説明

冷却装置

【課題】冷却装置の製作効率を高めるとともに放熱性能の低下を抑えることができる冷却装置を提供する。
【解決手段】ヒートシンク2の天板9及び底板10はそれぞれ金属材16、18と金属材16及び金属材18のフィン11と接する面に積層されるろう材17、19とからなるクラッド材で構成する。第1金属部材3及び第2金属部材7はそれぞれ第1層の金属材22、26とろう材24、28とからなるクラッド材及び第2層の金属材23、27とろう材25、29とからなるクラッド材を接着して構成する。金属基板5は金属材30と金属材30の下面に積層されるろう材31とからなるクラッド材で構成する。第2絶縁部材8、第2金属部材7、底板10、フィン11、天板9、第1金属部材3、第1絶縁部材4及び金属基板5はこの順に積層され、加圧状態で加熱されることによって、一体接合されるため、冷却装置1の製作効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電子機器等の放熱を行なう冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車あるいは産業車両等の車載用に用いられる電子機器等の冷却装置は、放熱性を高めるために、半導体素子を搭載する配線用金属基板、絶縁用基板及び応力緩和のための金属層材にヒートシンクを積層した構成を有する。これらの各基板、金属層材及びヒートシンクは一般的に、はんだ付け及びろう付け等の手段を併用して接合されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、パワーモジュール用基板の表面に半導体チップを搭載し、パワーモジュール用基板の裏面にヒートシンクを接合したパワーモジュール(電子機器)が開示されている。パワーモジュール用基板は、窒化物系セラミックスからなるセラミックス基板の表面側にアルミニウムの単層により形成された回路層が積層されるとともに裏面側に純度の異なる2層のアルミニウムからなる放熱のための金属層が積層されることによって構成されている。
【0004】
具体的には、Al−Si系ろう材箔が回路層とセラミックス基板との間及びセラミックス基板と金属層との間に配置される。回路層、ろう材箔、セラミックス基板、ろう材箔及び金属層からなる積層体は真空雰囲気中において加圧、加熱され、ろう材箔の溶融により接合されてパワーモジュール用基板が製作される。パワーモジュール用基板を製作した後、半導体チップが回路層の表面にはんだ付けされ、ヒートシンクが金属層の裏面にはんだ付け接合又はろう付け接合されることにより、パワーモジュールが製作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−65144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
はんだ付けにより接合する方法は、はんだ材が長期間にわたって温度変化を受けることにより劣化し、熱伝達が低下することが知られている。そのため、特許文献1では、ろう材箔を用いたろう付けによりパワーモジュール用基板を製作する方法が開示され、はんだ付けの問題点を解消している。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、パワーモジュール用基板の製作後、パワーモジュール用基板にヒートシンクを接合するには、ろう材箔よりも融点の低いはんだを用いて接合せざるを得ない。
この理由は、パワーモジュール用基板とヒートシンクとをろう材箔を用いて接合すると、パワーモジュール用基板の積層体を接合したろう材が再び溶融され、積層体にずれや変形が生じて所望の形態を得ることが難しいという問題があるからである。このため、パワーモジュール用基板とヒートシンクとの接合は、ろう付けよりも低温で接合できるはんだ付けが一般的に行なわれている。
【0008】
この結果、特許文献1を含む従来の技術では、パワーモジュール用基板を製作した後、パワーモジュール用基板とヒートシンクとを接合しなければならないため、冷却装置の製作効率が悪く、また、はんだ付けをするため長期間の使用により放熱性能が低下するという問題が生じている。
【0009】
本願発明は、冷却装置の製作効率を高めるとともに放熱性能の低下を抑えることができる冷却装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1は、天板と底板との間にフィンを介在したヒートシンクと、前記天板の前記フィンと接する面と反対側の面に積層される第1金属部材と、前記第1金属部材上に積層される第1絶縁部材とからなる冷却装置であって、前記天板、前記底板及び前記第1金属部材は金属材とろう材とからなるクラッド材であり、前記フィンは前記天板および前記底板とろう付けされ、前記第1金属部材は前記天板とろう付けされ、前記第1絶縁部材は前記第1金属部材とろう付けされることを特徴とする。
【0011】
