説明

円筒状インゴットブロックを四角柱状ブロックに加工する切断装置および切断方法

【課題】 円筒状インゴットの四側面剥ぎ切断加工を行って角柱状インゴットに形成する際の切断屑の発生量を低下させたい。
【解決手段】 切断装置1の薄い厚みの回転切断刃91a,91bを挟む外周刃横揺れ自己補償機構96を新たに設けるとともに、インゴットの切断方法を予め回転切断刃91a,91bで1/2カットする溝切加工を行った後、インゴットを回転させて残りの1/2の溝を回転切断刃91a,91bで加工し、側面を切断するハーフカット方法に変更した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状インゴットブロックをその回転C軸廻りに回転させる機能を有するエンコーダ付き主軸台と心押台とよりなるクランプ機構に挟持し、回転切断刃によりその四側面を削ぎ落とす切断を行って四角柱状ブロックに加工する切断装置およびその切断装置を用いて円筒状インゴットブロックを四角柱状ブロックに加工する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
半導体基板に用いられる円板状単結晶シリコン基板や太陽発電電池の基板に用いられる四角形状単結晶シリコン基板の原材料の円筒状インゴットブロックは、チョクラルスキー法(CZ法)により育成した単結晶シリコンインゴットのC軸両端面を切り落とし、ついで、回転させる機能を有する主軸台と芯押台とよりなるクランプ装置に挟持し、円筒研削して外周面の皴状の凹凸を取り除き、さらに、長さ200mm、250mm、400mm、500mm、800mm等の長さに内周刃で切断、あるいはワイヤーカットされて外周面平滑円筒状単結晶シリコンインゴットブロックとして市販される。
【0003】
この外周面平滑円筒状単結晶シリコンインゴットブロックは、次の工程のマルチ・ワイヤーソウによる薄厚の基板へのスライス加工に供せられる。あるいは、インゴットブロック製造メーカから太陽電池基板製造メーカに供給され、外周刃で四側面を削ぎ落として加工された四角柱状ブロックの四側面および四隅コーナー部を面取り加工し、次工程のマルチ・ワイヤーソウによる薄厚の基板へのスライス加工ステージへ供給される。
【0004】
特開2005−123527号公報(特許文献1)は、円柱状の半導体単結晶インゴットから太陽電池セルを構成する複数の半導体セグメントを製造するに際し、
前記半導体単結晶インゴットを軸直交断面により一定厚さの複数枚のウェーハ領域に区画し、さらに各ウェーハ領域の主表面において、ウェーハ中心点に関して対称な位置にある平行な第一の平行区画線の対と、同じく第二の平行区画線の対とを、前記第一の平行区画線が前記第二の平行区画線よりも長尺となるように互いに直交する形態で設定し、それら平行区画線の組にて前記ウェーハ領域を前記主表面の面内方向に区画することにより形成される3種のウェーハセグメント領域、すなわち、前記ウェーハ中心点を含む長方形状の第一セグメント領域と、その第一セグメント領域の残余の領域のうち該第一セグメント領域の長辺に対応する弓形の第二セグメント領域と、同じく短辺に対応する弓形の第三セグメント領域とのうち、前記第一セグメント領域に基づく長方形状の第一半導体セグメントと、前記第二セグメント領域に基づく弓形の第二半導体セグメントとを各々複数枚ずつ製造し、
前記長方形状の第一半導体セグメントに基づく第一セルのみを集め、これを長辺方向及び短辺方向にそれぞれ一定間隔で複数枚ずつ格子状に配列して第一の太陽電池モジュールを作製する一方、
前記弓形の第二半導体セグメントに基づく第二セルのみを集め、それら複数の第二半導体セグメントを、弦部に直交する第一方向と弦部に平行な第二方向とにそれぞれ一定間隔で複数枚ずつ配列して第二の太陽電池モジュールを作製することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法を提案する。
【0005】
再公表2005/076333号公報(特許文献2)は、チョクラルスキー法(CZ法)により育成した単結晶シリコンインゴットのC軸両端面を切り落とし、ついで、回転させる機能を有する主軸台と芯押台とよりなるクランプ装置に挟持し、円筒研削して外周面の皴状の凹凸を取り除き、得られた外周面平滑円板状単結晶シリコンインゴットのC軸垂
直方向の結晶方位を赤外線検出器で読み取り、解析ピークを基に結晶方位を赤いマーカーペンで線を引いて特定し、この赤い特定マークに沿ってダイソーで複数のブロックに切断する方法を開示する。
【0006】
また、特開2009−233819号公報(特許文献3)は、チョクラルスキー法(CZ法)により育成した単結晶シリコンインゴットのC軸両端面を切り落とし、ついで、回転させる機能を有する主軸台と芯押台とよりなるクランプ装置に挟持し、円筒研削して外周面の皴状の凹凸を取り除き、得られた外周面平滑円板状単結晶シリコンインゴットのC軸垂直方向の結晶方位をX線解析機器で読み取り、この結晶方位線を基準に赤いマークを付し、ついで、砥石によりこの赤いマーク線に沿ってオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工し、ついで、マルチ・ワイヤーソウによる薄厚の基板へのスライス加工に供することを開示する。
【0007】
本願特許出願人は、上記円筒状インゴットブロックを四角柱状ブロックに切断加工する方法として特願2011−14761号明細書(特許文献4)の請求項1で次の円筒状インゴットブロックの四側面剥ぎ切断装置を提案した。
a)機枠上に左右方向に設けられた案内レール上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル、
b)前記ワークテーブル上に左右に分離して搭載された主軸台と心押台の一対よりなるクランプ機構、
c)前記クランプ機構に支架されたワークを載せた前記ワークテーブルを左右方向に往復移動させる駆動機構、
d)前記ワークテーブルを複合面取り加工装置の正面側から見る方向であって、かつ、右側方向より左側方向へ向かって、
e)円筒状インゴットブロックのローディング/アンローディングステージ、
f)前記ローディング/アンローディングステージの背後に設けた前記クランプ機構の待機位置ステージ、
g)前記クランプ機構のワーク支持軸(C軸)を挟んで一対の外周刃(回転切断刃)をその回転切断刃直径面が相対向するように、かつ、前記ワーク支持軸の高さ位置よりも上方にある位置に回転切断刃(ツール)軸心が位置するよう回転切断刃(ツール)軸を前記案内レールに対し前後に設けた円筒状インゴットブロックの側面剥ぎスライシングステージ、
および、
h)前記ローディング/アンローディングステージのロードポート位置に、インゴットブロックの結晶方向検出機器を設けた結晶方向検出ステージ、
を設けた円筒状インゴットブロックの四側面剥ぎ切断装置。
【0008】
また、前記特許文献4の請求項2において、上記の四側面剥ぎ切断装置を用い、下記の工程を経て、円筒状インゴットブロックを角柱状インゴットブロックに面取り加工する方法を提案した。
(1)ローディング/アンローディングステージに在る搬入機構を用い、ロードポートを通過させて被加工物(ワーク)である円筒状インゴットブロックをクランプ機構の回転C軸廻りに回転させる機能を有するエンコーダ付き主軸台と心押台間に搬入し、ついで、前記心押台を前進させて円筒状インゴットブロックをクランプ機構に挟持する。
