説明

分割方法

【課題】極端な高低差を有する異形状部が形成されたワークにおいて、レーザー加工により適切な深さに改質層を形成することができる分割方法を提供すること。
【解決手段】孔部53を有する半導体ウェーハWに対して分割予定ライン51上の孔部53の形成範囲を検出し、検出光線を半導体ウェーハWの分割予定ライン51上に照射して、孔部53の形成範囲を含む所定区間を除いて半導体ウェーハWからの反射光強度に集光レンズ46を追従させることで半導体ウェーハWの分割予定ライン51上の表面高さ位置を検出し、表面高さ位置に基づいてレーザー光線の焦点を移動させながら半導体ウェーハW内で集光させることによって分割予定ライン51に沿って連続的に改質層を形成する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線を用いた分割方法に関し、特に、半導体ウェーハや発光デバイス用ウェーハを分割する分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハや発光デバイス用ウェーハを、ストリート(分割予定ライン)に沿って分割する方法として、レーザー加工により分割する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このレーザー加工を用いた分割方法は、ウェーハ内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射し、ストリートに沿ってウェーハ内部に連続的に改質層を形成する。ウェーハは、改質層の形成された部分において強度が低下し、外力が加わることによりストリートに沿って分割される。
【0003】
ところで、上記したウェーハ等の板状のワークによっては、反りやうねり等により厚みにバラツキが生じる場合がある。このようなワークをレーザー加工により分割する場合、ワークの厚みのバラツキにより所定の深さに均一に改質層を形成することができない。この問題を解決するために、予めストリート上の表面変位(凹凸面)を検出し、その表面変位にレーザー光線の集光点を追従させるレーザー加工装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2に記載のレーザー加工装置は、検出用の光線を保持テーブルに保持されたワーク表面に照射し、ワーク表面からの反射光の光量の変化等を測定してワークの表面変位を求めている。そして、レーザー加工装置は、ワークの表面変位の検出結果に基づいて加工用のレーザー光線の焦点を調整しながら集光して、ワークの表面から所定の深さに改質層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開2010−046703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のレーザー加工装置において、極端な高低差を有する異形状部が形成されたワークを加工する場合、ワークの送り速度に対してレーザー光線の集点の調整に時間がかかり、ワークの表面から所定の深さに改質層を形成することが困難となっていた。特に、異形状部の近辺においては、改質層の形成位置が大きくズレてしまう場合があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、極端な高低差を有する異形状部が形成されたワークにおいて、レーザー加工により適切な深さに改質層を形成することができる分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の分割方法は、分割予定ライン上に凹部又は凸部の少なくとも一方が異形状部として存在するワークを前記分割予定ラインに沿って分割する分割方法であって、前記異形状部が存在する箇所を検出する異形状部検出工程と、前記分割予定ラインに沿って前記異形状部が存在する箇所を除いた箇所に高さ位置検出用の検出光線を照射して、異形状部検出工程で検出した前記異形状部が存在する箇所を除いた分割予定ラインの表面高さ位置を検出する表面高さ検出工程と、ワークを透過する波長のレーザー光線の焦点をワークの内部に合わせ前記表面高さ検出工程で検出された前記分割予定ラインの表面高さ位置に基づいて前記焦点を移動させながら集光することによって、前記分割予定ラインに沿って少なくとも前記異形状部が存在する箇所を除いた箇所に改質層を形成する改質層形成工程と、前記改質層に外力を加えることによって前記分割予定ラインに沿ってワークを分割する分割工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、異形状部が存在する箇所を除いた分割予定ラインの表面高さ位置が検出され、この表面高さ位置に基づいてレーザー光線が焦点を移動しながら集光されるため、異形状部の極端な高低差により改質層の形成位置が影響を受けることがない。