説明

再構成可能集積回路

【課題】基本の回路要素の基本タイルの間の配線状態を設定する複数のプログラマブル配線スイッチが不揮発性記憶素子で構成される再構成可能集積回路を提供する。
【解決手段】再構成可能集積回路は、複数の入力端子と出力端子を備えるマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する複数の不揮発性記憶素子を備える。入力端子から出力端子への信号電圧の伝搬経路にスイッチ機能を有する電界効果トランジスタ構造の不揮発性記憶素子が配置されており、不揮発性記憶素子が入力端子からの信号電圧を選択的に出力端子に伝搬するマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成するため、不揮発性記憶素子に対して導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶する書き込み動作、結線情報を消去する消去動作と、不揮発性記憶素子の導通状態もしくは非導通状態を確認する読み出し動作を直接行う制御回路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路により構成される再構成可能集積回路に関し、特に、基本の回路要素の基本タイルの間の配線状態を設定する複数のプログラマブル配線スイッチが不揮発性記憶素子で構成される再構成可能集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
自在に回路構成を変更できるFPGA(Filed Programmable Gate Array)に代表される再構成可能集積回路は、デバイスに内蔵された記憶素子に回路構成情報を記憶することによって、ルーティング配線の結線状態やロジックブロックにおける論理機能、ルーティング配線とロジックブロックの相互接続状態を自由かつ柔軟に変更することが可能なデバイスである。ユーザは、デバイス内部の記憶素子に外部から回路構成情報を書き込むことによって、所望の規模、所望の機能を有する論理回路を構成することができる。
【0003】
再構成可能集積回路における柔軟な再構成機能を実現するため、再構成可能集積回路においては、複数の基本理回路ブロックおよび当該基本回路ブロックの間の結線状態を制御する複数の配線スイッチブロックに複数のプログラマブル配線スイッチが実装される。
【0004】
プログラマブル配線スイッチは、スイッチ機能の電界効果トランジスタ(スイッチFET)と、スイッチFETの導通状態もしくは非導通状態を記憶するための記憶素子から構成されている。
【0005】
ルーティング配線同士もしくはルーティング配線とロジックブロックとの配線を、プログラマブル配線スイッチを介して接続することによって、ルーティング配線同士もしくはルーティング配線とロジックブロックの接続もしくは非接続を、プログラマブル配線スイッチに内蔵される記憶素子の記憶状態で決定することができる。
【0006】
プログラマブル配線スイッチは、複数の入力端子と1つの出力端子を有し、この複数の入力への信号電圧を選択的に出力することが可能なマルチプレクサ回路を構成する複数のスイッチFETと、このマルチプレクサ回路を構成するスイッチFETの導通状態もしくは非導通状態を記憶するための複数の記憶素子とを有する。この記憶素子としてはSRAM(Static Random Acces Memory)が用いられる。
【0007】
このようなプログラマブル配線スイッチについては、FPGAのコンフィギャレーション情報の盗聴防止や、プログラマブル配線スイッチ、特に記憶素子の消費電力低減を目的として、特許文献1,2,3,4,5,6に示されるように、情報記憶素子としては、不揮発性記憶素子を用いたプログラマブル配線スイッチが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1または特許文献2に記載の不揮発性記憶素子が設けられているプログラマブル配線スイッチでは、スイッチFETと、電子をトンネリングする機能かつフローティングゲート蓄積電荷量を確認する機能を有する素子が、フローティングゲートを共有し、2つのFETが一つの基本素子を構成しているものが用いられる。
【0009】
また、特許文献3,特許文献4,特許文献5,または特許文献6に記載の不揮発性記憶素子が設けられているプログラマブル配線スイッチでは、スイッチFETと、電子をトンネリングする機能を有する素子と、フローティングゲート蓄積電荷量を確認する機能を有する素子が、フローティングゲートを共有し、3つのFETが一つの基本素子を構成しているものが用いられる。
【特許文献1】米国特許第5838040号明細書
【特許文献2】米国特許第5633518号明細書
【特許文献3】米国特許第5773862号明細書
【特許文献4】米国特許第5894148号明細書
【特許文献5】米国特許第5764096号明細書
【特許文献6】米国特許第6252273号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1または特許文献2に記載の不揮発性記憶素子が設けられているプログラマブル配線スイッチにおいては、2つのFETが一つの基本素子を構成しているので、スイッチ面積が増加するという問題点がある。
