説明

処理方法および処理装置

【課題】回転する板体に流体を供給して処理を行なおうとした場合、処理ムラが起き難いものとする技術を提供することである。
【解決手段】回転する板体にノズルから流体を供給して処理する処理方法において、
前記板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在る前記ノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、前記板体の角速度Nとで定義される物理量{Q/(r・V・N)}が一定であるよう、流体供給量Qの変動量を検出し、該変動量を考慮してノズルの半径方向における移動速度Vを制御することを特徴とする処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば円板を液状材料などの流体で表面処理する技術、特に枚葉装置で被処理物を回転させながら処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉スピンコータ等の回転する円板(例えば、ウェハ)を処理する様々な装置では、一定の回転数に被処理物であるウェハを保ち、その上方からレジストなどの液状材料を滴下して塗布することが行われている。この際、液状材料であるレジストを滴下するノズルは、例えばアームないしは支持体に支持されて半径方向に移動し、レジスト塗布処理が均一に行われるように工夫されている。そして、この処理の間では、レジストの滴下量を一定に保つことが一般的である。又、前述の処理方法は、枚葉で液状材料を用いて処理する他の製造装置、例えば洗浄装置やブラシを用いたスクラバ装置においても同様の処理方法が採用されている。そして、回転、ノズルの移動、液状材料の滴下という機能を有する装置では、その簡便さ故に、回転数、ノズルの移動速度および液体の流量といった各々のパラメータを一定に保ちながら処理することが一般的である。
【0003】
しかしながら、レジスト塗布の様に液状材料が表面に残留する場合と、洗浄のように液状材料が残留しない場合とでは、最終的な処理形態が異なるので、これらのパラメータの関係が最適にセットされているとは限らない。特に、洗浄のような場合には、効率ばかりでなく、洗浄のムラなどの不良に対する配慮がされるべきである。
【0004】
又、近年の半導体装置の配線には低誘電率層間膜を採用する動向が拡がっている。この種の層間膜材料は疎水性の傾向が強いものであり、洗浄の際、ウェハの中心部と端部側とでは接線速度が異なることから、洗浄ムラが多いものとなっていた。
【0005】
このようなことから、ウェハの全上面を覆う螺旋パターン状にフォトレジストのリボンを押し出し、半導体基板を有機フォトレジストポリマーでコーティングする為、ウェハを上側に向け水平方向に整列させ、チャックに組み付け、押出ヘッドをウェハの上面の上方にウェハの外縁に隣接させて位置決めし、押出スロットを半径方向でウェハ中心へ向かうよう整列させ、押出スロットからフォトレジストを押し出させ、かつ、回転するウェハに対する押出ヘッドの接線速度が一定になるようにウェハの回転速度と押出ヘッドの半径方向の速度を制御する技術が提案(特表2002−504269号公報)されている。
【特許文献1】特表2002−504269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、ノズルからの薬液供給量が一定であると、ウェハ中央付近では接線速度が低く、単位面積当りに流れ込む薬液の流量が大きいのに対して、ウェハの端部においては接線速度が高い為、単位面積当りに流れ込む薬液の流量は小さい。従って、単位面積当りに流れ込む薬液の流量がノズルの位置によって変動することから、薬液による処理ムラが必然的に起きていた。そこで、回転するウェハに対する押出ヘッド(ノズル)の接線速度を一定にする前記の技術が提案されたものの、それでも、処理ムラが出来ることが判って来た。すなわち、ノズルからの薬液吐出量は、本来、一定であると思われていたものの、実は、変動が起きていたのであった。すなわち、薬液を供給する配管内の流量は、供給ポンプの脈動や、貯蔵タンクの背圧の変動、或いは温度変化による粘性の変動の影響を受けており、薬液供給量を一定にすることは非常に難しく、変動を無くすことは出来ていなかった。例えば、バルブを制御して薬液吐出量を一定に制御しようとしても、バルブによる制御の応答速度が遅い為、刻々と変化する薬液吐出量を一定にすることは不可能であることが判って来た。従って、上記提案の技術が用いられても、結果的に、洗浄装置では洗浄ムラやエッチング不均一が、コータでは塗布ムラが発生していた。