説明

冷却システム

【課題】冷媒の圧力損失を抑えることができ、循環ポンプの動作効率を向上させることができるとともに、循環ポンプの長寿命化を図ることができる冷却システムを提供する。
【解決手段】冷却システムは、熱交換器と、循環ポンプと、電気機器及び循環ポンプが配置された第1の冷媒流路と、冷媒の循環流路を形成するように第1の冷媒流路に接続され、かつ熱交換器が配置された第2の冷媒流路と、第2の冷媒流路に対して並列に第1の冷媒流路に接続され、かつ充電器が配置されたバイパス流路と、第1の冷媒流路とバイパス流路との接続箇所に設けられ、電気機器の動作時に、第1の冷媒流路及び第2の冷媒流路による冷媒の循環流路を形成してバイパス流路での冷媒の流動を制限するための弁とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池からの電力によって駆動する電気機器を冷却するための冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の電気自動車の冷却システムを示す構成図である。図8において、従来の冷却システムは、ラジエータ(熱交換器)101、循環ポンプ102、第1の冷却液流路103A、第2の冷却液流路103B、バイパス流路104、及び弁105を有している。
【0003】
ラジエータ101は、第2の冷却液流路103Bに配置されている。また、ラジエータ101は、冷却液がもつ熱を外部へ放散して冷却液を冷却する。循環ポンプ102は、第1の冷却液流路103Aに配置されている。また、循環ポンプ102は、冷却液を流動させるための圧力を冷却液に加える。
【0004】
第1の冷却液流路103A及び第2の冷却液流路103Bは、互いに接続され、ラジエータ101と循環ポンプ102との間での冷却液の循環流路を形成している。バイパス流路104は、ラジエータ101をバイパスするように、第2の冷却液流路103Bに対して並列に第1の冷却液流路103Aに接続されている。
【0005】
弁105は、第1の冷却液流路103Aとバイパス流路104との接続箇所に設けられている。また、弁105は、循環ポンプ102から吐出され第1の冷却液流路103Aを通る冷却液を、ラジエータ101に流すか、バイパス流路104に流すかを切り換える。弁105の切り替え動作は、システム制御部150によって制御される。
【0006】
第1の冷却液流路103Aには、充電器106、インバータ107、及び車両走行用のモータ(電気機器)108が配置されている。充電器106は、外部から受けた交流電力を直流電力に変換して電池(図示せず)を充電する。インバータ107は、電池から受けた直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ108に供給する。
【0007】
システム制御部150は、冷却液の温度に応じて、弁105の切り替え動作を制御して、冷却液をラジエータ101に流すかバイパス104に流すかを切り換える。具体的に、冷却液の温度が高い場合には、弁105によって、冷却液がラジエータ101側へ導かれる。そして、ラジエータ101によって、冷却液の熱が放散される。他方、冷却液の温度が低い場合には、弁105によって、冷却液がラジエータ101を通らないように流路が切り換えられて、ラジエータ101による圧力損失が冷却液に生じないように、冷却液がバイパス流路104側へ導かれる。
【0008】
ここで、電気自動車の電池の充電は、停車中に行われる。この充電時には、充電器106が動作し、モータ108及びインバータ107は動作しない。また、この充電時には、循環ポンプ102が第2の冷却液流路103Bに冷却液を送ることによって、充電器106が冷却される。
【0009】
次に、図9は、他の従来の電気自動車の冷却システムを示す構成図である。図9に示す冷却システムは、図8に示す従来の冷却システムの第1の冷却液流路103Aに、冷却液を加熱するヒータ109、及び加熱された冷却液を熱源として車室内に暖気を送るためのヒータコア110が追加された構成である。
【0010】
なお、この発明に関連する先行技術としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−120244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図8,9に示すような従来の電気自動車の冷却システムでは、電気自動車の走行時にも充電器106に冷却液が流れる。このように、冷却不要の機器にも冷却液が流れるため、循環ポンプ102の運転負荷が大きくなり、冷却液の圧力損失が大きくなっていた。また、循環ポンプ102の運転負荷が大きいことに伴って、循環ポンプ102の寿命が短くなる等の課題があった。
【0013】