(2)前記挟持された円筒状インゴットブロックの前側に離れて設置した結晶方向検出機器のセンサーによりクランプ装置の主軸台のモータにより回転される円筒状インゴットブロックの結晶方位を測定し、このC軸回転角度をエンコーダで読み取りながらC軸1回転(360度)回転させ、円筒状インゴットブロックのC軸回転角度と円筒状インゴットブロック結晶方位の相関図を表示させる。
(3)表示された4つの結晶方位を示すエンコーダ回転角度のどれか1つの角度(θ)
を選択し、この角度が回転切断刃径方向面に対するエンコーダ回転角度45度の位置(切断開始C軸位置)に位置するようC軸を回転させて円筒状インゴットブロックの結晶方位位置を芯出しする。
(4)回転する一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円筒状インゴットブロックの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には冷却液が供給される。
(5)ついで、円筒状インゴットブロックのC軸を主軸台のサーボモータを用いて180度回転させる。
(6)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円筒状インゴットブロックの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円筒状インゴットブロックの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には冷却液が供給される。
(7)ついで、2側面が切断された円筒状インゴットブロックのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度回転させる。
(8)回転する前記一対の回転切断刃の方向にクランプ機構を搭載する前記ワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円筒状インゴットブロックの残った前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には冷却液が供給される。
(9)ついで、円筒状インゴットブロックのC軸を主軸台のサーボモータを用いて180度回転させる。
(10)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円筒状インゴットブロックの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円筒状インゴットブロックの前後の円弧状側面を切断し、四角柱状インゴットブロックに加工する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には冷却液が供給される。
【0009】
上記四側面剥ぎ切断装置1は、全自動であり、市販のインゴットスライサー四側面切断装置と比較し、1本の円筒状単結晶シリコンインゴットブロックを四角柱状ブロックに加工する時間が約1/2弱である利点を有する。しかし、太陽電池基板製造メーカ立会いの下にこの四側面剥ぎ切断装置1を用いて四角柱状単結晶シリコンインゴットブロックの試作を行ったところ、(1)外周刃による側面剥ぎ工程において、単結晶シリコンインゴット切断屑の発生量をもっと減し、ダイソー刃で発生する切削屑量と同等にすることができないかと要望があった。
【0010】
一方、特表平10−500194号公報(特許文献5)および米国特許第5484208号明細書(特許文献6)は、主軸(スピンドル)の自己補償型水静圧軸受け構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−123527号公報
【特許文献2】再公表2005/076333号公報
【特許文献3】特開2009−233819号公報
【特許文献4】特願2011−129754号明細書(未公開)
【特許文献5】特表平10−500194号公報
【特許文献6】米国特許第5484208号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、外周刃(回転切断刃)による切削屑の発生量を減らすには、500〜600mm径の円板状基台の外周縁に5〜8mm幅で設けられたダイヤモンド電着刃の厚み4〜5mmを1.3〜2.5mmの厚みまで減らすことで解決できると着想し、追試実験を行ったところ、外周刃の回転時に外周刃が横揺れを生じて切削屑の半減には繋がらないことが判明した。
【0013】
本発明者らは、前記特許文献5および特許文献6記載の自己補償型水静圧軸受け構造を外周刃の横揺れ防止に応用できないか検討し、冷却液供給ノズルと兼用できる外周刃横揺れ自己補償パッド構造とすることにより、上記外周刃の回転により生じる外周刃の横揺れを抑制できることを見出した。
【0014】
次に、本発明者らは、厚み1.3〜2.5mmの回転切断刃のインゴット切断時の回転切断刃にかかるモータ負荷電力を軽減するために、回転切断刃の通過1回でインゴットの1側面を切断するのを止めて、回転切断刃の通過1回でインゴットの1側面の半分に切溝を設け、インゴットを180度回転した後に、回転切断刃の通過1回でインゴットの1側面の半分に切溝を設ける作業を実施し、1側面を切り落とす加工を行ったところ、インゴット本体から1側面が切り落とされる最後の瞬間に切り落とされる残った部分がチッピングを生じ、切断されて残ったインゴット本体の両端部分に0.5〜1mm程度のチッピングが4点見出されることが判明した。この4点のピッチング点は、四角柱状インゴットの端部なので、後の工程のワイヤーカットによる四角形基板形成時にオフ品となり、基板製品ロス率は極めて小さいものである。
【0015】
本発明は、上記ハーフカット方法で円柱状インゴットを四角柱状インゴットに切断する際、得られる四角柱状インゴットにチッピングが生じない切断装置の提供を目的とする。また、この切断装置を用い、円柱状インゴットを四角柱状インゴットに切断する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1は、
a)機枠上に左右方向に設けられた案内レール上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル、
b)前記ワークテーブル上に左右に分離して搭載された主軸台と心押台の一対よりなるクランプ機構であって、前記主軸台と心押台が相向き合う主軸台面と心押台面に各々の支持シャフト(ワーク支持軸)より下位置にワークの左端または右端にそれぞれの補助支持体が直線移動して接触できる補助サポート機構を設けたクランプ機構、
c)前記クランプ機構に支架されたワークを載せた前記ワークテーブルを左右方向に往復移動させる駆動機構、
d)前記ワークテーブルを複合面取り加工装置の正面側から見る方向であって、かつ、右側方向より左側方向へ向かって、
e)円筒状インゴットブロックのローディング/アンローディングステージ、
f)前記ローディング/アンローディングステージの背後に設けた前記クランプ機構の待機位置ステージ、
g)前記クランプ機構のワーク支持軸を挟んで一対の回転切断刃をその回転切断刃直径面が相対向するように前記案内レールに対し前後に設けられたワーク(円筒状インゴットブロック)の側面剥ぎスライシングステージ、
および、
h)前記側面剥ぎスライシングステージに位置する前記回転切断刃の外周縁ダイヤモンド刃先より内側であって、前記円筒状インゴットブロック側面剥ぎ開始側位置にあって、切断される前記円筒状シリコンインゴットブロックの上側の位置に加圧冷却液供給パッド一対を前記回転切断刃を挟んで前面および後面に設け、ポンプにより供給される加圧液体
