説明

冷陰極電界電子放出素子及びその製造方法、並びに、冷陰極電界電子放出表示装置

【課題】電子放出層から放出された電子の軌道の収束性に優れ、しかも、製造が比較的容易なエッジ型の冷陰極電界電子放出素子を提供する。
【解決手段】電子放出層13と、絶縁層14と、ゲート電極層15とが、この順に支持体10上に積層され、ゲート電極層15から支持体10の表面に達する開口部16が設けられ、開口部16は、ゲート電極層15に設けられた第1開口部15Aと、絶縁層14に設けられた第2開口部14Aと、電子放出層13に設けられた第3開口部13Aとから成り、第1開口部15Aと第2開口部14Aと第3開口部13Aとは連通しており、電子が放出される第3開口部13Aの開口端部の厚さは先端部に向かって減少し、且つ、第3開口部13Aの開口端部の下縁は上縁よりも後退している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出効率に優れた冷陰極電界電子放出素子及びその製造方法、並びに、かかる冷陰極電界電子放出素子が組み込まれた冷陰極電界電子放出表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在主流の陰極線管(CRT)に代わる画像表示装置として、平面型(フラットパネル形式)の表示装置が種々検討されている。このような平面型の表示装置として、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP)を例示することができる。また、熱的励起によらず固体から真空中に電子を放出することが可能な冷陰極電界電子放出表示装置、所謂フィールドエミッションディスプレイ(FED)も提案されており、画面の明るさ及び低消費電力の観点から注目を集めている。
【0003】
冷陰極電界電子放出表示装置(以下、単に、表示装置と称する場合がある)は、一般に、2次元マトリクス状に配列された各画素に対応して電子放出領域を有するカソードパネルと、この電子放出領域から放出された電子との衝突により励起されて発光する蛍光体層を有するアノードパネルとが、真空層を介して対向配置された構成を有する。カソードパネル上の各電子放出領域においては、例えば、複数の電子放出部が形成され、更に、電子放出部から電子を引き出すためのゲート電極層も形成されている。この電子放出部とゲート電極層を有する部分が冷陰極電界電子放出素子であり、以下、単に電界放出素子と称することがある。
【0004】
かかる表示装置の構成において、低い駆動電圧で大きな放出電子電流を得るためには、例えば、電界放出素子の電子放出部の先端形状を鋭く尖らせた形状とすること、個々の電子放出部を微細化して、1画素に対応する区画内における電子放出部の存在密度を高めること、電子放出部の先端とゲート電極層との距離を短縮することが必要である。従って、これらを実現するために、従来より様々な構成を有する電界放出素子が提案されている。
【0005】
かかる従来の電界放出素子の代表例の1つとして、電子放出部を円錐形の導電体から成る電子放出電極で構成した、所謂スピント(Spindt)型電界放出素子(以下、スピント型素子と称する)が知られている。このスピント型素子を組み込んだ表示装置の概念図を、図21に示す。この表示装置のカソードパネルは、絶縁基板40上に形成されたカソード電極41と、カソード電極上を含む絶縁基板40上に形成された層間絶縁層42と、層間絶縁層42上に形成されたゲート電極層44と、ゲート電極層44及び層間絶縁層42に設けられた開口部43内に形成された円錐形の電子放出電極45から構成されている。通常、電子放出電極45が所定数集まって1つの電子放出領域が形成され、この電子放出領域が、2次元マトリクス状に配列された画素の1つに対応する。一方、アノードパネルは、基板50上に所定のパターンにより蛍光体層52が形成され、この蛍光体層52がアノード電極51で覆われた構造を有する。
【0006】
電子放出電極45とゲート電極層44との間に電圧を印加すると、その結果生じた電界によって電子放出電極45の先端から電子が引き出される。この電子は、アノードパネルのアノード電極51に引き付けられ、アノード電極51と基板50との間に形成された発光体層である蛍光体層52に衝突する。この結果、蛍光体層52が励起されて発光し、所望の画像を得ることができる。この冷陰極電界電子放出素子の動作は、基本的にゲート電極層44に印加される電圧によって制御される。
【0007】
かかるスピント型素子の製造方法の概要を、以下、図22及び図23を参照して説明する。この製造方法は、基本的には、円錐形の電子放出電極45を金属材料の垂直蒸着により形成する方法である。即ち、開口部43に対して蒸着粒子は垂直に入射するが、開口端部付近に形成されるオーバーハング状の堆積物による遮蔽効果を利用して、開口部43の底部に到達する蒸着粒子の量を漸減させ、円錐形の堆積物である電子放出電極45を自己整合的に形成する。ここでは、不要なオーバーハング状の堆積物の除去を容易とするために、ゲート電極層44上に剥離層46を予め形成しておく方法について説明する。尚、以下の説明中、任意のプロセスが終了した段階における絶縁基板とその上に形成されたあらゆる構造物を、「基体」と総称することがある。
【0008】
[工程−10]
先ず、図22の(A)に示すように、例えばガラス基板から成る絶縁基板40の上にニオブ(Nb)から成るカソード電極41を形成した後、その上にSiO2から成る層間絶縁層42、導電材料から成るゲート電極層44を順次製膜し、次に、このゲート電極層44と層間絶縁層42をパターニングすることにより開口部43を形成する。
【0009】
[工程−20]
次に、図22の(B)に示すように、基体に対してアルミニウムを斜め蒸着することにより、剥離層46を形成する。このとき、基体の法線に対する蒸着粒子の入射角を十分に大きく選択することにより、開口部43の底部にアルミニウムを殆ど堆積させることなく、ゲート電極層44の上に剥離層46を形成することができる。この剥離層46は、開口部43の開口端部から庇状に張り出しており、これにより開口部43が実質的に縮径される。
【0010】
[工程−30]
次に、この基体の全面に例えばモリブデン(Mo)を垂直蒸着する。このとき、図23の(A)に示すように、剥離層46上でオーバーハング形状を有する金属層45Aが成長するに伴い、開口部43の実質的な直径が次第に縮小されるので、開口部43の底部において堆積に寄与する蒸着粒子は、次第に開口部43の中央付近を通過するものに限られるようになる。この結果、開口部43の底部には円錐形の堆積物が形成され、この円錐形の堆積物が電子放出電極45となる。
【0011】
[工程−40]
その後、図23の(B)に示すように、電気化学的プロセス及び湿式プロセスによって剥離層46をゲート電極層44の表面から剥離し、ゲート電極層44の上方の金属層45Aを選択的に除去する。
【0012】
ところで、図23の(B)に示した構造を有する電界放出素子の電子放出特性は、開口部43の上端部を成すゲート電極層44の縁部43Aから電子放出電極45の先端までの距離に大きく依存する。そして、この距離は、開口部43の形状の加工精度や直径の寸法精度、[工程−30]において製膜される金属層45Aの膜厚精度、更にはその下地となる剥離層46の形状精度に大きく依存する。
【0013】
しかしながら、実際に大面積の基体の全体に亙って均一な膜厚を有する金属層45Aを垂直蒸着により形成したり、均一な寸法の庇形状を有する剥離層46を斜め蒸着により形成することは、極めて困難であり、或る程度の面内ばらつきやロット間ばらつきは避けられない。このばらつきにより、表示装置の画像表示特性、例えば画像の明るさにばらつきが生じる。しかも、大型の蒸着装置が必要とされること、スループットが低下すること、大面積に亙って形成された剥離層46を除去する際に、その残渣がカソードパネル汚染の原因となり、表示装置の製造歩留まりを低下させること、といった問題もある。
【0014】
一方、スピント型素子のこれらの欠点を解消し得る電界放出素子として、所謂エッジ型電界放出素子(以下、エッジ型素子と称する)が知られている。これは、スピント型素子における円錐形の電子放出電極の代わりに、絶縁基板に平行な面内に形成された電子放出層を絶縁層を介してゲート電極層と積層し、この積層体に開口部を設け、この開口部の壁面に露出した電子放出層の先端部(エッジ)を何らかの方法で壁面から突出させ、電子放出部として利用するタイプの素子である。
【0015】
例えば、米国特許第5214347号公報には、電子放出層の上下を絶縁層を介した一対のゲート電極層で挟み、電子放出層に強い電界を与えることが可能な構造が開示されている。即ち、図24に示すように、絶縁基板60上に導電層61、第1絶縁層62、下部ゲート電極層63、第2絶縁層64、電子放出層65、第3絶縁層66、及び上部ゲート電極層67を順次積層した積層体に、開口部68が設けられている。そして、開口部68の壁面から突出した電子放出層65の先端部から放出された電子eが、開口部68の外部へ導出される。電子放出層65の先端部は、等方性エッチングで膜厚を減ずることにより曲率半径が減少され、これにより電子放出密度が高められている。尚、これらの上部ゲート電極層67、電子放出層65、下部ゲート電極層63に対面配置されている導電膜69は、電子放出層65から放出された電子を引き付けるための電極を構成し、また、開口部68の底部に露出している導電層61は、表面保護、電位の安定化、絶縁破壊やノイズの防止を目的として設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
エッジ型素子では、ゲート電極層の縁部から電子放出層までの距離は絶縁層の厚さでほぼ決定することができるため、この距離の制御はスピント型素子に比べて遥かに容易であり、この意味において、スピント型素子の欠点はかなり解消されている。従って、大面積の基体上でも電子放出部の電子放出特性を均一化することが容易となり、表示装置の画像の明るさも均一化され得る。しかし、電子放出部の形状が、スピント型素子におけるような先鋭な「点」ではなく「線」である上、かかる電子放出部の形状に付随してゲート電極層がスピント型素子の場合よりも大きく開口しているため、開口部の内部における電界の閉じ込め効果が弱くなり、電子放出部の近傍において電界集中が生じ難い。換言すれば、エッジ型素子はスピント型素子と比較して電子放出効率が低く、スピント型素子と同等の放出電子電流を得るためにはより高いゲート電圧を要するので、駆動電圧の低減、ひいては消費電力の低減が困難である。
