説明

分析装置

【課題】キャリブレーション処理における操作者の負担を軽減するとともに分析精度の維持を可能にする分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる分析装置は、各分析項目に応じた試薬を用いて検体を分析する分析装置1において、当該分析装置1に現に設置されている試薬を用いて分析可能な各分析項目の分析残数、所定時間あたりの各分析項目の分析依頼数、および、各試薬の特性をもとに当該分析装置へ新たに設置する試薬の設置順位を判定する判定部35と、判定部35によって判定された各試薬の設置順位を表示出力する表示部37と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各分析項目に応じた試薬を用いて検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、試薬庫内に複数収納された試薬容器から分析項目に対応する試薬を反応容器に分注後、試薬が分注された反応容器に検体を加え、反応容器内の試薬と検体の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置においては、使用される試薬の種別によって、分析装置に設置する前に溶解や解凍などの試薬調製が必要となる場合がある。また、このような分析装置においては、分析項目によって、試薬補充時にキャリブレーション処理が必要となる場合がある。このため、分析中に試薬が不足し新たな試薬が補充されていない場合、操作者は、分析処理を中断して、補充する試薬を調製し、さらにキャリブレーション処理を行なわなければならない場合があった。このように、分析中の試薬不足は、分析処理の中断によって分析処理能力の低下を招くとともに操作者の負担となるため、操作者は、予めどの試薬をいつ分析装置内に設置するべきかを判断する必要があった。
【0003】
ここで、従来では、操作者による試薬設置判断を支援するため、装置内に設置された試薬の残量を表示する分析装置、および、試薬の1日あたりの平均使用量と試薬の残量との比較結果を出力する分析装置が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−164760号公報
【特許文献2】特開2004−28932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、残量の少ない試薬や1日あたりの試薬使用量の予測値と試薬の残量との比較結果を認識できた場合であっても、分析装置内に設置できる試薬容器数が限られる場合には、残量の少ない試薬容器すべてを分析装置内に設置することができない。また、分析項目によって分析依頼数や試薬使用量が異なるため、どの試薬がいつ不足するかを予測していずれの試薬を補充することが最適であるかを判断することは操作者にとって大変困難であった。このため、従来においては、操作者は分析中に不足する試薬を適切に補充できるとは限らず、分析中の試薬不足の発生による分析処理能力低下防止および操作者負担の軽減を実現できない場合があった。さらに、キャリブレーション処理においては、操作者は、複数のキャリブレーターの調製および設置が必要になる場合もあり、また、適切にキャリブレーションが行なわれたか否かを確認するため分析装置の近傍で待機する必要があった。このため、不足した試料の種別に応じて再度分析処理を開始するまでに要する操作者の処理量が異なり、操作者は、計画的に分析処理を進めることができない場合があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、分析中における試薬不足の低減および試薬不足による操作者の処理負担軽減を実現する分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、各分析項目に応じた試薬を用いて検体を分析する分析装置において、当該分析装置に現に設置されている試薬を用いて分析可能な各分析項目の分析残数、所定時間あたりの各分析項目の分析依頼数、および、各試薬の特性をもとに当該分析装置へ新たに設置する前記試薬の設置順位を判定する判定手段と、前記判定手段によって判定された各試薬の設置順位を表示出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、前記判定手段は、前記分析項目ごとに前記分析依頼数に対する前記分析残数の比率を演算し、判定対象である試薬のうち前記比率が低い分析項目の試薬の設置順位を高くすることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、前記判定手段は、判定対象である試薬のうち試薬補充時にキャリブレーション処理が必要である分析項目の試薬の設置順位を高くすることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