【0011】
また、特許文献3,特許文献4,特許文献5,または特許文献6に記載の不揮発性記憶素子が設けられているプログラマブル配線スイッチにおいては、3つのFETが一つの基本素子を構成しているので、スイッチ面積が増加するという問題点がある。
【0012】
さらに、特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献5,特許文献6に記載されている不揮発性記憶素子を有するプログラマブル配線スイッチは、マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチに対応していないという問題点がある。マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチは、FPGAで現在主流となっている。
【0013】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、基本の回路要素の基本タイルの間の配線状態を設定する複数のプログラマブル配線スイッチが不揮発性記憶素子で構成される再構成可能集積回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような目的を達成するため、本発明による再構成可能集積回路は、基本的な構成として、複数の入力端子と出力端子を備えるマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する複数の不揮発性記憶素子を備えた再構成可能集積回路であって、前記入力端子から前記出力端子への信号電圧の伝搬経路にスイッチ機能を有する電界効果トランジスタ構造の不揮発性記憶素子が配置されており、前記不揮発性記憶素子が前記入力端子からの信号電圧を選択的に出力端子に伝搬するマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成し、前記不揮発性記憶素子に対して導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶するための制御信号線を備える。
【0015】
本発明の再構成可能集積回路においては、マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する複数段の不揮発性記憶素子に対して、導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶する書き込み動作、結線情報を消去する消去動作と、不揮発性記憶素子の導通状態もしくは非導通状態を確認する読み出し動作を直接行う制御回路を備える。
【0016】
また、本発明による再構成可能集積回路は、一つの態様として、基本の回路要素である基本タイルの複数個がアレイ状に配置された構造であり、前記基本タイルの間を結線するルーティング配線、前記ルーティング配線の間を結線するスイッチマトリックス、前記スイッチマトリックスに接続された機能ブロックから前記基本タイルが構成されている再構成可能集積回路において、前記スイッチマトリックスにスイッチ機能を有する複数段の電界効果トランジスタ構造の不揮発性記憶素子から構成されるマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを備え、前記マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する各段の不揮発性記憶素子に対して導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶する書き込み動作、前記結線情報を読み出す確認読み出し動作、および前記結線情報を消去する消去動作のための制御信号線および制御回路を備える。
【0017】
また、本発明による再構成可能集積回路は、別の態様として、基本の回路要素である基本タイルの複数個がアレイ状に配置された構造であり、前記基本タイルの間を結線するルーティング配線、前記ルーティング配線の間を結線するスイッチマトリックス、前記スイッチマトリックスに接続された機能ブロックから前記基本タイルが構成されている再構成可能集積回路において、前記機能ブロックにスイッチ機能を有する複数段の電界効果トランジスタ構造の不揮発性記憶素子から構成されるマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを備え、前記マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子に対して導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶する書き込み動作、前記結線情報を読み出す確認読み出し動作、および前記結線情報を消去する消去動作のための制御信号線および制御回路を備える。
【0018】
この場合に、本発明の再構成可能集積回路において、消去動作を行う場合には、プログラマブル配線スイッチを構成するすべての不揮発性記憶素子を選択し、不揮発性記憶素子に対して一括して消去動作を行う。
