説明

冷陰極素子及びその製造方法並びにそれを備えた冷陰極ディスプレイ、照明装置及び液晶表示素子用バックライト

【課題】触媒薄膜にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維を備えた冷陰極素子を提供すること。
【解決手段】冷陰極素子10は、ガラス基板11と、ガラス基板11上に形成されたカソード電極層12と、カソード電極層12上に順次形成されたグラニュラー触媒薄膜13、第1保護層14及び第2保護層15と、カソード電極層12上に形成された絶縁層16と、絶縁層16上に形成されたゲート電極層17と、電界に応じて電子を放出する炭素系微細繊維19とを備え、第1保護層14をアルカリ性のエッチング液で溶解することができる材料で形成し、グラニュラー触媒薄膜13にダメージを与えることのない製造プロセスで、従来よりも径の細い炭素系微細繊維19を成長させる構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界に応じて電子を放出する冷陰極素子及びその製造方法並びにそれを備えた冷陰極ディスプレイ、照明装置及び液晶表示素子用バックライトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノコイルなどのような炭素系の微細な繊維状物質(以下「炭素系微細繊維」という。)は、優れた電子放出特性を持つため、冷陰極材料として注目されている。また、炭素系微細繊維を用いた冷陰極素子を、ディスプレイや照明装置、撮像装置などのデバイスに適用することが検討されている。特に、冷陰極素子を平面上に並べることによりディスプレイに適用した冷陰極ディスプレイは、高い発光効率、速い応答速度、広い色再現性、低真空環境で動作可能といった特徴を有するディスプレイであり、次世代の大型ディスプレイとして期待されている。
【0003】
しかしながら、炭素系微細繊維を用いた冷陰極素子アレイにおいては、各冷陰極素子からの電子放出量にばらつきがあり、例えばディスプレイに冷陰極素子アレイを用いた場合、表示させた画像が不鮮明になってしまうという課題があった。これを解決するためには、1つの画素あたりに複数の冷陰極素子を設け、これらのアンサンブル効果により、電子放出量のばらつきを低減するという方法が考えられる。しかし、これまでの実験から、例えば1画素内に35〜55個程度の冷陰極素子を設けた場合でも、電子放出量のばらつきが大きく、ディスプレイの実用化には課題があった(例えば、非特許文献1参照)。この原因として、遷移金属や貴金属、又はそれらの合金などで形成した触媒薄膜を炭素系微細繊維の成長用触媒に用いた場合、十分に細い炭素系微細繊維が成長する確率が低く、実際に電子放出して正常に機能している冷陰極素子が少ないことが挙げられる。
【0004】
そこで、本発明の発明者らは、遷移金属や貴金属などの触媒材料に酸化物を混合したグラニュラー触媒薄膜を用い、従来よりも細い炭素系微細繊維を成長させる方法を提案し、電子放出特性が大幅に向上することを見出した(例えば、特許文献1参照)。すなわち、グラニュラー触媒薄膜を冷陰極素子内の炭素系微細繊維の成長用触媒に用いて冷陰極素子を製造することにより、冷陰極素子アレイにおける冷陰極素子の電子放出量がばらついてしまう課題を解決できる。
【0005】
しかしながら、グラニュラー触媒薄膜を冷陰極素子内に用いる際には、以下のような課題があった。
【0006】
(1)従来は、例えば、非特許文献2に示されているように、高密度に冷陰極素子を配置する場合、触媒薄膜を除く冷陰極素子を製造した後に、遷移金属や貴金属、又はそれらの合金を用いた触媒薄膜を電子ビーム蒸着法により成膜し、その後に熱CVDなどにより炭素系微細繊維を成長させていた。このため、触媒薄膜は冷陰極素子の製造時に用いるエッチング時のプラズマやエッチング液によるダメージを受けることがなかった。しかし、グラニュラー触媒薄膜は、蒸気圧が大きく異なる複数の材料を含む場合があるため、電子ビーム蒸着法では成膜することが難しい。したがって、触媒薄膜の成膜には、蒸気圧の異なる材料でも成膜可能なスパッタ法を用いることが適している。しかし、スパッタ法を用いて冷陰極素子内に成膜すると、スパッタターゲットから放出される粒子が、アルゴンなどの放電用ガス粒子に衝突して直進性が著しく損なわれるため、冷陰極素子を高密度に集積しているような場合、触媒薄膜が冷陰極素子内の底部だけではなく絶縁層の側壁にも付着する場合があった。その結果、図10に示すように、絶縁層の側壁に炭素系微細繊維が成長して、これがゲート電極と接触して短絡を起こす原因となり、冷陰極素子から良好な電子放出を得られない場合があった。
【0007】
(2)また、例えば、特許文献2及び3に示されているように、触媒薄膜を除く冷陰極素子を製造した後に、フォトレジストなどを用いて、触媒薄膜を付着させたくない場所を保護し、その後冷陰極素子の底部にのみフォトリソグラフィー法により開口部を設け、その後スパッタ法により成膜することで、触媒薄膜の側壁への付着を防ぐ方法がある。しかし、この方法では冷陰極素子を製造した後に、素子の底部に開口部を設ける際、露光過程において極めて精度の高い位置合わせ技術を持つ装置が必要になり、またガラスのように熱工程により複雑な膨張が起こる材料を基板に用いると位置合わせが極めて困難になるため、ガラス以外の高価な基板を用いなければならず、製造装置コスト及び材料コストが増大する原因となっていた。
【0008】