記判定手段は、判定対象である試薬のうち前記キャリブレーション処理におけるキャリブレーター数が多い分析項目の試薬の設置順位を高くすることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記判定手段は、判定対象である試薬のうち試薬調製が必要である分析項目の試薬の設置順位を高くすることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、試薬不足表示を所望する所定期間を複数設定できるとともに前記所定期間経過後に試薬不足が見込まれる分析残数を各所定時間および各分析項目に応じてそれぞれ設定できる設定手段と、当該分析装置に現に設置されている試薬を用いて分析可能な分析残数が、複数設定された前記所定期間経過後に試薬不足が見込まれる分析残数のいずれかを下回った分析項目があった場合、該分析項目の試薬の設置順位および前記分析残数を各所定期間にそれぞれ対応する表示方式を用いて前記出力手段に出力させる制御手段と、をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現設置試薬を用いて分析可能な各分析項目の分析残数、所定時間あたりの各分析項目の分析依頼数、および、各試薬の特性をもとに分析中の試薬不足と操作者の操作負担とを最も軽減できる試薬設置順位を判定し出力するため、出力された試薬設置順位にしたがって試薬を設置することによって、試薬不足低減および操作者の処理負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分析装置について、検体の光学的特性を測定する分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態にかかる分析装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器21にそれぞれ分注し、分注した反応容器21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を自動的に行なう。
【0016】
まず、測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、読取部16、試薬分注機構17、攪拌部18、測光部19および洗浄部20を備える。
【0017】
検体移送部11は、血液や尿等、液体である検体を収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送される反応容器21に分注される。
【0018】
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうプローブが取り付けられている。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中からプローブによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、反応容器21に検体を吐出して分注を行なう。
【0019】
反応テーブル13は、反応容器21への検体や試薬の分注、反応容器21の攪拌、洗浄または測光を行なうために反応容器21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0020】
試薬庫14は、反応容器21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構17による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、恒温槽が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を恒温状態に保ち、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0021】
試薬容器15の側面部には、試薬容器15に収容された試薬に関する試薬情報が記録された記録媒体が付されている。記録媒体は、符号化された各種の情報を表示しており、光学的に読み取られる。試薬庫14の外周部には、この記録媒体を光学的に読み取る読取部16が設けられている。読取部16は、記録媒体に対して赤外光または可視光を発し、記録媒体からの反射光を処理することによって、記録媒体の情報を読み取る。また、読取部16は、記録媒体を撮像処理し、撮像処理によって得られた画像情報を解読して、記録媒体の情報を取得してもよい。
【0022】