【発明の効果】
【0019】
従来の不揮発性記憶素子を備えたプログラマブル配線スイッチが、スイッチFET、確認読みし用FETと、書き込み動作、消去動作用デバイスの3種類、もしくは、スイッチFETと書き込み動作、消去動作かつ確認読み出し用FETの2種類のFETが必要であったのに対して、本発明によるプログラマブル配線スイッチでは、スイッチFET、書き込み動作、消去動作、確認読み出し動作のすべての機能を一つの電界効果トランジスタ構造の不揮発性記憶素子で行うことができるので、プログラマブル配線スイッチの面積を小さくすることができる。
【0020】
本発明によるマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子を備えた再構成可能集積回路は、プログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子に対して直接的に消去動作、書き込み動作、確認読み出し動作を行うことが可能であり、それと同時に、不揮発性記憶素子は、プログラマブル配線スイッチとしての機能を有しているので、従来の不揮発性記憶装置を有する再構成可能集積回路と比べて専有面積を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施する一形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明による再構成可能集積回路を構成する基本の回路要素である基本タイルの構造を説明する図である。基本タイル100は、機能ブロック101、スイッチマトリックス102、ルーティング配線103、およびプログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子のための制御信号線105から構成される。機能ブロック101は、論理機能を外部から書き換え可能なロジックブロックを用いたロジックブロックまたはI/Oブロックとして構成される。プログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子はスイッチマトリックス102に内蔵されるが、機能ブロック101の一部にプログラマブル配線スイッチが内蔵されるような構成とされても良い。
【0022】
スイッチマトリックス102には、複数のプログラマブル配線スイッチが内蔵される。機能ブロック101とスイッチマトリックス102とは、図示されていないが配線で相互に接続されている。スイッチマトリックス102の内部のプログラマブル配線スイッチの導通状態もしくは非導通状態により、電圧信号をルーティング配線103の間で伝搬させたり、ルーティング配線103から機能ブロック101へ伝搬させたり、機能ブロック101で処理した電圧信号をルーティング配線103へ伝搬させたりする。
【0023】
スイッチマトリックス102および機能ブロック101に内蔵されているプログラマブル配線スイッチを構成する複数の不揮発性記憶素子は、この不揮発性記憶素子の導通状態もしくは非導通状態を設定するため、制御信号線105によって書き込み、消去、確認読み出し動作が行われる。
【0024】
図2は、本発明による再構成可能集積回路の全体の構成を説明する図である。本発明の再構成可能集積回路は、基本タイル100をアレイ状に配置した構造である。不揮発性記憶素子を制御するための制御信号線105は、制御回路104に接続される。
【0025】
制御回路104は、プログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子の導通状態もしくは非導通状態を設定するための書き込み回路、消去回路、確認読み出し回路を備えている。制御回路104は、典型的には、従来から公知の不揮発性記憶装置を構成する不揮発性記憶素子に対する書き込みおよび読み出しを制御する制御回路を用いる。このような制御回路の構成は公知であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0026】
制御回路104は、再構成可能集積回路の全体の不揮発性記憶素子を制御するように構成される。または、所定の数の基本タイルの区画に対して、複数の不揮発性記憶素子の集合を形成し、その複数の不揮発性記憶素子の集合に対して、その不揮発性記憶素子の集合のそれぞれに対して制御回路を設け、それぞれの集合を個別に制御するように構成されても良い。
【0027】
図3は、本発明の再構成可能集積回路のマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチの構成を説明する図であり、図4は、本発明の再構成可能集積回路で用いられるプログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子のドレイン電流−制御ゲート電圧特性を説明する図である。これらの図を参照して説明する。
【0028】