請求項1によれば、半導体素子を搭載するための第1絶縁基板、第1金属層材及び冷却のためのヒートシンクを一括してろう付け接合することができ、冷却装置の製作効率を大幅に高めることができるとともに長期間の使用による放熱性能の劣化を抑制することができる。
【0012】
請求項2では、前記第1金属部材の前記ろう材は前記金属材の上面及び下面に積層され、前記天板のろう材及び前記底板のろう材は前記金属材の前記フィンと対向する面に積層されることを特徴とする。請求項2によれば、請求項1と同様の作用効果を得ることができる。
【0013】
請求項3では、前記底板の前記フィンと接する面と反対側の面に積層される前記第1金属部材と同じ構成のクラッド材からなる第2金属部材と、前記第2金属部材に積層される前記第1絶縁部材と同じ構成のクラッド材からなる第2絶縁部材とを有することを特徴とする。請求項3によれば、ヒートシンクとヒートシンクの上下に積層される第1、第2金属部材及び第1、第2絶縁部材とを一括してろう付け接合することができ、請求項1と同様の作用効果を有するとともにヒートシンク上下の応力に対するバランスを取ることができ、熱サイクルにおける反りに対する抑制効果をより高めることができる。また、第2絶縁部材の下面側に発熱素子を備えることが可能となり、小型化された電子機器を効率よく製作することができる。
【0014】
請求項4では、前記第1絶縁部材上に発熱素子が実装可能な金属基板を積層し、前記金属基板は金属材と該金属材の前記第1絶縁部材と対向する面に積層されたろう材とからなるクラッド材であることを特徴とする。請求項4によれば、発熱素子を実装する金属基板を含め一括してろう付け接合することができるため、発熱素子を実装するのみで電子機器を簡単に製作することができる。
【0015】
請求項5では、前記底板の前記フィンと接する面と反対側の面にアルミニウムめっき鋼板からなる金属板材を積層し、前記底板は金属材と該金属材の上面及び下面に積層されるろう材とからなるクラッド材であることを特徴とする。請求項5によれば、ヒートシンクとヒートシンクの上下に積層される第1金属部材、第1絶縁部材及びアルミニウムめっき鋼板を一括してろう付け接合することができ、請求項1と同様の作用効果を有するとともにヒートシンク上下の応力に対するバランスを取ることができ、熱サイクルにおける反りに対する抑制効果を高めることができる。
【0016】
請求項6では、前記第1絶縁部材上に半導体モジュールを固定したことを特徴とする。請求項6によれば、半導体素子をモジュール化しているため、半導体素子の実装が容易となり、半導体モジュールの取り付け作業も簡単になる。
【0017】
請求項7では、前記第2絶縁部材上に半導体モジュールを固定したことを特徴とする。請求項7によれば、ヒートシンクの上面側及び下面側の構造を同一にすることができ、小型化された電子機器の製作を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明は、冷却装置の製作効率を高めることができるとともに放熱性能の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態における電子機器の冷却装置を示す縦断面図である。
【図2】第2の実施形態における電子機器の冷却装置を示す縦断面図である。
【図3】第3の実施形態における電子機器の冷却装置を示す縦断面図である。
【図4】第4の実施形態における電子機器の冷却装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1に基づき説明する。なお、本願明細書においては、便宜上、図1の上方を上面、下方を下面として説明し、左右方向を側方として説明する。
【0021】
図1において、冷却装置1はヒートシンク2の上面側に第1金属部材3、第1絶縁部材4、金属基板5が積層され、ヒートシンク2の下面側に第2金属部材7及び第2絶縁部材8が積層された構成であり、金属基板5に発熱素子としての半導体素子6が実装されている。
【0022】
ヒートシンク2は、所定の空間を開けた天板9と底板10との間にフィン11を配置してフィン11の間に冷媒流路12を形成している。天板9及び底板10の外周縁部には側板13が設けられる。側板13には、給水パイプ14と排水パイプ15が接続されている。ヒートシンク2を構成する天板9、底板10、フィン11、側板13、給水パイプ14及び排水パイプ15はアルミニウムを主成分とする材料等の熱伝達性の高い金属材で構成されている。
【0023】
天板9は、金属材16と、金属材16のフィン11と接する面に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材17とからなるクラッド材で構成され、底板10は、金属材18と、金属材18のフィン11と接する面に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材19とからなるクラッド材で構成されている。天板9のろう材17及び底板10のろう材19はフィン11を接合するために用いられる。なお、ヒートシンク2においては、冷媒としての水が給水パイプ14から冷媒流路12に供給され、冷媒流路12で温められた水は排水パイプ15からラジエター20に送られて放熱され、ポンプ21によって給水パイプ14から再び冷媒流路12に供給される。