試薬分注機構17は、検体分注機構12と同様に、検体の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられたアーム17aを備える。アーム17aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。試薬分注機構17は、試薬庫14上の所定位置に移動された試薬容器15内の試薬をプローブによって吸引し、アーム17aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送された反応容器21に分注する。攪拌部18は、反応容器21に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる。
【0023】
測光部19は、所定の測光位置に搬送された反応容器21に光を照射し、反応容器21内の液体を透過した光を受光して強度測定を行なう。この測光部19による測定結果は、制御部31に出力され、分析部34において分析される。
【0024】
洗浄部20は、図示しないノズルによって、測光部19による測定が終了した反応容器21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行なう。この洗浄した反応容器21は再利用されるが、検査内容によっては1回の測定終了後に反応容器21を廃棄してもよい。
【0025】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部33、分析部34、判定部35、記憶部36および表示部37を備える。なお、測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0026】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。制御部31は、表示部37における表示処理を制御する表示制御部32を備える。入力部33は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部34は、測光部19から取得した測定結果に基づいて吸光度等を演算し、検体の成分分析等を行なう。
【0027】
判定部35は、分析装置1に現に設置されている試薬である現設置試薬を用いて分析可能な各分析項目の分析残数、所定時間あたりの各分析項目の分析依頼数、および、各試薬の特性をもとに分析装置1へ新たに設置する試薬の設置順位を判定する。
【0028】
記憶部36は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。ここで、分析装置1は、既知の結果を示す標準物質(キャリブレーター)に対して分析項目に応じた試薬を実際に用いて分析を行い、この標準物質に対する分析結果をもとに、測光処理の基準となる検量線を設定するキャリブレーション処理を行なう。記憶部36は、分析項目ごとに、1日あたりの分析依頼数、試薬調製の要否、キャリブレーション処理の要否、および、キャリブレーション処理において使用されるキャリブレーター数、キャリブレーターの液種、キャリブレーション処理タイミングなどをそれぞれ記憶する。記憶部36は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0029】
表示部37は、ディスプレイなどによって構成され、表示制御部32の制御のもと、判定部35によって判定された各分析項目において使用する試薬の設置順位を表示出力する。なお、分析装置1は、プリンタ、スピーカー、通信機構等などをさらに備え、検体の分析結果を含む諸情報を出力するほか、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報を図示しない外部装置に出力してもよい。
【0030】
つぎに、図2を参照して、分析装置1が各分析項目において使用される試薬の設置順位を表示出力するまでの処理について説明する。図2に示すように、制御部31は、試薬設置順位を判定する判定処理を実行するか否かを判断する(ステップS2)。制御部31は、たとえば、入力部33から試薬設置順位の表示出力を指示する指示情報が入力された場合に判定処理を実行すると判断してもよい。また、予め定められた期間ごとに判定処理を実行してもよい。制御部31は、判定処理を実行すると判断するまでステップS2における判断処理を繰り返し、判断処理を実行すると判断した場合(ステップS2:Yes)、判定部35に対して判定処理を実行させる(ステップS4)。そして、表示部37は、表示制御部32の制御のもと、判定部35によって判定された試薬設置順位を表示出力する表示処理を行なう(ステップS6)。
【0031】
