処理方法、処理装置、及びプログラム
【課題】スループットの低下を防止しつつ重ね合わせ精度等の処理精度を向上させることができる処理方法及び処理装置、並びに当該処理装置で用いられるプログラムを提供する。
【解決手段】露光装置2a,2bは、ネットワークNを介して相互に接続されており、歪シリコンからなる領域が部分的に形成されたウェハの処理を行う。露光装置2bは、ウェハに形成された位置計測用のアライメントマークを全て計測し、上記の歪シリコンが形成された領域に起因して生ずる局所的な歪み情報を得る。また、この歪み情報から、露光装置2aで計測すべきアライメントマークを求める。露光装置2aは、露光装置2bで求められたアライメントマークの計測を行い、この計測結果を用いてウェハの露光を行う。
【解決手段】露光装置2a,2bは、ネットワークNを介して相互に接続されており、歪シリコンからなる領域が部分的に形成されたウェハの処理を行う。露光装置2bは、ウェハに形成された位置計測用のアライメントマークを全て計測し、上記の歪シリコンが形成された領域に起因して生ずる局所的な歪み情報を得る。また、この歪み情報から、露光装置2aで計測すべきアライメントマークを求める。露光装置2aは、露光装置2bで求められたアライメントマークの計測を行い、この計測結果を用いてウェハの露光を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して所定の処理を行う処理方法及び処理装置、並びに当該装置で用いられるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、液晶表示素子、撮像装置(CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等)、薄膜磁気ヘッド等のデバイスは高集積化が図られている。特に、半導体素子は、高機能化及び低コスト化等の要請から、種々の電気部品を1チップ上に集積した大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)とされることが多い。LSIは、それが搭載される電子機器全体の性能を大きく左右するため、LSI単体での性能向上が望まれている。とりわけ、LSIに形成されるトランジスタを高速化しつつ低消費電力化する要請が高まっている。
【0003】
トランジスタを高速化する技術として、近年、歪シリコンからなる領域を部分的に形成する技術が注目されている。ここで、歪シリコンとは、シリコン層上に格子定数の異なる半導体層(例えば、SiGe(シリコンゲルマニウム)層)を形成してシリコン層に引っ張り歪み又は圧縮歪みを加えて電子又はホールの移動速度の向上を図ったものである。かかる歪シリコンを、例えばゲート部分に形成したものが歪シリコントランジスタである。尚、歪シリコンからなる領域を部分的に形成する技術の詳細については、例えば以下の特許文献1〜3を参照されたい。
【特許文献1】特許第3376208号明細書
【特許文献2】特許第3376211号明細書
【特許文献3】特許第3403076号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のデバイスを製造する場合には、リソグラフィー工程で所定のパターンを基板上に転写する露光処理が繰り返し行われる。この露光処理では、基板上に既に形成されているパターンと、次に形成すべきパターンの光学像を精確に重ね合わせる必要がある。基板上に歪シリコンからなる領域を部分的に形成した場合には、基板上において応力が作用する方向及び大きさが基板上で一定ではないため、基板上における歪み量が一定ではなく、露光処理において十分な重ね合わせ精度が得られない虞が考えられる。
【0005】
上記の露光処理では、一般的にスループット(単位時間に露光処理することができる基板の枚数)を向上させるためにEGA計測が行われる。ここで、EGA計測とは、基板上に設定されたショット領域に付設された位置計測用のマーク(アライメントマーク)の内の代表的な数個(3〜9個程度)のアライメントマークのみについて位置計測を行い、この計測結果を用いて統計演算を行って基板上に設定された全ショット領域の配列を求める計測方法をいう。
【0006】
上記のEGA計測を行えば、基板に線形歪み又は非線型歪みが生じていても、これらを加味した重ね合わせを行うことができる。しかしながら、基板上に歪シリコンからなる領域が部分的に形成されている場合には、その歪みがランダムであるため、対応することが難しい。そこで、EGA計測において計測を行うアライメントマークの数を増やせば、重ね合わせ精度を向上させることができると考えられるが、アライメントマークの計測数が増加するとスループットの低下を招いてしまう。
【0007】
また、デバイスを製造する場合には、上記のリソグラフィー工程を経た基板上の各ショット領域に形成されたパターンの異常の有無が検査装置を用いて検査される。この検査を行う場合にも、ショット領域に付設されたアライメントマークを計測して基板上のショット領域の配列を求めて各ショット領域を検査装置の検査位置に位置合わせする処理が行われる。このため、検査装置で検査を行う場合にも露光装置で生ずる問題と同様の問題が生ずる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、スループットの低下を防止しつつ重ね合わせ精度等の処理精度を向上させることができる処理方法及び処理装置、並びに当該処理装置で用いられるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、実施の形態に示す各図に対応付けした以下の構成を採用している。但し、各要素に付した括弧付き符号はその要素の例示に過ぎず、各要素を限定するものではない。
上記課題を解決するために、本発明の処理方法は、その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域(SH)が設定されている基板(W)に対し、所定の処理を行う処理方法において、前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマーク(AM)をそれぞれ計測することにより得る第1工程(S12)と、前記第1工程で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める第2工程(S13〜S16)とを含むことを特徴としている。
この発明によると、基板上に設定された複数の区画領域の各々に付設された位置計測用のマークを計測することにより、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報が計測され、この歪み情報に基づいて区画領域に所定の処理を行う際に使用される処理情報が求められる。
上記課題を解決するために、本発明の処理装置は、その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域(SH)が設定されている基板(W)に対し、所定の処理を行う処理装置(2a、2b)において、前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマーク(AM)をそれぞれ計測することにより得る計測装置(21、MC)と、前記計測装置で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める獲得装置(MC)とを有することを特徴としている。
この発明によると、基板上に設定された複数の区画領域の各々に付設された位置計測用のマークが計測装置で計測されて所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報が求められ、この歪み情報に基づいて区画領域に所定の処理を行う際に使用される処理情報が獲得装置で求められる。
上記課題を解決するために、本発明のプログラムは、その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域(SH)が設定されている基板(W)に対し、所定の処理を行う処理装置(2a、2b、3)で用いられるプログラムであって、前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマーク(AM)をそれぞれ計測装置(21)に計測させて得る計測機能と、前記計測装置で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める獲得機能とをコンピュータに実現させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を予め計測し、この歪み情報に基づいて処理情報を求め、この処理情報を用いて区画領域に所定の処理を行っているため、所定の処理を高精度且つ短時間で行うことができる。よって、例えば、上記の所定の処理が露光処理である場合には、スループットの低下を防止しつつ重ね合わせ精度等の処理精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による処理方法、処理装置、及びプログラムについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による処理装置を備える処理システムの概略構成を示すブロック図である。図1に示す通り、処理システムは、ホストコンピュータ1、露光装置2a,2b,…、測定検査装置3、及び事前測定装置4を含んで構成される。図1に示す処理システムは、例えばデバイス製造工場内に設けられており、ホストコンピュータ1、露光装置2a,2b,…及び測定検査装置3は、デバイス製造工場内に敷設されたLAN(Local Area Network)等のネットワークNを介して相互に接続されている。
【0012】
ホストコンピュータ1は、デバイス製造工場内に敷設されたネットワークNを介してデバイス製造工場内に設けられた各種処理装置(露光装置2a,2b,…、測定検査装置3等)を統括して管理する。露光装置2a,2b,…は、本発明の一実施形態による処理装置の一種であり、所定のパターンをフォトレジスト等の感光剤が塗布されたウェハ又はガラス基板等の基板上に露光転写する装置である。
【0013】
尚、本実施形態では、上記の基板が、複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域(ショット領域)が設定されている半導体ウェハであるとする。また、この半導体ウェハ上には、ショット領域内において所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域(歪シリコンからなる領域)が設けられているとする。即ち、上記の基板は、歪シリコンからなる領域が部分的に形成されている半導体ウェハであるとする。
【0014】
上記の露光装置2a,2b,…としては、例えば所定のパターンが形成されたマスクを保持するマスクステージと基板を保持する基板ステージとを所定の位置関係に位置決めした状態で露光を行うステッパー等の一括露光型の投影露光装置(静止型露光装置)、又はマスクステージと基板ステージとを相対的に同期移動(走査)させながら露光を行うスキャニングステッパー等の走査露光型の投影露光装置(走査型露光装置)等が挙げられる。尚、露光装置2a,2b,…の詳細については後述する。
【0015】
測定検査装置3は、本発明の一実施形態による処理装置の一種であり、例えば露光装置2a,2b,…の露光処理後に基板上に形成されたパターンの重ね合わせ精度若しくは線幅の測定、又はこれらの検査を事後(露光装置での露光後に、露光装置から基板が搬出された後)に行う。事前測定装置4は、本発明の一実施形態による処理装置の一種であり、基板上に形成されているアライメントマークを、基板が露光装置に搬入される前に計測する。尚、これら測定検査装置3,事前測定装置4においては、各種測定のみ、又は各種検査のみが行われる場合もあれば、各種測定と各種検査とが共に行われる場合もある。以下、本明細書では測定及び検査を総称して「測定検査」という。本明細書で「測定検査」という場合には、測定のみが行われる場合、又は検査のみが行われる場合が含まれる。測定検査装置3及び事前測定装置4は、露光装置2a,2b,…とは別に設けられたオフラインの装置であっても良く、露光装置2a,2b,…の各々に対してインライン化された装置であっても良い。尚、本実施形態では、測定検査装置3及び事前測定装置4が露光装置2a,2b,…とは別に設けられたオフラインの装置である場合を例に挙げて説明する。
【0016】
次に、本発明の一実施形態による処理装置の一種である露光装置2a,2b,…について詳細に説明する。尚、図1に示す露光装置2a,2b,…は同様の構成であるため、以下では露光装置2aについての説明を行い、露光装置2b,…についての説明は省略する。図2は、本発明の一実施形態による処理装置の一種である露光装置2aの概略構成を示す側面図である。図2に示す露光装置2aは、半導体素子を製造するための露光装置であって、マスクとしてのレチクルRと基板としてのウェハWとを同期移動させつつ、レチクルRに形成されたパターンDPを逐次ウェハW上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影型の露光装置である。
【0017】
尚、以下の説明においては、必要であれば図中にXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。このXYZ直交座標系は、XY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。また、露光時におけるレチクルR及びウェハWの同期移動方向(走査方向)はY方向に設定されているものとする。
【0018】
図2に示す露光装置2aは、レチクルR上のX方向に延びるスリット状(矩形状又は円弧状)の照明領域を均一な照度を有する露光光ELで照明する照明光学系ILSと、レチクルRを保持するレチクルステージRSTと、レチクルRのパターンDPの像をフォトレジストが塗布されたウェハW上に投影する投影光学系PLと、ウェハWを保持するウェハステージWSTと、これらを制御する主制御系MCとを含んで構成されている。
【0019】
照明光学系ILSは、光源ユニット、オプティカル・インテグレータを含む照度均一化光学系、ビームスプリッタ、集光レンズ系、レチクルブラインド、及び結像レンズ系等(何れも不図示)を含んで構成されている。この照明光学系の構成等については、例えば特開平9−320956に開示されている。ここで、上記の光源ユニットとしては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、若しくはF2レーザ光源(波長157nm)、Kr2レーザ光源(波長146nm)、Ar2レーザ光源(波長126nm)等の紫外レーザ光源、銅蒸気レーザ光源、YAGレーザの高調波発生光源、固体レーザ(半導体レーザ等)の高調波発生装置、又は水銀ランプ(i線等)等を使用することができる。
【0020】
レチクルステージRSTは、真空吸着又は静電吸着等によりレチクルRを保持するものであり、照明光学系の下方(−Z方向)に水平に配置されたレチクル支持台(定盤)11の上面上で走査方向(Y方向)に所定ストロークで移動可能に構成されている。また、このレチクルステージRSTは、レチクル支持台11に対してX方向、Y方向、及びZ軸回りの回転方向(θZ方向)にそれぞれ微小駆動可能に構成されている。
【0021】
