分岐型化合物、これを用いた有機薄膜及び有機薄膜素子
【課題】電荷輸送性に優れる両極性の有機半導体として利用可能な分岐型化合物の提供。
【解決手段】コア部と、該コア部に結合した少なくとも1つの側鎖部と、末端と、から構成される分岐型化合物であって、上記側鎖部の少なくとも1つは、下記一般式(1)で表される繰返し単位が1又は2以上繰り返しており(但し、コア部と結合する前記繰返し単位においては、Tがコア部に結合しており、2以上繰り返す前記繰返し単位においては、LがTに結合している。)、Lは、共役形成単位が複数連結して構成され、上記共役形成単位として少なくとも一つのチエニレン単位を含み、Lの末端(Tと結合していない側のLの末端)に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基である、分岐型化合物。
(式中、Lは置換基を有していてもよい2価の有機基を示し、Tは置換基を有していてもよい3価の有機基を示す。)
【解決手段】コア部と、該コア部に結合した少なくとも1つの側鎖部と、末端と、から構成される分岐型化合物であって、上記側鎖部の少なくとも1つは、下記一般式(1)で表される繰返し単位が1又は2以上繰り返しており(但し、コア部と結合する前記繰返し単位においては、Tがコア部に結合しており、2以上繰り返す前記繰返し単位においては、LがTに結合している。)、Lは、共役形成単位が複数連結して構成され、上記共役形成単位として少なくとも一つのチエニレン単位を含み、Lの末端(Tと結合していない側のLの末端)に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基である、分岐型化合物。
(式中、Lは置換基を有していてもよい2価の有機基を示し、Tは置換基を有していてもよい3価の有機基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐型化合物、これを用いた有機薄膜及び有機薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子又はホール)輸送性を有する有機材料を含む薄膜は、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等の有機薄膜素子への応用が期待されており、有機p型半導体(ホール輸送性を示す)および有機n型半導体(電子輸送性を示す)の開発が種々検討されている。
【0003】
有機p型半導体材料として、オリゴチオフェン、ポリチオフェンなどチオフェン環を有する化合物が、安定なラジカルカチオン状態をとりうることから高いホール輸送性を示すことが期待されている。特に鎖長の長いオリゴチオフェンは共役長が長くなり、より効率よくホール輸送できることが予想されている。
【0004】
近年、有機p型半導体と有機n型半導体の両方の性質を持つ両極性有機半導体材料が注目され、種々検討されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】Yoshihito Kunugi et al., J. Mat. Chem., 2004, vol.14, p.2840.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機p型半導体と有機n型半導体の両方の性質を持つ両極性の有機半導体を用いた有機薄膜素子の実用化という観点からは、高い電荷輸送性が求められているが、上述した公知の材料では未だ十分な性能とは言い難い。
【0006】
そこで、本発明の目的は、電荷輸送性に優れる両極性の有機半導体として利用可能な分岐型化合物を提供することにある。本発明の目的はまた、この分岐型化合物を含む有機薄膜、及びこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、コア部と、該コア部に結合した少なくとも1つの側鎖部と、末端と、から構成される分岐型化合物であって、上記側鎖部の少なくとも1つは、下記一般式(1)で表される繰返し単位が1又は2以上繰り返しており(但し、コア部と結合する前記繰返し単位においては、Tがコア部に結合しており、2以上繰り返す前記繰返し単位においては、LがTに結合している。)、Lは、共役形成単位が複数連結して構成され、上記共役形成単位として少なくとも一つのチエニレン単位を含み、Lの末端(Tと結合していない側のLの末端)に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基である、分岐型化合物を提供する。
【化1】
(式中、Lは置換基を有していてもよい2価の有機基を示し、Tは置換基を有していてもよい3価の有機基を示す。)
【0008】
本発明の分岐型化合物は、少なくとも側鎖部にチオフェン環構造を備えることから環同士の共役平面性が良好となり、分子間の相互作用を強くすることができるため、電荷輸送性に優れた有機p型半導体として利用可能である。また、末端にアクセプター性の基を有するLが2つ以上含まれるため、側鎖部の有機p型半導体の性質(ドナー性)に加え、末端部の有機n型半導体の性質(アクセプター性)を合わせ持つことができ、両極性の有機半導体として機能する。また、ドナー性を示す側鎖部と、アクセプター性を示す末端部が隣接していることから、ドナー・アクセプター間での電荷移動が起こりやすくなり、吸収端の長波長化、エキシトンの電荷分離効率向上等の効果が期待される。これらに加え、本発明の分岐型化合物は、化合物の安定性および有機溶剤への溶解性が優れているため、溶液を用いて薄膜を形成することで、性能の優れた有機薄膜素子が製造可能となる。
【0009】
本発明の分岐型化合物において、側鎖部は、その全てが、上記一般式(1)で表される繰返し単位が1又は2以上繰り返してなることが好ましい。
【0010】
本発明の分岐型化合物において、コア部、T及びLが全体として共役して分岐型共役化合物を形成していることが好ましい。このような構造をとることで、分子全体として平面性が高くなるとともに共役性が高まり、有機p型半導体として使用した場合の電荷輸送性に顕著に優れることになる。
【0011】
本発明の分岐型化合物は、一般式(1)で表される繰返し単位の2以上が、Tでコア部と結合していることが好ましく、Lは、下記一般式(2)で表される2価の有機基が好ましい。
【化2】
【0012】
式(2)中、Ar1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R1、R2、R3及びR4が複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、m、n及びoは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、m及びoのうちの少なくとも一方は1以上の整数であり、m+n+oは2〜16の整数を示す。
【0013】
このような構造を有する分岐型化合物は、共役性が良好であり、化合物の安定性も特に優れるようになる。したがって、電荷輸送性に一層優れ、有機p型半導体として適用したときに優れた特性を発揮する。
【0014】
本発明の分岐型化合物においては、Tが下記式(3)〜(7)で表される3価の有機基のいずれかであることが好ましく、下記式(4’)で表される3価の有機基が特に好ましい。
【化3】
なお、式(3)中、R5は、水素原子、アルキル基、アリール基又はシアノ基を示す。
【化4】
【0015】
また、下記一般式(8)で表される2価の有機基がコア部として特に好ましい。
【化5】
【0016】
式(8)中、Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R6、R7、R8及びR9が複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、p、q及びrは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、p+q+rは2〜20の整数を示す。
【0017】
上述のようなコア部から構成される分岐型化合物は、さらに共役性に優れるものとなり、電荷輸送性により一層優れる有機p型半導体として利用可能となる。特に、Lが一般式(2)で表される2価の有機基である場合は、分子全体としての均一性が優れることになり、分子全体としての共役性が高まり、有機p型半導体として使用した場合の電荷輸送性が大幅に向上する。
【0018】
上記一般式(1)で表される繰返し単位は、下記一般式(9)で表される繰返し単位であることが好適である。
【化6】
【0019】
式(9)中、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。複数存在するR10及びR11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、kは、3〜10の整数を示す。複数存在するkは同一でも異なっていてもよい。
【0020】
Lの末端に存在する基については、少なくとも2つがアクセプター性の基であればよく、C60、C70等のフラーレン類の誘導体残基を含む基、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基又はペリレンイミド誘導体残基を含む基であることが好ましい。これらアクセプター性の基を末端に持つLを2以上有することにより、分子間でアクセプター性の基同士が相互作用し易くなり、コア部及び側鎖部の有機p型半導体の性質に加え、末端部の有機n型半導体の性質を合わせ持つことができ、両極性の有機半導体として機能する。Lの末端に存在するアクセプター性の基以外の基としては、フェニル基が好ましい。側鎖部の有機p型半導体の性質と、末端部の有機n型半導体の性質を有効に発現させるため、側鎖部と末端部は共役が切れていることが好ましい。
【0021】
本発明は、更に、上記有機薄膜を備える有機薄膜素子、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池及び光センサを提供する。
【0022】
このような有機薄膜、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池及び光センサは、上述のように優れた両極性の電荷輸送性を示す本発明の分岐型化合物を用いて形成されているため、優れた性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電荷輸送性に優れる両極性の有機半導体として利用可能な新規の分岐型化合物を提供することができる。また、本発明によれば、この分岐型化合物を含有する有機薄膜及びこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することができる。また、この有機薄膜素子は安定性に優れたものになり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
本発明の分岐型化合物は、コア部と、該コア部に結合した少なくとも1つの側鎖部と、末端と、から構成され、いわゆるデンドリマー(デンドリックポリマー)、ハイパーブランチポリマー、スターバーストポリマーといった構造をとり得る化合物である。側鎖部の骨格は一般式(1)で表され、好適な側鎖部は上述の通りである。コア部については、x価の有機基が好ましい(xは1以上の整数であり、側鎖部の数に対応する。以下同様)。コア部としては、x価の芳香族炭化水素基、x価の複素環基、x価のアリールアミン又はその誘導体の残基、もしくはそれらを組み合わせた有機基が例示される。Lの末端に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基であれば特に限定されないが、C60、C70等のフラーレン類の誘導体残基を含む基、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基又はペリレンイミド誘導体残基を含む基であることが好ましい。
【0026】
x価の芳香族炭化水素基とは、ベンゼン環又は縮合環から水素原子x個を除いた残りの原子団をいい、通常炭素数6〜60、好ましくは6〜20である。縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、ルブレン環、フルオレン環が挙げられる。これらの中でもベンゼン環から水素原子x個以上を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、x価の芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、x価以上の芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0027】
また、x価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子x個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は、通常3〜60、好ましくは3〜20である。複素環式化合物としては、例えば、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾールが挙げられる。これらの中でもチオフェン、ピリジン、ピリミジン、トリアジンから水素原子x個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、x価の複素環基上に置換基を有していてもよく、x価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0028】
x価のアリールアミン又はその誘導体からなる基とは、アミンに1以上のアリール基を置換した化合物またはその化合物を複数結合した化合物などの誘導体から水素原子x個除いた残りの原子団をいう。アリールアミン又はその誘導体としては、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、N,N’−テトラフェニル−フェニレンジアミン、N,N’−テトラフェニル−ビフェニレンジアミン等が例示され、トリフェニルアミンが好ましい。
【0029】
コア部は、下記一般式(8)で表される単位であると、分岐型化合物の共役性がさらに向上し、電荷輸送性が向上するため、より好ましい。
【化7】
【0030】
式(8)中、Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R6、R7、R8及びR9が複数存在するときは、複数のR6、R7、R8及びR9は同一でも異なっていてもよい。また、p、q及びrは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、p+q+rは2〜20の整数である。
【0031】
電荷輸送性を高める観点から、上記一般式(8)においてqが0の場合、すなわち、コア部がすべてチオフェン環からなるものが好ましく、p+q+rが2〜16のものがさらに好ましい。有機溶媒への溶解性を高める観点から、R6、R7、R8及びR9の少なくとも一つは水素原子でないことが好ましい。
【0032】
上記一般式(2)及び(8)において、Ar1及びAr2で表される2価の芳香族炭化水素基とは、ベンゼン環又は縮合環から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、通常炭素数6〜60、好ましくは6〜20である。縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、ルブレン環、フルオレン環が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びフルオレン環から水素原子2個を除いた残りの原子団が好ましい。なお、2価の芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、2価の芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0033】
また、Ar1及びAr2で表される2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は、通常3〜60、好ましくは3〜20である。複素環式化合物としては、例えば、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾールが挙げられる。2価の複素環基としては、チオフェン、チエノチオフェンから水素原子2個を除いた残りの原子団が好ましい。なお、2価の複素環基上に置換基を有していてもよく、2価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0034】
R1〜R11で表されるアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基などが挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基がさらに好ましい。
【0035】
R1〜R4およびR6〜R9で表されるアルコキシ基としては、上述のアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基が例示される。
【0036】
R1〜R11で表されるアリール基としては、炭素数6〜60のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示され、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0037】
R1〜R4およびR6〜R9で表される1価の複素環基としては、炭素数4〜60の1価の複素環基が好ましく、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基などが例示され、炭素数4〜20の1価の複素環基が好ましく、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基がより好ましい。
【0038】
また、本発明の分岐型化合物において、Lの末端に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基であればよく、例えばオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン誘導体、C60、C70等のフラーレン類の誘導体、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基、ペリレンイミド誘導体残基を含む基が例示され、C60、C70等のフラーレン類誘導体残基を含む基、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基、ペリレンイミド誘導体残基を含む基が好ましく、ペリレン顔料誘導体残基を含む基であることがより好ましい。合成のし易さという観点から、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基が特に好ましい。アクセプター性の基の電子吸引性を強めるという観点から、アクセプター性の基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0039】
また、本発明の分岐型化合物において、Lの末端に存在するアクセプター性の基以外の基としては、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基として、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基又は置換フェニル基が好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、飽和又は不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられ、これらの基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。分岐型化合物の安定性の観点から、フェニル基又は置換フェニル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0040】
C60、C70等のフラーレン類誘導体残基を含む基としては、下記式が例示される。
【化8】
【化9】
【化10】
ここで、R01は1価の有機基、R02は2価の有機基を示す。
【0041】
ペリレンイミド誘導体残基を含む基としては、下記式が例示される。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0042】
ここで、R01は1価の有機基、R02は2価の有機基、R03は3価の有機基を示し、複数ある場合はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Aは、アルキル基、アルコキシ基、スルホニル基、アミノ基、アンモニウム基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲンを示し、gは0〜8までの整数を示す。
【0043】
ナフタレンイミド誘導体残基を含む基としては、下記式が例示される。
【0044】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【0045】
ここで、R01は1価の有機基、R02は2価の有機基、R03は3価の有機基を示し、複数ある場合はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0046】
R01で表される1価の有機基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が例示され、これらの基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。アリール基、1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。電子吸引性を強めるという観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている基が好ましく、アルキル基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている基がより好ましい。
【0047】
R02で表される2価の有機基としては、アルキレン基、ビニレン基、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフェニル基、スルホニル基、モノ置換アミノ基及びベンゼン環、縮合環又は複素環などの環構造から水素原子2個を除いた残りの原子団が例示され、これらの原子団における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。これらの中でもアルキレン基、ベンゼン環から水素原子2個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、環構造を有する基上に置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0048】
R03で表される3価の有機基としては、ベンゼン環、縮合環又は複素環などの環構造から水素原子3個を除いた残りの原子団が例示され、これらの原子団における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。これらの中でもベンゼン環から水素原子3個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、環構造を有する基上に置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0049】