よって、異形状部が形成されたワークにおいて、適切な深さに改質層を形成することができ、ワークを分割予定ラインに沿って分割することで個々のチップの品質を高めることができる。なお、ここでいう凹部とは、ワークの表面から窪んだ形状であればよく、例えば、ワークを貫通する孔部等でもよい。
【0010】
また、上記分割方法において、前記異形状部検出工程は、前記分割予定ラインに沿って前記異形状部が存在する箇所も含めて前記検出光線を照射し、前記異形状部が存在する箇所を検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、極端な高低差を有する異形状部が形成されたワークにおいて、レーザー加工により適切な深さに改質層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る分割方法の実施の形態を示す図であり、レーザー加工装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る分割方法の実施の形態を示す図であり、レーザー加工装置の光学系の模式図である。
【図3】本発明に係る分割方法の実施の形態を示す図であり、レーザー加工装置の各処理の説明図である。
【図4】本発明に係る分割方法の実施の形態を示す図であり、反射光強度と集光レンズの高さ位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本件出願人により、ワークの表面高さ位置(表面変位)を検出した後に、検出した表面高さ位置に基づいてレーザー光線の焦点を移動させながら集光することで、半導体ウェーハの表面から適切な深さに改質層を形成するレーザー加工装置が考えられている。このレーザー加工装置は、半導体ウェーハの表面高さ位置を検出する場合、半導体ウェーハに向けて照射された検出光線の反射光強度に集光レンズを追従させている。これは、集光レンズを追従させることにより反射光の光路の振れ幅を狭くして反射光が適切に受光素子に導かれる構成とし、反射強度を受光素子のみで測定する場合よりも測定レンジを広くするためである。
【0014】
そして、レーザー加工装置は、集光レンズの高さ位置と受光素子で測定された反射光強度とに基づいて半導体ウェーハの表面高さ位置を検出する。このように、レーザー加工装置は、反射光強度に集光レンズを追従させることにより、半導体ウェーハの表面高さ位置を検出可能に構成されている。ところで、半導体ウェーハには、半導体デバイスの製造工程において、分割予定ライン上に孔部等の集光レンズ等の駆動範囲よりも大きな高低差を有する異形状部が形成される場合がある。この場合、上記したレーザー加工装置により、孔部の近辺における表面高さ位置を適切に検出することが困難となっていた。
【0015】
例えば、図4(a)のように、反射光強度と集光レンズの高さ位置との関係を示すと、孔部53の近辺において追従動作にズレが生じている。具体的には、走査方向が矢印D2に示す方向の場合に、孔部53の前方側のエッジ部57までは反射光強度に集光レンズの高さ位置が追従される。検出光線の照射位置が孔部53の前方側のエッジ部57を跨ぐと、反射光強度が急激に落ち、反射光強度が閾値より下がった時点で集光レンズが反射光強度に追従しきれずに所定高さに固定される。そして、検出光線の照射位置が孔部53の後方側のエッジ部58を跨ぐと、反射光強度が急激に上がり、反射光強度が閾値を超えた時点で集光レンズが再び反射光強度に追従する。このため、集光レンズの追従が遅れた分だけ、検出される表面高さ位置に誤差が生じてしまっていた。
【0016】
また、図4(b)のように、検出光線の照射位置が孔部53の後方側のエッジ部58を跨ぐときに、反射光強度の急激な変化に対応できずに集光レンズの高さ調整がオーバーシュートする場合がある。この場合には、集光レンズの位置調整が安定状態となるまで、検出される表面高さ位置に誤差が生じてしまっていた。
【0017】