【0017】
また、電子放出電極の先端がアノード電極の方向に向かって先鋭化され、放出された電子がアノード電極へ向かってほぼ直進できるスピント型素子とは異なり、エッジ型素子の電子放出部は開口部の側壁から突出しているために、放出された電子の一部は電子放出層の面内よりも下方、即ち、アノード電極とは反対方向へも進行し得る。このように下方へ進行した電子が開口部内で何らかの障害物に衝突すると、自らが反跳電子となったり、あるいは、障害物の表面から2次電子が叩き出される。これら反跳電子や2次電子も、アノード電極に引き付けられて蛍光体層に衝突すれば、最終的に発光に寄与することができる。しかし、反跳電子や2次電子のエネルギー分布幅は、電子放出電極の先端から放出されて直接にアノード電極へ向かって進行した電子のエネルギー分布幅に比べて広いため、冷陰極電界電子放出素子の構造によっては、所定の蛍光体層に衝突するように反跳電子や2次電子の軌道を制御することが困難となる場合がある。
【0018】
本発明の第1の目的は、電子放出効率を向上させることができ、しかも、製造が比較的容易なエッジ型の冷陰極電界電子放出素子及びその製造方法、並びに、かかる冷陰極電界電子放出素子を組み込んだ冷陰極電界電子放出表示装置を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、電子放出層から放出された電子の軌道の収束性に優れ、しかも、製造が比較的容易なエッジ型の冷陰極電界電子放出素子及びその製造方法、並びに、かかる冷陰極電界電子放出素子を組み込んだ冷陰極電界電子放出表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子は、
電子放出層と、絶縁層と、ゲート電極層とが、この順に支持体上に積層され、
ゲート電極層から支持体の表面に達する開口部が設けられ、
開口部は、ゲート電極層に設けられた第1開口部と、絶縁層に設けられた第2開口部と、電子放出層に設けられた第3開口部とから成り、
第1開口部と第2開口部と第3開口部とは連通しており、
電子が放出される第3開口部の開口端部は、第1開口部の開口端部よりも後退していることを特徴とする。ここで、第1開口部の開口端部とは、換言すれば、開口部に臨むゲート電極層の縁部である。また、第3開口部の開口端部とは、換言すれば、開口部に臨む電子放出層の縁部である。従って、第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子の重要なポイントの1つは、換言すれば、開口部において、電子放出層の縁部がゲート電極層の縁部よりも後退した構造にある。
【0020】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子は、
電子放出層と、絶縁層と、ゲート電極層とが、この順に支持体上に積層され、
ゲート電極層から支持体の表面に達する開口部が設けられ、
開口部は、ゲート電極層に設けられた第1開口部と、絶縁層に設けられた第2開口部と、電子放出層に設けられた第3開口部とから成り、
第1開口部と第2開口部と第3開口部とは連通しており、
電子が放出される第3開口部の開口端部の厚さは先端部に向かって減少し、且つ、第3開口部の開口端部の下縁は上縁よりも後退していることを特徴とする。換言すれば、第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子の重要なポイントの1つは、電子を放出する部分、即ち、開口部に臨む電子放出層の縁部が逆テーパ壁を有する構造にある。
【0021】
尚、本明細書中において、或る開口部の開口端部の「突出」とは、その開口部が設けられた層の延在方向に沿って該開口端部が開口部の中央により近い位置にあることを表す。また、或る開口部の開口端部の「後退」とは、その開口部が設けられた層の延在方向に沿って該開口端部が開口部の中央からより遠い位置にあることを表す。
【0022】
第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子において、第3開口部の開口端部が第1開口部の開口端部よりも後退しているということは、第1開口部の支持体への射影像が、第3開口部の支持体への射影像に含まれることを意味する。つまり、かかる冷陰極電界電子放出素子の開口部を支持体に垂直な方向から見た場合、電子放出層の縁部はゲート電極層の陰に完全に隠れている。従って、ゲート電極層に設けられた第1開口部が或る程度大きくとも、電界の閉じ込め効果が低下し難く、電子放出層の縁部近傍における電界強度を高く維持することができ、ゲート電圧の低減、更には消費電力の低減が可能となる。また、第3開口部の開口端部が第2開口部の下端部から突出しているということは、第3開口部の支持体への射影像が、第2開口部の下端部の支持体への射影像に含まれることを意味する。
【0023】
第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子において、第1開口部の開口端部に対する第3開口部の開口端部の電子放出層の延在方向に沿った後退量をX、ゲート電極層と電子放出層との間の距離をYとしたとき、0<X/Y≦1.7であることが好ましい。X/Yの値が1.7を超えると、電子放出層から放出された電子がゲート電極に衝突し、後述の表示装置に組み込まれた場合にアノード電極側へ電子が引き出せなくなる虞れが大きい。より好ましくは、0.4≦X/Y≦1.2である。第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子に関しては、第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子と異なり、第3開口部の開口端部の上縁と第1開口部の開口端部との位置関係については、特に限定されない。
【0024】
第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子においては、第3開口部の開口端部が第2開口部の下端部から突出していることが好適であり、また、第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子においては、第3開口部の開口端部の上縁が第2開口部の下端部から突出していることが好適である。即ち、第3開口部の開口端部は実際に電子を放出する部分であり、この部分が絶縁層に埋没しているよりも突出している方が、電子放出効率を高める観点から好ましいからである。
【0025】
第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子においては、第3開口部の開口端部の厚さは、その先端部に向かって減少していることが一層好適である。第3開口部の開口端部の厚さは、上縁から下縁に向かって減少しても(即ち、順テーパ状)、下縁から上縁に向かって減少しても(即ち、逆テーパ状)、あるいは上縁と下縁の両方から減少してもよく、また、減少の様式は単調であっても段階的であってもよい。
【0026】
一方、第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子においては、第3開口部の開口端部は、支持体に垂直な断面でみた場合、該開口端部の上縁に対する下縁の後退の度合いに応じたテーパ角θを有する。このテーパ角θの大きさは、概ね10°≦θ≦80°であることが好ましく、更に、放出電子軌道の収束性や電子放出層の機械的強度を考慮して20°≦θ≦70°であることが一層好ましい。開口端部のテーパ角θが概ね上記範囲内にある場合に、電界強度を開口端部近傍で効果的に高めると共に、上縁から放出された電子の大部分を開口部外へ指向させることが可能となる。尚、第3開口部の開口端部の厚さの減少様式は、単調であっても段階的であってもよい。
【0027】
第1の態様及び第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子において、第1開口部、第2開口部及び第3開口部の平面形状は相似形であることが望ましいが、上述の幾何学的条件が満たされる限りにおいて、異なる平面形状を有していてもよい。これら開口部の平面形状としては、円、楕円、あるいはn角形(但し、nは3以上の整数)を挙げることができる。n角形は、正n角形でなくてもよく、また、その頂点は丸みを帯びていてもよい。n角形の中では、矩形が特に好適であり、この場合、矩形の長辺をおおよそ100μm、短辺を数μm〜10μm程度に選択することが好ましい。
【0028】
第1の態様及び第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子においては、上述の電子放出層とゲート電極層以外の他の電極層が無くてもよいし、あってもよい。他の電極層が無い場合とは、支持体が、例えば絶縁基板である場合である。この場合の冷陰極電界電子放出素子は、例えば絶縁基板の上に電子放出層が直に形成され、第3開口部の底部に絶縁基板が露出した構成を有する。第3開口部の直下の絶縁基板の部分には、凹部が設けられていてもよい。このときの凹部の平面形状は、第3開口部の平面形状と合同又は相似であることが好ましいが、絶縁基板表面への第3開口部の射影像が絶縁基板表面への凹部の射影像に包含される限りにおいて、凹部と第3開口部の平面形状が互いに異なっていても構わない。
【0029】
第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子が凹部を有する場合、開口部の最深部は電子放出層に設けられる第3開口部で終わらず、電子放出層の更に下側へ延びることになる。このことは、開口部の近傍に強い電界凸レンズ効果を顕すような電界強度分布を形成し、以て、放出電子軌道の収束性を高める上で効果的である。また、第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子において、凹部の上端部を第3開口部の開口端部よりも後退させる(即ち、開口部に臨む電子放出層の縁部を凹部の壁面から突出させる)ことにより、電子放出効率を高めることができる。
【0030】