次に、本発明の分岐型化合物の構成について、更に詳細に説明する。本発明の分岐型化合物は、上述したように、上記一般式(1)で表される繰返し単位を含み、末端にアクセプター性の基を有するLを少なくとも2つ有していればよく、上記一般式(1)で表される繰返し単位を2種類以上含んでいてもよい。また複数あるLの末端に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基であればよく、同一でも異なっていてもよい。本発明の分岐型化合物は、電子輸送性を向上させるという観点から、末端にアクセプター性の基を有するLを4以上有することが好ましく、すべてのLがアクセプター性の基を有することがより好ましい。製造の容易さ、分子間の相互作用のし易さの観点から、複数ある末端基は同一であることが好ましい。
【0050】
本発明の分岐型化合物としては、下記一般式(a)、(b)、(c)及び(d)で表される分岐型化合物が例示される。
【0051】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【0052】
ここで、Xはコア部を表し、YはLの末端に存在する基を表す。TX、LX及びYX(Xは1〜8の整数)は、それぞれT、L及びYと同義であり、T、L及びYと同一でも異なっていてもよい。製造の容易さという観点からすれば、TX、LX及びYXは、それぞれT、L及びYと同一であることが好ましい。
【0053】
本発明の分岐型化合物は、電荷輸送性を高め、安定性に優れるという観点から、下記一般式(e)又は(f)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0054】
【化31】
【0055】
【化32】
【0056】
式(e)及び(f)中、Rは水素原子又はアルキル基を示し、複数あるRは同一でも異なっていてもよい。複数連結した一連のチオフェン環の置換基Rの少なくとも1つは、水素原子でないことが好ましい。Acはアクセプター性の基またはフェニル基を示し、複数あるAcは同一でも異なっていてもよい。ただし、Acの少なくとも2つはアクセプター性の基である。t及びuはそれぞれ独立に、2〜16の整数を示す。
【0057】
本発明の分岐型化合物の製造方法としては、以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。
【0058】
本発明の分岐型化合物は、上記一般式(1)で表される繰返し単位を含む化合物をモノマーとして用いて、以下に示すスキームA、A’、A’’、B又はB’で製造することができる。スキームAはスキームA−1〜3からなり、スキームBはスキームB−1〜3からなる。
【0059】
<スキームA>
【化33】
【化34】
【化35】
【0060】
【化36】
【0061】
【化37】
【0062】
<スキームB>
【化38】
【化39】
【化40】
【0063】
【化41】
【0064】
ここで、X、T、L及びYは上記と同義であり、X1及びX2はXの部分構造を表す。W1〜W3(Wで表すことがある)と、V1〜V3(Vで表すことがある)は互いに反応する活性官能基を表し、Mは水素原子または活性官能基を表し、Zは保護基を表す。また、hは2以上の整数である。
【0065】
スキームA及びBでは、上記式(1)で表される繰返し単位を導入する工程が2回の例を示している。すなわち、コア部と、該コア部に結合した上記一般式(1)で表される繰返し単位(第1世代と呼ぶ)及びその外側に結合した上記一般式(1)で表される繰返し単位(第2世代と呼ぶ)とからなる側鎖部から構成される分岐型化合物の製造方法を示したものである。
【0066】
本発明の分岐型化合物の世代数は、1以上であればよい。電荷輸送性の観点からは、上記式(1)で表される繰返し単位の数を多く含むことが好ましいことから世代数は多い方が好ましいが、製造工程が長くなる。一般式(1)で表される繰返し単位の密集性及び合成の容易性から世代数は適宜選択され、世代数として1〜8が好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい。各世代における一般式(1)で表される繰返し単位は、同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
また、本発明の分岐型化合物は以下のスキームCを用いても製造することができる。スキームCは、スキームC−1〜4からなる。
【0068】
<スキームC>
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【0069】
また、スキームC−2で得られた化合物(34)を用いて下記のスキームDで製造することもできる。スキームDはスキームD−1及び2からなる。
【0070】
<スキームD>
【化46】
【化47】
【0071】
ここで、X、T、L及びYは上記と同義であり、X1はXの部分構造を表す。W1〜W5(Wで表すことがある)とV1〜V5(Vで表すことがある)は互いに反応する活性官能基を表すが、VとWとの間の反応性に比べて、WとWとの間の反応性が低い官能基を選択することが好ましい。M及びM’は水素原子または活性官能基を表し、TMSは保護基であり、トリメチルシリル基を表す。
【0072】
スキームCおよびDで製造する場合においても、世代数2の場合を例に示したものであるが、世代数を1以上にすることも可能であり、一般式(1)で表される繰返し単位の密集性と合成の容易性から世代数は適宜選択されれば良く、世代数として1〜8が好ましく、2〜6がさらに好ましくは、2〜3が特に好ましい。各世代における一般式(1)で表される繰返し単位は、同一であっても異なっていてもよい。
【0073】
以下、本発明の分岐型化合物の製造方法について、さらに詳しく説明する。
【0074】
活性官能基VとWを結合させる反応には、例えば、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、脱ハロゲン化反応を用いる方法が挙げられる。
【0075】
これらのうち、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法が、原料の入手しやすさと反応操作の簡便さから好ましい。
【0076】
Suzukiカップリング反応の場合は、触媒として、例えばパラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類などを用い、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基、フッ化セシウムなどの無機塩をモノマーに対して当量以上、好ましくは1〜10当量加えて反応させる。無機塩を水溶液として、2相系で反応させてもよい。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどが例示される。反応温度は、使用する溶媒にもよるが50〜160℃程度が好ましい。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は1時間から200時間程度である。Suzukiカップリング反応については、例えば、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)に記載されている。
【0077】
Stille反応の場合は、触媒として、例えばパラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類などを用い、有機スズ化合物をモノマーとして反応させる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどが例示される。反応温度は、使用する溶媒によるが、50〜160℃程度が好ましい。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は1時間から200時間程度である。
【0078】
活性官能基としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基、ホルミル基、アルキルスタニル基、ビニル基が例示され、用いる反応に応じて適宜組み合わせを選択し用いることができる。ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
【化48】
【0079】
活性官能基VおよびWの組合せとして、例えばSuzukiカップリング反応を用いる方法では、ハロゲン原子とホウ酸エステル残基またはホウ酸残基との組み合わせが好ましく、Stille反応を用いる方法では、ハロゲン原子とアルキルスタニル基の組み合わせが好ましい。
【0080】
保護基としては、保護したい部位及び用いる反応によって適した基を選択すればよく、Protective Groupes in Organic Syntehesis, 3rd ed. T.W. GreeneandP.G. M.. Wuts, 1999 John Willey & Sons, Inc. に記載されている保護基が好ましい。例えば、保護したい部位がアルキンの場合、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基、ビフェニルジメチルシリル基などのアリールジアルキルシリル基、2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられ、トリメチルシリル基が好ましい。
【0081】
反応させるモノマーは、必要に応じ、有機溶媒に溶解し、例えばアルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で、反応させることができる。
【0082】
有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために、十分に脱酸素処理を施したものを用い、不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、同様に、脱水処理を行うことが好ましい(但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない)。
【0083】
本発明の分岐型化合物を製造する際、適宜アルカリや適当な触媒を添加することができる。これらは用いる反応に応じて選択すればよい。また、上記アルカリ又は触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものを使用することが好ましい。
【0084】
本発明の分岐型化合物を有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるため、反応前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに反応に用いることが好ましく、また合成後、昇華精製、再結晶、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0085】
反応に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が例示され、単一溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いてもよい。
【0086】
反応後は、例えば水でクエンチした後に有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する等の通常の後処理で生成物を得ることができる。生成物の単離後及び精製は、クロマトグラフィーによる分取や再結晶等の方法により行うことができる。
【0087】
次に、本発明の有機薄膜について説明する。本発明の有機薄膜は、上記本発明の分岐型化合物を含有することを特徴とする。
【0088】
有機薄膜の膜厚としては、通常1nm〜100μm程度であり、好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましいのは20nm〜200nmである。
【0089】
有機薄膜は、上記分岐型化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また上記分岐型化合物の2種類以上を含むものであってもよい。また、有機薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるため、上記分岐型化合物以外に電子輸送性又はホール輸送性を有した低分子化合物又は高分子化合物を混合して用いることもできる。
【0090】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えばピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が例示される。電子輸送性材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体等が例示される。
【0091】
また、本発明の有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては公知のものが使用でき、アゾ化合物及びその誘導体、ジアゾ化合物及びその誘導体、無金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、ペリレン化合物及びその誘導体、多環キノン系化合物及びその誘導体、スクアリリウム化合物及びその誘導体、アズレニウム化合物及びその誘導体、チアピリリウム化合物及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が例示される。
【0092】
さらに、本発明の有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要な材料を含んでいてもよく、例えば、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、安定性を増すための安定化剤、UV光を吸収するためのUV吸収剤等を含んでいてもよい。
【0093】
また、本発明の有機薄膜は、機械的特性を高めるため、上記分岐型化合物以外の高分子化合物材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0094】
このような高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0095】
本発明の有機薄膜の製造方法としては、例えば、上記分岐型化合物、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを含む溶液からの成膜による方法が例示される。また、本発明の分岐型化合物は真空蒸着法により薄膜に形成することもできる。
【0096】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、分岐型化合物及び混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを溶解させるものであればよい。
【0097】
本発明の有機薄膜を溶液から成膜する場合に用いる溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が例示される。分岐型化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1質量%以上溶解させることができる。
【0098】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法を用いることが好ましい。
【0099】
本発明の有機薄膜は、成膜後にアニール処理が施されることが好ましい。アニール処理により、分岐型化合物間の相互作用が促進される等、有機薄膜の膜質が改善され、電子移動度又はホール移動度が向上する。アニール処理の処理温度としては、50℃から分岐型化合物のガラス転移温度(Tg)付近の間の温度が好ましく、(Tg−30℃)からTgの間の温度がより好ましい。アニール処理する時間としては、1分から10時間が好ましく、10分から1時間がより好ましい。アニール処理する雰囲気としては、真空中又は不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0100】
本発明の有機薄膜は、電子輸送性又はホール輸送性を有することから、電極から注入された電子又はホール、又は光吸収により発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜発光トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等種々の有機薄膜素子に用いることができる。
【0101】
本発明の有機薄膜は、ホール輸送性及び電子輸送性の両極性を有することから、電極から注入されたホール又は光吸収により発生したホール又は電子の輸送を制御することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜発光トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等種々の有機薄膜素子に用いることができる。
【0102】
(有機薄膜トランジスタ)
まず、好適な実施形態に係る有機薄膜トランジスタについて説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の分岐型化合物を含む有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造であればよく、電界効果型、静電誘導型などが例示される。
【0103】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の分岐型化合物を含む有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、本発明の分岐型化合物を含む有機薄膜層(活性層)に接して設けられており、さらに有機薄膜層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0104】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、該ゲート電極が有機薄膜層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機薄膜層中に設けられたゲート電極が、本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0105】
図1は第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0106】
図2は第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0107】
図3は、第3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0108】
図4は第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された活性層2と、を備えるものである。
【0109】
図5は第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0110】
図6は第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0111】
図7は第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一でも異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0112】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本発明の分岐型化合物を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2及び/又は活性層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0113】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開2004−006476号公報記載の方法により製造することができる。
【0114】
基板1としては、有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板を用いることができる。
【0115】
活性層2を形成する際に、有機溶媒可溶性の化合物を用いることが製造上非常に有利であり好ましいことから、上記で説明した本発明の有機薄膜の製造方法を用いて、活性層2となる有機薄膜を形成することができる。
【0116】
活性層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。例えばSiOx,SiNx、Ta2O5、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス等が挙げられる。低電圧化の観点から、誘電率の高い材料の方が好ましい。
【0117】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物等が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV、O2プラズマで処理をしておくことも可能である。
【0118】
有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが、大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成するときの影響を低減することができる。
【0119】
保護膜を形成する方法としては、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため有機薄膜トランジスタを作成後保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等)行うことが好ましい。
【0120】
本発明の有機薄膜トランジスタは、両極性有機半導体として機能する分岐型化合物を活性層に用いることにより有機薄膜発光トランジスタとしても用いることができる。
【0121】
次に、本発明の有機薄膜の太陽電池への応用を説明する。図8は、実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。図8に示す太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0122】
本実施形態に係る太陽電池においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極として、仕事関数の差が大きくなるように選ばれることが好ましい。活性層2(有機薄膜)中には光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。基材1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0123】
次に、本発明の有機薄膜の光センサへの応用を説明する。図9は、第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。図9に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0124】
図10は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。図10に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0125】