つぎに、図3および図4を参照して、図2に示す判定処理について詳細に説明する。図3は、図2に示す判定処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図4は、各分析項目と、判定処理の基準となる各分析項目の分析残数である残テスト数、1日あたりの各分析項目の分析依頼数の平均値である設定テスト数および各試薬の特性とを対応させた表を示す図である。図4に示す表T1においては、分析項目A〜Gごとに、現設置試薬を用いて分析可能な残テスト数を行R1の各欄に示し、設定テスト数を行R2の各欄に示し、この設定テスト数に対する残テストの比率を行R3の各欄に示し、キャリブレーション処理の要否を行R4の各欄に示し、キャリブレーション処理において使用されるキャリブレーター数を行R5の各欄に示し、溶解や解凍などの試薬調製の要否を行R6の各欄に示す。なお、分析項目は、たとえば分析装置1が生化学的な分析を行なう場合には、コレステロール濃度、グルコース濃度などである。
【0032】
図3に示すように、判定部35は、分析項目ごとに、現設置試薬を用いて分析可能な残テスト数および設定テスト数を取得し、設定テスト数に対する残テスト数の比率を演算する(ステップS12)。残テスト数は、開封前の試薬容器内の試薬容量、1テストあたりの試薬使用量および現設置試薬が設置されてから実際に行なわれたテスト数をもとに演算される。判定部35は、図4の表T1に示す行R1の各欄の残テスト数を、行R2のそれぞれ対応する各欄の設定テスト数で除算し、行R3の各欄に示す比率を取得する。
【0033】
そして、判定部35は、演算した比率が各分析項目間で差があるか否かを判断する(ステップS14)。判定部35は、演算した比率が各分析項目間で差があると判断した場合(ステップS14:Yes)、比率の大きさにしたがって試薬設置順位を判定する。判定部35は、比率が最も小さい分析項目の試薬設置順位を優先して高くする判定を行なう(ステップS16)。設定テスト数に対する残テスト数の比率が小さい分析項目ほど試薬が早くなくなるため、優先的に試薬庫14内に設置する必要がある。具体的には、図4の行R3に示すように、分析項目Fは、設定テスト数に対する残テスト数の比率が最も小さいため、試薬設置順位を示す行R7に示すように、試薬設置順位が1位となる。これに対し、分析項目Cは、設定テスト数に対する残テスト数の比率が最も大きいため、最も遅く試薬がなくなるものと判断でき、行R7に示すように試薬設置順位が7位となる。このように、ステップS16においては、設定テスト数に対する残テスト数の比率が小さい順に試薬設置順位を優先して高くする。
【0034】
そして、判定部35は、演算した比率が各分析項目間で差がないと判断した場合(ステップS14:No)、または、比率が最も小さい分析項目の試薬設置順位を優先して高くする判定が終了した場合(ステップS16)、優先順位が判定されていない各分析項目間でキャリブレーション要否に差があるか否かを判断する(ステップS18)。ステップS18においては、試薬設置順位が判定されていない比率が同値である分析項目に関して判定を行なうために、まずキャリブレーション要否に関して判断する。判定部35は、各分析項目間でキャリブレーション処理の要否に差があると判断した場合(ステップS18:Yes)、キャリブレーション処理を必要とする分析項目の試薬設置順位を優先して高くする判定を行なう(ステップS20)。キャリブレーション処理を行なう必要がある分析項目の場合、操作者は、試薬補充時に、試薬の補充処理に加え、キャリブレーション処理に使用するキャリブレーターの調製および設置に加えキャリブレーション処理が適切に行なわれたか否かを確認する必要がある。さらに、キャリブレーション処理によって分析処理の中断期間が長くなってしまう。このため、キャリブレーション処理を要する分析項目の試薬設置順位を優先して、分析中に試薬がなくなった場合であっても、キャリブレーション処理に対する操作者の負担を軽減する。具体的には、図4の行R4に示すように、試薬設置順位を判定していない分析項目A,B,D,E,Gのうち、キャリブレーション処理を必要とする分析項目D,E,Gが、キャリブレーション処理を必要としない分析項目A,Bよりも、試薬設置順位が優先される。
【0035】
そして、判定部35は、各分析項目間でキャリブレーション要否に差がないと判断した場合(ステップS18:No)、または、キャリブレーション処理を必要とする分析項目の設置順位を優先する判定が終了した場合(ステップS20)、キャリブレーション処理が必要である分析項目の判定を開始する(ステップS22)。まず、キャリブレーション処理が必要である分析項目間においてキャリブレーター数に差があるか否かを判断する(ステップS24)。判定部35は、分析項目間においてキャリブレーター数に差があると判断した場合(ステップS24:Yes)、キャリブレーター数が多い分析項目の試薬設置順位を優先して高くする判定を行なう(ステップS26)。キャリブレーター数が多いほどキャリブレーターの調製および設置に対する操作者の負担が大きいため、キャリブレーター数が多い分析項目の試薬設置順位を優先して、分析中に試薬がなくなった場合であってもキャリブレーション処理に対する操作者の負担を軽減する。具体的には、図4の表T1の行R5に示すように、分析項目A,Bよりも優先順位が高い分析項目D,E,Gのうち、キャリブレーター数が1点である分析項目D,Gよりもキャリブレーター数が5点である分析項目Eの試薬設置順位が優先される。この結果、分析項目Eは、試薬設置順位が2位となる。