レチクルステージRST上の一端には移動鏡12が設けられており、レチクル支持台11上にはレーザ干渉計(以下、レチクル干渉計という)13が配置されている。レチクル干渉計13は、移動鏡12の鏡面にレーザ光を照射してその反射光を受光することにより、レチクルステージRSTのX方向、Y方向、及びZ軸回りの回転方向(θZ方向)の位置を検出する。レチクル干渉計13により検出されたレチクルステージRSTの位置情報は、装置全体の動作を統轄制御する主制御系MCに供給される。主制御系MCは、レチクルステージRSTを駆動するレチクル駆動装置14を介してレチクルステージRSTの動作を制御する。
【0022】
上述した投影光学系PLは、複数の屈折光学素子(レンズ素子)を含んで構成され、物体面(レチクルR)側と像面(ウェハW)側との両方がテレセントリックで所定の縮小倍率β(βは例えば1/4,1/5等)を有する屈折光学系が使用されている。この投影光学系PLの光軸AXの方向は、XY平面に直交するZ方向に設定されている。尚、投影光学系PLが備える複数のレンズ素子の硝材は、露光光ELの波長に応じて、例えば石英又は蛍石が用いられる。また、本実施形態では、レチクルRに形成されたパターンDPの倒立像をウェハW上に投影する投影光学系PLを例に挙げて説明するが、勿論パターンDPの正立像を投影するものであっても良い。
【0023】
投影光学系PLには、温度や気圧を計測するとともに、温度、気圧等の環境変化に応じて投影光学系PLの結像特性等の光学特性を一定に制御するレンズコントローラ部15が設けられている。このレンズコントローラ部15の温度や気圧の計測結果は主制御系MCに出力され、主制御系MCはレンズコントローラ部15から出力された温度や気圧の測定結果に基づいて、レンズコントローラ部15を介して投影光学系PLの結像特性等の光学特性を制御する。
【0024】
ウェハステージWSTは、投影光学系PLの下方(−Z方向)に配置されており、真空吸着又は静電吸着等によりウェハWを保持する。このウェハステージWSTは、ウェハ支持台(定盤)16の上面上で走査方向(Y方向)に所定ストロークで移動可能に構成されているとともに、X方向及びY方向にステップ移動可能に構成されており、更にZ方向へ微動(X軸回りの回転及びY軸回りの回転を含む)可能に構成されている。このウェハステージWSTによって、ウェハWをX方向及びY方向へ移動させることができ、またウェハWのZ方向の位置及び姿勢(X軸周りの回転及びY軸周りの回転)を調整することができる。
【0025】
ウェハステージWST上の一端には移動鏡17が設けられており、ウェハステージWSTの外部にはレーザ光を移動鏡17の鏡面(反射面)に照射するレーザ干渉計(以下、ウェハ干渉計という)18が設けられている。このウェハ干渉計18は、移動鏡17の鏡面にレーザ光を照射してその反射光を受光することによりウェハステージWSTのX方向及びY方向の位置、並びに姿勢(X軸,Y軸,Z軸周りの回転θX,θY,θZ)を検出する。ウェハ干渉計18の検出結果は主制御系MCに供給される。主制御系MCは、ウェハ干渉計18の検出結果に基づいてウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTの位置及び姿勢を制御する。
【0026】
また、本実施形態の露光装置2aは、送光系20a及び送光系20bから構成され、投影光学系PLに関してレチクルR上の照明領域と共役なウェハW上の露光スリット領域の内部及びその近傍に設定された複数の検出点でそれぞれウェハWの表面のZ方向(光軸AX方向)の位置を検出する多点AFセンサ20を投影光学系PLの側方に備える。多点AFセンサ20は、投影光学系PLの光軸AX方向におけるウェハWの表面位置及び姿勢(X軸,Y軸周りの回転θX,θY:レベリング)を検出するものである。
【0027】
この多点AFセンサ20の検出結果は主制御系MCに供給される。主制御系MCは、多点AFセンサ20の検出結果に基づいてウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTの位置及び姿勢を制御する。具体的には、主制御系MCには予めウェハWの表面を合わせ込む基準となる基準面(以下、AF面という)が設定されており、主制御系MCは多点AFセンサ20の検出結果に基づいてウェハWの表面がAF面に一致するようウェハステージWSTの位置及び姿勢を制御する。
【0028】
更に、本実施形態の露光装置2aは、投影光学系PLのY方向の側面に、ウェハW上に設定されたショット領域に付設されたアライメントマークAMの位置情報を計測するためのFIA(Field Image Alignment)方式のアライメントセンサ21が配置されている。尚、ウェハWにはアライメントマークAMが複数形成されているが、図2においては簡略化のために1つのみを図示している。アライメントセンサ21は、CCD等の撮像素子を備えており、ウェハW上のアライメントマークAMを撮像してその画像信号を得る。尚、アライメントセンサ21の光軸は、投影光学系PLの光軸AXと平行とされている。アライメントセンサ21の計測結果は主制御系MCに供給され、主制御系MCで画像処理、演算処理、フィルタリング処理、パターンマッチング等の処理が施されてアライメントマークAMの位置情報が求められる。
【0029】
かかるアライメントセンサ21の詳細な構成は、例えば特開平9−219354号公報及びこれに対応する米国特許第5,859,707号等に開示されている。主制御系MCは、得られたアライメントマークAMの位置情報を用いてEGA計測を行う。ここで、EGA計測とは、ウェハWに形成された代表的な数個(3〜9個)のアライメントマークAMの計測結果を用いて所定の統計演算(EGA演算)を行い、ウェハW上に設定された全てのショット領域の配列を求める計測方法である。
【0030】
本実施形態の露光装置2a,2b,…は、動作モードとして3つの動作モードを有している。第1動作モードは、露光レシピに従ってウェハWに形成されたアライメントマークAMの計測(EGA計測)とウェハWの露光とをウェハW毎に順次行う動作モードである。第2動作モードは、ウェハWに形成されたアライメントマークAMの計測のみを行い、アライメントに関する情報やショット領域の形状の補正情報等の情報(処理情報)をウェハW毎に求める動作モードである。つまり、第2動作モードとは、露光装置をあたかも事前測定装置4のようにマーク計測処理の専用機として使用するものである。
【0031】
ここで、アライメントに関する情報とはEGA計測において計測すべきアライメントマークAMを示す情報やEGA補正情報等をいい、ショット領域の形状の補正情報とはショット領域の形状変化に合わせてレンズコントローラ部15を介して投影光学系PLの倍率等の光学特性を補正することで、投影されるパターン像の形状を補正するために用いる情報をいう。また、第3動作モードは、他の露光装置や事前測定装置4で得られた処理情報で指定されるアライメントマークAMの計測を行い、又は他の露光装置や事前測定装置4で得られた処理情報に含まれるショット領域の形状の補正情報に基づいて投影光学系PLの光学特性を補正した上でウェハWの露光を行う動作モードである。
【0032】
上記の第1動作モード〜第3動作モードの切り替えは、例えばユーザが主制御系MCに設けられた不図示の入力装置を操作して主制御系MCに対して指示することにより行う。尚、ユーザが露光装置2aの主制御系MCに対して第2動作モードを指示した場合には、露光装置2a以外の露光装置2b,…の中から、少なくとも1つの露光装置を第3動作モードに設定する必要がある。また、露光装置2a,2b,…の何れかを第2動作モードに設定した場合には、得られた処理情報を送信すべき露光装置も併せて指定する。
【0033】
主制御系MCは、ネットワークNを介して図1に示すホストコンピュータ1に接続されており、ホストコンピュータ1からネットワークNを介して送信される露光レシピ(露光制御情報)に従った露光処理を行う。ここで、主制御系MCの動作モードとして第1動作モードが設定されている場合には、主制御系MCはアライメントセンサ21を制御して露光レシピで指定されるアライメントマークAMの計測を行い、この計測結果を用いてEGA計測を行う。
【0034】
主制御系MCの動作モードとして第2動作モードが設定されている場合には、主制御系MCはアライメントセンサ21を制御してウェハW上に形成されている全てのアライメントマークAMの計測(EGA計測)を行い、この計測結果の全てを用いてEGA演算処理を行う。加えて、アライメントマークの組み合わせを複数選択し、アライメントマークの組み合わせ毎に、選択されたアライメントマークの計測結果を用いてEGA演算を行い、EGA演算を行う上で最適な1つの組み合わせを選択する。主制御系MCの動作モードとして第3動作モードが設定されている場合には、主制御系MCは、他の露光装置(例えば、図2に示す露光装置2b)又は事前測定装置4、又はこれらから得られた情報がホストコンピュータ1に集約される場合には、このホストコンピュータ1からネットワークNを介して送信されてくる処理情報で指定されるアライメントマークAMの計測を行い、この計測結果を用いてEGA計測を行う。
【0035】
そして、動作モードとして第1動作モード又は第3動作モードが設定されている場合には、主制御系MCは、上記のEGA計測結果に基づいてウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTを移動させて、レチクルRに形成されたパターンDPの投影位置と露光すべきショット領域との位置合わせを行った上で各ショット領域を露光する。
【0036】
以上、露光装置2aについて詳細に説明したが、図1に示す事前測定装置4も露光装置2aが備えるアライメントセンサ21と同様のアライメントセンサを備えており、ウェハW上に形成されたアライメントマークAMの計測が可能になっている。また、事前測定装置4は、マークの計測結果をホストコンピュータ1や、次に露光処理すべき露光装置に送信する(この場合、その送信先でEGA演算処理を行うことになる)ようにしても良いし、或いはEGA演算処理までも行った上でその演算結果を送信するようにしても良い。(つまり、露光装置2aが備える主制御系MCと同様に、アライメントセンサの計測結果に基づいて、ウェハW上のショット領域の配列を求めるようにしても良い。)尚、測定検査装置3は、上記のアライメントセンサの計測結果、又はこの計測結果を用いたEGA計測結果に基づいてウェハWの各ショット領域を検査位置に位置合わせして重ね合わせ精度又は線幅の測定検査を行う。
【0037】
次に、本発明の一実施形態による処理方法について説明する。尚、以下の説明では、図1に示す露光装置2a,2bを用いて露光処理を行う場合を例に挙げて説明する。図3は、本発明の一実施形態による処理方法の概略を示すフローチャートである。図3に示す通り、本実施形態においては、まず露光装置2bを用いて複数枚(例えば25枚)のウェハWを単位とした1ロット分のウェハWの各々に形成されたアライメントマークAMを計測し、その計測結果から露光装置1aで露光処理を行う際に用いる処理装置を算出する(工程S1)。次に、露光装置2bで算出された処理情報が露光装置2aに送信され(工程S2)、露光装2aにおいて露光装置2bからの処理情報に基づいて露光処理が行われる(工程S3)。このように、本実施形態では、1ロット分のウェハWを単位としてアライメントマークAMの計測及び処理情報の算出、並びに、露光処理が行われる。
【0038】
尚、本実施形態では、図3の工程S1(即ち、図4の各工程)の動作を、露光装置2bを用いて行うものとしているが、本発明はこれに限らず、上述の事前測定装置4において図3の工程S1の動作を行うようにしても良い。この場合には、事前測定装置4で得られた情報は、図3の工程S2において露光装置2aに直接、或いは上述のホストコンピュータ1を介して間接的に送信されることになる。
【0039】
次に、図4に示す工程S1,S2の詳細について説明する。図4は、図3中の工程S1の詳細を示すフローチャートである。まず、ユーザが1ロット分のウェハWが収容されたFOUP(Front Opening Unified Pod)等のキャリアを露光装置2bのウェハロード開始位置に配置する。次いで、ユーザが露光装置2bの主制御系MCに設けられた不図示の入力装置を操作して、露光装置2bの動作モードを第2動作モードに設定する。更に、ユーザは処理情報を送信すべき露光装置も併せて指定する。本実施形態では、この露光装置として図1に示す露光装置2aを指定する。以上の前準備が終了し、ユーザが処理開始を指示すると、露光装置2bの主制御系MCは、不図示のウェハ搬送装置(ウェハローダ)を制御してキャリアに収容されたウェハWをキャリアから取り出させて露光装置2aの内部にロードさせる。ウェハ搬送装置によって搬送されたウェハWはウェハステージWST上に保持される(工程S11)。
【0040】
ウェハステージWST上にウェハWが保持されると、主制御系MCはウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTをXY面内でステップ移動させて、ウェハW上に形成されたアライメントマークAMをアライメントセンサ21の計測視野内に順次配置し、各々のアライメントマークAMをアライメントセンサ21で計測する(工程S12)。ここで、ショット領域及びアライメントマークについて説明する。図5は、ウェハW上に設定されるショット領域及びウェハW上に形成されるアライメントマークの一例を示す図である。
【0041】
図5(a)に示す通り、ウェハW上には矩形形状のショット領域SHが一定間隔で配列されており、ショット領域SHの各々にはアライメントマークAMが付設されている。尚、図5(a)においては、図示の都合上、アライメントマークAMを大きめに図示している。ショット領域SHの大きさ及び数は製造するデバイス毎に変更されることがあり、またアライメントマークAMの形状及びショット領域SH内における位置は形成すべきレイヤー毎に変更されることがある。
【0042】
図5(b)に示す通り、アライメントマークAMは、例えばY方向に延びた矩形形状であってX方向に等間隔に配列されたXマークmxと、X方向に延びた矩形形状であってY方向に等間隔に配列されたYマークmyとからなる。アライメントマークAMのXマークmxを計測することによってそのアライメントマークAMが設けられたショット領域SHのX方向の位置が求められ、Yマークmyを計測することによってそのアライメントマークAMが設けられたショット領域SHのY方向の位置が求められる。つまり、アライメントマークAMを計測して得られる位置情報は、そのアライメントマークAMが設けられているショット領域SHを代表する位置情報である。上述した工程S12では、ウェハW上に形成されたアライメントマークAMの全てが計測され、各々のショット領域を代表する位置情報(例えば、ショット領域SHの中心位置を示す情報)が求められる。
【0043】
全てのアライメントマークAMの計測が終了すると、主制御系MCは、全てのアライメントマークAMの計測結果を用いてEGA演算を行う(工程S13)。このEGA演算によってウェハW上に配列されたショット領域配列上の(基板内の)線形的な誤差成分(基板誤差の線形成分)、ショット領域内の線形的な位置誤差(ショット内誤差の線形成分)、及びランダムな誤差成分(ランダム成分)が求められる。ここで、上記の基板誤差の線形成分としては、レイヤーを形成する際のウェハステージWSTの誤差(位置誤差)や投影光学系PLの倍率誤差等に起因するX方向へのずれ量(オフセット)、Y方向へのずれ量、ウェハWの回転量(ローテーション)、X方向の倍率(スケーリング)、Y方向の倍率、及び直交度の6つがある。
【0044】