なお、上記のような課題は、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の冷却システムのみならず、電池と、外部から受けた電力によって電池を充電する充電器と、電池の電力で駆動する電気機器とを有する自動車以外の電動システムの冷却システムでも起こっていた。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、冷媒の圧力損失を抑えることができ、循環ポンプの動作効率を向上させることができるとともに、循環ポンプの長寿命化を図ることができる冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の冷却システムは、電池と、外部から受けた電力によって前記電池を充電する充電器と、前記電池の電力により駆動する電気機器とを有する電動システムに設けられるものであって、熱交換器と、循環ポンプと、前記電気機器が配置された第1の冷媒流路と、冷媒の循環流路を形成するように前記第1の冷媒流路に接続され、かつ前記熱交換器が配置された第2の冷媒流路と、前記第2の冷媒流路に対して並列に前記第1の冷媒流路に接続され、かつ前記充電器が配置されたバイパス流路と、前記第1の冷媒流路と前記バイパス流路との接続箇所に設けられ、前記電気機器の動作時に、前記第1の冷媒流路及び前記第2の冷媒流路による冷媒の循環流路を形成して前記バイパス流路での冷媒の流動を制限するための弁とを備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の車両用冷却システムによれば、電気機器の動作時に、弁によって、第1の冷媒流路及び第2の冷媒流路による冷媒の循環流路が形成されて、充電器が配置されたバイパス流路での冷媒の流動が制限されるので、電気機器の動作時に充電器へ冷媒が流入することによる冷媒の圧力損失を抑えることができ、循環ポンプの動作効率を向上させることができるとともに、循環ポンプの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電気自動車の冷却システムの他の例を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態2による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2による電気自動車の冷却システムの他の例を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態4による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態4による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。
【図8】従来の電気自動車の冷却システムを示す構成図である。
【図9】他の従来の電気自動車の冷却システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。なお、図の各流路の矢線は、冷却液(冷媒)の流動方向を示す。
図1において、実施の形態1の冷却システムは、ラジエータ(熱交換器)1、第1の循環ポンプ2A、第2の循環ポンプ2B、第1の冷却液流路(第1の冷媒流路)3A、第2の冷却液流路(第2の冷媒流路)3B、バイパス流路4、及び弁5を有している。
【0019】
ラジエータ1は、第2の冷却液流路3Bに配置されている。また、ラジエータ1は、冷却液がもつ熱を外部へ放散して冷却液を冷却する。第1の循環ポンプ2Aは、第1の冷却液流路3Aに配置されている。第2の循環ポンプ2Bは、バイパス流路4に配置されている。また、第1の循環ポンプ2A及び第2の循環ポンプ2Bは、冷却液を流動させるための圧力を冷却液に加える。
【0020】
第1の冷却液流路3A及び第2の冷却液流路3Bは、互いに接続され、ラジエータ1と第1の循環ポンプ2Aとの間での冷却液の循環流路を形成している。バイパス流路4は、ラジエータ1をバイパスするように、第2の冷却液流路3Bに対して並列に第1の冷却液流路3Aに接続されている。なお、各流路3A,3B,4は、それぞれ配管によって形成されている。
【0021】
弁5は、第1の冷却液流路3Aとバイパス流路4との接続箇所に配置されている。また、弁5は、第1の循環ポンプ2Aから吐出された冷却液をラジエータ1に流すか、第2の循環ポンプ2Bから吐出された冷却液をラジエータ1に流すかを切り換える。第1の循環ポンプ2A及び第2の循環ポンプ2Bの駆動と、弁5の動作とは、システム制御部50によって制御される。
【0022】
