処理装置及び処理装置用真空排気システム及び減圧CVD装置及び減圧CVD装置用真空排気システム及びトラップ装置
【課題】 減圧処理室から未反応の原料ガスや反応副生成物ガスを排気するための真空ポンプの安定稼動を保証するとともに、反応副生成物を効率良く回収して資源の有効利用およびランニングコストの低減をはかること。
【解決手段】 この減圧CVD装置は、減圧CVD法によって銅の成膜を行うための処理室10と、この処理室10に原料ガスとして有機銅化合物たとえばCu(I)hfacTMVSを供給するための原料ガス供給部12と、処理室10を真空引きして排気するための真空排気部14とで構成されている。真空排気部14は、真空ポンプ26と、その前段および後段にそれぞれ設けられた高温トラップ装置28および低温トラップ装置30とで構成されている。高温トラップ装置28では処理室10からの排気ガスに含まれている未反応のCu(I)hfacTMVSが分解して金属銅がトラップされ、低温トラップ装置30では反応副生成物のCu(II)(hfac)2がトラップされる。
【解決手段】 この減圧CVD装置は、減圧CVD法によって銅の成膜を行うための処理室10と、この処理室10に原料ガスとして有機銅化合物たとえばCu(I)hfacTMVSを供給するための原料ガス供給部12と、処理室10を真空引きして排気するための真空排気部14とで構成されている。真空排気部14は、真空ポンプ26と、その前段および後段にそれぞれ設けられた高温トラップ装置28および低温トラップ装置30とで構成されている。高温トラップ装置28では処理室10からの排気ガスに含まれている未反応のCu(I)hfacTMVSが分解して金属銅がトラップされ、低温トラップ装置30では反応副生成物のCu(II)(hfac)2がトラップされる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体デバイス製造等の微細加工でガスを扱う装置に係り、より詳細には減圧CVD装置で代表される化学反応方式の処理装置ならびにこの種処理装置に使用可能な真空排気システムおよびトラップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】今日の半導体デバイスでは多層配線構造が一般化しているが、高密度化に伴い異なる金属配線層間のコンタクト孔もより微小化を求められ、そのアスペクト比(=孔の深さ/開口幅)が増大している。また、チップ内の個々の半導体素子およびデバイス全体の高速化に伴い、コンタクト孔への埋め込み分を含めて配線層には抵抗のより低い材料が要求されている。
【0003】このような微小化および低抵抗化の要求に応えるものとして、金属配線に従来一般のアルミニウムに代えて銅を金属配線材料とし、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法によって銅膜を作成する技術が検討されている。
【0004】CVD法によって銅膜を形成するための原料は、一般に有機銅化合物であり、中でもCu(I)hfacTMVSが注目されている。
【0005】Cu(I)hfacTMVSは、常温で低粘度の液体であり、蒸気圧も60゜Cで1Torrと適当であるため、液体供給系+気化器の構成を用いて気化し、原料ガスとして反応室または処理室へ供給することが比較的容易である。また、少なくとも70゜C以上で分解が進行するので、処理室内では190゜C近辺の比較的低温でも製造上問題のない成膜速度で被処理基板上に銅膜を形成することができる。
【0006】有機銅化合物としては、他にも、βジケドナト化合物たとえばCu(II)(hfac)2 やシクロペンタジエニル化合物たとえばCpCuTEP等が知られている。しかし、これらのいずれも常温で固体であるため、ガスの状態で処理室へ供給するのが難しい。さらに、Cu(II)(hfac)2は分解に350゜C以上の高い温度を必要とし、CpCuTEPは蒸気圧が80゜Cで0.01 Torrと非常に低く成膜時に十分な分圧を得にくいという難点がある。
【0007】これらの他の有機銅化合物と比較して、Cu(I)hfacTMVSは、上記したように液体供給系+気化器の構成を用いて気化し、処理室へ容易に供給できる点と、低温成膜が可能である点で、有利である。
【0008】通常、銅膜を形成するためのCVDとして、減圧CVDが採用される。真空ポンプによって、CVD処理室は所定の圧力に減圧されるとともに、未反応の原料ガスや反応副生成物ガス等は処理室から排気される。この種の真空ポンプとしては、油回転ポンプ等のウエット系は油を被排気室(処理室)へ逆拡散させて汚染ないし歩留まり低下を来すおそれがあることから、そのような問題のないドライポンプが主流になってきている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、気化されたCu(I)hfacTMVSは凝結の温度と分解の温度が近いという特性を有しているが、この特性が減圧CVD用の真空排気システムでは問題となっている。
【0010】真空ポンプ内の温度が低いと、処理室から送られてきた未反応のCu(I)hfacTMVSがポンプ内で凝結して各部、特に回転系に対して障害物となり、著しい場合は回転系を破損することがある。
【0011】そのような凝結を避けるために、通常採られる方法はポンプ内を加温することである。しかし、真空ポンプのように複雑な構造体では、各部を均一な温度に保持することは殆ど不可能で、温度分布にばらつきが生じるのは必然であり、相対的に温度が高い部位ではCu(I)hfacTMVSの分解が進行し、金属銅が析出してしまうおそれがある。これを避けようとして、温度を低めに設定すると、今度は相対的に温度の低い部位で上記のような凝結が生じてしまう。
【0012】つまり、原料ガスにCu(I)hfacTMVSを用いる減圧CVDにおいては、真空ポンプ内に引き込まれた未反応Cu(I)hfacTMVSの凝結および分解を同時に抑制することは極めて困難である。
【0013】また、このCVDでは、Cu(I)hfacTMVSがCu(0)とCu(II)(hfac)2とに分解し、反応生成物のCu(0)は銅膜形成に用いられるものの、原料に含まれるCu原子の50%を含む反応副生成物Cu(II)(hfac)2は廃棄処分されており、資源の利用効率が低かった。
【0014】本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、減圧処理室から未反応の原料ガスや反応副生成物ガスを排気するための真空ポンプの安定稼動を保証するとともに、反応副生成物を効率良く回収して資源の有効利用およびランニングコストの低減をはかるようにした処理装置および真空排気システムを提供することを目的とする。
【0015】本発明の別の目的は、原料ガスとしてCu(I)hfacTMVSを用いる減圧CVDにおいて、未反応のCu(I)hfacTMVSが真空ポンプに入るのを効率的かつ確実に阻止して、真空ポンプの安全性を保証し、さらには反応副生成物であるCu(II)(hfac)2を効率良く回収して資源の有効利用およびランニングコストの低減をはかるようにしたCVD装置用の真空排気システムを提供することにある。
【0016】本発明の他の目的は、処理室より排気された気体の中から未反応の原料ガスのみを選択的に、かつ確実に阻止できるようにしたトラップ装置を提供することにある。
【0017】本発明の他の目的は、トラップした有機化合物を効率良く回収できるようにしたトラップ装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の処理装置は、減圧された室内で原料ガスを反応させて、反応生成物を所定の処理に用いる処理室と、前記処理室から未反応の原料ガスおよび1種類または複数種類の反応副生成物ガスを含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするための真空ポンプと、前記処理室と前記真空ポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応の原料ガスのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物をトラップするための第1のトラップ装置と、前記真空ポンプの出側の排気路に設けられ、前記真空ポンプからの所定の反応副生成物ガスを凝縮させて、その反応副生成物をトラップするための第2のトラップ装置とを有する構成とした。
【0019】本発明の処理装置は、典型的には、有機銅化合物を含む原料ガスを反応させて、反応生成物である金属銅を被処理基板上に堆積させる減圧CVD処理装置として好適なものである。
【0020】本発明の減圧CVD装置用真空排気システムは、減圧された室内で原料ガスであるCu(I)hfacTMVSが下記の化学式(2)のように反応して反応生成物であるCu(0)が被処理基板上に堆積するようになされたCVD処理室から未反応のCu(I)hfacTMVSおよび反応副生成物ガスである気体状態のCu(II)(hfac)2を含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするためのドライポンプと、 2Cu(I)hfacTMVS→Cu(0)+Cu(II)(hfac)2 +2TMVS ‥‥‥‥(2)
前記処理室と前記ドライポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応のCu(I)hfacTMVSのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物であるCu(0)をトラップするための第1のトラップ装置と、前記ドライポンプの出側の排気路に設けられ、前記ドライポンプからの気体状態のCu(II)(hfac)2 を凝縮させて、Cu(II)(hfac)2 をトラップするための第2のトラップ装置とを有する構成とした。
【0021】本発明のCVD装置用真空排気システムにおいて、前記第1のトラップ装置内の反応温度は、未反応のCu(I)hfacTMVSのみを、かつその殆どを反応させるうえで、180〜300゜Cの範囲内であるのが好ましい。
【0022】また、前記第1のトラップ装置は、Cu(I)hfacTMVSを速やかに分解させ、かつ安定確実に堆積させるうえで、銅からなるトラップ部材または銅鍍金されたトラップ部材を有することが望ましい。
【0023】真空ポンプの前段で使用可能な本発明のトラップ装置は、所定のガス状物質を加熱して反応させ、反応生成物をトラップするためのトラップ装置であって、両端に開口部を有する筒状のハウジングと、両端にガス導入部およびガス排出部をそれぞれ有し、前記ハウジングの一方の開口部に前記ガス導入部を位置させるとともに他方の開口部に前記ガス排出部を位置させるように前記ハウジング内にいずれかの前記開口部を介して着脱可能に装着される筒状のトラップ本体と、前記トラップ本体のガス導入部とガス排出部との間のガス流路に配置され、前記ガス導入部より導入された前記ガス状物質と接触して、前記反応生成物を堆積させるためのトラップ部材と、前記トラップ部材を所定の温度に加熱するための加熱手段とを具備する構成とした。
【0024】このトラップ装置では、反応生成物を堆積させるためのトラップ部材を含むトラップ本体がハウジングに着脱可能に装着される構成になっている。前記加熱手段は、好ましくは前記トラップ本体の外周面と前記ハウジングの内周面との間に配設され、トラップ本体ないしトラップ本体を回りから加熱してよい。
【0025】真空ポンプの後段で使用可能な本発明のトラップ装置は、所定の有機ガスを凝結させて、凝結した有機化合物をトラップするためのトラップ装置であって、ガス導入口とガス排出口とを有し、前記ガス導入口と前記ガス排出口との間にガス通路を設けてなるハウジングと、前記ハウジング内で前記ガス通路に沿って配設され、前記ガス導入口より導入された前記有機ガスを凝着させるための凝着面を有するトラップ部材と、前記トラップ部材の凝着面の一部または全部に前記有機化合物を溶解させる薬液を供給するための薬液供給手段と、前記有機化合物を溶解させた薬液を回収するための薬液回収手段とを具備する構成とした。
【0026】このトラップ装置において、薬液による有機化合物の溶解を効率良く行うための好ましい形態は、前記トラップ部材が垂直方向に各々傾斜した凝着面を交互に反対側に向けるようにしてジグザク状に配置された複数のトラップ板を含み、前記薬液供給手段が最上部の前記トラップ板に前記薬液を与えるための薬液供給路を有し、前記薬液供給手段の薬液供給路より最上部のトラップ板に供給された前記薬液が高い方から低い方に順次各トラップ板を伝わって流れ落ちるような構成である。薬液の供給中に超音波振動子によって前記トラップ部材を振動させるのも効果的である。
【0027】また、薬液の使用効率を上げるために、前記薬液回収手段に、回収した前記薬液を前記薬液供給手段の薬液供給路に回送するための薬液回送手段を設けてもよい。
【0028】また、別の形態として、前記トラップ部材が垂直方向に所定の間隔を置いて配置される複数のトラップ板を含み、前記ハウジング内に前記複数のトラップ板をそれぞれの位置で着脱可能に支持するための支持部材が設けられ、前記ハウジング内に前記支持部材より外されて落下した前記複数のトラップ板を収容する液体貯留可能なトラップ板収集部が設けられ、前記薬液供給手段が前記トラップ板収集部に前記薬液を導くための薬液供給路を有し、前記トラップ板収集部で前記複数のトラップ板が前記薬液に浸されるような構成も好適である。
【0029】このトラップ装置では、有機化合物の凝着と溶解が順次行なわれる。トラップ部材は、凝着時には冷却を必要とし、溶解時には加温を必要とする。この冷却と加温を簡単かつ効率的に行うための好ましい形態は、前記トラップ部材に熱的に結合された媒体通路を設け、前記トラップ部材に前記有機ガスを凝着させる時は冷却用の媒体を前記媒体通路に流し、前記トラップ部材に凝着した前記有機化合物を前記薬液で溶解させる時は加温用の媒体を前記媒体通路に流す構成である。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、添付図を参照して本発明の実施例を説明する。
【0031】図1に、本発明の一実施例による減圧CVD装置の全体構成を模式的に示す。この減圧CVD装置は、減圧CVD法によって銅の成膜を行うための処理室10と、この処理室10に原料ガスとして有機銅化合物たとえばCu(I)hfacTMVSを供給するための原料ガス供給部12と、処理室10を真空引きして排気するための真空排気部14とで構成されている。
【0032】処理室10は、減圧可能な真空チャンバからなり、底部の中央に被処理基板たとえば半導体ウエハWを保持するための載置台16を設けている。この載置台16は、たとえば抵抗発熱体からなるヒータを内蔵しており、処理中は半導体ウエハWを所定の処理温度に加熱するようになっている。
【0033】処理室10の上部には、多数の通気孔18aを有する多孔板18が取付され、その上部にバッファ部20が設けられている。処理室10の壁の中または外側もしくは内側には温調用の媒体通路(図示せず)が設けられている。外部の温調装置(図示せず)より配管22を介して温調用の媒体たとえば水が循環供給され、処理室10の壁面が所定の温度に調節されるようになっている。
【0034】原料ガス供給部12は、原料のCu(I)hfacTMVSを液体状態で貯留する容器と、Cu(I)hfacTMVSを所定の温度(たとえは60゜C)および圧力(たとえば1Torr)で気化させる気化器とを有しており、気化したCu(I)hfacTMVSを水素あるいはAr,He等の非酸化性ガスからなるキャリアガスと一緒にガス供給管24を介して処理室10のバッファ部20に供給する。
【0035】なお、Cu(I)hfacTMVSの分解不安定性を抑制するために、さらにHhfacやTMVSを余分に加えた混合材料たとえばCu(I)hfacTMVS0.4%Hhfac2.5%TMVS「CupraSelect」(商品名)を原料ガスとしてもよい。
【0036】真空排気部14は、真空ポンプ26と、その前段および後段にそれぞれ設けられた高温トラップ装置28および低温トラップ装置30とで構成されている。処理室10の底面に形成された排気口32が、排気管34を介して高温トラップ装置28のガス導入口に接続されている。高温トラップ装置28のガス排出口が排気管36を介して真空ポンプ26のガス吸入口に接続され、真空ポンプ26のガス排出口が排気管38を介して低温トラップ装置30のガス導入口に接続されている。低温トラップ装置30のガス排出口は、排気管40を介して排気ダクトまたは除害装置等に接続されてよい。
【0037】真空ポンプ26は、ドライポンプからなり、処理室10の室内を所定の圧力に減圧し、処理室10から未反応の原料ガスおよび反応副生成物ガス等の気体を排気する。排気能力を高めるために、ドライポンプの前段に1段または複数段のメカニカルブースタポンプを設けることもできる。