の供給管を2分岐し、分岐された供給管のそれぞれの先端を前記一対の加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間に望ませた回転切断刃横揺れ自己補償機構、
を設けたことを特徴とする円筒状インゴットブロックの四側面剥ぎ切断装置を提供するものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の四側面剥ぎ切断装置を用いてワーク(円筒状インゴットブロック)を挟持し、このワークを、下記の工程を経て、四角柱状ワークに切断加工する方法を提供するものである。
(1)ローディング/アンローディングステージに在るクランプ機構の主軸台と心押台間に搬入し、ついで、前記心押台を前進させて円柱状ワークをクランプ機構により挟持する。
(2)回転する一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(3)ついで、円柱状ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて180度回転させる。
(4)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円柱状ワーク端に当接するよう直線移動させて円柱状ワーク端下部を挟持させる。
(5)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円柱状ワークの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(6)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円柱状ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて円柱状ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させる。
(7)ついで、2側面が切断された前記ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度回転させる。
(8)回転する前記一対の回転切断刃の方向にクランプ機構を搭載する前記ワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による前記ワークの残った前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(9)ついで、前記ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて180度回転させる。
(10)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が前記ワーク端に当接するよう直線移動させてワーク端下部を挟持させる。
(11)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による前記ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円柱状ワークの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(12)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円柱状ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて円柱状ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させ、四角柱状ワークを得る。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1記載の四側面剥ぎ切断装置を用いてワークを挟持し、このワークを、下記の工程を経て、四角柱状ワークに切断加工する方法を提供するものである。
(1)ローディング/アンローディングステージに在るクランプ機構の主軸台と心押台
間に搬入し、ついで、前記心押台を前進させて円柱状ワークをクランプ機構により挟持する。
(2)回転する一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(3)ついで、円柱状ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度回転させる。
(4)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(5)ついで、四本の溝が形成された円柱状ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度回転させる。
(6)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円筒状ワーク端に当接するよう直線移動させて円柱状ワーク端下部を挟持させる。
(7)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、前記円筒状ワークの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(8)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円筒状ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて前記円柱状ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させる。
(9)ついで、前記ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度または−270度回転させる。
(10)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体がワーク端に当接するよう直線移動させて前記ワーク端下部を挟持させる。
(11)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による前記ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、前記ワークの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(12)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が前記ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて前記ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させて四角柱状ワークを得る。
【発明の効果】
【0019】
円柱状ワークの両側面が回転切断刃で切断されるとき、円柱状ワークの既に切断用溝(スリット)が設けられた円柱状ワーク両端の下部面が補助サポート機構により挟持されている状態で上部スリットと下部スリットが連通して切断されるので、両スリットの連通点に負荷する切断両側面片の荷重が分散され、円柱状ワークの切断最終点にチッピングが生じることはない。
【0020】