図3に示すように、プログラマブル配線スイッチ217は、複数の不揮発性記憶素子216がマルチプレクサ型のスイッチング回路を構成するように配置されたスイッチ構造となっている。プログラマブル配線スイッチを構成する個々の不揮発性記憶素子216としては、フラッシュメモリセルタイプの不揮発性記憶素子を用いる。このフラッシュメモリセルタイプの不揮発性記憶素子は、フローティングゲート構造を有しており、フローティングゲートに対して、もしくはフローティングゲートから電子をトンネリングすることにより、図4に示すように、フローティングゲートに蓄積された電荷量に対応した正のしきい値電圧+Vtと負のしきい値電圧−Vtの状態となって、導通状態もしくは非導通状態が制御されるものである。このような特性については、フラッシュメモリセルタイプの不揮発性記憶素子として周知である。
【0029】
ここでのマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチ217を構成する不揮発性記憶素子216は、正のしきい値電圧と負のしきい値電圧を、制御端子によって選択的に書き込み可能である不揮発性記憶素子であれば、いずれのタイプのトランジスタ構造でも利用できる。
【0030】
マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチ217は、複数の信号入力端子200−207と、1つの信号出力端子215と、複数の不揮発性記憶素子216と、複数の不揮発性記憶素子216の導通状態または非導通状態を制御するための制御信号を入力する制御端子208−214とを有しており、複数の不揮発性記憶素子216が入力端子から出力端子の方向に多段に接続された構造となっているスイッチである。
【0031】
プログラマブル配線スイッチ217では、複数の信号入力端子200−207に入力される電圧信号の1つが選択されて1つの信号出力端子215に出力される信号の伝搬経路をスイッチング機能により形成する。この選択される信号の伝搬経路は、各スイッチ機能の要素の不揮発性記憶素子216に記憶される回路情報により設定される。
【0032】
プログラマブル配線スイッチ217においては、信号入力端子200−207から信号出力端子215への信号の伝搬経路にスイッチ機能の不揮発性記憶素子216を複数段の二分木構造で配置する。各段において、二つの制御端子(208−209,210−211,212−213)を設け、一つの制御端子に、各段のそれぞれの子の一方の不揮発性記憶素子216の制御ゲートを共通に接続する。残りの不揮発性記憶素子216の制御ゲートを共通としてもう一方の制御端子に接続する。
【0033】
また、すべての不揮発性記憶素子216の基板領域(しきい値制御端子)は制御端子214に共通に接続される。不揮発性記憶素子216の制御ゲートに接続される制御端子208−213に適切な制御信号を入力することにより、信号経路に配置した不揮発性記憶素子の導通状態もしくは非導通状態が設定され、信号入力端子200−207からのいずれかの入力信号が、選択的に信号出力端子215へ出力されるように配線経路が設定される。この配線経路の設定は、各不揮発性記憶素子216に記憶された記憶情報により設定される。
【0034】
次に、具体的な不揮発性記憶素子216に配線経路を設定する記憶情報を記憶する動作について、消去動作、書き込み動作、確認読み出し動作、プログラマブル配線動作の順に説明する。まず、消去動作を行い、消去動作を行ってから書き込み動作を行い、書き込まれた内容は確認読み出し動作により読み出しする。
【0035】
消去動作について説明する。消去動作では、信号入力端子200−207と信号出力端子215をフローティングとし、制御端子208−213は0Vとする。制御端子214に正の高電圧である消去電圧+Veraを印加することよって、すべての不揮発性記憶素子216のフローティングゲートから基板へ電子がトンネルし、すべての不揮発性記憶素子216のしきい値電圧は負のしきい値電圧−Vtとなる。これにより、消去動作が完了する。
【0036】
次に、書き込み動作について説明する。書き込み動作は、消去動作が行われた後に行われる。書き込み動作は、二分木構造を構成している不揮発性記憶素子216の各段で順次に行われる。各段はそれぞれ二つの制御端子を設けているので、各段の各制御端子に接続されている複数の不揮発性記憶素子216ごとに書き込み動作を行う。ある段において、一方の制御端子(208または209)に接続される複数の不揮発性記憶素子216に、しきい値電圧を負の電圧−Vtとして書き込んだ場合、もう一方の制御端子(209または208)に接続する複数の不揮発性記憶素子216には、しきい値電圧を正のしきい値電圧+Vtとなるように書き込む。この動作を、信号入力端子200−207に近い側の段から出力信号端子215の方向へ順番に行う。
【0037】
具体的に説明する。信号入力端子200−207はフローティングとする。制御端子214は0Vとする。書き込み選択段の書き込み対象となっている選択された不揮発性記憶素子216の制御ゲートが共通して接続する制御端子(208または209)は、正の高電圧である書き込み電圧+Vpgmを印加し、書き込み選択段の書き込み対象となっていない非選択の不揮発性記憶素子216の制御ゲートが共通して接続する制御端子(209または208)は0Vを印加する。書き込み非選択段のすべての不揮発性記憶素子216の制御ゲートが共通して接続する制御端子(210−213)については正の電圧+Vpassを印加する。
