説明

冷却機器の圧縮機用ダンパーおよび冷蔵庫

【課題】冷却機器の圧縮機の低回転化に適した防振システムを構成する新しい圧縮機用ダンパーを提供することを目的とする。
【解決手段】筒状支持部8の上端部に圧縮機の環状取付部17を多点で支持する複数の支持突起を設け、圧縮機を腰高に弾性支持するとともに振動による側方変位を可能とする。そして側方変位する環状取付部17と接触して弾性変形するベローズ部9を設ける。ベローズ部9の弾性変形により圧縮機の側方変位を緩衝するとともに内部に封入した粘性流体3を攪拌して振動を減衰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫等の冷却機器の圧縮機の振動減衰に用いる圧縮機用ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の冷蔵庫の冷却サイクルを構成する圧縮機は、冷蔵庫の中でも比較的重い重量部品であり、始動、運転、停止の駆動サイクルを繰り返すことで加振源、音源となることから振動対策や防音対策を施す必要がある。その一例として特許文献1にはブチルゴム等のゴム材料を金型成形した防振ゴムで圧縮機を支持した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−238928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこうした防振ゴムでは、省エネ対策として冷蔵庫のより一層の低消費電力化が求められている状況下で、必ずしも十分な防振性能を発揮できていない。即ち、圧縮機の電力消費を抑えるには、更なる圧縮機の低回転化が有効な対策の一つとされているが、すると振動伝達系の共振周波数に近づく傾向となる。そうすると振動を十分に減衰させるのが困難となり、しかも固有振動数の近傍では却って振動が増大してしまうという問題がある。
その対策として共振周波数を低周波側へシフトさせることが考えられるが、そのためには防振ゴム自体の硬度を柔らかくする必要がある。ところがそうすると、防振ゴムの圧縮機に対する支持力が低下して歪みやすくなり、駆動サイクルを通じて圧縮機が過剰に変位することで異音を発生したり圧縮機に繋がる冷媒パイプを損傷してしまう虞がある。
したがって冷蔵庫のより一層の低消費電力化を推進するには、圧縮機の低回転化とともに防振ゴムの成形体でなるダンパー自体を抜本的に見直す必要がある。
【0005】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。その目的は冷蔵庫等の冷却機器の圧縮機の低回転化に適した防振システムを構成する新しい圧縮機用ダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の冷却機器の圧縮機用ダンパーは以下のとおり構成される。
【0007】
(1)本発明は、中空の密閉容器と、密閉容器に充填した粘性流体とを備えており、冷却機器の圧縮機に設けた環状取付部と前記冷却機器に備える圧縮機を支持する支持体との間に取付けられて圧縮機を防振支持する冷却機器の圧縮機用ダンパーにおいて、
前記密閉容器は、前記環状取付部が載置されて圧縮機の自重を弾性支持する厚肉のゴム状弾性体でなる筒状支持部と、前記筒状支持部の内側に設けられ振動により側方変位する圧縮機の環状取付部と接触して弾性変形する薄膜状のゴム状弾性体でなるベローズ部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記密閉容器は、前記環状取付部が載置されて圧縮機の自重を弾性支持する厚肉のゴム状弾性体でなる筒状支持部を備える。このため冷蔵庫の中でも比較的重い圧縮機の自重を確実に支持することができる。また自重の支持だけでなく、圧縮機の駆動サイクルで発生する上下方向での振動も減衰させることができる。
前記密閉容器は、前記環状取付部の係合孔に挿入されて圧縮機の側方変位を弾性支持する薄膜状のゴム状弾性体でなるベローズ部を備える。このため圧縮機の駆動サイクルで発生する振動による側方変位を薄膜状の柔らかいベローズ部によって緩衝するとともに減衰させることができる。
【0009】
(2)前記本発明において、前記筒状支持部の上端部には、環状取付部を多点で支持する複数の支持突起を有する。支持突起は筒状支持部よりも支持力に乏しく、環状取付部が載置されると圧縮変形した状態で圧縮機を腰高に弾性支持し振動による側方変位を可能とする。圧縮機は低回転化によってゆっくり大きく側方変位するように挙動する傾向がある。本発明ではこうした圧縮機の振動特性を利用して、支持突起によって圧縮機を腰高に弾性支持することでその側方変位をさせやすくする。そして前記ベローズ部は、振動により圧縮機とともに側方変位する環状取付部と接触し弾性変形により受け止めて圧縮機の側方変位を緩衝し、該弾性変形により粘性流体を攪拌して振動を減衰させる。