また、上記のショット内誤差の線形成分としては、レイヤーを形成する際の投影光学系PLの収差等に起因するものがある。図6は、EGA演算により求められるランダム成分とショット内誤差の非線形成分の一例を示す図である。ウェハW上にレイヤーを形成する際に行われる露光工程において、投影光学系PLに糸巻き型の歪曲収差(ディストーション)が生じている場合には、図5(a)に示すショット領域SHが、例えば図6に示す通りに変形する。図6は、EGA演算により求められる非線形成分の一例を説明するための図である。尚、図6において、各ショット領域SH内に記した丸印はショット領域SHの中心位置を表している。
【0045】
図6を参照すると、各ショット領域SHの形状が変化しているのみならず、その中心位置が非線形的に位置ずれしていることが分かる。ここで、各ショット領域SHに付設されたアライメントマークAMを計測しても各ショット領域SHの位置(例えば、図6中の丸印の位置)が得られるだけであり、ショット領域SHの形状変化を直接的に計測することはできないが、各ショット領域SHの配列からショット領域SHの形状変化を間接的に求めることは可能である。本実施形態では、後述する工程S13で行われるEGA演算の演算結果からショット領域SHの形状変化を求めて、それを補正する補正情報(後述する工程S25で使用する像形状の変形補正量)を算出している。
【0046】
ここで、前述した通り、ウェハWには歪シリコンからなる領域が部分的に形成されており、この歪シリコンに影響されてウェハW上のアライメントマークAMは位置ずれが生ずる。ウェハWの全面に歪シリコンが形成されていれば、この歪シリコンによるアライメントマークAMの位置ずれがほぼ一様であるとみなし、上記のEGA演算によって得られる線形成分又は非線形成分を用いれば補正が可能であると考えられる。
【0047】
しかしながら、歪シリコンからなる領域がウェハW上に部分的に形成されている場合には、その歪みはランダムなものになるとなる。このため、図7に示す通り、アライメントマークAMの位置ずれ(ショット配列のずれ)もランダムになると考えられる。つまり、アライメントマークAMの計測結果(工程S12での全マークの計測値)と、上記工程S13で得られたEGA演算値(各マークのEGA演算上の座標位置)との差分(ランダム成分)は各ショット(マーク)毎における局所的な歪みを示す歪み情報であると考えられる。本工程S13では、この歪み情報を、後述するサンプルショットの最適化を行う際の基準指標(比較対象)として使用するために、各ショット毎(マーク毎)に算出すると共に記憶するようにする。
【0048】
図7は、部分的な歪みに起因して生ずるアライメントマークAMの位置ずれの一例を示す図である。尚、図7において、各ショット領域SH内に記した丸印は設計上のショット領域SHの中心位置を表しており、各ショット領域SH内に記した矢印は実際に形成されているアライメントマークAMから求められるショット領域SHの中心の位置ずれ方向及び位置ずれ量を表している。前述したランダム成分(歪み情報)は、アライメントマークAMのランダムな位置ずれに起因するものであり、歪シリコンに影響されて部分的な歪みが大きくなるとランダム成分も大きくなる。
【0049】
全てのアライメントマークAMの計測結果を用いたEGA演算が終了すると、主制御系MCは、ウェハW上に形成されたアライメントマークAMから数個(例えば、3〜9個)のアライメントマークAMを、組み合わせを変えて複数選択する(工程S14)。例えば、ウェハW上にn個(nは正の整数)のショット領域SH1〜SHnが設定されており、これらから3個のアライメントマークAMを選択する場合には、ショット領域SHi,SHj,SHkの3つを選択する。ここで、i,j,kは、互いに異なる1以上n以下の整数である。
【0050】
つまり、主制御系MCは、変数i,j,kの各々を異なる値に設定してショット領域SHi,SHj,SHkに付設されたアライメントマークAMの第1の組み合わせを選択する。次いで、変数i,j,kの内の少なくとも1つの変数の値を先に設定した値と異なる値に設定してショット領域SHi,SHj,SHkに付設されたアライメントマークAMの第2の組み合わせを選択する。以下同様に、変数i,j,kの値の全てが先に設定した値と等しくならないよう変数i,j,kの値を設定してショット領域SHi,SHj,SHkに付設されたアライメントマークの組み合わせを選択する。
【0051】
アライメントマークAMの組み合わせの選択を終えると、主制御系MCは、工程S14で選択したアライメントマークAMの組み合わせ毎に、選択されたアライメントマークAMの計測結果を用いてEGA演算を行う(工程S15)。上記の工程S14で、m(mは、2以上の整数)通りの組み合わせが選択された場合には、各々の組み合わせで選択されたアライメントマークAMの計測結果を用いたEGA演算がm回行われる。これにより、各組み合わせ毎に前述した線形成分、非線形成分、及びランダム成分が求められる。また、EGA演算を行うことによりウェハW上におけるショット領域のSHの配列が求められるが、主制御系MCはこの演算結果からショット領域の形状変化を求め、これを補正する補正情報も算出する。
【0052】
以上の工程が終了すると、主制御系MCは、上記のEGA演算結果に基づいて、アライメントマークAMの複数の組み合わせから、EGA演算を行う上で最適な1つの組み合わせを選択する。具体的には、工程S12で計測された各ショット毎の座標値から線形成分、即ち各組み合わせ毎に算出された各ショットのEGA演算値を除去した残留ランダム成分(歪み情報)と、上述の工程S13で算出し記憶された各ショット毎の歪み情報との差分が、各ショットをみまわして最小となる組み合わせを選択する(工程S15)。つまり、ここでは、工程S13で求め記憶した歪み情報と、本工程S15で算出した歪み情報とをショット毎に比較し、その差がウェハ全体として最小となるマークの組み合わせを選択するものである。この工程では、歪シリコンの影響を反映しつつウェハ全体として歪みの影響が極力小さいアライメントマークAMの組み合わせが選択される。尚、この選択方法は、換言すれば、EGA演算で求められる線形誤差成分(EGAパラメータ)が、全ショットに付随したアライメントマークの実測値及び設計値を使ってなされる全ショットEGAにおけるEGAパラメータに対して最も類似(近似)するEGAパラメータが得られる組み合わせ(アライメントマークの組み合わせ)を、複数の組み合わせの中から選択することである。
【0053】
また、他の選択方法として、次のような手法も考えられる。具体的には、線形成分を除去した残留ランダム成分が最小となる組み合わせを選択する(工程S15)。ここで、前述した通りランダム成分は、アライメントマークAMのランダムな位置ずれに起因するものであり、歪シリコンの影響が大きくなるとランダム成分も大きくなる。このため、この工程では、歪シリコンの影響が極力小さいアライメントマークAMの組み合わせが選択される。尚、アライメントマークの組み合わせを無限にとると演算に多大な時間を要してしまうので、予め適当な数、配置のサンプルショットを複数(例えば、20個程)選んでおき、その中から任意の個数、配置のマークの組み合わせを複数選択するようにしておくのが計測スループット上は望ましい。
【0054】
尚、本実施形態では、工程S15において、アライメントマークAMの組み合わせ毎にEGA演算を行い、その演算結果からショット領域の形状変化を補正する補正情報を算出する場合を例に挙げている。しかしながら、補正情報を算出するために要する時間を省くために、工程S15でアライメントマークAMの組み合わせ毎のEGA演算結果を一時的に記憶しておき、工程S16で1つのアライメントマークAMの組み合わせを選択した後で、この組み合わせについてのEGA演算結果を用いて補正情報を算出するのが望ましい。アライメントマークAMの組み合わせが選択されると、主制御系MCは、その選択結果(補正情報を含む)を一時的に記憶する(工程S17)。
【0055】
以上の工程が終了すると、露光装置2bの主制御系MCは、計測すべきウェハWの有無を判断する(工程S18)。この判断結果が「YES」の場合には、不図示のウェハ搬送装置を制御してウェハステージWST上のウェハWを搬出(アンロード)させてキャリアに収容させる。これとともに、キャリアに収容された新たなウェハWをキャリアから取り出させて露光装置2bの内部にロードさせてウェハステージWに保持させ(工程S11)、そのウェハWに対する計測を行う。一方、工程S18の判断結果が「NO」である場合には、1ロット分のウェハWについて全アライメントマークAMを計測する工程、即ち図1に示す工程S1が終了する。尚、上記の工程S17で一時的に記憶した情報は、図4に示す処理が終了した後で、ユーザによって指定された露光装置2aに送信される(図3の工程S2)。
【0056】
図8は、図3中の工程S3の詳細を示すフローチャートである。まず、露光装置2bを用いて計測が行われた1ロット分のウェハWが収容されたキャリアをユーザが露光装置2aのウェハロード開始位置に配置する。次いで、ユーザが露光装置2aの主制御系MCに設けられた不図示の入力装置を操作して、露光装置2aの動作モードを第3動作モードに設定する。
【0057】
以上の前準備が終了し、ユーザが処理開始を指示すると、まず露光装置2aの主制御系MCは、不図示のレチクル搬送装置(レチクルローダ)を制御して、露光レシピに従ったレチクルRを搬送させる。レチクル搬送装置によって搬送されたレチクルRは、レチクルステージRST上に保持される(工程S21)。尚、レチクルRがレチクルステージRST上に保持されると、レチクルRとウェハステージWSTとの相対位置関係を調整する処理(レチクルアライメント)が行われる。
【0058】
次いで、主制御系MCは、不図示のウェハ搬送装置(ウェハローダ)を制御してキャリアに収容されたウェハWをキャリアから取り出させて露光装置2aの内部にロードさせる。ウェハ搬送装置によって搬送されたウェハWがウェハステージWST上に保持される(工程S22)。尚、本実施形態では、露光装置2a,2bの両方でウェハWに形成されたアライメントマークAMの計測を行っている。このため、露光装置2aのウェハステージWST上におけるウェハWの保持方法と、露光装置2bのウェハステージWST上におけるウェハWの保持方法とが異なると、例えば歪シリコンに起因する局所的な歪み方に相違が生じ、露光装置2bでの計測結果が全く無意味になってしまう。よって、ウェハWの保持方法は、露光装置2aと露光装置2bとで同じにするのが望ましい。
【0059】
ウェハステージWST上にウェハWが保持されると、主制御系MCはウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTをXY面内でステップ移動させて、露光装置2bから送信された処理情報で指定されるアライメントマークAMのみをアライメントセンサ21の計測視野内に順次配置し、各々のアライメントマークAMをアライメントセンサ21で計測する(工程S23)。前述した通り、露光装置2bでの計測によって、EGA演算を行う上で最適なアライメントマークAMの組み合わせが選択されている。ここでは、この選択されたアライメントマークAMの計測が行われる。尚、処理情報はウェハW毎に求められているため、主制御系MCはウェハステージWST上に保持されているウェハWの処理情報を用いて上記の処理を行う。
【0060】
アライメントマークAMの計測を終えると、主制御系MCはアライメントマークAMの計測結果を用いてEGA演算を行う。これにより、ウェハW上におけるショット領域の配列が求められる(工程S24)。次いで、露光装置2aの主制御系MCは、露光装置2bからの処理情報に含まれる補正情報に基づいて、レンズコントローラ部15を介して投影光学系PLの光学特性を制御する(工程S25)。これにより、投影光学系PLを介してウェハW上に投影されるパターンDPの像の形状が、ショット領域SHの形状変化に合わせて補正される。尚、ここでは、ウェハWに形成された複数のショット領域SHの内の最初に露光すべきショット領域SHの形状変化に合わせて投影光学系PLの光学特性が制御される。
【0061】
以上の処理が終了すると、ウェハWに設定されたショット領域SHの露光処理が開始される。露光処理が開始されると、まず露光装置2aの主制御系MCは、レチクル駆動装置14を介してレチクルステージRSTを駆動してレチクルRを露光開始位置に配置する。併せて、ウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTを駆動してウェハW上の最初に露光すべきショット領域SHを露光開始位置に配置する。
【0062】
以上の配置が終了すると、主制御系MCは、レチクル駆動装置14及びウェハ駆動装置19を介してレチクルステージRST及びウェハステージWSTの移動をそれぞれ開始させる。両ステージの移動を開始させた後、主制御系MCは、レチクル干渉計13及びウェハ干渉計18の検出結果に基づいてレチクルステージRST及びウェハステージWSTの移動速度を算出し、各々が所定速度に達したか否かを判断する。また、レチクル干渉計13及びウェハ干渉計18の検出結果に基づいてレチクルステージRSTとウェハステージWSTとが同期したか否か、及び両ステージが所定の位置(露光開始位置)に達したか否かを判断する。
【0063】
レチクルステージRST及びウェハステージWSTが所定速度に達し、且つ同期して所定の位置に達したと判断した場合には、主制御系MCは照明光学系ILSに制御信号を出力して露光光ELの射出を開始させ、スリット状の露光光ELをレチクルRに照射する。露光光ELの照射により、レチクルRに形成されたパターンDPの一部(露光光ELが照明された部分)の像が投影光学系PLによって最初に露光すべきショット領域内に投影される。ここで、レチクルステージRSTとウェハステージWSTとが同期して移動しているため、レチクルR上における露光光ELの照射位置が連続的に変化するとともに、ショット領域内におけるパターン像の投影位置も連続的に変化する。これにより、最初に露光すべきショット領域内が逐次露光される。
【0064】
尚、ショット領域の露光を行っている最中に、主制御系MCは、多点AFセンサ20の検出結果に基づいて、ウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTのZ方向における位置及び姿勢(X軸,Y軸周りの回転θX,θY:レベリング)の制御(オートフォーカス制御)を行う。これにより、ウェハWの表面が投影光学系PLの像面に合わせ込まれた状態でショット領域が露光される。
【0065】
1つのショット領域に対する露光処理が終了すると、主制御系MCは他に露光すべきショット領域があるか否かを判断する(工程S27)。この判断結果が「YES」の場合には、主制御系MCは、露光装置2bからの処理情報に含まれる補正情報に基づいて、レンズコントローラ部15を介して投影光学系PLの光学特性を制御する(工程S25)。これにより、投影光学系PLを介してウェハW上に投影されるパターンDPの像の形状が、次に露光すべきショット領域SHの形状変化に合わせて補正される。
【0066】
次に、主制御系MCは、ウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTを駆動して次に露光すべきショット領域SHを露光開始位置に配置する。また、レチクル駆動装置14を介してレチクルステージRSTを駆動してレチクルRを露光開始位置に配置する。そして、主制御系MCは、レチクル駆動装置14及びウェハ駆動装置19を介してレチクルステージRST及びウェハステージWSTの移動をそれぞれ開始させて、次に露光すべきショット領域SHを露光する(工程S26)。露光すべきショット領域がある間(工程S27の判断結果が「YES」の間)は、工程S25,S26が繰り返される。
【0067】