【0038】
書き込み選択段の書き込み対象となっている選択された不揮発性記憶素子216に正のしきい値電圧+Vtを書き込む場合、信号出力端子215を0Vとする。制御端子(210−213)は正の電圧+Vpassを印加しているので、信号出力端子215に印加した0Vが書き込み非選択段の不揮発性記憶素子216を経由して書き込み選択段の書き込み選択不揮発性記憶素子216まで転送される。これにより、書き込み選択段の書き込み対象となっている選択された不揮発性記憶素子216の基板からフローティングゲートへ電子がトンネルし、その結果、書き込み選択段の書き込み対象となっている選択された不揮発性記憶素子216のしきい値電圧は正の電圧+Vtとなる。
【0039】
書き込み選択段の書き込み対象となっている選択された不揮発性記憶素子216に負のしきい値電圧−Vtを書き込む場合には、信号出力端子215を書き込み禁止電圧+Vihtを印加する。この信号出力端子215に印加した+Vihtは、書き込み非選択段の不揮発性記憶素子216を経由して書き込み選択段の書き込み選択不揮発性記憶素子216まで転送される。これにより、書き込み選択段の書き込み対象となっている選択された不揮発性記憶素子216の基板からフローティングゲートへの電子のトンネルを抑制し、その結果、書き込み選択段の書き込み対象となっている選択された不揮発性記憶素子216のしきい値電圧は負の電圧−Vtを維持する。
【0040】
この場合において、書き込み非選択段のすべての不揮発性記憶素子216の制御ゲートに共通して接続する制御端子(210−213)に印加する正の電圧+Vpassは、信号出力端子215に印加する書き込み禁止電圧+Vihtを、書き込み選択段の書き込み対象となっている選択された不揮発性記憶素子216に対して、電圧が減衰することなく転送できるだけの十分な電圧値であり、かつ正のしきい値電圧+Vtを有する不揮発性記憶素子216が十分に導通状態となる電圧である。
【0041】
次に、確認読み出し動作について説明する。確認読み出し動作の場合には、読み出し選択段のすべての不揮発性記憶素子216に接続されている二つの制御端子を0Vとする。制御端子214は0Vとする。読み出し非選択段のすべての不揮発性記憶素子216の制御ゲートが共通して接続する制御端子は正の電圧+Vpassを印加する。信号出力端子215には読み出し電圧+Vreadを印加する。読み出し選択段の読み出し対象となっている選択された不揮発性記憶素子216が電気的に導通している信号入力端子の一つを0Vとし、それ以外の信号入力端子をフローティングとする。
【0042】
この状態で、読み出し選択段の読み出し対象となっている選択された不揮発性記憶素子216の導通状態、もしくは非導通状態を判断し、読み出し選択段の読み出し対象となっている選択された不揮発性記憶素子216に所望のしきい値電圧(+Vtまたは−Vt)が書き込まれたかどうかを、プログラマブル配線スイッチ217を構成するすべての不揮発性記憶素子216に対して確認する。読み出し選択段の読み出し対象となっている選択された不揮発性記憶素子216に電気的に導通する信号入力端子が複数ある場合は、そのすべてを0Vとしてもよいし、そのいずれか一つだけを0Vとしてもよい。
【0043】
次に、プログラマブル配線スイッチの動作について説明する。プログラマブル配線スイッチは、当該プログラマブル配線スイッチを構成している不揮発性記憶素子に記憶されている記憶状態にしたがって縦方向および横方向のルーティング配線の間で、電気信号を伝搬させる伝搬経路を形成する。動作において、まず、制御端子208−214を0Vとする。この状態で、入力信号端子200−207から信号を入力する。二分木構造のプログラマブル配線スイッチ217において、ある段においては一方の不揮発性記憶素子216は正のしきい値電圧+Vtを有し、もう一方の不揮発性記憶素子216は負のしきい値電圧を有するので、どちらか一方が導通状態であり、もう一方は非導通状態となっている。これによって、信号入力端子200−207のいずれか一つからの電圧信号が信号出力端子215へ伝搬する信号の伝搬経路が形成され、入力信号が信号出力端子215へ出力される。
【0044】
図5は、本発明の再構成可能集積回路におけるプログラマブル配線スイッチ217のスイッチマトリックス102への適用例を説明する図である。
【0045】
図5を参照すると、ルーティング配線326とルーティング配線327と間で信号伝搬の機能を提供するスイッチマトリックス102は、図3により説明したようなマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチ300−303が設けられ、これらのプログラマブル配線スイッチ300−303を制御するための制御信号線316−323が設けられている。この制御に関係して、スイッチ電界効果トランジスタ304−307,312−315、マルチプレクサ回路308−310が設けられている。