第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子においては、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃えるか、若しくは該上縁よりも後退させることにより、開口部に臨む電子放出層の縁部を凹部の側壁面から突出させることができ、電子放出効率を高めることができる。第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子において、凹部の上端部と第3開口部の開口端部の下縁との位置関係については、特に限定されない。即ち、第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子において、凹部の上端部は、第3開口部の開口端部の上縁と下縁の中間位置にあってもよいし、第3開口部の開口端部の下縁と揃っていてもよいし、第3開口部の開口端部の下縁より更に後退していてもよい。
【0031】
一方、第1の態様及び第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子において、他の電極層がある場合とは、(a)電子放出層の下側に第2ゲート電極層がある場合、(b)ゲート電極層の上側に収束電極層がある場合、あるいは、(c)これら第2ゲート電極層と収束電極層の双方がある場合である。
【0032】
(a)及び(c)の場合の冷陰極電界電子放出素子おいて、支持体は、絶縁基板と、絶縁基板上に形成された第2ゲート電極層と、第2ゲート電極層上を含む絶縁基板上に形成された第2絶縁層とから成り、開口部は、第3開口部と連通するごとく第2絶縁層に設けられた第4開口部を更に含み、第4開口部の底部には第2ゲート電極層が露出している構成とすることができる。この構成においては、第2ゲート電極層がゲート電極層と協働して電子放出層に電界を加えることが可能となる。従って、ゲート電極層が単独で設けられている場合と比べて、電子放出層に強い電界を加えることが可能となる。第4開口部の平面形状は、第3開口部の平面形状と合同又は相似であることが好ましい。更に、第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子においては、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部よりも後退させることにより、電子放出層の縁部を開口部の側壁面から突出させることができ、電子放出効率を高めることができる。また、第3開口部の開口端部が逆テーパ壁を有する第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子においては、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃えるか、若しくは該上縁より後退させることにより、電子放出層の縁部を第4開口部の側壁面から突出させることができ、電子放出効率を高めることができる。いずれの態様に係る冷陰極電界電子放出素子においても、第4開口部の平面形状は第3開口部の平面形状と相似であることが好ましいが、絶縁基板表面への第4開口部の上端部の射影像に、絶縁基板表面への第3開口部の射影像が包含される限りにおいて、第4開口部と第3開口部の平面形状が互いに異なっていても構わない。
【0033】
(b)及び(c)の場合の冷陰極電界電子放出素子においては、ゲート電極層上を含む絶縁層上に形成された層間絶縁層、及び、この層間絶縁層上に形成された収束電極層を更に備え、開口部は、第1開口部と連通するごとく層間絶縁層に設けられた第5開口部と、第5開口部と連通するごとく収束電極層に設けられた第6開口部とを更に含む構成とすることもできる。ゲート電極層に設けられる第1開口部と、収束電極層に設けられる第6開口部との平面形状や大小関係については特に限定されないが、電界凸レンズ効果を得る観点から、第6開口部は第1開口部よりも大きいことが望ましい。また、収束電極層の電位は電子放出層の電位と同一あるいは近似しているため、収束電極層の開口端部が開口部内に突出していると、収束電極層から下向き、即ち、ゲート電極層側へ向かって電子放出が生ずる虞れがある。そこで、第6開口部の開口端部は、層間絶縁層に設けられる第5開口部の開口端部よりも後退させておくことが好適である。
【0034】
上述の第1の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子の製造方法(以下、第1の態様に係る製造方法と称する)は、上述の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子を製造するための方法であり、
(イ)支持体上に、電子放出層及び絶縁層を形成する工程と、
(ロ)絶縁層上にゲート電極層を形成する工程と、
(ハ)少なくとも下端部がゲート電極に設けられた第1開口部の開口端部よりも後退した第2開口部を絶縁層に形成する工程と、
(ニ)第2開口部の底部に露出した電子放出層をエッチングすることにより、開口端部が第1開口部の開口端部よりも後退した第3開口部を電子放出層に形成する工程、
から成ることを特徴とする。
【0035】
また、上述の第2の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子の製造方法(以下、第2の態様に係る製造方法と称する)は、上述の第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子を製造するための方法であり、
(イ)支持体上に、電子放出層及び絶縁層を形成する工程と、
(ロ)絶縁層上にゲート電極層を形成する工程と、
(ハ)ゲート電極層に設けられた第1開口部に連通する第2開口部を絶縁層に形成する工程と、
(ニ)第2開口部の底部に露出した電子放出層をエッチングすることにより、開口端部の厚さが先端部に向かって減少し、且つ、開口端部の下縁が上縁よりも後退した第3開口部を電子放出層に形成する工程、
から成ることを特徴とする。
【0036】
第1の態様及び第2の態様に係る製造方法においては、工程(ハ)で絶縁層に第2開口部が形成される前に、実際にはゲート電極層に第1開口部が形成されており、第2開口部は第1開口部に連通して形成される。第1開口部を、工程(ロ)においてゲート電極層を形成する際に同時に形成してもよいし、工程(ロ)の終了後、工程(ハ)に先立って形成してもよい。
【0037】
第1の態様に係る製造方法において、工程(ハ)が終了した時点における第2開口部は、ゲート電極層の下に所謂アンダーカットが発生した状態で形成されており、しかも、第2開口部の壁面全体が、既にゲート電極層に形成されている第1開口部の開口端部より後退していることが好ましい。これにより、次の工程(ニ)のエッチングが終了した時点で、電子放出層に設けられた第3開口部の開口端部を第2開口部の下端部から突出させることができるからである。第2の態様に係る製造方法において、第1開口部の開口端部と第3開口部の開口端部との位置関係が特に規定されないので、工程(ハ)が終了した時点における第2開口部の壁面と第1開口部の開口端部との間の位置関係も特に規定されない。
【0038】
第1の態様及び第2の態様に係る製造方法において、工程(ニ)における電子放出層のエッチングは、反応性イオンエッチング(RIE)のように、イオンを主エッチング種とする条件下で行うことができる。通常、イオンを主エッチング種とするエッチングは、開口端部に垂直壁を形成する目的で行われる場合が多いが、イオンの平均自由行程が十分に長くなかったり、被エッチング物の自己バイアス又は印加バイアスが十分に大きくなかったり、イオンの質量が十分に大きくなかったり、プラズマを励起する高周波の周波数が比較的高い、といった諸条件や、被エッチング領域の隅部におけるエッチング種の滞留、散乱、側方マイグレーション等の現象によっては、第3開口部の開口端部に順テーパ壁(即ち、エッチングが深く進行するにつれて被エッチング面積が減少する方向へ傾斜した壁)が形成されたり、あるいは逆テーパ壁(即ち、エッチングが深く進行するにつれて被エッチング面積が増大する方向へ傾斜した壁)が形成される場合がある。特に、第2の態様に係るの製造方法においては、第3開口部の開口端部に逆テーパ壁が形成されるような電子放出層のエッチング条件を選択することが、プロセス上の1つのポイントとなる。
【0039】
第1の態様及び第2の態様に係る製造方法において、支持体が絶縁基板から成る場合には、前記工程(ニ)の後に、
(ホ)第3開口部の直下の絶縁基板の部分に凹部を形成する工程、
を更に含んでいてもよい。これによって、開口部の最深部を電子放出層の下側へ延長することができ、開口部に臨む電子放出層の縁部の近傍に電界凸レンズ効果を効果的に顕す冷陰極電界電子放出素子を得ることができる。更に、第1の態様に係る製造方法の工程(ホ)では、絶縁基板を等方的にエッチングすることにより、凹部の上端部を第3開口部の開口端部よりも後退させてもよい。これにより、電子放出層に設けられた第3開口部の開口端部を開口部の側壁面から突出させることができ、電子放出効率を高めることが可能となる。また、第2の態様に係る製造方法の工程(ホ)では、絶縁基板をエッチングすることにより、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃えるか、若しくは、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁よりも後退させてもよい。凹部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃える場合には、異方的なエッチングを行えばよい。一方、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁よりも後退させる場合には、等方的なエッチングを行うか、又は、異方的なエッチングと等方的なエッチングとを組み合わせて行えばよい。尚、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁よりも後退させるケースには、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と下縁の中間位置とするケースや、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の下縁と揃えるケースや、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の下縁よりも更に後退させるケースが含まれる。これにより、電子放出層の縁部を凹部の側壁面から突出させることができ、電子放出効率を高めることが可能となる。