このように本発明の圧縮機用ダンパーの防振メカニズムは、筒状支持部によって圧縮機を支持するとともにその上端部に設けた支持力に乏しい支持突起によって圧縮機の側方変位を許容し、その側方変位をベローズ部の弾性変形と、それによる粘性流体の攪拌抵抗によって振動減衰させる。なお、本発明のダンパーが許容する側方変位は、圧縮機に接続した冷媒パイプを損傷しない程度の側方変位である。
【0010】
(3)前記本発明は、密閉容器に筒状支持部の下端部に埋設した筒状の外周補強壁を有する。
外周補強壁は芯材となってゴム状弾性体でなる筒状支持部の支持力を増強することができ、歪んだり腰折れすることなく重量物の圧縮機を確実に支持できる。
【0011】
(4)前記本発明は、密閉容器に筒状支持部の内周面を支持する筒状の内周補強壁を有する。
内周補強壁によってゴム状弾性体でなる筒状支持部の内周面を支持するので筒状支持部の支持力を増強することができ、歪んだり腰折れすることなく重量物の圧縮機を確実に支持できる。
【0012】
(5)前記本発明は、外周補強壁と内周補強壁を同心多重状に配置して有する。
この同心多重状の配置によれば、ゴム状弾性体でなる筒状支持部の支持力を内外からさらに増強することができる。
【0013】
(6)前記本発明は、ベローズ部が筒状支持部の上端部の下側位置で筒状支持部の内周面に繋がる連結部を有する。
振動する圧縮機の環状取付部が支持突起を潰すことがある。この際にベローズ部が筒状支持部の上端部に繋がる構造であると、環状取付部の底面とベローズ部の連結部とが略面一となって大きく接触することでベローズ部が拘束され、その可動範囲が狭くなり減衰性能が低下する虞がある。
しかしながら本発明では、ベローズ部が筒状支持部の上端部の下側位置で繋がる構造のため、環状取付部の底面とベローズ部の連結部との間に形成される隙間を維持しやすくなる。その結果、ベローズ部が環状取付部との接触によって拘束され難くなり、所望の減衰性能を安定して発揮することができる。
【0014】
(7)前記本発明は、密閉容器が筒状であり、その内周部に硬質材でなり圧縮機の支持体に設けた固定ピンを挿通する筒状の軸受け部を有する。
密閉容器に固定ピンを挿通するための硬質材でなる軸受け部を有するため、ダンパーを確実に支持体に装着することができる。
【0015】
(8)前記本発明は、軸受け部の外周に筒状の軸受け補強壁を有する。
例えば移動時に冷蔵庫を斜めに倒したり、圧縮機に偏荷重が加わった場合には、垂直に起立する固定ピンに対して交差方向に荷重や振動が加わり軸受け部に大きな応力が作用し、損傷する虞がある。本発明ではそうした場合でも、軸受け補強壁によって固定ピンを挿通した軸受け部が損傷しないよう補強することができる。
【0016】
(9)前記本発明は、軸受け補強壁が脱気用のスリットを有する。
これによれば密閉容器を形成する際に、軸受け補強壁のスリットを通じてエアーを逃がすことができるので、粘性流体にエアーが残留せず、所望の減衰性能を発揮することができる。
【0017】
(10)前記本発明は、密閉容器は開口端を有する容器本体と該開口端を閉塞する蓋体とを有しており、容器本体が該開口端を形成した前記筒状支持部と前記ベローズ部とを有する。
この密閉容器によれば容器本体と蓋体とで圧縮機用ダンパーを構成することができる。
【0018】
(11)前記本発明は、容器本体に固着フランジを有する前記外周補強壁を設け、蓋体に固着フランジを有する前記内周補強壁を設け、固着フランジどうしを固着して容器本体を蓋体で密閉する。
これによれば外周補強壁と内周補強壁を補強に機能させるのみならず、固着フランジどうしの固着により容器本体を蓋体で確実に密閉させる機能も持たせることができ、固着用の専用部品の使用を廃止でき部品点数の増加を防ぐことができる。
【0019】
(12)本発明は、さらに、圧縮機を収容する機械室を備え、前記圧縮機用ダンパーを前記機械室内に配置した冷蔵庫であり、圧縮機の低回転化に適した防振システムを冷蔵庫に適用することで、信頼性、静音化を高めながら、省エネ化を図ることができる。
【0020】