【0036】
そして、判定部35は、各分析項目間でキャリブレーター数に差がないと判断した場合(ステップS24:No)、または、キャリブレーター数が多い分析項目の試薬設置順位を優先する判定が終了した場合(ステップS26)、残ったキャリブレーション処理を必要とする分析項目間で試薬調製の要否に差があるか否かを判断する(ステップS28)。判定部35は、分析項目間において試薬調製の要否に差があると判断した場合(ステップS28:Yes)、試薬調製を必要とする分析項目の試薬設置順位を優先して高くする判定を行なう(ステップS30)。溶解や解凍などの試薬調製が必要であるほど試薬設置に対する操作者の負担が大きいため、試薬調製を要する分析項目の試薬設置順位を優先して、分析中に試薬がなくなった場合であっても試薬設置に対する操作者の負担を軽減する。具体的には、図4の表T1の行R6に示すように、残った分析項目D,Gのうち、試薬調製を要する分析項目Gの試薬設置順位が優先される。この結果、分析項目Gは、試薬設置順位が3位となり、分析項目Dは、試薬設置順位が4位となる。一方、判定部35は、残ったキャリブレーション処理を必要とする分析項目間において試薬調製の要否に差がないと判断した場合(ステップS28:No)、これらの分析項目の試薬設置順位は同位であると判定する(ステップS32)。
【0037】
つぎに、判定部35は、残りのキャリブレーション処理が不要である分析項目の判定を開始する(ステップS34)。まず、判定部34は、残ったキャリブレーション処理が不要である分析項目間で試薬調製の要否に差があるか否かを判断する(ステップS36)。判定部35は、分析項目間において試薬調製の要否に差があると判断した場合(ステップS36:Yes)、試薬調製を必要とする分析項目の試薬設置順位を優先して高くする判定を行なう(ステップS38)。溶解や解凍などの試薬調製が必要であるほど試薬設置に対する操作者の負担が大きいため、試薬調製を要する分析項目の試薬設置順位を優先して、分析中に試薬がなくなった場合であっても試薬設置に対する操作者の負担を軽減する。具体的には、図4の表T1の行R6に示すように、残った分析項目A,Bのうち、試薬調製を要する分析項目Bの試薬設置順位が優先される。この結果、分析項目Bは、試薬設置順位が5位となり、分析項目Aは、試薬設置順位が6位となる。一方、判定部35は、分析項目間において試薬調製の要否に差がないと判断した場合(ステップS36:No)、これらの分析項目の試薬設置順位は同位であると判定する(ステップS40)。
【0038】
このように、判定部35は、すべての分析項目に対する試薬設置順位を判定し、判定処理を終了する。なお、図3に示す判定処理においては、ステップS16における設定テスト数に対する残テストの比率が小さい分析項目、ステップS20におけるキャリブレーション処理が必要である分析項目、ステップS26におけるキャリブレーション必要項目のうちキャリブレーター数が多い分析項目、ステップS30におけるキャリブレーション必要項目のうち試薬調製が必要である分析項目、ステップS38におけるキャリブレーションが不要である分析項目のうち試薬調製が必要である分析項目の順に試薬設置順位が優先して判定される。
【0039】
そして、表示部37は、図2に示す表示処理(ステップS6)において、表示制御部32の制御のもと、たとえば、図5に示すように、「以下の順序で試薬を設置してください」という文言とともに、試薬設置順位順に各分析項目を示すメニューM1を表示する。操作者は、分析装置1のスタンバイ状態時などに、このメニューM1の試薬設置順位にしたがって試薬庫14の空き収納室に試薬を設置すればよい。
【0040】
このように、判定部35は、現設置試薬を用いて分析可能な各分析項目の分析残数、所定時間あたりの各分析項目の分析依頼数、および、各試薬の特性をもとに、最も早く試薬がなくなる分析項目の試薬設置を第1に優先し、次いで分析中に試薬不足が発生した場合における操作者の処理負担が重い分析項目の試薬設置を優先して判定する。言い換えると、判定部35は、操作者の操作負担を最も軽減できるように、最も早く試薬がなくなる分析項目および分析中に試薬不足が発生した場合における操作者の処理負担が重い分析項目の試薬設置の配置順位を高めて、最も早く試薬がなくなる分析項目および操作者の処理負担が重い分析項目の試薬の分析中における試薬不足を回避するようにしている。このため、操作者は分析装置1から出力された試薬設置順位にしたがって試薬を設置することによって、分析処理の中断による分析処理能力の低下、および、試薬不足によって中断した分析処理を開始するまでに要するキャリブレーション処理、キャリブレーター調製、試薬調製などの操作者の処理負担を軽減できる。この結果、分析装置1によれば、分析中における試薬不足の低減および試薬不足による操作者の処理負担軽減が可能になるため、操作者は、計画的に分析処理を進めることができる。