図11は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。図11に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0126】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。活性層2(有機薄膜)中には光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。また基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0128】
(測定条件等)
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名JMN−270(1H測定時270MHz)、又は同社製の商品名JMNLA−600(13C測定時150MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。質量分析(MS)は、PerSeptive Biosystems社Voyager Linear DE-H MALDI-TOF MS(商品名)を用いて測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silicagel60N(40〜50μm)を用いた。またアルミナは、Merck社製の商品名aluminium oxide 90standardizedを用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社、より購入した。
【0129】
サイクリックボルタンメトリーは、BAS社製の装置を使用し、作用電極としてBAS社製Pt電極、対電極としてPt線、参照電極としてAg線を用いて測定した。この測定時の掃引速度は100mV/sec、走査電位領域は−2.8V〜1.6Vであった。還元電位及び酸化電位の測定は、化合物1×10−3mol/L、及び、支持電解質としてのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート(TBAPF6)0.1mol/Lを塩化メチレン溶媒に完全に溶解し測定した。
【0130】
(参考合成例1)
<SnBu3−4T−SnBu3の合成>
加熱乾燥し窒素置換した30mL二つ口フラスコに、5,5’’’−ジブロモ−3,3’’’−ジヘキシル−クォータチオフェン(Br−4T−Br)(230mg,0.35mmol)を入れ、乾燥THF(3mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、1.6Mn−ブチルリチウム/ヘキサン(0.66mL,1.05mmol)を滴下した。30分間後撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.25mL,1.4mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。次に、反応溶液に水(1mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を、水(20mL)を用い2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン)で精製することにより、下記式で表される目的物(SnBu3−4T−SnBu3)(360mg,収率96%)を黄色オイルとして得た。
【化49】
【0131】
(参考合成例2)
<Ph−4T−SnBu3の合成>
窒素置換した50mL二つ口フラスコに、5−ブロモ−3,3’’’−ジヘキシル−クォータチオフェン(4T−Br)(1.30g,2.25mmol)、フェニルボロン酸(410mg,3.38mmol)、炭酸ナトリウム(715mg,6.75mmol)、及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(130mg,0.11mmol)を入れ、DME(10mL)及び精製水(1mL)を加えた。これを、12時間加熱還流した後、セライトろ過により固形物を取り除き、水(20mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を水20mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過して除いた後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)で精製することにより、目的物(4T−Ph)(1.2g,収率93%)を黄色オイルとして得た。
【0132】
加熱乾燥し窒素置換した50mL二つ口フラスコに、上記で得られた4T−Ph(0.8g,1.4mmol)を入れ、乾燥THF(14mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、1.6Mのn−ブチルリチウム/ヘキサン(1.7mL,2.8mmol)を滴下した。30分間撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.75mL,4.2mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し、3時間撹拌した。反応溶液に水(20mL)及びヘキサン(20mL)を加え、有機層を水(20mL)で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過して除いた後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1)で精製することにより目的物(Ph−4T−SnBu3)を黄色オイルとして得た(1.32g,収率93%)。
【0133】
(参考合成例3)
<Ph−8T−SnBu3>
窒素置換した100mLフラスコに、3,3’’’−ジヘキシル−クォータチオフェン(4T)(1.37g,2.75mmol)、THF(20mL)を入れた後、0℃に冷却し、NBS(514mg,2.88mmol)を加え、3時間攪拌した。その後、反応溶液に水(2mL)を加え、反応を停止させた。有機層を、水20mLを用い2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)で精製することにより、目的物(4T−Br)を黄色オイルとして得た(915mg,収率57%)。
【0134】
窒素置換した30mLフラスコに、Ph−4T−SnBu3(300mg,0.347mmol)、及び4T−Br(300mg,0.52mmol)を入れた後、乾燥トルエン(5mL)を加えた。脱気後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(18mg,0.017mmol)を加え、12時間加熱還流した。減圧濃縮、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)で精製することにより、目的物(Ph−8T)を赤色オイルとして得た(301mg,収率81%)。
【0135】
加熱乾燥し窒素置換した30mL二つ口フラスコに、Ph−8T(131mg,0.123mmol)を入れ、乾燥THF(14mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン(0.23mL,0.37mmol)を滴下した。30分間撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.13mL,0.49mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。反応溶液に水(20mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を、水(20mL)を用い2回洗浄した後、目的物(Ph−8T−SnBu3)を含む黄色オイルを得た。
【0136】
(参考合成例4)
<4T−SnBu3の合成>
加熱乾燥し窒素置換した100mL三つ口フラスコに、4T(1.98g,3.97mmol)を入れた。乾燥THF(40mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン(2.5mL,4.0mmol)を滴下した。30分間後撹拌した後、塩化トリブチルスズ(1.2mL,4.4mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。反応溶液に水(20mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を水(20mL)で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,eluent CHCl3)で精製することにより、下記式で表される目的物(4T−SnBu3)を黄色オイルとして得た(1.64g,収率52%)。
【化50】
【0137】
(参考合成例5)
<SnBu3−8T−SnBu3の合成>
加熱乾燥し窒素置換した10mL二つ口フラスコに、8T(4T−4T)(150mg,0.15mmol)を入れ、乾燥THF(5mL)を加えた後、−23℃まで冷却し、テトラメチレンジアミン(0.09mL,0.6mmol)及び1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン(0.38mL,0.60mmol)を滴下した。30分間後撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.12mL,0.66mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。反応溶液に水(1mL)とクロロホルム(20mL)を加えた。有機層を、水(20mL)を用い2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,eluent CHCl3)で精製することにより、下記式で表される目的物(SnBu3−8T−SnBu3)を赤色オイルとして得た(120mg,収率50%)。
【化51】
【0138】
(参考合成例6)
<SnBu3−6T−SnBu3の合成>
加熱乾燥し窒素置換した30mL二つ口フラスコに、5,5’’’−ジブロモ−3,3’’’−ジヘキシル−セクシチオフェン(418mg,0.50mmol)を入れ、乾燥THF(10mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、テトラメチレンジアミン(0.23mL,1.5mmol)及び1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン(0.8mL,1.3mmol)を滴下した。30分間後撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.38mL,1.4mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。次に、反応溶液に水(1mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を、水(20mL)を用い2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン)で精製することにより、下記式で表される目的物(SnBu3−6T−SnBu3)をオレンジオイルとして得た(627mg、0.44mmol、収率89%)。
Orange oil;1H−NMR(270MHz,CDCl3) d 0.86−0.94(m,30H),1.11(t,J=8.1Hz,12H),1.28−1.42(m,36H),1.53−1.70(m,20H),2.74−2.84(m,8H),6.95(s,4H),7.04(d,J=3.6Hz,2H),7.13(d,J=3.6Hz,2H);13C−NMR(68MHz,CDCl3) d 11.0,13.8,14.2,22.7,26.9,27.8,28.9,29.0,29.3,29.4,29.6,30.6,30.8,31.8,123.7,126.0,128.1,129.7,134.8,135.1,135.6,135.9,136.5 138.6,139.8,140.5;MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 1413.6(M+,Calcd 1408.5); Anal. Calcd for C72H114S6Sn2:C,61.35;H,8.15;Found:C,61.32;H,7.94.
【化52】
【0139】
(実施例1)
<化合物Aの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、ビス−トリブチルスタニル−クォータチオフェン(SnBu3−4T−SnBu3)(2.0g,1.86mmol)、N−(1−ノニルデシル)−N’−(4−ヨードフェニル)ペリレンジイミド(800mg,0.93mmol)、及び乾燥トルエン17mlを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(54mg,0.46mmol)を加え、アルゴン雰囲気下で2時間還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/クロロホルム=5/1〜1/1)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Aを赤色固体として得た(590mg,収率42%)。得られた化合物Aの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.50(ヘキサン:クロロホルム);1H−NMR(CDCl3,400MHz) δ 0.81−0.93(m,21H),1.10−1.14(m,6H),1.20−1.42(m,46H),1.50−1.61(m,6H),1.60−1.74(m,4H),1.85−1.88(m,2H),2.23−2.27(m,2H),2.80−2.83(m,4H),5.19(s,1H),6.97(d,J=3.9Hz,1H),7.08(d,J=3.8Hz,1H),7.14(d,J=3.9Hz,1H),7.15(d,J=3.6Hz,1H),7.22(s,1H),7.38(d,J=8.5Hz,2H),7.78(d,J=8.5Hz,2H),8.63−8.75(m,8H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 1524.5(M+,calcd 1518.6);Anal.Calcd for C160H169BrN4O8S8:C,70.38;H,7.30;N,1.84;Found:C,70.10;H,7.33;N,1.69.
【化53】
【0140】
<化合物Bの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物A(760mg,0.5mmol)、3,5−ジヨードブロモベンゼン(89mg,0.22mmol)、及び乾燥トルエン(7mL)を加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(19mg,0.0165mmol)を加え、アルゴン雰囲気下で12時間還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,溶離液 クロロホルム)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Bを黒赤固体として得た(450mg,収率78%)。得られた化合物Bの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.20(クロロホルム);1H−NMR(CDCl3,400MHz) δ 0.81−0.85(m,12H),0.91−0.94(m,12H),1.20−1.44(m,80H),1.71(m,8H),1.89(m,4H),2.25(m,4H),2.81(m,8H),5.18(m,2H),7.09(d,J=3.9Hz,4H),7.16(d,J=3.9Hz,2H),7.17(d,J=3.9Hz,2H),7.17(s,2H),7.21(s,2H),7.36(d,J=8.6Hz,4H),7.57(m,3H),7.76(d,J=8.5Hz,4H),8.58−8.72(m,16H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 2608.7(M+,calcd 2612.0);Anal.Calcd for C160H169BrN4O8S8:C,73.56;H,6.52;N,2.14.Found:C,73.30;H,6.52;N,2.01.
【化54】
【0141】
<化合物Cの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物B(292mg,0.112mmol)、ビス−トリブチルスタニル−クォータチオフェン(SnBu3−4T−SnBu3)(55mg,0.51mmol)、及び乾燥トルエン(1.2mL)を加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5.0mg,5.1μmol)を加え、アルゴン雰囲気下で8時間還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(アルミナ、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−3H,4H,溶離液 クロロホルム)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Cを黒赤色固体として得た(93mg,収率47%)。得られた化合物Cの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.3(クロロホルム);1H−NMR(CDCl3,400MHz) δ 0.81−0.91(m,54H),1.20−1.33(m,172H),1.69(m,20H),1.89(m,8H),2.22(m,8H),2.77(m,20H),5.16(m,4H),6.96−7.22(m,30H),7.30(m,8H),7.52−7.61(m,6H),7.73(m,8H),8.24−8.70(m,32H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix) m/z 5569(M+,calcd 5559).UV−Vis spectra in CHCl3,absmax=430nm,460nm,490nm,530nm.
【化55】
【0142】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、化合物Cは、+0.48の酸化電位(Ep.a)、−1.11及び−1.31の還元電位(Ered)が得られ両極性の伝導が可能であることを確認できた。
【0143】
(実施例2)
<化合物Dの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物B(500mg,0.19mmol)、ビス−トリブチルスタニル−オクタチオフェン(SnBu3−8T−SnBu3)(120mg,0.076mmol)、及び乾燥トルエン(3mL)を加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9mg,7.6μmol)を加え、アルゴン雰囲気下で5時間還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(アルミナ、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−3H,4H,溶離液 クロロホルム)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Dを黒赤色固体として得た(200mg、収率43%)。得られた化合物Dの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.3(クロロホルム);1H−NMR(CDCl3,400MHz) δ 0.81−0.91(m,54H),1.20−1.33(m,172H),1.69(m,20H),1.89(m,8H),2.22(m,8H),2.77(m,20H),5.16(m,4H),6.96−7.22(m,30H),7.30(m,8H),7.52−7.61(m,6H),7.73(m,8H),8.24−8.70(m,32H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix) m/z 6055.0(M+,calcd 6058.4).UV−Vis spectra in CHCl3,absmax=430nm,460nm,490nm,530nm.Anal.Calcd for C376H402N8O16S24:C,74.54;H,6.69;N,1.85.Found:C,74.30;H,6.45;N,1.74.
【化56】
【0144】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、化合物Dは、+0.45の酸化電位(Ep.a.)、−1.14及び−1.39の還元電位(Ered)が得られ両極性の伝導が可能であることを確認できた。
【0145】
(比較例1)
<化合物Eの合成>
窒素気流下、1,3,5−トリブロモベンゼン(89mg,0.28mmol)と4T−SnBu3(445mg,0.57mmol)とを含む無水トルエン溶液(50mL)に15分間窒素ガスを吹き込み脱気した。そしてPd(PPh3)4(33mg,28μmol)を加え、12時間還流した。その後セライトろ過により黒色沈殿を取り除き、溶媒を減圧下で留去した。得られた混合物からカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン:ヘキサン/1:9、Rf=0.3)により、下記式で表される化合物Eを単離した(122mg,収率38%,orange film)。
1H−NMR(CDCl3,270MHz) δ 0.86−0.95(m,12H),1.26−1.46(m,24H),1.63−1.78(m,8H),2.76−2.84(m,8H),6.94(d,J=5.1Hz,2H),7.03(d,J=3.8Hz,2H),7.09(d,J=3.5Hz,2H),7.15(d,J=3.8Hz,2H),7.15(d,J=3.5Hz,2H),7.18(d,J=5.1Hz,2H),7.21(s,2H),7.62(d,J=3.5Hz,2H),7.66(t,J=1.6Hz,1H).
【化57】
【0146】
<化合物Fの合成>
窒素気流下、SnBu3−4T−SnBu3(52mg,48μmol)と化合物E(122mg,0.11mmol)とを含む無水トルエン溶液(20ml)に15分間窒素ガスを吹き込み脱気した。そしてPd(PPh3)4(6mg,5μmol)を加え、12時間還流した。その後セライトろ過により黒色沈殿を取り除き、溶媒を減圧下で留去した。得られた混合物からカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン:ヘキサン/1:3,Rf=0.2)により、下記式で表される化合物Fを単離した(54mg,収率43%,red film)。
1H−NMR(CDCl3,270MHz) δ 0.86−0.95(m,30H),1.25−1.49(m,60H),1.66−1.75(m,20H),2.76−2.87(m,20H),6.95(d,J=5.4Hz,4H),7.04(d,J=3.8Hz,4H),7.11(d,J=3.8Hz,4H),7.12(d,J=3.8Hz,2H),7.15(d,J=3.8Hz,4H),7.16(d,J=3.8Hz,4H),7.18(d,J=5.4,4H),7.19(d,J=3.8Hz,2H),7.28(s,6H),7.68(s,6H).