【0024】
第1金属部材3は、例えば複数の孔を有するアルミプレートで形成された第1層の金属材22と、第1層の金属材22のヒートシンク2の天板9と対向する面に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材24とからなるクラッド材、及びアルミプレートで形成された第2層の金属材23と、第2層の金属材23の第1絶縁部材4と対向する面に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材25とからなるクラッド材がろう材あるいは他の手段により接着され、一体化された構成を有する。
【0025】
第2金属部材7は、第1金属部材3と同様に、例えば複数の孔を有するアルミプレートで形成される第1層の金属材26と、第1層の金属材26のヒートシンク2の底板10と対向する面に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材28とからなるクラッド材、及びアルミプレートで形成された第2層の金属材27と、第2層の金属材27の第2絶縁部材8と対向する面に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材29とからなるクラッド材がろう材あるいは他の手段により接着され、一体化された構成を有する。
【0026】
第1絶縁部材4及び第2絶縁部材8は窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)等の窒化物系のセラミックスあるいはアルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)等の酸化物系のセラミックスで構成されている。
金属基板5はアルミニウムからなる金属材30と、金属材30の第1絶縁部材4と対向する面(下面)に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材31とからなるクラッド材で構成されている。金属基板5の第1絶縁部材4と対向する面と反対側の面(上面)には、半導体素子6が搭載され、金属基板5及び半導体素子6をはんだ付け及びボンディングワイヤ(図示せず)等によって接続することにより電子回路が構成される。
【0027】
ヒートシンク2の天板9、底板10、第1金属部材3、第2金属部材7及び金属基板5におけるクラッド材の構成は圧延による圧着、めっきあるいは印刷等の公知の方法を用いて製造することができる。また、本実施形態の場合、ろう材は同一の組成を有するものを使用しているが、ろう材の溶融温度の差が小さければ異なる組成のものを使用しても構わない。
【0028】
以上の構成を有する冷却装置1は次のようにして製作される。図示しない製作台上に、第2絶縁部材8、第2金属部材7の第2層の金属材27と第1層の金属材26、底板10、フィン11、天板9、第1金属部材3の第1層の金属材22と第2層の金属材23、第1絶縁部材4及び金属基板5を順に積層する。この積層体を真空雰囲気中において積層方向に加圧するとともに加熱し、所定温度に達すると、各クラッド材を構成するろう材が溶融する。
【0029】
このため、第1金属部材3はろう材24によって天板9の上面にろう付けされるとともに、ろう材25によって第1絶縁部材4の下面にろう付けされ、金属基板5はろう材31によって第1絶縁部材4の上面にろう付けされる。また、第2金属部材7はろう材28によって底板10の下面にろう付けされるとともに、ろう材29によって第2絶縁部材8の上面にろう付けされる。さらに、フィン11は上面を天板9の下面にろう材17によってろう付けされるとともに下面を底板10の上面にろう材19によってろう付けされる。
【0030】
従って、冷却装置1を構成するヒートシンク2、第1及び第2金属部材3、7、金属基板5及び第1、第2絶縁部材4、8の各部材は一括してろう付けすることができ、冷却装置1の製作工程を簡略化して製作効率を大幅に高めることができる。また、半導体素子6以外の各接合面は全てろう付けにより接合されるため、従来のはんだ付けを使用した場合に比べ、放熱性能の低下を抑えることができる。
【0031】
なお、ヒートシンク2については、天板9、底板10及びフィン11を上記の方法で一括ろう付けした後、側板13、給水パイプ14及び排水パイプ15を適宜手段により接着してもよいし、天板9、底板10、フィン11、側板13、給水パイプ14及び排水パイプ15を一括ろう付けしてもよい。また、半導体素子6は上記の方法により一括ろう付けされた金属基板5の上面に実装される。
【0032】
(第2の実施形態)