【0046】
プログラマブル配線スイッチ300およびプログラマブル配線スイッチ301の制御端子は、制御信号線316に共通に接続されると共に、プログラマブル配線スイッチ300およびプログラマブル配線スイッチ301の信号入力端子は、制御信号線322により制御されるルーティング配線327からの信号線が共通にスイッチ電界効果トランジスタ312,313を介して接続されている。
【0047】
また、プログラマブル配線スイッチ302およびプログラマブル配線スイッチ303の制御端子は、制御信号線317に共通に接続されると共に、プログラマブル配線スイッチ302およびプログラマブル配線スイッチ303の信号入力端子は、制御信号線323により制御されるルーティング配線326からの信号線が共通にスイッチ電界効果トランジスタ314,315を介して接続されている。
【0048】
プログラマブル配線スイッチ300−303の信号入力端子にはそれぞれスイッチ電界効果トランジスタ(以下、スイッチFETと略称する)312−315が接続される。スイッチFET312と313のそれぞれのゲートは制御信号線322に共通に接続され、スイッチFET314と315のそれぞれのゲートは制御信号線323に共通に接続される。
【0049】
プログラマブル配線スイッチ300およびプログラマブル配線スイッチ302の信号出力端子にはスイッチFET304と306がそれぞれ接続され、これらを介して制御信号線324に共通に接続される。プログラマブル配線スイッチ301およびプログラマブル配線スイッチ303の信号出力端子にはスイッチFET305と307がそれぞれ接続され、これらを介して制御信号線325に共通に接続される。
【0050】
プログラマブル配線スイッチ300およびプログラマブル配線スイッチ302の信号出力端子は、マルチプレクサ回路308と310の入力端子の一方に、それぞれ接続される。プログラマブル配線スイッチ301およびプログラマブル配線スイッチ303の信号出力端子は、マルチプレクサ回路309と311の入力端子の一方に、それぞれ接続される。マルチプレクサ回路308−311の一方の入力端子は0Vに接地される。マルチプレクサ回路308と309の制御端子は制御信号線320に共通に接続され、制御信号線320からの信号によって、ルーティング配線326にプログラマブル配線スイッチ300およびプログラマブル配線スイッチ301からの出力信号か0Vを選択的に出力する。
【0051】
また、マルチプレクサ回路310と311は制御信号線321に共通に接続され、制御信号線321からの信号によって、ルーティング配線327にプログラマブル配線スイッチ302およびプログラマブル配線スイッチ303からの出力信号か0Vを選択的に出力する。
【0052】
制御信号線316−325は、図2において説明した制御回路104と同様な制御回路に接続されており、消去動作、書き込み動作、確認読み出し動作を行うために、プログラマブル配線スイッチ動作ごとに適切な信号をプログラマブル配線スイッチに伝搬する。
【0053】
次に、消去動作、書き込み動作、確認読み出し動作、プログラマブル配線スイッチ動作について説明する。
【0054】
まず、消去動作について説明する。消去動作において、プログラマブル配線スイッチ300−303を構成する不揮発性記憶素子の制御ゲートに接続される制御端子316と317には0Vを印加する。制御端子322と323を0Vとすることにより、スイッチFET312−315を非導通状態とし、その結果、プログラマブル配線スイッチ300−303の信号入力端子をフローティングとする。
【0055】
制御信号線318と319には0Vを印加し、制御信号線320と321には、マルチプレクサ回路308−311が0Vを出力するように選択する信号を印加する。これにより、プログラマブル配線スイッチ300−303の信号出力端子をフローティングとする。この状態でプログラマブル配線スイッチ300−303を構成する不揮発性記憶素子の基板に接続されている制御信号線(図示せず)に正の高電圧である消去電圧+Veraを印加する。これにより、不揮発性記憶素子のフローティングゲートから基板へ電子をトンネルする。
【0056】
消去動作は、消去動作用制御信号線を共通に接続するプログラマブル配線スイッチごとに行ってもよいし、チップ全体で一括して行ってもよい。
【0057】
次に書き込み動作について説明する。書き込みは、制御信号線316または317に共通に接続されている複数のプログラマブル配線スイッチ300−303ごとに行う。プログラマブル配線スイッチ300−303は、図3により説明したようなマルチプレクサ型のスイッチを構成するように不揮発性記憶素子が多段に配置されているので、各段の不揮発性記憶素子ごとに行う。
【0058】
書き込み動作では、制御信号線322と323に0Vを印加し、スイッチFET312−315を非導通状態とすることにより、プログラマブル配線スイッチ300−303の信号入力端子をフローティングとする。
【0059】