【0038】高温トラップ装置28は、処理室10からの未反応のCu(I)hfacTMVSのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物である金属銅Cu(0)をトラップするように構成されている。したがって、真空ポンプ26には、反応副生成物ガスであるCu(II)(hfac)2やCu(I)hfacTMVSから一部分離したHhfac、TMVS等のガスだけが引き込まれ、Cu(I)hfacTMVSは実質的に流入しないようになっている。
【0039】低温トラップ装置30は、真空ポンプ26からの気体状態のCu(II)(hfac)2 を凝縮させて、Cu(II)(hfac)2 をトラップするように構成されている。これにより、原料に含まれるCu原子の50%を含む反応副生成物のCu(II)(hfac)2が低温トラップ装置30で収集または回収され、リサイクリングに供されるようになっている。
【0040】次に、この減圧CVD装置の作用を説明する。
【0041】処理室10のバッファ部20には、原料ガス供給部12よりガス供給管24を介してキャリアガスと一緒に原料ガスのCu(I)hfacTMVSが導入される。導入されたガスは、多孔板18の通気孔18を通って、均一な濃度および均一な流れで載置台16上の半導体ウエハWに吹き付けられる。
【0042】処理中、処理室10の室内は真空ポンプ26によって所定の圧力たとえば1Torrに減圧される。載置台16上で半導体ウエハWは、載置台に内蔵されている上記ヒータによって所定の反応温度たとえば190゜C近辺に加熱される。半導体ウエハWの表面に吹き付けられた原料ガスのCu(I)hfacTMVSは、ウエハ表面上で上記の温度および圧力の下で上記化学式(2)のように反応(分解)し、反応生成物であるCu(0)がウエハ表面に堆積する。処理室10の壁面は、上記の温調機構によりCu(I)hfacTMVSの凝着を防ぐ温度たとえば55゜C付近に保たれる。
【0043】処理室10内の上記反応で生成した気体または反応せずに残った気体は全て排気口32より真空排気部14側に排気される。特に、反応副生成物であるCu(II)(hfac)2、原料ガスのCu(I)hfacTMVSから一部分離したHhfacやTMVS、および未反応のCu(I)hfacTMVSが気体状態のまま排気口32から排気管34を通って高温トラップ装置28に導かれる。なお、必要に応じて排気管34も処理室10の壁面と同様に適当な温度たとえば55゜C付近に温調してよい。
【0044】高温トラップ装置28は、導入したガスと接触して、ガス中のCu(I)hfacTMVSのみを選択的に、かつその殆どを反応または分解させ、反応生成物のCu(0)を堆積または付着させるトラップ部材と、このトラップ部材を所定の反応温度に加熱するためのヒータとを備えている。
【0045】高温トラップ装置28において、この反応温度またはトラップ温度は180〜300゜Cの範囲内にあるのが望ましい。180゜C未満だと、流入したガスがトラップ部材を通過する際に上記化学式(2)の反応を完全に行なわせるのが難しくなり、Cu(I)hfacTMVSがわずかながら後段の真空ポンプ26側に抜けるおそれがある。また、300゜Cを超えると、反応の速度としては小さいもののCu(II)(hfac)2の分解が進行してしまい、後段の低温トラップ装置30で収集または回収できるCu(II)(hfac)2の量が減少するおそれがある。
【0046】この高温トラップ装置28では、トラップ部材を銅で構成するか、さもなければ銅鍍金を施した構成とするのが望ましい。その理由は、トラップ部材のトラップ面に銅以外の材質たとえば絶縁物が表出していると、上記化学式(2)の反応に潜伏(incubation)時間が生じ、トラップを使用し始めてしばらくの間はこの反応が進行せず、未反応のCu(I)hfacTMVSがトラップ部材を素通りして後段の真空ポンプ26に流入するおそれがあるためである。また、十分時間が経って、この反応が進行し、トラップ面に金属銅Cu(0)が析出したとしても、密着性よく堆積または付着することができず、いったん堆積した金属銅がトラップ面から剥がれて後段の真空ポンプ26に入り込み、ポンプ26にダメージを与えるおそれがある。このような金属銅の剥がれは、特に昇温、降温などの熱サイクル時に起こりやすく、トラップ面を構成する材料と、析出した金属銅との間で熱膨張の差が大きい場合に著しい。
【0047】高温トラップ装置28において、トラップ部材のトラップ面を最初から銅で構成しておくことで、上記化学式(2)の反応の潜伏時間をなくし、さらにはトラップ面の材質と析出した金属銅との熱膨張係数が一致しているために析出銅の剥がれを抑え、上記のような真空ポンプ26へのダメージ等の問題をなくすことができる。
【0048】高温トラップ装置28でCu(I)hfacTMVSの全部または殆どを除去された排気ガスは、排気管36を通って真空ポンプ26に吸入される。この吸入される排気ガスの主たる成分はCu(II)(hfac)2であり、その中の大部分は処理室10内で、残りは高温トラップ装置28内でそれぞれ発生したものである。
【0049】上記したように真空ポンプ26はドライポンプからなり、ポンプ内の各部間で温度分布および圧力分布にある程度のばらつきがある。ドライポンプは、吸入した気体を排出口側へ押しやるようにして排気するため、その気体圧縮によりポンプ出側の方が入側よりも高温度、高圧力になる傾向がある。しかし、通常のドライポンプおよびメカニカルブースターポンプは、入側から出側までCu(II)(hfac)2を気体状態に維持できるような温度・圧力分布を有している。
【0050】図2に、Cu(II)(hfac)2の蒸気圧曲線を示す。本実施例では、真空ポンプ26内の温度・圧力分布をたとえば60゜C(0.1Torr)〜150゜C(5Torr)の範囲内に収めている。したがって、真空ポンプ26内でCu(II)(hfac)2が凝縮することはない。また、Cu(II)(hfac)2の分解温度が350゜C以上であるのに対し、ドライポンプやメカニカルブースターポンプの内部温度は通常300゜C以上になることは無いため、真空ポンプ26内でCu(II)(hfac)2が分解するおそれはない。
【0051】また、HhfacやTMVSは、蒸気圧がさらに高いうえ、分解や他に可能な反応の温度もかなり高いため、これらの排気物質もポンプ入側から出側まで(正確には真空排気部14を通じて)気体状態を維持できる。
【0052】以上のようにして、真空ポンプ26に導入された排気ガスの殆どが、そのままの状態(気体状態)でポンプ内のガス流路を通り抜けてポンプ排気口から排出される。
【0053】真空ポンプ26より排出された排気ガスは、排気管38を通って低温トラップ装置30に導入される。図2に示すように、Cu(II)(hfac)2は、温度が60゜Cでは、約1Torr以上で(10Torr以上では確実に)固体状態になる。真空ポンプ26の排気側の圧力は少なくとも10Torr以上(通常は100Torr以上)はあるから、低温トラップ装置30ではトラップ部材の温度を60゜C以下にすることで、Cu(II)(hfac)2を凝縮させてトラップすることが可能である。
【0054】低温トラップ装置30における凝縮温度またはトラップ温度は、15〜60゜Cの範囲内にあることが望ましい。図2の蒸気圧曲線から明らかなように、Cu(II)(hfac)2は低温、高圧になるほど固体になりやすく、前段のポンプ出側の圧力範囲で効率の良いCu(II)(hfac)2の収集を行うには、トラップ温度が60゜C以下であることが要求される。しかし、15゜Cを超えて冷却した場合は、たとえばトラップ交換等のメンテナンスで冷却を止めると、室温まで昇温したときに気化が進んで、トラップ内部が加圧状態になり、著しい場合には内容物が噴出するおそれがある。したがって、冷却の下限温度を室温程度(15゜C)とするのが好ましい。
【0055】低温トラップ装置30において、トラップ部材の材質(たとえばステンレス)がトラップ面に表出していると、そこにCu(II)(hfac)2を凝着させて保存する際、あるいは回収のため溶媒または薬液を供給した際に、トラップ表面が反応、劣化して、コンタミネーションを起こすおそれがある。この問題は、トラップ部材のトラップ面をフッ素樹脂で被覆することで解決できる。
【0056】上記したように、本実施例の減圧CVD装置では、処理室10内で原料ガスのCu(I)hfacTMVSが半導体ウエハW上で上記化学式(2)のように反応(分解)し、反応生成物であるCu(0)がウエハ表面に堆積し、銅膜が形成される。反応副生成物であるCu(II)(hfac)2や未反応のCu(I)hfacTMVSは、真空排気部14へ排気される。
【0057】真空排気部14において、処理室10からの排気ガスは、先ず高温トラップ装置28に導入される。高温トラップ装置28では、所定の温度でCu(I)hfacTMVSだけが、かつその殆どが反応し、析出した金属銅Cu(0)はトラップされる。高温トラップ装置28内のトラップ部材が銅で構成され、または予め銅鍍金を施されることで、Cu(I)hfacTMVSの熱分解および金属銅の堆積はトラップの使用開始時より速やかに行なわれ、また、析出した金属銅の密着性も良好であり、剥がれ等の問題は生じない。
【0058】高温トラップ装置28からの排気ガスは、ドライポンプからなる真空ポンプ26に吸入される。この吸入される排気ガスは、Cu(II)(hfac)2やHhfac、TMVS等の混合ガスであり、Cu(I)hfacTMVSを実質的に含んでいない。したがって、真空ポンプ26内にCu(I)hfacTMVSが流入することがないので、Cu(I)hfacTMVSの熱分解または凝縮によるポンプのダメージを十全に回避することができる。
【0059】真空ポンプ26に導入されたCu(II)(hfac)2やHhfac、TMVS等のガスは、ポンプ内部で熱分解することもなければ凝縮することもなく気体状態のまま排気される。
【0060】真空ポンプ26からの排気ガスは低温トラップ装置30に導入される。低温トラップ装置30では、所定の温度および圧力の下で、Cu(II)(hfac)2が凝縮してトラップ部材にトラップされる。トラップ部材のトラップ面にフッ素樹脂をコーティングすることで、トラップ側からのコンタミネーションを防止し、純度の高い状態でCu(II)(hfac)2を回収できる。回収したCu(II)(hfac)2からCu(I)hfacTMVSを再生することは比較的容易であり、原料ガスのランニングコストを低減することができる。
【0061】なお、図3に示すように、真空排気部14の排気路14aに対して、複数台たとえば各2台の高温トラップ装置28または低温トラップ装置30をバルブ42〜48を介して並列に接続し、片側のトラップ装置を選択的に使用する構成としてもよい。かかる並列トラップ構成によれば、成膜作業を止めることなく、トラップ交換を行える。
【0062】次に、図4〜図13につき、上記実施例の減圧CVD装置における高温トラップ装置28または低温トラップ30として使用可能な本発明のトラップ装置の実施例を説明する。
【0063】図4に、高温トラップ装置28として好適な第1の実施例によるトラップ装置の構成を示す。
【0064】このトラップ装置において、ハウジング50は、たとえばシリコンゴム等の断熱材からなり、筒体たとえば四角筒体に形成されている。ハウジング50の一端部(図の右端部)は径方向内側または中心側に折曲して側壁部50aを形成し、この側壁部50aにガス吸入口用の開口が設けられている。ハウジング50の他端部50bは、側壁部を持たず、後述するようにガス排出口だけでなくトラップ本体装入/取出し口をも与えるように大きな径で開口している。
【0065】ハウジング50内には、それより一回り小さい同様の四角筒体に形成された熱伝導体たとえばステンレス鋼からなるヒータ本体52が収容されている。ヒータ本体52の一端部(右端部)52aは、ハウジング50の側壁部50aの開口より軸方向外側に円筒状に突出し、ガス導入口および配管コネクタ部を構成している。ヒータ本体52の他端部52bは、ハウジング50の他端部50bと同様に、側壁部を持たず大きな径で開口している。
【0066】ヒータ本体52の胴部には、たとえばタングステン線からなる電熱コイル54が埋め込まれている。この電熱コイル54は、電気コード55を介してヒータ電源回路(図示せず)に接続されている。
【0067】ヒータ本体52の内側には、それより一回り小さい同様の四角筒体に形成された銅板からなるトラップ本体56がハウジング50およびヒータ本体52の他端部の開口を介して着脱可能に収容または装着される。トラップ本体56の一端部(右端部)56aは、円筒状に突出してガス導入部を形成し、ヒータ本体52の突出部52a内にOリングからなるシール部材58を介して挿入される。トラップ本体56の他端部56bは、ガス排出部を形成し、外側からトラップ内部(後述する銅の堆積状況)がよく見えるように大きな径で開口している。
【0068】トラップ本体56の内側には、相対向する一対の内壁面からそれぞれ軸方向に適当な間隔を空けて交互に他方の内壁面に向かってその手前まで延在するフィン状の銅板からなるトラップ板60が着脱可能に取り付けられている。
【0069】各トラップ板60の両側縁部はトラップ本体56の内壁に隙間無く密着または接続している。したがって、ガス導入部56aよりトラップ本体56内に導入されたガスは、入側から出側に向かって順次各トラップ板60に接触しながら各トラップ板60と対向するトラップ本体56の内壁面との間、および相隣接するトラップ板60,60の間に形成されているラビリンス構造のガス流路62を通ってガス排出部56b側に抜ける。その際、後述するように、各トラップ板60の表面およびトラップ本体56の内壁面(トラップ面)に接触したガス中の所定の物質(本実施例ではCu(I)hfacTMVS)が反応または分解して、反応生成物(金属銅)がトラップ面上に堆積するようになっている。
【0070】トラップ本体56には、温度センサたとえば熱電対64が着脱可能に取り付けられる。この熱電対64の出力端子は、センス線または電気ケーブル66を介して上記ヒータ電源回路の制御部に接続されている。ヒータ電源回路より供給される電力によってヒータ本体52内蔵の電熱コイル54が発熱し、その熱がヒータ本体52からトラップ本体56に伝わり、トラップ本体56ないし各トラップ板60が加熱される。該ヒータ制御部は、熱電対64で検出されるトラップ本体56ないし各トラップ板60の温度が所定の反応温度またはトラップ温度に一致するように、抵抗発熱体54に対する供給電力を制御するようになっている。
【0071】トラップ本体56の他端部56bには、たとえばステンレス鋼からなり円筒状の突出部を有するフランジ68がたとえばOリングからなるシール部材70を介してボルト(図示せず)等により着脱可能に取り付けられる。フランジ68の円筒部はガス排出口を構成する。さらに、フランジ68の外側には、断熱材たとえばシリコンゴムからなる側壁板72が着脱可能に取り付けられる。
【0072】このトラップ装置を上記実施例の減圧CVD装置における高温トラップ装置28として用いる場合、トラップ本体56ないし各トラップ板60は上記したように180〜300゜Cの範囲内たとえば200゜Cの温度に加熱される。これにより、処理室10より送られてきた排気ガスがトラップ本体56内のガス流路62を通過する際に、排気ガスに含まれているCu(I)hfacTMVSがトラップ板60の表面およびトラップ本体56の内壁面(トラップ面)に接触して上記化学式(2)のように反応(分解)し、反応生成物の金属銅Cu(0)が該トラップ面上に堆積または凝着する。トラップ本体56内のガス流路62はラビリンス構造であるため、Cu(I)hfacTMVSとトラップ面との接触面積または接触時間は十分大きく、ガス排出口に到達するまでにCu(I)hfacTMVSは殆ど残らず反応する。
【0073】また、トラップ面が銅で構成されているため、このトラップ装置の使用開始時からCu(I)hfacTMVSの反応および金属銅の堆積が潜伏時間なしに速やかに行なわれるとともに、析出した金属銅はトラップ面に良好に密着し、剥がれ難くなっている。
【0074】また、トラップ本体56およびトラップ板60がすべて銅で構成されているので、熱伝導性にもすぐれており、電熱コイル54ないしヒータ本体52からの熱が上記反応に効率良く使用されるようになっている。
【0075】そして、側壁板72およびフランジ68を取り外すことで、ハウジング50およびヒータ本体52の片側の開口部を介してトラップ本体56およびトラップ板60を簡単に抜き出せるだけでなく、金属銅の堆積または付着状況を目視で監視ないし確認できるため、トラップ本体56またはトラップ板60の交換時機を適確に判断することができ、メンテナンス性にすぐれている。
【0076】ガス導入口および排出口をシールするOリング58、70は、取り外しや組立てに便利である。特に、ガス導入口のOリング58によって、ガス導入口に導入されたガス、特にトラップ対象のCu(I)hfacTMVSがトラップ本体56とヒータ部材52との隙間72に入り込まない、したがってトラップ本体56の外周面にトラップ対象のCu(I)hfacTMVSが接触ないし堆積しないようになっている。一方、ガス排出部側では、ガス中にもはやCu(I)hfacTMVSが含まれてはいないため、隙間72をガス流路62と連通させる構成とし、トラップ本体56の挿脱を容易に行えるようにしている。