バイパス流路4における第2の循環ポンプ2Bの吸入側には、充電器6が配置されている。充電器6は、外部から受けた交流電力を直流電力に変換して電池(図示せず)を充電する。第1の冷却液流路3Aにおける第1の循環ポンプ2Aの吸入側には、インバータ7及びモータ(電気器)8が設けられている。インバータ7は、電池から受けた直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ8に供給する。なお、充電器6、インバータ7及びモータ8は、電動システムを構成している。
【0023】
システム制御部50は、充電器6、インバータ7及びモータ8の動作に応じて、第1の循環ポンプ2A及び第2の循環ポンプ2Bの駆動と、弁5の動作とを制御する。また、システム制御部50は、車両の挙動を統括して制御する電子制御装置(図示せず)に接続されている。さらに、システム制御部50は、電子制御装置から車両の動作状態についての情報を取得する。
【0024】
また、システム制御部50は、各流路3A,3B,4のうちの少なくとも1箇所以上に設けられた温度センサ(図示せず)を介して、冷却液の温度を監視している。さらに、システム制御部50は、充電器6、モータ8及びインバータ7のそれぞれに設けられた温度センサ(図示せず)を介して、充電器6、モータ8及びインバータ7のそれぞれの温度を監視している。なお、システム制御部50は、例えば、CPU、RAM、及びROM等からなるマイクロコンピュータ等によって構成されている。
【0025】
さらに、システム制御部50は、充電器6の動作時には、第2の循環ポンプ2Bを駆動させるとともに、第2の冷却液流路3B及びバイパス流路4による循環流路を弁5に形成させる。また、システム制御部50は、モータ8の動作時には、第1の循環ポンプ2Aを駆動させるとともに、第1の冷却液流路3A及びバイパス流路4による循環流路を弁5に形成させる。
【0026】
次に、動作について説明する。電気自動車の電池の充電は、停車時に行われる。即ち、停車時には、充電器6が動作し、モータ8及びインバータ7は動作しない。これに対応して、システム制御部50は、第2の循環ポンプ2Bを駆動させて、バイパス流路4で冷却液を流動させることによって、充電器6を冷却する。
【0027】
これとともに、システム制御部50は、弁5の動作を制御することによって、第1の冷却液流路3Aから第2の冷却液流路3Bへの冷却液の流入を阻止する。即ち、弁5によって、第2の冷却液流路3Bとバイパス流路4とによる冷却液の循環流路が形成されている。また、この状態において、システム制御部50は、第1の循環ポンプ2Aを駆動停止状態とさせている。これにより、停車時に冷却不要のモータ8及びインバータ7には冷却液が流れないため、モータ8及びインバータ7による冷却液の圧力損失は生じない。
【0028】
次に、電気自動車の走行時には、モータ8及びインバータ7が動作し、充電器6は動作しない。これに対応して、システム制御部50は、第1の循環ポンプ2Aを駆動させて、第1の冷却液流路3Aで冷却液を流動させることによって、モータ8及びインバータ7を冷却する。これとともに、システム制御部50は、弁5の動作を制御することによって、バイパス流路4から第2の冷却液流路3Bへの冷却液の流入を阻止する。
【0029】
即ち、弁5によって、第1の冷却液流路3Aと第2の冷却液流路3Bとによる冷却液の循環流路が形成される。また、この状態において、システム制御部50は、第2の循環ポンプ2Bを駆動停止状態とさせている。これにより、走行時に冷却不要の充電器6には冷却液が流れないため、充電器6による冷却液の圧力損失は生じない。
【0030】
上記のような実施の形態1によれば、モータ8及びインバータ7の動作時に、弁5によって、第1の冷却液流路3A及び第2の冷却液流路3Bによる冷却液の循環流路が形成されて、充電器6が配置されたバイパス流路4での冷却液の流動が制限される。この構成により、モータ8及びインバータ7の動作時に、充電器6へ冷却液が流入することによる冷却液の圧力損失を抑えることができ、各循環ポンプ2A,2Bの動作効率を向上させることができるとともに、各循環ポンプ2A,2Bの長寿命化を図ることができる。
【0031】
また、充電器6の動作時に、弁5によって、第2の冷却液流路3Bとバイパス流路4とによる冷却液の循環流路が形成され、モータ8及びインバータ7への冷却液の流入が制限される。この構成により、充電器6の動作時に、モータ8及びインバータ7へ冷却液が流入することによる冷却液の圧力損失を抑えることができる。従って、弁5によって、充電器6の動作時と、モータ8及びインバータ7の動作時とで、冷却液の流動経路が切り換えられるため、冷却液の圧力損失を車両の状態に対応させて適切に抑えることができる。
【0032】
なお、実施の形態1において、図2に示すように、第1の循環ポンプ2Aを第2の冷却液流路3Bに配置してもよい。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1では、第1の循環ポンプ2A及び第2の循環ポンプ2Bの2つの循環ポンプを用いた例について説明した。これに対して、実施の形態2では、1つの循環ポンプ22を用いた例について説明する。