【0041】
なお、図3は、判定処理の一例を示したものである。図3のステップS14およびステップS16においては、設定テスト数に対する残テストの比率に関する判定は、比率間の差は考慮せず比率が最も小さい分析項目を優先させているが、これに限らず、比率間の差をさらに考慮して判定してもよい。
【0042】
たとえば、図6の表の領域A1に示すように、設定テスト数に対する残テストの比率間の差が0.05と小さい分析項目D,E,Fに関しては、試薬不足時が近似するため、キャリブレーション処理の要否、キャリブレーター数、試薬調製処理の要否もさらに考慮して試薬設置順位を判定する。図3および図4に示す判定処理の場合、比率の小さい順にしたがってそのまま試薬設置順位を設定し、キャリブレーション処理および試薬調製処理が必要である分析項目の試薬設置順位がキャリブレーション処理および試薬調製処理が不要である分析項目の試薬設置順位よりも下位に判定される。この試薬設置順位にしたがった場合、キャリブレーション処理および試薬調製処理が必要である分析項目の試薬の補充が優先されず、この分析項目の分析中の試薬不足によるキャリブレーション処理および試薬調製処理に対する操作者の負担を回避することができなくなる場合がある。このため、設定テスト数に対する残テストの比率間の差が小さい各分析項目に関しては、比率の小さい順にしたがってそのまま試薬設置順位を判定せず、キャリブレーション処理の要否、キャリブレーター数、試薬調製処理の要否もさらに考慮して試薬設置順位を判定することによって、この分析項目の試薬不足によるキャリブレーション処理および試薬調製処理に対する操作者の負担回避を図る。
【0043】
具体的には、図7に示すように、判定部35は、図3に示すステップS12と同様に設定テスト数に対する残テスト数の比率を演算した後(ステップS42)、演算した比率間の差が所定値よりも小さい分析項目があるか否かを判断する(ステップS44)。この所定値は、各分析項目の内容、使用する試薬数、分析装置がスタンバイ状態となるタイミングおよび操作者の分析装置1操作処理可能時間などに応じて設定する。たとえば、図6の表に示す場合には、所定値として0.05が設定されている。このため、図6の表に示す場合には、ステップS44において、比率間差が0.05以内である分析項目D,E,Fが比率間差の小さい分析項目であると判断される。
【0044】
判定部35は、演算した比率間の差が所定値よりも小さい分析項目があると判断した場合(ステップS44:Yes)、比率間差が小さい分析項目以外の比率間差が大きい分析項目に対して、比率の大きさにしたがって試薬設置順位を判定する。判定部35は、比率間差が大きい分析項目のうち比率が小さい分析の試薬設置順位を優先して高くする判定を行なう(ステップS46)。この結果、図6の表に示すように、判定部35は、比率間の差が大きい分析項目A,B,Cの試薬設置順位は、比率が小さい分析項目D,E,Fよりも下位とする。そして、判定部35は、分析項目A,B,Cの試薬設置順位を比率が小さい順に判定する。この結果、分析項目Bの試薬設置順位は4位となり、分析項目Aの試薬設置順位は5位となり、分析項目Cの試薬設置順位は6位となる。
【0045】
そして、判定部35は、演算した比率間の差が所定値よりも小さい分析項目がないと判断した場合(ステップS44:No)、または、比率間差が大きい分析項目のうち比率が小さい分析の試薬設置順位を優先する判定を行なった場合(ステップS46)、優先順位が判定されていない各分析項目間でキャリブレーション要否に差があるか否かを判断する(ステップS48)。図6の表に示す場合、優先順位が判定されていない比率間差の小さい分析項目D,E,Fに対して、ステップS48以降の処理が行なわれる。具体的には、図3に示すステップS18およびステップS20と同様に、判定部35は、各分析項目間でキャリブレーション処理の要否に差があると判断した場合(ステップS48:Yes)、キャリブレーション処理を必要とする分析項目の試薬設置順位を優先して高くする判定を行なう(ステップS50)。この結果、優先順位が判定されていない分析項目D,E,Fのうち、キャリブレーション処理を必要とする分析項目D,Eの試薬設置順位が優先されるため、キャリブレーション処理が不要である分析項目Fの試薬設置順位は、分析項目D,Eの下位の3位となる。
【0046】