このように、本件出願人は、反射光強度に集光レンズを追従させて半導体ウェーハWの表面高さ位置を検出する場合には、検出光線の照射位置が孔部53から抜け出る後方側のエッジ部58において誤差が生じ易いことを発見した。さらに、孔部53のように高低差の大きな異形状部を含む所定区間で反射光強度に対する集光レンズの追従を停止させることで、半導体ウェーハWの表面高さ位置を適切に測定できることを発見した。この構成により、異形状部が形成されたワークの表面高さ位置を適切に測定して、ワークの内部の適切な深さに改質層を形成可能としている。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1および図2を参照して、レーザー加工装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。なお、ワークとして分割予定ライン上に孔部が形成された半導体ウェーハを分割する場合の分割方法について説明するが、この構成に限定されるものではない。本発明は、分割予定ライン上に異形状部が形成されたワークを分割する方法であれば、どのようなワークを分割する方法にも適用可能である。
【0019】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、半導体ウェーハWにレーザー光線を照射するレーザー加工ユニット3と半導体ウェーハWを保持する保持テーブル4とを相対移動させて、半導体ウェーハWを加工するように構成されている。半導体ウェーハWは、略円板状に形成されており、表面に格子状に配列された分割予定ライン51によって複数の領域に区画されている。この区画された領域には、IC、LSI等のデバイス52が形成されている。また、分割予定ライン51上には、異形状部としての孔部53(図3参照)が形成されている。半導体ウェーハWは、貼着テープ54を介して環状フレーム55に支持され、レーザー加工装置1に搬入および搬出される。
【0020】
なお、本実施の形態においては、ワークとしてシリコンウェーハ(Si)、ガリウムヒソ(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等の半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。チップ実装用として半導体ウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電気部品やミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料をワークとしてもよい。
【0021】
レーザー加工装置1は、直方体状のベッド部5とベッド部5の上面後方に立設したコラム部6とからなる基台2を有している。コラム部6の前面には、前方に突出したアーム部7が設けられ、アーム部7の先端側にはレーザー加工ユニット3の加工ヘッド36が設けられている。また、ベッド部5の上面には、保持テーブル4をX軸方向及びY軸方向に移動させる保持テーブル移動機構8が設けられている。
【0022】
保持テーブル移動機構8は、保持テーブル4を加工送り方向となるX軸方向に移動する加工送り機構11と、保持テーブル4を割出送り方向となるY軸方向に移動する割出送り機構12とを備えている。加工送り機構11は、ベッド部5の上面に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール15と、一対のガイドレール15にスライド可能に支持されたモータ駆動のX軸テーブル16とを有している。
【0023】
割出送り機構12は、X軸テーブル16の上面に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール18と、一対のガイドレール18にスライド可能に支持されたモータ駆動のY軸テーブル19を有している。Y軸テーブル19の上面には、保持テーブル4が設けられている。また、X軸テーブル16、Y軸テーブル19の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にそれぞれボールネジ21、22が螺合されている。ボールネジ21、22の一端部には、駆動モータ24、25が連結され、この駆動モータ24、25によりボールネジ21、22が回転駆動される。
【0024】
保持テーブル4は、Y軸テーブル19の上面においてZ軸回りに回転可能なθテーブル31と、θテーブル31の上部に設けられ、半導体ウェーハWを吸着保持するワーク保持部32とを有している。ワーク保持部32は、所定の厚みを有する円板状であり、上面中央部分にはポーラスセラミック材により吸着面33が形成されている。吸着面33は、負圧により貼着テープ54を介して半導体ウェーハWを吸着する面であり、θテーブル31の内部の配管を介して吸引源に接続されている。