(13)本発明は、さらに、機械室を冷蔵庫本体上部に設けた冷蔵庫であり、上部に圧縮機を配置した場合、下部を床面に固定端として上部を自由端とした振動モードで、防振ゴムの支持力と減衰力が乏しいと圧縮機が上部でより一層大きく変位する虞があるが、前記圧縮機用ダンパーを適用することで、振動を適切に吸収でき、信頼性を高めることができる。また、圧縮機を上部に配置することで、圧縮機の音が使用者に伝わりやすくなるが、前記圧縮機用ダンパーを適用することで、振動にまつわる音を適切に吸収でき、より静音化を高めることができる。
【0021】
(14)本発明は、さらに、回転数を可変可能としたインバータ圧縮機を適用した冷蔵庫であり、圧縮機の回転数を可変させ能力制御する際の幅広い回転数(周波数)に対して、振動を適切に吸収でき、信頼性、静音化を高めながら、冷却能力の向上および省エネ化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による冷却機器の圧縮機用ダンパーによれば、筒状支持部によって圧縮機を支持するとともにその上端部に設けた支持力に乏しい支持突起によって圧縮機の側方変位を許容し、その側方変位をベローズ部の弾性変形と、それによる粘性流体の攪拌抵抗によって減衰させる防振メカニズムを採用することで、従来の防振ゴムでは不可能であった、低消費電力のため低回転化した圧縮機の振動特性に適した振動減衰を行うことができる。よって圧縮機の電力消費の低下による冷蔵庫の省エネ効果に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態による圧縮機用ダンパーの外観斜視図。
【図2】図1の圧縮機用ダンパーの平面図。
【図3】図1の圧縮機用ダンパーの分解組立図。
【図4】図1の圧縮機用ダンパーを備える冷蔵庫の背面斜視図。
【図5】図1の圧縮機用ダンパーの取付状態を説明する断面図。
【図6】圧縮機用ダンパーの動作説明図で、分図(A)は比較例による動作説明図、分図(B)は図1の圧縮機用ダンパーによる動作説明図。
【図7】図1の圧縮機用ダンパーの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態による冷却機器の圧縮機用ダンパーおよび冷蔵庫について説明する。
【0025】
圧縮機用ダンパー1の構成〔図1〜図3〕
冷蔵庫の圧縮機用ダンパー1は、図1で外観を示す密閉容器2に、図3のごとくシリコーンオイル等の粘性流体3を封入した粘性流体封入ダンパーとして構成される。密閉容器2は筒状であり、その中心軸に沿って軸受け孔4が形成されている。密閉容器2は容器本体5の開口端6を蓋体7で閉塞して構成される。
【0026】
容器本体5は、筒状支持部8、ベローズ部9、軸受け部10を備えている。
【0027】
筒状支持部8は容器本体5の大径の外周壁を構成し、ゴム状弾性体にて厚肉に形成されている。即ち冷蔵庫の圧縮機の自重を腰折れしたり過度に歪むことなく支持できる厚みで形成されている。
筒状支持部8の下端部(開口端6)には筒状の外周補強壁11が一体に埋設されている。外周補強壁11は開口端6の芯材となって、筒状支持部8の支持力を増強しており、筒状支持部8が過剰に歪んだり腰折れすることなく重量物の圧縮機を確実に支持できるようにしている。そのため外周補強壁11は硬質樹脂で形成される。外周補強壁11には鍔状に側方へ突出する固着フランジ12が形成されている。
筒状支持部8の上端部13には周方向に沿って離間配置した複数の支持突起14が突設されている。本実施形態では図2で示すように中心に対し45°の等角位置で8個の支持突起14が形成されている。支持突起14は筒状支持部8の肉厚よりも僅かに小さい直径の円柱状に形成されており、それらの上に図4で示す冷蔵庫15の圧縮機16の環状取付部17が積載される。
【0028】
ベローズ部9はゴム状弾性体でなる柔らかい薄膜状に形成されており、外周から内周にかけて環状の連結部18、筒状の側方支持部19、環状の上面部20、筒状の内周部21が形成されている。
環状の連結部18は、筒状支持部8の内周面と繋げて形成されている。その連結位置は、筒状支持部8の上端部13の下側位置となっている(後述)。
側方支持部19は、連結部18の内周端から上方に屈曲し、支持突起14よりも上方に突出して形成されている。その突出高さは支持突起14に載置される圧縮機16の環状取付部17の板厚よりも十分大きく形成されている。
天面部20は、側方支持部19の上端位置から直角に屈曲する環状平面として形成されている。
内周部21は、天面部20の内周端から側方支持部19と同心状に筒状として形成されている。内周部21の下半分は軸受け部10の外周面を取り囲むようにして軸受け部10と一体形成されている。軸受け孔4は内周部21の内周面と軸受け部10の内周面とで形成されている。