(3)また、例えば、特許文献4に示されているように、カソード配線上に予め触媒薄膜を形成し、その上に保護層、絶縁層、ゲート電極層を順次積層し、ゲート電極膜上にマスクパターンを設け、ゲート電極層、絶縁層をドライエッチングで開口して保護層を露出させ、その後触媒薄膜と選択比のあるエッチング液を用いたウェットエッチングにより、保護層を除去し、その後熱CVD法などにより炭素系微細繊維を成長させる方法がある。
【0009】
しかしながら、この方法による場合は次のような課題があった。冷陰極素子に電圧を印加して動作させる際、放出される電子が大きな発散角を持たないような電界分布が得られ、かつ、炭素系微細繊維の先端に十分に大きな電界を加えるためには、ゲート電極と炭素系微細繊維との間に絶縁層(誘電体層)が存在しないような配置にすることが望ましい。したがって、絶縁層を水平方向にウェットエッチングして絶縁層を庇状に形成する必要がある。この場合、保護層が、(a)絶縁層を垂直方向にドライエッチングする際に、絶縁層に対して選択比が十分に大きいこと、(b)絶縁層を水平方向にウェットエッチングする際に、絶縁層に対して選択比が十分に大きいこと、(c)保護層を除去するウェットエッチングの際に、触媒薄膜に対して選択比が十分に大きいこと、(d)熱CVD法など、炭素系微細繊維を成長させる際の温度条件に対し、耐性を有すること、の条件を同時に満たすことが必要になり、材料の選択自由度が極めて小さくなる。特に、(c)についてはグラニュラー触媒薄膜のように複数の成分を混合した材料に対しては、非常に選択が難しくなる。このため、グラニュラー触媒薄膜に用いる材料の選択自由度も小さくなり、低電圧で高電流密度を得ることができ、電子放出特性の揃った炭素系微細繊維を成長させることが困難であった。
【非特許文献1】第65回応用物理学会学術講演会講演予稿集NO.2,1p-R-9,p.655、萩原ほか、"ホール径微小化によるGNF−FEDの電界電子放出特性の一様性改善"
【非特許文献2】K.Hagiwara et al.,"Full Color Graphite Nanofiber FED with 0.15mm Pixel Pitch", In Proceedings of The 12th International Display Workshops in conjunction with Asia Display 2005,TAKAMATSU,JAPAN,2005,pp.1663-66.
【特許文献1】特開2007−324107号公報
【特許文献2】特開2002−150922号公報
【特許文献3】特開2003−7200号公報
【特許文献4】特開2005−5229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、冷陰極素子の電子放出特性のばらつきを抑えるため、従来よりも径の細い炭素系微細繊維の成長用触媒としてグラニュラー触媒薄膜を用いる手法は有用であるが、冷陰極素子の製造工程におけるプラズマやエッチング液により、グラニュラー触媒薄膜がダメージを受けることがあったので、その改善が望まれていた。
【0011】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、触媒薄膜にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維を備えた冷陰極素子及びその製造方法並びにそれを備えた冷陰極ディスプレイ、照明装置及び液晶表示素子用バックライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、検討を重ねた結果、(1)少なくとも2種類の材料が触媒薄膜上に積層された保護層を用いる、(2)触媒薄膜の直上の保護層には両性金属やSiなどの材料を用いる、ことにより従来の課題を解決することができることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の冷陰極素子は、基板上に形成されたカソード電極層と、該カソード電極層上に形成された触媒薄膜と、該触媒薄膜上に形成され少なくとも2種類の材料が順次積層された保護層と、該保護層上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に形成されたゲート電極層と、該ゲート電極層の表面から前記触媒薄膜に至る開口部と、該開口部によって露出された触媒薄膜上に成長させた炭素系微細繊維とを備えた構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の冷陰極素子は、少なくとも2種類の材料が順次積層された保護層を触媒薄膜上に形成した後、触媒薄膜の一部を露出させ、露出した触媒薄膜上に炭素系微細繊維を成長させるので、触媒薄膜にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維を備えることができる。その結果、本発明の冷陰極素子は、低電圧で高電流密度を得ることができ、電子放出特性の揃った炭素系微細繊維を備えることができる。
【0015】
また、本発明の冷陰極素子は、前記ゲート電極層上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に形成され前記炭素系微細繊維から放出された電子を集束するフォーカス電極層とを備え、前記開口部は、前記フォーカス電極層の表面から前記触媒薄膜に至るものである構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の冷陰極素子は、フォーカス電極層に電圧を印加することによって、電子ビームの集束効果を高めることができる。
【0017】