【化58】
【0147】
CV測定の結果、化合物Fは、酸化側のピークは得られる(Ep.a.=+0.30)が、サイクル性が悪く不安定であった。また、還元側のピークは得られず、両極性の伝導はみられなかった。
【0148】
(実施例3)
<化合物Gの合成>
加熱乾燥し窒素置換した50mL二つ口フラスコに、クォータチオフェン−カルボキシアルデヒド(4T―CHO)を入れ、乾燥THF(14mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウム/ヘキサンを滴下した。30分間撹拌した後、塩化トリブチルスズを一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。反応溶液に水及びヘキサンを加え、有機層を水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過して除いた後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1)で精製することにより、目的物であるトリブチルスタニル−クォータチオフェン−カルボキシアルデヒド(SnBu3−4T−CHO)を得た。
【0149】
窒素置換した二つ口フラスコに、トリブチルスタニル−クォータチオフェン(4T―SnBu3)、3,5−ジブロモヨードベンゼンを入れ、乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え12時間加熱還流した。セライトろ過により固形物を取り除き、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)と再結晶(ヘキサン)で精製することにより、目的物であるPhBr2−4Tを黄色固体として得た。
【0150】
窒素置換した二つ口フラスコに、SuBu3−4T−CHO、及びPhBr2−4Tを入れ、乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え、12時間加熱還流した。セライトろ過により固形物を取り除き、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1)と再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物G(G1(CHO)−4T)を得た。
【化59】
【0151】
<化合物Hの合成>
加熱乾燥し窒素置換した20mL二つ口フラスコに、化合物Gを入れ、乾燥THFを加えた後、−78℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサンを滴下した。30分間撹拌した後、塩化トリブチルスズを一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌し、反応溶液に水とクロロホルムを加え、有機層を水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過して除いた後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/ジクロロメタン=4/1)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物H(G1(CHO)−4T−SnBu3)を得た。
【化60】
【0152】
<化合物Iの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物H(G1(CHO)−4T−SnBu3)、3,5−ジヨードブロモベンゼン、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Iを得た。
【化61】
【0153】
<化合物Jの合成>
窒素置換した二つ口フラスコに、化合物I、及びPh−8T−SnBu3を入れ、乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え、加熱還流した。セライトろ過により固形物を取り除き、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1)と再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Jを得た。
【化62】
【0154】
<化合物Kの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物J、C60、N−メチルグリシン、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流し、セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Kを得た。
【化63】
【0155】
(実施例4)
<化合物Lの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、(SnBu3−4T−CHO)、3,5−ジヨードブロモベンゼン、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Lを得た。
【化64】
【0156】
<化合物Mの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物L、SnBu3−8T−SnBu、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Mを得た。
【化65】
【0157】
<化合物Nの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物M、C60、N−メチルグリシン、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Nを得た。
【化66】
【0158】
(実施例5)
<有機薄膜素子1の作製及び太陽電池特性の評価>
150nmの厚みでITOを付けたガラス基板上に、実施例1で合成した化合物Cの濃度1.0質量%クロロホルム溶液を用い、スピンコート法により化合物Cの有機薄膜(厚さ100nm)を成膜した。次に、成膜した有機薄膜の上に、Al電極を100nmの厚みで真空蒸着し、有機薄膜素子1を作製した。
【0159】
有機薄膜素子1について、キセノンランプを分光した波長470nm、10μW/cm2の光を照射することにより、波長470nmでの太陽電池特性を測定した。短絡電流0.204μA/cm2、開放電圧0.46V、分光感度IPCE=5.5%、光電変換効率0.25が得られ、有機薄膜素子1は有機太陽電池として機能することが確認できた。
【0160】
有機薄膜素子1を窒素雰囲気中120℃で10分間アニールした後、同じ条件で太陽電池特性を測定した。短絡電流0.321μA/cm2、開放電圧0.81V、分光感度IPCE=8.5%、光電変換効率0.66が得られ、太陽電池特性が向上した。
【0161】
(実施例6)
<有機薄膜素子2の作製及び太陽電池特性の評価>
10nmの厚みでアルミ電極を付けたガラス基板上に、実施例3で合成した化合物Kの濃度1.0質量%クロロホルム溶液を用い、スピンコート法により化合物Kの有機薄膜(厚さ100nm)を成膜した。次に、成膜した有機薄膜の上に、金電極を10nmの厚みで真空蒸着することにより、有機薄膜素子2を作製した。
【0162】
有機薄膜素子2について、10μW/cm2の光を照射したときの分光感度を測定した。図12に示すように、400〜550nmの波長範囲で良好な感度が得られ、有機薄膜素子2は有機太陽電池及び光センサとして機能することが確認できた。
【0163】
(実施例7)
<有機薄膜素子3の作製及び太陽電池特性の評価>
化合物Cに代えて、実施例2で合成した化合物Dを用いたこと以外は実施例5と同様にして、有機薄膜素子3を作製した。
【0164】
有機薄膜素子3について、キセノンランプを分光した波長410nm、10μW/cm2の光を照射することにより、波長410nmでの太陽電池特性を測定した。短絡電流0.224μA/cm2、開放電圧0.66V、分光感度IPCE=6.7%、光電変換効率0.4が得られ、有機薄膜素子3は有機太陽電池として機能することが確認できた。
【0165】
(実施例8)
<化合物Oの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン(1.00g,5.03mmol)、4−ヨードアニリン(1.10g,5.03mmol)、ナフタレンテトラカルボキシ二無水物(1.35g,5.03mmol)、酢酸(2.4g,0.4mmol)、及びNメチルピロリドン(NMP)25mlを加えた。バブリングにより脱気後、N2雰囲気下90℃で終夜反応させた。反応液にエタノールを加え、析出した沈澱固形物をセライトろ過により取り除き、減圧濃縮した。その後、水を加え、析出した沈澱固形物をセライトろ過により濾取した。得られた固形物をアセトンで再結晶精製し、更にカラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/クロロホルム=1/1)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Oを黄色固体として得た(780mg、収率25%)。得られた化合物Oの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.3(hexane:CHCl3=1:1);1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ 5.04(t,J=15.4Hz,2H),7.08(d,J=6.5Hz,2H),7.91(d,J=6.5Hz,1H),8.84−8.88(m,4H):MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 650.3(M+,calcd 649.0)
【化67】
【0166】
<化合物Pの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、SnBu3−6T−SnBu3(1.60g,1.13mmol)、化合物O(300mg,0.462mmol)、及び乾燥トルエン15mlを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(25mg,0.023mmol)を加え、N2雰囲気下で2時間還流した。減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/クロロホルム=2/1)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Pを赤色固体として得た(180mg、収率24%)。得られた化合物Pの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.2(CHCl3);1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ 0.90−0.93(m,21H),1.09−1.13(m,6H),1.32−1.38(m,30H),1.57−1.71(m,14H),2.78−2.84(m,8H),5.00−5.08(m,2H),6.95−7.14(m,8H),7.33−7.35(m,2H),7.77−7.79(m,2H),8.83−8.88(m,4H):MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxy−anthracene matrix)m/z 1642.4(M+,calcd 1641.5)
【化68】
【0167】
<化合物Qの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物P(180mg,0.112mmol)、3,5−ジヨードブロモベンゼン(22mg,0.055mmol)、及び乾燥トルエン4mlを加えた。バブリングにより脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(4mg,4μmol)を加え、N2雰囲気下で3時間還流した。減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,eluent CHCl3)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Qを黒赤固体として得た(60mg、収率37%)。得られた化合物Qの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.2(CHCl3);1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ 0.91−0.93(m,24H),1.34−1.46(m,48H),1.69−1.74(m,16H),2.79−2.83(m,16H),5.00−5.08(m,4H),7.03−7.23(m,16H),7.33−7.35(m,4H),7.61−7.66(m,3H),7.77−7.79(m,4H),8.85−8.89(m,8H):MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxy−anthracene matrix)m/z 2858.66(M+,calcd 2903.7)
【化69】
【0168】
<化合物Rの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物Q(60mg,0.021mmol)、SnBu3−6T−SnBu3(15mg,0.01mmol)、及び乾燥トルエン3.0mlを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.2mg,1.0μmol)を加え、N2雰囲気下で5時間還流した。減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−3H,4H,eluent CHCl3)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Rを赤色固体として得た(20mg、収率32%)。得られた化合物Rの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.2(CHCl3);1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ 0.90−0.95(m,60H),1.26−1.51(m,120H),1.70−1.75(m,40H),2.79−2.83(m,40H),4.98−5.05(m,8H),7.00−7.24(m,40H),7.30−7.32(d,8H),7.62(s,6H),7.75−7.77(m,8H),8.82−8.86(m,16H):MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxy−anthracene matrix)m/z 6357.52(M+,calcd6384.79)
UV−Vis spectra in CHCl3,absmax=360nm,380nm,430nm
【化70】
【0169】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、化合物Rは、+0.26の酸化電位(Ep.a)、−1.05及び−1.51の還元電位(Ered)が得られ、両極性の伝導が可能であることを確認できた。
【0170】
(比較例2)
<化合物Sの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物A(200mg,0.13mmol)、塩化銅(II)(36mg,0.26mmol)、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングにより脱気後、酢酸パラジウム(II)(3.00mg,0.013mmol)を加え、アルゴン雰囲気下室温で15分反応を行った。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,eluent CHCl3)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Sを黒赤固体として得た(50mg、収率30%)。得られた化合物Sの分析結果を以下に示す。
Dark−red solid;Mp207−209℃;TLC Rf=0.5(CHCl3);1H−NMR(CDCl3)δ 0.81−0.85(m,12H),0.90−0.94(m,12H),1.21−1.53(m,80H),1.67−1.71(m,8H),1.85−1.91(m,4H),2.21−2.29(m,4H),2.74−2.83(m,8H),5.15−5.22(m,2H),6.99(s,2H),7.04(d,J=3.9Hz,2H),7.08(d,J=3.9Hz,2H),7.14(d,4H),7.22(s,2H),7.36(d,J=8.5Hz,4H),7.76(d,J=8.5 Hz,4H),8.61−8.74(m,16H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 2458.7(M+,calcd2456.1);Anal.Calcd for C154H166N4O8S8:C,75.27;H,6.81;N,2.28;Found:C,74.89;H,6.60;N,2.15
UV−Vis spectra in CHCl3,absmax=440nm,460nm,490nm,530nm
【化71】
【0171】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、化合物Sは、+0.25の酸化電位(Ep.a)、−1.11及び−1.32の還元電位(Ered)が得られ、両極性の伝導が可能であった。
【0172】
(比較例3)
<有機薄膜素子4の作製及び太陽電池特性の評価>
化合物Cに代えて、比較例2で合成した化合物Sを用いたこと以外は実施例5と同様にして、有機薄膜素子4を作製した。
【0173】
有機薄膜素子4について、キセノンランプを分光した波長460nm、10μW/cm2の光を照射することにより、波長460nmでの太陽電池特性を測定した。短絡電流0.025μA/cm2、開放電圧0.22V、分光感度IPCE=0.67%、光電変換効率0.014が得られ、有機薄膜素子4は有機太陽電池として機能することが確認できたが、特性は著しく低かった。
【0174】
比較のため、上記で得られた有機薄膜素子1、3及び4の分光感度特性を図13に示す。図13中、グラフaは有機薄膜素子1の分光感度特性、グラフbが有機薄膜素子3の分光感度特性、グラフcが有機薄膜素子4の分光感度特性をそれぞれ示す。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図8】実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
【図9】第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図10】第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図11】第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図12】有機薄膜素子2の分光感度特性を示す図である。
【図13】有機薄膜素子1、3及び4の分光感度特性を示す図である。
【符号の説明】
【0176】
1…基板、2…活性層、2a…活性層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る太陽電池、300…第1実施形態に係る光センサ、310…第2実施形態に係る光センサ、320…第3実施形態に係る光センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐型化合物、これを用いた有機薄膜及び有機薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子又はホール)輸送性を有する有機材料を含む薄膜は、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等の有機薄膜素子への応用が期待されており、有機p型半導体(ホール輸送性を示す)および有機n型半導体(電子輸送性を示す)の開発が種々検討されている。
【0003】
有機p型半導体材料として、オリゴチオフェン、ポリチオフェンなどチオフェン環を有する化合物が、安定なラジカルカチオン状態をとりうることから高いホール輸送性を示すことが期待されている。特に鎖長の長いオリゴチオフェンは共役長が長くなり、より効率よくホール輸送できることが予想されている。
【0004】
近年、有機p型半導体と有機n型半導体の両方の性質を持つ両極性有機半導体材料が注目され、種々検討されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】Yoshihito Kunugi et al., J. Mat. Chem., 2004, vol.14, p.2840.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機p型半導体と有機n型半導体の両方の性質を持つ両極性の有機半導体を用いた有機薄膜素子の実用化という観点からは、高い電荷輸送性が求められているが、上述した公知の材料では未だ十分な性能とは言い難い。
【0006】
そこで、本発明の目的は、電荷輸送性に優れる両極性の有機半導体として利用可能な分岐型化合物を提供することにある。本発明の目的はまた、この分岐型化合物を含む有機薄膜、及びこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、コア部と、該コア部に結合した少なくとも1つの側鎖部と、末端と、から構成される分岐型化合物であって、上記側鎖部の少なくとも1つは、下記一般式(1)で表される繰返し単位が1又は2以上繰り返しており(但し、コア部と結合する前記繰返し単位においては、Tがコア部に結合しており、2以上繰り返す前記繰返し単位においては、LがTに結合している。)、Lは、共役形成単位が複数連結して構成され、上記共役形成単位として少なくとも一つのチエニレン単位を含み、Lの末端(Tと結合していない側のLの末端)に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基である、分岐型化合物を提供する。
【化1】
(式中、Lは置換基を有していてもよい2価の有機基を示し、Tは置換基を有していてもよい3価の有機基を示す。)
【0008】
本発明の分岐型化合物は、少なくとも側鎖部にチオフェン環構造を備えることから環同士の共役平面性が良好となり、分子間の相互作用を強くすることができるため、電荷輸送性に優れた有機p型半導体として利用可能である。また、末端にアクセプター性の基を有するLが2つ以上含まれるため、側鎖部の有機p型半導体の性質(ドナー性)に加え、末端部の有機n型半導体の性質(アクセプター性)を合わせ持つことができ、両極性の有機半導体として機能する。また、ドナー性を示す側鎖部と、アクセプター性を示す末端部が隣接していることから、ドナー・アクセプター間での電荷移動が起こりやすくなり、吸収端の長波長化、エキシトンの電荷分離効率向上等の効果が期待される。これらに加え、本発明の分岐型化合物は、化合物の安定性および有機溶剤への溶解性が優れているため、溶液を用いて薄膜を形成することで、性能の優れた有機薄膜素子が製造可能となる。
【0009】
本発明の分岐型化合物において、側鎖部は、その全てが、上記一般式(1)で表される繰返し単位が1又は2以上繰り返してなることが好ましい。
【0010】
本発明の分岐型化合物において、コア部、T及びLが全体として共役して分岐型共役化合物を形成していることが好ましい。このような構造をとることで、分子全体として平面性が高くなるとともに共役性が高まり、有機p型半導体として使用した場合の電荷輸送性に顕著に優れることになる。
【0011】
本発明の分岐型化合物は、一般式(1)で表される繰返し単位の2以上が、Tでコア部と結合していることが好ましく、Lは、下記一般式(2)で表される2価の有機基が好ましい。
【化2】
【0012】
式(2)中、Ar1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R1、R2、R3及びR4が複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、m、n及びoは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、m及びoのうちの少なくとも一方は1以上の整数であり、m+n+oは2〜16の整数を示す。
【0013】
このような構造を有する分岐型化合物は、共役性が良好であり、化合物の安定性も特に優れるようになる。したがって、電荷輸送性に一層優れ、有機p型半導体として適用したときに優れた特性を発揮する。
【0014】
本発明の分岐型化合物においては、Tが下記式(3)〜(7)で表される3価の有機基のいずれかであることが好ましく、下記式(4’)で表される3価の有機基が特に好ましい。
【化3】
なお、式(3)中、R5は、水素原子、アルキル基、アリール基又はシアノ基を示す。
【化4】
【0015】
また、下記一般式(8)で表される2価の有機基がコア部として特に好ましい。
【化5】
【0016】
式(8)中、Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R6、R7、R8及びR9が複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、p、q及びrは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、p+q+rは2〜20の整数を示す。
【0017】