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、回転する板体に流体を供給して処理を行なおうとした場合、処理ムラが起き難いものとする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点に対する検討が本発明者によって鋭意推し進められて行く中に、バルブを制御して薬液吐出量を一定にするよりも、即ち、薬液吐出量の微妙な変動が零となるように抑制するよりも、その変動量は薬液を吐出するノズルの移動速度の変動で相殺した方がより迅速に対応でき、単位面積当りに流れ込む薬液の流量を一定にすることが容易であることに気付くに至った。
【0009】
すなわち、前記の課題は、
回転する板体にノズルから流体を供給して処理する処理方法において、
前記板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在る前記ノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、前記板体の角速度Nとで下記に定義される物理量Φの変動が±5%以内に抑えられるよう制御する
ことを特徴とする処理方法によって解決される。
【0010】
又、回転する板体にノズルから流体を供給して処理する為に、前記板体を回転させる回転手段と、前記板体に流体を供給するノズルと、前記ノズルを前記板体上を移動させる移動手段とを具備した処理装置であって、
前記板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在る前記ノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、前記板体の角速度Nとで下記に定義される物理量Φの変動が±5%以内に抑えられるよう制御する制御手段を有する
ことを特徴とする処理装置によって解決される。
【0011】
中でも、回転する板体にノズルから流体を供給して処理する処理方法において、
前記板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在る前記ノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、前記板体の角速度Nとで下記に定義される物理量Φが一定であるよう制御する
ことを特徴とする処理方法によって解決される。
【0012】
又、回転する板体にノズルから流体を供給して処理する為に、前記板体を回転させる回転手段と、前記板体に流体を供給するノズルと、前記ノズルを前記板体上を移動させる移動手段とを具備した処理装置であって、
前記板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在る前記ノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、前記板体の角速度Nとで下記に定義される物理量Φが一定であるよう制御する制御手段を有する
ことを特徴とする処理装置によって解決される。
【0013】
又、上記の処理方法であって、物理量Φが上記条件を満たすようにノズルの半径方向における移動速度Vを制御することを特徴とする処理方法によって解決される。特に、上記の処理方法であって、流体供給量Qを検出し、該Qの変動量を考慮して物理量Φが上記条件を満たすようにノズルの半径方向における移動速度Vを制御することを特徴とする処理方法によって解決される。
【0014】
Φ=Q/(r・V・N)
【発明の効果】
【0015】
例えば、洗浄、エッチングとか塗布の場合において、全面に亘って均一な処理がなされ、処理ムラが起き難いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明になる処理方法は、回転する板体にノズルから流体を供給して処理する処理方法である。そして、板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在るノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、板体の角速度Nとで上記定義した物理量Φの変動が±5%以内(中でも、±3%以内)に抑えられるよう制御するものである。特に、物理量Φが一定であるよう制御するものである。
【0017】