一方、工程S27の判断結果が「NO」になると、露光装置2aの主制御系MCは、計測すべきウェハWの有無を判断する(工程S28)。この判断結果が「YES」の場合には、不図示のウェハ搬送装置を制御してウェハステージWST上のウェハWを搬出(アンロード)させてキャリアに収容させる。これとともに、キャリアに収容された新たなウェハWをキャリアから取り出させて露光装置2aの内部にロードさせてウェハステージWに保持させ(工程S22)、そのウェハWに対する露光を行う。一方、工程S28の判断が「NO」の場合には、1ロット分のウェハWを露光する工程、即ち図1に示す工程S3が終了する。
【0068】
以上説明した通り、本実施形態においては、まずロット単位のウェハWに形成された全アライメントマークAMを露光装置2bを用いて計測して、ウェハW毎にEGA演算を行う上で最適なアライメントマークAMの組み合わせ、及びショット領域の形状を補正する補正情報を求めている。そして、露光装置2bを用いて得られた処理情報を露光装置2aに送信し、露光装置2aを用いて処理情報に基づいたアライメントマークAMの計測、及び投影光学系PLの光学特性の制御を行った上でロット単位のウェハWを露光している。
【0069】
1ロットに含まれるウェハWの全てのアライメントマークAMの計測と露光とは、各々異なる露光装置で行われるため、計測と露光とを並列して行うことができ、その結果としてスループットの低下を防止することができる。また、露光装置2bで行われた計測結果に基づいて、ウェハW毎にEGA演算を行う上で最適なアライメントマークAMの組み合わせが求められているため、露光装置2aで露光を行う際に重ね合わせ精度を向上させることができる。更に、ショット領域の形状変化に応じてパターン像の形状が補正されるため、これによっても重ね合わせ精度を向上させることができる。以上から、ウェハW毎に異なる歪みが生じていても、スループットの低下を防止しつつ重ね合わせ精度等の処理精度を向上させることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、ウェハW毎に全てのアライメントマークAMの計測を行い、ウェハW毎にEGA計測を行う上で最適なアライメントマークAMの組み合わせを求めていた。しかしながら、1ロットに含まれるウェハWには同じパターンが形成されているため、歪シリコンに起因する局所的な歪みが生ずる傾向がウェハW間で似通うことも考えられる。このため、全ウェハWのアライメントマークAMの計測結果から平均的に良好な計測精度(EGA計測の計測精度)が得られる全ウェハWに共通したアライメントマークAMの組み合わせを選択するようにしても良い。
【0071】
また、必ずしも1ロットに含まれる全ウェハWに形成された全てのアライメントマークAMの計測を行う必要はない。但し、計測精度を向上させる観点から、計測すべきアライメントマークAMの数は多い方が望ましい。更に、上記実施形態では各ウェハWについてショット領域の形状を補正する補正情報をショット領域毎に求めていたが、ウェハW間におけるショット領域の形状変化が似通った傾向を示す場合には、ウェハW間で共通する補正情報を求め、この補正情報を用いて各ウェハWのショット領域の形状変化を補正するようにしても良い。
【0072】
また、上記実施形態では露光装置2bで計測を行い、この計測結果を用いて露光装置2aで露光処理を行っていた。しかしながら、ウェハWのアライメントマークAMを計測して処理情報を求める装置によって上記の計測を行っても良い。更に、上記実施形態では、ウェハWのアライメントマークAMの計測結果を用いて露光処理を行う場合を例に挙げて説明したが、上記の計測結果を測定検査装置3での測定検査に用いても良い。例えば、測定検査装置3で重ね合わせ精度を測定検査する場合には、測定検査装置3の検査位置に各ショット領域を位置合わせする必要がある。このため、上記の計測結果を用いて所定のアライメントマークのみを計測してEGA計測を行ってショット領域の配列を求め、これに基づいて測定検査すべきショット領域を検査位置に配置して測定検査を行うのが好適である。
【0073】
また、露光装置2a,2bが備える主制御系MCがコンピュータからなる場合には、以上説明したアライメントセンサ21を制御してアライメントマークAMの計測を行わしめる機能と、計測結果から最適なアライメントマークAMの組み合わせを求め、又は補正情報を求める機能とを備えるプログラムがコンピュータに格納されており、このプログラムが実行されることにより各種機能が実現されて、前述した計測が行われる。このプログラムは、例えばCD−ROM又はDVD(登録商標)−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体に記録されたプログラムをCD−ROMドライブ又はDVD(登録商標)−ROMドライブ等のドライブ装置を用いて読み取れば、コンピュータにインストールすることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、本発明をステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影型の露光装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はステップ・アンド・リピート方式の縮小投影型の露光装置に適用することもできる。また、本発明は、ウェハステージが複数設けられるツインステージ型の露光装置にも適用できる。ツインステージ型の露光装置の構造及び露光動作は、例えば特開平10−163099号公報及び特開平10−214783号公報(対応米国特許6,341,007号、6,400,441号、6,549,269号及び6,590,634号)、特表2000−505958号(対応米国特許5,969,441号)或いは米国特許6,208,407号に開示されている。更に、本発明を本願出願人が先に出願した特願2004−168481号のウェハステージに適用してもよい。
【0075】
また、国際公開第99/49504号公報に開示されているような液浸法を用いる露光装置にも本発明を適用することができる。ここで、本発明は、投影光学系PLとウェハWとの間を局所的に液体で満たす液浸露光装置、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する液浸露光装置の何れの露光装置にも適用可能である。
【0076】
更に、上記の露光装置としては、半導体素子の製造に用いられてデバイスパターンを半導体基板上へ転写する露光装置以外に、液晶表示素子の製造に用いられて回路パターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられてデバイスパターンをセラミックウェハ上へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置等を用いることができる。
【0077】
次に、デバイスの製造方法について説明する。図9は、マイクロデバイスとしての半導体素子を製造する製造工程の一部を示すフローチャートである。図9に示す通り、まず、ステップS31(設計ステップ)において、半導体素子の機能・性能設計を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS32(マスク製作ステップ)において、設計したパターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。一方、ステップS33(ウェハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウェハを製造する。
【0078】
次に、ステップS34(露光処理ステップ)において、ステップS31〜ステップS33で用意したマスクとウェハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウェハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS35(デバイス組立ステップ)において、ステップS34で処理されたウェハを用いてデバイス組立を行う。このステップS35には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS36(検査ステップ)において、ステップS35で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0079】
図10は、図9のステップS34の詳細なフローの一例を示す図である。図10において、ステップS41(酸化ステップ)においてはウェハの表面を酸化させる。ステップS42(CVDステップ)においてはウェハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS43(電極形成ステップ)においてはウェハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS44(イオン打込みステップ)においてはウェハにイオンを打ち込む。以上のステップS41〜ステップS44のそれぞれは、ウェハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0080】
ウェハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS45(レジスト形成ステップ)において、ウェハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS46(露光工程)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)によってマスクのパターンをウェハに転写する。次に、ステップS47(現像工程)においては露光されたウェハを現像し、ステップS48(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS49(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウェハ上に多重にパターンが形成される。
【0081】
以上説明したマイクロデバイス製造方法においては、露光工程(ステップS46)において前述した露光装置2a,2bを用いて計測及び露光が行われる。また、図1に示す測定検査装置3,事前測定装置4を用いた測定検査が行われる。このため、ウェハ上に形成されたアライメントマークを全て検査してもスループットの低下を招くことはなく、また重ね合わせ精度を高めることができる。これにより、微細なデバイスを歩留まり良く効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態による処理装置を備える処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による処理装置の一種である露光装置2aの概略構成を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による処理方法の概略を示すフローチャートである。
【図4】図3中の工程S1の詳細を示すフローチャートである。
【図5】ウェハW上に設定されるショット領域及びウェハW上に形成されるアライメントマークの一例を示す図である。
【図6】EGA演算により求められるランダム成分とショット内誤差の非線形成分の一例を示す図である。
【図7】部分的な歪みに起因して生ずるアライメントマークAMの位置ずれの一例を示す図である。
【図8】図3中の工程S3の詳細を示すフローチャートである。
【図9】マイクロデバイスとしての半導体素子を製造する製造工程の一部を示すフローチャートである。
【図10】図9のステップS34の詳細なフローの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
2a,2b 露光装置
3 測定検査装置
4 事前測定装置
21 アライメントセンサ
AM アライメントマーク
DP パターン
MC 主制御系
R レチクル
SH ショット領域
W ウェハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して所定の処理を行う処理方法及び処理装置、並びに当該装置で用いられるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、液晶表示素子、撮像装置(CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等)、薄膜磁気ヘッド等のデバイスは高集積化が図られている。特に、半導体素子は、高機能化及び低コスト化等の要請から、種々の電気部品を1チップ上に集積した大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)とされることが多い。LSIは、それが搭載される電子機器全体の性能を大きく左右するため、LSI単体での性能向上が望まれている。とりわけ、LSIに形成されるトランジスタを高速化しつつ低消費電力化する要請が高まっている。
【0003】
トランジスタを高速化する技術として、近年、歪シリコンからなる領域を部分的に形成する技術が注目されている。ここで、歪シリコンとは、シリコン層上に格子定数の異なる半導体層(例えば、SiGe(シリコンゲルマニウム)層)を形成してシリコン層に引っ張り歪み又は圧縮歪みを加えて電子又はホールの移動速度の向上を図ったものである。かかる歪シリコンを、例えばゲート部分に形成したものが歪シリコントランジスタである。尚、歪シリコンからなる領域を部分的に形成する技術の詳細については、例えば以下の特許文献1〜3を参照されたい。
【特許文献1】特許第3376208号明細書
【特許文献2】特許第3376211号明細書
【特許文献3】特許第3403076号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のデバイスを製造する場合には、リソグラフィー工程で所定のパターンを基板上に転写する露光処理が繰り返し行われる。この露光処理では、基板上に既に形成されているパターンと、次に形成すべきパターンの光学像を精確に重ね合わせる必要がある。基板上に歪シリコンからなる領域を部分的に形成した場合には、基板上において応力が作用する方向及び大きさが基板上で一定ではないため、基板上における歪み量が一定ではなく、露光処理において十分な重ね合わせ精度が得られない虞が考えられる。
【0005】
上記の露光処理では、一般的にスループット(単位時間に露光処理することができる基板の枚数)を向上させるためにEGA計測が行われる。ここで、EGA計測とは、基板上に設定されたショット領域に付設された位置計測用のマーク(アライメントマーク)の内の代表的な数個(3〜9個程度)のアライメントマークのみについて位置計測を行い、この計測結果を用いて統計演算を行って基板上に設定された全ショット領域の配列を求める計測方法をいう。
【0006】
上記のEGA計測を行えば、基板に線形歪み又は非線型歪みが生じていても、これらを加味した重ね合わせを行うことができる。しかしながら、基板上に歪シリコンからなる領域が部分的に形成されている場合には、その歪みがランダムであるため、対応することが難しい。そこで、EGA計測において計測を行うアライメントマークの数を増やせば、重ね合わせ精度を向上させることができると考えられるが、アライメントマークの計測数が増加するとスループットの低下を招いてしまう。
【0007】