【0029】
軸受け部10は筒状に形成されており、そこには後述する冷蔵庫15の固定ピン30が遊び無く挿通されて、しっかりと固定ピン30に固定されるようになっている。
【0030】
蓋体7は硬質樹脂の成形体にて形成されており、外周から内周にかけて環状の固着フランジ22、筒状の内周補強壁23、環状の蓋部24が形成されている。
固着フランジ22は、容器本体5の固着フランジ12と相互に固着されることで、密閉容器2の外周側で容器本体5を液密に封止する。その固着方法として本実施形態では超音波融着を行う。
内周補強壁23は、容器本体5と組み合わせる際に、筒状支持部8の内周面に挿入されて内側から当接し支持する。これにより筒状支持部8の支持力を内側から増強することができ、過剰に歪んだり腰折れすることなく重量物の圧縮機16を確実に支持できるようにしている。また、容器本体5と蓋体7とを組み合わせると、内周補強壁23と外周補強壁11とが同心多重状に配置される。これによって筒状支持部8の支持力を内外から増強している。
蓋部24は中心に軸受け挿通孔25が形成されている。軸受け挿通孔25の孔縁には筒状の軸受け補強壁26が形成されている。軸受け補強壁26には4箇所に脱気用のスリット27が形成されている(後述)。蓋部24は容器本体8の軸受け部10と相互に固着されることで、密閉容器2の内周側において容器本体5を液密に封止する。その固着方法として本実施形態では超音波融着を行う。
【0031】
圧縮機用ダンパー1の各部の材質
容器本体5の筒状支持部8、ベローズ部9はゴム状弾性体で形成される。そのゴム状弾性体としては、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムを使用することができる。この中でも本実施形態では、振動減衰性、耐ガス透過性、耐摩耗性等に優れるブチルゴムを使用する。
【0032】
容器本体5の軸受け部10、外周補強壁11及び固着フランジ12、蓋体7は硬質樹脂にて形成される。具体的にはポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂で形成することができる。
【0033】
そして前述のように、本実施形態では容器本体5をインサート成形により一部品として成形する。また、密閉容器2の外周側では容器本体5の固着フランジ12と蓋体7の固着フランジ22とを超音波融着により強固に固着した接合面を形成することができ、密閉容器2の内周側では容器本体5の軸受け部10と蓋体7の蓋部24の軸受け挿通孔25の孔縁とを超音波融着により強固に固着した接合面を形成することが可能である。
【0034】
粘性流体3としては、液体及び液体に反応・溶解しない固体粒子を添加したものが用いられる。なかでも耐熱性、信頼性、防振特性や制振特性等の要求特性に応じてシリコーンオイル及びシリコーンオイルに反応・溶解しない固体粒子を分散させたものを使用できる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等を使用できる。反応・溶解しない固体粒子としては、シリコーンレジン粉末、ポリメチルシルセスキオキサン粉末、湿式シリカ粒、乾式シリカ粒等や、これらの表面処理品等を使用可能で、それらを単独で又は数種類を組み合わせて使用することも可能である。
【0035】
圧縮機用ダンパー1の製法〔図3〕
圧縮機用ダンパー1の製法の一例を図3を参照しつつ説明する。
先ずインサート成形によって異素材を一体化した容器本体5の成形体を製造し、また硬質樹脂の成形によって蓋体7の成形体を製造する。
そして、容器本体5に粘性流体3を充填してから開口端6を蓋体7で密封する。このとき、蓋体7の内周補強壁23を容器本体5の筒状支持部8の内周に差し込み、蓋体7の軸受け補強壁26を軸受け部10の外周を被覆するベローズ部9の内周部21の外側に被せるようにして組み合わせる。すると、蓋体7の軸受け補強壁26が粘性流体3に入り込むことで液面が上昇するとともに、脱気用のスリット27を通じて密閉容器2の内部の残留エアーを外に排出することができる。こうして密閉容器2の中の残留エアーを無くして減衰性能が低下しないようにしている。
最後に図外の超音波ホーンを使用し、密閉容器2の外周側では容器本体5の固着フランジ12と蓋体7の固着フランジ22とを超音波融着して接合面を形成し、内周側では容器本体5の軸受け部10と蓋体7の蓋部24の軸受け挿通孔25の孔縁とを超音波融着して接合面を形成する。こうして容器本体5が蓋体7で液密に封止され、圧縮機用ダンパー1を得ることができる。