【0040】
第1の態様及び第2の態様に係る製造方法において、支持体が、絶縁基板と、絶縁基板上に形成された第2ゲート電極層と、第2ゲート電極層上を含む絶縁基板上に形成された第2絶縁層とから成る場合には、前記工程(ニ)の後に、
(ヘ)第3開口部の直下の第2絶縁層の部分に第4開口部を形成し、該第4開口部の底部に第2ゲート電極層を露出させる工程、
が更に含まれていてもよい。第4開口部の底部に露出した第2ゲート電極層は、ゲート電極層と協働して電子放出層に電界を加えることができる。更に、第1の態様に係る製造方法の工程(ヘ)では、第2絶縁層を等方的にエッチングすることにより、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部よりも後退させることが好適である。これにより、電子放出層の先端部(あるいは縁部)を開口部の側壁面から突出させることができ、電子放出効率を高めることができる。また、第2の態様に係る製造方法の工程(ヘ)では、第2絶縁層をエッチングすることにより、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃えるか、若しくは、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁よりも後退させてもよい。第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃える場合には、異方的なエッチングを行えばよい。一方、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁よりも後退させる場合には、等方的なエッチングを行うか、又は、異方的なエッチングと等方的なエッチングとを組み合わせて行えばよい。尚、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁よりも後退させるケースには、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と下縁の中間位置とするケースや、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の下縁と揃えるケースや、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の下縁よりも更に後退させるケースが含まれる。これにより、電子放出層の先端部(あるいは縁部)を開口部の側壁面から突出させることができ、電子放出効率を高めることができる。
【0041】
第1の態様及び第2の態様に係る製造方法において、収束電極層を設ける場合には、前記工程(イ)に続き、全面に層間絶縁層を形成し、更に、層間絶縁層上に収束電極層を形成した後、層間絶縁層に第5開口部を形成することができる。実際には、層間絶縁層に第5開口部が形成される前に、収束電極層に第6開口部が形成されており、第5開口部は第6開口部に連通して形成される。第6開口部は、収束電極層を形成する際に同時に形成されてもよいし、収束電極層を形成した後に形成されてもよい。第5開口部を形成した後は、工程(ハ)において、該第5開口部に連通する第2開口部を絶縁層に形成する。第2開口部の形成前には、前述したように、実際にはゲート電極層に第1開口部が形成されている。つまり、第6開口部の形成は第5開口部の形成と連続して行われるとは限られず、また、第1開口部の形成は第2開口部の形成と連続して行われるとは限られない。従って、層間絶縁層と収束電極層を設ける場合、各開口部の形成順としては下記の4通りのケースが存在することになる。尚、カッコ内に記した第1開口部は、ゲート電極層の形成時に同時に形成されたことを表し、カッコ内に記した第6開口部は、収束電極層の形成時に同時に形成されたことを表す。
(1)第6開口部→第5開口部→第1開口部→第2開口部
(2)(第1開口部)→第6開口部→第5開口部→第2開口部
(3)(第6開口部)→第5開口部→第1開口部→第2開口部
(4)(第1開口部)→(第6開口部)→第5開口部→第2開口部
【0042】
収束電極層は、アノード電極と電子放出層との間の電位差が数キロボルトのオーダーであって両電極間の距離が比較的長い、所謂高電圧タイプの表示装置において、電子放出層から放出された電子の軌道の発散を防止するために設けられる部材である。放出電子軌道の収束性を高めることによって、画素間の光学的クロストークを低減し、以て、更に画素を微細化して表示画面の高精細度化を図ることが可能となる。尚、収束電極層は、必ずしも各冷陰極電界電子放出素子毎に個別に設けられていなくても良く、例えば2次元マトリクス状に配列された冷陰極電界電子放出素子の列毎、あるいは行毎に帯状に設けられていてもよい。収束電極層が帯状に設けられている場合、第6開口部の平面形状は帯状となり、他の第1開口部乃至第5開口部の平面形状とは異なることになる。
【0043】
第1の態様及び第2の態様に係る製造方法の工程(ハ)において、絶縁層に第2開口部を形成する典型的な手法としては、絶縁層をエッチングする手法を挙げることができる。特に、第1の態様に係る製造方法においては、少なくとも第2開口部の下端部がゲート電極層に設けられた第1開口部の開口端部よりも後退している必要があるので、最初から等方的なエッチングを行って第2開口部を形成するか、あるいは異方的なエッチングを行って垂直壁を有する第2開口部を形成した後、等方的なエッチングを行って垂直壁を後退させることが好ましい。第1の態様に係る製造方法の工程(ホ)及び工程(ヘ)でも、等方的なエッチングを行うことが好適である。第2の態様に係る製造方法の工程(ホ)及び工程(ヘ)では、凹部や第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃える場合には、異方的なエッチングを行えばよい。一方、凹部や第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁よりも後退させる場合には、最初から等方的なエッチングを行って凹部や第4開口部を形成するか、あるいは異方的なエッチングを行って垂直壁を有する凹部や第4開口部を形成した後、等方的なエッチングを行って垂直壁を後退させることが好ましい。尚、等方的なエッチングは、典型的には、ウェットエッチング、あるいはラジカルが主エッチング種となるドライエッチング条件下で行うことができる。等方性エッチングでは、被エッチング物の除去が深さ方向と面内方向の双方に進行するので、形成される第2開口部、凹部あるいは第4開口部の壁面が後退するが、このときの後退量は、エッチング時間の長短により制御することができる。
【0044】
上述の第1の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置は、第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子を組み込んだ装置であり、
複数の画素から構成され、
各画素は、複数の冷陰極電界電子放出素子と、複数の冷陰極電界電子放出素子に対向して基板上に設けられたアノード電極層及び蛍光体層から構成され、
各冷陰極電界電子放出素子は、電子放出層と、絶縁層と、ゲート電極層とが、この順に支持体上に積層されて成る冷陰極電界電子放出表示装置であって、
ゲート電極層から支持体の表面に達する開口部が設けられ、
開口部は、ゲート電極層に設けられた第1開口部と、絶縁層に設けられた第2開口部と、電子放出層に設けられた第3開口部とから成り、
第1開口部と第2開口部と第3開口部とは連通しており、
電子が放出される第3開口部の開口端部は、第1開口部の開口端部よりも後退していることを特徴とする。
【0045】
また、上述の第2の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置は、第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子を組み込んだ装置であり、
複数の画素から構成され、
各画素は、複数の冷陰極電界電子放出素子と、複数の冷陰極電界電子放出素子に対向して基板上に設けられたアノード電極層及び蛍光体層から構成され、
各冷陰極電界電子放出素子は、電子放出層と、絶縁層と、ゲート電極層とが、この順に支持体上に積層されて成る冷陰極電界電子放出表示装置であって、
ゲート電極層から支持体の表面に達する開口部が設けられ、
開口部は、ゲート電極層に設けられた第1開口部と、絶縁層に設けられた第2開口部と、電子放出層に設けられた第3開口部とから成り、
第1開口部と第2開口部と第3開口部とは連通しており、
電子が放出される第3開口部の開口端部の厚さは先端部に向かって減少し、且つ、第3開口部の開口端部の下縁は上縁よりも後退していることを特徴とする。
【0046】
第1の態様及び第2の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置は、第1の態様及び第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子に関連して述べた凹部や第2ゲート電極や収束電極をいずれも備えていてよく、また、各開口部の開口端部に関する規定についても、第1の態様及び第2の態様に係る冷陰極電界電子放出素子に関連して述べた規定が全て当てはまる。
【0047】
第1の態様及び第2の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置において、支持体あるいは基板は、少なくとも表面が絶縁性を有する材料により構成されていればよく、ガラス基板、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成された半導体基板を挙げることができる。
【0048】