回転切断刃のダイヤモンド刃先の幅が1.2〜2.5mmと狭くても、ダイヤモンド刃先の円筒状インゴットブロックの切り込み深さが目的の溝切り深さ(h)の1/2を超え1〜5mm超える深さ(h/2+1〜5mm)に制限したので回転切断刃のダイヤモンド刃先が円筒状インゴットブロックの溝切り部分と接触している面積が回転切断刃のダイヤモンド刃先でインゴット側面を切断する際の約1/2となる。よって、電動モータに掛かる負荷もさほど増加しない。また、回転切断刃のダイヤモンド刃先の幅を1.2〜2.5mmとしたことによりインゴット切断屑の発生量も低減する。また、回転切断刃の直径を
450〜550mmと小さくすることができる。
【0021】
回転切断刃横揺れ自己補償機構は、回転している回転切断刃に横揺れが生じ、前側に設置した加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間口側に近づくと、このパッドの液体貯め空間の圧力が増加し、逆に後ろ側に設置した加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間の圧力が低下する。よって、前側に設置した加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間の圧力がある圧力以上となると前側に横揺れした回転切断刃が後ろ側に設置した加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間口の方へ押し戻される。その回転切断刃の押し戻しにつれて前側に設置した加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間の圧力は低下し、後ろ側に設置した加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間の圧力は増加する。後ろ側に設置した加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間の圧力がある圧力以上となると後ろ側に横揺れした回転切断刃が前側に設置した加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間口の方へ押し戻される。よって、加圧冷却液供給圧力の大きさにより回転切断刃の横揺れ幅を制限することができ、インゴットブロックの切削屑の発生量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は四側面剥ぎ切断装置の平面図である。
【図2】図2は四側面剥ぎ切断装置の上面図である。
【図3】図3はクランプ機構の主軸台を示す図で、図3aは主軸台のワーク支持側を見た図、図3bは主軸台の正面から見た補助サポート機構の正面図である。
【図4】図4はクランプ機構の補助サポート機構を拡大して示すクランプ機構の部分平面図である。
【図5】図5は回転切断刃横揺れ自己補償機構自己補償機構の正面断面図である。
【図6】図6はクランプ機構と補助サポート機構とで挟持されたワークの状態を示すクランプ装置の正面図である。
【図7】図7は回転切断刃で円柱状インゴットブロックに切り込みをかけて四角柱状単結晶インゴットブロック形状に製作する工程を示すフロー図で、クランプ装置の側面からインゴットブロックを見た図である。
【図8】図8は回転切断刃で円柱状インゴットブロックに切り込みをかけて四角柱状インゴットブロック形状に製作する工程を示す別態様のフロー図で、クランプ装置の側面からインゴットブロックを見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および図2に示す円筒状インゴットブロックの側面剥ぎ落とし切断装置1は、次のa)からh)の構成部材を備える。
【0024】
a)機枠2上に左右方向に設けられた案内レール3,3上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル4
【0025】
b)前記ワークテーブル4上に左右に分離して搭載された主軸台7aと心押台7bの一対よりなるクランプ機構7であって、前記主軸台7aと心押台7bが相向き合う主軸台面と心押台面に各々の支持シャフト7a,7bより下位置にワークの左端または右端にそれぞれの補助支持体7a11,7b11が直線移動して接触できる補助サポート機構7’a,7’bを設けたクランプ機構(図4、図6参照)、
【0026】
c)前記クランプ機構7に支架されたワークwを載せた前記ワークテーブル4を左右方向に往復移動させる駆動機構7am、
【0027】
d)前記ワークテーブル4を切断装置1の正面側から見る方向であって、かつ、右側方向より左側方向へ向かって、
【0028】
e)ワークのローディング/アンローディングステージ8R、
【0029】
f)前記ローディング/アンローディングステージ8Rの背後に設けた前記クランプ機構7の待機位置ステージ70、
【0030】
g)前記クランプ機構のワーク支持軸7a,7bを挟んで一対の回転切断刃91a,91bをその回転切断刃直径面が相対向するように前記案内レール3,3に対し前後に設けられた円筒状シリコンインゴットブロック(ワーク)の側面剥ぎスライシングステージ90、
【0031】
h)前記側面剥ぎスライシングステージ90に位置する前記回転切断刃の外周縁ダイヤモンド刃先91ag,91bgより内側位置であって、前記円筒状シリコンインゴットブロック側面剥ぎ開始側位置にあって、切断される前記ワークの上側の位置に加圧冷却液供給パッド96a,96b一対を前記回転切断刃を挟んで前面および後面に設け、ポンプ96pにより供給される加圧液体の供給管96kを2分岐96k,96kし、分岐された供給管のそれぞれの先端を前記一対の加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間96vに望ませた回転切断刃横揺れ自己補償機構96。(図5および図6参照)。
【0032】
なお、前記分岐管96k,96kには圧力調整絞り弁96z,96zが設置される。また、供給管96kには、冷却液貯槽タンク96t内の冷却液がポンプ96p駆動により供給される。ポリ(四フッ化エチレン)、ナイロン6,10、PEEK、ガラス繊維補強エポキシ樹脂などの耐熱性樹脂製加圧冷却液供給パッド96a,96b一対を図4に示すように外周刃91a,91bのインゴットブロック送り出し側にも追加して設け、外周刃の冷却効率、横揺れ自己補償能力を高めてもよい。外周刃91a,91b直径面と前記加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間口フランジ間の距離は0.01〜0.05mmが好ましい。前記加圧冷却液供給パッド96a,96bの形状はお椀型でもよいし、四角形状であってもよい。前記加圧冷却液供給パッド96a,96bを支持するフランジ96f,96fは回転切断刃保護カバー91c内壁に固定される。ポンプ96pにより供給管96kに供給される加圧冷却液の圧力は、20〜35Kgf/cm、冷却液量は2〜20リットル/分が好ましい。
【0033】
図1と図2に戻って、前記クランプ機構7と一緒にローディング/アンローディングステージ8Rを構成するインゴットブロック搬送機構13とインゴットストッカー14は、前記ワークテーブル4の前側に並設している。インゴットブロック搬送機構13とインゴットストッカー14の構造は、本願特許出願人による特開2011−136382号公報の図1から図5に詳細に開示されている。このインゴットブロック搬送機構13とインゴットストッカー14は、市場より入手できる。
【0034】