本発明になる処理装置は、板体を回転させる回転手段と、板体に流体を供給するノズルと、ノズルを板体上を移動(回転する板体の回転中心を通る動径方向(直線状)、或いは円弧状に移動)させる移動手段とを具備し、回転する板体にノズルから流体を供給して処理する処理装置である。そして、板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在るノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、板体の角速度Nとで上記定義した物理量Φの変動が±5%以内(中でも、±3%以内)に抑えられるよう制御する制御手段を有する。特に、物理量Φが一定であるよう制御する制御する制御手段を有する。
【0018】
上記技術思想を実施する為の装置が図1に示される。
図1中、1はテーブル回転用モータであり、回転テーブル2がモータ1によって所定の角速度で回転させられる。従って、回転テーブル2上に載置されたウェハ3は所定の角速度で回転させられる。4はノズルである。このノズル4は、回転テーブル2(ウェハ3)の中心を通るように設けられたライン状の螺子軸5に取り付けられている。そして、螺子軸5がノズル駆動用モータ6の出力によって所定の角速度で回転すると、ノズル4は所定の速度でウェハの半径方向において直線移動するようになっている。
【0019】
7は流量制御バルブであり、8は制御装置(パーソナルコンピュータ)である。そして、このパーソナルコンピュータ8に記憶させたプログラムに従って、流量制御バルブ7が制御され、ノズル4から吐出(供給)される薬液の量Qが制御される。又、モータ1の回転も制御される。尚、モータ1の回転の角速度は一定であるように制御されている。更には、ノズル駆動用モータ6が制御される。特に、流量制御バルブ7に設けられている流量センサによって流量制御バルブ7を通過する流量が検出されており、この検出量が制御装置(パーソナルコンピュータ)8に入力され、該検出量(薬液供給量Q)とモータ1の回転速度(ウェハ3の回転の角速度N)とノズル4の移動速度Vから物理量Φ(Q/(r・V・N))が一定(或いは、Φの変動量が±5%以内、特に±3%以内)であるようノズル4の移動速度Vが算出され、この算出値となるようノズル駆動用モータ6が制御されるようになっている。
【0020】
すなわち、本発明は、ノズルから供給される薬液の単位面積当たりの供給量を安定させようとした処、供給される薬液の供給量が貯蔵タンクからポンプにより供給される間に生じるポンプの脈動、流体の慣性、タンクでの保管量による背圧、温度変化による粘性の変動などに極めて大きな影響を受け、薬液供給量を一定に制御することは殆ど不可能であることを見出し、ノズルの接線速度を一定にしても、単位面積当りに流れ込む薬液の流量がノズルの位置によって変動してしまうことを見出し、この変動量をノズル駆動用モータ6の制御によるノズル移動速度の制御にフィードバックした方が迅速に対応できることを見出したことに基づくものである。
【0021】
さて、回転テーブル2(ウェハ3)の回転数N、ノズル4の移動速度V、及びノズル4からの薬液供給量Qで定義される上記物理量Φを一定に保つ制御の形態、即ち、回転テーブル2(ウェハ3)とノズル4が単位時間当り描く面に対し、単位面積当りに流れ込む流量Qを一定にする制御の形態は、下記の三つのケースに分類できる。
(1) ウェハ3の回転数N、及びノズル4の移動速度Vが一定であれば、ノズルの位置rに応じて流量Qを制御すれば、単位時間当りに描く面の単位面積当りの流量を一定に保つことが出来る。
(2) ノズル4の移動速度V、及び流量Qが安定して一定であれば、ノズル4の位置rに応じて回転数Nを制御すれば、単位時間当りに描く面の単位面積当りの流量を一定に保つことができる。
(3) ウェハ3の回転数N、及び流量Qが安定して一定であれば、ノズル4の位置rに応じてノズル4の移動速度Vを制御すれば、単位時間当りに描く面の単位面積当りの流量を一定に保つことが出来る。
【0022】
上記(2),(3)のケースは、流量Qが安定して一定であれば、ウェハ3の回転とノズル4の移動速度とが描く単位時間当りの面積を一定にすることに他ならない。しかし、作業の開始と終了の段階では、薬液流量Qの増減変化を避けられず、又、流量制御が難しい高粘性薬液、例えばレジストなどの塗布ムラに対しては効果的では無い。このように、一連の処理において回転数、ノズルの移動速度および流量の関係が、ウェハの処理中一定に保つ様に任意に設定することが出来、各種の処理において目的に応じた最適な組合せを設定することで、処理の円板内における作業ムラを抑制する効果がある。
【0023】
本発明の特徴を更に明確にすべく、添付した図・表を参照しながら、本発明を以下に詳述する。