上述のようなコア部から構成される分岐型化合物は、さらに共役性に優れるものとなり、電荷輸送性により一層優れる有機p型半導体として利用可能となる。特に、Lが一般式(2)で表される2価の有機基である場合は、分子全体としての均一性が優れることになり、分子全体としての共役性が高まり、有機p型半導体として使用した場合の電荷輸送性が大幅に向上する。
【0018】
上記一般式(1)で表される繰返し単位は、下記一般式(9)で表される繰返し単位であることが好適である。
【化6】
【0019】
式(9)中、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。複数存在するR10及びR11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、kは、3〜10の整数を示す。複数存在するkは同一でも異なっていてもよい。
【0020】
Lの末端に存在する基については、少なくとも2つがアクセプター性の基であればよく、C60、C70等のフラーレン類の誘導体残基を含む基、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基又はペリレンイミド誘導体残基を含む基であることが好ましい。これらアクセプター性の基を末端に持つLを2以上有することにより、分子間でアクセプター性の基同士が相互作用し易くなり、コア部及び側鎖部の有機p型半導体の性質に加え、末端部の有機n型半導体の性質を合わせ持つことができ、両極性の有機半導体として機能する。Lの末端に存在するアクセプター性の基以外の基としては、フェニル基が好ましい。側鎖部の有機p型半導体の性質と、末端部の有機n型半導体の性質を有効に発現させるため、側鎖部と末端部は共役が切れていることが好ましい。
【0021】
本発明は、更に、上記有機薄膜を備える有機薄膜素子、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池及び光センサを提供する。
【0022】
このような有機薄膜、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池及び光センサは、上述のように優れた両極性の電荷輸送性を示す本発明の分岐型化合物を用いて形成されているため、優れた性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電荷輸送性に優れる両極性の有機半導体として利用可能な新規の分岐型化合物を提供することができる。また、本発明によれば、この分岐型化合物を含有する有機薄膜及びこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することができる。また、この有機薄膜素子は安定性に優れたものになり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
本発明の分岐型化合物は、コア部と、該コア部に結合した少なくとも1つの側鎖部と、末端と、から構成され、いわゆるデンドリマー(デンドリックポリマー)、ハイパーブランチポリマー、スターバーストポリマーといった構造をとり得る化合物である。側鎖部の骨格は一般式(1)で表され、好適な側鎖部は上述の通りである。コア部については、x価の有機基が好ましい(xは1以上の整数であり、側鎖部の数に対応する。以下同様)。コア部としては、x価の芳香族炭化水素基、x価の複素環基、x価のアリールアミン又はその誘導体の残基、もしくはそれらを組み合わせた有機基が例示される。Lの末端に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基であれば特に限定されないが、C60、C70等のフラーレン類の誘導体残基を含む基、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基又はペリレンイミド誘導体残基を含む基であることが好ましい。
【0026】
x価の芳香族炭化水素基とは、ベンゼン環又は縮合環から水素原子x個を除いた残りの原子団をいい、通常炭素数6〜60、好ましくは6〜20である。縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、ルブレン環、フルオレン環が挙げられる。これらの中でもベンゼン環から水素原子x個以上を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、x価の芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、x価以上の芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0027】
また、x価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子x個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は、通常3〜60、好ましくは3〜20である。複素環式化合物としては、例えば、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾールが挙げられる。これらの中でもチオフェン、ピリジン、ピリミジン、トリアジンから水素原子x個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、x価の複素環基上に置換基を有していてもよく、x価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0028】
x価のアリールアミン又はその誘導体からなる基とは、アミンに1以上のアリール基を置換した化合物またはその化合物を複数結合した化合物などの誘導体から水素原子x個除いた残りの原子団をいう。アリールアミン又はその誘導体としては、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、N,N’−テトラフェニル−フェニレンジアミン、N,N’−テトラフェニル−ビフェニレンジアミン等が例示され、トリフェニルアミンが好ましい。
【0029】
コア部は、下記一般式(8)で表される単位であると、分岐型化合物の共役性がさらに向上し、電荷輸送性が向上するため、より好ましい。
【化7】
【0030】
式(8)中、Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R6、R7、R8及びR9が複数存在するときは、複数のR6、R7、R8及びR9は同一でも異なっていてもよい。また、p、q及びrは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、p+q+rは2〜20の整数である。
【0031】
電荷輸送性を高める観点から、上記一般式(8)においてqが0の場合、すなわち、コア部がすべてチオフェン環からなるものが好ましく、p+q+rが2〜16のものがさらに好ましい。有機溶媒への溶解性を高める観点から、R6、R7、R8及びR9の少なくとも一つは水素原子でないことが好ましい。
【0032】
上記一般式(2)及び(8)において、Ar1及びAr2で表される2価の芳香族炭化水素基とは、ベンゼン環又は縮合環から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、通常炭素数6〜60、好ましくは6〜20である。縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、ルブレン環、フルオレン環が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びフルオレン環から水素原子2個を除いた残りの原子団が好ましい。なお、2価の芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、2価の芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0033】
また、Ar1及びAr2で表される2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は、通常3〜60、好ましくは3〜20である。複素環式化合物としては、例えば、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾールが挙げられる。2価の複素環基としては、チオフェン、チエノチオフェンから水素原子2個を除いた残りの原子団が好ましい。なお、2価の複素環基上に置換基を有していてもよく、2価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0034】
R1〜R11で表されるアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基などが挙げられ、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基がさらに好ましい。
【0035】
R1〜R4およびR6〜R9で表されるアルコキシ基としては、上述のアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基が例示される。
【0036】
R1〜R11で表されるアリール基としては、炭素数6〜60のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示され、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0037】
R1〜R4およびR6〜R9で表される1価の複素環基としては、炭素数4〜60の1価の複素環基が好ましく、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基などが例示され、炭素数4〜20の1価の複素環基が好ましく、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基がより好ましい。
【0038】
また、本発明の分岐型化合物において、Lの末端に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基であればよく、例えばオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン誘導体、C60、C70等のフラーレン類の誘導体、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基、ペリレンイミド誘導体残基を含む基が例示され、C60、C70等のフラーレン類誘導体残基を含む基、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基、ペリレンイミド誘導体残基を含む基が好ましく、ペリレン顔料誘導体残基を含む基であることがより好ましい。合成のし易さという観点から、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基が特に好ましい。アクセプター性の基の電子吸引性を強めるという観点から、アクセプター性の基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0039】
また、本発明の分岐型化合物において、Lの末端に存在するアクセプター性の基以外の基としては、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基として、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基又は置換フェニル基が好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、飽和又は不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられ、これらの基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。分岐型化合物の安定性の観点から、フェニル基又は置換フェニル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0040】
C60、C70等のフラーレン類誘導体残基を含む基としては、下記式が例示される。
【化8】
【化9】
【化10】
ここで、R01は1価の有機基、R02は2価の有機基を示す。
【0041】
ペリレンイミド誘導体残基を含む基としては、下記式が例示される。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0042】
ここで、R01は1価の有機基、R02は2価の有機基、R03は3価の有機基を示し、複数ある場合はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Aは、アルキル基、アルコキシ基、スルホニル基、アミノ基、アンモニウム基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲンを示し、gは0〜8までの整数を示す。
【0043】
ナフタレンイミド誘導体残基を含む基としては、下記式が例示される。
【0044】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【0045】
ここで、R01は1価の有機基、R02は2価の有機基、R03は3価の有機基を示し、複数ある場合はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0046】
R01で表される1価の有機基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が例示され、これらの基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。アリール基、1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。電子吸引性を強めるという観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている基が好ましく、アルキル基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている基がより好ましい。
【0047】
R02で表される2価の有機基としては、アルキレン基、ビニレン基、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフェニル基、スルホニル基、モノ置換アミノ基及びベンゼン環、縮合環又は複素環などの環構造から水素原子2個を除いた残りの原子団が例示され、これらの原子団における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。これらの中でもアルキレン基、ベンゼン環から水素原子2個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、環構造を有する基上に置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0048】
R03で表される3価の有機基としては、ベンゼン環、縮合環又は複素環などの環構造から水素原子3個を除いた残りの原子団が例示され、これらの原子団における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。これらの中でもベンゼン環から水素原子3個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、環構造を有する基上に置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0049】
次に、本発明の分岐型化合物の構成について、更に詳細に説明する。本発明の分岐型化合物は、上述したように、上記一般式(1)で表される繰返し単位を含み、末端にアクセプター性の基を有するLを少なくとも2つ有していればよく、上記一般式(1)で表される繰返し単位を2種類以上含んでいてもよい。また複数あるLの末端に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基であればよく、同一でも異なっていてもよい。本発明の分岐型化合物は、電子輸送性を向上させるという観点から、末端にアクセプター性の基を有するLを4以上有することが好ましく、すべてのLがアクセプター性の基を有することがより好ましい。製造の容易さ、分子間の相互作用のし易さの観点から、複数ある末端基は同一であることが好ましい。
【0050】
本発明の分岐型化合物としては、下記一般式(a)、(b)、(c)及び(d)で表される分岐型化合物が例示される。
【0051】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【0052】
ここで、Xはコア部を表し、YはLの末端に存在する基を表す。TX、LX及びYX(Xは1〜8の整数)は、それぞれT、L及びYと同義であり、T、L及びYと同一でも異なっていてもよい。製造の容易さという観点からすれば、TX、LX及びYXは、それぞれT、L及びYと同一であることが好ましい。
【0053】
本発明の分岐型化合物は、電荷輸送性を高め、安定性に優れるという観点から、下記一般式(e)又は(f)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0054】
【化31】
【0055】
【化32】
【0056】
式(e)及び(f)中、Rは水素原子又はアルキル基を示し、複数あるRは同一でも異なっていてもよい。複数連結した一連のチオフェン環の置換基Rの少なくとも1つは、水素原子でないことが好ましい。Acはアクセプター性の基またはフェニル基を示し、複数あるAcは同一でも異なっていてもよい。ただし、Acの少なくとも2つはアクセプター性の基である。t及びuはそれぞれ独立に、2〜16の整数を示す。
【0057】
本発明の分岐型化合物の製造方法としては、以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。
【0058】
本発明の分岐型化合物は、上記一般式(1)で表される繰返し単位を含む化合物をモノマーとして用いて、以下に示すスキームA、A’、A’’、B又はB’で製造することができる。スキームAはスキームA−1〜3からなり、スキームBはスキームB−1〜3からなる。
【0059】
<スキームA>
【化33】
【化34】
【化35】
【0060】
【化36】
【0061】
【化37】
【0062】
<スキームB>
【化38】
【化39】
【化40】
【0063】
【化41】
【0064】
ここで、X、T、L及びYは上記と同義であり、X1及びX2はXの部分構造を表す。W1〜W3(Wで表すことがある)と、V1〜V3(Vで表すことがある)は互いに反応する活性官能基を表し、Mは水素原子または活性官能基を表し、Zは保護基を表す。また、hは2以上の整数である。
【0065】
スキームA及びBでは、上記式(1)で表される繰返し単位を導入する工程が2回の例を示している。すなわち、コア部と、該コア部に結合した上記一般式(1)で表される繰返し単位(第1世代と呼ぶ)及びその外側に結合した上記一般式(1)で表される繰返し単位(第2世代と呼ぶ)とからなる側鎖部から構成される分岐型化合物の製造方法を示したものである。
【0066】
本発明の分岐型化合物の世代数は、1以上であればよい。電荷輸送性の観点からは、上記式(1)で表される繰返し単位の数を多く含むことが好ましいことから世代数は多い方が好ましいが、製造工程が長くなる。一般式(1)で表される繰返し単位の密集性及び合成の容易性から世代数は適宜選択され、世代数として1〜8が好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜3が特に好ましい。各世代における一般式(1)で表される繰返し単位は、同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
また、本発明の分岐型化合物は以下のスキームCを用いても製造することができる。スキームCは、スキームC−1〜4からなる。
【0068】
<スキームC>
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【0069】
また、スキームC−2で得られた化合物(34)を用いて下記のスキームDで製造することもできる。スキームDはスキームD−1及び2からなる。
【0070】
<スキームD>
【化46】
【化47】
【0071】
ここで、X、T、L及びYは上記と同義であり、X1はXの部分構造を表す。W1〜W5(Wで表すことがある)とV1〜V5(Vで表すことがある)は互いに反応する活性官能基を表すが、VとWとの間の反応性に比べて、WとWとの間の反応性が低い官能基を選択することが好ましい。M及びM’は水素原子または活性官能基を表し、TMSは保護基であり、トリメチルシリル基を表す。
【0072】
スキームCおよびDで製造する場合においても、世代数2の場合を例に示したものであるが、世代数を1以上にすることも可能であり、一般式(1)で表される繰返し単位の密集性と合成の容易性から世代数は適宜選択されれば良く、世代数として1〜8が好ましく、2〜6がさらに好ましくは、2〜3が特に好ましい。各世代における一般式(1)で表される繰返し単位は、同一であっても異なっていてもよい。
【0073】
以下、本発明の分岐型化合物の製造方法について、さらに詳しく説明する。
【0074】
活性官能基VとWを結合させる反応には、例えば、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、脱ハロゲン化反応を用いる方法が挙げられる。
【0075】
これらのうち、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法が、原料の入手しやすさと反応操作の簡便さから好ましい。
【0076】
Suzukiカップリング反応の場合は、触媒として、例えばパラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類などを用い、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基、フッ化セシウムなどの無機塩をモノマーに対して当量以上、好ましくは1〜10当量加えて反応させる。無機塩を水溶液として、2相系で反応させてもよい。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどが例示される。反応温度は、使用する溶媒にもよるが50〜160℃程度が好ましい。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は1時間から200時間程度である。Suzukiカップリング反応については、例えば、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)に記載されている。
【0077】
Stille反応の場合は、触媒として、例えばパラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類などを用い、有機スズ化合物をモノマーとして反応させる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどが例示される。反応温度は、使用する溶媒によるが、50〜160℃程度が好ましい。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は1時間から200時間程度である。
【0078】
活性官能基としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基、ホルミル基、アルキルスタニル基、ビニル基が例示され、用いる反応に応じて適宜組み合わせを選択し用いることができる。ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
【化48】
【0079】
活性官能基VおよびWの組合せとして、例えばSuzukiカップリング反応を用いる方法では、ハロゲン原子とホウ酸エステル残基またはホウ酸残基との組み合わせが好ましく、Stille反応を用いる方法では、ハロゲン原子とアルキルスタニル基の組み合わせが好ましい。
【0080】
保護基としては、保護したい部位及び用いる反応によって適した基を選択すればよく、Protective Groupes in Organic Syntehesis, 3rd ed. T.W. GreeneandP.G. M.. Wuts, 1999 John Willey & Sons, Inc. に記載されている保護基が好ましい。例えば、保護したい部位がアルキンの場合、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基、ビフェニルジメチルシリル基などのアリールジアルキルシリル基、2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられ、トリメチルシリル基が好ましい。
【0081】
反応させるモノマーは、必要に応じ、有機溶媒に溶解し、例えばアルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で、反応させることができる。
【0082】
有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために、十分に脱酸素処理を施したものを用い、不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、同様に、脱水処理を行うことが好ましい(但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない)。
【0083】
本発明の分岐型化合物を製造する際、適宜アルカリや適当な触媒を添加することができる。これらは用いる反応に応じて選択すればよい。また、上記アルカリ又は触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものを使用することが好ましい。