本発明のあらゆる態様に係る冷陰極電界電子放出素子及びその製造方法、並びに、冷陰極電界電子放出表示装置において、ゲート電極層あるいは第2ゲート電極層は、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Au)等の金属層、又はこれらの金属元素を含む合金層、又はこれらの金属元素を含む化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド)、カーボン、ITO(インジウム・錫酸化物)等の透明導電材料、あるいは不純物を含有するシリコンやダイヤモンド等の半導体を用いて形成することができる。ゲート電極層あるいは第2ゲート電極層の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオン・プレーティング法等の通常の薄膜作製プロセスの他、印刷法を利用することができる。ゲート電極層を構成する材料と、第2ゲート電極層を構成する材料は同じであっても、異なっていてもよい。
【0049】
本発明のあらゆる態様に係る冷陰極電界電子放出素子及びその製造方法、並びに、冷陰極電界電子放出表示装置において、電子放出層は、典型的には、タングステン(W)やタンタル(Ta)等の高融点金属材料、あるいはダイヤモンド等の半導体を用いて形成される。ゲート電極層のエッチングによって第1開口部を形成する場合には、電子放出層に第3開口部を形成する際の電子放出層のエッチング速度がゲート電極層のエッチング速度よりも早くなるように、電子放出層を構成する材料とゲート電極層を構成する材料の組合せを選択することが好ましく、例えば電子放出層を構成する材料としてタンタル(Ta)、ゲート電極層を構成する材料としてタングステン(W)を例示することができ、あるいは又、例えば電子放出層を構成する材料としてタングステン(W)、ゲート電極層を構成する材料としてタンタル(Ta)を例示することができる。厚さは、おおよそ0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲とすることが望ましいが、かかる範囲に限定するものではない。
【0050】
本発明のあらゆる態様に係る冷陰極電界電子放出素子及びその製造方法、並びに、冷陰極電界電子放出表示装置において、絶縁層、第2絶縁層あるいは層間絶縁層の構成材料としては、SiO2、SiN、SiON、ガラスペースト硬化物を単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。絶縁層、第2絶縁層あるいは層間絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、印刷法等の公知の手法が利用できる。
【発明の効果】
【0051】
以上のように、本発明の第1の態様に係る電界放出素子は、電子放出層の上に絶縁層を挟んでゲート電極層が形成された所謂エッジ型素子であって、開口部に臨む電子放出層の縁部がゲート電極層の縁部よりも後退している。それ故、開口部内に電界を効率的に集中させることができ、低いゲート電圧にて高い放出電子電流を得ることが可能となる。また、本発明の第2の態様に係る電界放出素子は、同じくエッジ型素子であって、開口部に臨む電子放出層の縁部に逆テーパ壁が形成されている。それ故、電子放出層の縁部から放出された電子の大部分を、開口部外へ直接に指向させることが可能となる。
【0052】
第1の態様に係る電界放出素子を組み込んだ第1の態様に係る表示装置、及び、第2の態様に係る電界放出素子を組み込んだ第2の態様に係る表示装置においては、低消費電力であるにも拘わらず、高輝度、高画質を達成することができる。また、本発明の第1の態様及び第2の態様に係る電界放出素子の製造方法によれば、開口部の断面形状や、開口部に臨む電子放出層の縁部の形状を自己整合的に得ることができ、再現性やスループットの観点から極めて有利であり、また表示画面の大面積化にも対応可能な高い信頼性を有するプロセスが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明の第1の態様に係る冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と称する)の最も基本的な構成を図1に示す。この電界放出素子においては、絶縁基板から成る支持体10上に電子放出層13、絶縁層14、ゲート電極層15がこの順に積層された積層体に、開口部16が設けられている。この開口部16は、互いに連通する相似形の3つの開口部、即ち、ゲート電極層15に設けられた第1開口部15A、絶縁層14に設けられた第2開口部14A、及び、電子放出層13に設けられた第3開口部13Aから成る。そして、開口部16の底部には支持体10が露出している。また、第2開口部の壁面は、第1開口部15Aの開口端部より後退しており、この壁面から第3開口部の開口端部(即ち、開口部16に臨む電子放出層13の縁部)が突出している。尚、1画素は、かかる開口部16が複数個集合して構成されている。
【0054】
図1の(A)には、電子放出層13に設けられた第3開口部13Aの開口端部が、支持体10に対して垂直な垂直壁を有する構成を示す。この場合、第3開口部13Aの垂直壁が、開口端部の先端部となる。一方、図1の(B)には、電子放出層13に設けられた第3開口部13Aの開口端部が支持体10に対して傾斜した傾斜壁を有する構成を示す。この場合、開口部16の中央へ向かって最も大きく突出した傾斜壁の部分が、開口端部の先端部となる。尚、図1の(B)には、傾斜壁が順テーパ壁である構成を示しているが、逆テーパ壁であってもよい。第3開口部13Aの開口端部が垂直壁、傾斜壁のいずれを有するにしても、第1の態様に係る電界放出素子は、図1の(C)に示すように、電子が放出される第3開口部13Aの開口端部が第1開口部15Aの開口端部よりも後退している点に特色を有する。換言すれば、第1開口部15Aの支持体10への射影像は、第3開口部13Aの支持体10への射影像に包含される。尚、図1の(C)には、第1開口部15Aと第3開口部13Aの平面形状が矩形である場合を図示したが、他の任意の平面形状が可能である。
【0055】
第1の態様に係る電界放出素子は、第1開口部15Aと第3開口部13Aとの間に上述の幾何学的条件が成り立つ限りにおいて、図2に示すような構成も可能である。図2の(A)は図1の(A)に示した構成と同じである。図2の(B)には、支持体10が絶縁基板から成る場合に、第3開口部13Aの直下の絶縁基板の部分に凹部24を設けた構成を示す。この凹部24の上端部は、第3開口部13Aの開口端部よりも後退している。図2の(C)には、図2の(A)の構成に層間絶縁層25と収束電極層26を設けた構成を示す。ゲート電極層15を含む絶縁層14上に形成された層間絶縁層25には、第1開口部15Aと連通するごとく第5開口部25Aが設けられている。また、層間絶縁層25上に形成された収束電極層26には、第5開口部25Aと連通するごとく第6開口部26Aが設けられている。図2の(D)には、図2の(C)に示した構成に凹部24を追加した構成を示す。図2の(E)には、支持体10が絶縁基板100と、絶縁基板100上に形成された第2ゲート電極層11と、第2ゲート電極層11上を含む絶縁基板100に形成された第2絶縁層12から成り、開口部16が更に第2絶縁層12に設けられた第4開口部12Aを含む構成を示す。第4開口部12Aの上端部は、第3開口部13Aの開口端部よりも後退している。図2の(F)には、図2の(E)に示した構成に層間絶縁層25と収束電極層26を追加した構成を示す。
【0056】
第2の態様に係る電界放出素子の最も基本的な構成を図3及び図4に示す。図3の(A)は電界放出素子の模式的端面図であり、図3の(B)は上面図である。図3と図4の参照符号は図1の参照符号と共通であるので、各部の詳細な説明は省略する。電子が放出される第3開口部13Aの開口端部の厚さは、先端部に向かって減少し、且つ、第3開口部13Aの開口端部の下縁は上縁よりも後退している。即ち、第3開口部13Aの開口端部は逆テーパ壁を有する。表示装置の1画素は、かかる開口部16が複数個集合して構成されている。図3の(A)に示す電界放出素子の第3開口部13Aの開口端部の上縁は、第1開口部15Aの開口端部と揃っている。従って、図3の(B)における第1開口部15Aと第3開口部13Aとは重なっている。
【0057】
図4の(A)には、第3開口部13Aの開口端部の上縁が第1開口部15Aの開口端部よりも後退した電界放出素子を示し、図4の(C)には、第3開口部13Aの開口端部の上縁が第1開口部15Aの開口端部より突出した電界放出素子を示す。図4の(B)は、これらの電界放出素子をまとめて示す上面図である。尚、図3及び図4に示した第1開口部15Aと第3開口部13Aの平面形状は、矩形に限られず、他の任意の平面形状であってよい。
【0058】
第2の態様に係る電界放出素子は、電子が放出される第3開口部13Aの開口端部の厚みが先端部に向かって減少し、且つ、開口端部の下縁が上縁よりも後退している限りにおいて、図5に示すような構成も可能である。図5の(A)は図3の(A)に示した構成と同じである。図5の(B)には、支持体10が絶縁基板から成る場合に、第3開口部13Aの直下の絶縁基板の部分に凹部24を設けた構成を示す。この凹部24の上端部が、第3開口部13Aの開口端部の上縁と下縁の中間位置にある場合を実線で示し、下縁よりも更に後退している場合を破線で示す。図5の(C)には、図5の(A)の構成に層間絶縁層25と収束電極層26を設けた構成を示す。ゲート電極層15を含む絶縁層14上に形成された層間絶縁層25には、第1開口部15Aと連通するごとく第5開口部25Aが設けられている。また、層間絶縁層25上に形成された収束電極層26には、第5開口部25Aと連通するごとく第6開口部26Aが設けられている。図5の(D)には、図5の(C)に示した構成に凹部24を追加した構成を示す。実線と破線による表現は、図5の(B)と同様である。図5の(E)には、支持体10が絶縁基板100と、絶縁基板100上に形成された第2ゲート電極層11と、第2ゲート電極層11上を含む絶縁基板100に形成された第2絶縁層12から成り、開口部16が更に第2絶縁層12に設けられた第4開口部12Aを含む構成を示す。第4開口部12Aの上端部が、第3開口部13Aの開口端部の上縁と下縁の中間位置にある場合を実線で示し、下縁よりも更に後退している場合を破線で示す。図5の(F)には、図5の(E)に示した構成に層間絶縁層25と収束電極層26を追加した構成を示す。実線と破線による表現は、図5の(E)と同様である。
【0059】
(実施の形態1)