また、デバイスを製造する場合には、上記のリソグラフィー工程を経た基板上の各ショット領域に形成されたパターンの異常の有無が検査装置を用いて検査される。この検査を行う場合にも、ショット領域に付設されたアライメントマークを計測して基板上のショット領域の配列を求めて各ショット領域を検査装置の検査位置に位置合わせする処理が行われる。このため、検査装置で検査を行う場合にも露光装置で生ずる問題と同様の問題が生ずる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、スループットの低下を防止しつつ重ね合わせ精度等の処理精度を向上させることができる処理方法及び処理装置、並びに当該処理装置で用いられるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、実施の形態に示す各図に対応付けした以下の構成を採用している。但し、各要素に付した括弧付き符号はその要素の例示に過ぎず、各要素を限定するものではない。
上記課題を解決するために、本発明の処理方法は、その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域(SH)が設定されている基板(W)に対し、所定の処理を行う処理方法において、前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマーク(AM)をそれぞれ計測することにより得る第1工程(S12)と、前記第1工程で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める第2工程(S13〜S16)とを含むことを特徴としている。
この発明によると、基板上に設定された複数の区画領域の各々に付設された位置計測用のマークを計測することにより、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報が計測され、この歪み情報に基づいて区画領域に所定の処理を行う際に使用される処理情報が求められる。
上記課題を解決するために、本発明の処理装置は、その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域(SH)が設定されている基板(W)に対し、所定の処理を行う処理装置(2a、2b)において、前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマーク(AM)をそれぞれ計測することにより得る計測装置(21、MC)と、前記計測装置で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める獲得装置(MC)とを有することを特徴としている。
この発明によると、基板上に設定された複数の区画領域の各々に付設された位置計測用のマークが計測装置で計測されて所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報が求められ、この歪み情報に基づいて区画領域に所定の処理を行う際に使用される処理情報が獲得装置で求められる。
上記課題を解決するために、本発明のプログラムは、その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域(SH)が設定されている基板(W)に対し、所定の処理を行う処理装置(2a、2b、3)で用いられるプログラムであって、前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマーク(AM)をそれぞれ計測装置(21)に計測させて得る計測機能と、前記計測装置で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める獲得機能とをコンピュータに実現させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を予め計測し、この歪み情報に基づいて処理情報を求め、この処理情報を用いて区画領域に所定の処理を行っているため、所定の処理を高精度且つ短時間で行うことができる。よって、例えば、上記の所定の処理が露光処理である場合には、スループットの低下を防止しつつ重ね合わせ精度等の処理精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による処理方法、処理装置、及びプログラムについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による処理装置を備える処理システムの概略構成を示すブロック図である。図1に示す通り、処理システムは、ホストコンピュータ1、露光装置2a,2b,…、測定検査装置3、及び事前測定装置4を含んで構成される。図1に示す処理システムは、例えばデバイス製造工場内に設けられており、ホストコンピュータ1、露光装置2a,2b,…及び測定検査装置3は、デバイス製造工場内に敷設されたLAN(Local Area Network)等のネットワークNを介して相互に接続されている。
【0012】
ホストコンピュータ1は、デバイス製造工場内に敷設されたネットワークNを介してデバイス製造工場内に設けられた各種処理装置(露光装置2a,2b,…、測定検査装置3等)を統括して管理する。露光装置2a,2b,…は、本発明の一実施形態による処理装置の一種であり、所定のパターンをフォトレジスト等の感光剤が塗布されたウェハ又はガラス基板等の基板上に露光転写する装置である。
【0013】
尚、本実施形態では、上記の基板が、複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域(ショット領域)が設定されている半導体ウェハであるとする。また、この半導体ウェハ上には、ショット領域内において所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域(歪シリコンからなる領域)が設けられているとする。即ち、上記の基板は、歪シリコンからなる領域が部分的に形成されている半導体ウェハであるとする。
【0014】
上記の露光装置2a,2b,…としては、例えば所定のパターンが形成されたマスクを保持するマスクステージと基板を保持する基板ステージとを所定の位置関係に位置決めした状態で露光を行うステッパー等の一括露光型の投影露光装置(静止型露光装置)、又はマスクステージと基板ステージとを相対的に同期移動(走査)させながら露光を行うスキャニングステッパー等の走査露光型の投影露光装置(走査型露光装置)等が挙げられる。尚、露光装置2a,2b,…の詳細については後述する。
【0015】
測定検査装置3は、本発明の一実施形態による処理装置の一種であり、例えば露光装置2a,2b,…の露光処理後に基板上に形成されたパターンの重ね合わせ精度若しくは線幅の測定、又はこれらの検査を事後(露光装置での露光後に、露光装置から基板が搬出された後)に行う。事前測定装置4は、本発明の一実施形態による処理装置の一種であり、基板上に形成されているアライメントマークを、基板が露光装置に搬入される前に計測する。尚、これら測定検査装置3,事前測定装置4においては、各種測定のみ、又は各種検査のみが行われる場合もあれば、各種測定と各種検査とが共に行われる場合もある。以下、本明細書では測定及び検査を総称して「測定検査」という。本明細書で「測定検査」という場合には、測定のみが行われる場合、又は検査のみが行われる場合が含まれる。測定検査装置3及び事前測定装置4は、露光装置2a,2b,…とは別に設けられたオフラインの装置であっても良く、露光装置2a,2b,…の各々に対してインライン化された装置であっても良い。尚、本実施形態では、測定検査装置3及び事前測定装置4が露光装置2a,2b,…とは別に設けられたオフラインの装置である場合を例に挙げて説明する。
【0016】
次に、本発明の一実施形態による処理装置の一種である露光装置2a,2b,…について詳細に説明する。尚、図1に示す露光装置2a,2b,…は同様の構成であるため、以下では露光装置2aについての説明を行い、露光装置2b,…についての説明は省略する。図2は、本発明の一実施形態による処理装置の一種である露光装置2aの概略構成を示す側面図である。図2に示す露光装置2aは、半導体素子を製造するための露光装置であって、マスクとしてのレチクルRと基板としてのウェハWとを同期移動させつつ、レチクルRに形成されたパターンDPを逐次ウェハW上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影型の露光装置である。
【0017】
尚、以下の説明においては、必要であれば図中にXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。このXYZ直交座標系は、XY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。また、露光時におけるレチクルR及びウェハWの同期移動方向(走査方向)はY方向に設定されているものとする。
【0018】
図2に示す露光装置2aは、レチクルR上のX方向に延びるスリット状(矩形状又は円弧状)の照明領域を均一な照度を有する露光光ELで照明する照明光学系ILSと、レチクルRを保持するレチクルステージRSTと、レチクルRのパターンDPの像をフォトレジストが塗布されたウェハW上に投影する投影光学系PLと、ウェハWを保持するウェハステージWSTと、これらを制御する主制御系MCとを含んで構成されている。
【0019】
照明光学系ILSは、光源ユニット、オプティカル・インテグレータを含む照度均一化光学系、ビームスプリッタ、集光レンズ系、レチクルブラインド、及び結像レンズ系等(何れも不図示)を含んで構成されている。この照明光学系の構成等については、例えば特開平9−320956に開示されている。ここで、上記の光源ユニットとしては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、若しくはF2レーザ光源(波長157nm)、Kr2レーザ光源(波長146nm)、Ar2レーザ光源(波長126nm)等の紫外レーザ光源、銅蒸気レーザ光源、YAGレーザの高調波発生光源、固体レーザ(半導体レーザ等)の高調波発生装置、又は水銀ランプ(i線等)等を使用することができる。
【0020】
レチクルステージRSTは、真空吸着又は静電吸着等によりレチクルRを保持するものであり、照明光学系の下方(−Z方向)に水平に配置されたレチクル支持台(定盤)11の上面上で走査方向(Y方向)に所定ストロークで移動可能に構成されている。また、このレチクルステージRSTは、レチクル支持台11に対してX方向、Y方向、及びZ軸回りの回転方向(θZ方向)にそれぞれ微小駆動可能に構成されている。
【0021】
レチクルステージRST上の一端には移動鏡12が設けられており、レチクル支持台11上にはレーザ干渉計(以下、レチクル干渉計という)13が配置されている。レチクル干渉計13は、移動鏡12の鏡面にレーザ光を照射してその反射光を受光することにより、レチクルステージRSTのX方向、Y方向、及びZ軸回りの回転方向(θZ方向)の位置を検出する。レチクル干渉計13により検出されたレチクルステージRSTの位置情報は、装置全体の動作を統轄制御する主制御系MCに供給される。主制御系MCは、レチクルステージRSTを駆動するレチクル駆動装置14を介してレチクルステージRSTの動作を制御する。
【0022】
上述した投影光学系PLは、複数の屈折光学素子(レンズ素子)を含んで構成され、物体面(レチクルR)側と像面(ウェハW)側との両方がテレセントリックで所定の縮小倍率β(βは例えば1/4,1/5等)を有する屈折光学系が使用されている。この投影光学系PLの光軸AXの方向は、XY平面に直交するZ方向に設定されている。尚、投影光学系PLが備える複数のレンズ素子の硝材は、露光光ELの波長に応じて、例えば石英又は蛍石が用いられる。また、本実施形態では、レチクルRに形成されたパターンDPの倒立像をウェハW上に投影する投影光学系PLを例に挙げて説明するが、勿論パターンDPの正立像を投影するものであっても良い。
【0023】
投影光学系PLには、温度や気圧を計測するとともに、温度、気圧等の環境変化に応じて投影光学系PLの結像特性等の光学特性を一定に制御するレンズコントローラ部15が設けられている。このレンズコントローラ部15の温度や気圧の計測結果は主制御系MCに出力され、主制御系MCはレンズコントローラ部15から出力された温度や気圧の測定結果に基づいて、レンズコントローラ部15を介して投影光学系PLの結像特性等の光学特性を制御する。
【0024】
ウェハステージWSTは、投影光学系PLの下方(−Z方向)に配置されており、真空吸着又は静電吸着等によりウェハWを保持する。このウェハステージWSTは、ウェハ支持台(定盤)16の上面上で走査方向(Y方向)に所定ストロークで移動可能に構成されているとともに、X方向及びY方向にステップ移動可能に構成されており、更にZ方向へ微動(X軸回りの回転及びY軸回りの回転を含む)可能に構成されている。このウェハステージWSTによって、ウェハWをX方向及びY方向へ移動させることができ、またウェハWのZ方向の位置及び姿勢(X軸周りの回転及びY軸周りの回転)を調整することができる。
【0025】
ウェハステージWST上の一端には移動鏡17が設けられており、ウェハステージWSTの外部にはレーザ光を移動鏡17の鏡面(反射面)に照射するレーザ干渉計(以下、ウェハ干渉計という)18が設けられている。このウェハ干渉計18は、移動鏡17の鏡面にレーザ光を照射してその反射光を受光することによりウェハステージWSTのX方向及びY方向の位置、並びに姿勢(X軸,Y軸,Z軸周りの回転θX,θY,θZ)を検出する。ウェハ干渉計18の検出結果は主制御系MCに供給される。主制御系MCは、ウェハ干渉計18の検出結果に基づいてウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTの位置及び姿勢を制御する。
【0026】
また、本実施形態の露光装置2aは、送光系20a及び送光系20bから構成され、投影光学系PLに関してレチクルR上の照明領域と共役なウェハW上の露光スリット領域の内部及びその近傍に設定された複数の検出点でそれぞれウェハWの表面のZ方向(光軸AX方向)の位置を検出する多点AFセンサ20を投影光学系PLの側方に備える。多点AFセンサ20は、投影光学系PLの光軸AX方向におけるウェハWの表面位置及び姿勢(X軸,Y軸周りの回転θX,θY:レベリング)を検出するものである。
【0027】
この多点AFセンサ20の検出結果は主制御系MCに供給される。主制御系MCは、多点AFセンサ20の検出結果に基づいてウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTの位置及び姿勢を制御する。具体的には、主制御系MCには予めウェハWの表面を合わせ込む基準となる基準面(以下、AF面という)が設定されており、主制御系MCは多点AFセンサ20の検出結果に基づいてウェハWの表面がAF面に一致するようウェハステージWSTの位置及び姿勢を制御する。
【0028】
更に、本実施形態の露光装置2aは、投影光学系PLのY方向の側面に、ウェハW上に設定されたショット領域に付設されたアライメントマークAMの位置情報を計測するためのFIA(Field Image Alignment)方式のアライメントセンサ21が配置されている。尚、ウェハWにはアライメントマークAMが複数形成されているが、図2においては簡略化のために1つのみを図示している。アライメントセンサ21は、CCD等の撮像素子を備えており、ウェハW上のアライメントマークAMを撮像してその画像信号を得る。尚、アライメントセンサ21の光軸は、投影光学系PLの光軸AXと平行とされている。アライメントセンサ21の計測結果は主制御系MCに供給され、主制御系MCで画像処理、演算処理、フィルタリング処理、パターンマッチング等の処理が施されてアライメントマークAMの位置情報が求められる。