制御信号線320と321には、マルチプレクサ回路308−311が0Vを出力するように選択する信号を印加する。これによって、ルーティング配線326と327はすべて0Vとなる。書き込み対象となっている選択されたプログラマブル配線スイッチが、共通に接続される制御信号線、例えば制御信号線316には、図3で説明したように、それぞれに書き込み電圧+Vpgmおよび+Vpassの電圧を印加すると共に、スイッチFET304と305を導通状態とするような信号電圧を制御信号線318に印加し、制御信号線324と325には0Vまたは書き込み禁止電圧+Vihtを印加することにより、プログラマブル配線スイッチ300−301の選択された不揮発性記憶素子に書き込み動作を行う。
【0060】
書き込み対象となっていない非選択のプログラマブル配線スイッチ302−303が共通に接続される制御信号線、例えば制御信号線317には0Vを印加すると共に、スイッチFET306と307が非導通状態となるように制御信号線319に0Vを印加することにより、制御信号線324と325に印加した0Vもしくは書き込み禁止電圧+Vihtが、書き込み対象となっていない非選択のプログラマブル配線スイッチ302−303の信号出力端子への伝搬を遮断し、書き込み対象となっていない非選択のプログラマブル配線スイッチ302−303の誤書き込みを防止する。
【0061】
次に、確認読み出し動作について説明する。読み出し動作においては、書き込み動作と同様に、制御信号線316および制御線317のそれぞれで共通に接続されている複数のプログラマブル配線スイッチごとに行う。読み出し動作において、制御信号線320と321には、マルチプレクサ回路308−311が0Vを出力するように選択する信号を印加する。これによって、ルーティング配線326と327はすべて0Vとなる。
【0062】
確認読み出しのために選択されたプログラマブル配線スイッチに共通に接続される制御信号線、例えば、制御信号線316には、図3で説明したように、電圧+Vpassまたは0Vの電圧を印加すると共に、スイッチFET304と305を導通状態とするような信号電圧を制御信号線318に印加し、制御信号線324と325に読み出し電圧+Vreadを印加する。
【0063】
確認読み出しのために選択されたプログラマブル配線スイッチ内の、読み出しのために選択された不揮発性記憶素子に対応した読み出し対象となっている選択されたプログラマブル配線スイッチの信号入力端子を0Vにするため、スイッチFET312や313を順次導通状態となるように制御信号線322に適切な信号を入力する。読み出し対象となっていない非選択のプログラマブル配線スイッチが共通に接続される制御信号線、例えば、制御信号線317には0Vを印加すると共に、スイッチFET306と307が非導通状態となるように制御信号線319に0Vを印加する。これにより、制御信号線324と325には、印加した読み出し電圧+Vreadga,読み出し対象となっていない非選択のプログラマブル配線スイッチ302と303の信号出力端子への伝搬を遮断し、読み出し非選択プログラマブル配線スイッチ302と303の誤読み出しを防止する。
【0064】
次に、プログラマブル配線スイッチの動作について説明する。プログラマブル配線スイッチを動作状態とするには、制御信号線316−319は0Vを印加する。プログラマブル配線スイッチ300−303内の不揮発性記憶素子に書き込んだ正のしきい値電圧+Vtと負のしきい値電圧−Vtに従って、複数の信号入力端子の一つから信号出力端子への信号伝搬経路が設定されるとともに、スイッチFET304−307を非導通状態とする。制御信号線324と325は0Vとする。
【0065】
制御信号線322と323は、スイッチFET312−315が導通状態となるような電圧を印加し、すべてのプログラマブル配線スイッチの信号入力端子をルーティング配線326と327に接続する。制御信号線320と321には、マルチプレクサ回路308−311が選択的に、プログラマブル配線スイッチ300−303からの出力信号を出力するような制御信号を入力する。
【0066】
本発明の再構成可能集積回路において、機能ブロック101の内部のプログラマブル配線スイッチは、上述したようなスイッチマトリックスにおけるプログラマブル配線スイッチと同様の回路構成であるので、スイッチマトリックス102の場合と同様に動作させることにより、消去動作、書き込み動作、確認読み出し動作、プログラマブル配線スイッチ動作を機能ブロック101内部でも行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による再構成可能集積回路を構成する基本の回路要素である基本タイルの構造を説明する図である。
【図2】本発明による再構成可能集積回路の全体の構成を説明する図である。
【図3】本発明の再構成可能集積回路のマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチの構成を説明する図である。
【図4】本発明の再構成可能集積回路で用いられるプログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子のドレイン電流−制御ゲート電圧特性を説明する図である。