実施の形態1は、第1の態様に係る電界放出素子の代表例として、図2の(E)に示した構成を有する電界放出素子と、この電界放出素子を製造するための第1の態様に係る製造方法、並びに、かかる電界放出素子を組み込んだ第1の態様に係る冷陰極電界電子放出表示装置(以下、表示装置と称する)に関する。図6に、電界放出素子の開口部16の近傍のみを一部破断して示し、図7に、図6のA−A線断面を開口部の周辺も含めて示す。絶縁層14には、第2開口部14Aの形成領域に隣接する領域において、電子放出層13に所定の電圧を供給するための電気的接続部となる第1孔部17が形成されている。また、第2絶縁層12には、第4開口部12Aの形成領域に隣接する領域において、第2ゲート電極層11に所定の電圧を供給するための電気的接続部となる第2孔部18が形成されている。
【0060】
以下、上述した第1の態様に係る電界放出素子の製造方法について、図8乃至図10を参照しながら説明する。尚、以下の説明中、任意のプロセスが終了した段階における絶縁基板とその上に形成されたあらゆる構造物を、「基体」と総称することがある。
【0061】
[工程−100]
先ず、一例としてガラス基板から成る絶縁基板100の上に、スパッタリングにより厚さ約0.2μmのタングステン膜を製膜し、通常の手順に従ってフォトリソグラフィ及びドライエッチングによりこのタングステン膜をパターニングし、第2ゲート電極層11を形成する。次に、全面に第2絶縁層12を形成する。ここでは一例として、SiO2を約0.3μmの厚さに形成する。更に、この第2絶縁層12の上にタンタルから成る導電膜を0.2μmの厚さに形成した後、所定の形状にパターニングし、電子放出層13を形成する。次に、全面に例えばSiO2から成る絶縁層14を例えば約0.7μmの厚さに形成する。更に、この絶縁層14の上に厚さ約0.2μmのタングステン膜を形成し、所定のパターニングを行うことによって、ゲート電極層15を得ることができる。ゲート電極層15の構成材料や厚さについては、第2ゲート電極層11と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ここまでのプロセスが終了した状態を、図8の(A)に示す。
【0062】
[工程−110]
次に、図8の(B)に示すように、絶縁層14及び第2絶縁層12のパターニングを行い、電子放出層13に所定の電圧を供給するための電気的接続部となる第1孔部17と、第2ゲート電極層11に所定の電圧を供給するための電気的接続部となる第2孔部18とを形成する。
【0063】
[工程−120]
次に、基体の全面にレジスト層19を形成し、更にこのレジスト層19に、ゲート電極層15の表面を一部露出させるようにレジスト開口部19Aを形成する。このレジスト開口部19Aは、通常のフォトリソグラフィ及び現像処理を経て形成することができ、デフォーカス露光や化学増幅系レジスト材料における難溶化層の形成といった特殊な手法や微妙な制御は一切不要である。レジスト開口部19Aの平面形状は矩形であり、図9の(A)にはその短辺方向の断面が示されている。矩形の長辺はおおよそ100μm、短辺は数μm〜10μmである。続いて、レジスト開口部19Aの底部に露出したゲート電極層15を例えばRIE(反応性イオンエッチング)法により異方的にエッチングし、第1開口部15Aを形成する。ここではゲート電極層15をタングステンを用いて構成しているので、SF6ガスを用いたエッチングにより、開口端部に垂直壁を有する第1開口部15Aを形成することができる(図9の(A)参照)。
【0064】
[工程−130]
次に、図9の(B)に示すように、第1開口部15Aの底部に露出した絶縁層14を等方的にエッチングし、第2開口部14Aを形成する。ここでは、絶縁層14をSiO2を用いて形成しているので、緩衝化フッ酸水溶液を用いたウェットエッチングを行う。第2開口部14Aの壁面は、第1開口部15Aの開口端部よりも後退するが、このときの後退量はエッチング時間の長短により制御することができる。ここでは、第2開口部14Aの下端部が第1開口部15Aの開口端部よりも後退するまで、ウェットエッチングを行う。尚、絶縁層14のエッチングは、ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせて行ってもよい。例えば、異方的なドライエッチングにより垂直壁を有する第2開口部14Aを形成した後、等方的なウェットエッチングにより垂直壁を後退させてもよい。かかる2種類のエッチングの組合せは、後述の第2絶縁層12のエッチングにも同様に適用できる。
【0065】
[工程−140]
次に、図10の(A)に示すように、第2開口部14Aの底部に露出した電子放出層13を、イオンを主エッチング種とする条件によりドライエッチングし、第3開口部13Aを形成する。これにより、第3開口部13Aの開口端部には、第2開口部14Aの下端部とほぼ揃った位置にて垂直壁が形成される。エッチング・ガスとしては、SF6を用いることができる。但し、プラズマ中の主エッチング種の中にも垂直以外の角度を有する入射成分が存在し、あるいは、第1開口部の開口端部における散乱によって斜め入射成分が生成する場合には、電子放出層13の縁部の中で、第1開口部15Aの垂直投影像によって遮蔽される領域にも或る程度の確率で主エッチング種が入射する。このような場合には、第3開口部13Aの開口端部に図1の(B)に示したような順テーパ壁が形成される。即ち、開口部16に臨む電子放出層13の縁部の厚さが、突出方向の先端部に向けて薄くなり、先端部が先鋭化される。
【0066】
[工程−150]
次に、図10の(B)に示すように、第3開口部13Aの底部に露出した第2絶縁層12を等方的にエッチングし、第4開口部12Aを形成し、開口部16を完成させる。ここでは、前述の第2絶縁層14の場合と同様に、緩衝化フッ酸水溶液を用いたウェットエッチングを行う。第4開口部12Aの壁面は第3開口部13Aの開口端部よりも後退する。このときの後退量はエッチング時間の長短により制御可能であるが、第4開口部12Aの上端部を電子放出層13に設けられた第3開口部13Aの開口端部よりも後退させる必要がある。このとき、先に形成された第2開口部14Aの壁面は更に後退する。尚、開口部16の完成後にレジスト層19を除去すると、図7に示した構成を得ることができる。
【0067】
以上のようにして作製された電界放出素子は、実際には多数集合してカソードパネルを構成する。このカソードパネルを、図11に示すようにアノードパネル23と組み合わせ、外部電源回路に接続すると、第1の態様に係る表示装置30が完成される。カソードパネルとアノードパネル23との間の空間は、高真空とされている。実際の表示装置の構成においては、アノードパネルの周縁部とカソードパネルの周縁部とがスペーサ及び/又は枠体を介して接合され、これら両パネル間の空間が排気されている。また、アノードパネル23には、図示は省略するが、所定のパターンに形成された蛍光体層とアノード電極層が設けられている。外部電源回路には第1ゲート電極用電源20、第2ゲート電極用電源21、アノード用電源22が含まれ、第2ゲート電極層11及びゲート電極層15に例えばパルス状の正電圧(例えば0〜100ボルト)、アノードパネル23のアノード電極層(図示せず)にこれより大きな正電圧が印加される。尚、例えば、第2ゲート電極層11にパルス状の正電圧を印加し、ゲート電極層15に一定の正電圧を印加してもよい。また、電子放出層13には負電圧が印加され、あるいは又、接地される。
【0068】
アノードパネル23とカソードパネルとを周縁部において接着して表示装置を製造する際、周縁部はフリットガラスや低融点金属材料のみによって接着されていてもよいし、あるいは枠体を介して接着されていてもよい。枠体を用いる場合の枠体とアノードパネル23との間の接着や、枠体とカソードパネルとの間の接着も、フリットガラスや低融点金属材料を用いて行うことができる。ここで、低融点金属材料の「低融点」とは、概ね400°Cの温度範囲を指し、該材料は、インジウム、インジウム系合金、錫系はんだ、鉛系はんだ、亜鉛系はんだの中から適宜選択することができる。かかる低融点金属材料は、フリットガラスに比べて脱ガスを生じにくいため、表示装置の内部空間の真空度を長期間に亘り維持し、以て、表示装置の長寿命化を図る上で好適である。表示装置の製造に際しては、例えば、セラミックスやガラスから作製された高さ約1mmの枠体(図示せず)を用意し、枠体とアノードパネル23とカソードパネルとをフリットガラスを用いて仮接着した後、約450゜Cで10〜30分焼成すればよい。その後、表示装置の内部空間を10-4Pa程度の真空度となるまで排気し、適当な方法で封止する。あるいは、真空槽内で枠体とアノードパネル23とカソードパネルとをフリットガラスや低融点金属材料、更には枠体を用いて接着してもよく、この場合には、接着と同時に表示装置の内部が高真空となるので、後工程における排気が不要となる。
【0069】
かかる表示装置30の構成においては、開口部16に臨む電子放出層13の縁部にゲート電極層15及び第2ゲート電極層11から電界が加わり、量子トンネル効果によって電子放出層13の縁部から電子が放出される。放出された電子の一部(e1)は、そのまま開口部16から図示されない蛍光体層に向かい、他の一部は第2ゲート電極層11の表面で反跳された反跳電子(e2)となって蛍光体層に向かう。電子放出層13から放出された電子の衝突により第2ゲート電極層11の表面から二次電子放出が生ずることもあり、かかる二次電子(e3)も蛍光体層に向かう。これらの電子e1,e2,e3のいずれも、最終的には蛍光体層を励起させこれを発光させることに寄与する。第1の態様に係る電界放出素子は、ゲート電極層15に設けられた第1開口部15Aにより開口部16の電子の出口に相当する部分が狭められているため、開口部16の内部において電界が効果的に閉じこめられる。この状態は、等電位線を用いて表現すれば、等電位線の間隔が電子放出層13の縁部近傍で密となっており、電子放出層13の縁部に効率的に強電界が加わることを意味する。従って、第1の態様に係る電界放出素子によれば、ゲート電極層15及び第2ゲート電極層11に印加する電圧が比較的低くても、十分な放出電子電流を得ることができる。即ち、低消費電力、且つ、高電子放出効率の電界放出素子が実現され、かかる電界放出素子を組み込んだ表示装置の輝度や画質が改善される。
【0070】
(実施の形態2)