図2は本発明の原理を説明する概念図である。一定の回転数Nn、即ち、等角速度Wn(Wn∝Nn)で回転する円板であるウェハ3上を薬液供給ノズル4(図2にはノズル4を図示せず)が移動する。薬液供給ノズルはウェハ3の中心を通る直線L上を速度Vnで半径方向に移動する。直線L上で任意の異なる2点をP,Pとし、ウェハ3中心からの距離をr,r(0<r<r)とし、前記P,Pにおける回転方向の接線速度を各々Vr1,Vr2とする。P,Pにおいて単位時間当たりVr1とVn、Vr2とVnで定義される四角形の面積をS,Sとする。供給ノズル4から吐出される薬液の単位時間当りの流量をQnとする。ウェハ3は角速度Wnで回転しているから、単位時間経過後、半径方向に引いた直線LはL’へ移動する。点P,Pにおける接線速度は、図示されている通り、Vr1,Vr2であるが、各々、Vr1=r×Wn,Vr2=r×Wnの関係が有り、S=Vr1×Vn=r×Wn×Vn∝r×Nn×Vn,S=Vr2×Vn=r×Wn×Vn∝r×Nn×Vnの関係がある。従って、単位時間当り吐出される液量Qnは、ウェハ3面上において薬液の広がりも考慮に入れた場合、概ね、S,Sに比例した面積に対し作用することになる。すなわち、角速度Wn、ノズルの移動速度Vn、流量Qnの全てを一定に保った場合では、薬液が作用し得るウェハ3面上の面積は、単位時間当りS,Sで示されるように中心付近と端部側ではS<Sとなり、大きく異なることが判る。
【0024】
下記の表は本発明の実施形態を示す回転数N、ノズルの移動速度V、及び流量Qの組合せの一例を示したものである。表1−1はV,Qが一定でNを可変とした場合、表1−2はN,Qが一定でVを可変とした場合、表1−3はN,Vが一定でQを可変とした場合の組合せである。図3−1,3−2,3−3は表1−1,1−2,1−3に対応したN,V,Qの関係概念図を示している。表1−1,1−2,1−3では直径30cmのウェハに対し、半径を0〜3cm,3〜6cm,6〜9cm,9〜12cm,12〜15cmの五つの領域に分割し、本発明を適用した例を表している。表1−1,1−2,1−3の例は五つの領域それぞれの最外周での接線速度をパラメータに用いているが、分割する領域の数やパラメータの選び方は任意であり、本例に捉われないことは明らかである。回転の方向やノズルの移動方向や軌跡に因らないことも明白である。
【0025】

【0026】
本発明は被処理物の円板であるウェハ面上で半径r(0<r)の各点においてQ/(r・N・V)で定義される値Φ、即ち、単位時間当り液状材料が作用する単位面積当りの流量を制御対象とすることが目的であり、その方式や手法を定めるものではない。そして、供給圧力に影響され易い薬液流量Qが変動する場合、Q/(r・N・V)を一定にする為、薬液流量Qをモニターし、r,N,V、特に、Vのパラメータを増減させることで制御が可能となる。
【0027】
尚、上記にあっては、被処理物としての板体(円板)は、半導体ウェハを中心に説明したが、これに限られるものでは無く、例えば金属製円板やプラスチック製円板であっても良い。
【0028】
以下、より具体的な実施例を挙げて説明する。
先ず、本発明を半導体ウェハ洗浄装置に適用した場合で説明する。一般的に、枚葉洗浄のような化学反応を用いて処理を行う装置では、設計された化学反応の持続時間は極めて短く、薬液がウェハに吐出された直後しか所望の特性を発揮できない。特に、所定の液温で処理が設計された場合において、薬液吐出後ウェハ面上で薬液温度は直ちに急速に変化する為、設計された温度での持続時間は非常に短い。又、化学反応による発熱、吸熱などの薬液温度の変動や消費された化学種の減少による変動なども加わり、精密な洗浄処理を行う為には吐出直後の短時間において、流量を含めたウェハ面内均一性を維持することが極めて重要である。仮に、被処理面上の接線速度を一定にしても、吐出される洗浄液を正確に確保しなければ、洗浄の効果は減少する。
【0029】
例えば、直径300mmの半導体ウェハにプラズマ励起のPE−SiO膜を成膜し、その後の洗浄工程において、水酸化アンモニウム系の薬剤を用いて洗浄する。この薬剤の洗浄効果は薬剤の温度に大きく影響される。従って、所定の液温での迅速な処理が大事である。ウェハの載置された回転テーブルの回転数Nを100rpmとし、洗浄液の流量Qを300mL/minとして、供給ノズルの移動速度Vを単位時間当りに作用する単位面積当りの流量が洗浄剤の吐出直後から一定となるように制御した。すなわち、流量Qを検出し、該流量Qの変動量を加味してQ/r・N・Vが一定値となるように供給ノズルの移動速度Vを制御した。