次いで、判定部35は、図3に示すステップS22およびステップS24と同様に、各分析項目間でキャリブレーション要否に差がないと判断した場合(ステップS48:No)、または、キャリブレーション処理を必要とする分析項目の設置順位を優先する判定が終了した場合(ステップS50)、試薬設置順位を判定していない分析項目のうち、キャリブレーション処理が必要である分析項目の判定を開始する(ステップS52)。まず、キャリブレーション処理が必要である分析項目間においてキャリブレーター数に差があるか否かを判断する(ステップS54)。判定部35は、分析項目間においてキャリブレーター数に差があると判断した場合(ステップS54:Yes)、図3に示すステップS26と同様に、キャリブレーション数が多い分析項目の試薬設置順位を優先して高くする判定を行なう(ステップS56)。この結果、図6に示すように、キャリブレーター数が1点である分析項目Dよりもキャリブレーター数が5点である分析項目Eの試薬設置順位が優先され、分析項目Eは、試薬設置順位が2位となる。
【0047】
次いで、図3に示すステップS28〜32と同様に、各分析項目間でキャリブレーター数に差がないと判断した場合(ステップS54:No)、または、キャリブレーター数が多い分析項目の試薬設置順位を優先する判定が終了した場合(ステップS56)、試薬設置順位が判定されていない分析項目に対して、試薬調製要否の差に対する判断処理(ステップS58)、試薬調製要否に差があった場合(ステップS58:Yes)に試薬調製必要項目の試薬設置順位を優先する判定処理(ステップS60)、試薬調製要否に差がない場合(ステップS58:No)に試薬設置順位を同じとする判定処理(ステップS62)を行なう。そして、判定部35は、図3に示すステップS34〜40と同様に、キャリブレーション処理が不要である分析項目の判定を開始し(ステップS64)、キャリブレーション処理が不要である分析項目に対して、試薬調製要否の差に対する判断処理(ステップS66)、試薬調製要否に差があった場合(ステップS66:Yes)に試薬調製必要項目の試薬設置順位を優先する判定処理(ステップS68)、試薬調製要否に差がない場合(ステップS66:No)に試薬設置順位を同じとする判定処理(ステップS70)を行ない、判定処理を終了する。
【0048】
また、図3および図7の判定処理においては、判定部35は、キャリブレーション処理内容としてキャリブレーター数を考慮して試薬設置順位を判定した場合について説明したが、これに限らず、さらに、キャリブレーション処理タイミングも考慮して試薬設置順位を判定してもよい。たとえば、キャリブレーション処理が試薬ボトルごとに必要である分析項目、および、キャリブレーション処理が試薬ボトルごとではなく製造ロットが変わった場合に行なえば足りる分析項目に対しては、製造ロットごとにキャリブレーション処理を行なうよりも試薬ボトルごとにキャリブレーション処理を行なう方が操作者の負担が重いと考えられる。このため、判定部35は、キャリブレーション処理が試薬ボトルごとに必要である分析項目の試薬の設置順位をキャリブレーション処理が製造ロットごとに必要である分析項目の試薬の設置順位よりも優先させる判定を行なう。さらに、判定部35は、キャリブレーション処理において使用するキャリブレーターの液種も考慮して試薬設置順位を判定してもよい。たとえば、キャリブレーターが液状である分析項目、キャリブレーターが凍結乾燥品で溶解が必要である分析項目、およびキャリブレーター凍結品で解凍が必要である分析項目に対しては、キャリブレーターが液状である場合よりもキャリブレーターが凍結乾燥品で溶解が必要である場合およびキャリブレーターが凍結品で解凍が必要である場合の方が操作者の負担が重いと考えられる。このため、判定部35は、キャリブレーターが凍結乾燥品で溶解が必要である分析項目およびキャリブレーター凍結品で解凍が必要である分析項目をキャリブレーターが液状である分析項目よりも試薬設置順位を優先させる判定を行なう。
【0049】
また、図5においては、表示部37が試薬設置順位順に各分析項目を示すメニューM1を示す場合について説明したが、すべての分析項目に対して試薬設置順位を表示するほか、表示部37は、表示制御部32の制御のもと、たとえば、試薬未補充であるとともに最も試薬設置順位の高い分析項目のみを表示出力するほか、試薬未補充である試薬設置順位の高い所定数の分析項目を表示して、操作者の試薬補充処理を支援してもよい。また、表示部37は、表示制御部32の制御のもと、各分析項目における試薬設置順位にあわせて、キャリブレーション処理において使用されるキャリブレーターの種別、キャリブレーターの調製方法、試薬の調製方法なども表示し、操作者の試薬補充処理およびキャリブレーション処理を支援してもよい。
【0050】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、さらに、所定時間経過時に試薬不足が発生する分析項目を各所定時間に対応させて表示させることによって、操作者の試薬補充処理を支援する。
【0051】