【0025】
ワーク保持部32の周囲には、θテーブル31の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部34が設けられている。この4つのクランプ部34は、エアーアクチュエータにより駆動し、半導体ウェーハWの周囲の環状フレーム55を四方から挟持固定する。
【0026】
レーザー加工ユニット3は、アーム部7の先端に設けられ、半導体ウェーハWにレーザー光線を照射する加工ヘッド36を有している。加工ヘッド36は、半導体ウェーハWの表面高さ位置を検出する検出光線や、半導体ウェーハWの内部に改質層を形成するレーザー光線を、半導体ウェーハWに向けて照射する。加工ヘッド36、アーム部7、コラム部6内には、レーザー加工装置1の光学系(図2参照)が設けられている。
【0027】
この場合、検出光線により半導体ウェーハWの分割予定ライン51上の表面高さ位置が検出され、検出された表面高さ位置に基づいてレーザー光線の集光点が半導体ウェーハWの内部に調整される。これにより、半導体ウェーハWの内部に分割起点となる改質層が形成される。この改質層は、レーザー光線の照射によってウェーハ内部の密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。改質層は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等であり、これらが混在した領域でもよい。
【0028】
図2を参照して、レーザー加工装置の光学系について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の光学系の模式図である。
【0029】
図2に示すように、レーザー加工装置の光学系には、半導体ウェーハWの表面高さ位置を検出するための検出用光源41と、半導体ウェーハWに対して透過性を有するレーザー光線を発振する発振器42とが設けられている。検出用光源41から出射される検出光線の光路上には、ビームスプリッタ43、ダイクロイックミラー等の特定の波長のみを反射させる部分透過ミラー44、全反射ミラー45、集光レンズ46が配置されている。発振器42から発振されるレーザー光線の光路上には、上記した部分透過ミラー44、全反射ミラー45、集光レンズ46が配置されている。すなわち、本実施の形態に係るレーザー加工装置においては、部分透過ミラー44と半導体ウェーハWとの間で検出用光の光路とレーザー光線の光路とが一致され、構成の簡素化が図られている。なお、集光レンズ46は、単レンズ、または組み合わせレンズで構成されている。
【0030】
部分透過ミラー44は、レーザー光線を透過するが、検出光線や検出光線の半導体ウェーハWからの反射光を反射するように構成されている。ビームスプリッタ43は、検出用光源41から出射された検出光線を透過して部分透過ミラー44に導き、部分透過ミラー44で反射された反射光を検出部47に導くように構成されている。検出部47は、図示しないシリンドリカルレンズや受光素子等を有し、集光レンズ46とストリート表面との間の距離に応じて変化する反射光の受光量を電圧信号(反射光強度)に変換する。集光レンズ46は、矢印D1に示す光軸方向に駆動可能に構成されており、検出光線およびレーザー光線の集点を調整する。
【0031】
検出用光源41から出射された検出光線は、ビームスプリッタ43を透過して部分透過ミラー44および全反射ミラー45にて集光レンズ46に向けて反射され、集光レンズ46により集光されて半導体ウェーハWの表面に照射される。そして、半導体ウェーハWからの反射光は、集光レンズ46を介して全反射ミラー45に入射し、全反射ミラー45、部分透過ミラー44、ビームスプリッタ43で反射されて検出部47に入射される。一方、発振器42から発振されたレーザー光線は、部分透過ミラー44を透過して全反射ミラー45にて集光レンズ46に向けて反射され、集光レンズ46により半導体ウェーハWの内部に集光されて照射される。
【0032】
このように構成されたレーザー加工装置1においては、孔部検出処理、表面高さ位置検出処理、レーザー加工処理が実施される。孔部検出処理は、半導体ウェーハWの分割予定ライン51上に形成された孔部53の形成箇所を検出する処理である。孔部検出処理では、検出部47により半導体ウェーハWからの反射光強度の急激な変化が検出されることで、孔部53の形成箇所が検出される。