実施の形態2は、第2の態様に係る電界放出素子の代表例として、図5の(E)に示した構成を有する電界放出素子と、この電界放出素子を製造するための第2の態様に係る製造方法、並びに、かかる電界放出素子を組み込んだ第2の態様に係る表示装置に関する。図12に、電界放出素子の開口部16の近傍のみを一部破断して示し、図13に、図12のA−A線断面を開口部の周辺も含めて示す。これらの図面の参照符号は、図6及び図7と共通である。実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、電子放出層13に設けられた第3開口部13Aの開口端部に逆テーパ壁が形成されている点である。
【0071】
以下、上述した第2の態様に係る電界放出素子の製造方法について、図14を参照しながら説明する。
【0072】
[工程−200]
先ず、[工程−100]乃至[工程−130]までを実施の形態1と同様に行う。次に、第2開口部14Aの底部に露出したタンタルから成る電子放出層13を、一例として下記の表1に示す条件に従ってドライエッチングし、第3開口部13Aを形成する。このエッチング条件により、図14の(A)に示すように、電子が放出される第3開口部13Aの開口端部の厚さは、先端部に向かって減少し、且つ、第3開口部13Aの開口端部の下縁は上縁よりも後退する(即ち、電子放出層13の縁部に逆テーパ壁が形成される)。尚、図示される例では、第1開口部15Aの開口端部と第3開口部13Aの開口端部が揃った位置にあるが、揃っていなくても構わない。
【0073】
[表1]
エッチング装置:平行平板型RIE(反応性イオンエッチング)装置
SF6流量 :100SCCM
圧力 :10Pa
RFパワー :200W(13.56MHz)
【0074】
[工程−210]
次に、図14の(B)に示すように、第3開口部13Aの底部に露出した第2絶縁層12を等方的にエッチングし、第4開口部12Aを形成し、開口部16を完成させる。ここでは、前述の絶縁層14の場合と同様に、緩衝化フッ酸水溶液を用いたウェットエッチングを行う。このときの第4開口部12Aの壁面の後退量は、エッチング時間の長短により制御可能であるが、ここでは、第4開口部12Aの上端部を電子放出層13に設けられた第3開口部13Aの開口端部の上縁、更には下縁よりも後退させる。このとき、先に形成された第2開口部14Aの壁面は更に後退する。開口部16の完成後にレジスト層19を除去すると、図13に示した構成を得ることができる。
【0075】
以上のようにして作製された電界放出素子は、実際には多数集合してカソードパネルを構成する。このカソードパネルを、図15に示すようにアノードパネル23と組み合わせ、外部電源回路に接続すると、第2の態様に係る表示装置31が完成される。図15の参照符号は図11の参照符号と共通なので、各部の詳しい説明は省略する。また、表示装置31の製造方法は、表示装置30に関連して前述した通りである。
【0076】
かかる表示装置31の構成においては、開口部16に臨む電子放出層13の縁部にゲート電極層15及び第2ゲート電極層11から電界が加わり、量子トンネル効果によって第3開口部13Aの開口端部(より具体的には、上縁)から電子が放出される。電子が放出される第3開口部の開口端部の厚さが先端部に向かって減少し、且つ、該開口端部に逆テーパ壁が形成されていることにより、開口端部から放出された大部分の電子(e1)は、そのまま開口部16の外に引き出され、図示されない蛍光体層に直接向かう。このように、蛍光体層へ直接向かう電子(e1)はエネルギー分布幅が狭いので、その軌道を所定の蛍光体層に衝突するように制御することは比較的容易である。一方、第2ゲート電極層11の表面で反跳された後に蛍光体層に向かう反跳電子(e2)や、電子放出層13から放出された電子の衝突により第2ゲート電極層11の表面から叩き出された二次電子(e3)も若干存在する。但し、第2の態様に係る表示装置においては、かかる反跳電子(e2)や二次電子(e3)の存在割合は蛍光体層へ直接向かう電子(e1)に比べて極めて少ないので、放出電子軌道の収束性に悪影響を与える虞れは殆どない。
【0077】
尚、ゲート電極層15及び第2ゲート電極層11に印加される電圧の大小関係は、絶縁層14と第2絶縁層12の厚さに応じて選択することができる。例えば、絶縁層14の厚さをt1、第2絶縁層12の厚さをt2、ゲート電極層15への印加電圧をV1、第2ゲート電極層11への印加電圧をV2とすると、V1とV2とを略等しいレベルに設定する場合にはt1<t2とすることが好ましく、t1とt2とを略等しく設定する場合にはV1>V2とすることが好ましい。
【0078】
以上、発明の実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではない。電界放出素子の構造の細部、電界放出素子を適用した表示装置の構造の細部は例示であり、適宜変更、選択、組合せが可能である。例えば、図2に示した第1の態様に係るあらゆる電界放出素子を、いずれも第1の態様に係る表示装置の構成要素として適用することができ、図5に示した第2の態様に係るあらゆる電界放出素子を、いずれも第2の態様に係る表示装置の構成要素として適用することができる。その他、電界放出素子の構造の細部、製造方法における加工条件や使用した材料等の詳細事項に関しても、適宜変更、選択、組合せが可能である。
【0079】
例えば、第1の態様に係る電界放出素子に関しては、上述の図2の(E)に示した以外の電界放出素子も、基本的には同様のプロセスで製造することができる。例えば、図2の(B)に示した電界放出素子を製造するには、先ず図16の(A)に示すように、支持体10上に電子放出層13、絶縁層14、及びゲート電極層15をこの順に形成する。この場合、支持体10は絶縁基板から成る。次に、上述のプロセスに従ってゲート電極層15、絶縁層14、及び電子放出層13のエッチングを順次行い、開口部16を形成する(図16の(B)参照)。次に、第3開口部13Aの直下の絶縁基板の部分に凹部24を形成する(図16の(C)参照)。この凹部24は、上端部を第3開口部13Aの開口端部と揃える場合には異方的なドライエッチングにより形成可能であるが、上端部を第3開口部13Aの下縁よりも後退させる場合には、等方的なエッチング、又は、異方的なエッチングと等方的なエッチングとの組合せにより形成可能である。
【0080】
また、図2の(F)に示した第1の態様に係る電界放出素子を製造するには、先ず、図17の(A)に示すように、絶縁基板100上に第2ゲート電極層11、第2絶縁層12、電子放出層13、絶縁層14、ゲート電極層15、層間絶縁層25、及び収束電極層26をこの順に形成する。ここでは、絶縁基板100、第2ゲート電極層11、及び、第2絶縁層12の積層体が、支持体10に相当する。次に、図17の(B)に示すように、収束電極層26をエッチングして第6開口部26Aを形成し、更に、層間絶縁層25をエッチングして第5開口部25Aを形成する。図17の(B)では、収束電極層26に設けられる第6開口部26Aよりも、層間絶縁層25に設けられる第5開口部25Aの方が小さくなっているが、これは、電子放出層13とほぼ同レベルの電圧が印加される収束電極層26から電子放出を起こさせないための工夫である。また、収束電極層26を広く開口することにより、最終的な開口部16の近傍における電界凸レンズの焦点距離を長くする効果もある。かかる構成を達成するためには、例えば、第6開口部26Aを形成するためにエッチング・マスクと第5開口部25Aを形成するためのエッチング・マスクを別工程にて作製すればよい。この後のプロセスは前述の通りに行う。以上によって、図18に示す電界放出素子を得ることができる。
【0081】
第1の態様に係る電界放出素子の製造方法においては、[工程−100]で電子放出層13を形成する際に、電子放出層13の縁部の形状によっては第3開口部13Aを同時に形成することができる。この形成は、前述のようなタングステン膜の製膜とパターニングとの組合せ以外に、印刷法によって行うことができる。[工程−100]で第3開口部13Aを形成した場合には、[工程−130]に引き続き、[工程−140]を省略して、[工程−150]を実行すればよい。同様に、例えば印刷法により、ゲート電極層15と第1開口部15Aを同時に形成することができ、また、収束電極層26と第6開口部26Aを同時に形成することができる。
【0082】
第2の態様に係る電界放出素子に関しては、上述の図5の(E)に示した以外の電界放出素子も、基本的には同様のプロセスで製造することができる。例えば、図5の(B)に示した電界放出素子を製造するには、先ず図19の(A)に示すように、支持体10上に電子放出層13、絶縁層14、及びゲート電極層15をこの順に形成する。この場合、支持体10は絶縁基板から成る。次に、上述のプロセスに従ってゲート電極層15、絶縁層14、及び電子放出層13のエッチングを順次行い、開口部16を形成する(図19の(B)参照)。次に、第3開口部13Aの直下の絶縁基板の部分に凹部24を形成する(図19の(C)参照)。この凹部24は、上端部を第3開口部13Aの開口端部の上縁と揃える場合には異方的なドライエッチングにより形成可能であるが、上端部を第3開口部13Aの開口端部の上縁よりも後退させる場合には、等方的なエッチングにより形成可能である。尚、図5の(B)に示した構成によれば、凹部24を形成した後に再び電子放出層13のエッチングを行うことにより、第3開口部13Aの開口端部のテーパ角θを更に減少させることもできる。これは、電子放出層13の下方にも空間が形成されることにより、電子放出層13の裏側へエッチング種が回り込むことが可能となるためである。
【0083】
更に、図5の(F)に示した第2の態様に係る電界放出素子を製造するには、前述のようにして図17の(B)に示した状態を得た後、図20に示すように、第1開口部15A、第2開口部14A、第3開口部13A、第4開口部12Aを順次形成すればよい。尚、第2の態様に係る電界放出素子の製造方法においては、例えば印刷法により、収束電極層26と第6開口部26Aの形成を同時に行ったり、ゲート電極層15と第1開口部15Aの形成を同時に行うことができる。
【0084】