【0036】
圧縮機用ダンパー1の使用形態及び圧縮機用ダンパー1を備える冷蔵庫の実施形態〔図4、図5〕
図4は圧縮機用ダンパー1を備える冷蔵庫15の背面の概要を示す斜視図である。この冷蔵庫15では、下部の内容量を増加するため、上部背面に冷却サイクル及び冷凍サイクルを構成する圧縮機16を含む各種部品を配置している。冷蔵庫15の上部背面には機械室28が設けられており、「支持体」としての設置面29には4本の固定ピン30が突設されている。先ずは固定ピン30を軸受け孔4に挿通させて圧縮機用ダンパー1を設置する。
次に、圧縮機16の環状取付部17の係合孔17aを圧縮機用ダンパー1のベローズ部9の外周に重ね合わせて、環状取付部17を圧縮機用ダンパー1の支持突起14に載置する。
最後に、留め具のワッシャーネジ31を固定ピン30にネジ止めすれば圧縮機16を圧縮機用ダンパー1で防振支持することができる(図5)。なお、この使用状態では圧縮機用ダンパー1の支持突起14が圧縮機16の重量によって潰された圧縮状態で圧縮機16を弾性支持している。
また、本実施の形態における圧縮機16は、回転数を可変可能としたインバータ圧縮機を用いている。具体的には、冷蔵庫15内の各貯蔵室の庫内温度と設定温度との差および周囲温度に応じてマイコンが圧縮機16のモータ回転数を約20〜70〔r/s〕で段階的に制御する。
なお、圧縮機16を収容する機械室28を冷蔵庫15の本体上部背面に設けたもので説明したが、機械室の位置を限定するものではなく、機械室を本体下部等に備えた冷蔵庫に適用してもよい。
【0037】
圧縮機用ダンパー1の作用・効果〔図5〜図7〕
既に説明した作用・効果に加えて本実施形態の圧縮機用ダンパー1は、以下の作用・効果を発揮することができる。
【0038】
圧縮機用ダンパー1の密閉容器2の筒状支持部8は厚肉のゴム状弾性体で形成されている(図5)。このため冷蔵庫15の中でも比較的重い圧縮機16の自重を確実に支持することができる。また自重の支持だけでなく、圧縮機16の駆動サイクルで発生する上下方向での振動も減衰させることができる。
【0039】
密閉容器2のベローズ部9には、側方変位する圧縮機16を環状取付部17の係合孔17aと当接して弾性変形し受け止める側方支持部19が形成されている。このため圧縮機16の駆動サイクルで発生する振動による側方変位を薄膜状の柔らかい側方支持部19の弾性変形によって緩衝するとともに、弾性変形による粘性流体3の攪拌抵抗によって減衰させることができる(図5、図7)。
【0040】
筒状支持部8の上端部13には環状取付部17を多点で支持する複数の支持突起14を有する。支持突起14は筒状支持部8よりも支持力に乏しく、環状取付部17が載置されると、環状取付部17に対して面ではなく多点で部分的に接触し且つ圧縮変形した状態で圧縮機16を腰高に弾性支持するとともに振動による側方変位を可能とするものである。
即ち、圧縮機16は低回転化によってゆっくり大きく側方変位するように挙動する傾向がある。そこで圧縮機16の重量については厚肉の筒状支持部8によって支持するようにし、支持力に乏しい支持突起14によって圧縮機16を腰高に弾性支持し、敢えて側方変位をさせやすい不安定な状態を作り出す(図5)。そして振動により側方変位する環状取付部17をベローズ部9の側方支持部19と接触させ弾性変形させる(図7)。この弾性変形によって圧縮機16の側方変位を緩衝するとともに粘性流体3を攪拌して振動を減衰させることができる。
【0041】
以上のようにして圧縮機用ダンパー1によれば、筒状支持部8の上端部に設けた支持突起14によって圧縮機16の側方変位を許容し、その側方変位をベローズ部9の弾性変形と、それによる粘性流体3の攪拌抵抗によって減衰させる防振メカニズムを採用することで、従来の防振ゴムでは不可能であった、低消費電力のため低回転化した圧縮機16の振動特性に適した振動減衰を行うことができる。よって圧縮機16の電力消費の低下による冷蔵庫15の省エネ効果に貢献することができる。
【0042】
それ単体では支持力に乏しい支持突起14は、載置した圧縮機16の自重によって、また振動する圧縮機16の環状取付部17によって圧縮状態に弾性変形する。この際、例えば図6(A)で示すように、ベローズ部9の連結部18が筒状支持部8の上端部13に繋がる構造であると、環状取付部17の底面と連結部18とが略面一となって大きく接触し、その結果、ベローズ部9の動きが拘束され、その可動範囲が狭くなり減衰性能が低下する。