図2に示す第2の実施形態は、第1の実施形態における第1、第2金属部材3、7の構成及び第1絶縁部材4上に搭載される部材の構成を変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0033】
第2の実施形態における冷却装置32は、天板9のフィン11と接する面と反対側の面に第1金属部材33、第1絶縁部材4、半導体モジュール35を順に積層し、底板10のフィン11と接する面と反対側の面に第2金属部材34、第2絶縁部材8を順に積層した構成である。
【0034】
第1金属部材33は、アルミニウムからなる金属材36と、金属材36のヒートシンク2の天板9と対向する面(下面)に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材37と、金属材36の第1絶縁部材4と対向する面(上面)に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材38とからなるクラッド材で構成されている。第2金属部材34は、第1金属部材33と同一の構成を有し、アルミニウムからなる金属材39と、金属材39のヒートシンク2の底板10と対向する面(上面)に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材40と、金属材39の第2絶縁部材8と対向する面(下面)に積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材41とからなるクラッド材で構成されている。半導体モジュール35は基板上に半導体素子を実装して構成された絶縁型又は非絶縁型のモジュールである。
【0035】
第2の実施形態の冷却装置32は、次のようにして製作される。図示しない製作台上に、第2絶縁部材8、第2金属部材34、底板10、フィン11、天板9、第1金属部材33及び第1絶縁部材4を順に積層した状態で第1の実施形態と同様に加圧状態で加熱し、各クラッド材のろう材を溶融する。このため、第1金属部材33はろう材37によって天板9の上面にろう付けされ、ろう材38によって第1絶縁部材4の下面にろう付けされる。第2金属部材34はろう材40によって底板10の下面にろう付けされ、ろう材41によって第2絶縁部材8の上面にろう付けされる。フィン11の上面及び下面はそれぞれ第1の実施形態と同様に、ろう材17によって天板9の下面にろう付けされるとともにろう材19によって底板10の上面にろう付けされる。
【0036】
第2の実施形態においても、ヒートシンク2の天板9、底板10、第1金属部材33及び第2金属部材34が金属材とろう材からなるクラッド材によって構成されているため、一括してろう付けすることができ、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、一括ろう付けした後、第1絶縁部材4上に半導体モジュール35をねじ止め等の手段によって接合することができ、組み付け作業が容易となる。
【0037】
(第3の実施形態)
図3に示す第3の実施形態は、第2の実施形態における第2金属部材34及び第2絶縁部材8の構成を変更したもので、第2の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0038】
第3の実施形態における冷却装置42は天板9のフィン11と接する面と反対側の面に第1金属部材33、第1絶縁部材4及び半導体モジュール35を順に積層し、底板10のフィン11と接する面と反対側の面に金属板材43を積層した構成である。金属板材43は鋼材44にアルミニウム材のめっき層45を施したアルミニウムめっき鋼板により構成されている。また、底板10は金属材18と、金属材18のフィン11と接する面及びフィン11と接する面と反対側の面にそれぞれ積層されるアルミニウム−シリコン(Al−Si)系のろう材19及び46とからなるクラッド材で構成されている。
【0039】
第3の実施形態の冷却装置42は、次のようにして製作される。図示しない製作台上に、金属板材43、底板10、フィン11、天板9、第1金属部材33及び第1絶縁部材4を順に積層した状態で第1および第2の実施形態と同様に加圧状態で加熱し、各クラッド材のろう材を溶融する。
このため、第1金属部材33はろう材37によって天板9のフィン11と接する面と反対側の面にろう付けされ、ろう材38によって第1絶縁部材4の下面にろう付けされる。金属板材43は底板10のろう材46によって底板10のフィン11と接する面と反対側の面にろう付けされる。フィン11の天板9と接する面及び底板10と接する面はそれぞれ第2の実施形態と同様に、ろう材17によって天板9にろう付けされるとともにろう材19によって底板10にろう付けされる。
【0040】