なお、本発明の冷陰極素子は、前記触媒薄膜が、SiO、SiO、Alの少なくとも1つと、Fe、Ni、Cr、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、Y、Ce、Euの少なくとも1つを含む金属、合金及び混合物のいずれかとを含む構成が好ましい。
【0018】
また、本発明の冷陰極素子は、前記保護層の最下層が、Si、Al、Zn、Sn、Pbのいずれか1つを含む構成が好ましい。
【0019】
さらに、本発明の冷陰極素子は、前記保護層の最上層が、SiN及びSiOのいずれかを含む構成が好ましい。
【0020】
さらに、本発明の冷陰極素子は、前記炭素系微細繊維が、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイルのいずれか1つを含む構成が好ましい。
【0021】
本発明の冷陰極素子の製造方法は、基板上にカソード電極層を形成する工程と、前記カソード電極層上に触媒薄膜を形成する工程と、前記触媒薄膜上に少なくとも2種類の材料を順次積層して保護層を形成する工程と、前記保護層上に絶縁層を形成する工程と、開口部を有するゲート電極層を前記絶縁層上に形成する工程と、前記開口部を介してドライエッチングにより前記絶縁層を前記基板面に対して垂直方向にエッチングして前記保護層を露出させる工程と、ウェットエッチングにより前記絶縁層を水平方向にエッチングする工程と、前記保護層に開口部を形成し前記触媒薄膜の少なくとも一部を露出させる工程と、露出した触媒薄膜上に炭素系微細繊維を成長させる工程とを含む構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の冷陰極素子の製造方法は、少なくとも2種類の材料が順次積層された保護層を触媒薄膜上に形成した後、触媒薄膜の一部を露出させ、露出した触媒薄膜上に炭素系微細繊維を成長させるので、触媒薄膜にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維を備える冷陰極素子を製造することができる。その結果、本発明の冷陰極素子の製造方法は、低電圧で高電流密度を得ることができ、電子放出特性の揃った炭素系微細繊維を備える冷陰極素子を製造することができる。
【0023】
なお、本発明の冷陰極素子の製造方法は、前記触媒薄膜の少なくとも一部を露出させる際に、前記保護層の最下層をアルカリ性のエッチング液によりウェットエッチングする工程を含む構成が好ましい。
【0024】
本発明の冷陰極ディスプレイは、冷陰極素子が複数設けられた冷陰極基板と、前記炭素系微細繊維から放出された電子の通過によって発光する蛍光体が前記冷陰極基板と対向する面側に設けられたアノード基板と、前記冷陰極基板と前記アノード基板との間に設けられたスペーサーとを備えた構成を有している。
【0025】
この構成により、本発明の冷陰極ディスプレイは、触媒薄膜にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維を有する冷陰極素子と、炭素系微細繊維が放出した電子を捕捉するアノード基板とを備えるので、従来よりも鮮明な画像を表示することができる。
【0026】
また、この構成により、本発明の冷陰極ディスプレイは、冷陰極素子が、低電圧で高電流密度を得ることができ、電子放出特性の揃った炭素系微細繊維を備えることとなるので、従来よりも省電力化を図ることができる。
【0027】
本発明の照明装置は、冷陰極素子が複数設けられた冷陰極基板と、前記炭素系微細繊維から放出された電子の通過によって発光する蛍光体が前記冷陰極基板と対向する面側に設けられたアノード基板と、前記冷陰極基板と前記アノード基板との間に設けられたスペーサーとを備えた構成を有している。
【0028】
この構成により、本発明の照明装置は、触媒薄膜にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維を有する冷陰極素子と、炭素系微細繊維が放出した電子を捕捉するアノード基板とを備えるので、従来よりも光量ムラの少ない光を出射することができる。
【0029】
また、この構成により、本発明の照明装置は、冷陰極素子が、低電圧で高電流密度を得ることができ、電子放出特性の揃った炭素系微細繊維を備えることとなるので、従来よりも省電力化を図ることができる。
【0030】
本発明の液晶表示素子用バックライトは、冷陰極素子が複数設けられた冷陰極基板と、前記炭素系微細繊維から放出された電子の通過によって予め定められた色を発光する蛍光体が前記冷陰極基板と対向する面側に設けられたアノード基板と、前記冷陰極基板と前記アノード基板との間に設けられたスペーサーとを備えた構成を有している。
【0031】
この構成により、本発明の液晶表示素子用バックライトは、触媒薄膜にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維を有する冷陰極素子と、カラー表示が可能なアノード基板とを備えるので、従来よりも鮮明なカラー液晶画像の表示に寄与することができる。
【0032】
また、この構成により、本発明の液晶表示素子用バックライトは、冷陰極素子が、低電圧で高電流密度を得ることができ、電子放出特性の揃った炭素系微細繊維を備えることとなるので、従来よりも省電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、触媒薄膜にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維を備えた冷陰極素子及びその製造方法並びにそれを備えた冷陰極ディスプレイ、照明装置及び液晶表示素子用バックライトを提供することができるという効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