しかしながら本実施形態では、図6(B)で示すように、連結部18が筒状支持部8の上端部13から離れた下側位置で繋がる構造である。このため支持突起14が圧縮変形したとしても、環状取付部17の底面と連結部18とは略面一にならず、それらの間に形成される隙間32が維持される。したがってベローズ部9が環状取付部17との接触によって強く拘束されることなく所望の減衰性能を発揮することができる。
【0043】
例えば移動時に冷蔵庫15を斜めに倒したり、圧縮機16に偏荷重が加わった場合には、垂直に起立する固定ピン28に対して交差方向に大きな荷重や振動が加わり軸受け部10の下端部、特に蓋部24と超音波融着した接合面に大きな応力が作用して破損する虞がある。
しかしながら本実施形態では、蓋体7の軸受け補強壁26によって軸受け部10を外側から補強することで、密閉容器2の内周における超音波融着の接合面への応力集中による破損を防止することができる。
【0044】
こうした超音波融着の接合面の保護は密閉容器2の外周でもなされている。即ち、固着フランジ12と固着フランジ22との超音波融着による接合面が破損しないようにするためには、外周補強壁11の剛性を高めることが必要である。そのために本実施形態では、蓋体7に外周補強壁11と同心状多重状に配置する内周補強壁23を設けている。
以上のように本実施形態の圧縮機用ダンパー1では、超音波融着による接合面を密閉容器2の内周側と外周側で補強して、密閉容器2からの粘性流体3の液漏れを確実に防止している。
また、本実施の形態では、冷蔵庫15の上部背面に機械室28を備え、機械室28の設置面29には4本の固定ピン30が突設され、固定ピン30を軸受け孔4に挿通させて圧縮機用ダンパー1を設置し、圧縮機16の環状取付部17の係合孔17aを圧縮機用ダンパー1のベローズ部9の外周に重ね合わせて、環状取付部17を圧縮機用ダンパー1の支持突起14に載置しているので、圧縮機16の低回転化に適した防振システムを冷蔵庫15に適用することができ、信頼性、静音化を高めながら、省エネ化を図ることができる冷蔵庫を提供することができる。
また、上部に圧縮機16を配置した場合、下部を床面に固定端として上部を自由端とした振動モードで、防振ゴムの支持力と減衰力が乏しいと圧縮機16が上部でより一層大きく変位する虞があるが、本実施の形態の圧縮機用ダンパー1を適用することで、振動を適切に吸収でき、信頼性を高めることができる。また、圧縮機16を上部に配置することで、圧縮機16の音が使用者に伝わりやすくなるが、圧縮機用ダンパー1を適用することで、振動にまつわる音を適切に吸収でき、より静音化を高めることができる。
また、本実施の形態の冷蔵庫は、回転数を可変可能としたインバータ圧縮機を適用したものであり、圧縮機の回転数を可変させ能力制御する際の幅広い回転数(周波数)に対して、振動を適切に吸収でき、信頼性、静音化を高めながら、冷却能力の向上および省エネ化を図ることができる。
【0045】
実施形態の変形例
前記実施形態では8つの支持突起14を有する例を示したが、それに限定されるものではない。つまり支持突起14としては圧縮機16を腰高に支持し、且つその側方への変位をさせやすくすることができればよい。
【0046】
前記実施形態ではゴム状弾性体としてブチルゴムを使用する例を示したが、それに代えて熱可塑性エラストマーを使用してもよい。この場合、インサート成形に代えて二色成形で成形してもよい。
【0047】
前記実施形態では環状取付部17として無端環状のものを例示したが、有端環状として構成してもよい。
また、本実施の形態では、圧縮機16を収容する機械室28を冷蔵庫15の本体上部背面に設けたもので説明したが、機械室28の位置を限定するものではなく、機械室28を本体下部等に備えた冷蔵庫に適用してもよい。
また、本実施の形態では、複数の圧縮機用ダンパー1は適用する冷蔵庫に対して、同一仕様のもので説明したが、圧縮機16の駆動方式や重心位置に合わせて、圧縮機用ダンパー1の弾性体の硬度や粘性流体3の粘度が異なるものを組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる圧縮機用ダンパーは、低回転化した圧縮機の振動特性に適した振動減衰を行うことができるので、圧縮機を備えたあらゆる冷却機器、冷凍機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 冷蔵庫の圧縮機用ダンパー
2 密閉容器
3 粘性流体
4 軸受け孔
5 容器本体
6 開口端
7 蓋体
8 筒状支持部
9 ベローズ部
10 軸受け部
11 外周補強壁