【0029】
かかるアライメントセンサ21の詳細な構成は、例えば特開平9−219354号公報及びこれに対応する米国特許第5,859,707号等に開示されている。主制御系MCは、得られたアライメントマークAMの位置情報を用いてEGA計測を行う。ここで、EGA計測とは、ウェハWに形成された代表的な数個(3〜9個)のアライメントマークAMの計測結果を用いて所定の統計演算(EGA演算)を行い、ウェハW上に設定された全てのショット領域の配列を求める計測方法である。
【0030】
本実施形態の露光装置2a,2b,…は、動作モードとして3つの動作モードを有している。第1動作モードは、露光レシピに従ってウェハWに形成されたアライメントマークAMの計測(EGA計測)とウェハWの露光とをウェハW毎に順次行う動作モードである。第2動作モードは、ウェハWに形成されたアライメントマークAMの計測のみを行い、アライメントに関する情報やショット領域の形状の補正情報等の情報(処理情報)をウェハW毎に求める動作モードである。つまり、第2動作モードとは、露光装置をあたかも事前測定装置4のようにマーク計測処理の専用機として使用するものである。
【0031】
ここで、アライメントに関する情報とはEGA計測において計測すべきアライメントマークAMを示す情報やEGA補正情報等をいい、ショット領域の形状の補正情報とはショット領域の形状変化に合わせてレンズコントローラ部15を介して投影光学系PLの倍率等の光学特性を補正することで、投影されるパターン像の形状を補正するために用いる情報をいう。また、第3動作モードは、他の露光装置や事前測定装置4で得られた処理情報で指定されるアライメントマークAMの計測を行い、又は他の露光装置や事前測定装置4で得られた処理情報に含まれるショット領域の形状の補正情報に基づいて投影光学系PLの光学特性を補正した上でウェハWの露光を行う動作モードである。
【0032】
上記の第1動作モード〜第3動作モードの切り替えは、例えばユーザが主制御系MCに設けられた不図示の入力装置を操作して主制御系MCに対して指示することにより行う。尚、ユーザが露光装置2aの主制御系MCに対して第2動作モードを指示した場合には、露光装置2a以外の露光装置2b,…の中から、少なくとも1つの露光装置を第3動作モードに設定する必要がある。また、露光装置2a,2b,…の何れかを第2動作モードに設定した場合には、得られた処理情報を送信すべき露光装置も併せて指定する。
【0033】
主制御系MCは、ネットワークNを介して図1に示すホストコンピュータ1に接続されており、ホストコンピュータ1からネットワークNを介して送信される露光レシピ(露光制御情報)に従った露光処理を行う。ここで、主制御系MCの動作モードとして第1動作モードが設定されている場合には、主制御系MCはアライメントセンサ21を制御して露光レシピで指定されるアライメントマークAMの計測を行い、この計測結果を用いてEGA計測を行う。
【0034】
主制御系MCの動作モードとして第2動作モードが設定されている場合には、主制御系MCはアライメントセンサ21を制御してウェハW上に形成されている全てのアライメントマークAMの計測(EGA計測)を行い、この計測結果の全てを用いてEGA演算処理を行う。加えて、アライメントマークの組み合わせを複数選択し、アライメントマークの組み合わせ毎に、選択されたアライメントマークの計測結果を用いてEGA演算を行い、EGA演算を行う上で最適な1つの組み合わせを選択する。主制御系MCの動作モードとして第3動作モードが設定されている場合には、主制御系MCは、他の露光装置(例えば、図2に示す露光装置2b)又は事前測定装置4、又はこれらから得られた情報がホストコンピュータ1に集約される場合には、このホストコンピュータ1からネットワークNを介して送信されてくる処理情報で指定されるアライメントマークAMの計測を行い、この計測結果を用いてEGA計測を行う。
【0035】
そして、動作モードとして第1動作モード又は第3動作モードが設定されている場合には、主制御系MCは、上記のEGA計測結果に基づいてウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTを移動させて、レチクルRに形成されたパターンDPの投影位置と露光すべきショット領域との位置合わせを行った上で各ショット領域を露光する。
【0036】
以上、露光装置2aについて詳細に説明したが、図1に示す事前測定装置4も露光装置2aが備えるアライメントセンサ21と同様のアライメントセンサを備えており、ウェハW上に形成されたアライメントマークAMの計測が可能になっている。また、事前測定装置4は、マークの計測結果をホストコンピュータ1や、次に露光処理すべき露光装置に送信する(この場合、その送信先でEGA演算処理を行うことになる)ようにしても良いし、或いはEGA演算処理までも行った上でその演算結果を送信するようにしても良い。(つまり、露光装置2aが備える主制御系MCと同様に、アライメントセンサの計測結果に基づいて、ウェハW上のショット領域の配列を求めるようにしても良い。)尚、測定検査装置3は、上記のアライメントセンサの計測結果、又はこの計測結果を用いたEGA計測結果に基づいてウェハWの各ショット領域を検査位置に位置合わせして重ね合わせ精度又は線幅の測定検査を行う。
【0037】
次に、本発明の一実施形態による処理方法について説明する。尚、以下の説明では、図1に示す露光装置2a,2bを用いて露光処理を行う場合を例に挙げて説明する。図3は、本発明の一実施形態による処理方法の概略を示すフローチャートである。図3に示す通り、本実施形態においては、まず露光装置2bを用いて複数枚(例えば25枚)のウェハWを単位とした1ロット分のウェハWの各々に形成されたアライメントマークAMを計測し、その計測結果から露光装置1aで露光処理を行う際に用いる処理装置を算出する(工程S1)。次に、露光装置2bで算出された処理情報が露光装置2aに送信され(工程S2)、露光装2aにおいて露光装置2bからの処理情報に基づいて露光処理が行われる(工程S3)。このように、本実施形態では、1ロット分のウェハWを単位としてアライメントマークAMの計測及び処理情報の算出、並びに、露光処理が行われる。
【0038】
尚、本実施形態では、図3の工程S1(即ち、図4の各工程)の動作を、露光装置2bを用いて行うものとしているが、本発明はこれに限らず、上述の事前測定装置4において図3の工程S1の動作を行うようにしても良い。この場合には、事前測定装置4で得られた情報は、図3の工程S2において露光装置2aに直接、或いは上述のホストコンピュータ1を介して間接的に送信されることになる。
【0039】
次に、図4に示す工程S1,S2の詳細について説明する。図4は、図3中の工程S1の詳細を示すフローチャートである。まず、ユーザが1ロット分のウェハWが収容されたFOUP(Front Opening Unified Pod)等のキャリアを露光装置2bのウェハロード開始位置に配置する。次いで、ユーザが露光装置2bの主制御系MCに設けられた不図示の入力装置を操作して、露光装置2bの動作モードを第2動作モードに設定する。更に、ユーザは処理情報を送信すべき露光装置も併せて指定する。本実施形態では、この露光装置として図1に示す露光装置2aを指定する。以上の前準備が終了し、ユーザが処理開始を指示すると、露光装置2bの主制御系MCは、不図示のウェハ搬送装置(ウェハローダ)を制御してキャリアに収容されたウェハWをキャリアから取り出させて露光装置2aの内部にロードさせる。ウェハ搬送装置によって搬送されたウェハWはウェハステージWST上に保持される(工程S11)。
【0040】
ウェハステージWST上にウェハWが保持されると、主制御系MCはウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTをXY面内でステップ移動させて、ウェハW上に形成されたアライメントマークAMをアライメントセンサ21の計測視野内に順次配置し、各々のアライメントマークAMをアライメントセンサ21で計測する(工程S12)。ここで、ショット領域及びアライメントマークについて説明する。図5は、ウェハW上に設定されるショット領域及びウェハW上に形成されるアライメントマークの一例を示す図である。
【0041】
図5(a)に示す通り、ウェハW上には矩形形状のショット領域SHが一定間隔で配列されており、ショット領域SHの各々にはアライメントマークAMが付設されている。尚、図5(a)においては、図示の都合上、アライメントマークAMを大きめに図示している。ショット領域SHの大きさ及び数は製造するデバイス毎に変更されることがあり、またアライメントマークAMの形状及びショット領域SH内における位置は形成すべきレイヤー毎に変更されることがある。
【0042】
図5(b)に示す通り、アライメントマークAMは、例えばY方向に延びた矩形形状であってX方向に等間隔に配列されたXマークmxと、X方向に延びた矩形形状であってY方向に等間隔に配列されたYマークmyとからなる。アライメントマークAMのXマークmxを計測することによってそのアライメントマークAMが設けられたショット領域SHのX方向の位置が求められ、Yマークmyを計測することによってそのアライメントマークAMが設けられたショット領域SHのY方向の位置が求められる。つまり、アライメントマークAMを計測して得られる位置情報は、そのアライメントマークAMが設けられているショット領域SHを代表する位置情報である。上述した工程S12では、ウェハW上に形成されたアライメントマークAMの全てが計測され、各々のショット領域を代表する位置情報(例えば、ショット領域SHの中心位置を示す情報)が求められる。
【0043】
全てのアライメントマークAMの計測が終了すると、主制御系MCは、全てのアライメントマークAMの計測結果を用いてEGA演算を行う(工程S13)。このEGA演算によってウェハW上に配列されたショット領域配列上の(基板内の)線形的な誤差成分(基板誤差の線形成分)、ショット領域内の線形的な位置誤差(ショット内誤差の線形成分)、及びランダムな誤差成分(ランダム成分)が求められる。ここで、上記の基板誤差の線形成分としては、レイヤーを形成する際のウェハステージWSTの誤差(位置誤差)や投影光学系PLの倍率誤差等に起因するX方向へのずれ量(オフセット)、Y方向へのずれ量、ウェハWの回転量(ローテーション)、X方向の倍率(スケーリング)、Y方向の倍率、及び直交度の6つがある。
【0044】
また、上記のショット内誤差の線形成分としては、レイヤーを形成する際の投影光学系PLの収差等に起因するものがある。図6は、EGA演算により求められるランダム成分とショット内誤差の非線形成分の一例を示す図である。ウェハW上にレイヤーを形成する際に行われる露光工程において、投影光学系PLに糸巻き型の歪曲収差(ディストーション)が生じている場合には、図5(a)に示すショット領域SHが、例えば図6に示す通りに変形する。図6は、EGA演算により求められる非線形成分の一例を説明するための図である。尚、図6において、各ショット領域SH内に記した丸印はショット領域SHの中心位置を表している。
【0045】
図6を参照すると、各ショット領域SHの形状が変化しているのみならず、その中心位置が非線形的に位置ずれしていることが分かる。ここで、各ショット領域SHに付設されたアライメントマークAMを計測しても各ショット領域SHの位置(例えば、図6中の丸印の位置)が得られるだけであり、ショット領域SHの形状変化を直接的に計測することはできないが、各ショット領域SHの配列からショット領域SHの形状変化を間接的に求めることは可能である。本実施形態では、後述する工程S13で行われるEGA演算の演算結果からショット領域SHの形状変化を求めて、それを補正する補正情報(後述する工程S25で使用する像形状の変形補正量)を算出している。
【0046】
ここで、前述した通り、ウェハWには歪シリコンからなる領域が部分的に形成されており、この歪シリコンに影響されてウェハW上のアライメントマークAMは位置ずれが生ずる。ウェハWの全面に歪シリコンが形成されていれば、この歪シリコンによるアライメントマークAMの位置ずれがほぼ一様であるとみなし、上記のEGA演算によって得られる線形成分又は非線形成分を用いれば補正が可能であると考えられる。
【0047】
しかしながら、歪シリコンからなる領域がウェハW上に部分的に形成されている場合には、その歪みはランダムなものになるとなる。このため、図7に示す通り、アライメントマークAMの位置ずれ(ショット配列のずれ)もランダムになると考えられる。つまり、アライメントマークAMの計測結果(工程S12での全マークの計測値)と、上記工程S13で得られたEGA演算値(各マークのEGA演算上の座標位置)との差分(ランダム成分)は各ショット(マーク)毎における局所的な歪みを示す歪み情報であると考えられる。本工程S13では、この歪み情報を、後述するサンプルショットの最適化を行う際の基準指標(比較対象)として使用するために、各ショット毎(マーク毎)に算出すると共に記憶するようにする。
【0048】
図7は、部分的な歪みに起因して生ずるアライメントマークAMの位置ずれの一例を示す図である。尚、図7において、各ショット領域SH内に記した丸印は設計上のショット領域SHの中心位置を表しており、各ショット領域SH内に記した矢印は実際に形成されているアライメントマークAMから求められるショット領域SHの中心の位置ずれ方向及び位置ずれ量を表している。前述したランダム成分(歪み情報)は、アライメントマークAMのランダムな位置ずれに起因するものであり、歪シリコンに影響されて部分的な歪みが大きくなるとランダム成分も大きくなる。
【0049】
全てのアライメントマークAMの計測結果を用いたEGA演算が終了すると、主制御系MCは、ウェハW上に形成されたアライメントマークAMから数個(例えば、3〜9個)のアライメントマークAMを、組み合わせを変えて複数選択する(工程S14)。例えば、ウェハW上にn個(nは正の整数)のショット領域SH1〜SHnが設定されており、これらから3個のアライメントマークAMを選択する場合には、ショット領域SHi,SHj,SHkの3つを選択する。ここで、i,j,kは、互いに異なる1以上n以下の整数である。
【0050】
つまり、主制御系MCは、変数i,j,kの各々を異なる値に設定してショット領域SHi,SHj,SHkに付設されたアライメントマークAMの第1の組み合わせを選択する。次いで、変数i,j,kの内の少なくとも1つの変数の値を先に設定した値と異なる値に設定してショット領域SHi,SHj,SHkに付設されたアライメントマークAMの第2の組み合わせを選択する。以下同様に、変数i,j,kの値の全てが先に設定した値と等しくならないよう変数i,j,kの値を設定してショット領域SHi,SHj,SHkに付設されたアライメントマークの組み合わせを選択する。
【0051】
アライメントマークAMの組み合わせの選択を終えると、主制御系MCは、工程S14で選択したアライメントマークAMの組み合わせ毎に、選択されたアライメントマークAMの計測結果を用いてEGA演算を行う(工程S15)。上記の工程S14で、m(mは、2以上の整数)通りの組み合わせが選択された場合には、各々の組み合わせで選択されたアライメントマークAMの計測結果を用いたEGA演算がm回行われる。これにより、各組み合わせ毎に前述した線形成分、非線形成分、及びランダム成分が求められる。また、EGA演算を行うことによりウェハW上におけるショット領域のSHの配列が求められるが、主制御系MCはこの演算結果からショット領域の形状変化を求め、これを補正する補正情報も算出する。