【0035】
図1及び図2は、本実施の形態における冷陰極素子の製造工程を示す概念的な断面図であって、図1は[工程11]〜[工程16]、図2は[工程17]〜[工程20]における冷陰極素子の断面を示す。
【0036】
本実施の形態における冷陰極素子10は、図2の[工程20]に示すような構成を有する。すなわち、本実施の形態における冷陰極素子10は、ガラス基板11と、ガラス基板11上に形成されたカソード電極層12と、カソード電極層12上に順次形成されたグラニュラー触媒薄膜13、第1保護層14及び第2保護層15と、カソード電極層12及び第2保護層15の上面に形成された絶縁層16と、絶縁層16上に形成されたゲート電極層17と、ゲート電極層17上に形成されたフォトレジスト層18と、グラニュラー触媒薄膜13上に形成され、電界に応じて電子を放出する炭素系微細繊維19とを備えている。
【0037】
次に、本実施の形態における冷陰極素子10の製造工程について説明する。
【0038】
[工程11]ガラス基板11上にカソード電極層12となる金属を蒸着法やスパッタ法などにより成膜し、必要があればフォトリソグラフィー法を用いてストライプ配線状に加工する。カソード電極層12の材料としては、例えば、Cr、Au、Ag、Cu、Nb、Taなどを用いることができる。
【0039】
[工程12]スピンコート法などを用いてフォトレジストをカソード電極層12上に塗布し、フォトレジスト層20を形成する。フォトレジスト層20としては、例えばリフトオフ用レジスト層20a及びポジレジスト層20bの2層構成とすることができる。続いて、フォトリソグラフィー法を用いてフォトレジスト層20の開口部20cを設ける。この開口部20cは、カソード電極層12上の、グラニュラー触媒薄膜13の成膜を所望する位置に設ける。
【0040】
[工程13]カソード電極層12上にグラニュラー触媒薄膜13をスパッタ法により成膜し、次にグラニュラー触媒薄膜13上に第1保護層14を蒸着法やスパッタ法などにより成膜する。
【0041】
グラニュラー触媒薄膜13の材料としては、SiO、SiO、Alの少なくとも1つと、Fe、Ni、Cr、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、Y、Ce、Euの少なくとも1つを含む金属、合金及び混合物のいずれかとを含むものが好ましい。
【0042】
第1保護層14は、第1保護層14をウェットエッチングやドライエッチングにより除去する際に、グラニュラー触媒薄膜13に対して選択比が十分に大きく、後述する第2保護層15をウェットエッチングやドライエッチングにより除去する際に、第2保護層15に対して選択比が十分に大きい材料が適している。例えば、第1保護層14の材料として、SiやAl、Zn、Sn、Pbなどの両性金属が挙げられる。これらは、一般にアルカリ性のエッチング液により溶解させることができるため、グラニュラー触媒薄膜13に与えるダメージを極力抑えることができて好ましい。ただし、AlやZnの場合は比較的融点が低いため、炭素系微細繊維19の成長にプラズマCVD法などを用いる場合には適しているが、熱CVD法などの高温プロセスを用いる場合には適していない。
【0043】
続いて、第1保護層14上に第2保護層15を蒸着法やスパッタ法などにより成膜する。第2保護層15は、後述する絶縁層16に対して、ウェットエッチングする際に、十分に選択比が大きく、後述する絶縁層16に対して、ドライエッチングする際に、十分に選択比が大きい材料が適している。例えば、第2保護層15の材料として、SiNやSiOが挙げられる。
【0044】
その後、[工程12]において塗布したフォトレジスト層20を例えばリフトオフ法により除去することで、カソード電極層12上の所望の位置に、グラニュラー触媒薄膜13、第1保護層14及び第2保護層15からなる薄膜をパターンニングすることができる。
【0045】
[工程14]絶縁層16を蒸着法やスパッタ法などにより成膜して積層する。続いてゲート電極層17となる金属を蒸着法やスパッタ法などにより成膜して積層し、必要があればフォトリソグラフィー法を用いてストライプ配線状に加工する。ゲート電極層17としては、前述のカソード電極層12の材料と同様なものを用いることができる。
【0046】
[工程15]スピンコート法などを用いてフォトレジストをゲート電極層17上に塗布し、フォトレジスト層18を形成する。続いて、フォトリソグラフィー法を用いて、冷陰極素子10の開口部(電子が放出される窓)を設ける位置に、フォトレジスト層18の開口部18aを設ける。
【0047】
[工程16]ドライエッチング又はウェットエッチングにより、ゲート電極層17をエッチングし、絶縁層16を露出させる。
【0048】
[工程17]ドライエッチングにより、絶縁層16を垂直方向にエッチングし、第2保護層15を露出させる。
【0049】
[工程18]ウェットエッチングにより、絶縁層16を水平方向にエッチングする。続いて、第2保護層15をドライエッチング又はウェットエッチングにより除去し、第1保護層14を露出させる。
【0050】
[工程19]アルカリ性のエッチング液を用いたウェットエッチングにより、第1保護層14を除去し、グラニュラー触媒薄膜13を露出させる。
【0051】