前記インゴットブロック搬送機構13は、ワークストッカー14V字棚段に保管されているインゴットブロック1本を1対の爪で挟持し、両爪を上昇させることによりワークを吊り上げ、ついで、後退、右方向への移動、下降してロードポート8前に位置させ、さらに後退させることによりこのロードポート8からワークをクランプ装置7の主軸台7aと心押台7b間へと搬入する。ワークの一端を主軸台7aのセンター支持軸7aに当接させた後、心押台7bを空気シリンダー7eで右方向に移動させてセンター支持軸7bに他端を当接させワークを宙吊り状態に支架する。ついで、前記両爪を離間させてワークの把持を開放し、ついで、両爪を支持する固定台を上昇させ、左方向に移動させ、さらに、前方向に後退させ両爪をインゴットブロック搬送機構13の待機位置へと戻す。
【0035】
側面剥ぎスライシングステージ90は、クランプ装置7と、このクランプ装置7を搭載
するワークテーブル4用の左右移動案内レール3,3と、このクランプ機構の主軸台7aと心押台7bのワーク支持軸7a,7bを挟んで前後移動可能なスピンドル軸92a,92bの一対に軸承された回転切断刃の一対91a,91bをその直径面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられたスライシングヘッド9とから構成される。
【0036】
クランプ機構7は、図4および図6に示すように、ワークwを水平方向に挟持することができる主軸台7aと心押台7bとからなり、前記主軸台7aと心押台7bが相向き合う主軸台面と心押台面に各々のセンター支持軸7a,7bより下位置にワークの左端または右端にそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11が直線移動して接触できる補助サポート機構7’a,7’a,7’b,7’bが設けられている。補助支持体7’a11,7’b11の直線移動手段はシリンダー機構、モータとボールネジの組み合わせ機構のいずれでもよい。上記支持シャフト(ワーク支持軸)7a,7bより下位置は、回転切断刃により設けられたスリット幅を跨るワーク端面位置であるのが好ましい。
【0037】
回転切断刃91a,91bの前後移動は、回転切断刃91a,91bを軸承するスピンドル軸92a,92bを回転させるサーボモータ93m,93mを搭載したツールテーブル94t,94tを図示されていないモータ駆動ボールネジをモータ94m,94mで回転駆動することにより行われる。このツールテーブル94tの前進または後退の移動方向は、サーボモータ94mの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0038】
一対の回転切断刃91a,91bは、一対のスピンドル軸92a,92bに軸承され、これらスピンドル軸はサーボモータ93m,93mにより駆動回転されることにより、回転切断刃91a,91bはワークに対し同一時計廻り方向に50〜7,500min−1の回転速度で回転される(両スピンドル軸の回転方向は互いに逆方向となる)。前記スピンドル軸92a,92bはツールテーブル94t,94tを前後移動することによりインゴットブロックの面剥ぎ加工開始位置へと移動可能である。前記スピンドル軸92a,92bは、前記クランプ機構のワーク支持軸7a,7bを挟んで一対の回転切断刃91a,91bをその回転切断刃直径面が相対向するように、かつ、前記ワーク支持軸(C軸)の高さ位置よりも上方にある位置に回転切断刃軸心92a,92bが位置するよう回転切断刃軸心92a,92bを前記案内レール3,3に対し前後に設け、円筒状インゴットブロックの側面剥ぎスライシングステージ90を構成する。
【0039】
ワークテーブル4は、5〜200mm/分の速度で移動可能であり、回転軸92a,92bの昇降は100mmまで上下移動可能である。
【0040】
前記回転切断刃91a,91bとしては、直径が450〜600mm、厚み1〜2mmの鋼板シートの外周縁(厚み1.0〜2.0mm)にダイヤモンド微粒子を幅5〜10mm、厚み1.2〜2.5mm電着したダイヤモンドカッターが使用される。
【0041】
ワークのC軸を水平方向に挟持するクランプ機構7を搭載するワークテーブル4を左方向に移動させることによりワーク端面の前後が一対の回転切断刃91a,91bに当接し、これら回転切断刃により円柱状ワーク前面および後面が円弧状に削ぎ落とされる面剥ぎ切断加工が行われる。この面剥ぎ切断加工の際、回転切断刃横揺れ自己補償機構96からは冷却液が回転切断刃91a,91bに対して供給される。ワーク前後面の面剥ぎ切断加工が終了したら、クランプ機構7の主軸台7aの支持軸を90度回転させ、面剥ぎ切断加工が為されていないワークの円弧面を前後位置に芯出し(位置決め)し、ついで、ワークテーブル4を移動させて前記一対の回転切断刃91a,91bをサーボモータ93m,93mで回転駆動させて残りの面剥ぎ切断加工を行う。円柱状インゴットブロックの四側面の面剥ぎ切断加工時間は、直径が200mm、高さが250mmの円柱状単結晶シリコン
インゴットブロックで10〜20分、直径が200mm、高さ500mmの円柱状単結晶シリコンインゴットブロックで22〜27分で行うことができる。
【0042】
上記切断装置1を用いてワーク(円柱状単結晶シリコンインゴットブロック)の四側面剥ぎ切断加工を行って四角柱状インゴットブロックに加工する方法は、次の工程を経て実施される。
【0043】
(1)ローディングステージ8Rに在るワークwの搬送機構13を用い、ストッカー14上に載置されているワーク1本を両爪で把持し、次いで両爪を支持する固定台13fを上昇させ、左方向に移動させ、さらにサーボモータにより回転駆動されたボールネジに裏面を螺合させた前記固定台13fの滑走面13sをコラム側面に設けられた案内レール13g上を滑走させてロードポート8側へ進入させ、ついで、エアーシリンダ13pの駆動によりワークを下降させてクランプ機構7の回転C軸廻りに回転させる機能を有するエンコーダ付き主軸台7aと心押台7b間に搬入した後、前記心押台を前進させてワークwをクランプ機構7に挟持する。
【0044】
(2)前記挟持されたワークwの前側に離れて設置した変位センサーよりレーザー光をワークのC軸に向けて照射し、クランプ装置の主軸台のモータによるC軸回転角度をエンコーダで読み取りながらC軸1回転(360度)回転させ、回転角度とパルスピークの相関図を表示させる。
【0045】
(3)表示された4つのパルスピークを示すエンコーダ回転角度のどれか1つの角度(θ)を選択し、この角度が回転切断刃径方向面に対するエンコーダ回転角度45度の位置(切断開始C軸位置)に位置するようC軸を回転させてワークの切断される結晶方位位置を芯出しする。
【0046】
(4)回転する一対の回転切断刃91a,91bの位置する方向に前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を移動させて前記一対の回転切断刃91a,91b外周刃によるワークwの前後面の高さhをh/2を1〜3mm越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構96により前記一対の加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間96vにポンプ96pを用いて20〜35Kgf/cm圧力の冷却液が2〜20リットル/分の割合で供給される。(図7のI参照)
【0047】
(5)円柱状インゴットブロックのC軸を主軸台7aのサーボモータを用いて180度回転させる。(図7のII参照)
【0048】
(6)前記主軸台7aの補助サポート機構7’a,7’aと心押台7bの補助サポート機構7’b,7’bをそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11が円柱状ワーク端に当接するよう直線移動させて円筒状ワーク端下部を挟持させる。(図6参照)