【0034】
図3は、この発明の実施の形態2による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。図3において、実施の形態2の冷却システムは、実施の形態1における第1の循環ポンプ2Aに代えて、循環ポンプ22を有している。また、実施の形態2の冷却システムは、実施の形態1における第2の循環ポンプ2Bが省略されている。
【0035】
さらに、実施の形態2の冷却システムでは、バイパス流路4における冷却液の流動方向が実施の形態1とは逆方向である。実施の形態2の弁5は、第1の冷却液流路3Aからの冷却液を、第2の冷却液流路3B側とバイパス流路4側とに分流させる。弁5による冷却液の分流の割合は、任意に制御できる。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0036】
次に、動作について説明する。電気自動車の電池の充電は、停車時に行われる。即ち、停車時には、充電器6が動作し、モータ8及びインバータ7は動作しない。これに対応して、システム制御部50は、充電開始時に冷却液の温度が低い(所定の温度未満である)場合には、第1の冷却液流路3Aからの冷却液をラジエータ1に流さず、第1の冷却液流路3Aからの冷却液の全てをバイパス流路4に流すように弁5の動作を制御する。
【0037】
このときに、モータ8及びインバータ7は、動作停止状態であるため、発熱しておらず、モータ8及びインバータ7の温度が低い。また、モータ8及びインバータ7の熱容量が大きい。このため、モータ8及びインバータ7は、充電器6の動作に伴って発生する熱の捨て場所とされる。ここで、システム制御部50は、充電開始時からの時間経過に伴って、冷却液、モータ8及びインバータ7の温度が所定の温度以上に上昇したことを検出すると、冷却液の温度を適正に保つように、ラジエータ1側に分流する冷却液の流量を弁5により調整する。
【0038】
次に、電気自動車の走行時には、モータ8及びインバータ7が動作し、充電器6は動作しない。これに対応して、システム制御部50は、第1の冷却液流路3Aからの冷却液をバイパス流路4に流さず、第1の冷却液流路3Aからの冷却液の全てをラジエータ1に流すように弁5の動作を制御する。このように、第1の冷却液流路3Aと第2の冷却液流路3Bとからなる冷却液の循環流路で冷却液が循環されることにより、モータ8及びインバータ7が冷却される。このときに、動作停止中であり冷却不要の充電器6には冷却液が流れない。このため、充電器6による冷却液の圧力損失は生じない。
【0039】
上記のような実施の形態2によれば、モータ8及びインバータ7の動作時に、弁5によって、第1の冷却液流路3A及び第2の冷却液流路3Bによる冷却液の循環流路が形成されて、充電器6が配置されたバイパス流路4での冷却液の流動が制限される。この構成により、モータ8及びインバータ7の動作時に、充電器6へ冷却液が流入することによる冷却液の圧力損失を抑えることができ、各循環ポンプ22の動作効率を向上させることができるとともに、各循環ポンプ22の長寿命化を図ることができる。
【0040】
また、循環ポンプ22のみを用いて冷却液を循環させているため、実施の形態1の第2の循環ポンプ2Bのような追加部品が不要となることから、実施の形態1に比べて、製造コストを低減させることができる。
【0041】
さらに、充電器6の動作時でかつ冷却液が所定の温度未満である場合には、弁5によって、第2の冷却液流路3B及びバイパス流路4による冷却液の循環流路が形成されて、非動作状態のモータ8及びインバータ7によって、冷却液がもつ熱が放散される。また、充電器6の動作時でかつ冷却液が所定の温度以上である場合には、弁5によって、第2の冷却液流路3B及びバイパス流路4による冷却液の循環流路が形成されるとともに、第1の冷却液流路3Aから第2の冷却液流路3Bへ冷却液が分流され、ラジエータ1によって、冷却液がもつ熱が放散される。この構成により、冷却液の圧力損失を抑えつつ、冷却液の温度上昇を抑えることができる。
【0042】
なお、実施の形態2において、図4に示すように、循環ポンプ22を第2の冷却液流路3Bに配置してもよい。この場合、バイパス流路4における冷却液の流動方向が、図3に示す例の逆向きとなる。つまり、図4に示す例では、充電器6の動作時に、弁5によって、第1の冷却液流路3A及びバイパス流路4による冷却液の循環流路が形成される。また、モータ8及びインバータ7の動作時に、弁5によって、第1の冷却液流路3A及び第2の冷却液流路3Bによる冷却液の循環流路が形成される。
【0043】
実施の形態3.