【0077】トラップ本体56またはトラップ板60を銅以外の材質たとえばステンレス鋼で構成し、そのトラップ面に銅鍍金を施す構成も可能である。その場合、一度使い尽くされたトラップ本体56またはトラップ板60において、トラップ面に付着した堆積銅とともに鍍金銅も除去し、表出したステンレス鋼に再度鍍金銅を施すことで、トラップ部材の再使用が可能である。なお、上記のような銅製のトラップ部材の場合は、付着可能な最大限まで銅を堆積させ、使用後は銅廃材として再加工に供することができる。
【0078】図5に、第2の実施例によるトラップ装置の構成を示す。このトラップ装置は上記第1実施例のトラップ装置においてトラップ本体56内の構成を変形したものである。他の各部は上記第1実施例のものと同様の構成および機能を有している。
【0079】この第2の実施例では、トラップ本体56の四方の内壁面にそれぞれ四辺の端部を密着または接続するようにして複数のトラップ板74が軸方向に所定の間隔を置いて配置される。トラップ板間隔は、入口側で最も大きく、出口側に向かって次第に小さくなるように構成されている。
【0080】図6に示すように、各トラップ板74には全面に亘って多数の通気孔74aが設けられており、通気孔74aの穴径は入口側で最も大きく、出口側にいくほど次第に小さくなるように形成されている。なお、通気孔74aの位置および個数が各トラップ板74で異なっていてもよい。
【0081】トラップ本体56内でガス導入部に最も近いトラップ板74’は、図示のように断面形状がほぼ菱形に形成されている。このトラップ板74’においては、内側の一対の斜面部74b’にのみ通気孔74aが形成され、外側の一対の斜面部74c’には通気孔74aが形成されていない。
【0082】ガス導入口より導入されたガスは、最初にこのトラップ板74’で区画されたバッファ室に入り、斜面部74b’の通気孔74aを通って斜め外方向に抜けてから後段の平行トラップ板74を順次通り抜け、最後にガス排出口側に出るようになっている。その際、各トラップ板74の表面およびトラップ本体56の内壁面(トラップ面)に接触したガス中の所定の物質(本実施例ではCu(I)hfacTMVS)が反応または分解して、反応生成物(金属銅)がトラップ面上に堆積するようになっている。
【0083】この実施例では、トラップ板74’によるバッファ効果と斜め拡散効果により、ガスのガス導入口側への跳ね返りや乱流を抑制し、トラップ本体56外側のヒータ本体54や配管(図示せず)等に金属銅が堆積付着しないようにしている。
【0084】また、ガス導入口に近いほどトラップ板74の通気孔74aの穴径を大きくするとともにトラップ板間隔を大きくし、ガス排出口に近くなるほど通気孔74aの穴径とトラップ板間隔をそれぞれ小さくしている。これにより、未反応ガスが最も多い入口側ではガスがスムースに内奥へ送られ、出口側にいくほど(未反応ガスが少なくなるほど)ガスがトラップ面に接触する度合いが増大する。したがって、それぞれのトラップ板74における銅の付着に偏りがなく、出口付近の銅堆積量が少ない段階で入口側のトラップ板74の通気穴74aが堆積物(金属銅)で閉塞するようなこともない。
【0085】その他、上記第1実施例における種種の作用効果または利点がこの第2の実施例でも同様に得られる。
【0086】図7〜図9に、低温トラップ装置30として好適な第3の実施例によるトラップ装置の構成を示す。図7は縦断面図、図8は上面図、図9は横断面図である。
【0087】このトラップ装置のハウジング80は、熱伝導性の材質たとえばステンレス鋼からなり、有底四角筒状に形成されている。ハウジング80の上璧または蓋部81の中央部にガス導入口82が設けられ、底部の側壁にガス排出口84と薬液排出口86とが設けられている。
【0088】ハウジング80の四辺の側壁80a,80b,80c,80dのうち、相対向する一対の側璧80a,80cの内部には温調水通路88,90がそれぞれ形成されている(図9)。ハウジング80の蓋部81には、一方の側璧80a内の温調水通路88に接続する温調水導入口92と他方の側璧80c内の温調水通路90に接続する温調水排出口94とが設けられている(図8R>8)。両側の温調水通路88,90は、ハウジング80の上面に架設されたバイパス管96を介してつながっている(図8)。
【0089】温調水供給部(図示せず)より所定の温度に水温を調整された水WQが配管(図示せず)を介して温調水導入口92に導入される。導入された温調水WQは、側璧80a内の温調水通路88→バイパス管96→側璧80c内の温調水通路90の流路を流れたのち、温調水排出口94より排出され、そこから配管(図示せず)を介して温調水供給部に戻る。このような温調水WQの循環供給により、ハウジング80およびその内部の後述するトラップ部材が温調水WQの水温に近い温度に冷却または加温されるようになっている。
【0090】図7に示すように、ハウジング80の中には、ガス導入口82とガス排出口84との間にジグザグ状のガス流路98が設けられている。この流路98は、垂直方向にジグザク状に配置された2列のトラップ板[100(1),100(2),‥‥,100(m)]、[102(1),102(2),‥‥,102(n)]によって形成されている。
【0091】一方(図では左側)の列においては、トラップ板100(1)100(2),‥‥,100(m)が垂直方向に各々傾斜したトラップ面を交互に反対側に向けるようにしてジグザグ状に配置されている。
【0092】より詳細には、最上部のトラップ板100(1)は、ハウジング80の側壁80bの内壁面から斜め下向きにハウジング中心部を幾らか越える位置まで延在する。2番目のトラップ板100(2)は、最上部のトラップ板100(1)の下端と少し隙間104を空けて反対側の側壁80dに寄った位置から斜め下向きに側壁80bの内壁面の少し手前まで延在する。トラップ板100(2)と側壁80bとの間には隙間106が形成される。3番目のトラップ板100(3)は、2番目のトラップ板100(2)の下端と少し隙間108を空けてハウジング80の側壁80bの内壁面から最上部のトラップ板100(1)と同様に斜め下向きにハウジング中心部を幾らか越える位置まで延在する。以下、下段のトラップ板100(4),100(5),‥‥においても同様の配置パターンが繰り返される。
【0093】他方(右側)の列においては、左側の列と高さ位置をずらして上記と同様のパターンで、トラップ板[102(1),102(2),‥‥,102(n)が垂直方向に各々傾斜したトラップ面を交互に反対側に向けるようにしてジグザグ状に配置されている。これにより、両側トラップ板列の間にジグザグ状のガス流路98が形成されている。なお、各トラップ板100,102は、ハウジング80の側壁80a、80cとは密着または接続している(図9)。
【0094】ハウジング80の底部には、両側トラップ板列に沿って降りてきたガスを全て排出口まで案内するためのトラップ板110が設けられている。この底部トラップ板110は、ハウジング80の全ての側壁80a、80b、80c、80dに密着または接続している。
【0095】各トラップ板100,102、110は、熱伝導率の高い材質たとえばアルミニウムからなり、その表面がフッ素樹脂加工されている。
【0096】このトラップ装置では、トラップ板100,102、110に凝着した析出物(本実施例ではCu(II)(hfac)2)を次のような機構によってハウジング80内で回収できるようになっている。
【0097】ハウジング80の上蓋部81には、凝着物(Cu(II)(hfac)2)を溶解させる薬液(たとえばアセトン)MQを導入するための薬液導入口112が取り付けられており、さらに、その上方に薬液投入口111が設けられている。そして、上蓋部81の内部には薬液導入口112とハウジング80の両側璧80b,80dの内壁面の上端にそれぞれ形成されたスリット状の薬液吐出口114,116とをむすぶ薬液通路118,120,122が設けられている。薬液通路118は,薬液導入口112から斜め下向きに扇状に広がって薬液吐出口116に至る。薬液通路122は,ガス導入口82を挟んで薬液導入口112と反対側の位置から斜め下向きに扇状に広がって薬液吐出口114に達する。薬液通路120は、ガス導入口82を迂回するようにして薬液導入口112と薬液通路122とを連絡する。
【0098】薬液MQは、薬液投入口111より注入される。薬液投入口111は、通常は蓋で密閉されている。
【0099】薬液導入口112に薬液MQが投入されると、導入された薬液の一部は薬液通路118側に分配され、残りは薬液通路120を通って薬液通路122側に分配される。
【0100】右側の薬液通路118に分配された薬液MQは、右側の薬液吐出口116より側壁80dの壁伝いに落ちて、右側最上段のトラップ板102(1)の上端部に供給される。
【0101】図7で点線の矢印で示すように、トラップ板102(1)の上端部に供給された薬液MQは、トラップ板102(1)の上面を伝って流れ落ち、トラップ板102(1)の下端に達すると、そこから隙間104を介して2番目のトラップ板102(2)の上端部に落下し、やはりトラップ板102(2)の上面を伝って流れ落ち、トラップ板102(2)の下端に達すると、そこから隙間106,108を介して3番目のトラップ板102(3)の上端部に落下し、以下上記と同様の流れ方で下段のトラップ板102(4),トラップ板102(5),‥‥を順次通過する。そして、薬液MQは、最後に底部トラップ板110に落下し、このトラップ板110から薬液排出口86を通って薬液タンク124に回収される。
【0102】このように、最上部のトラップ板102(1)に供給された薬液MQが、高い方から低い方に順次各トラップ板102(1),102(2),‥‥,102(n),110を伝わって流れ落ち、薬液排出口86を通って薬液タンク124に回収されるようになっている。
【0103】左側の薬液通路122に分配された薬液MQは、左側の薬液吐出口114より側壁80bの壁伝いに落ちて、左側最上段のトラップ板100(1)の上端部に供給される。図7で点線の矢印で示すように、左側のトラップ板列においても、薬液MQは上記と同様の流れ方で高い方から低い方に順次各トラップ板100(1),100(2),‥‥,100(m),110を伝わって流れ落ち、薬液排出口86を通って薬液タンク124に回収されるようになっている。
【0104】なお、図9に示すように、各トラップ板100,102には適当な部位に超音波振動子126が取り付けられている。上記のように薬液MQを供給する時に、各超音波振動子126が作動して各トラップ板100,102を振動させるようになっている。なお、底部トラップ板110にも同様の超音波振動子を取り付けることができる。
【0105】このトラップ装置では、薬液タンク124にポンプ(図示せず)を設け、このポンプの出口を配管128を介して薬液導入口112に接続している。薬液タンク124に貯蔵または回収された薬液MQをポンプで配管128を介して薬液導入口112に送り込み、薬液MQを循環させるようにしている。
【0106】次に、このトラップ装置を図1の減圧CVD装置における低温トラップ装置30として用いる場合の作用を説明する。
【0107】トラップとして運転する間は、温調水供給部より所定の冷却温度たとえば25゜Cで温調水CWが温調水導入口92に供給される。この温調された冷却水CWがハウジング80の両側璧80a,80c内の温調水通路88、90を流れることで、ハウジング80の両側璧80a,80cに密着または接続している各トラップ板100,102は約25゜Cの温度に冷やされ、かつこの温度に維持される。
【0108】ガス導入口82には、真空ポンプ26からの排気ガスが導入される。上記したように、この排気ガスは、トラップ対象である反応副生物のCu(II)(hfac)2)を含んでいる。導入されたガスの大部分は、両側のトラップ板[100(1),100(2),‥‥,100(m)]、[102(1),102(2),‥‥,102(n)]の内側に形成されているジグザグ状のガス流路98を通ってハウジング底部の排気口84側に抜ける。ここで、各トラップ板において、トラップ本体の中央部に向いていてガス流路98に面している面をおもて面(主トラップ面)、その裏側の面を裏面(副トラップ面)とする。
【0109】上記のようにしてガス流路98を流れる際に、ガスは、コンダクタンスの低いガス流路98内で圧縮されながら各トラップ板100,102,110のおもて面(主トラップ面)に接触する。これにより、ガス中のCu(II)(hfac)2が上記冷却温度(約25゜C)で冷やされて凝縮し、析出した固体のCu(II)(hfac)2はトラップ面上に凝着または付着する。
【0110】ここで、トラップ板100,102,110の中では、ガス導入口82に近いほどCu(II)(hfac)2の凝着量は多くなる傾向があり、近接した高さ位置では奇数番目のトラップ板(たとえば102(3))の方が偶数番目のトラップ板(たとえば100(2))よりも凝着量は多くなる傾向がある。つまり、奇数番目のトラップ板(102(3))のおもて面(主トラップ面)は上向きになっているため、上方の入口から流れてくるガスと衝突または接触する度合いが大きく、それだけCu(II)(hfac)2が凝着しやすい。これに対して、奇数番目のトラップ板(100(2))のおもて面(主トラップ面)は下向きになっているため、上方から流れてくるガスと衝突または接触する度合いが小さく、Cu(II)(hfac)2が凝着しにくい。
【0111】なお、一部のガスは、隙間104,106,108を通って両側トラップ板100,102の裏側を回りながら、排気口84側に抜ける。その際、比較的少ない量ではあるが、ガス中のCu(II)(hfac)2が各トラップ板100,102の裏面(副トラップ面)に接触して凝着する。
【0112】このトラップ装置では、各トラップ板100,102,110のトラップ面がフッ素樹脂で被覆されているので、析出したCu(II)(hfac)2はトラップ面上で安全かつ安定に保持される。
【0113】上記のようなトラップ運転によりCu(II)(hfac)2の凝着量が相当レベルに達した頃を見計らって、Cu(II)(hfac)2の回収作業を行ってよい。
【0114】回収作業時には、温調水供給部より所定の加熱温度たとえば50゜Cで温調水CWを温調水導入口92に供給する。この温調された加熱水WQがハウジング80の両側璧80a,80c内の温調水通路88、90を流れることで、ハウジング80の両側璧80a,80cに密着または接続している各トラップ板100,102は約50゜Cの温度に暖められる。
【0115】そして、薬液タンク124のポンプを稼動させ、上記したような薬液供給機構を働かせる。これにより、薬液MQが、所定回数循環して高い方から低い方に順次各段のトラップ板[100(1),100(2),‥‥,100(m)]、[102(1),102(2),‥‥,102(n)]、110を伝わって流れ落ち、各トラップ板100,102,110のトラップ面に付着しているCu(II)(hfac)2を溶解しながら洗い落とす。
【0116】本実施例では、上記のように各トラップ板100,102を所定温度(約50゜C)に加温するとともに、超音波振動子126によって各トラップ板100,102,110を振動させることにより、Cu(II)(hfac)2の溶解を効率良く行うことができる。
【0117】また、薬液MQを循環させることにより、比較的少量の薬液MQでCu(II)(hfac)2の溶解または回収を行うことができる。
【0118】また、各トラップ板100,102,110のトラップ面をフッ素樹脂加工しているので、回収処理中にトラップ面が反応・劣化するおそれがなく、コンタミネーションの問題が生じない。
【0119】なお、上記の薬液供給において、薬液MQは、より詳細には、奇数番目の各トラップ板については内側または表側の主トラップ面を流れ落ち、偶数番目の各トラップ板については裏側の副トラップ面を流れ落ちる。つまり、奇数番目の各トラップ板の裏側の副トラップ面と偶数番目の各トラップ板の内側の主トラップ面とには薬液MQは行き渡らない。しかし、奇数番目の各トラップ板の裏側の副トラップ面における凝着量は非常に少ない。また、偶数番目の各トラップ板の内側の主トラップ面においても、上記したようにガスとの接触度合いが比較的小さいので、凝着量は比較的少ない。
【0120】最も多く凝着する部分は奇数番目のトラップ板100(1),100(3),‥‥、102(1),102(3),‥‥のおもて面(主トラップ面)である。これらのトラップ面には薬液MQが十分行き渡って供給されるので、凝着したCu(II)(hfac)2の大部分を回収することができる。
【0121】タンク124のポンプを止めて薬液循環供給を終了させると、トラップ板100,102,110より洗い落とされたCu(II)(hfac)2が薬液MQとともにタンク124内に収集され貯留される。このタンク124に収集した溶液を処理することにより、Cu(II)(hfac)2をCu(I)hfacTMVSにリサイクルすることができる。
【0122】図10〜図13に、低温トラップ装置30として好適な第4の実施例によるトラップ装置の構成を示す。図10および図13は装置の縦断面図、図11はトラップ板と支持部材の平面図、図12は装置の上面図である。
