験を行ったので、その結果を以下に説明する。
このシミュレーション試験では、図1(b)に示すブレーキロータR1と同様の形状を有するものを計算モデルとして使用して、制動時にブロック体13に生起する熱応力及びトルク応力を求めた。
【0039】
熱応力の計算は、このブレーキロータR1を装着した車両が100km/hで走行している際に、3.0m/sで減速して9.3sで停止する制動条件を仮定し、初期熱流束を5.07×10W/mに設定して行った。初期温度分布は、熱流体解析のフェード5回終了時の温度分布を単純化して使用した。また、空気への熱伝達は無いと仮定した。この熱応力の計算におけるボルト3aの材料強度のデータは、一般に公開されているクロムモリブデン鋼の応力-ひずみ線図を用いた。
【0040】
ブロック体13の外径が13mmであるブレーキロータR1の制動開始から3s後の熱応力分布の計算結果を図3(a)に示し、ブロック体13の外径が18mmであるロータ本体1の制動開始から3s後の熱応力分布の計算結果を図3(b)に示す。なお、図3(a)及び(b)中の矢印は、車両走行時のロータ本体1の回転方向を示し、符号1はロータ本体を示し、符号13はブロック体を示している。
【0041】
図3(a)に示すように、ブロック体13の外径が13mmであるロータ本体1の熱応力は最大値で23MPaであった。これに対して、図3(b)に示すように、ブロック体13の外径が18mmであるロータ本体1の熱応力は最大値で19MPaであった。
【0042】
つまり、制動中に加わる熱応力及び熱ひずみは、ブロック体13の直径が大きくなるほど小さくなることが確認された。言い換えれば、ブロック体13の体積が増加するほど熱応力及び熱ひずみは小さくなることが確認された。
【0043】
トルク応力の計算は、三倍トルクが付加した条件としてブレーキパッドのロータ本体1に対する押圧力を5.89MPaとし、ロータ本体1の周方向にせん断応力が2.65MPaの大きさで生起した場合を仮定した。このトルク応力の計算では、ハット部2の外径を194mmとし、内径を110mmとすると共に、ハット部2及びボルト3aの材料強度のデータは、一般に公開されているクロムモリブデン鋼の応力-ひずみ線図を用いた。なお、ハット部2は弾性を示し、ボルト3aは弾塑性を示すものと仮定した。解析には、ロータ本体1の全体の変形を求め、その変形の際の変位を部分モデルに対して境界条件として与えている。
【0044】
ブロック体13の外径が13mmであるロータ本体1のトルク応力分布の計算結果を図4(a)に示し、ブロック体13の外径が18mmであるロータ本体1のトルク応力分布の計算結果を図4(b)に示す。図4(a)及び(b)中の矢印は、ロータ本体1の回転方向を示し、符号1はロータ本体を示し、符号13はブロック体を示している。
【0045】
図4(a)に示すように、ブロック体13の外径が13mmであるロータ本体1のトルク応力は最大値で240MPaであった。これに対して、図4(b)に示すように、ブロック体13の外径が18mmであるロータ本体1のトルク応力は最大値で200MPaであった。
すなわち、制動中に加わるトルク応力及びひずみは、ブロック体13の直径が大きくなるほど小さくなることが確認された。言い換えれば、ブロック体13の体積が増加するほどトルク応力及びひずみは小さくなることが確認された。
【0046】
以上のシミュレーション試験の結果から、炭素繊維を円筒状に巻回したブロック体13を有するロータ本体1は、制動時に多大な応力が締結部に集中しても充分な強度を発揮することが確認された。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
ここで参照する図5(a)は、他の実施形態に係る円盤状摩擦部材を使用したブレーキロータの平面図、図5(b)は、図5(a)のV−V断面図である。なお、図5(a)中、ハット部2は仮想線で示し、ロータ本体1と、ハット部2とを締結する締結具は、作図の便宜上省略している。また、図5(b)中、ハット部2及び締結具3(ボルト3a及びナット3b)は仮想線で示している。また、前記実施形態と同様の構成要素は同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
図5(a)及び(b)に示すように、ブレーキロータR2のロータ本体31は、前記実施形態に係るロータ本体1と同様に、締結部となるブロック体13がロータ本体31の中心軸14周りに複数埋め込まれて配置されている。
【0049】
このロータ本体31は、図5(a)に示すように、ブロック体13よりも外側に位置するリング状の領域にブロック体33が埋め込まれて配置されている。
【0050】
このブロック体33は、ロータ本体31の中心軸14が巻回中心となるようにテープ状に成形した炭素繊維(テープ状繊維束16(図2参照))を巻回したものであって、図5(b)に示すように、ロータ本体31の盤面の表裏にそれぞれ配置されている。
つまり、ロータ本体31には、ブレーキパッド(図示省略)が圧接する盤面部分にブロック体33が配置されることとなる。
【0051】
また、冷却孔15は、図5(b)に示すように、表裏のブロック体33,33の間でロータ本体31内を延びることとなる。
【0052】
このようなロータ本体31によれば、ブレーキパッド(図示省略)が圧接する盤面部分にブロック体33が配置されるので圧接部分の強度が一段と向上する。その結果、このロータ本体31によれば、ブロック体13によって締結部の強度が向上すると共に、ブロック体33によって圧接部分の強度が一段と向上するので、ブロック体13とブロック体33との協働によって、より大きな制動力をロータ本体1に加えることができる。
【0053】
また、前記実施形態では、テープ状の炭素繊維(繊維束)を円筒形状に巻回してブロック体13を形成しているが、本発明は炭素繊維がヒモ状に束となった繊維束を円筒形状に巻回してブロック体13を形成したものであっても良い。
【0054】
また、前記実施形態では、ブレーキロータR1に使用されるロータ本体1(円盤状摩擦部材)について説明したが、本発明はクラッチディスクに使用される円盤状摩擦部材であっても良い。このような円盤状摩擦部材における締結部は、ボルト3aの挿入孔19を備える前記ブロック体13と同様に構成されたものであっても良いが、凸となるスプライン部にブロック体13を配置したものであっても良い。
【0055】
また、前記実施形態では、切欠部11を形成したロータ本体1について説明したが、本発明は切欠部11を有しない、つまり中央孔12が真円であるロータ本体1であっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 ロータ本体
2 ハット部
3 締結具
3a ボルト
3b ナット
11 切欠部
12 中央孔
13 ブロック体
14 中心軸
15 冷却孔
16 テープ状繊維束(炭素繊維)
17 巻回軸(巻回中心)
18 貫通孔
19 挿入孔
21 フランジ部
22 円筒部
23 ハブ取付部
24 ボルト挿通孔
25 ボルト挿通孔
31 ロータ本体
33 ブロック体
R1 ブレーキロータ
R2 ブレーキロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C/SiC複合材料からなり、中心軸周りに締結部を備える円盤状摩擦部材であって、
前記締結部は炭素繊維を円筒形状に巻回したブロック体を埋め込んで形成したことを特徴とする円盤状摩擦部材。
【請求項2】
前記ブロック体はテープ状に成形した前記炭素繊維の繊維束を巻回したことを特徴とする請求項1に記載の円盤状摩擦部材。
【請求項3】
前記ブロック体は前記炭素繊維の巻回中心に貫通孔を穿って形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の円盤状摩擦部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−94713(P2011−94713A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249660(P2009−249660)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】