【0049】
(7)回転する前記一対の回転切断刃91a,91bの方向に前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を移動させて前記一対の回転切断刃91a,91bによる円柱状インゴットブロックの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円柱状インゴットブロックの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃91a,91bの前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構96により前記一対の加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間96vにポンプ96vを用いて20〜35Kgf/cm圧力の冷却液が2〜20リットル/分の割合で供給される。
【0050】
(8)前記主軸台7aの補助サポート機構7’a,7’aと心押台7bの補助サポ
ート機構7’b,7’bをそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11が円柱状ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて円柱状ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させる。(図7のIII参照)
【0051】
(9)2側面が切断された円筒状インゴットブロックのC軸を主軸台7aのサーボモータを用いて90度回転させる。(図7のIV参照)
【0052】
(10)回転する前記一対の回転切断刃91a,91bの方向にクランプ機構7を搭載する前記ワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃91a,91bによる円柱状インゴットブロックの残った前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃91a,91bの前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構96により前記一対の加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間96vにポンプ96pを用いて20〜35Kgf/cm圧力の冷却液が2〜20リットル/分の割合で供給される。(図7のV参照)
【0053】
(11)ついで、前記円柱状インゴットブロックのC軸を主軸台7aのサーボモータを用いて180度回転させる。(図7のVI参照)
【0054】
(12)前記主軸台7aの補助サポート機構7’a,7’aと心押台7bの補助サポート機構7’b,7’bをそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11が前記円柱状インゴットブロックのワーク端に当接するよう直線移動させてワーク端下部を挟持させる。
【0055】
(13)回転する前記一対の回転切断刃91a,91bの方向に前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を移動させて前記一対の回転切断刃91a,91bによる円柱状インゴットブロック(ワーク)の前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、前記インゴットブロックの前後の円弧状側面を切断し、四角柱状インゴットブロックに加工する。この切断加工の際、前記回転切断刃91a,91bの前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構96により前記一対の加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間96vにポンプ96pを用いて20〜35Kgf/cm圧力の冷却液が2〜20リットル/分の割合で供給される。(図7のVII参照)
【0056】
(14)前記主軸台7aの補助サポート機構7’a,7’aと心押台7bの補助サポート機構7’b,7’bをそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11が前記ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて前記ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させ、四角柱状ワークを得る。
【0057】
(15)ワークテーブル4をクランプ機構待機ステージ70へ移動させ、ローディング/アンローディングステージ8Rにあるインゴットブロックwの搬送機構13の爪で四角柱状ブロックを把持し、心押台7bを後退させてクランプ機構7による四角柱状ブロックの拘束を外す。
【0058】
(16)インゴットブロックの搬送機構13の両爪をストッカー14上に移行させ、ついで両爪を開放して四角柱状ブロックをストッカー14上の棚上に載置する。
【0059】
前記切断装置1を用いて円柱状単結晶シリコンインゴットブロック(ワーク)の四側面剥ぎ切断加工を行って四角柱状インゴットブロックに加工する別態様の加工方法として、次の工程に置き換えてもよい。
【0060】
(1)ローディングステージ8Rに在る円筒状インゴットブロックの搬送機構13を用
い、ストッカー14上に載置されている円柱状シリコンインゴットブロック(ワーク)1本を両爪で把持し、次いで両爪を支持する固定台13fを上昇させ、左方向に移動させ、さらにサーボモータにより回転駆動されたボールネジに裏面を螺合させた前記固定台13fの滑走面13sをコラム側面に設けられた案内レール13g上を滑走させてロードポート8側へ進入させ、ついで、エアーシリンダ13pの駆動により円筒状インゴットブロックを下降させて第一クランプ機構7の回転C軸廻りに回転させる機能を有するエンコーダ付き主軸台7aと心押台7b間に搬入した後、前記心押台を前進させて円筒状シリコンインゴットブロックwを第一クランプ機構7に挟持する。
【0061】
(2)前記挟持された円柱状単結晶シリコンインゴットブロックの前側に離れて設置した変位センサーよりレーザー光を円柱状単結晶シリコンインゴットブロックのC軸に向けて照射し、クランプ装置の主軸台のモータによるC軸回転角度をエンコーダで読み取りながらC軸1回転(360度)回転させ、回転角度とパルスピークの相関図を表示させる。
【0062】
(3)表示された4つのパルスピークを示すエンコーダ回転角度のどれか1つの角度(θ)を選択し、この角度が回転切断刃径方向面に対するエンコーダ回転角度45度の位置(切断開始C軸位置)に位置するようC軸を回転させて円柱状単結晶シリコンインゴットブロックの結晶方位位置を芯出しする。
【0063】
(4)回転する一対の回転切断刃91a,91bの位置する方向に前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を移動させて前記一対の回転切断刃91a,91b外周刃による円筒状シリコンインゴットブロックwの前後面の高さhをh/2を1〜3mm越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構96により前記一対の加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間96vにポンプ96pを用いて20〜35Kgf/cm圧力の冷却液が2〜20リットル/分の割合で供給される。(図8のI参照)