【0123】このトラップ装置のハウジング130は、熱伝導性の材質たとえばアルミニウムからなり、有底四角筒状に形成されている。ハウジング130の上蓋132にガス導入口134および排出口136が設けられている。
【0124】ハウジング130内の空間は中心部に垂設されたたとえばアルミニウムからなる隔壁138により一対(左右)の室140,142に分割され、これらの室140,142は隔壁140の下端とハウジング底面との間に形成された開口144を介して連通している。
【0125】右側の室140内には、熱伝導性の材質たとえばアルミニウムからなる複数のトラップ板146が垂直方向に所定の間隔を置いて配置される。トラップ板間隔は、入口側(最上部)で最も大きく、下流の底側に向かって次第に小さくなるように構成されている。
【0126】左側の室142内には、熱伝導性の材質たとえばアルミニウムからなる複数のトラップ板148が垂直方向に所定の間隔を置いて配置される。トラップ板間隔は、上流の底部側で最も大きく、下流の出口側に向かって次第に小さくなるように構成されている。もっとも、左側底部のトラップ板間隔は、それよりも上流側の右側最下位のトラップ板間隔と同程度か、それよりも小さい値に設定されている。
【0127】各トラップ板146,148には、図11に示すように、多数の通気孔150が形成されている。図5のトラップ装置におけるトラップ板74と同様に、通気孔150の孔径を入口側で最も大きくし、下流(出口側)にいくほど次第に小さくなるようにしてもよい。また、それぞれのトラップ板146,148における通気孔150の個数および位置を異ならせてもよい。
【0128】各トラップ板146,148の表面(トラップ面)にはフッ素樹脂加工が施されている。また、このトラップ装置では、ハウジング130の内壁面および隔壁138の表面もトラップ手段を構成するので、これらの璧面にもフッ素樹脂加工が施される。
【0129】ハウジング130内で、各トラップ板146(148)は一対の垂直支持棒152(154)に着脱可能に支持されている。図11に示すように、各トラップ板146(148)の相対向する一対の角隅部に垂直支持棒152(154)を遊挿させる大きさで楕円形の開口156(158)が形成されている。垂直支持棒152(154)には、各トラップ板146(148)の下面に対応する高さ位置に突起状の水平支持部160(162)が設けられている。図10の組立てた状態では、各水平支持部160(162)が楕円開口156(158)の短軸方向に向いて、各トラップ板146(148)を担持している。
【0130】各垂直支持棒152(154)は上蓋132を貫通してハウジング130の上面に突出しており、その突出部には操作つまみまたはレバー160(162)が取り付けられている。
【0131】各トラップ板146(148)に付着したCu(II)(hfac)2を回収するときは、この操作つまみまたはレバー160(162)を図12の矢印の方向に直角に回す。そうすると、ハウジング130内では各垂直支持棒152(154)の各水平支持部160(162)が楕円開口156(158)の長軸方向に向くことになり、各トラップ板146(148)が外れて脱落する。
【0132】図13に示すように、垂直支持棒152(154)から外れて脱落したトラップ板146(148)は、それぞれの室140,142の底部に積み重なる。
【0133】このトラップ装置では、ハウジング130内の隔壁138に沿って薬液が供給されるように上蓋132に薬液供給路164が設けられている。上蓋132には、さらに、この薬液供給路164に連通する薬液導入口166が設けられている。この薬液導入口166より薬液MQを供給すると、薬液MQは隔壁138上端の吐出口168より隔壁138に沿ってハウジング130の底部に導かれるようになっている。
【0134】ハウジング130の一側璧の下端部には溶液取出口170が設けられている。通常はこの溶液取出口170が閉められているので、上記のように薬液供給路164を介して供給された薬液MQはハウジング130の底部に溜まり、積層状態で収集されているトラップ板146(148)は薬液MQに浸される。
【0135】ハウジング130の底面には複数の箇所に凹所172が形成され、各凹所172の中に超音波振動子174が取り付けられている。上記のようにしてハウジング130の底でトラップ板146(148)を薬液MQに浸している間、それらの超音波振動子174が作動して積層状態のトラップ板146(148)に振動を与え、凝着物(Cu(II)(hfac)2)の溶解を促進するようにしている。
【0136】所定時間の浸漬によって凝着物(Cu(II)(hfac)2)が薬液MQに溶け込んだなら、溶液取出口170より溶液を外に取り出して処理することにより、Cu(II)(hfac)2をCu(I)hfacTMVSにリサイクルすることができる。
【0137】このトラップ装置でも、冷却および加温兼用の温調水循環機構が設けられている。ハウジング130の一側面に温調水導入口176および排出口178が取り付けられている。これらの温調水導入口176および排出口178は、ハウジング130の一部または全部の側璧の中に行き渡るようにして設けられている1系統または複数系統の温調水通路の始端および終端にそれぞれ接続されている。
【0138】トラップ運転時には所定の冷却温度に温調された水WQが循環供給され、凝着物(Cu(II)(hfac)2)の回収時には所定の加熱温度に温調された水WQが循環供給される。
【0139】このトラップ装置では、ハウジング130の底部に形成した薬液MQの溜まりの中にトラップ板146(148)を漬けて凝着物(Cu(II)(hfac)2)を溶解させるため、凝着物をほぼ完全に回収することができる。
【0140】また、上記した第3の実施例の低温トラップ装置と同様に、この実施例でも、各トラップ面をフッ素樹脂加工しているので、トラップ運転中は析出物が安定に保持され、回収処理中にはトラップ面が反応・劣化するおそれがなく、コンタミネーションの問題が生じない。
【0141】なお、回収作業のため脱落させた各トラップ板146(148)を再セットするには、上蓋132を外して支持棒152(154)と一緒にハウジング130の外に取り出し、支持棒152(154)に各トラップ板146(148)を組みつけてから、ハウジング130の中に戻す。
【0142】以上、好適な実施例について説明したが、本発明の技術思想の範囲内で種種の変形、変更が可能である。特に、上記した実施例では原料ガスをCu(I)hfacTMVSとしたが、他の有機銅化合物を原料ガスに用いて上記の減圧CVD装置により銅膜を形成することが可能である。また、本発明の処理装置、真空排気システムおよびトラップ装置は、銅の成膜処理以外にも種種の減圧CVDその他の微細加工にも適用可能である。
【0143】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の処理装置および真空排気システムによれば、減圧処理室から未反応の原料ガスや反応副生成物ガスを排気するための真空ポンプの安定稼動を保証するとともに、反応副生成物を効率良く回収して資源の有効利用およびランニングコストの低減をはかることができる。
【0144】また、本発明のトラップ装置によれば、処理室より排気された気体の中から未反応の原料ガスのみを選択的に、かつ確実にトラップすることができる。また、本発明のトラップ装置によれば、トラップした有機化合物を効率良く回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による減圧CVD装置の全体構成を示す図である。
【図2】Cu(II)(hfac)2の蒸気圧曲線を示す図である。
【図3】実施例においてトラップ装置を並列接続する構成例を示す図である。
【図4】第1の実施例によるトラップ装置の構成を示す縦断面図である。
【図5】第2の実施例によるトラップ装置の構成を示す縦断面図である。
【図6】第2の実施例のトラップ装置におけるトラップ板の構成を示す平面図である。
【図7】第3の実施例によるトラップ装置の構成を示す縦断面図である。
【図8】第3の実施例によるトラップ装置の構成を示す上面図である。
【図9】第3の実施例のトラップ装置におけるトラップ板の配置構成を示す横断面図である。
【図10】第4の実施例によるトラップ装置の構成を示す縦断面図である。
【図11】第4の実施例のトラップ装置におけるトラップ板および支持部材の構成を示す平面図である。
【図12】第4の実施例によるトラップ装置の構成を示す上面図である。
【図13】第4の実施例によるトラップ装置内の回収作業時の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 処理室
12 原料ガス供給部
14 真空排気部
16 載置台
24 ガス供給管
26 真空ポンプ
28 高温トラップ装置
30 低温トラップ装置
34,36,38 排気管
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体デバイス製造等の微細加工でガスを扱う装置に係り、より詳細には減圧CVD装置で代表される化学反応方式の処理装置ならびにこの種処理装置に使用可能な真空排気システムおよびトラップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】今日の半導体デバイスでは多層配線構造が一般化しているが、高密度化に伴い異なる金属配線層間のコンタクト孔もより微小化を求められ、そのアスペクト比(=孔の深さ/開口幅)が増大している。また、チップ内の個々の半導体素子およびデバイス全体の高速化に伴い、コンタクト孔への埋め込み分を含めて配線層には抵抗のより低い材料が要求されている。
【0003】このような微小化および低抵抗化の要求に応えるものとして、金属配線に従来一般のアルミニウムに代えて銅を金属配線材料とし、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法によって銅膜を作成する技術が検討されている。
【0004】CVD法によって銅膜を形成するための原料は、一般に有機銅化合物であり、中でもCu(I)hfacTMVSが注目されている。
【0005】Cu(I)hfacTMVSは、常温で低粘度の液体であり、蒸気圧も60゜Cで1Torrと適当であるため、液体供給系+気化器の構成を用いて気化し、原料ガスとして反応室または処理室へ供給することが比較的容易である。また、少なくとも70゜C以上で分解が進行するので、処理室内では190゜C近辺の比較的低温でも製造上問題のない成膜速度で被処理基板上に銅膜を形成することができる。
【0006】有機銅化合物としては、他にも、βジケドナト化合物たとえばCu(II)(hfac)2 やシクロペンタジエニル化合物たとえばCpCuTEP等が知られている。しかし、これらのいずれも常温で固体であるため、ガスの状態で処理室へ供給するのが難しい。さらに、Cu(II)(hfac)2は分解に350゜C以上の高い温度を必要とし、CpCuTEPは蒸気圧が80゜Cで0.01 Torrと非常に低く成膜時に十分な分圧を得にくいという難点がある。
【0007】これらの他の有機銅化合物と比較して、Cu(I)hfacTMVSは、上記したように液体供給系+気化器の構成を用いて気化し、処理室へ容易に供給できる点と、低温成膜が可能である点で、有利である。
【0008】通常、銅膜を形成するためのCVDとして、減圧CVDが採用される。真空ポンプによって、CVD処理室は所定の圧力に減圧されるとともに、未反応の原料ガスや反応副生成物ガス等は処理室から排気される。この種の真空ポンプとしては、油回転ポンプ等のウエット系は油を被排気室(処理室)へ逆拡散させて汚染ないし歩留まり低下を来すおそれがあることから、そのような問題のないドライポンプが主流になってきている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、気化されたCu(I)hfacTMVSは凝結の温度と分解の温度が近いという特性を有しているが、この特性が減圧CVD用の真空排気システムでは問題となっている。
【0010】真空ポンプ内の温度が低いと、処理室から送られてきた未反応のCu(I)hfacTMVSがポンプ内で凝結して各部、特に回転系に対して障害物となり、著しい場合は回転系を破損することがある。
【0011】そのような凝結を避けるために、通常採られる方法はポンプ内を加温することである。しかし、真空ポンプのように複雑な構造体では、各部を均一な温度に保持することは殆ど不可能で、温度分布にばらつきが生じるのは必然であり、相対的に温度が高い部位ではCu(I)hfacTMVSの分解が進行し、金属銅が析出してしまうおそれがある。これを避けようとして、温度を低めに設定すると、今度は相対的に温度の低い部位で上記のような凝結が生じてしまう。
【0012】つまり、原料ガスにCu(I)hfacTMVSを用いる減圧CVDにおいては、真空ポンプ内に引き込まれた未反応Cu(I)hfacTMVSの凝結および分解を同時に抑制することは極めて困難である。
【0013】また、このCVDでは、Cu(I)hfacTMVSがCu(0)とCu(II)(hfac)2とに分解し、反応生成物のCu(0)は銅膜形成に用いられるものの、原料に含まれるCu原子の50%を含む反応副生成物Cu(II)(hfac)2は廃棄処分されており、資源の利用効率が低かった。
【0014】本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、減圧処理室から未反応の原料ガスや反応副生成物ガスを排気するための真空ポンプの安定稼動を保証するとともに、反応副生成物を効率良く回収して資源の有効利用およびランニングコストの低減をはかるようにした処理装置および真空排気システムを提供することを目的とする。
【0015】本発明の別の目的は、原料ガスとしてCu(I)hfacTMVSを用いる減圧CVDにおいて、未反応のCu(I)hfacTMVSが真空ポンプに入るのを効率的かつ確実に阻止して、真空ポンプの安全性を保証し、さらには反応副生成物であるCu(II)(hfac)2を効率良く回収して資源の有効利用およびランニングコストの低減をはかるようにしたCVD装置用の真空排気システムを提供することにある。
【0016】本発明の他の目的は、処理室より排気された気体の中から未反応の原料ガスのみを選択的に、かつ確実に阻止できるようにしたトラップ装置を提供することにある。
【0017】本発明の他の目的は、トラップした有機化合物を効率良く回収できるようにしたトラップ装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の処理装置は、減圧された室内で原料ガスを反応させて、反応生成物を所定の処理に用いる処理室と、前記処理室から未反応の原料ガスおよび1種類または複数種類の反応副生成物ガスを含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするための真空ポンプと、前記処理室と前記真空ポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応の原料ガスのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物をトラップするための第1のトラップ装置と、前記真空ポンプの出側の排気路に設けられ、前記真空ポンプからの所定の反応副生成物ガスを凝縮させて、その反応副生成物をトラップするための第2のトラップ装置とを有する構成とした。
【0019】本発明の処理装置は、典型的には、有機銅化合物を含む原料ガスを反応させて、反応生成物である金属銅を被処理基板上に堆積させる減圧CVD処理装置として好適なものである。
【0020】本発明の減圧CVD装置用真空排気システムは、減圧された室内で原料ガスであるCu(I)hfacTMVSが下記の化学式(2)のように反応して反応生成物であるCu(0)が被処理基板上に堆積するようになされたCVD処理室から未反応のCu(I)hfacTMVSおよび反応副生成物ガスである気体状態のCu(II)(hfac)2を含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするためのドライポンプと、 2Cu(I)hfacTMVS→Cu(0)+Cu(II)(hfac)2 +2TMVS ‥‥‥‥(2)
前記処理室と前記ドライポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応のCu(I)hfacTMVSのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物であるCu(0)をトラップするための第1のトラップ装置と、前記ドライポンプの出側の排気路に設けられ、前記ドライポンプからの気体状態のCu(II)(hfac)2 を凝縮させて、Cu(II)(hfac)2 をトラップするための第2のトラップ装置とを有する構成とした。
【0021】本発明のCVD装置用真空排気システムにおいて、前記第1のトラップ装置内の反応温度は、未反応のCu(I)hfacTMVSのみを、かつその殆どを反応させるうえで、180〜300゜Cの範囲内であるのが好ましい。