[工程20]熱CVD法やプラズマCVD法などにより、グラニュラー触媒薄膜13上に炭素系微細繊維19を成長させる。炭素系微細繊維19は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイルのいずれか1つを含むことが好ましい。
【0052】
ここで、第2保護層15は選択比に関する条件を満たすことができれば、別々の材料を順次積層して2層以上とすることもできる。この構成において、保護層の最上層は、SiN及びSiOのいずれかを含むことが好ましい。
【0053】
また、電子ビームの集束効果を高めるためには、ゲート電極層17上にさらに絶縁層及びフォーカス電極層を順次積層することもできる。図3は、この構成とした冷陰極素子10が備える炭素系微細繊維19の走査型電子顕微鏡の写真画像である。この構成例では、グラニュラー触媒薄膜13としてFeNiCr合金とSiOとのモル比30:70の混合物を用いて成膜した薄膜、第1保護層14にSi、第2保護層15にSiN、絶縁層16及びゲート電極層17上の絶縁層にSiO、カソード電極層12、ゲート電極層17、フォーカス電極層にCrを用い、熱CVD法の条件をCOガスとHガスとを1:1で混合したガス中で600°C、10分間加熱とし、炭素系微細繊維19を成長させた。そして、ゲート電極層17とフォーカス電極層との間の電圧を0Vにし、カソード電極層12に−50Vを印加したところ、1kVを印加したアノード電極上の蛍光面に強い発光が観察され、ばらつきが従来に比べて減少したことが確認された。
【0054】
以上のように、本実施の形態における冷陰極素子10によれば、SiやAl、Zn、Sn、Pbなどの両性金属で形成された第1保護層14と、SiNやSiOで形成された第2保護層15とをグラニュラー触媒薄膜13上に形成してグラニュラー触媒薄膜13の一部を露出させ、露出したグラニュラー触媒薄膜13上に炭素系微細繊維19を成長させる構成を有し、グラニュラー触媒薄膜13直上(保護層の最下層)の第1保護層14をアルカリ性のエッチング液で溶解することができる材料で形成したので、グラニュラー触媒薄膜13にダメージを与えることのない製造プロセスで容易に製造可能で、従来よりも径の細い炭素系微細繊維19を備えることができる。
【0055】
その結果、本実施の形態における冷陰極素子10は、従来よりも径の細い炭素系微細繊維19を備えることによって、アレイ化された際の電子放出特性を揃えることができるとともに、低電圧で高電流密度を得ることができるので従来よりも省電力化を図ることができる。
【0056】
したがって、本実施の形態における冷陰極素子10は、例えば、冷陰極ディスプレイ、照明装置、液晶表示素子用バックライトなどが備える冷陰極素子として好適に適用できる。以下、これらの具体的な実施例について説明する。なお、実施例で説明する製造工程、材質、寸法、温度条件などは一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例では、炭素系微細繊維としてカーボンナノチューブ及びグラファイトナノファイバーを例示するが、カーボンナノファイバーやカーボンナノコイルを炭素系微細繊維として形成しても同様の効果が得られる。
【0057】
(第1の実施例)
図4〜図6は、本発明に係る冷陰極素子を備えた、第1の実施例としての照明パネルの製造工程を示す概念的な断面図である。図4は[工程101]〜[工程106]、図5は[工程107]〜[工程110]、図6は[工程111]における断面図である。なお、照明パネルは、本発明に係る照明装置の一部品を構成するものである。
【0058】
[工程101]PDP(Plasma Display Panel)用高歪点のガラス基板111上にカソード電極層112となるNbをスパッタ法により200nm成膜し、フォトリソグラフィー法を用いてストライプ配線状に加上した。
【0059】
[工程102]カソード電極層112上にスピンコート法によってレジストを塗布し、フォトレジスト層120を形成した。具体的には、リフトオフ用レジストLOR−3B(化薬マイクロケム(株)製)を塗布してリフトオフ用レジスト層120aを形成し、さらに、ポジレジストTFR−H(東京応化工業(株)製)を塗布してポジレジスト層120bを形成した。
【0060】
続いて、所望の位置に設けられた開口を有するフォトマスクを用いて、カソード電極層112の一部領域を露光量80mJ/cmで露光し、TMAH2.38%溶液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液)で40秒間現像し、フォトレジスト層120に開口部120cを設けた。
【0061】
[工程103]カソード電極層112上に、グラニュラー触媒薄膜113として、FeNiCr合金とSiOとのモル比10:90の混合粉末を焼結して作製したスパッタリングターゲットを用いて、スパッタ法により25nm室温成膜した。続いて、第1保護層114としてAlをスパッタ法により50nm成膜した。さらに、第2保護層115としてSiNをスパッタ法により50nm成膜した。
【0062】
その後、[工程102]において塗布したフォトレジスト層120を、80°Cに熱した106剥離液(東京応化工業(株)製)に浸たして除去し、カソード電極層112の一部領域にグラニュラー触媒薄膜113、第1保護層114及び第2保護層115からなる薄膜をパターンニングした。
【0063】
[工程104]絶縁層116としてSiOをスパッタ法により、3000nm成膜した。続いて、ゲート電極層117となるNbをスパッタ法により200nm成膜して積層した。その後、ゲート電極層117を、カソード電極層112の配線と直交するように、フォトリソグラフィー法を用いてストライプ配線状に加工した。