また、第1の態様及び第2の態様に係る製造方法においては、図8の(A)に示した段階で電子放出層13に複数の溝部を形成しておき、該電子放出層13のエッチングにより第3開口部13Aを形成した際に、開口端部に凹凸を形成することも可能である。かかる開口端部には、先鋭に尖った部位が溝部の本数に応じて複数形成され、これら尖った部位の各々から電子が放出されるようになるので、放出電子電流が増大し、ひいては、かかる電界放出素子を組み込んだ表示装置の輝度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1の態様に係る電界放出素子の基本的な構成を示す概念図である。
【図2】図1の基本的な構成に加え、支持体の凹部及び/又は収束電極層を追加した、第1の態様に係る電界放出素子の他の構成を示す概念図である。
【図3】第2の態様に係る電界放出素子の基本的な構成を示す概念図である。
【図4】第2の態様に係る電界放出素子の他の基本的な構成を示す概念図である。
【図5】図3の基本的な構成に加え、支持体の凹部及び/又は収束電極層を追加した、第2の態様に係る電界放出素子の他の構成を示す概念図である。
【図6】図2の(E)の構成を有する電界放出素子の開口部を一部破断して示す斜視図である。
【図7】図6のA−A線断面を開口部周辺の構造と共に示す模式的端面図である。
【図8】第1の態様及び第2の態様に係る製造方法に共通の工程を示す模式的端面図であり、(A)はゲート電極層の形成までを終了した状態、(B)は電極接続に用いられる第1孔部と第2孔部を形成した状態を示す。
【図9】図8に引き続き、第1の態様及び第2の態様に係る製造方法に共通の工程を示す模式的端面図であり、(A)は第1開口部を形成した状態、(B)は第2開口部を形成した状態を示す。
【図10】図9に引き続き、第1の態様に係る製造方法に含まれる工程を示す模式的端面図であり、(A)は第3開口部を形成した状態、(B)は第4開口部を形成した状態を示す。
【図11】第1の態様に係る表示装置の構成例を示す概念図である。
【図12】図5の(E)の構成を有する電界放出素子の開口部を一部破断して示す斜視図である。
【図13】図12のA−A線断面を開口部周辺の構造と共に示す模式的端面図である。
【図14】図9に引き続き、第2の態様に係る製造方法に含まれる工程を示す模式的端面図であり、(A)は第3開口部を形成した状態、(B)は第4開口部を形成した状態を示す。
【図15】第2の態様に係る表示装置の構成例を示す概念図である。
【図16】図2の(B)の構成を有する電界放出素子の製造工程を示す模式的端面図である。
【図17】図2の(F)の構成を有する電界放出素子の製造工程を示す模式的端面図である。
【図18】図17に引き続き、図2の(F)の構成を有する電界放出素子の製造工程を示す模式的端面図である。
【図19】図5の(B)の構成を有する電界放出素子の製造工程を示す模式的端面図である。
【図20】図17に引き続き、図5の(F)の構成を有する電界放出素子の製造工程を示す模式的端面図である。
【図21】スピント型素子を組み込んだ表示装置の一般的な構成例を示す模式的端面図である。
【図22】従来のスピント型素子の製造方法の一例を説明するための模式的端面図であり、(A)は開口部を形成した状態、(B)はゲート電極層上に剥離層を形成した状態をそれぞれ表す。
【図23】図22に引き続き従来のスピント型素子の製造方法の一例を説明するための模式的端面図であり、(A)は金属層の成長に伴って円錐形の電子放出電極が形成された状態、(B)は不要の金属層を剥離層と共に除去した状態をそれぞれ表す。
【図24】従来のエッジ型素子の一構成例を示す模式的端面図である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・支持体、11・・・第2ゲート電極層、12・・・第2絶縁層、12A・・・第4開口部、13・・・電子放出層、13A・・・第3開口部、14・・・絶縁層、14A・・・第2開口部、15・・・ゲート電極層、15A・・・第1開口部、16・・・開口部、17・・・第1孔部、18・・・第2孔部、20・・・第1ゲート電極用電源、21・・・第2ゲート電極用電源、22・・・アノード用電源、23・・・アノードパネル、25・・・層間絶縁層、25A・・・第5開口部、26・・・収束電極層、26A・・・第6開口部、30,31・・・表示装置、100・・・絶縁基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出層と、絶縁層と、ゲート電極層とが、この順に支持体上に積層され、
ゲート電極層から支持体の表面に達する開口部が設けられ、
開口部は、ゲート電極層に設けられた第1開口部と、絶縁層に設けられた第2開口部と、電子放出層に設けられた第3開口部とから成り、
第1開口部と第2開口部と第3開口部とは連通しており、
電子が放出される第3開口部の開口端部の厚さは先端部に向かって減少し、且つ、第3開口部の開口端部の下縁は上縁よりも後退していることを特徴とする冷陰極電界電子放出素子。
【請求項2】
第3開口部の開口端部の上縁は、第2開口部の下端部から突出していることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電界電子放出素子。
【請求項3】
支持体は絶縁基板から成ることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電界電子放出素子。
【請求項4】
第3開口部の直下の絶縁基板の部分には凹部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の冷陰極電界電子放出素子。
【請求項5】
凹部の上端部は、第3開口部の開口端部の上縁と揃った位置にあるか、若しくは該上縁よりも後退していることを特徴とする請求項4に記載の冷陰極電界電子放出素子。
【請求項6】
支持体は、絶縁基板と、絶縁基板上に形成された第2ゲート電極層と、第2ゲート電極層上を含む絶縁基板上に形成された第2絶縁層とから成り、
開口部は、第3開口部と連通するごとく第2絶縁層に設けられた第4開口部を更に含み、
第4開口部の底部には第2ゲート電極層が露出していることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電界電子放出素子。
【請求項7】
第4開口部の上端部は、第3開口部の開口端部の上縁と揃った位置にあるか、若しくは該上縁よりも後退していることを特徴とする請求項6に記載の冷陰極電界電子放出素子。
【請求項8】
ゲート電極層上を含む絶縁層上に形成された層間絶縁層と、層間絶縁層上に形成された収束電極層とを更に備え、
開口部は、第1開口部と連通するごとく層間絶縁層に設けられた第5開口部と、第5開口部と連通するごとく収束電極層に設けられた第6開口部とを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電界電子放出素子。
【請求項9】
(イ)支持体上に、電子放出層及び絶縁層を形成する工程と、
(ロ)絶縁層上にゲート電極層を形成する工程と、
(ハ)ゲート電極層に設けられた第1開口部に連通する第2開口部を絶縁層に形成する工程と、
(ニ)第2開口部の底部に露出した電子放出層をエッチングすることにより、開口端部の厚さが先端部に向かって減少し、且つ、開口端部の下縁が上縁よりも後退した第3開口部を電子放出層に形成する工程、
から成ることを特徴とする冷陰極電界電子放出素子の製造方法。
【請求項10】
支持体は絶縁基板から成り、
前記工程(ニ)の後に、
(ホ)第3開口部の直下の絶縁基板の部分に凹部を形成する工程、
を更に有することを特徴とする請求項9に記載の冷陰極電界電子放出素子の製造方法。
【請求項11】
工程(ホ)では、絶縁基板をエッチングすることにより、凹部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃えるか、若しくは該上縁よりも後退させることを特徴とする請求項10に記載の冷陰極電界電子放出素子の製造方法。
【請求項12】
支持体は、絶縁基板と、絶縁基板上に形成された第2ゲート電極層と、第2ゲート電極層上を含む絶縁基板上に形成された第2絶縁層とから成り、
前記工程(ニ)の後に、
(ヘ)第3開口部の直下の第2絶縁層の部分に第4開口部を形成し、該第4開口部の底部に第2ゲート電極層を露出させる工程、
を更に有することを特徴とする請求項9に記載の冷陰極電界電子放出素子の製造方法。
【請求項13】
工程(ヘ)では、第2絶縁層をエッチングすることにより、第4開口部の上端部を第3開口部の開口端部の上縁と揃えるか、若しくは該上縁よりも後退させることを特徴とする請求項12に記載の冷陰極電界電子放出素子の製造方法。
【請求項14】
工程(イ)に続き、全面に層間絶縁層を形成し、更に、層間絶縁層上に収束電極層を形成する工程と、層間絶縁層に第5開口部を形成する工程を含み、
前記工程(ハ)においては、第5開口部に連通する第2開口部を絶縁層に形成することを特徴とする請求項9に記載の冷陰極電界電子放出素子の製造方法。
【請求項15】
複数の画素から構成され、
各画素は、複数の冷陰極電界電子放出素子と、複数の冷陰極電界電子放出素子に対向して基板上に設けられたアノード電極層及び蛍光体層から構成され、
各冷陰極電界電子放出素子は、電子放出層と、絶縁層と、ゲート電極層とが、この順に支持体上に積層されて成る冷陰極電界電子放出表示装置であって、
ゲート電極層から支持体の表面に達する開口部が設けられ、
開口部は、ゲート電極層に設けられた第1開口部と、絶縁層に設けられた第2開口部と、電子放出層に設けられた第3開口部とから成り、
第1開口部と第2開口部と第3開口部とは連通しており、
電子が放出される第3開口部の開口端部の厚さは先端部に向かって減少し、且つ、第3開口部の開口端部の下縁は上縁よりも後退していることを特徴とする冷陰極電界電子放出表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−294000(P2008−294000A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205158(P2008−205158)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【分割の表示】特願平11−194159の分割
【原出願日】平成11年7月8日(1999.7.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】