【0022】また、前記第1のトラップ装置は、Cu(I)hfacTMVSを速やかに分解させ、かつ安定確実に堆積させるうえで、銅からなるトラップ部材または銅鍍金されたトラップ部材を有することが望ましい。
【0023】真空ポンプの前段で使用可能な本発明のトラップ装置は、所定のガス状物質を加熱して反応させ、反応生成物をトラップするためのトラップ装置であって、両端に開口部を有する筒状のハウジングと、両端にガス導入部およびガス排出部をそれぞれ有し、前記ハウジングの一方の開口部に前記ガス導入部を位置させるとともに他方の開口部に前記ガス排出部を位置させるように前記ハウジング内にいずれかの前記開口部を介して着脱可能に装着される筒状のトラップ本体と、前記トラップ本体のガス導入部とガス排出部との間のガス流路に配置され、前記ガス導入部より導入された前記ガス状物質と接触して、前記反応生成物を堆積させるためのトラップ部材と、前記トラップ部材を所定の温度に加熱するための加熱手段とを具備する構成とした。
【0024】このトラップ装置では、反応生成物を堆積させるためのトラップ部材を含むトラップ本体がハウジングに着脱可能に装着される構成になっている。前記加熱手段は、好ましくは前記トラップ本体の外周面と前記ハウジングの内周面との間に配設され、トラップ本体ないしトラップ本体を回りから加熱してよい。
【0025】真空ポンプの後段で使用可能な本発明のトラップ装置は、所定の有機ガスを凝結させて、凝結した有機化合物をトラップするためのトラップ装置であって、ガス導入口とガス排出口とを有し、前記ガス導入口と前記ガス排出口との間にガス通路を設けてなるハウジングと、前記ハウジング内で前記ガス通路に沿って配設され、前記ガス導入口より導入された前記有機ガスを凝着させるための凝着面を有するトラップ部材と、前記トラップ部材の凝着面の一部または全部に前記有機化合物を溶解させる薬液を供給するための薬液供給手段と、前記有機化合物を溶解させた薬液を回収するための薬液回収手段とを具備する構成とした。
【0026】このトラップ装置において、薬液による有機化合物の溶解を効率良く行うための好ましい形態は、前記トラップ部材が垂直方向に各々傾斜した凝着面を交互に反対側に向けるようにしてジグザク状に配置された複数のトラップ板を含み、前記薬液供給手段が最上部の前記トラップ板に前記薬液を与えるための薬液供給路を有し、前記薬液供給手段の薬液供給路より最上部のトラップ板に供給された前記薬液が高い方から低い方に順次各トラップ板を伝わって流れ落ちるような構成である。薬液の供給中に超音波振動子によって前記トラップ部材を振動させるのも効果的である。
【0027】また、薬液の使用効率を上げるために、前記薬液回収手段に、回収した前記薬液を前記薬液供給手段の薬液供給路に回送するための薬液回送手段を設けてもよい。
【0028】また、別の形態として、前記トラップ部材が垂直方向に所定の間隔を置いて配置される複数のトラップ板を含み、前記ハウジング内に前記複数のトラップ板をそれぞれの位置で着脱可能に支持するための支持部材が設けられ、前記ハウジング内に前記支持部材より外されて落下した前記複数のトラップ板を収容する液体貯留可能なトラップ板収集部が設けられ、前記薬液供給手段が前記トラップ板収集部に前記薬液を導くための薬液供給路を有し、前記トラップ板収集部で前記複数のトラップ板が前記薬液に浸されるような構成も好適である。
【0029】このトラップ装置では、有機化合物の凝着と溶解が順次行なわれる。トラップ部材は、凝着時には冷却を必要とし、溶解時には加温を必要とする。この冷却と加温を簡単かつ効率的に行うための好ましい形態は、前記トラップ部材に熱的に結合された媒体通路を設け、前記トラップ部材に前記有機ガスを凝着させる時は冷却用の媒体を前記媒体通路に流し、前記トラップ部材に凝着した前記有機化合物を前記薬液で溶解させる時は加温用の媒体を前記媒体通路に流す構成である。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、添付図を参照して本発明の実施例を説明する。
【0031】図1に、本発明の一実施例による減圧CVD装置の全体構成を模式的に示す。この減圧CVD装置は、減圧CVD法によって銅の成膜を行うための処理室10と、この処理室10に原料ガスとして有機銅化合物たとえばCu(I)hfacTMVSを供給するための原料ガス供給部12と、処理室10を真空引きして排気するための真空排気部14とで構成されている。
【0032】処理室10は、減圧可能な真空チャンバからなり、底部の中央に被処理基板たとえば半導体ウエハWを保持するための載置台16を設けている。この載置台16は、たとえば抵抗発熱体からなるヒータを内蔵しており、処理中は半導体ウエハWを所定の処理温度に加熱するようになっている。
【0033】処理室10の上部には、多数の通気孔18aを有する多孔板18が取付され、その上部にバッファ部20が設けられている。処理室10の壁の中または外側もしくは内側には温調用の媒体通路(図示せず)が設けられている。外部の温調装置(図示せず)より配管22を介して温調用の媒体たとえば水が循環供給され、処理室10の壁面が所定の温度に調節されるようになっている。
【0034】原料ガス供給部12は、原料のCu(I)hfacTMVSを液体状態で貯留する容器と、Cu(I)hfacTMVSを所定の温度(たとえは60゜C)および圧力(たとえば1Torr)で気化させる気化器とを有しており、気化したCu(I)hfacTMVSを水素あるいはAr,He等の非酸化性ガスからなるキャリアガスと一緒にガス供給管24を介して処理室10のバッファ部20に供給する。
【0035】なお、Cu(I)hfacTMVSの分解不安定性を抑制するために、さらにHhfacやTMVSを余分に加えた混合材料たとえばCu(I)hfacTMVS0.4%Hhfac2.5%TMVS「CupraSelect」(商品名)を原料ガスとしてもよい。
【0036】真空排気部14は、真空ポンプ26と、その前段および後段にそれぞれ設けられた高温トラップ装置28および低温トラップ装置30とで構成されている。処理室10の底面に形成された排気口32が、排気管34を介して高温トラップ装置28のガス導入口に接続されている。高温トラップ装置28のガス排出口が排気管36を介して真空ポンプ26のガス吸入口に接続され、真空ポンプ26のガス排出口が排気管38を介して低温トラップ装置30のガス導入口に接続されている。低温トラップ装置30のガス排出口は、排気管40を介して排気ダクトまたは除害装置等に接続されてよい。
【0037】真空ポンプ26は、ドライポンプからなり、処理室10の室内を所定の圧力に減圧し、処理室10から未反応の原料ガスおよび反応副生成物ガス等の気体を排気する。排気能力を高めるために、ドライポンプの前段に1段または複数段のメカニカルブースタポンプを設けることもできる。
【0038】高温トラップ装置28は、処理室10からの未反応のCu(I)hfacTMVSのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物である金属銅Cu(0)をトラップするように構成されている。したがって、真空ポンプ26には、反応副生成物ガスであるCu(II)(hfac)2やCu(I)hfacTMVSから一部分離したHhfac、TMVS等のガスだけが引き込まれ、Cu(I)hfacTMVSは実質的に流入しないようになっている。
【0039】低温トラップ装置30は、真空ポンプ26からの気体状態のCu(II)(hfac)2 を凝縮させて、Cu(II)(hfac)2 をトラップするように構成されている。これにより、原料に含まれるCu原子の50%を含む反応副生成物のCu(II)(hfac)2が低温トラップ装置30で収集または回収され、リサイクリングに供されるようになっている。
【0040】次に、この減圧CVD装置の作用を説明する。
【0041】処理室10のバッファ部20には、原料ガス供給部12よりガス供給管24を介してキャリアガスと一緒に原料ガスのCu(I)hfacTMVSが導入される。導入されたガスは、多孔板18の通気孔18を通って、均一な濃度および均一な流れで載置台16上の半導体ウエハWに吹き付けられる。
【0042】処理中、処理室10の室内は真空ポンプ26によって所定の圧力たとえば1Torrに減圧される。載置台16上で半導体ウエハWは、載置台に内蔵されている上記ヒータによって所定の反応温度たとえば190゜C近辺に加熱される。半導体ウエハWの表面に吹き付けられた原料ガスのCu(I)hfacTMVSは、ウエハ表面上で上記の温度および圧力の下で上記化学式(2)のように反応(分解)し、反応生成物であるCu(0)がウエハ表面に堆積する。処理室10の壁面は、上記の温調機構によりCu(I)hfacTMVSの凝着を防ぐ温度たとえば55゜C付近に保たれる。
【0043】処理室10内の上記反応で生成した気体または反応せずに残った気体は全て排気口32より真空排気部14側に排気される。特に、反応副生成物であるCu(II)(hfac)2、原料ガスのCu(I)hfacTMVSから一部分離したHhfacやTMVS、および未反応のCu(I)hfacTMVSが気体状態のまま排気口32から排気管34を通って高温トラップ装置28に導かれる。なお、必要に応じて排気管34も処理室10の壁面と同様に適当な温度たとえば55゜C付近に温調してよい。
【0044】高温トラップ装置28は、導入したガスと接触して、ガス中のCu(I)hfacTMVSのみを選択的に、かつその殆どを反応または分解させ、反応生成物のCu(0)を堆積または付着させるトラップ部材と、このトラップ部材を所定の反応温度に加熱するためのヒータとを備えている。
【0045】高温トラップ装置28において、この反応温度またはトラップ温度は180〜300゜Cの範囲内にあるのが望ましい。180゜C未満だと、流入したガスがトラップ部材を通過する際に上記化学式(2)の反応を完全に行なわせるのが難しくなり、Cu(I)hfacTMVSがわずかながら後段の真空ポンプ26側に抜けるおそれがある。また、300゜Cを超えると、反応の速度としては小さいもののCu(II)(hfac)2の分解が進行してしまい、後段の低温トラップ装置30で収集または回収できるCu(II)(hfac)2の量が減少するおそれがある。
【0046】この高温トラップ装置28では、トラップ部材を銅で構成するか、さもなければ銅鍍金を施した構成とするのが望ましい。その理由は、トラップ部材のトラップ面に銅以外の材質たとえば絶縁物が表出していると、上記化学式(2)の反応に潜伏(incubation)時間が生じ、トラップを使用し始めてしばらくの間はこの反応が進行せず、未反応のCu(I)hfacTMVSがトラップ部材を素通りして後段の真空ポンプ26に流入するおそれがあるためである。また、十分時間が経って、この反応が進行し、トラップ面に金属銅Cu(0)が析出したとしても、密着性よく堆積または付着することができず、いったん堆積した金属銅がトラップ面から剥がれて後段の真空ポンプ26に入り込み、ポンプ26にダメージを与えるおそれがある。このような金属銅の剥がれは、特に昇温、降温などの熱サイクル時に起こりやすく、トラップ面を構成する材料と、析出した金属銅との間で熱膨張の差が大きい場合に著しい。
【0047】高温トラップ装置28において、トラップ部材のトラップ面を最初から銅で構成しておくことで、上記化学式(2)の反応の潜伏時間をなくし、さらにはトラップ面の材質と析出した金属銅との熱膨張係数が一致しているために析出銅の剥がれを抑え、上記のような真空ポンプ26へのダメージ等の問題をなくすことができる。
【0048】高温トラップ装置28でCu(I)hfacTMVSの全部または殆どを除去された排気ガスは、排気管36を通って真空ポンプ26に吸入される。この吸入される排気ガスの主たる成分はCu(II)(hfac)2であり、その中の大部分は処理室10内で、残りは高温トラップ装置28内でそれぞれ発生したものである。
【0049】上記したように真空ポンプ26はドライポンプからなり、ポンプ内の各部間で温度分布および圧力分布にある程度のばらつきがある。ドライポンプは、吸入した気体を排出口側へ押しやるようにして排気するため、その気体圧縮によりポンプ出側の方が入側よりも高温度、高圧力になる傾向がある。しかし、通常のドライポンプおよびメカニカルブースターポンプは、入側から出側までCu(II)(hfac)2を気体状態に維持できるような温度・圧力分布を有している。
【0050】図2に、Cu(II)(hfac)2の蒸気圧曲線を示す。本実施例では、真空ポンプ26内の温度・圧力分布をたとえば60゜C(0.1Torr)〜150゜C(5Torr)の範囲内に収めている。したがって、真空ポンプ26内でCu(II)(hfac)2が凝縮することはない。また、Cu(II)(hfac)2の分解温度が350゜C以上であるのに対し、ドライポンプやメカニカルブースターポンプの内部温度は通常300゜C以上になることは無いため、真空ポンプ26内でCu(II)(hfac)2が分解するおそれはない。
【0051】また、HhfacやTMVSは、蒸気圧がさらに高いうえ、分解や他に可能な反応の温度もかなり高いため、これらの排気物質もポンプ入側から出側まで(正確には真空排気部14を通じて)気体状態を維持できる。
【0052】以上のようにして、真空ポンプ26に導入された排気ガスの殆どが、そのままの状態(気体状態)でポンプ内のガス流路を通り抜けてポンプ排気口から排出される。
【0053】真空ポンプ26より排出された排気ガスは、排気管38を通って低温トラップ装置30に導入される。図2に示すように、Cu(II)(hfac)2は、温度が60゜Cでは、約1Torr以上で(10Torr以上では確実に)固体状態になる。真空ポンプ26の排気側の圧力は少なくとも10Torr以上(通常は100Torr以上)はあるから、低温トラップ装置30ではトラップ部材の温度を60゜C以下にすることで、Cu(II)(hfac)2を凝縮させてトラップすることが可能である。
【0054】低温トラップ装置30における凝縮温度またはトラップ温度は、15〜60゜Cの範囲内にあることが望ましい。図2の蒸気圧曲線から明らかなように、Cu(II)(hfac)2は低温、高圧になるほど固体になりやすく、前段のポンプ出側の圧力範囲で効率の良いCu(II)(hfac)2の収集を行うには、トラップ温度が60゜C以下であることが要求される。しかし、15゜Cを超えて冷却した場合は、たとえばトラップ交換等のメンテナンスで冷却を止めると、室温まで昇温したときに気化が進んで、トラップ内部が加圧状態になり、著しい場合には内容物が噴出するおそれがある。したがって、冷却の下限温度を室温程度(15゜C)とするのが好ましい。
【0055】低温トラップ装置30において、トラップ部材の材質(たとえばステンレス)がトラップ面に表出していると、そこにCu(II)(hfac)2を凝着させて保存する際、あるいは回収のため溶媒または薬液を供給した際に、トラップ表面が反応、劣化して、コンタミネーションを起こすおそれがある。この問題は、トラップ部材のトラップ面をフッ素樹脂で被覆することで解決できる。
【0056】上記したように、本実施例の減圧CVD装置では、処理室10内で原料ガスのCu(I)hfacTMVSが半導体ウエハW上で上記化学式(2)のように反応(分解)し、反応生成物であるCu(0)がウエハ表面に堆積し、銅膜が形成される。反応副生成物であるCu(II)(hfac)2や未反応のCu(I)hfacTMVSは、真空排気部14へ排気される。
【0057】真空排気部14において、処理室10からの排気ガスは、先ず高温トラップ装置28に導入される。高温トラップ装置28では、所定の温度でCu(I)hfacTMVSだけが、かつその殆どが反応し、析出した金属銅Cu(0)はトラップされる。高温トラップ装置28内のトラップ部材が銅で構成され、または予め銅鍍金を施されることで、Cu(I)hfacTMVSの熱分解および金属銅の堆積はトラップの使用開始時より速やかに行なわれ、また、析出した金属銅の密着性も良好であり、剥がれ等の問題は生じない。
【0058】高温トラップ装置28からの排気ガスは、ドライポンプからなる真空ポンプ26に吸入される。この吸入される排気ガスは、Cu(II)(hfac)2やHhfac、TMVS等の混合ガスであり、Cu(I)hfacTMVSを実質的に含んでいない。したがって、真空ポンプ26内にCu(I)hfacTMVSが流入することがないので、Cu(I)hfacTMVSの熱分解または凝縮によるポンプのダメージを十全に回避することができる。
【0059】真空ポンプ26に導入されたCu(II)(hfac)2やHhfac、TMVS等のガスは、ポンプ内部で熱分解することもなければ凝縮することもなく気体状態のまま排気される。
【0060】真空ポンプ26からの排気ガスは低温トラップ装置30に導入される。低温トラップ装置30では、所定の温度および圧力の下で、Cu(II)(hfac)2が凝縮してトラップ部材にトラップされる。トラップ部材のトラップ面にフッ素樹脂をコーティングすることで、トラップ側からのコンタミネーションを防止し、純度の高い状態でCu(II)(hfac)2を回収できる。回収したCu(II)(hfac)2からCu(I)hfacTMVSを再生することは比較的容易であり、原料ガスのランニングコストを低減することができる。