【0033】
表面高さ位置検出処理は、半導体ウェーハWの分割予定ライン51上の表面高さ位置を検出する処理である。表面高さ位置検出処理では、孔部検出処理で検出された孔部53を含む所定区間を除いて、集光レンズ46を検出部47によって検出される反射光強度に追従させている。そして、半導体ウェーハWの表面高さ位置は、半導体ウェーハWからの反射光強度と集光レンズ46の高さ位置とに基づいて算出される。また、表面高さ位置検出処理は、孔部53を含む所定区間で集光レンズ46の駆動が停止されるため、孔部53における反射光強度の急激な変化に集光レンズ46が追従することなく、表面高さ位置の誤差の発生が抑制される。
【0034】
レーザー加工処理は、半導体ウェーハWの分割予定ライン51に沿って内部に改質層を形成する処理である。レーザー加工処理においては、表面高さ位置検出処理で検出された半導体ウェーハWの表面高さ位置に基づいて、半導体ウェーハWの内部で焦点を移動させながらレーザー光線を集光させている。孔部検出処理、表面高さ位置検出処理、レーザー加工処理は、レーザー加工装置1を統括制御する制御部39により制御される。制御部39は、各種処理を実行するプロセッサや、メモリ等により構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。また、メモリには、孔部検出処理、表面高さ位置検出処理、レーザー加工処理の各処理に用いられる制御プログラム等が記憶されている。
【0035】
次に、図3を参照して、レーザー加工装置の各処理について詳細に説明する。図3は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の各処理の説明図である。なお、以下の説明では、矢印D2方向を走査方向とした場合に、検出光線の照射位置が孔部に侵入する側のエッジ部を前方側のエッジ部とし、検出光線の照射位置が孔部から抜け出る側のエッジ部を後方側のエッジ部とする。
【0036】
図3(a)に示す孔部検出処理においては、加工送り方向に送られる保持テーブル4上の半導体ウェーハWに検出光線が照射され、半導体ウェーハWからの反射光の反射光強度に基づいて孔部53の形成範囲が検出される。反射光強度は、検出光線の照射位置が前方側のエッジ部57を跨いだ時点で急激に落ち、後方側のエッジ部58を跨いだ時点から急激に上昇する。このため、孔部53は、反射光強度が急激に落ち始めた位置から急激に上昇し始めた位置までの範囲に存在すると推定される。
【0037】
この場合、反射光強度の急激な変化は、どのように特定されてもよいが、例えば、予め設定された閾値との比較により特定されてもよい。また、孔部検出処理においては、集光レンズの高さ位置は、一定の高さに固定されてもよいし、反射光強度に追従させてもよい。孔部検出処理により孔部53の形成範囲が検出されると、表面高さ位置検出処理が行われる。
【0038】
図3(b)に示す表面高さ位置検出処理においては、加工送り方向に送られる保持テーブル4上の半導体ウェーハWに検出光線が照射され、半導体ウェーハWからの反射光の反射光強度に集光レンズ46を追従させながら半導体ウェーハWの表面高さ位置が検出される。また、表面高さ位置検出処理においては、孔部検出処理で検出された孔部53の形成範囲(形成区間)を含むように追従OFF区間が設定される。追従OFF区間は、反射光強度に対する集光レンズ46の追従を停止する区間であり、孔部検出処理で検出された孔部53の形成範囲に所定の付加区間を加えて求められる。付加区間は、孔部53の形成範囲の検出精度等に応じて、任意に設定可能である。
【0039】
検出光線の照射位置が追従OFF区間に入るまでは、反射光強度に集光レンズ46の高さ位置が追従される。検出光線の照射位置が追従OFF区間に入ると、検出光線の照射および集光レンズ46の追従が停止される。そして、検出光線の照射位置が追従OFF区間を抜けると、検出光線の照射が再開され、反射光強度に集光レンズ46の高さ位置が追従される。このため、追従OFF区間外では、反射光強度と反射光強度に追従する集光レンズ46の高さ位置とに基づいて半導体ウェーハWの表面高さ位置が検出される。また、追従OFF区間の開始位置から前方側のエッジ部57までの範囲、および後方側のエッジ部58から追従OFF区間の終了位置までの範囲では、表面高さ位置として追従OFF区間に入る直前の表面高さ位置が用いられる。なお、追従OFF区間に入る直前の高さ位置に代えて、経験的に求められる規定の表面高さ位置でもよい。