【0064】
(5)円柱状インゴットブロックのC軸を主軸台7aのサーボモータを用いて90度回転させる。(図8のII参照)
【0065】
(6)回転する前記一対の回転切断刃91a,91bの方向に前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を移動させて前記一対の回転切断刃91a,91bによる円柱状インゴットブロックの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、前記回転切断刃91a,91bの前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構96により前記一対の加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間96vにポンプ96pを用いて20〜35Kgf/cm圧力の冷却液が2〜20リットル/分の割合で供給される。(図8のIII参照)
【0066】
(7)ついで、四本の溝が形成された円筒状ワークのC軸を主軸台7aのサーボモータを用いて90度回転させる。(図8のIV参照)
【0067】
(8)前記主軸台7aの補助サポート機構7’a,7’aと心押台7bの補助サポート機構7’b,7’bをそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11が円柱状ワーク端に当接するよう直線移動させて円柱状ワーク端下部を挟持させる。(図6参照)
【0068】
(9)回転する前記一対の回転切断刃91a,91bの方向に前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を移動させて前記一対の回転切断刃91a,91bによる円柱状インゴットブロックの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円柱状インゴットブロックの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃91a,91bの前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構9により前記一対の加圧冷却液供給
パッド96a,96bの液体貯め空間96vにポンプ96pを用いて20〜35Kgf/cm圧力の冷却液が2〜20リットル/分の割合で供給される。(図8のV参照)
【0069】
(10)前記主軸台7aの補助サポート機構7’a,7’aと心押台7bの補助サポート機構7’b,7’bをそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11が円筒状ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて前記円柱状ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させる。
【0070】
(11)ついで、前記ワークのC軸を主軸台7aのサーボモータを用いて90度または−270度回転させる。(図8のVI参照)
【0071】
(12)前記主軸台7aの補助サポート機構7’a,7’aと心押台7bの補助サポート機構7’b,7’bをそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11がワーク端に当接するよう直線移動させて前記ワーク端下部を挟持させる。
【0072】
(13)回転する前記一対の回転切断刃91a,91bの方向に前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を移動させて前記一対の回転切断刃91a,91bによる円柱状インゴットブロックの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円柱状インゴットブロックの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃91a,91bの前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構96により前記一対の加圧冷却液供給パッド96a,96bの液体貯め空間96vにポンプ96pを用いて20〜35Kgf/cm圧力の冷却液が2〜20リットル/分の割合で供給される。(図8のVII参照)
【0073】
(14)前記主軸台7aの補助サポート機構7’a,7’aと心押台7bの補助サポート機構7’b,7’bをそれぞれの補助支持体7’a11,7’b11が前記ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて前記ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させて四角柱状ワークwを得る。
【0074】
以上、ワークwとして円柱状シリコンインゴットブロックを例にして説明したが、ワークは丸太木、サファイア丸棒、セラミック丸棒、銅粉配合エポキシ樹脂製丸棒、エンジニアリングプラスチック製丸棒等も使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の円筒状インゴットブロックの側面剥ぎ切断装置1およびそれを用いて四角柱状ブロックに加工する方法は、ダイヤモンド刃先幅(刃の厚み)1が1.2〜2.5mmの回転切断刃を用いることを回転切断刃横揺れ自己補償機構96とハーフカット方法の併用を用いて可能としたので、インゴットブロックの切削屑の発生量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 切断装置
C C軸(クランプ装置のワーク回転軸)
w ワーク(円柱状インゴットブロック)
3 案内レール
4 ワークテーブル
7 クランプ機構
7a 主軸台
7’a 補助サポート機構
7’a11 補助支持体
7b 心押台
7’b 補助サポート機構
7’b11 補助支持体
8R ローディング/アンローディングステージ
13 インゴットブロック搬送機構
14 ストッカー
70 クランプ機構待機位置ステージ
90 スライシングステージ
91a,91b 回転切断刃
92a,92b ツール軸
96 回転切断刃横揺れ自己補償機構
96a,96b パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)機枠上に左右方向に設けられた案内レール上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル、
b)前記ワークテーブル上に左右に分離して搭載された主軸台と心押台の一対よりなるクランプ機構であって、前記主軸台と心押台が相向き合う主軸台面と心押台面に各々の支持軸より下位置にワークの左端または右端にそれぞれの補助支持体が直線移動して接触できる補助サポート機構を設けたクランプ機構、
c)前記クランプ機構に支架されたワークを載せた前記ワークテーブルを左右方向に往復移動させる駆動機構、
d)前記ワークテーブルを複合面取り加工装置の正面側から見る方向であって、かつ、右側方向より左側方向へ向かって、
e)円筒状インゴットブロックのローディング/アンローディングステージ、
f)前記ローディング/アンローディングステージの背後に設けた前記クランプ機構の待機位置ステージ、