【0061】なお、図3に示すように、真空排気部14の排気路14aに対して、複数台たとえば各2台の高温トラップ装置28または低温トラップ装置30をバルブ42〜48を介して並列に接続し、片側のトラップ装置を選択的に使用する構成としてもよい。かかる並列トラップ構成によれば、成膜作業を止めることなく、トラップ交換を行える。
【0062】次に、図4〜図13につき、上記実施例の減圧CVD装置における高温トラップ装置28または低温トラップ30として使用可能な本発明のトラップ装置の実施例を説明する。
【0063】図4に、高温トラップ装置28として好適な第1の実施例によるトラップ装置の構成を示す。
【0064】このトラップ装置において、ハウジング50は、たとえばシリコンゴム等の断熱材からなり、筒体たとえば四角筒体に形成されている。ハウジング50の一端部(図の右端部)は径方向内側または中心側に折曲して側壁部50aを形成し、この側壁部50aにガス吸入口用の開口が設けられている。ハウジング50の他端部50bは、側壁部を持たず、後述するようにガス排出口だけでなくトラップ本体装入/取出し口をも与えるように大きな径で開口している。
【0065】ハウジング50内には、それより一回り小さい同様の四角筒体に形成された熱伝導体たとえばステンレス鋼からなるヒータ本体52が収容されている。ヒータ本体52の一端部(右端部)52aは、ハウジング50の側壁部50aの開口より軸方向外側に円筒状に突出し、ガス導入口および配管コネクタ部を構成している。ヒータ本体52の他端部52bは、ハウジング50の他端部50bと同様に、側壁部を持たず大きな径で開口している。
【0066】ヒータ本体52の胴部には、たとえばタングステン線からなる電熱コイル54が埋め込まれている。この電熱コイル54は、電気コード55を介してヒータ電源回路(図示せず)に接続されている。
【0067】ヒータ本体52の内側には、それより一回り小さい同様の四角筒体に形成された銅板からなるトラップ本体56がハウジング50およびヒータ本体52の他端部の開口を介して着脱可能に収容または装着される。トラップ本体56の一端部(右端部)56aは、円筒状に突出してガス導入部を形成し、ヒータ本体52の突出部52a内にOリングからなるシール部材58を介して挿入される。トラップ本体56の他端部56bは、ガス排出部を形成し、外側からトラップ内部(後述する銅の堆積状況)がよく見えるように大きな径で開口している。
【0068】トラップ本体56の内側には、相対向する一対の内壁面からそれぞれ軸方向に適当な間隔を空けて交互に他方の内壁面に向かってその手前まで延在するフィン状の銅板からなるトラップ板60が着脱可能に取り付けられている。
【0069】各トラップ板60の両側縁部はトラップ本体56の内壁に隙間無く密着または接続している。したがって、ガス導入部56aよりトラップ本体56内に導入されたガスは、入側から出側に向かって順次各トラップ板60に接触しながら各トラップ板60と対向するトラップ本体56の内壁面との間、および相隣接するトラップ板60,60の間に形成されているラビリンス構造のガス流路62を通ってガス排出部56b側に抜ける。その際、後述するように、各トラップ板60の表面およびトラップ本体56の内壁面(トラップ面)に接触したガス中の所定の物質(本実施例ではCu(I)hfacTMVS)が反応または分解して、反応生成物(金属銅)がトラップ面上に堆積するようになっている。
【0070】トラップ本体56には、温度センサたとえば熱電対64が着脱可能に取り付けられる。この熱電対64の出力端子は、センス線または電気ケーブル66を介して上記ヒータ電源回路の制御部に接続されている。ヒータ電源回路より供給される電力によってヒータ本体52内蔵の電熱コイル54が発熱し、その熱がヒータ本体52からトラップ本体56に伝わり、トラップ本体56ないし各トラップ板60が加熱される。該ヒータ制御部は、熱電対64で検出されるトラップ本体56ないし各トラップ板60の温度が所定の反応温度またはトラップ温度に一致するように、抵抗発熱体54に対する供給電力を制御するようになっている。
【0071】トラップ本体56の他端部56bには、たとえばステンレス鋼からなり円筒状の突出部を有するフランジ68がたとえばOリングからなるシール部材70を介してボルト(図示せず)等により着脱可能に取り付けられる。フランジ68の円筒部はガス排出口を構成する。さらに、フランジ68の外側には、断熱材たとえばシリコンゴムからなる側壁板72が着脱可能に取り付けられる。
【0072】このトラップ装置を上記実施例の減圧CVD装置における高温トラップ装置28として用いる場合、トラップ本体56ないし各トラップ板60は上記したように180〜300゜Cの範囲内たとえば200゜Cの温度に加熱される。これにより、処理室10より送られてきた排気ガスがトラップ本体56内のガス流路62を通過する際に、排気ガスに含まれているCu(I)hfacTMVSがトラップ板60の表面およびトラップ本体56の内壁面(トラップ面)に接触して上記化学式(2)のように反応(分解)し、反応生成物の金属銅Cu(0)が該トラップ面上に堆積または凝着する。トラップ本体56内のガス流路62はラビリンス構造であるため、Cu(I)hfacTMVSとトラップ面との接触面積または接触時間は十分大きく、ガス排出口に到達するまでにCu(I)hfacTMVSは殆ど残らず反応する。
【0073】また、トラップ面が銅で構成されているため、このトラップ装置の使用開始時からCu(I)hfacTMVSの反応および金属銅の堆積が潜伏時間なしに速やかに行なわれるとともに、析出した金属銅はトラップ面に良好に密着し、剥がれ難くなっている。
【0074】また、トラップ本体56およびトラップ板60がすべて銅で構成されているので、熱伝導性にもすぐれており、電熱コイル54ないしヒータ本体52からの熱が上記反応に効率良く使用されるようになっている。
【0075】そして、側壁板72およびフランジ68を取り外すことで、ハウジング50およびヒータ本体52の片側の開口部を介してトラップ本体56およびトラップ板60を簡単に抜き出せるだけでなく、金属銅の堆積または付着状況を目視で監視ないし確認できるため、トラップ本体56またはトラップ板60の交換時機を適確に判断することができ、メンテナンス性にすぐれている。
【0076】ガス導入口および排出口をシールするOリング58、70は、取り外しや組立てに便利である。特に、ガス導入口のOリング58によって、ガス導入口に導入されたガス、特にトラップ対象のCu(I)hfacTMVSがトラップ本体56とヒータ部材52との隙間72に入り込まない、したがってトラップ本体56の外周面にトラップ対象のCu(I)hfacTMVSが接触ないし堆積しないようになっている。一方、ガス排出部側では、ガス中にもはやCu(I)hfacTMVSが含まれてはいないため、隙間72をガス流路62と連通させる構成とし、トラップ本体56の挿脱を容易に行えるようにしている。
【0077】トラップ本体56またはトラップ板60を銅以外の材質たとえばステンレス鋼で構成し、そのトラップ面に銅鍍金を施す構成も可能である。その場合、一度使い尽くされたトラップ本体56またはトラップ板60において、トラップ面に付着した堆積銅とともに鍍金銅も除去し、表出したステンレス鋼に再度鍍金銅を施すことで、トラップ部材の再使用が可能である。なお、上記のような銅製のトラップ部材の場合は、付着可能な最大限まで銅を堆積させ、使用後は銅廃材として再加工に供することができる。
【0078】図5に、第2の実施例によるトラップ装置の構成を示す。このトラップ装置は上記第1実施例のトラップ装置においてトラップ本体56内の構成を変形したものである。他の各部は上記第1実施例のものと同様の構成および機能を有している。
【0079】この第2の実施例では、トラップ本体56の四方の内壁面にそれぞれ四辺の端部を密着または接続するようにして複数のトラップ板74が軸方向に所定の間隔を置いて配置される。トラップ板間隔は、入口側で最も大きく、出口側に向かって次第に小さくなるように構成されている。
【0080】図6に示すように、各トラップ板74には全面に亘って多数の通気孔74aが設けられており、通気孔74aの穴径は入口側で最も大きく、出口側にいくほど次第に小さくなるように形成されている。なお、通気孔74aの位置および個数が各トラップ板74で異なっていてもよい。
【0081】トラップ本体56内でガス導入部に最も近いトラップ板74’は、図示のように断面形状がほぼ菱形に形成されている。このトラップ板74’においては、内側の一対の斜面部74b’にのみ通気孔74aが形成され、外側の一対の斜面部74c’には通気孔74aが形成されていない。
【0082】ガス導入口より導入されたガスは、最初にこのトラップ板74’で区画されたバッファ室に入り、斜面部74b’の通気孔74aを通って斜め外方向に抜けてから後段の平行トラップ板74を順次通り抜け、最後にガス排出口側に出るようになっている。その際、各トラップ板74の表面およびトラップ本体56の内壁面(トラップ面)に接触したガス中の所定の物質(本実施例ではCu(I)hfacTMVS)が反応または分解して、反応生成物(金属銅)がトラップ面上に堆積するようになっている。
【0083】この実施例では、トラップ板74’によるバッファ効果と斜め拡散効果により、ガスのガス導入口側への跳ね返りや乱流を抑制し、トラップ本体56外側のヒータ本体54や配管(図示せず)等に金属銅が堆積付着しないようにしている。
【0084】また、ガス導入口に近いほどトラップ板74の通気孔74aの穴径を大きくするとともにトラップ板間隔を大きくし、ガス排出口に近くなるほど通気孔74aの穴径とトラップ板間隔をそれぞれ小さくしている。これにより、未反応ガスが最も多い入口側ではガスがスムースに内奥へ送られ、出口側にいくほど(未反応ガスが少なくなるほど)ガスがトラップ面に接触する度合いが増大する。したがって、それぞれのトラップ板74における銅の付着に偏りがなく、出口付近の銅堆積量が少ない段階で入口側のトラップ板74の通気穴74aが堆積物(金属銅)で閉塞するようなこともない。
【0085】その他、上記第1実施例における種種の作用効果または利点がこの第2の実施例でも同様に得られる。
【0086】図7〜図9に、低温トラップ装置30として好適な第3の実施例によるトラップ装置の構成を示す。図7は縦断面図、図8は上面図、図9は横断面図である。
【0087】このトラップ装置のハウジング80は、熱伝導性の材質たとえばステンレス鋼からなり、有底四角筒状に形成されている。ハウジング80の上璧または蓋部81の中央部にガス導入口82が設けられ、底部の側壁にガス排出口84と薬液排出口86とが設けられている。
【0088】ハウジング80の四辺の側壁80a,80b,80c,80dのうち、相対向する一対の側璧80a,80cの内部には温調水通路88,90がそれぞれ形成されている(図9)。ハウジング80の蓋部81には、一方の側璧80a内の温調水通路88に接続する温調水導入口92と他方の側璧80c内の温調水通路90に接続する温調水排出口94とが設けられている(図8R>8)。両側の温調水通路88,90は、ハウジング80の上面に架設されたバイパス管96を介してつながっている(図8)。
【0089】温調水供給部(図示せず)より所定の温度に水温を調整された水WQが配管(図示せず)を介して温調水導入口92に導入される。導入された温調水WQは、側璧80a内の温調水通路88→バイパス管96→側璧80c内の温調水通路90の流路を流れたのち、温調水排出口94より排出され、そこから配管(図示せず)を介して温調水供給部に戻る。このような温調水WQの循環供給により、ハウジング80およびその内部の後述するトラップ部材が温調水WQの水温に近い温度に冷却または加温されるようになっている。
【0090】図7に示すように、ハウジング80の中には、ガス導入口82とガス排出口84との間にジグザグ状のガス流路98が設けられている。この流路98は、垂直方向にジグザク状に配置された2列のトラップ板[100(1),100(2),‥‥,100(m)]、[102(1),102(2),‥‥,102(n)]によって形成されている。
【0091】一方(図では左側)の列においては、トラップ板100(1)100(2),‥‥,100(m)が垂直方向に各々傾斜したトラップ面を交互に反対側に向けるようにしてジグザグ状に配置されている。
【0092】より詳細には、最上部のトラップ板100(1)は、ハウジング80の側壁80bの内壁面から斜め下向きにハウジング中心部を幾らか越える位置まで延在する。2番目のトラップ板100(2)は、最上部のトラップ板100(1)の下端と少し隙間104を空けて反対側の側壁80dに寄った位置から斜め下向きに側壁80bの内壁面の少し手前まで延在する。トラップ板100(2)と側壁80bとの間には隙間106が形成される。3番目のトラップ板100(3)は、2番目のトラップ板100(2)の下端と少し隙間108を空けてハウジング80の側壁80bの内壁面から最上部のトラップ板100(1)と同様に斜め下向きにハウジング中心部を幾らか越える位置まで延在する。以下、下段のトラップ板100(4),100(5),‥‥においても同様の配置パターンが繰り返される。
【0093】他方(右側)の列においては、左側の列と高さ位置をずらして上記と同様のパターンで、トラップ板[102(1),102(2),‥‥,102(n)が垂直方向に各々傾斜したトラップ面を交互に反対側に向けるようにしてジグザグ状に配置されている。これにより、両側トラップ板列の間にジグザグ状のガス流路98が形成されている。なお、各トラップ板100,102は、ハウジング80の側壁80a、80cとは密着または接続している(図9)。
【0094】ハウジング80の底部には、両側トラップ板列に沿って降りてきたガスを全て排出口まで案内するためのトラップ板110が設けられている。この底部トラップ板110は、ハウジング80の全ての側壁80a、80b、80c、80dに密着または接続している。
【0095】各トラップ板100,102、110は、熱伝導率の高い材質たとえばアルミニウムからなり、その表面がフッ素樹脂加工されている。
【0096】このトラップ装置では、トラップ板100,102、110に凝着した析出物(本実施例ではCu(II)(hfac)2)を次のような機構によってハウジング80内で回収できるようになっている。
【0097】ハウジング80の上蓋部81には、凝着物(Cu(II)(hfac)2)を溶解させる薬液(たとえばアセトン)MQを導入するための薬液導入口112が取り付けられており、さらに、その上方に薬液投入口111が設けられている。そして、上蓋部81の内部には薬液導入口112とハウジング80の両側璧80b,80dの内壁面の上端にそれぞれ形成されたスリット状の薬液吐出口114,116とをむすぶ薬液通路118,120,122が設けられている。薬液通路118は,薬液導入口112から斜め下向きに扇状に広がって薬液吐出口116に至る。薬液通路122は,ガス導入口82を挟んで薬液導入口112と反対側の位置から斜め下向きに扇状に広がって薬液吐出口114に達する。薬液通路120は、ガス導入口82を迂回するようにして薬液導入口112と薬液通路122とを連絡する。
【0098】薬液MQは、薬液投入口111より注入される。薬液投入口111は、通常は蓋で密閉されている。
【0099】薬液導入口112に薬液MQが投入されると、導入された薬液の一部は薬液通路118側に分配され、残りは薬液通路120を通って薬液通路122側に分配される。
【0100】右側の薬液通路118に分配された薬液MQは、右側の薬液吐出口116より側壁80dの壁伝いに落ちて、右側最上段のトラップ板102(1)の上端部に供給される。
【0101】図7で点線の矢印で示すように、トラップ板102(1)の上端部に供給された薬液MQは、トラップ板102(1)の上面を伝って流れ落ち、トラップ板102(1)の下端に達すると、そこから隙間104を介して2番目のトラップ板102(2)の上端部に落下し、やはりトラップ板102(2)の上面を伝って流れ落ち、トラップ板102(2)の下端に達すると、そこから隙間106,108を介して3番目のトラップ板102(3)の上端部に落下し、以下上記と同様の流れ方で下段のトラップ板102(4),トラップ板102(5),‥‥を順次通過する。そして、薬液MQは、最後に底部トラップ板110に落下し、このトラップ板110から薬液排出口86を通って薬液タンク124に回収される。
【0102】このように、最上部のトラップ板102(1)に供給された薬液MQが、高い方から低い方に順次各トラップ板102(1),102(2),‥‥,102(n),110を伝わって流れ落ち、薬液排出口86を通って薬液タンク124に回収されるようになっている。
【0103】左側の薬液通路122に分配された薬液MQは、左側の薬液吐出口114より側壁80bの壁伝いに落ちて、左側最上段のトラップ板100(1)の上端部に供給される。図7で点線の矢印で示すように、左側のトラップ板列においても、薬液MQは上記と同様の流れ方で高い方から低い方に順次各トラップ板100(1),100(2),‥‥,100(m),110を伝わって流れ落ち、薬液排出口86を通って薬液タンク124に回収されるようになっている。