【0040】
なお、本実施の形態では、追従OFF区間を孔部53の形成範囲の前後に付加区間を設けて設定する構成としたが、この構成に限定されるものではない。半導体ウェーハWの表面高さ位置を検出する際には、後方側のエッジ部58で誤差が生じ易いため、孔部53の形成範囲の後側にだけ付加区間を設けるようにしてもよい。表面高さ位置検出処理により半導体ウェーハWの表面高さ位置が検出されると、レーザー加工処理が行われる。
【0041】
図3(c)に示すレーザー加工処理においては、加工送り方向に送られる保持テーブル4上の半導体ウェーハWにレーザー光線が照射され、半導体ウェーハWの内部に改質層Lが形成される。レーザー光線は、表面高さ位置検出処理により検出された表面高さ位置に基づいて焦点を移動させながら半導体ウェーハWの内部で集光される。この構成により、半導体ウェーハWの表面変位に伴って、半導体ウェーハWの表面から所定の深さに連続的に改質層Lが形成される。
【0042】
そして、半導体ウェーハWは、外力が加えられることで改質層Lを分割起点として個々のチップに分割される。分割の仕方は限定されないが、例えば、図示しないテープ拡張装置において半導体ウェーハWの裏面が貼着された貼着テープ54を伸長することで個々のチップに分割される。
【0043】
ここで、半導体ウェーハの分割方法の全体的な流れについて説明する。まず、保持テーブル4に半導体ウェーハWが載置されると、保持テーブル4が加工ヘッド36に臨む加工位置に移動される。次に、加工ヘッド36の出射口が半導体ウェーハWの分割予定ライン51に位置合わせされると共に、集光レンズ46の駆動により検出光線の集点が半導体ウェーハWの表面に調整される。次に、孔部検出処理が開始される(異形状部検出工程)。孔部検出処理では、加工ヘッド36によって半導体ウェーハWの分割予定ライン51に検出光線が照射され、半導体ウェーハWからの反射光の反射光強度が検出される。このときの反射光強度の急激な変化により、孔部53の形成箇所が検出される。
【0044】
この場合、保持テーブル4が半導体ウェーハWを保持した状態でX軸方向に加工送りされ、半導体ウェーハWの分割予定ライン51上の孔部53の形成箇所が検出される。続いて、保持テーブル4が数ピッチ分だけY軸方向に移動され、加工ヘッド36の出射口が隣接する分割予定ライン51に位置合わせされる。そして、保持テーブル4が半導体ウェーハWを保持した状態でX軸方向に加工送りされ、半導体ウェーハWの分割予定ライン51上の孔部53の形成箇所が検出される。この動作が繰り返されて半導体ウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ライン51上の孔部53の形成箇所が検出される。次に、θテーブル31が90度回転され、同様な動作により、半導体ウェーハWのY軸方向の全ての分割予定ライン51上の孔部53の形成箇所が検出される。
【0045】
次に、孔部検出処理が完了すると、表面高さ位置検出処理が開始される(表面高さ検出工程)。表面高さ位置検出処理では、加工ヘッド36によって半導体ウェーハWの分割予定ライン51に照射した検出光線の反射光強度を検出し、この反射光強度に集光レンズ46の高さ位置を追従させるように動作する。このときの反射光強度と集光レンズ46の高さ位置により、表面高さ位置が検出される。また、表面高さ位置検出処理では、孔部検出処理により検出された孔部53を含む追従OFF区間が設定され、追従OFF区間では反射光強度の検出および反射光強度に対する集光レンズ46の追従が停止される。そして、孔部検出処理と同様に保持テーブル4が移動され、孔部53を除く全ての分割予定ライン51上の表面高さ位置が検出される。
【0046】
次に、表面高さ位置検出処理が完了すると、レーザー加工処理が開始される(改質層形成工程)。レーザー加工処理では、表面高さ位置検出処理により検出された表面高さ位置に基づいてレーザー光線の焦点を移動させながら集光することによって、半導体ウェーハWの内部に改質層が形成される。そして、孔部検出処理と同様に保持テーブル4が移動されることで、孔部53を除く全ての分割予定ライン51に沿って改質層が連続的に形成される。
【0047】
次に、レーザー加工処理が完了すると、半導体ウェーハWが保持テーブル4から取り外され、図示しない分割装置に搬入される。そして、分割装置において、半導体ウェーハWの分割予定ライン51に沿って形成された改質層に外力が加えられることで、個々のチップに分割される(分割工程)。