実施の形態3では、暖房機能を有する冷却システムについて説明する。図5は、この発明の実施の形態3による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。図5において、実施の形態3の冷却システムは、実施の形態2の冷却システムの第1の冷却液流路3Aに、冷却液を加熱するヒータ(冷媒加熱器)9、及び加熱された冷却液を熱源として車室内に暖気を送るためのヒータコア(暖房装置)10が追加された構成である。
【0044】
次に、動作について説明する。電気自動車の電池の充電は、停車時に行われる。即ち、停車時には、充電器6が動作し、モータ8及びインバータ7は動作しない。また、電池の充電中には、車室内に乗員がいないため、ヒータ9は動作しない。これに対応して、システム制御部50は、充電開始時に冷却液の温度が低い(所定の温度未満である)場合には、第1の冷却液流路3Aからの冷却液をラジエータ1に流さずに、第1の冷却液流路3Aからの冷却液の全てをバイパス流路4に流すように弁5の動作を制御する。
【0045】
このときに、モータ8、インバータ7及びヒータ9は、動作停止状態であるため、発熱しておらず、モータ8、インバータ7及びヒータ9の温度が低い。また、モータ8及びインバータ7の熱容量が大きい。このため、モータ8及びインバータ7は、充電器6の動作に伴って発生する熱の捨て場所とされる。ここで、システム制御部50は、充電開始時からの時間経過に伴って、冷却液、モータ8及びインバータ7の温度が所定の温度以上に上昇したことを検出すると、冷却液の温度を適正に保つように、ラジエータ1側に分流する冷却液の流量を弁5により調整する。
【0046】
次に、電気自動車の走行時には、モータ8及びインバータ7が動作し、充電器6は動作しない。また、電気自動車の走行時には、車室内に乗員がいるため暖房する必要がある。電気自動車の走行開始時に冷却液の温度が所定の温度未満である場合には、システム制御部50は、冷却液をラジエータ1に流さずに、バイパス流路4に流すように弁5の動作を制御する。そして、走行時間が経つにつれ冷却液の温度が所定の温度以上に上昇した場合には、システム制御部50は、冷却液をラジエータ1に流すように弁5の動作を制御する。このときに、非動作状態であり冷却不要の充電器6には、冷却液が流れない。このため、充電器6による冷却液の圧力損失は生じない。
【0047】
上記のような実施の形態3によれば、ヒータ9及びヒータコア10を追加した構成であっても、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、バイパス流路4を1つ用いた場合の構成について説明した。これに対して、実施の形態4では、2つの(複数の)バイパス流路を用いた場合の構成について説明する。図6,7は、この発明の実施の形態4による電気自動車の冷却システムを示す構成図である。なお、図6,7に示す各流路のうち破線で示す流路については、第1の弁45A又は第2の弁45Bによって、冷却液の流動が遮断されている状態を表す。
【0049】
図6,7において、実施の形態4の冷却システムの概要は、実施の形態1の冷却システムと同様である。実施の形態4の冷却システムでは、実施の形態1と同様の構成の第1のバイパス流路44Aと、第2のバイパス流路44Bとが、実施の形態1のバイパス流路4に代えて用いられる。
【0050】
また、実施の形態4の冷却システムでは、実施の形態1と同様の構成の第1の弁45Aと、第2の弁45Bとが、実施の形態1の弁5に代えて用いられる。第1の弁45Aと第2の弁45Bとは、インバータ7及びモータ8の動作時と、充電器6の動作時とで異なる循環流路を互いに協働して形成するためのものである。
【0051】
さらに、実施の形態4の冷却システムでは、実施の形態1の第1の冷却液流路3が第1のバイパス間流路43A−1と、第2のバイパス間流路43A−2と、電気機器流路43A−3との3つの流路に分けられている。なお、以下では、第1のバイパス間流路43A−1と、第2のバイパス間流路43A−2と、電気機器流路43A−3との総称を第1の冷却液流路43Aとして説明する。
【0052】