【0104】なお、図9に示すように、各トラップ板100,102には適当な部位に超音波振動子126が取り付けられている。上記のように薬液MQを供給する時に、各超音波振動子126が作動して各トラップ板100,102を振動させるようになっている。なお、底部トラップ板110にも同様の超音波振動子を取り付けることができる。
【0105】このトラップ装置では、薬液タンク124にポンプ(図示せず)を設け、このポンプの出口を配管128を介して薬液導入口112に接続している。薬液タンク124に貯蔵または回収された薬液MQをポンプで配管128を介して薬液導入口112に送り込み、薬液MQを循環させるようにしている。
【0106】次に、このトラップ装置を図1の減圧CVD装置における低温トラップ装置30として用いる場合の作用を説明する。
【0107】トラップとして運転する間は、温調水供給部より所定の冷却温度たとえば25゜Cで温調水CWが温調水導入口92に供給される。この温調された冷却水CWがハウジング80の両側璧80a,80c内の温調水通路88、90を流れることで、ハウジング80の両側璧80a,80cに密着または接続している各トラップ板100,102は約25゜Cの温度に冷やされ、かつこの温度に維持される。
【0108】ガス導入口82には、真空ポンプ26からの排気ガスが導入される。上記したように、この排気ガスは、トラップ対象である反応副生物のCu(II)(hfac)2)を含んでいる。導入されたガスの大部分は、両側のトラップ板[100(1),100(2),‥‥,100(m)]、[102(1),102(2),‥‥,102(n)]の内側に形成されているジグザグ状のガス流路98を通ってハウジング底部の排気口84側に抜ける。ここで、各トラップ板において、トラップ本体の中央部に向いていてガス流路98に面している面をおもて面(主トラップ面)、その裏側の面を裏面(副トラップ面)とする。
【0109】上記のようにしてガス流路98を流れる際に、ガスは、コンダクタンスの低いガス流路98内で圧縮されながら各トラップ板100,102,110のおもて面(主トラップ面)に接触する。これにより、ガス中のCu(II)(hfac)2が上記冷却温度(約25゜C)で冷やされて凝縮し、析出した固体のCu(II)(hfac)2はトラップ面上に凝着または付着する。
【0110】ここで、トラップ板100,102,110の中では、ガス導入口82に近いほどCu(II)(hfac)2の凝着量は多くなる傾向があり、近接した高さ位置では奇数番目のトラップ板(たとえば102(3))の方が偶数番目のトラップ板(たとえば100(2))よりも凝着量は多くなる傾向がある。つまり、奇数番目のトラップ板(102(3))のおもて面(主トラップ面)は上向きになっているため、上方の入口から流れてくるガスと衝突または接触する度合いが大きく、それだけCu(II)(hfac)2が凝着しやすい。これに対して、奇数番目のトラップ板(100(2))のおもて面(主トラップ面)は下向きになっているため、上方から流れてくるガスと衝突または接触する度合いが小さく、Cu(II)(hfac)2が凝着しにくい。
【0111】なお、一部のガスは、隙間104,106,108を通って両側トラップ板100,102の裏側を回りながら、排気口84側に抜ける。その際、比較的少ない量ではあるが、ガス中のCu(II)(hfac)2が各トラップ板100,102の裏面(副トラップ面)に接触して凝着する。
【0112】このトラップ装置では、各トラップ板100,102,110のトラップ面がフッ素樹脂で被覆されているので、析出したCu(II)(hfac)2はトラップ面上で安全かつ安定に保持される。
【0113】上記のようなトラップ運転によりCu(II)(hfac)2の凝着量が相当レベルに達した頃を見計らって、Cu(II)(hfac)2の回収作業を行ってよい。
【0114】回収作業時には、温調水供給部より所定の加熱温度たとえば50゜Cで温調水CWを温調水導入口92に供給する。この温調された加熱水WQがハウジング80の両側璧80a,80c内の温調水通路88、90を流れることで、ハウジング80の両側璧80a,80cに密着または接続している各トラップ板100,102は約50゜Cの温度に暖められる。
【0115】そして、薬液タンク124のポンプを稼動させ、上記したような薬液供給機構を働かせる。これにより、薬液MQが、所定回数循環して高い方から低い方に順次各段のトラップ板[100(1),100(2),‥‥,100(m)]、[102(1),102(2),‥‥,102(n)]、110を伝わって流れ落ち、各トラップ板100,102,110のトラップ面に付着しているCu(II)(hfac)2を溶解しながら洗い落とす。
【0116】本実施例では、上記のように各トラップ板100,102を所定温度(約50゜C)に加温するとともに、超音波振動子126によって各トラップ板100,102,110を振動させることにより、Cu(II)(hfac)2の溶解を効率良く行うことができる。
【0117】また、薬液MQを循環させることにより、比較的少量の薬液MQでCu(II)(hfac)2の溶解または回収を行うことができる。
【0118】また、各トラップ板100,102,110のトラップ面をフッ素樹脂加工しているので、回収処理中にトラップ面が反応・劣化するおそれがなく、コンタミネーションの問題が生じない。
【0119】なお、上記の薬液供給において、薬液MQは、より詳細には、奇数番目の各トラップ板については内側または表側の主トラップ面を流れ落ち、偶数番目の各トラップ板については裏側の副トラップ面を流れ落ちる。つまり、奇数番目の各トラップ板の裏側の副トラップ面と偶数番目の各トラップ板の内側の主トラップ面とには薬液MQは行き渡らない。しかし、奇数番目の各トラップ板の裏側の副トラップ面における凝着量は非常に少ない。また、偶数番目の各トラップ板の内側の主トラップ面においても、上記したようにガスとの接触度合いが比較的小さいので、凝着量は比較的少ない。
【0120】最も多く凝着する部分は奇数番目のトラップ板100(1),100(3),‥‥、102(1),102(3),‥‥のおもて面(主トラップ面)である。これらのトラップ面には薬液MQが十分行き渡って供給されるので、凝着したCu(II)(hfac)2の大部分を回収することができる。
【0121】タンク124のポンプを止めて薬液循環供給を終了させると、トラップ板100,102,110より洗い落とされたCu(II)(hfac)2が薬液MQとともにタンク124内に収集され貯留される。このタンク124に収集した溶液を処理することにより、Cu(II)(hfac)2をCu(I)hfacTMVSにリサイクルすることができる。
【0122】図10〜図13に、低温トラップ装置30として好適な第4の実施例によるトラップ装置の構成を示す。図10および図13は装置の縦断面図、図11はトラップ板と支持部材の平面図、図12は装置の上面図である。
【0123】このトラップ装置のハウジング130は、熱伝導性の材質たとえばアルミニウムからなり、有底四角筒状に形成されている。ハウジング130の上蓋132にガス導入口134および排出口136が設けられている。
【0124】ハウジング130内の空間は中心部に垂設されたたとえばアルミニウムからなる隔壁138により一対(左右)の室140,142に分割され、これらの室140,142は隔壁140の下端とハウジング底面との間に形成された開口144を介して連通している。
【0125】右側の室140内には、熱伝導性の材質たとえばアルミニウムからなる複数のトラップ板146が垂直方向に所定の間隔を置いて配置される。トラップ板間隔は、入口側(最上部)で最も大きく、下流の底側に向かって次第に小さくなるように構成されている。
【0126】左側の室142内には、熱伝導性の材質たとえばアルミニウムからなる複数のトラップ板148が垂直方向に所定の間隔を置いて配置される。トラップ板間隔は、上流の底部側で最も大きく、下流の出口側に向かって次第に小さくなるように構成されている。もっとも、左側底部のトラップ板間隔は、それよりも上流側の右側最下位のトラップ板間隔と同程度か、それよりも小さい値に設定されている。
【0127】各トラップ板146,148には、図11に示すように、多数の通気孔150が形成されている。図5のトラップ装置におけるトラップ板74と同様に、通気孔150の孔径を入口側で最も大きくし、下流(出口側)にいくほど次第に小さくなるようにしてもよい。また、それぞれのトラップ板146,148における通気孔150の個数および位置を異ならせてもよい。
【0128】各トラップ板146,148の表面(トラップ面)にはフッ素樹脂加工が施されている。また、このトラップ装置では、ハウジング130の内壁面および隔壁138の表面もトラップ手段を構成するので、これらの璧面にもフッ素樹脂加工が施される。
【0129】ハウジング130内で、各トラップ板146(148)は一対の垂直支持棒152(154)に着脱可能に支持されている。図11に示すように、各トラップ板146(148)の相対向する一対の角隅部に垂直支持棒152(154)を遊挿させる大きさで楕円形の開口156(158)が形成されている。垂直支持棒152(154)には、各トラップ板146(148)の下面に対応する高さ位置に突起状の水平支持部160(162)が設けられている。図10の組立てた状態では、各水平支持部160(162)が楕円開口156(158)の短軸方向に向いて、各トラップ板146(148)を担持している。
【0130】各垂直支持棒152(154)は上蓋132を貫通してハウジング130の上面に突出しており、その突出部には操作つまみまたはレバー160(162)が取り付けられている。
【0131】各トラップ板146(148)に付着したCu(II)(hfac)2を回収するときは、この操作つまみまたはレバー160(162)を図12の矢印の方向に直角に回す。そうすると、ハウジング130内では各垂直支持棒152(154)の各水平支持部160(162)が楕円開口156(158)の長軸方向に向くことになり、各トラップ板146(148)が外れて脱落する。
【0132】図13に示すように、垂直支持棒152(154)から外れて脱落したトラップ板146(148)は、それぞれの室140,142の底部に積み重なる。
【0133】このトラップ装置では、ハウジング130内の隔壁138に沿って薬液が供給されるように上蓋132に薬液供給路164が設けられている。上蓋132には、さらに、この薬液供給路164に連通する薬液導入口166が設けられている。この薬液導入口166より薬液MQを供給すると、薬液MQは隔壁138上端の吐出口168より隔壁138に沿ってハウジング130の底部に導かれるようになっている。
【0134】ハウジング130の一側璧の下端部には溶液取出口170が設けられている。通常はこの溶液取出口170が閉められているので、上記のように薬液供給路164を介して供給された薬液MQはハウジング130の底部に溜まり、積層状態で収集されているトラップ板146(148)は薬液MQに浸される。
【0135】ハウジング130の底面には複数の箇所に凹所172が形成され、各凹所172の中に超音波振動子174が取り付けられている。上記のようにしてハウジング130の底でトラップ板146(148)を薬液MQに浸している間、それらの超音波振動子174が作動して積層状態のトラップ板146(148)に振動を与え、凝着物(Cu(II)(hfac)2)の溶解を促進するようにしている。
【0136】所定時間の浸漬によって凝着物(Cu(II)(hfac)2)が薬液MQに溶け込んだなら、溶液取出口170より溶液を外に取り出して処理することにより、Cu(II)(hfac)2をCu(I)hfacTMVSにリサイクルすることができる。
【0137】このトラップ装置でも、冷却および加温兼用の温調水循環機構が設けられている。ハウジング130の一側面に温調水導入口176および排出口178が取り付けられている。これらの温調水導入口176および排出口178は、ハウジング130の一部または全部の側璧の中に行き渡るようにして設けられている1系統または複数系統の温調水通路の始端および終端にそれぞれ接続されている。
【0138】トラップ運転時には所定の冷却温度に温調された水WQが循環供給され、凝着物(Cu(II)(hfac)2)の回収時には所定の加熱温度に温調された水WQが循環供給される。
【0139】このトラップ装置では、ハウジング130の底部に形成した薬液MQの溜まりの中にトラップ板146(148)を漬けて凝着物(Cu(II)(hfac)2)を溶解させるため、凝着物をほぼ完全に回収することができる。
【0140】また、上記した第3の実施例の低温トラップ装置と同様に、この実施例でも、各トラップ面をフッ素樹脂加工しているので、トラップ運転中は析出物が安定に保持され、回収処理中にはトラップ面が反応・劣化するおそれがなく、コンタミネーションの問題が生じない。
【0141】なお、回収作業のため脱落させた各トラップ板146(148)を再セットするには、上蓋132を外して支持棒152(154)と一緒にハウジング130の外に取り出し、支持棒152(154)に各トラップ板146(148)を組みつけてから、ハウジング130の中に戻す。
【0142】以上、好適な実施例について説明したが、本発明の技術思想の範囲内で種種の変形、変更が可能である。特に、上記した実施例では原料ガスをCu(I)hfacTMVSとしたが、他の有機銅化合物を原料ガスに用いて上記の減圧CVD装置により銅膜を形成することが可能である。また、本発明の処理装置、真空排気システムおよびトラップ装置は、銅の成膜処理以外にも種種の減圧CVDその他の微細加工にも適用可能である。
【0143】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の処理装置および真空排気システムによれば、減圧処理室から未反応の原料ガスや反応副生成物ガスを排気するための真空ポンプの安定稼動を保証するとともに、反応副生成物を効率良く回収して資源の有効利用およびランニングコストの低減をはかることができる。
【0144】また、本発明のトラップ装置によれば、処理室より排気された気体の中から未反応の原料ガスのみを選択的に、かつ確実にトラップすることができる。また、本発明のトラップ装置によれば、トラップした有機化合物を効率良く回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による減圧CVD装置の全体構成を示す図である。
【図2】Cu(II)(hfac)2の蒸気圧曲線を示す図である。
【図3】実施例においてトラップ装置を並列接続する構成例を示す図である。
【図4】第1の実施例によるトラップ装置の構成を示す縦断面図である。
【図5】第2の実施例によるトラップ装置の構成を示す縦断面図である。
【図6】第2の実施例のトラップ装置におけるトラップ板の構成を示す平面図である。
【図7】第3の実施例によるトラップ装置の構成を示す縦断面図である。
【図8】第3の実施例によるトラップ装置の構成を示す上面図である。
【図9】第3の実施例のトラップ装置におけるトラップ板の配置構成を示す横断面図である。
【図10】第4の実施例によるトラップ装置の構成を示す縦断面図である。
【図11】第4の実施例のトラップ装置におけるトラップ板および支持部材の構成を示す平面図である。
【図12】第4の実施例によるトラップ装置の構成を示す上面図である。
【図13】第4の実施例によるトラップ装置内の回収作業時の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 処理室
12 原料ガス供給部
14 真空排気部
16 載置台
24 ガス供給管
26 真空ポンプ
28 高温トラップ装置
30 低温トラップ装置
34,36,38 排気管
【特許請求の範囲】
【請求項1】 減圧された室内で原料ガスを反応させて、反応生成物を所定の処理に用いる処理室と、前記処理室から未反応の原料ガスおよび1種類または複数種類の反応副生成物ガスを含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするための真空ポンプと、前記処理室と前記真空ポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応の原料ガスのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物をトラップするための第1のトラップ装置と、前記真空ポンプの出側の排気路に設けられ、前記真空ポンプからの所定の反応副生成物ガスを凝縮させて、その反応副生成物をトラップするための第2のトラップ装置とを有する処理装置。