【0048】
以上のように、本実施の形態に係る分割方法によれば、孔部53が存在する箇所を除いた分割予定ライン51の表面高さ位置が検出され、この表面高さ位置に基づいてレーザー光線の集光点が調整されるため、孔部53の極端な高低差により集光点の調整が影響を受けることがない。よって、孔部53が形成された半導体ウェーハWにおいて、適切な深さに改質層を形成することができ、半導体ウェーハWを分割予定ラインに沿って分割することで個々のチップの品質を高めることができる。
【0049】
なお、上記した実施の形態においては、ワークが異形状部としての孔部を有する構成としたが、この構成に限定されるものではない。異形状部は、例えば、集光レンズの可動範囲を超える高低差を有するものであればよく、ワークの表面から凹状に窪んだ形状や凸状に突出した形状でもよい。また、異形状部は、集光レンズの可動範囲を超える高低差を有さない場合であっても、集光レンズの移動応答速度や加減速度、ワークの加工送り速度等を考慮して、表面高さ位置の検出時に誤差が生じる形状であればよい。
【0050】
また、上記した実施の形態においては、ワークの分割予定ラインに沿って検出光線を照射して異形状部の形成箇所を検出する構成としたが、この構成に限定されるものではない。異形状部の形成箇所は、どのような方法で検出してもよく、例えば、ワークの形成時におけるワークの製造情報等から検出する構成としてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態においては、追従OFF区間は、異形状部の形成範囲を含むように設定されたがこの構成に限定されるものではない。追従OFF区間は、反射光強度の急激な変化による表面高さ位置の誤差が生じなければ、異形状部の形成範囲に一致されていてもよい。
【0052】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明は、極端な高低差を有する異形状部が形成されたワークにおいて、レーザー加工により適切な深さに改質層を形成することができるという効果を有し、特に、半導体ウェーハや発光デバイス用ウェーハを分割する分割方法に有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザー加工装置
2 基台
3 レーザー加工ユニット
4 保持テーブル
8 保持テーブル移動機構
36 加工ヘッド
39 制御部
41 検出用光源
42 発振器
46 集光レンズ
47 検出部
51 分割予定ライン
52 デバイス
53 孔部
57 前方側のエッジ部
58 後方側のエッジ部
W 半導体ウェーハ(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ライン上に凹部又は凸部の少なくとも一方が異形状部として存在するワークを前記分割予定ラインに沿って分割する分割方法であって、
前記異形状部が存在する箇所を検出する異形状部検出工程と、
前記分割予定ラインに沿って前記異形状部が存在する箇所を除いた箇所に高さ位置検出用の検出光線を照射して、異形状部検出工程で検出した前記異形状部が存在する箇所を除いた分割予定ラインの表面高さ位置を検出する表面高さ検出工程と、
ワークを透過する波長のレーザー光線の焦点をワークの内部に合わせ前記表面高さ検出工程で検出された前記分割予定ラインの表面高さ位置に基づいて前記焦点を移動させながら集光することによって、前記分割予定ラインに沿って少なくとも前記異形状部が存在する箇所を除いた箇所に改質層を形成する改質層形成工程と、
前記改質層に外力を加えることによって前記分割予定ラインに沿ってワークを分割する分割工程と、を含むことを特徴とする分割方法。
【請求項2】
前記異形状部検出工程は、前記分割予定ラインに沿って前記異形状部が存在する箇所も含めて前記検出光線を照射し、前記異形状部が存在する箇所を検出することを特徴とする請求項1に記載の分割方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−253866(P2011−253866A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125503(P2010−125503)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】