【0064】
[工程105]スピンコート法を用いてポジレジストTFR−Hをゲート電極層117上に塗布してフォトレジスト層118を形成し、直径5μmの開口部を有するフォトマスクを用いて露光量200mJ/cmで露光し、TMAH2.38%溶液で40秒間現像し、フォトレジスト層118に開口部118aを設けた。
【0065】
[工程106]ドライエッチングにより、ゲート電極層117のNbをエッチングし、絶縁層116を露出させた。
【0066】
[工程107]CHFガスを用いたドライエッチングを120分、印加電力RF150W、流量80sccm、圧力10Paの条件で行い、絶縁層116を垂直方向にエッチングし、第2保護層115を露出させた。
【0067】
[工程108]BHF(バッファードフッ酸)液を用いたウェットエッチングを10分行い、絶縁層116を水平方向に1μmエッチングした。次にCHFガスを用いたドライエッチングを10分、印加電力RF150W、流量80sccm、圧力10Paの条件で行い、第2保護層115を除去した。走査型電子顕微鏡を用いた観察を行ったが、第1保護層114にはダメージが認められなかった。
【0068】
[工程109]室温のNaOH10%溶液に10分間浸して、第1保護層114を除去し、グラニュラー触媒薄膜113を露出させた。走査型電子顕微鏡を用いた観察を行ったが、グラニュラー触媒薄膜113にはダメージが認められなかった。
【0069】
なお、グラニュラー触媒薄膜113や第1保護層114に対する製造上のダメージの有無は、例えば、膜に孔があるか否かを走査型電子顕微鏡で確認することによって判断することができる。
【0070】
[工程110]CガスとHeガスとを1:1で混合し、印加電力RF100Wのマイクロ波プラズマを発生させることにより、カーボンナノチューブ119を成長させた。
【0071】
[工程111]前述のように製造した冷陰極素子を2次元マトリクスアレイ状に配置した背面基板110と、前面基板150とを対向させ、石英などを用いたスペーサー160を両者間に挟み、ガラスフリットを用いて周囲を取り囲んで形成した領域を真空排気し、封止して照明パネル100を製造した。
【0072】
前面基板150は、具体的には次のように製造した。まず、ガラス基板151上にITO(Indium Tin Oxide)をスパッタリング法により成膜し、透明電極層としてITO膜152を形成した。次に、蛍光体153として、SrGaS4:Eu、YS:Eu、ZnS:Ag,Alを混合し、スクリーン印刷法によりITO膜152上に塗布した。
【0073】
この構成において、カソード電極層112に0V、ゲート電極層117に50V、アノード電極であるITO膜152に1kVを印加したところ、カーボンナノチューブ119から電子ビームが放出され、従来に比べ、ばらつきの少ない発光が確認された。
【0074】
また、照明パネル100を液晶表示素子用バックライトとして用いたところ、良好なカラー画像が液晶面に表示された。
【0075】
(第2の実施例)
図7〜図9は、本発明に係る冷陰極素子を備えた、第2の実施例としてのディスプレイパネルの製造工程を示す概念的な断面図である。図7は[工程201]〜[工程206]、図8は[工程207]〜[工程210]、図9は[工程211]における断面図である。なお、本実施例におけるディスプレイパネルは、本発明に係る冷陰極ディスプレイの一部品を構成するものである。
【0076】
[工程201]PDP用高歪点のガラス基板211上にカソード電極層212となるCrをスパッタ法により200nm成膜し、フォトリソグラフィー法を用いてストライプ配線状に加工した。
【0077】
[工程202]カソード電極層212上にスピンコート法によってレジストを塗布し、フォトレジスト層230を形成した。具体的には、リフトオフ用レジストLOR−3Bを塗布してリフトオフ用レジスト層230aを形成し、さらに、ポジレジストTFR−Hを塗布してポジレジスト層230bを形成した。
【0078】
続いて、所望の位置に設けられた開口を有するフォトマスクを用いて、カソード電極層212の一部領域を露光量80mJ/cmで露光し、TMAH2.38%溶液で40秒間現像し、フォトレジスト層230に開口部230cを設けた。
【0079】
[工程203]カソード電極層212上に、グラニュラー触媒薄膜213として、FeNiCr合金とSiOとのモル比50:50の混合粉末を焼結して作製したスパッタリングターゲットを用いて、室温においてスパッタ法により25nm成膜した。第1保護層214としてSiをスパッタ法により50nm成膜した。続いて、第2保護層215としてSiNをスパッタ法により50nm成膜した。
【0080】
その後、[工程202]において形成したフォトレジスト層230を、80°Cに熱した106剥離液に浸たして除去し、カソード電極層212の一部領域にグラニュラー触媒薄膜213、第1保護層214及び第2保護層215からなる薄膜をパターンニングした。
【0081】
[工程204]第1絶縁層216としてSiOをスパッタ法により、3000nm成膜した。続いてゲート電極層217となるCrをスパッタ法により、200nm成膜して積層した。その後、ゲート電極層217を、カソード電極層212の配線と直交するように、フォトリソグラフィー法を用いてストライプ配線状に加工した。さらに、第2絶縁層218としてSiOをスパッタ法により、3000nm成膜した。続いてフォーカス電極層219となるCrをスパッタ法により、200nm成膜して積層した。
【0082】