【0052】
以上の工程が終了すると、主制御系MCは、上記のEGA演算結果に基づいて、アライメントマークAMの複数の組み合わせから、EGA演算を行う上で最適な1つの組み合わせを選択する。具体的には、工程S12で計測された各ショット毎の座標値から線形成分、即ち各組み合わせ毎に算出された各ショットのEGA演算値を除去した残留ランダム成分(歪み情報)と、上述の工程S13で算出し記憶された各ショット毎の歪み情報との差分が、各ショットをみまわして最小となる組み合わせを選択する(工程S15)。つまり、ここでは、工程S13で求め記憶した歪み情報と、本工程S15で算出した歪み情報とをショット毎に比較し、その差がウェハ全体として最小となるマークの組み合わせを選択するものである。この工程では、歪シリコンの影響を反映しつつウェハ全体として歪みの影響が極力小さいアライメントマークAMの組み合わせが選択される。尚、この選択方法は、換言すれば、EGA演算で求められる線形誤差成分(EGAパラメータ)が、全ショットに付随したアライメントマークの実測値及び設計値を使ってなされる全ショットEGAにおけるEGAパラメータに対して最も類似(近似)するEGAパラメータが得られる組み合わせ(アライメントマークの組み合わせ)を、複数の組み合わせの中から選択することである。
【0053】
また、他の選択方法として、次のような手法も考えられる。具体的には、線形成分を除去した残留ランダム成分が最小となる組み合わせを選択する(工程S15)。ここで、前述した通りランダム成分は、アライメントマークAMのランダムな位置ずれに起因するものであり、歪シリコンの影響が大きくなるとランダム成分も大きくなる。このため、この工程では、歪シリコンの影響が極力小さいアライメントマークAMの組み合わせが選択される。尚、アライメントマークの組み合わせを無限にとると演算に多大な時間を要してしまうので、予め適当な数、配置のサンプルショットを複数(例えば、20個程)選んでおき、その中から任意の個数、配置のマークの組み合わせを複数選択するようにしておくのが計測スループット上は望ましい。
【0054】
尚、本実施形態では、工程S15において、アライメントマークAMの組み合わせ毎にEGA演算を行い、その演算結果からショット領域の形状変化を補正する補正情報を算出する場合を例に挙げている。しかしながら、補正情報を算出するために要する時間を省くために、工程S15でアライメントマークAMの組み合わせ毎のEGA演算結果を一時的に記憶しておき、工程S16で1つのアライメントマークAMの組み合わせを選択した後で、この組み合わせについてのEGA演算結果を用いて補正情報を算出するのが望ましい。アライメントマークAMの組み合わせが選択されると、主制御系MCは、その選択結果(補正情報を含む)を一時的に記憶する(工程S17)。
【0055】
以上の工程が終了すると、露光装置2bの主制御系MCは、計測すべきウェハWの有無を判断する(工程S18)。この判断結果が「YES」の場合には、不図示のウェハ搬送装置を制御してウェハステージWST上のウェハWを搬出(アンロード)させてキャリアに収容させる。これとともに、キャリアに収容された新たなウェハWをキャリアから取り出させて露光装置2bの内部にロードさせてウェハステージWに保持させ(工程S11)、そのウェハWに対する計測を行う。一方、工程S18の判断結果が「NO」である場合には、1ロット分のウェハWについて全アライメントマークAMを計測する工程、即ち図1に示す工程S1が終了する。尚、上記の工程S17で一時的に記憶した情報は、図4に示す処理が終了した後で、ユーザによって指定された露光装置2aに送信される(図3の工程S2)。
【0056】
図8は、図3中の工程S3の詳細を示すフローチャートである。まず、露光装置2bを用いて計測が行われた1ロット分のウェハWが収容されたキャリアをユーザが露光装置2aのウェハロード開始位置に配置する。次いで、ユーザが露光装置2aの主制御系MCに設けられた不図示の入力装置を操作して、露光装置2aの動作モードを第3動作モードに設定する。
【0057】
以上の前準備が終了し、ユーザが処理開始を指示すると、まず露光装置2aの主制御系MCは、不図示のレチクル搬送装置(レチクルローダ)を制御して、露光レシピに従ったレチクルRを搬送させる。レチクル搬送装置によって搬送されたレチクルRは、レチクルステージRST上に保持される(工程S21)。尚、レチクルRがレチクルステージRST上に保持されると、レチクルRとウェハステージWSTとの相対位置関係を調整する処理(レチクルアライメント)が行われる。
【0058】
次いで、主制御系MCは、不図示のウェハ搬送装置(ウェハローダ)を制御してキャリアに収容されたウェハWをキャリアから取り出させて露光装置2aの内部にロードさせる。ウェハ搬送装置によって搬送されたウェハWがウェハステージWST上に保持される(工程S22)。尚、本実施形態では、露光装置2a,2bの両方でウェハWに形成されたアライメントマークAMの計測を行っている。このため、露光装置2aのウェハステージWST上におけるウェハWの保持方法と、露光装置2bのウェハステージWST上におけるウェハWの保持方法とが異なると、例えば歪シリコンに起因する局所的な歪み方に相違が生じ、露光装置2bでの計測結果が全く無意味になってしまう。よって、ウェハWの保持方法は、露光装置2aと露光装置2bとで同じにするのが望ましい。
【0059】
ウェハステージWST上にウェハWが保持されると、主制御系MCはウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTをXY面内でステップ移動させて、露光装置2bから送信された処理情報で指定されるアライメントマークAMのみをアライメントセンサ21の計測視野内に順次配置し、各々のアライメントマークAMをアライメントセンサ21で計測する(工程S23)。前述した通り、露光装置2bでの計測によって、EGA演算を行う上で最適なアライメントマークAMの組み合わせが選択されている。ここでは、この選択されたアライメントマークAMの計測が行われる。尚、処理情報はウェハW毎に求められているため、主制御系MCはウェハステージWST上に保持されているウェハWの処理情報を用いて上記の処理を行う。
【0060】
アライメントマークAMの計測を終えると、主制御系MCはアライメントマークAMの計測結果を用いてEGA演算を行う。これにより、ウェハW上におけるショット領域の配列が求められる(工程S24)。次いで、露光装置2aの主制御系MCは、露光装置2bからの処理情報に含まれる補正情報に基づいて、レンズコントローラ部15を介して投影光学系PLの光学特性を制御する(工程S25)。これにより、投影光学系PLを介してウェハW上に投影されるパターンDPの像の形状が、ショット領域SHの形状変化に合わせて補正される。尚、ここでは、ウェハWに形成された複数のショット領域SHの内の最初に露光すべきショット領域SHの形状変化に合わせて投影光学系PLの光学特性が制御される。
【0061】
以上の処理が終了すると、ウェハWに設定されたショット領域SHの露光処理が開始される。露光処理が開始されると、まず露光装置2aの主制御系MCは、レチクル駆動装置14を介してレチクルステージRSTを駆動してレチクルRを露光開始位置に配置する。併せて、ウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTを駆動してウェハW上の最初に露光すべきショット領域SHを露光開始位置に配置する。
【0062】
以上の配置が終了すると、主制御系MCは、レチクル駆動装置14及びウェハ駆動装置19を介してレチクルステージRST及びウェハステージWSTの移動をそれぞれ開始させる。両ステージの移動を開始させた後、主制御系MCは、レチクル干渉計13及びウェハ干渉計18の検出結果に基づいてレチクルステージRST及びウェハステージWSTの移動速度を算出し、各々が所定速度に達したか否かを判断する。また、レチクル干渉計13及びウェハ干渉計18の検出結果に基づいてレチクルステージRSTとウェハステージWSTとが同期したか否か、及び両ステージが所定の位置(露光開始位置)に達したか否かを判断する。
【0063】
レチクルステージRST及びウェハステージWSTが所定速度に達し、且つ同期して所定の位置に達したと判断した場合には、主制御系MCは照明光学系ILSに制御信号を出力して露光光ELの射出を開始させ、スリット状の露光光ELをレチクルRに照射する。露光光ELの照射により、レチクルRに形成されたパターンDPの一部(露光光ELが照明された部分)の像が投影光学系PLによって最初に露光すべきショット領域内に投影される。ここで、レチクルステージRSTとウェハステージWSTとが同期して移動しているため、レチクルR上における露光光ELの照射位置が連続的に変化するとともに、ショット領域内におけるパターン像の投影位置も連続的に変化する。これにより、最初に露光すべきショット領域内が逐次露光される。
【0064】
尚、ショット領域の露光を行っている最中に、主制御系MCは、多点AFセンサ20の検出結果に基づいて、ウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTのZ方向における位置及び姿勢(X軸,Y軸周りの回転θX,θY:レベリング)の制御(オートフォーカス制御)を行う。これにより、ウェハWの表面が投影光学系PLの像面に合わせ込まれた状態でショット領域が露光される。
【0065】
1つのショット領域に対する露光処理が終了すると、主制御系MCは他に露光すべきショット領域があるか否かを判断する(工程S27)。この判断結果が「YES」の場合には、主制御系MCは、露光装置2bからの処理情報に含まれる補正情報に基づいて、レンズコントローラ部15を介して投影光学系PLの光学特性を制御する(工程S25)。これにより、投影光学系PLを介してウェハW上に投影されるパターンDPの像の形状が、次に露光すべきショット領域SHの形状変化に合わせて補正される。
【0066】
次に、主制御系MCは、ウェハ駆動装置19を介してウェハステージWSTを駆動して次に露光すべきショット領域SHを露光開始位置に配置する。また、レチクル駆動装置14を介してレチクルステージRSTを駆動してレチクルRを露光開始位置に配置する。そして、主制御系MCは、レチクル駆動装置14及びウェハ駆動装置19を介してレチクルステージRST及びウェハステージWSTの移動をそれぞれ開始させて、次に露光すべきショット領域SHを露光する(工程S26)。露光すべきショット領域がある間(工程S27の判断結果が「YES」の間)は、工程S25,S26が繰り返される。
【0067】
一方、工程S27の判断結果が「NO」になると、露光装置2aの主制御系MCは、計測すべきウェハWの有無を判断する(工程S28)。この判断結果が「YES」の場合には、不図示のウェハ搬送装置を制御してウェハステージWST上のウェハWを搬出(アンロード)させてキャリアに収容させる。これとともに、キャリアに収容された新たなウェハWをキャリアから取り出させて露光装置2aの内部にロードさせてウェハステージWに保持させ(工程S22)、そのウェハWに対する露光を行う。一方、工程S28の判断が「NO」の場合には、1ロット分のウェハWを露光する工程、即ち図1に示す工程S3が終了する。
【0068】
以上説明した通り、本実施形態においては、まずロット単位のウェハWに形成された全アライメントマークAMを露光装置2bを用いて計測して、ウェハW毎にEGA演算を行う上で最適なアライメントマークAMの組み合わせ、及びショット領域の形状を補正する補正情報を求めている。そして、露光装置2bを用いて得られた処理情報を露光装置2aに送信し、露光装置2aを用いて処理情報に基づいたアライメントマークAMの計測、及び投影光学系PLの光学特性の制御を行った上でロット単位のウェハWを露光している。
【0069】
1ロットに含まれるウェハWの全てのアライメントマークAMの計測と露光とは、各々異なる露光装置で行われるため、計測と露光とを並列して行うことができ、その結果としてスループットの低下を防止することができる。また、露光装置2bで行われた計測結果に基づいて、ウェハW毎にEGA演算を行う上で最適なアライメントマークAMの組み合わせが求められているため、露光装置2aで露光を行う際に重ね合わせ精度を向上させることができる。更に、ショット領域の形状変化に応じてパターン像の形状が補正されるため、これによっても重ね合わせ精度を向上させることができる。以上から、ウェハW毎に異なる歪みが生じていても、スループットの低下を防止しつつ重ね合わせ精度等の処理精度を向上させることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、ウェハW毎に全てのアライメントマークAMの計測を行い、ウェハW毎にEGA計測を行う上で最適なアライメントマークAMの組み合わせを求めていた。しかしながら、1ロットに含まれるウェハWには同じパターンが形成されているため、歪シリコンに起因する局所的な歪みが生ずる傾向がウェハW間で似通うことも考えられる。このため、全ウェハWのアライメントマークAMの計測結果から平均的に良好な計測精度(EGA計測の計測精度)が得られる全ウェハWに共通したアライメントマークAMの組み合わせを選択するようにしても良い。
【0071】
また、必ずしも1ロットに含まれる全ウェハWに形成された全てのアライメントマークAMの計測を行う必要はない。但し、計測精度を向上させる観点から、計測すべきアライメントマークAMの数は多い方が望ましい。更に、上記実施形態では各ウェハWについてショット領域の形状を補正する補正情報をショット領域毎に求めていたが、ウェハW間におけるショット領域の形状変化が似通った傾向を示す場合には、ウェハW間で共通する補正情報を求め、この補正情報を用いて各ウェハWのショット領域の形状変化を補正するようにしても良い。
【0072】
また、上記実施形態では露光装置2bで計測を行い、この計測結果を用いて露光装置2aで露光処理を行っていた。しかしながら、ウェハWのアライメントマークAMを計測して処理情報を求める装置によって上記の計測を行っても良い。更に、上記実施形態では、ウェハWのアライメントマークAMの計測結果を用いて露光処理を行う場合を例に挙げて説明したが、上記の計測結果を測定検査装置3での測定検査に用いても良い。例えば、測定検査装置3で重ね合わせ精度を測定検査する場合には、測定検査装置3の検査位置に各ショット領域を位置合わせする必要がある。このため、上記の計測結果を用いて所定のアライメントマークのみを計測してEGA計測を行ってショット領域の配列を求め、これに基づいて測定検査すべきショット領域を検査位置に配置して測定検査を行うのが好適である。
【0073】
また、露光装置2a,2bが備える主制御系MCがコンピュータからなる場合には、以上説明したアライメントセンサ21を制御してアライメントマークAMの計測を行わしめる機能と、計測結果から最適なアライメントマークAMの組み合わせを求め、又は補正情報を求める機能とを備えるプログラムがコンピュータに格納されており、このプログラムが実行されることにより各種機能が実現されて、前述した計測が行われる。このプログラムは、例えばCD−ROM又はDVD(登録商標)−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体に記録されたプログラムをCD−ROMドライブ又はDVD(登録商標)−ROMドライブ等のドライブ装置を用いて読み取れば、コンピュータにインストールすることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、本発明をステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影型の露光装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はステップ・アンド・リピート方式の縮小投影型の露光装置に適用することもできる。また、本発明は、ウェハステージが複数設けられるツインステージ型の露光装置にも適用できる。ツインステージ型の露光装置の構造及び露光動作は、例えば特開平10−163099号公報及び特開平10−214783号公報(対応米国特許6,341,007号、6,400,441号、6,549,269号及び6,590,634号)、特表2000−505958号(対応米国特許5,969,441号)或いは米国特許6,208,407号に開示されている。更に、本発明を本願出願人が先に出願した特願2004−168481号のウェハステージに適用してもよい。