第3の実施形態においても、第1金属部材33、ヒートシンク2の天板9及び底板10が金属材とろう材からなるクラッド材によって構成されているため、金属板材43を含め、一括してろう付けすることができ、第1及び第2の実施形態と同様に冷却装置42の製作効率を大幅に高めることができる。また、ヒートシンク2や各基板の反りを抑制するとともにろう付け接合のため、長期間にわたり放熱性能の低下を抑えることができる。
【0041】
なお、第3の実施形態は、ヒートシンク2の底板10を金属材18と、金属材18のフィン11と接する面に積層されるろう材19とからなるクラッド材で構成し、金属板材43をめっき層45の底板10と接触する面にろう材を積層したクラッド材で構成しても一括してろう付けすることが可能である。
【0042】
(第4の実施形態)
図4に示す第4の実施形態は、第2の実施形態におけるヒートシンク2の構成を変更するとともに第2金属部材34及び第2絶縁部材8を除いた構成で、第2の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0043】
第4の実施形態における冷却装置47はヒートシンク48の天板9のフィン11と接する面と反対側の面に第1金属部材33、第1絶縁部材4及び半導体モジュール35を順に積層した構成である。ヒートシンク48は所定の空間を開けた天板9と底板10との間にフィン11を配置してフィン11の間に冷媒流路12を形成している。天板9はアルミニウム材等の金属材16と金属材16のフィン11と接する面に積層されるろう材17とからなるクラッド材で構成され、底板10はアルミニウム材等の金属材18と金属材18のフィン11と接する面に積層されるろう材19とからなるクラッド材で構成されている。天板9及び底板10の外周縁部には樹脂製の側板49が設けられ、側板49の一部に樹脂製の給水パイプ50と樹脂製の排水パイプ51が接続されている。また、底板10のフィン11と接する面と反対側の面に樹脂製の補助板52が取り付けられている。
【0044】
ヒートシンク2の冷媒流路12を形成する側板49、給水パイプ50及び排水パイプ51は、図面上単純化して示しているが、実際には複雑な形状を有しているため、金属材では形成し難いという問題がある。第4の実施形態は、天板9、底板10及びフィン11を金属材で構成することにより良好な放熱性が得られ、側板49、補助板52、給水パイプ50及び排水パイプ51を樹脂製とすることにより複雑な形状でも容易に形成することができる。
【0045】
なお、第4の実施形態は補助板52を無くすことができる。補助板52を無くした実施形態では、底板10のフィン11と接する面と反対側の面に、第1の実施形態に示した第2金属部材7及び第2絶縁部材8、第2の実施形態に示した第2金属部材34及び第2絶縁部材8、第3の実施形態に示した金属板材43等を選択して積層することができ、各実施形態の効果に加え、ヒートシンクを容易に形成することができるという効果を得ることができる。
【0046】
本願発明は、前記した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本願発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、次のように実施することができる。
【0047】
(1)第1の実施形態において、第1金属部材3は第1層の金属材22又は第2層の金属材23のいずれか一方の金属材を図1の上面及び下面の両面に積層されるろう材とのクラッド材で構成し、他方の金属材を前記一方の金属材と反対側の面に積層されるろう材とのクラッド材で構成しても良い。同様に、第2金属部材7は第1層の金属材26又は第2層の金属材27のいずれか一方の金属材を図1の上面及び下面の両面に積層されるろう材とのクラッド材で構成し、他方の金属材を前記一方の金属材と反対側の面に積層されるろう材とのクラッド材で構成しても良い。
【0048】
(2)第1の実施形態は、第1金属部材3を、第1層の金属材22に、第2層の金属材23と、第2層の金属材23の第1絶縁部材4と対向する面に積層されるろう材25とからなるクラッド材を接合した構成にするとともにヒートシンク2の天板9を金属材16と、金属材16のフィン11と接する面と反対側の面及びフィン11と接する面にそれぞれ積層されるろう材とからなるクラッド材で構成しても、ろう材による一括接合を行なうことができる。また、第2金属部材7を、第1層の金属材26に、第2層の金属材27と、第2層の金属材27の第2絶縁部材8と対向する面に積層されるろう材29とからなるクラッド材を接合した構成にするとともにヒートシンク2の底板10を金属材18と、金属材18のフィン11と接する面及びフィン11と接する面と反対側の面にそれぞれ積層されるろう材とからなるクラッド材で構成してもろう材による一括接合を行なうことができる。さらに、前記両者の構成を組み合わせて実施することも可能である。
【0049】