g)前記クランプ機構のワーク支持軸を挟んで一対の回転切断刃をその回転切断刃直径面が相対向するように前記案内レールに対し前後に設けられたワーク(円筒状インゴットブロック)の側面剥ぎスライシングステージ、
および、
h)前記側面剥ぎスライシングステージに位置する前記回転切断刃の外周縁ダイヤモンド刃先より内側であって、前記円筒状インゴットブロック側面剥ぎ開始側位置にあって、切断される前記円筒状シリコンインゴットブロックの上側の位置に加圧冷却液供給パッド一対を前記回転切断刃を挟んで前面および後面に設け、ポンプにより供給される加圧液体の供給管を2分岐し、分岐された供給管のそれぞれの先端を前記一対の加圧冷却液供給パッドの液体貯め空間に望ませた回転切断刃横揺れ自己補償機構、
を設けたことを特徴とする円筒状インゴットブロックの四側面剥ぎ切断装置。
【請求項2】
請求項1記載の四側面剥ぎ切断装置を用いて円柱状ワークを挟持し、このワークを、下記の工程を経て、四角柱状ワークに切断加工する方法。
(1)ローディング/アンローディングステージに在るクランプ機構の主軸台と心押台間に搬入し、ついで、前記心押台を前進させてワークをクランプ機構により挟持する。
(2)回転する一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(3)ついで、円柱状ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて180度回転させる。
(4)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円柱状ワーク端に当接するよう直線移動させて円柱状ワーク端下部を挟持させる。
(5)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円柱状ワークの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(6)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円柱状ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて円柱状ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させる。
(7)ついで、2側面が切断された前記ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度回転させる。
(8)回転する前記一対の回転切断刃の方向にクランプ機構を搭載する前記ワークテー
ブルを移動させて前記一対の回転切断刃による前記ワークの残った前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(9)ついで、前記ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて180度回転させる。
(10)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が前記ワーク端に当接するよう直線移動させてワーク端下部を挟持させる。
(11)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による前記ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、円柱状ワークの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(12)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円柱状ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて円柱状ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させ、四角柱状ワークを得る。
【請求項3】
請求項1記載の四側面剥ぎ切断装置を用いて円柱状ワークを挟持し、このワークを、下記の工程を経て、四角柱状ワークに切断加工する方法。
(1)ローディング/アンローディングステージに在るクランプ機構の主軸台と心押台間に搬入し、ついで、前記心押台を前進させて円柱状ワークをクランプ機構により挟持する。
(2)回転する一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(3)ついで、円柱状ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度回転させる。
(4)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行う。この溝加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(5)ついで、四本の溝が形成された円柱状ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度回転させる。
(6)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が円筒状ワーク端に当接するよう直線移動させて円柱状ワーク端下部を挟持させる。
(7)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による円柱状ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、前記円筒状ワークの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(8)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体がワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて前記ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させる。
(9)ついで、前記ワークのC軸を主軸台のサーボモータを用いて90度または−270度回転させる。
(10)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体がワーク端に当接するよう直線移動させて前記ワーク端下部を挟持させる。
(11)回転する前記一対の回転切断刃の方向に前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを移動させて前記一対の回転切断刃による前記ワークの前後面の高さを1/2を越える長さの溝加工を行い、前記ワークの前後の円弧状側面を切断する。この切断加工の際
、前記回転切断刃の前後面には回転切断刃横揺れ自己補償機構より冷却液が供給される。
(12)前記主軸台の補助サポート機構と心押台の補助サポート機構をそれぞれの補助支持体が前記ワーク端側から遠ざかるよう後退移動させて前記ワーク端下部の挟持を開放し、切断された2側面を落下させて四角柱状ワークを得る。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26584(P2013−26584A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162708(P2011−162708)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】