【0075】
また、国際公開第99/49504号公報に開示されているような液浸法を用いる露光装置にも本発明を適用することができる。ここで、本発明は、投影光学系PLとウェハWとの間を局所的に液体で満たす液浸露光装置、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する液浸露光装置の何れの露光装置にも適用可能である。
【0076】
更に、上記の露光装置としては、半導体素子の製造に用いられてデバイスパターンを半導体基板上へ転写する露光装置以外に、液晶表示素子の製造に用いられて回路パターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられてデバイスパターンをセラミックウェハ上へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置等を用いることができる。
【0077】
次に、デバイスの製造方法について説明する。図9は、マイクロデバイスとしての半導体素子を製造する製造工程の一部を示すフローチャートである。図9に示す通り、まず、ステップS31(設計ステップ)において、半導体素子の機能・性能設計を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS32(マスク製作ステップ)において、設計したパターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。一方、ステップS33(ウェハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウェハを製造する。
【0078】
次に、ステップS34(露光処理ステップ)において、ステップS31〜ステップS33で用意したマスクとウェハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウェハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS35(デバイス組立ステップ)において、ステップS34で処理されたウェハを用いてデバイス組立を行う。このステップS35には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS36(検査ステップ)において、ステップS35で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0079】
図10は、図9のステップS34の詳細なフローの一例を示す図である。図10において、ステップS41(酸化ステップ)においてはウェハの表面を酸化させる。ステップS42(CVDステップ)においてはウェハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS43(電極形成ステップ)においてはウェハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS44(イオン打込みステップ)においてはウェハにイオンを打ち込む。以上のステップS41〜ステップS44のそれぞれは、ウェハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0080】
ウェハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS45(レジスト形成ステップ)において、ウェハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS46(露光工程)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)によってマスクのパターンをウェハに転写する。次に、ステップS47(現像工程)においては露光されたウェハを現像し、ステップS48(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS49(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウェハ上に多重にパターンが形成される。
【0081】
以上説明したマイクロデバイス製造方法においては、露光工程(ステップS46)において前述した露光装置2a,2bを用いて計測及び露光が行われる。また、図1に示す測定検査装置3,事前測定装置4を用いた測定検査が行われる。このため、ウェハ上に形成されたアライメントマークを全て検査してもスループットの低下を招くことはなく、また重ね合わせ精度を高めることができる。これにより、微細なデバイスを歩留まり良く効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態による処理装置を備える処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による処理装置の一種である露光装置2aの概略構成を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による処理方法の概略を示すフローチャートである。
【図4】図3中の工程S1の詳細を示すフローチャートである。
【図5】ウェハW上に設定されるショット領域及びウェハW上に形成されるアライメントマークの一例を示す図である。
【図6】EGA演算により求められるランダム成分とショット内誤差の非線形成分の一例を示す図である。
【図7】部分的な歪みに起因して生ずるアライメントマークAMの位置ずれの一例を示す図である。
【図8】図3中の工程S3の詳細を示すフローチャートである。
【図9】マイクロデバイスとしての半導体素子を製造する製造工程の一部を示すフローチャートである。
【図10】図9のステップS34の詳細なフローの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
2a,2b 露光装置
3 測定検査装置
4 事前測定装置
21 アライメントセンサ
AM アライメントマーク
DP パターン
MC 主制御系
R レチクル
SH ショット領域
W ウェハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域が設定されている基板に対し、所定の処理を行う処理方法において、
前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマークをそれぞれ計測することにより得る第1工程と、
前記第1工程で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める第2工程と
を含むことを特徴とする処理方法。
【請求項2】
前記処理情報に基づいて決定された位置情報に基づいて、前記所定の処理を行う位置に対して、前記区画領域をそれぞれ位置決めすることを特徴とする請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
前記処理情報は、前記基板上に形成されたマークの中から選択された、前記基板毎に計測すべきマークを特定する情報であることを特徴とする請求項2記載の処理方法。
【請求項4】
前記第2工程は、
前記第1工程で計測された前記複数の区画領域毎のそれぞれの前記マークの計測結果を統計的手法を用いて第1の演算結果を算出する工程と、
前記複数のマークのうち任意の複数のマークの組み合わせを複数選択すると共に、該選択された組毎に、前記統計的手法と同様の手法を用いて第2の演算結果を算出する工程と、
前記第1の演算結果と前記第2の演算結果との比較結果に基づいて、前記複数組の中から1組を選択する工程と
を含むことを特徴とする請求項3記載の処理方法。
【請求項5】
前記所定の処理は、マスク上に形成されているパターンの像を基板上の前記各区画領域に露光転写する処理であり、
前記処理情報は、前記基板上に転写される前記パターン像の形状を補正する情報を含むことを特徴とする請求項1記載の処理方法。
【請求項6】
前記第1工程及び第2工程は、所定枚数の基板を単位とするロット単位で行われることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記処理情報に基づいて、露光装置を用いて、前記区画領域上にパターンを露光する露光工程を含み、
前記第1、第2工程は前記露光工程で使用される前記露光装置とは異なる装置で行われることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の処理方法。
【請求項8】
その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域が設定されている基板に対し、所定の処理を行う処理装置において、
前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマークをそれぞれ計測することにより得る計測装置と、
前記計測装置で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める獲得装置と
を有することを特徴とする処理装置。
【請求項9】
前記処理情報は、前記基板上に形成されたマークの中から選択された、前記基板毎に計測すべきマークを特定する情報であることを特徴とする請求項8記載の処理装置。
【請求項10】
前記所定の処理は、マスク上に形成されているパターンの像を基板上の前記各区画領域に露光転写する処理であり、
前記処理情報は、前記基板上に転写される前記パターン像の形状を補正する情報を含むことを特徴とする請求項8記載の処理装置。
【請求項11】
その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域が設定されている基板に対し、所定の処理を行う処理装置で用いられるプログラムであって、
前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマークをそれぞれ計測装置に計測させて得る計測機能と、
前記計測装置で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める獲得機能と
をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域が設定されている基板に対し、所定の処理を行う処理方法において、
前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマークをそれぞれ計測することにより得る第1工程と、
前記第1工程で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める第2工程と
を含むことを特徴とする処理方法。
【請求項2】
前記処理情報に基づいて決定された位置情報に基づいて、前記所定の処理を行う位置に対して、前記区画領域をそれぞれ位置決めすることを特徴とする請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
前記処理情報は、前記基板上に形成されたマークの中から選択された、前記基板毎に計測すべきマークを特定する情報であることを特徴とする請求項2記載の処理方法。
【請求項4】
前記第2工程は、
前記第1工程で計測された前記複数の区画領域毎のそれぞれの前記マークの計測結果を統計的手法を用いて第1の演算結果を算出する工程と、
前記複数のマークのうち任意の複数のマークの組み合わせを複数選択すると共に、該選択された組毎に、前記統計的手法と同様の手法を用いて第2の演算結果を算出する工程と、
前記第1の演算結果と前記第2の演算結果との比較結果に基づいて、前記複数組の中から1組を選択する工程と
を含むことを特徴とする請求項3記載の処理方法。
【請求項5】
前記所定の処理は、マスク上に形成されているパターンの像を基板上の前記各区画領域に露光転写する処理であり、
前記処理情報は、前記基板上に転写される前記パターン像の形状を補正する情報を含むことを特徴とする請求項1記載の処理方法。
【請求項6】
前記第1工程及び第2工程は、所定枚数の基板を単位とするロット単位で行われることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記処理情報に基づいて、露光装置を用いて、前記区画領域上にパターンを露光する露光工程を含み、
前記第1、第2工程は前記露光工程で使用される前記露光装置とは異なる装置で行われることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の処理方法。
【請求項8】
その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域が設定されている基板に対し、所定の処理を行う処理装置において、
前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマークをそれぞれ計測することにより得る計測装置と、
前記計測装置で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める獲得装置と
を有することを特徴とする処理装置。
【請求項9】
前記処理情報は、前記基板上に形成されたマークの中から選択された、前記基板毎に計測すべきマークを特定する情報であることを特徴とする請求項8記載の処理装置。
【請求項10】
前記所定の処理は、マスク上に形成されているパターンの像を基板上の前記各区画領域に露光転写する処理であり、
前記処理情報は、前記基板上に転写される前記パターン像の形状を補正する情報を含むことを特徴とする請求項8記載の処理装置。
【請求項11】
その上に複数のレイヤーが積層されると共に複数の区画領域が設定されている基板に対し、所定の処理を行う処理装置で用いられるプログラムであって、
前記複数の区画領域内において、所定レイヤー内で意図的に歪まされた局所領域に起因して生じる局所的な歪み情報を、前記基板上の前記複数の区画領域毎にそれぞれ付設された位置計測用のマークをそれぞれ計測装置に計測させて得る計測機能と、
前記計測装置で得られた前記歪み情報に基づいて、前記区画領域に前記所定の処理を行う際に使用される処理情報を求める獲得機能と
をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−184343(P2007−184343A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−410(P2006−410)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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