[工程205]スピンコート法を用いてポジレジストTFR−Hをフォーカス電極層219上に塗布してフォトレジスト層220を形成し、直径5μmの開口部を有するフォトマスクを用いて露光量200mJ/cmで露光し、TMAH2.38%溶液で40秒間現像し、フォトレジスト層220に開口部220aを設けた。
【0083】
[工程206]ウェットエッチングにより、フォーカス電極層219のCrをエッチングし、第2絶縁層218を露出させた。
【0084】
[工程207]CHFガスを用いたドライエッチングを120分、印加電力RF150W、流量80sccm、圧力10Paの条件で行い、第2絶縁層218を垂直方向にエッチングし、ゲート電極層217を露出させた。続いて、ウェットエッチングにより、ゲート電極層217のCrをエッチングし、第1絶縁層216を露出させた。さらに、CHFガスを用いたドライエッチングを120分、印加電力RF150W、流量80sccm、圧力10Paの条件で行い、第1絶縁層216を垂直方向にエッチングし、第2保護層215を露出させた。
【0085】
[工程208]BHF液を用いたウェットエッチングを10分行い、第1絶縁層216及び第2絶縁層218を水平方向に1μmエッチングした。次にCHFガスを用いたドライエッチングを10分、印加電力RF150W、流量80sccm、圧力10Paの条件で行い、第2保護層215を除去した。走査型電子顕微鏡を用いた観察を行ったが、第1保護層214にはダメージが認められなかった。
【0086】
[工程209]60°Cに熱したTMAH25%溶液に10分間浸して、第1保護層214を除去し、グラニュラー触媒薄膜213を露出させた。走査型電子顕微鏡を用いた観察を行ったが、グラニュラー触媒薄膜213にはダメージが認められなかった。
【0087】
[工程210]COガスとHガスとを1:1で混合したガス中で、600°Cで10分間加熱することにより、グラファイトナノファイバー221を成長させた。
【0088】
[工程211]前述のように製造した冷陰極素子を2次元マトリクスアレイ状に配置した背面基板210と、前面基板250とを対向させ、石英などを用いたスペーサー260を両者間に挟み、ガラスフリットを用いて周囲を取り囲んで形成した領域を真空排気し、封止してディスプレイパネル200を製造した。
【0089】
前面基板250は、具体的には次のように製造した。まず、ガラス基板251上にITOをスパッタリング法により成膜し、透明電極層としてITO膜252を形成した。次に、蛍光体253として、YSiO:Tb(緑)、Y:Eu(赤)、YSiO:Ce(青)をスクリーン印刷法によりITO膜252上に塗布した。
【0090】
この構成において、カソード電極層212及びフォーカス電極層219にそれぞれ0V、ゲート電極層217に50V、アノード電極であるITO膜252に1kVを印加したところ、グラファイトナノファイバー221から電子ビームが放出され、従来に比べ、ばらつきの少ない発光が確認され、適当な信号処理装置を用いてカソード電極層212とゲート電極層217との間に映像信号に基づく電圧を印加したところ良好な画像が前面基板250上に表示された。
【0091】
なお、図中では、1つの冷陰極素子から放出された1つの電子ビームが1つの蛍光体の領域に衝突するものとしているが、1つの蛍光体の領域に対し、複数の冷陰極素子から放出された複数の電子ビームが衝突する構成としてもよく、その冷陰極素子の数が多いほどアンサンブル効果により、さらにばらつきの少ない発光が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施の形態における冷陰極素子の製造工程を概念的に示す図であって、工程11〜16における断面を概念的に示す図
【図2】本発明の一実施の形態における冷陰極素子の製造工程を概念的に示す図であって、工程17〜20における断面を概念的に示す図
【図3】本発明の一実施の形態における冷陰極素子が備える炭素系微細繊維の一例を示す走査型電子顕微鏡の写真画像
【図4】本発明の一実施の形態における冷陰極素子を備えた、第1の実施例の照明パネルの製造工程を概念的に示す図であって、工程101〜106における断面を概念的に示す図
【図5】本発明の一実施の形態における冷陰極素子を備えた、第1の実施例の照明パネルの製造工程を概念的に示す図であって、工程107〜110における断面を概念的に示す図
【図6】本発明の一実施の形態における冷陰極素子を備えた、第1の実施例の照明パネルの製造工程を概念的に示す図であって、工程111における断面を概念的に示す図
【図7】本発明の一実施の形態における冷陰極素子を備えた、第2の実施例のディスプレイパネルの製造工程を概念的に示す図であって、工程201〜206における断面を概念的に示す図
【図8】本発明の一実施の形態における冷陰極素子を備えた、第2の実施例のディスプレイパネルの製造工程を概念的に示す図であって、工程207〜210における断面を概念的に示す図
【図9】本発明の一実施の形態における冷陰極素子を備えた、第2の実施例のディスプレイパネルの製造工程を概念的に示す図であって、工程211における断面を概念的に示す図
【図10】従来の冷陰極素子において絶縁層の側壁に炭素系微細繊維が成長した例を示す走査型電子顕微鏡の写真画像
【符号の説明】
【0093】
10 冷陰極素子
11 ガラス基板
12、112、212 カソード電極層
13、113、213 グラニュラー触媒薄膜
14、114、214 第1保護層
15、115、215 第2保護層
16、116 絶縁層
17、117、217 ゲート電極層
18、118、220 フォトレジスト層
18a、118a、220a 開口部