【0030】
低誘電率の層間絶縁膜に多い疎水性の強い膜、例えばプラズマ励起のPE−SiOC膜に対する洗浄においては、接線速度を一定にするのみでは、洗浄ムラが起きていたのに対して、本発明が適用された場合には、ウェハ全面において洗浄ムラが起きていなかった。特に、軽量なノズルの移動の応答速度は速く、洗浄は効果的に行なわれた。そして、ウェハ全面における均一な洗浄が重要な洗浄処理においては、本質的に厳密な制御が困難である流量を一定に保つよりも、ノズルの移動速度(モータ回転数)を制御すれることで、容易に洗浄の品質を向上させることが出来る。
【0031】
又、本発明を半導体ウェハ上に残留したパーティクルを除去する減圧洗浄に適用した場合を説明する。この場合での供給ノズルから供給されるのは炭酸ガス粒子(ドライアイス)である。この炭酸ガス粒子を常圧または減圧中に吐出して、ウェハ上に残留したパーティクルを除去するが、本洗浄工程の前段工程であるドライエッチング工程では、装置の一般的な特性により、ウェハ端部側でのパーティクルが中心付近に比べ多く付着するという傾向がある。従来の洗浄方式では、除去条件をウェハ全面で最適に設定することが難しく、ウェハ上のパーティクルを完全に除去することが困難であった。本発明では、Q/r・N・Vで定義される値Φをウェハ端部側で増加させた除去条件、即ち、ウェハ端部側において、その中央付近よりも流量を大きくするか、或いはノズルの移動速度(モータ回転数)を小さくすることにより、パーティクルをウェハ全面において均一に除去できた。本実施例では、予め、ドライエッチング工程での結果をみて、ウェハ端部においてノズルの移動速度を小さく制御することで行った。尚、炭酸ガス粒子の流量を一定としておくので、流量の制御は容易である。その結果、工程の安定と歩留向上に寄与し、引いては半導体製品の歩留を向上させることができた。このように、本発明は、供給する材料は液体に限らず、気体も可能であり、流体の供給量変動にも対応することが出来る。
【0032】
本発明を半導体ウェハのエッチングに適用した場合を説明する。従来の枚葉装置では、供給する液状材料の流量が不安定になると、それがそのままウェハ上に反映して、同心円状のエッチングむらを誘発していた。本発明によれば、流量の変動に応じた回転数やノズルの移動速度を制御することによりこうした不具合が生じる事はなく、外観上および特性上、滑らかで均一なエッチング結果が得られ、半導体装置の歩留まり向上に寄与できるばかりか、エッチング材料の使用量削減も期待することができる。因みに、直径300mmの半導体ウェハに対して、エッチング材料としてフッ化水素酸系の洗浄液を用いて、プラズマ励起のPE−SiO膜をエッチングする加工において、テーブルの回転数を100rpmと一定にし、制御の容易な供給ノズルの位置をエッチング材料の供給量変動に合わせて、Q/r・N・Vで定義される物理量Φが一定となるように制御した。この結果、従来のエッチングむらの模様は発生せず、均一なエッチング加工が実現できた。
【0033】
更に、本発明では、図4に示す如く、ウェハ面上の膜をエッチングするような洗浄装置において、エッチングする膜の膜厚が、例えば中心側で厚い不均一な膜であっても、Q/r・N・Vで定義される物理量Φを、その端部側と比較してその中心側で相対的にエッチング量が大きくなるように条件を設定することにより、不均一であった膜を均一にエッチングすることもできる。このように、予め、ウェハの状態がわかっていれば、Q/r・N・Vで定義される物理量Φを目的に応じて設定条件を任意に制御することで、本実施例のエッチング加工で示した被処理物であるウェハの膜厚均一性を克服し、加工結果を一定にすることもできるし、うねりを持たせたり、あるいは単調勾配を有する不均一な膜厚特性にするなど所望の加工結果を得ることもできる。
【0034】
本発明を半導体ウェハのレジストを塗布するスピンコータに適用した場合を説明する。直径300mmの半導体ウェハに、粘度が5cpsのポジ型レジストを用い、その供給量を一定として、回転テーブルを1500rpmに設定し、供給ノズルの移動の速度制御を主に行うことで、安定した作業条件を得ることが出来た。すなわち、レジストを塗布した結果は、1000±5nmの均一でムラのない厚みの塗布層を形成することが出来た。本発明の制御方法によれば、粘度の高い流体であるレジスト材料の場合であっても、供給量をなるべく一定として、供給ノズルの移動の速度制御を主に行うことで、安定した作業条件を得ることができる。粘性の高い液体材料は、供給量の変動に対して敏感であり、供給量が影響される傾向が強く、その制御が上手くいき、膜厚のムラが減少した効果は大きく、露光におけるパターン精度が上がり、製品の歩留を向上に寄与することが出来た。これは、微細配線の動向からみても、非常に好ましい。又、結果的に、ウェハ1枚当り消費されるレジスト量も均一となって使用量を抑制することが出来、従来の7〜8割程度とすることが可能となった。