12 固着フランジ
13 上端部
14 支持突起
15 冷蔵庫
16 圧縮機
17 環状取付部
17a 係合孔
18 連結部
19 側方支持部
20 上面部
21 内周部
22 固着フランジ
23 内周補強壁
24 蓋部
25 軸受け挿通孔
26 軸受け補強壁
27 スリット
28 機械室
29 設置面(支持体)
30 固定ピン
31 ワッシャーネジ
32 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の密閉容器と、
密閉容器に充填した粘性流体とを備えており、
冷却機器の圧縮機に設けた環状取付部と前記冷却機器の圧縮機を支持する支持体との間に取付けられて圧縮機を防振支持する冷却機器の圧縮機用ダンパーにおいて、
前記密閉容器は、
前記環状取付部が載置されて圧縮機の自重を弾性支持する厚肉のゴム状弾性体でなる筒状支持部と、
前記筒状支持部の内側に設けられ振動により側方変位する圧縮機の環状取付部と接触して弾性変形する薄膜状のゴム状弾性体でなるベローズ部とを備えることを特徴とする冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項2】
前記筒状支持部は、上端部に前記環状取付部を多点で支持する複数の支持突起を有する
請求項1記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項3】
密閉容器に筒状支持部の下端部に埋設した筒状の外周補強壁を有する
請求項1又は請求項2記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項4】
密閉容器に筒状支持部の内周面を支持する筒状の内周補強壁を有する
請求項1〜請求項3何れか1項記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項5】
外周補強壁と内周補強壁を同心多重状に配置して有する
請求項4記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項6】
ベローズ部が筒状支持部の上端部の下側位置で筒状支持部の内周面に繋がる連結部を有する請求項1〜請求項5何れか1項記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項7】
密閉容器が筒状であり、その内周部に硬質材でなり圧縮機の支持体に設けた固定ピンを挿通する筒状の軸受け部を有する
請求項1〜請求項6何れか1項記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項8】
軸受け部の外周に筒状の軸受け補強壁を有する
請求項7記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項9】
軸受け補強壁が脱気用のスリットを有する
請求項8記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項10】
密閉容器は開口端を有する容器本体と該開口端を閉塞する蓋体とを有しており、
容器本体が該開口端を形成した前記筒状支持部と前記ベローズ部とを有する
請求項1〜請求項9何れか1項記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項11】
容器本体に固着フランジを有する前記外周補強壁を設け、
蓋体に固着フランジを有する前記内周補強壁を設け、
固着フランジどうしを固着して容器本体を蓋体で密閉する
請求項10記載の冷却機器の圧縮機用ダンパー。
【請求項12】
圧縮機を収容する機械室を備え、
請求項1〜請求項11何れか1項記載の冷却機器の圧縮機用ダンパーを前記機械室内に配置したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項13】
前記機械室を冷蔵庫本体上部に設けたことを特徴とする請求項12記載の冷蔵庫。
【請求項14】
前記圧縮機は、回転数を可変可能としたインバータ圧縮機としたことを特徴とする請求項12又は請求項13記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53697(P2013−53697A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193009(P2011−193009)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】