【請求項2】 減圧された室内で原料ガスが反応するようになされた処理室から未反応の原料ガスおよび1種類または複数種類の反応副生成物ガスを含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするための真空ポンプと、前記処理室と前記真空ポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応の原料ガスのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物をトラップするための第1のトラップ装置と、前記真空ポンプの出側の排気路に設けられ、前記真空ポンプからの所定の反応副生成物ガスを凝縮させて、その反応副生成物をトラップするための第2のトラップ装置とを有する処理装置用真空排気システム。
【請求項3】 減圧された室内で有機銅化合物を含む原料ガスを反応させて、反応生成物である金属銅を被処理基板上に堆積させるCVD処理室と、前記処理室から未反応の原料ガスおよび1種類または複数種類の反応副生成物ガスを含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするための真空ポンプと、前記処理室と前記真空ポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応の原料ガスのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物である金属銅をトラップするための第1のトラップ装置と、前記真空ポンプの出側の排気路に設けられ、前記真空ポンプからの所定の反応副生成物ガスを凝縮させて、その反応副生成物をトラップするための第2のトラップ装置とを有する減圧CVD装置。
【請求項4】 減圧された室内で原料ガスであるCu(I)hfacTMVSが下記の化学式(1)のように反応して反応生成物であるCu(0)が被処理基板上に堆積するようになされたCVD処理室から未反応のCu(I)hfacTMVSおよび反応副生成物ガスである気体状態のCu(II)(hfac)2を含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするためのドライポンプと、 2Cu(I)hfacTMVS→Cu(0)+Cu(II)(hfac)2 +2TMVS ‥‥‥‥(1)
前記処理室と前記ドライポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応のCu(I)hfacTMVSのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物であるCu(0)をトラップするための第1のトラップ装置と、前記ドライポンプの出側の排気路に設けられ、前記ドライポンプからの気体状態のCu(II)(hfac)2 を凝縮させて、Cu(II)(hfac)2 をトラップするための第2のトラップ装置とを有する減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項5】 前記第1のトラップ装置における反応温度が180〜300゜Cの範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項6】 前記第1のトラップ装置が、前記Cu(I)hfacTMVSと接触してCu(0)を堆積させるための銅からなるトラップ部材を有することを特徴とする請求項4または5に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項7】 前記第1のトラップ装置が、2Cu(I)hfacTMVSと接触してCu(0)を堆積させるための銅鍍金されたトラップ部材を有することを特徴とする請求項4または5に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項8】 前記第2のトラップ装置においてCu(II)(hfac)2を凝結させる温度が15〜60゜Cの範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項9】 前記第2のトラップ装置が、Cu(II)(hfac)2 を凝着させるためのフッ素樹脂で被覆されたトラップ部を有することを特徴とする請求項4または8に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項10】 所定のガス状物質を加熱して反応させ、反応生成物をトラップするためのトラップ装置であって、両端に開口部を有する筒状のハウジングと、両端にガス導入部およびガス排出部をそれぞれ有し、前記ハウジングの一方の開口部に前記ガス導入部を位置させるとともに他方の開口部に前記ガス排出部を位置させるように前記ハウジング内にいずれかの前記開口部を介して着脱可能に装着される筒状のトラップ本体と、前記トラップ本体のガス導入部とガス排出部との間のガス流路に配置され、前記ガス導入部より導入された前記ガス状物質と接触して、前記反応生成物を堆積させるためのトラップ部材と、前記トラップ部材を所定の温度に加熱するための加熱手段とを具備することを特徴とするトラップ装置。
【請求項11】 前記加熱手段が、前記トラップ本体の外周面と前記ハウジングの内璧面との間に配設されることを特徴とする請求項10に記載のトラップ装置。
【請求項12】 所定の有機ガスを凝結させて、凝結した有機化合物をトラップするためのトラップ装置であって、ガス導入口とガス排出口とを有し、前記ガス導入口と前記ガス排出口との間にガス通路を設けてなるハウジングと、前記ハウジング内で前記ガス通路に沿って配設され、前記ガス導入口より導入された前記有機ガスを凝着させるための凝着面を有するトラップ部材と、前記トラップ部材の凝着面の一部または全部に前記有機化合物を溶解させる薬液を供給するための薬液供給手段と、前記有機化合物を溶解させた薬液を回収するための薬液回収手段とを具備することを特徴とするトラップ装置。
【請求項13】 前記トラップ部材が、垂直方向に各々傾斜した凝着面を交互に反対側に向けるようにしてジグザク状に配置された複数のトラップ板を含み、前記薬液供給手段が、最上部の前記トラップ板に前記薬液を与えるための薬液供給路を有し、前記薬液供給手段の薬液供給路より最上部のトラップ板に供給された前記薬液が高い方から低い方に順次各トラップ板を伝わって流れ落ちるように構成されていることを特徴とする請求項12に記載のトラップ装置。
【請求項14】 前記薬液回収手段が、回収した前記薬液を前記薬液供給手段の薬液供給路に回送するための薬液回送手段を有することを特徴とする請求項12に記載のトラップ装置。
【請求項15】 前記トラップ部材が垂直方向に所定の間隔を置いて配置される複数のトラップ板を含み、前記ハウジング内に前記複数のトラップ板をそれぞれの位置で着脱可能に支持するための支持部材が設けられ、前記ハウジング内に前記支持部材より外されて落下した前記複数のトラップ板を収容する液体貯留可能なトラップ板収集部が設けられ、前記薬液供給手段が前記ハウジングの内壁を伝わって前記トラップ板収集部に前記薬液を導くための薬液供給路を有し、前記トラップ板収集部で前記複数のトラップ板が前記薬液に浸されるように構成されていることを特徴とする請求項12に記載のトラップ装置。
【請求項16】 前記薬液の供給中に前記トラップ部材を振動させるための超音波振動子を具備することを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載のトラップ装置。
【請求項17】 前記トラップ部材に熱的に結合された媒体通路を設け、前記トラップ部材に前記有機ガスを凝着させる時は冷却用の媒体を前記媒体通路に流し、前記トラップ部材に凝着した前記有機化合物を前記薬液で溶解させる時は加温用の媒体を前記媒体通路に流すことを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載のトラップ装置。
【請求項1】 減圧された室内で原料ガスを反応させて、反応生成物を所定の処理に用いる処理室と、前記処理室から未反応の原料ガスおよび1種類または複数種類の反応副生成物ガスを含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするための真空ポンプと、前記処理室と前記真空ポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応の原料ガスのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物をトラップするための第1のトラップ装置と、前記真空ポンプの出側の排気路に設けられ、前記真空ポンプからの所定の反応副生成物ガスを凝縮させて、その反応副生成物をトラップするための第2のトラップ装置とを有する処理装置。
【請求項2】 減圧された室内で原料ガスが反応するようになされた処理室から未反応の原料ガスおよび1種類または複数種類の反応副生成物ガスを含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするための真空ポンプと、前記処理室と前記真空ポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応の原料ガスのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物をトラップするための第1のトラップ装置と、前記真空ポンプの出側の排気路に設けられ、前記真空ポンプからの所定の反応副生成物ガスを凝縮させて、その反応副生成物をトラップするための第2のトラップ装置とを有する処理装置用真空排気システム。
【請求項3】 減圧された室内で有機銅化合物を含む原料ガスを反応させて、反応生成物である金属銅を被処理基板上に堆積させるCVD処理室と、前記処理室から未反応の原料ガスおよび1種類または複数種類の反応副生成物ガスを含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするための真空ポンプと、前記処理室と前記真空ポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応の原料ガスのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物である金属銅をトラップするための第1のトラップ装置と、前記真空ポンプの出側の排気路に設けられ、前記真空ポンプからの所定の反応副生成物ガスを凝縮させて、その反応副生成物をトラップするための第2のトラップ装置とを有する減圧CVD装置。
【請求項4】 減圧された室内で原料ガスであるCu(I)hfacTMVSが下記の化学式(1)のように反応して反応生成物であるCu(0)が被処理基板上に堆積するようになされたCVD処理室から未反応のCu(I)hfacTMVSおよび反応副生成物ガスである気体状態のCu(II)(hfac)2を含む気体を排気して、室内を所定の圧力に真空引きするためのドライポンプと、 2Cu(I)hfacTMVS→Cu(0)+Cu(II)(hfac)2 +2TMVS ‥‥‥‥(1)
前記処理室と前記ドライポンプとの間の排気路に設けられ、実質的に前記処理室からの未反応のCu(I)hfacTMVSのみを、かつその殆どを反応させて、反応生成物であるCu(0)をトラップするための第1のトラップ装置と、前記ドライポンプの出側の排気路に設けられ、前記ドライポンプからの気体状態のCu(II)(hfac)2 を凝縮させて、Cu(II)(hfac)2 をトラップするための第2のトラップ装置とを有する減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項5】 前記第1のトラップ装置における反応温度が180〜300゜Cの範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項6】 前記第1のトラップ装置が、前記Cu(I)hfacTMVSと接触してCu(0)を堆積させるための銅からなるトラップ部材を有することを特徴とする請求項4または5に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項7】 前記第1のトラップ装置が、2Cu(I)hfacTMVSと接触してCu(0)を堆積させるための銅鍍金されたトラップ部材を有することを特徴とする請求項4または5に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項8】 前記第2のトラップ装置においてCu(II)(hfac)2を凝結させる温度が15〜60゜Cの範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項9】 前記第2のトラップ装置が、Cu(II)(hfac)2 を凝着させるためのフッ素樹脂で被覆されたトラップ部を有することを特徴とする請求項4または8に記載の減圧CVD装置用真空排気システム。
【請求項10】 所定のガス状物質を加熱して反応させ、反応生成物をトラップするためのトラップ装置であって、両端に開口部を有する筒状のハウジングと、両端にガス導入部およびガス排出部をそれぞれ有し、前記ハウジングの一方の開口部に前記ガス導入部を位置させるとともに他方の開口部に前記ガス排出部を位置させるように前記ハウジング内にいずれかの前記開口部を介して着脱可能に装着される筒状のトラップ本体と、前記トラップ本体のガス導入部とガス排出部との間のガス流路に配置され、前記ガス導入部より導入された前記ガス状物質と接触して、前記反応生成物を堆積させるためのトラップ部材と、前記トラップ部材を所定の温度に加熱するための加熱手段とを具備することを特徴とするトラップ装置。
【請求項11】 前記加熱手段が、前記トラップ本体の外周面と前記ハウジングの内璧面との間に配設されることを特徴とする請求項10に記載のトラップ装置。
【請求項12】 所定の有機ガスを凝結させて、凝結した有機化合物をトラップするためのトラップ装置であって、ガス導入口とガス排出口とを有し、前記ガス導入口と前記ガス排出口との間にガス通路を設けてなるハウジングと、前記ハウジング内で前記ガス通路に沿って配設され、前記ガス導入口より導入された前記有機ガスを凝着させるための凝着面を有するトラップ部材と、前記トラップ部材の凝着面の一部または全部に前記有機化合物を溶解させる薬液を供給するための薬液供給手段と、前記有機化合物を溶解させた薬液を回収するための薬液回収手段とを具備することを特徴とするトラップ装置。
【請求項13】 前記トラップ部材が、垂直方向に各々傾斜した凝着面を交互に反対側に向けるようにしてジグザク状に配置された複数のトラップ板を含み、前記薬液供給手段が、最上部の前記トラップ板に前記薬液を与えるための薬液供給路を有し、前記薬液供給手段の薬液供給路より最上部のトラップ板に供給された前記薬液が高い方から低い方に順次各トラップ板を伝わって流れ落ちるように構成されていることを特徴とする請求項12に記載のトラップ装置。
【請求項14】 前記薬液回収手段が、回収した前記薬液を前記薬液供給手段の薬液供給路に回送するための薬液回送手段を有することを特徴とする請求項12に記載のトラップ装置。
【請求項15】 前記トラップ部材が垂直方向に所定の間隔を置いて配置される複数のトラップ板を含み、前記ハウジング内に前記複数のトラップ板をそれぞれの位置で着脱可能に支持するための支持部材が設けられ、前記ハウジング内に前記支持部材より外されて落下した前記複数のトラップ板を収容する液体貯留可能なトラップ板収集部が設けられ、前記薬液供給手段が前記ハウジングの内壁を伝わって前記トラップ板収集部に前記薬液を導くための薬液供給路を有し、前記トラップ板収集部で前記複数のトラップ板が前記薬液に浸されるように構成されていることを特徴とする請求項12に記載のトラップ装置。
【請求項16】 前記薬液の供給中に前記トラップ部材を振動させるための超音波振動子を具備することを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載のトラップ装置。
【請求項17】 前記トラップ部材に熱的に結合された媒体通路を設け、前記トラップ部材に前記有機ガスを凝着させる時は冷却用の媒体を前記媒体通路に流し、前記トラップ部材に凝着した前記有機化合物を前記薬液で溶解させる時は加温用の媒体を前記媒体通路に流すことを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載のトラップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2000−256856(P2000−256856A)
【公開日】平成12年9月19日(2000.9.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−64633
【出願日】平成11年3月11日(1999.3.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年9月19日(2000.9.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年3月11日(1999.3.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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