第2のバイパス流路44Bは、第1のバイパス流路44Aと、インバータ7及びモータ8(即ち電気機器)とに対して並列に、第1の冷却液流路43Aに接続されている。第2の弁45Bは、第1の冷却液流路43Aと第2のバイパス流路44Bとの接続箇所に配置されている。第2の弁45Bの動作は、システム制御部50によって制御される。
【0053】
ここで、第1の冷却液流路43Aにおける第1のバイパス流路44Aの一端と第2のバイパス流路44Bの一端との間の流路(図6,7の上側)が第1のバイパス間流路43A−1である。また、第1の冷却液流路43Aにおける第1のバイパス流路44Aの他端と第2のバイパス流路44Bの他端との間の流路(図6,7の下側)が第2のバイパス間流路43A−2である。さらに、第1の冷却液流路43Aにおける第1のバイパス間流路43A−1と、第2のバイパス間流路43A−2との間の流路が電気機器流路43A−3である。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0054】
次に、図6を用いて、電気自動車の充電時の動作について説明する。電気自動車の電池の充電は、停車時に行われる。即ち、停車時には、充電器6が動作し、モータ8及びインバータ7は動作しない。これに対応して、システム制御部50は、充電開始時に冷却液の温度が低い(所定の温度未満である)場合には、第1のバイパス流路44Aからの冷却液の全てを第2のバイパス流路44Bに流すように(第1のバイパス流路44Aからの冷却液を、ラジエータ1、インバータ7及びモータ7に流さないように)、第1の弁45A及び第2の弁45Bの動作と第2の循環ポンプ2Bの駆動とを制御する。これにより、充電器6が集中的に冷却される。
【0055】
また、システム制御部50は、冷却液の温度が所定の温度以上に上昇したことを検出すると、第1の弁45Aの動作を制御して、冷却液の温度を適正に保つように、第1のバイパス流路44Aから第2の冷却液流路3Bのラジエータ1側に分流する流量を調整する。
【0056】
次に、図7を用いて、電気自動車の走行時の動作について説明する。電気自動車の走行時には、モータ8及びインバータ7が動作し、充電器6は動作しない。これに対応して、システム制御部50は、走行開始時に冷却液の温度が低い(所定の温度未満である)場合には、電気機器流路43A−3からの冷却液の全てを第2のバイパス流路44Bに流すように(電気機器流路43A−3からの冷却液を、ラジエータ1及び充電器6に流さないように)、第1の弁45A及び第2の弁45Bの動作と第1の循環ポンプ2Aの駆動とを制御する。これにより、モータ8及びインバータ7が集中的に冷却される。
【0057】
また、システム制御部50は、冷却液の温度が所定の温度以上に上昇したことを検出すると、第2の弁45Bの動作を制御して、冷却液の温度を適正に保つように、電気機器流路43A−3から第2の冷却液流路3Bのラジエータ1側に分流する流量を調整する。
【0058】
上記のような実施の形態4によれば、実施の形態1の構成に第2のバイパス流路44Bと第2の弁45Bとを追加したので、実施の形態1に比べて、冷却液の圧力損失をより抑えることができ、各循環ポンプ2A,2Bの動作効率をより向上させることができるとともに、各循環ポンプ2A,2Bの長寿命化を図ることができる。
【0059】
なお、実施の形態4において、第2のバイパス流路44Bをなす配管の外周面に放熱フィンを設けてもよい。これにより、冷却液が流れる配管の内周には放熱フィンがないため、圧損が増えることなく、配管の外周面の放熱フィンによって、冷却液の温度を低下させることができる。
【0060】
なお、実施の形態1〜4では、冷却システムを電気自動車に適用した例について説明したが、この発明は、ハイブリッド電気自動車に適用してもよい。また、この発明は、電池と、外部から受けた電力によって電池を充電する充電器と、電池の電力で駆動する電気機器とを有する自動車以外の電動システムに適用してもよい。
【0061】