【0084】
本発明の分岐型化合物を有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるため、反応前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに反応に用いることが好ましく、また合成後、昇華精製、再結晶、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0085】
反応に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が例示され、単一溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いてもよい。
【0086】
反応後は、例えば水でクエンチした後に有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する等の通常の後処理で生成物を得ることができる。生成物の単離後及び精製は、クロマトグラフィーによる分取や再結晶等の方法により行うことができる。
【0087】
次に、本発明の有機薄膜について説明する。本発明の有機薄膜は、上記本発明の分岐型化合物を含有することを特徴とする。
【0088】
有機薄膜の膜厚としては、通常1nm〜100μm程度であり、好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましいのは20nm〜200nmである。
【0089】
有機薄膜は、上記分岐型化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また上記分岐型化合物の2種類以上を含むものであってもよい。また、有機薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるため、上記分岐型化合物以外に電子輸送性又はホール輸送性を有した低分子化合物又は高分子化合物を混合して用いることもできる。
【0090】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えばピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が例示される。電子輸送性材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体等が例示される。
【0091】
また、本発明の有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては公知のものが使用でき、アゾ化合物及びその誘導体、ジアゾ化合物及びその誘導体、無金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、ペリレン化合物及びその誘導体、多環キノン系化合物及びその誘導体、スクアリリウム化合物及びその誘導体、アズレニウム化合物及びその誘導体、チアピリリウム化合物及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が例示される。
【0092】
さらに、本発明の有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要な材料を含んでいてもよく、例えば、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、安定性を増すための安定化剤、UV光を吸収するためのUV吸収剤等を含んでいてもよい。
【0093】
また、本発明の有機薄膜は、機械的特性を高めるため、上記分岐型化合物以外の高分子化合物材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0094】
このような高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0095】
本発明の有機薄膜の製造方法としては、例えば、上記分岐型化合物、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを含む溶液からの成膜による方法が例示される。また、本発明の分岐型化合物は真空蒸着法により薄膜に形成することもできる。
【0096】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、分岐型化合物及び混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを溶解させるものであればよい。
【0097】
本発明の有機薄膜を溶液から成膜する場合に用いる溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が例示される。分岐型化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1質量%以上溶解させることができる。
【0098】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法を用いることが好ましい。
【0099】
本発明の有機薄膜は、成膜後にアニール処理が施されることが好ましい。アニール処理により、分岐型化合物間の相互作用が促進される等、有機薄膜の膜質が改善され、電子移動度又はホール移動度が向上する。アニール処理の処理温度としては、50℃から分岐型化合物のガラス転移温度(Tg)付近の間の温度が好ましく、(Tg−30℃)からTgの間の温度がより好ましい。アニール処理する時間としては、1分から10時間が好ましく、10分から1時間がより好ましい。アニール処理する雰囲気としては、真空中又は不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0100】
本発明の有機薄膜は、電子輸送性又はホール輸送性を有することから、電極から注入された電子又はホール、又は光吸収により発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜発光トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等種々の有機薄膜素子に用いることができる。
【0101】
本発明の有機薄膜は、ホール輸送性及び電子輸送性の両極性を有することから、電極から注入されたホール又は光吸収により発生したホール又は電子の輸送を制御することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜発光トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等種々の有機薄膜素子に用いることができる。
【0102】
(有機薄膜トランジスタ)
まず、好適な実施形態に係る有機薄膜トランジスタについて説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の分岐型化合物を含む有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造であればよく、電界効果型、静電誘導型などが例示される。
【0103】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の分岐型化合物を含む有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、本発明の分岐型化合物を含む有機薄膜層(活性層)に接して設けられており、さらに有機薄膜層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0104】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、該ゲート電極が有機薄膜層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機薄膜層中に設けられたゲート電極が、本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0105】
図1は第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0106】
図2は第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0107】
図3は、第3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0108】
図4は第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された活性層2と、を備えるものである。
【0109】
図5は第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0110】
図6は第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0111】
図7は第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一でも異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0112】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本発明の分岐型化合物を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2及び/又は活性層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0113】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開2004−006476号公報記載の方法により製造することができる。
【0114】
基板1としては、有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板を用いることができる。
【0115】
活性層2を形成する際に、有機溶媒可溶性の化合物を用いることが製造上非常に有利であり好ましいことから、上記で説明した本発明の有機薄膜の製造方法を用いて、活性層2となる有機薄膜を形成することができる。
【0116】
活性層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。例えばSiOx,SiNx、Ta2O5、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス等が挙げられる。低電圧化の観点から、誘電率の高い材料の方が好ましい。
【0117】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物等が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV、O2プラズマで処理をしておくことも可能である。
【0118】
有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが、大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成するときの影響を低減することができる。
【0119】
保護膜を形成する方法としては、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため有機薄膜トランジスタを作成後保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等)行うことが好ましい。
【0120】
本発明の有機薄膜トランジスタは、両極性有機半導体として機能する分岐型化合物を活性層に用いることにより有機薄膜発光トランジスタとしても用いることができる。
【0121】
次に、本発明の有機薄膜の太陽電池への応用を説明する。図8は、実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。図8に示す太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0122】
本実施形態に係る太陽電池においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極として、仕事関数の差が大きくなるように選ばれることが好ましい。活性層2(有機薄膜)中には光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。基材1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0123】
次に、本発明の有機薄膜の光センサへの応用を説明する。図9は、第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。図9に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0124】
図10は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。図10に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0125】
図11は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。図11に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の分岐型化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0126】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。活性層2(有機薄膜)中には光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。また基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0128】
(測定条件等)
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名JMN−270(1H測定時270MHz)、又は同社製の商品名JMNLA−600(13C測定時150MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。質量分析(MS)は、PerSeptive Biosystems社Voyager Linear DE-H MALDI-TOF MS(商品名)を用いて測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silicagel60N(40〜50μm)を用いた。またアルミナは、Merck社製の商品名aluminium oxide 90standardizedを用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社、より購入した。
【0129】
サイクリックボルタンメトリーは、BAS社製の装置を使用し、作用電極としてBAS社製Pt電極、対電極としてPt線、参照電極としてAg線を用いて測定した。この測定時の掃引速度は100mV/sec、走査電位領域は−2.8V〜1.6Vであった。還元電位及び酸化電位の測定は、化合物1×10−3mol/L、及び、支持電解質としてのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート(TBAPF6)0.1mol/Lを塩化メチレン溶媒に完全に溶解し測定した。
【0130】
(参考合成例1)
<SnBu3−4T−SnBu3の合成>
加熱乾燥し窒素置換した30mL二つ口フラスコに、5,5’’’−ジブロモ−3,3’’’−ジヘキシル−クォータチオフェン(Br−4T−Br)(230mg,0.35mmol)を入れ、乾燥THF(3mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、1.6Mn−ブチルリチウム/ヘキサン(0.66mL,1.05mmol)を滴下した。30分間後撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.25mL,1.4mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。次に、反応溶液に水(1mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を、水(20mL)を用い2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン)で精製することにより、下記式で表される目的物(SnBu3−4T−SnBu3)(360mg,収率96%)を黄色オイルとして得た。
【化49】
【0131】
(参考合成例2)
<Ph−4T−SnBu3の合成>
窒素置換した50mL二つ口フラスコに、5−ブロモ−3,3’’’−ジヘキシル−クォータチオフェン(4T−Br)(1.30g,2.25mmol)、フェニルボロン酸(410mg,3.38mmol)、炭酸ナトリウム(715mg,6.75mmol)、及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(130mg,0.11mmol)を入れ、DME(10mL)及び精製水(1mL)を加えた。これを、12時間加熱還流した後、セライトろ過により固形物を取り除き、水(20mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を水20mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過して除いた後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)で精製することにより、目的物(4T−Ph)(1.2g,収率93%)を黄色オイルとして得た。
【0132】
加熱乾燥し窒素置換した50mL二つ口フラスコに、上記で得られた4T−Ph(0.8g,1.4mmol)を入れ、乾燥THF(14mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、1.6Mのn−ブチルリチウム/ヘキサン(1.7mL,2.8mmol)を滴下した。30分間撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.75mL,4.2mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し、3時間撹拌した。反応溶液に水(20mL)及びヘキサン(20mL)を加え、有機層を水(20mL)で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過して除いた後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1)で精製することにより目的物(Ph−4T−SnBu3)を黄色オイルとして得た(1.32g,収率93%)。
【0133】
(参考合成例3)
<Ph−8T−SnBu3>
窒素置換した100mLフラスコに、3,3’’’−ジヘキシル−クォータチオフェン(4T)(1.37g,2.75mmol)、THF(20mL)を入れた後、0℃に冷却し、NBS(514mg,2.88mmol)を加え、3時間攪拌した。その後、反応溶液に水(2mL)を加え、反応を停止させた。有機層を、水20mLを用い2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)で精製することにより、目的物(4T−Br)を黄色オイルとして得た(915mg,収率57%)。
【0134】
窒素置換した30mLフラスコに、Ph−4T−SnBu3(300mg,0.347mmol)、及び4T−Br(300mg,0.52mmol)を入れた後、乾燥トルエン(5mL)を加えた。脱気後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(18mg,0.017mmol)を加え、12時間加熱還流した。減圧濃縮、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)で精製することにより、目的物(Ph−8T)を赤色オイルとして得た(301mg,収率81%)。
【0135】
加熱乾燥し窒素置換した30mL二つ口フラスコに、Ph−8T(131mg,0.123mmol)を入れ、乾燥THF(14mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン(0.23mL,0.37mmol)を滴下した。30分間撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.13mL,0.49mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。反応溶液に水(20mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を、水(20mL)を用い2回洗浄した後、目的物(Ph−8T−SnBu3)を含む黄色オイルを得た。
【0136】
(参考合成例4)
<4T−SnBu3の合成>
加熱乾燥し窒素置換した100mL三つ口フラスコに、4T(1.98g,3.97mmol)を入れた。乾燥THF(40mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン(2.5mL,4.0mmol)を滴下した。30分間後撹拌した後、塩化トリブチルスズ(1.2mL,4.4mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。反応溶液に水(20mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を水(20mL)で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,eluent CHCl3)で精製することにより、下記式で表される目的物(4T−SnBu3)を黄色オイルとして得た(1.64g,収率52%)。
【化50】
【0137】
(参考合成例5)
<SnBu3−8T−SnBu3の合成>
加熱乾燥し窒素置換した10mL二つ口フラスコに、8T(4T−4T)(150mg,0.15mmol)を入れ、乾燥THF(5mL)を加えた後、−23℃まで冷却し、テトラメチレンジアミン(0.09mL,0.6mmol)及び1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン(0.38mL,0.60mmol)を滴下した。30分間後撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.12mL,0.66mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。反応溶液に水(1mL)とクロロホルム(20mL)を加えた。有機層を、水(20mL)を用い2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,eluent CHCl3)で精製することにより、下記式で表される目的物(SnBu3−8T−SnBu3)を赤色オイルとして得た(120mg,収率50%)。
【化51】
【0138】
(参考合成例6)
<SnBu3−6T−SnBu3の合成>
加熱乾燥し窒素置換した30mL二つ口フラスコに、5,5’’’−ジブロモ−3,3’’’−ジヘキシル−セクシチオフェン(418mg,0.50mmol)を入れ、乾燥THF(10mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、テトラメチレンジアミン(0.23mL,1.5mmol)及び1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン(0.8mL,1.3mmol)を滴下した。30分間後撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.38mL,1.4mmol)を一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。次に、反応溶液に水(1mL)とヘキサン(20mL)を加えた。有機層を、水(20mL)を用い2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン)で精製することにより、下記式で表される目的物(SnBu3−6T−SnBu3)をオレンジオイルとして得た(627mg、0.44mmol、収率89%)。
Orange oil;1H−NMR(270MHz,CDCl3) d 0.86−0.94(m,30H),1.11(t,J=8.1Hz,12H),1.28−1.42(m,36H),1.53−1.70(m,20H),2.74−2.84(m,8H),6.95(s,4H),7.04(d,J=3.6Hz,2H),7.13(d,J=3.6Hz,2H);13C−NMR(68MHz,CDCl3) d 11.0,13.8,14.2,22.7,26.9,27.8,28.9,29.0,29.3,29.4,29.6,30.6,30.8,31.8,123.7,126.0,128.1,129.7,134.8,135.1,135.6,135.9,136.5 138.6,139.8,140.5;MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 1413.6(M+,Calcd 1408.5); Anal. Calcd for C72H114S6Sn2:C,61.35;H,8.15;Found:C,61.32;H,7.94.