【図5】本発明の再構成可能集積回路におけるプログラマブル配線スイッチのスイッチマトリックスへの適用例を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
100 再構成可能集積回路の基本構造
101 機能ブロック
102 スイッチマトリックス
103 ルーティング配線
104 制御回路
105 制御信号線
200−207 信号入力端子
208−214 制御信号線
215 信号出力端子
216 不揮発性記憶素子
217 プログラマブル配線スイッチ
300−303 プログラマブル配線スイッチ
304−307 スイッチFET
308−311 マルチプレクサ回路
312−315 スイッチFET
316−325 制御信号線
326、327 ルーティング配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力端子と出力端子を備えるマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する複数の不揮発性記憶素子を備えた再構成可能集積回路であって、
前記入力端子から前記出力端子への信号電圧の伝搬経路にスイッチ機能を有する電界効果トランジスタ構造の不揮発性記憶素子が配置されて、前記不揮発性記憶素子が前記入力端子からの信号電圧を選択的に出力端子に伝搬するマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成し、前記不揮発性記憶素子に対して導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶するための制御信号線を備える
ことを特徴とする再構成可能集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の再構成可能集積回路において、
マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する複数段の不揮発性記憶素子に対して、導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶する書き込み動作、結線情報を消去する消去動作と、不揮発性記憶素子の導通状態もしくは非導通状態を確認する読み出し動作を直接行う制御回路を備える
ことを特徴とする再構成可能集積回路。
【請求項3】
基本の回路要素である基本タイルの複数個がアレイ状に配置された構造であり、前記基本タイルの間を結線するルーティング配線、前記ルーティング配線の間を結線するスイッチマトリックス、前記スイッチマトリックスに接続された機能ブロックから前記基本タイルが構成されている再構成可能集積回路において、
前記スイッチマトリックスにスイッチ機能を有する複数段の電界効果トランジスタ構造の不揮発性記憶素子から構成されるマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを備え、
前記マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する各段の不揮発性記憶素子に対して導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶する書き込み動作、前記結線情報を読み出す確認読み出し動作、および前記結線情報を消去する消去動作のための制御信号線および制御回路を備える
ことを特徴とする再構成可能集積回路。
【請求項4】
基本の回路要素である基本タイルの複数個がアレイ状に配置された構造であり、前記基本タイルの間を結線するルーティング配線、前記ルーティング配線の間を結線するスイッチマトリックス、前記スイッチマトリックスに接続された機能ブロックから前記基本タイルが構成されている再構成可能集積回路において、
前記機能ブロックにスイッチ機能を有する複数段の電界効果トランジスタ構造の不揮発性記憶素子から構成されるマルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを備え、
前記マルチプレクサ型のプログラマブル配線スイッチを構成する不揮発性記憶素子に対して導通状態もしくは非導通状態とする結線情報を記憶する書き込み動作、前記結線情報を読み出す確認読み出し動作、および前記結線情報を消去する消去動作のための制御信号線および制御回路を備える
ことを特徴とする再構成可能集積回路。
【請求項5】
請求項2乃至4に記載の再構成可能集積回路において、
消去動作を行う場合には、プログラマブル配線スイッチを構成するすべての不揮発性記憶素子を選択し、不揮発性記憶素子に対して一括して消去動作を行う
ことを特徴とする再構成可能集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−109683(P2010−109683A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279573(P2008−279573)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】