さらに、実施の形態3におけるヒータ9及びヒータコア10を、実施の形態1,2,4における冷却システムに追加してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 ラジエータ(熱交換器)、2A 第1の循環ポンプ、2B 第2の循環ポンプ、3A 第1の冷却液流路(第1の冷媒流路)、3B 第2の冷却液流路(第1の冷媒流路)、4 バイパス流路、5 弁、6 充電器、7 インバータ、8 モータ(電気機器)、9 ヒータ(冷媒加熱器)、10 ヒータコア(暖房装置)、22 循環ポンプ、43A 第1の冷却液流路(第1の冷媒流路)、44A 第1のバイパス流路、44B 第2のバイパス流路、45A 第1の弁、45B 第2の弁、50 システム制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、外部から受けた電力によって前記電池を充電する充電器と、前記電池の電力により駆動する電気機器とを有する電動システムに設けられる冷却システムであって、
熱交換器と、
循環ポンプと、
前記電気機器が配置された第1の冷媒流路と、
冷媒の循環流路を形成するように前記第1の冷媒流路に接続され、かつ前記熱交換器が配置された第2の冷媒流路と、
前記第2の冷媒流路に対して並列に前記第1の冷媒流路に接続され、かつ前記充電器が配置されたバイパス流路と、
前記第1の冷媒流路と前記バイパス流路との接続箇所に設けられ、前記電気機器の動作時に、前記第1の冷媒流路及び前記第2の冷媒流路による冷媒の循環流路を形成して前記バイパス流路での冷媒の流動を制限するための弁と
を備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記循環ポンプは、前記第1の冷媒流路に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の冷却システム。
【請求項3】
前記循環ポンプは、前記第2の冷媒流路に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の冷却システム。
【請求項4】
前記循環ポンプは、前記第1の冷媒流路と前記バイパス流路とのそれぞれに配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の冷却システム。
【請求項5】
前記循環ポンプは、前記第2の冷媒流路と前記バイパス流路とのそれぞれに配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の冷却システム
【請求項6】
前記バイパス流路としての第1のバイパス流路と前記電気機器とに対して並列に前記第1の冷媒流路に接続された第2のバイパス流路と、
前記第1の冷媒流路と前記第2のバイパス流路との接続箇所に設けられ、前記電気機器の動作時と前記充電器の動作時とで異なる循環流路を前記弁としての第1の弁と協働して形成するための第2の弁と
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の冷却システム。
【請求項7】
前記弁は、
前記電気機器の動作時に、前記第1の冷媒流路及び前記第2の冷媒流路による冷媒の循環流路を形成し、
前記充電器の動作時でかつ冷媒が所定の温度未満である場合に、前記第1の冷媒流路及び前記バイパス流路による冷媒の循環流路を形成し、
前記充電器の動作時でかつ冷媒が所定の温度以上未満である場合に、前記第2の冷媒流路及び前記バイパス流路による冷媒の循環流路を形成するとともに、前記第1の冷媒流路から前記第2の冷媒流路へ冷媒を分流する
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記第1の冷媒流路には、冷媒を加熱する冷媒加熱器と、前記冷媒加熱器からの冷媒を熱源とする暖房装置とが配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−93047(P2012−93047A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242088(P2010−242088)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】