【0035】
本発明を図5に示すような半導体ウェハの成膜装置へ適用した場合で説明する。薬液ノズルに代わり、プラズマを誘起する高周波印加電極と成膜用ガス吐出ノズルを一体化した支持機構を有する装置を用いて、成膜を行う。成膜用ガスとしてテトラエトキシシラン(TEOS)系ガスを13.56MHzの高周波を印加して、直径300mmの半導体ウェハのプラズマ励起のPE-SiO膜を成膜する。成膜条件としては通常であるが、ウェハを載置した回転テーブルの回転数を一定として、突出ノズルの移動を制御し、ウェハ全面に均一なPE−SiO膜を得た。Q/r・N・Vで定義される物理量Φを制御すれば、膜厚を全面で均一にすることも、あるいは同心円状に任意の膜厚にも成膜することができる。使用する流体がガスの場合、空間に拡散してしまい、成膜に寄与する消費量は大きくなりがちであるが、合理的な使用量とすることができ、概ね減少させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の概要図
【図2】本発明の原理概念説明図
【図3】表1に対応の本発明の実施形態の説明図
【図4】エッチングされる膜厚が不均一な場合のパラメータ制御方法の例を説明する概念図
【図5】成膜装置への適用例を説明する概念図
【符号の説明】
【0037】
1 テーブル回転用モータ
2 回転テーブル
3 ウェハ
4 ノズル
5 螺子軸
6 ノズル駆動用モータ
7 流量制御バルブ
8 制御装置

特許出願人 次世代半導体材料技術研究組合
代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する板体にノズルから流体を供給して処理する処理方法において、
前記板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在る前記ノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、前記板体の角速度Nとで下記に定義される物理量Φの変動が±5%以内に抑えられるよう制御する
ことを特徴とする処理方法。
Φ=Q/(r・V・N)
【請求項2】
回転する板体にノズルから流体を供給して処理する処理方法において、
前記板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在る前記ノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、前記板体の角速度Nとで下記に定義される物理量Φが一定であるよう制御する
ことを特徴とする処理方法。
Φ=Q/(r・V・N)
【請求項3】
物理量Φが上記条件を満たすようにノズルの半径方向における移動速度Vを制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の処理方法。
【請求項4】
流体供給量Qを検出し、該Qの変動量を考慮して物理量Φが上記条件を満たすようにノズルの半径方向における移動速度Vを制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の処理方法。
【請求項5】
回転する板体にノズルから流体を供給して処理する為に、前記板体を回転させる回転手段と、前記板体に流体を供給するノズルと、前記ノズルを前記板体上を移動させる移動手段とを具備した処理装置であって、
前記板体の回転中心から半径方向に距離rの位置に在る前記ノズルからの流体供給量Qと、該位置に在るノズルの半径方向における移動速度Vと、前記板体の角速度Nとで下記に定義される物理量Φの変動が±5%以内に抑えられるよう制御する制御手段を有する
ことを特徴とする処理装置。
Φ=Q/(r・V・N)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−173594(P2008−173594A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10789(P2007−10789)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(504371594)次世代半導体材料技術研究組合 (82)
【Fターム(参考)】