【化52】
【0139】
(実施例1)
<化合物Aの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、ビス−トリブチルスタニル−クォータチオフェン(SnBu3−4T−SnBu3)(2.0g,1.86mmol)、N−(1−ノニルデシル)−N’−(4−ヨードフェニル)ペリレンジイミド(800mg,0.93mmol)、及び乾燥トルエン17mlを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(54mg,0.46mmol)を加え、アルゴン雰囲気下で2時間還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/クロロホルム=5/1〜1/1)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Aを赤色固体として得た(590mg,収率42%)。得られた化合物Aの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.50(ヘキサン:クロロホルム);1H−NMR(CDCl3,400MHz) δ 0.81−0.93(m,21H),1.10−1.14(m,6H),1.20−1.42(m,46H),1.50−1.61(m,6H),1.60−1.74(m,4H),1.85−1.88(m,2H),2.23−2.27(m,2H),2.80−2.83(m,4H),5.19(s,1H),6.97(d,J=3.9Hz,1H),7.08(d,J=3.8Hz,1H),7.14(d,J=3.9Hz,1H),7.15(d,J=3.6Hz,1H),7.22(s,1H),7.38(d,J=8.5Hz,2H),7.78(d,J=8.5Hz,2H),8.63−8.75(m,8H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 1524.5(M+,calcd 1518.6);Anal.Calcd for C160H169BrN4O8S8:C,70.38;H,7.30;N,1.84;Found:C,70.10;H,7.33;N,1.69.
【化53】
【0140】
<化合物Bの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物A(760mg,0.5mmol)、3,5−ジヨードブロモベンゼン(89mg,0.22mmol)、及び乾燥トルエン(7mL)を加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(19mg,0.0165mmol)を加え、アルゴン雰囲気下で12時間還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,溶離液 クロロホルム)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Bを黒赤固体として得た(450mg,収率78%)。得られた化合物Bの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.20(クロロホルム);1H−NMR(CDCl3,400MHz) δ 0.81−0.85(m,12H),0.91−0.94(m,12H),1.20−1.44(m,80H),1.71(m,8H),1.89(m,4H),2.25(m,4H),2.81(m,8H),5.18(m,2H),7.09(d,J=3.9Hz,4H),7.16(d,J=3.9Hz,2H),7.17(d,J=3.9Hz,2H),7.17(s,2H),7.21(s,2H),7.36(d,J=8.6Hz,4H),7.57(m,3H),7.76(d,J=8.5Hz,4H),8.58−8.72(m,16H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 2608.7(M+,calcd 2612.0);Anal.Calcd for C160H169BrN4O8S8:C,73.56;H,6.52;N,2.14.Found:C,73.30;H,6.52;N,2.01.
【化54】
【0141】
<化合物Cの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物B(292mg,0.112mmol)、ビス−トリブチルスタニル−クォータチオフェン(SnBu3−4T−SnBu3)(55mg,0.51mmol)、及び乾燥トルエン(1.2mL)を加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5.0mg,5.1μmol)を加え、アルゴン雰囲気下で8時間還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(アルミナ、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−3H,4H,溶離液 クロロホルム)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Cを黒赤色固体として得た(93mg,収率47%)。得られた化合物Cの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.3(クロロホルム);1H−NMR(CDCl3,400MHz) δ 0.81−0.91(m,54H),1.20−1.33(m,172H),1.69(m,20H),1.89(m,8H),2.22(m,8H),2.77(m,20H),5.16(m,4H),6.96−7.22(m,30H),7.30(m,8H),7.52−7.61(m,6H),7.73(m,8H),8.24−8.70(m,32H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix) m/z 5569(M+,calcd 5559).UV−Vis spectra in CHCl3,absmax=430nm,460nm,490nm,530nm.
【化55】
【0142】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、化合物Cは、+0.48の酸化電位(Ep.a)、−1.11及び−1.31の還元電位(Ered)が得られ両極性の伝導が可能であることを確認できた。
【0143】
(実施例2)
<化合物Dの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物B(500mg,0.19mmol)、ビス−トリブチルスタニル−オクタチオフェン(SnBu3−8T−SnBu3)(120mg,0.076mmol)、及び乾燥トルエン(3mL)を加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9mg,7.6μmol)を加え、アルゴン雰囲気下で5時間還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(アルミナ、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−3H,4H,溶離液 クロロホルム)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Dを黒赤色固体として得た(200mg、収率43%)。得られた化合物Dの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.3(クロロホルム);1H−NMR(CDCl3,400MHz) δ 0.81−0.91(m,54H),1.20−1.33(m,172H),1.69(m,20H),1.89(m,8H),2.22(m,8H),2.77(m,20H),5.16(m,4H),6.96−7.22(m,30H),7.30(m,8H),7.52−7.61(m,6H),7.73(m,8H),8.24−8.70(m,32H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix) m/z 6055.0(M+,calcd 6058.4).UV−Vis spectra in CHCl3,absmax=430nm,460nm,490nm,530nm.Anal.Calcd for C376H402N8O16S24:C,74.54;H,6.69;N,1.85.Found:C,74.30;H,6.45;N,1.74.
【化56】
【0144】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、化合物Dは、+0.45の酸化電位(Ep.a.)、−1.14及び−1.39の還元電位(Ered)が得られ両極性の伝導が可能であることを確認できた。
【0145】
(比較例1)
<化合物Eの合成>
窒素気流下、1,3,5−トリブロモベンゼン(89mg,0.28mmol)と4T−SnBu3(445mg,0.57mmol)とを含む無水トルエン溶液(50mL)に15分間窒素ガスを吹き込み脱気した。そしてPd(PPh3)4(33mg,28μmol)を加え、12時間還流した。その後セライトろ過により黒色沈殿を取り除き、溶媒を減圧下で留去した。得られた混合物からカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン:ヘキサン/1:9、Rf=0.3)により、下記式で表される化合物Eを単離した(122mg,収率38%,orange film)。
1H−NMR(CDCl3,270MHz) δ 0.86−0.95(m,12H),1.26−1.46(m,24H),1.63−1.78(m,8H),2.76−2.84(m,8H),6.94(d,J=5.1Hz,2H),7.03(d,J=3.8Hz,2H),7.09(d,J=3.5Hz,2H),7.15(d,J=3.8Hz,2H),7.15(d,J=3.5Hz,2H),7.18(d,J=5.1Hz,2H),7.21(s,2H),7.62(d,J=3.5Hz,2H),7.66(t,J=1.6Hz,1H).
【化57】
【0146】
<化合物Fの合成>
窒素気流下、SnBu3−4T−SnBu3(52mg,48μmol)と化合物E(122mg,0.11mmol)とを含む無水トルエン溶液(20ml)に15分間窒素ガスを吹き込み脱気した。そしてPd(PPh3)4(6mg,5μmol)を加え、12時間還流した。その後セライトろ過により黒色沈殿を取り除き、溶媒を減圧下で留去した。得られた混合物からカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン:ヘキサン/1:3,Rf=0.2)により、下記式で表される化合物Fを単離した(54mg,収率43%,red film)。
1H−NMR(CDCl3,270MHz) δ 0.86−0.95(m,30H),1.25−1.49(m,60H),1.66−1.75(m,20H),2.76−2.87(m,20H),6.95(d,J=5.4Hz,4H),7.04(d,J=3.8Hz,4H),7.11(d,J=3.8Hz,4H),7.12(d,J=3.8Hz,2H),7.15(d,J=3.8Hz,4H),7.16(d,J=3.8Hz,4H),7.18(d,J=5.4,4H),7.19(d,J=3.8Hz,2H),7.28(s,6H),7.68(s,6H).