19 炭素系微細繊維
20、120、230 フォトレジスト層
20a、120a、230a リフトオフ用レジスト層
20b、120b、230b ポジレジスト層
20c、120c、230c 開口部
100 照明パネル
110、210 背面基板
111、211 PDP用高歪点のガラス基板
119 カーボンナノチューブ(炭素系微細繊維)
150、250 前面基板
151、251 ガラス基板
152、252 ITO膜
153、253 蛍光体
160、260 スペーサー
200 ディスプレイパネル
216 第1絶縁層
218 第2絶縁層
219 フォーカス電極層
221 グラファイトナノファイバー(炭素系微細繊維)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたカソード電極層と、該カソード電極層上に形成された触媒薄膜と、該触媒薄膜上に形成され少なくとも2種類の材料が順次積層された保護層と、該保護層上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に形成されたゲート電極層と、該ゲート電極層の表面から前記触媒薄膜に至る開口部と、該開口部によって露出された触媒薄膜上に成長させた炭素系微細繊維とを備えたことを特徴とする冷陰極素子。
【請求項2】
前記ゲート電極層上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に形成され前記炭素系微細繊維から放出された電子を集束するフォーカス電極層とを備え、
前記開口部は、前記フォーカス電極層の表面から前記触媒薄膜に至るものであることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極素子。
【請求項3】
前記触媒薄膜は、SiO、SiO、Alの少なくとも1つと、Fe、Ni、Cr、Au、Ag、Pt、Pd、Ir、Y、Ce、Euの少なくとも1つを含む金属、合金及び混合物のいずれかとを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷陰極素子。
【請求項4】
前記保護層の最下層は、Si、Al、Zn、Sn、Pbのいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷陰極素子。
【請求項5】
前記保護層の最上層は、SiN及びSiOのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の冷陰極素子。
【請求項6】
前記炭素系微細繊維は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイルのいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の冷陰極素子。
【請求項7】
基板上にカソード電極層を形成する工程と、前記カソード電極層上に触媒薄膜を形成する工程と、前記触媒薄膜上に少なくとも2種類の材料を順次積層して保護層を形成する工程と、前記保護層上に絶縁層を形成する工程と、開口部を有するゲート電極層を前記絶縁層上に形成する工程と、前記開口部を介してドライエッチングにより前記絶縁層を前記基板面に対して垂直方向にエッチングして前記保護層を露出させる工程と、ウェットエッチングにより前記絶縁層を水平方向にエッチングする工程と、前記保護層に開口部を形成し前記触媒薄膜の少なくとも一部を露出させる工程と、露出した触媒薄膜上に炭素系微細繊維を成長させる工程とを含むことを特徴とする冷陰極素子の製造方法。
【請求項8】
前記触媒薄膜の少なくとも一部を露出させる際に、前記保護層の最下層をアルカリ性のエッチング液によりウェットエッチングする工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の冷陰極素子の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の冷陰極素子が複数設けられた冷陰極基板と、前記炭素系微細繊維から放出された電子の通過によって発光する蛍光体が前記冷陰極基板と対向する面側に設けられたアノード基板と、前記冷陰極基板と前記アノード基板との間に設けられたスペーサーとを備えたことを特徴とする冷陰極ディスプレイ。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の冷陰極素子が複数設けられた冷陰極基板と、前記炭素系微細繊維から放出された電子の通過によって発光する蛍光体が前記冷陰極基板と対向する面側に設けられたアノード基板と、前記冷陰極基板と前記アノード基板との間に設けられたスペーサーとを備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の冷陰極素子が複数設けられた冷陰極基板と、前記炭素系微細繊維から放出された電子の通過によって予め定められた色を発光する蛍光体が前記冷陰極基板と対向する面側に設けられたアノード基板と、前記冷陰極基板と前記アノード基板との間に設けられたスペーサーとを備えたことを特徴とする液晶表示素子用バックライト。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−277373(P2009−277373A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124913(P2008−124913)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】