(3)第2の実施形態において、第1金属部材33を金属材36と、金属材36の天板9と接する面と反対側の面に積層されるろう材とからなるクラッド材で構成するとともにヒートシンク2の天板9を金属材16と、金属材16のフィン11と接する面と反対側の面及びフィン11と接する面にそれぞれ積層されるろう材とからなるクラッド材で構成しても、ろう材による一括接合を行なうことができる。また、第2金属部材34を金属材39と、金属材39の底板10と接する面と反対側の面に積層されるろう材とからなるクラッド材で構成するとともにヒートシンク2の底板10を金属材18と、金属材18のフィン11と接する面及びフィン11と接する面と反対側の面にそれぞれ積層されるろう材とからなるクラッド材で構成しても、ろう材による一括接合を行なうことができる。さらに、前記両者の構成を組み合わせて実施することも可能である。
【0050】
(4)第1及び第2の実施形態はヒートシンク2の下方に設けられる第2金属部材7及び34、第2絶縁部材8を除いた構成でもよい。
(5)ヒートシンク2は水冷式に限らず空冷式にて構成することも可能である。
(6)第1及び第2の実施形態における第1金属部材3及び33の金属材、第2金属部材7及び34の金属材、金属基板5の金属材はいずれもアルミニウム材を使用しているが、銅材あるいは他の熱伝達性の良い金属材を使用することもできる。この場合のろう材は、銅材あるいは他の金属材の接合に合う銅ろうや銀ろう等他のろう材を適宜選択して使用してもよい。
(7)第1の実施形態において半導体素子6で示した発熱素子は、抵抗あるいはコンデンサー等の素子でもよい。
(8)本願発明による冷却装置を備えた電子機器は、車載用に限らず、民生機器用や比較的小型の機器において実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、32、42、47 冷却装置
2、48 ヒートシンク
3、33 第1金属部材
4 第1絶縁部材
5 金属基板
6 半導体素子
7、34 第2金属部材
8 第2絶縁部材
9 天板
10 底板
11 フィン
13、49 側板
14、50 給水パイプ
15、51 排水パイプ
16、18、30、36、39 金属材
17、19、24、25、28、29、31、37、38、40、41、46 ろう材
20 ラジエター
21 ポンプ
22、26 第1層の金属材
23、27 第2層の金属材
35 半導体モジュール
43 金属板材
44 鋼材
45 めっき層
52 補助板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と底板との間にフィンを介在したヒートシンクと、前記天板の前記フィンと接する面と反対側の面に積層される第1金属部材と、前記第1金属部材上に積層される第1絶縁部材とからなる冷却装置であって、
前記天板、前記底板及び前記第1金属部材は金属材とろう材とからなるクラッド材であり、前記フィンは前記天板および前記底板とろう付けされ、前記第1金属部材は前記天板とろう付けされ、前記第1絶縁部材は前記第1金属部材とろう付けされることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第1金属部材の前記ろう材は前記金属材の上面及び下面に積層され、前記天板のろう材及び前記底板のろう材は前記金属材の前記フィンと対向する面に積層されることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記底板の前記フィンと接する面と反対側の面に積層される前記第1金属部材と同じ構成のクラッド材からなる第2金属部材と、前記第2金属部材に積層される前記第1絶縁部材と同じ構成のクラッド材からなる第2絶縁部材とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1絶縁部材上に発熱素子が実装可能な金属基板を積層し、前記金属基板は金属材と該金属材の前記第1絶縁部材と対向する面に積層されたろう材とからなるクラッド材であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記底板の前記フィンと接する面と反対側の面にアルミニウムめっき鋼板からなる金属板材を積層し、前記底板は金属材と該金属材の上面及び下面に積層されるろう材とからなるクラッド材であることを特徴する請求項1又は請求項2又は請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記第1絶縁部材上に半導体モジュールを固定したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記第2絶縁部材上に半導体モジュールを固定したことを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−210822(P2011−210822A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75175(P2010−75175)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】