【化58】
【0147】
CV測定の結果、化合物Fは、酸化側のピークは得られる(Ep.a.=+0.30)が、サイクル性が悪く不安定であった。また、還元側のピークは得られず、両極性の伝導はみられなかった。
【0148】
(実施例3)
<化合物Gの合成>
加熱乾燥し窒素置換した50mL二つ口フラスコに、クォータチオフェン−カルボキシアルデヒド(4T―CHO)を入れ、乾燥THF(14mL)を加えた後、−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウム/ヘキサンを滴下した。30分間撹拌した後、塩化トリブチルスズを一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌した。反応溶液に水及びヘキサンを加え、有機層を水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過して除いた後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1)で精製することにより、目的物であるトリブチルスタニル−クォータチオフェン−カルボキシアルデヒド(SnBu3−4T−CHO)を得た。
【0149】
窒素置換した二つ口フラスコに、トリブチルスタニル−クォータチオフェン(4T―SnBu3)、3,5−ジブロモヨードベンゼンを入れ、乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え12時間加熱還流した。セライトろ過により固形物を取り除き、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)と再結晶(ヘキサン)で精製することにより、目的物であるPhBr2−4Tを黄色固体として得た。
【0150】
窒素置換した二つ口フラスコに、SuBu3−4T−CHO、及びPhBr2−4Tを入れ、乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え、12時間加熱還流した。セライトろ過により固形物を取り除き、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1)と再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物G(G1(CHO)−4T)を得た。
【化59】
【0151】
<化合物Hの合成>
加熱乾燥し窒素置換した20mL二つ口フラスコに、化合物Gを入れ、乾燥THFを加えた後、−78℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサンを滴下した。30分間撹拌した後、塩化トリブチルスズを一度に加えた。室温まで反応系を昇温し3時間撹拌し、反応溶液に水とクロロホルムを加え、有機層を水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過して除いた後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/ジクロロメタン=4/1)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物H(G1(CHO)−4T−SnBu3)を得た。
【化60】
【0152】
<化合物Iの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物H(G1(CHO)−4T−SnBu3)、3,5−ジヨードブロモベンゼン、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Iを得た。
【化61】
【0153】
<化合物Jの合成>
窒素置換した二つ口フラスコに、化合物I、及びPh−8T−SnBu3を入れ、乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え、加熱還流した。セライトろ過により固形物を取り除き、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1)と再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Jを得た。
【化62】
【0154】
<化合物Kの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物J、C60、N−メチルグリシン、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流し、セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Kを得た。
【化63】
【0155】
(実施例4)
<化合物Lの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、(SnBu3−4T−CHO)、3,5−ジヨードブロモベンゼン、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Lを得た。
【化64】
【0156】
<化合物Mの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物L、SnBu3−8T−SnBu、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Mを得た。
【化65】
【0157】
<化合物Nの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物M、C60、N−メチルグリシン、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、アルゴン雰囲気下で還流した。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーと分取型GPCで精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Nを得た。
【化66】
【0158】
(実施例5)
<有機薄膜素子1の作製及び太陽電池特性の評価>
150nmの厚みでITOを付けたガラス基板上に、実施例1で合成した化合物Cの濃度1.0質量%クロロホルム溶液を用い、スピンコート法により化合物Cの有機薄膜(厚さ100nm)を成膜した。次に、成膜した有機薄膜の上に、Al電極を100nmの厚みで真空蒸着し、有機薄膜素子1を作製した。
【0159】
有機薄膜素子1について、キセノンランプを分光した波長470nm、10μW/cm2の光を照射することにより、波長470nmでの太陽電池特性を測定した。短絡電流0.204μA/cm2、開放電圧0.46V、分光感度IPCE=5.5%、光電変換効率0.25が得られ、有機薄膜素子1は有機太陽電池として機能することが確認できた。
【0160】
有機薄膜素子1を窒素雰囲気中120℃で10分間アニールした後、同じ条件で太陽電池特性を測定した。短絡電流0.321μA/cm2、開放電圧0.81V、分光感度IPCE=8.5%、光電変換効率0.66が得られ、太陽電池特性が向上した。
【0161】
(実施例6)
<有機薄膜素子2の作製及び太陽電池特性の評価>
10nmの厚みでアルミ電極を付けたガラス基板上に、実施例3で合成した化合物Kの濃度1.0質量%クロロホルム溶液を用い、スピンコート法により化合物Kの有機薄膜(厚さ100nm)を成膜した。次に、成膜した有機薄膜の上に、金電極を10nmの厚みで真空蒸着することにより、有機薄膜素子2を作製した。
【0162】
有機薄膜素子2について、10μW/cm2の光を照射したときの分光感度を測定した。図12に示すように、400〜550nmの波長範囲で良好な感度が得られ、有機薄膜素子2は有機太陽電池及び光センサとして機能することが確認できた。
【0163】
(実施例7)
<有機薄膜素子3の作製及び太陽電池特性の評価>
化合物Cに代えて、実施例2で合成した化合物Dを用いたこと以外は実施例5と同様にして、有機薄膜素子3を作製した。
【0164】
有機薄膜素子3について、キセノンランプを分光した波長410nm、10μW/cm2の光を照射することにより、波長410nmでの太陽電池特性を測定した。短絡電流0.224μA/cm2、開放電圧0.66V、分光感度IPCE=6.7%、光電変換効率0.4が得られ、有機薄膜素子3は有機太陽電池として機能することが確認できた。
【0165】
(実施例8)
<化合物Oの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン(1.00g,5.03mmol)、4−ヨードアニリン(1.10g,5.03mmol)、ナフタレンテトラカルボキシ二無水物(1.35g,5.03mmol)、酢酸(2.4g,0.4mmol)、及びNメチルピロリドン(NMP)25mlを加えた。バブリングにより脱気後、N2雰囲気下90℃で終夜反応させた。反応液にエタノールを加え、析出した沈澱固形物をセライトろ過により取り除き、減圧濃縮した。その後、水を加え、析出した沈澱固形物をセライトろ過により濾取した。得られた固形物をアセトンで再結晶精製し、更にカラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/クロロホルム=1/1)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Oを黄色固体として得た(780mg、収率25%)。得られた化合物Oの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.3(hexane:CHCl3=1:1);1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ 5.04(t,J=15.4Hz,2H),7.08(d,J=6.5Hz,2H),7.91(d,J=6.5Hz,1H),8.84−8.88(m,4H):MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 650.3(M+,calcd 649.0)
【化67】
【0166】
<化合物Pの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、SnBu3−6T−SnBu3(1.60g,1.13mmol)、化合物O(300mg,0.462mmol)、及び乾燥トルエン15mlを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(25mg,0.023mmol)を加え、N2雰囲気下で2時間還流した。減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ヘキサン/クロロホルム=2/1)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Pを赤色固体として得た(180mg、収率24%)。得られた化合物Pの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.2(CHCl3);1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ 0.90−0.93(m,21H),1.09−1.13(m,6H),1.32−1.38(m,30H),1.57−1.71(m,14H),2.78−2.84(m,8H),5.00−5.08(m,2H),6.95−7.14(m,8H),7.33−7.35(m,2H),7.77−7.79(m,2H),8.83−8.88(m,4H):MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxy−anthracene matrix)m/z 1642.4(M+,calcd 1641.5)
【化68】
【0167】
<化合物Qの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物P(180mg,0.112mmol)、3,5−ジヨードブロモベンゼン(22mg,0.055mmol)、及び乾燥トルエン4mlを加えた。バブリングにより脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(4mg,4μmol)を加え、N2雰囲気下で3時間還流した。減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,eluent CHCl3)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Qを黒赤固体として得た(60mg、収率37%)。得られた化合物Qの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.2(CHCl3);1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ 0.91−0.93(m,24H),1.34−1.46(m,48H),1.69−1.74(m,16H),2.79−2.83(m,16H),5.00−5.08(m,4H),7.03−7.23(m,16H),7.33−7.35(m,4H),7.61−7.66(m,3H),7.77−7.79(m,4H),8.85−8.89(m,8H):MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxy−anthracene matrix)m/z 2858.66(M+,calcd 2903.7)
【化69】
【0168】
<化合物Rの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物Q(60mg,0.021mmol)、SnBu3−6T−SnBu3(15mg,0.01mmol)、及び乾燥トルエン3.0mlを加えた。バブリングによる脱気後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.2mg,1.0μmol)を加え、N2雰囲気下で5時間還流した。減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−3H,4H,eluent CHCl3)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Rを赤色固体として得た(20mg、収率32%)。得られた化合物Rの分析結果を以下に示す。
TLC Rf=0.2(CHCl3);1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ 0.90−0.95(m,60H),1.26−1.51(m,120H),1.70−1.75(m,40H),2.79−2.83(m,40H),4.98−5.05(m,8H),7.00−7.24(m,40H),7.30−7.32(d,8H),7.62(s,6H),7.75−7.77(m,8H),8.82−8.86(m,16H):MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxy−anthracene matrix)m/z 6357.52(M+,calcd6384.79)
UV−Vis spectra in CHCl3,absmax=360nm,380nm,430nm
【化70】
【0169】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、化合物Rは、+0.26の酸化電位(Ep.a)、−1.05及び−1.51の還元電位(Ered)が得られ、両極性の伝導が可能であることを確認できた。
【0170】
(比較例2)
<化合物Sの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物A(200mg,0.13mmol)、塩化銅(II)(36mg,0.26mmol)、及び乾燥トルエンを加えた。バブリングにより脱気後、酢酸パラジウム(II)(3.00mg,0.013mmol)を加え、アルゴン雰囲気下室温で15分反応を行った。セライトろ過により固形物を取り除き減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)と分取型GPC(JAIGEL−1H,2H,eluent CHCl3)で精製することにより、目的物である下記式で表される化合物Sを黒赤固体として得た(50mg、収率30%)。得られた化合物Sの分析結果を以下に示す。
Dark−red solid;Mp207−209℃;TLC Rf=0.5(CHCl3);1H−NMR(CDCl3)δ 0.81−0.85(m,12H),0.90−0.94(m,12H),1.21−1.53(m,80H),1.67−1.71(m,8H),1.85−1.91(m,4H),2.21−2.29(m,4H),2.74−2.83(m,8H),5.15−5.22(m,2H),6.99(s,2H),7.04(d,J=3.9Hz,2H),7.08(d,J=3.9Hz,2H),7.14(d,4H),7.22(s,2H),7.36(d,J=8.5Hz,4H),7.76(d,J=8.5 Hz,4H),8.61−8.74(m,16H);MS(MALDI−TOF,1,8,9−trihydroxyanthracene matrix)m/z 2458.7(M+,calcd2456.1);Anal.Calcd for C154H166N4O8S8:C,75.27;H,6.81;N,2.28;Found:C,74.89;H,6.60;N,2.15
UV−Vis spectra in CHCl3,absmax=440nm,460nm,490nm,530nm
【化71】
【0171】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定の結果、化合物Sは、+0.25の酸化電位(Ep.a)、−1.11及び−1.32の還元電位(Ered)が得られ、両極性の伝導が可能であった。
【0172】
(比較例3)
<有機薄膜素子4の作製及び太陽電池特性の評価>
化合物Cに代えて、比較例2で合成した化合物Sを用いたこと以外は実施例5と同様にして、有機薄膜素子4を作製した。
【0173】
有機薄膜素子4について、キセノンランプを分光した波長460nm、10μW/cm2の光を照射することにより、波長460nmでの太陽電池特性を測定した。短絡電流0.025μA/cm2、開放電圧0.22V、分光感度IPCE=0.67%、光電変換効率0.014が得られ、有機薄膜素子4は有機太陽電池として機能することが確認できたが、特性は著しく低かった。
【0174】
比較のため、上記で得られた有機薄膜素子1、3及び4の分光感度特性を図13に示す。図13中、グラフaは有機薄膜素子1の分光感度特性、グラフbが有機薄膜素子3の分光感度特性、グラフcが有機薄膜素子4の分光感度特性をそれぞれ示す。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図8】実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
【図9】第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図10】第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図11】第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図12】有機薄膜素子2の分光感度特性を示す図である。
【図13】有機薄膜素子1、3及び4の分光感度特性を示す図である。
【符号の説明】
【0176】
1…基板、2…活性層、2a…活性層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る太陽電池、300…第1実施形態に係る光センサ、310…第2実施形態に係る光センサ、320…第3実施形態に係る光センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、該コア部に結合した少なくとも1つの側鎖部と、末端と、から構成される分岐型化合物であって、
前記側鎖部の少なくとも1つは、下記一般式(1)で表される繰返し単位が1又は2以上繰り返しており(但し、コア部と結合する前記繰返し単位においては、Tがコア部に結合しており、2以上繰り返す前記繰返し単位においては、LがTに結合している。)、
Lは、共役形成単位が複数連結して構成され、
前記共役形成単位として少なくとも一つのチエニレン単位を含み、
Lの末端に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基である、分岐型化合物。
【化1】
(式中、Lは置換基を有していてもよい2価の有機基を示し、Tは置換基を有していてもよい3価の有機基を示す。)
【請求項2】
Lの末端に存在する基が、フラーレン誘導体残基を含む基、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基又はペリレンイミド誘導体残基を含む基である、請求項1に記載の分岐型化合物。
【請求項3】
コア部、T及びLが全体として共役している、請求項1又は2記載の分岐型化合物。
【請求項4】
一般式(1)で表される繰返し単位の2以上が、Tでコア部と結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【請求項5】
Lが、下記一般式(2)で表される2価の有機基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【化2】
(式中、Ar1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R1、R2、R3及びR4が複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、m、n及びoは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、m及びoのうちの少なくとも一方は1以上の整数であり、m+n+oは2〜16の整数を示す。)
【請求項6】
Tが、下記式(3)〜(7)で表される3価の有機基のいずれかである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【化3】
(式中、R5は、水素原子、アルキル基、アリール基又はシアノ基を示す。)
【請求項7】
コア部が、下記一般式(8)で表される2価の有機基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【化4】
(式中、Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R6、R7、R8及びR9が複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、p、q及びrは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、p+q+rは2〜20の整数を示す。)
【請求項8】
一般式(1)で表される繰返し単位が、下記一般式(9)で表される繰返し単位である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【化5】
(式中、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。複数存在するR10及びR11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、kは、3〜10の整数を示す。複数存在するkは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の分岐型化合物を含む有機薄膜。
【請求項10】
請求項9記載の有機薄膜を備える有機薄膜素子。
【請求項11】
請求項9記載の有機薄膜を備える有機薄膜トランジスタ。
【請求項12】
請求項9記載の有機薄膜を備える有機太陽電池。
【請求項13】
請求項9記載の有機薄膜を備える光センサ。
【請求項1】
コア部と、該コア部に結合した少なくとも1つの側鎖部と、末端と、から構成される分岐型化合物であって、
前記側鎖部の少なくとも1つは、下記一般式(1)で表される繰返し単位が1又は2以上繰り返しており(但し、コア部と結合する前記繰返し単位においては、Tがコア部に結合しており、2以上繰り返す前記繰返し単位においては、LがTに結合している。)、
Lは、共役形成単位が複数連結して構成され、
前記共役形成単位として少なくとも一つのチエニレン単位を含み、
Lの末端に存在する基は、少なくとも2つがアクセプター性の基である、分岐型化合物。
【化1】
(式中、Lは置換基を有していてもよい2価の有機基を示し、Tは置換基を有していてもよい3価の有機基を示す。)
【請求項2】
Lの末端に存在する基が、フラーレン誘導体残基を含む基、ナフタレンイミド誘導体残基を含む基又はペリレンイミド誘導体残基を含む基である、請求項1に記載の分岐型化合物。
【請求項3】
コア部、T及びLが全体として共役している、請求項1又は2記載の分岐型化合物。
【請求項4】
一般式(1)で表される繰返し単位の2以上が、Tでコア部と結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【請求項5】
Lが、下記一般式(2)で表される2価の有機基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【化2】
(式中、Ar1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R1、R2、R3及びR4が複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、m、n及びoは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、m及びoのうちの少なくとも一方は1以上の整数であり、m+n+oは2〜16の整数を示す。)
【請求項6】
Tが、下記式(3)〜(7)で表される3価の有機基のいずれかである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【化3】
(式中、R5は、水素原子、アルキル基、アリール基又はシアノ基を示す。)
【請求項7】
コア部が、下記一般式(8)で表される2価の有機基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【化4】
(式中、Ar2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示す。R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。なお、R6、R7、R8及びR9が複数存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、p、q及びrは、それぞれ独立に、0〜10の整数を示す。ただし、p+q+rは2〜20の整数を示す。)
【請求項8】
一般式(1)で表される繰返し単位が、下記一般式(9)で表される繰返し単位である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分岐型化合物。
【化5】
(式中、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、これらの基における一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。複数存在するR10及びR11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、kは、3〜10の整数を示す。複数存在するkは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の分岐型化合物を含む有機薄膜。
【請求項10】
請求項9記載の有機薄膜を備える有機薄膜素子。
【請求項11】
請求項9記載の有機薄膜を備える有機薄膜トランジスタ。
【請求項12】
請求項9記載の有機薄膜を備える有機太陽電池。
【請求項13】
請求項9記載の有機薄膜を備える光センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−215279(P2009−215279A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221779(P2008−221779)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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