図8は、実施の形態2にかかる分析装置の要部構成を示す模式図である。図8に示すように、実施の形態2にかかる分析装置201における制御機構203は、図1に示す表示制御部32に代えて表示制御部232を有する制御部231を備える。制御部231は、図1に示す制御部31と同様の機能を有する。入力部33は、試薬不足表示を所望する所定期間を複数設定できるとともに、これらの所定期間経過時に試薬不足が見込まれる分析残数を各所定時間および各分析項目に応じてそれぞれ設定できる設定手段として機能する。表示制御部232は、現設置試薬を用いて分析可能な分析残数が所定期間経過時に試薬不足が見込まれる分析残数のいずれかを下回った分析項目があった場合、この分析項目に関する情報とともに判定部35によって判定された試薬設置順位および分析残数を各所定期間にそれぞれ対応する表示方式を用いて表示部37に出力させる。
【0052】
つぎに、入力部33における試薬不足表示に関する設定処理について説明する。図9は、各所定時間および各所定期間経過時に試薬不足が見込まれる分析残数を分析項目ごとに設定できる設定メニュー欄である。この設定メニュー欄は、入力部33の操作によって、表示部37のディスプレイ画面上に呼び出すことができる。図9の設定メニュー欄に示すように、入力部33の入力処理によって、試薬不足表示を所望する所定時間を複数設定できる。たとえば、図9の表に示すように、試薬不足表示を行なう所定時間として、行R21における入力欄1の「即時」、行R22における入力欄2の「3時間」、行R23における入力欄3の「当日」のように、複数の所定経過時間を設定できる。さらに、入力部33の入力処理によって、表示部37に試薬不足表示を行なわせる際に、試薬不足状態の説明表示用のコメントを設定できる。たとえば、図9の行R21のコメント欄の「即時試薬不足」、行R22のコメント欄の「3時間後試薬不足」、行R23のコメント欄の「当日試薬不足」のように、各所定経過時間に対応させた試薬不足状態の説明表示用のコメントを設定できる。そして、入力部33の入力処理によって、図9の各欄に示すように、分析項目ごとに、入力欄1に対応する各欄に「即時」試薬不足が見込まれる残テスト数、入力欄2に対応する各欄に「3時間後」に試薬不足が見込まれる残テスト数、入力欄3に対応する各欄に「当日」試薬不足が見込まれる残テスト数を設定できる。これら各残テスト数は、たとえば、各分析項目における時間当たりの分析依頼数をもとに設定する。なお、設定された各内容は、記憶部36に記憶される。
【0053】
そして、表示制御部232は、図9の表に例示する試薬不足表示に関する設定内容をもとに、各分析項目において、現設置試薬を用いて分析可能な分析残数が、設定された各所定期間経過時に試薬不足が見込まれる分析残数のいずれかを下回った分析項目があるか否かを判断する。そして、表示制御部232は、現設置試薬を用いて分析可能な残テスト数が設定された各所定期間経過時に試薬不足が見込まれる残テスト数のいずれかを下回った分析項目があると判断した場合、現設置試薬を用いて分析する場合の試薬設置順位および残テスト数を各所定期間にそれぞれ対応する表示方式を用いて表示部37に表示させる。
【0054】
具体的には、表示制御部232は、図10に示すように、領域C1に分析項目名を表し、領域C2に残テスト数を表し、領域C3に試薬設置順位を表した試薬不足欄を分析項目ごとに表示させる。
【0055】
この結果、図11に示すように、分析項目A〜Oごとに、分析項目名、残テスト数および試薬設置順位が表された試薬不足欄が表示される。表示制御部232は、試薬不足欄の各表示色を説明する説明欄を、各試薬不足欄のたとえば下方に表示させている。表示制御部232は、各試薬不足欄の表示色とともに、各表示色がいずれの試薬不足状態に対応するかを説明したコメントも表示させることによって、操作者が試薬設置順位を簡易に把握できるようにしている。なお、このコメントは、図9に示す設定メニュー欄における各入力欄において設定したものに対応している。
【0056】
表示制御部232は、各試薬不足欄のうち、試薬が現に不足する分析項目の試薬不足欄をたとえば赤色で表示させる。図11においては、試薬が現に不足する分析項目Nの試薬不足欄が赤色で表示される。このため、操作者は、分析項目Nの試薬を第1に優先して設置すべきことを認識できる。
【0057】
また、表示制御部232は、試薬が即時不足する分析項目の試薬不足欄をたとえば黄色で表示させる。図11においては、試薬が即時不足する分析項目Fの試薬不足欄が黄色で表示される。このため、操作者は、分析項目Fの試薬を第2に優先して設置すべきことを認識できる。
【0058】
また、表示制御部232は、試薬が3時間経過後に不足する分析項目の試薬不足欄を緑色表示させる。図11においては、試薬が3時間経過後に不足する分析項目D,Jが緑色表示される。このため、操作者は、分析項目D,Jの試薬を分析項目Fの試薬の次に優先して設置すべきことを認識できる。さらに、緑色表示された分析項目D,Jの試薬不足欄においては、分析項目D,J間における試薬設置順位を表している。図11においては、同じ3時間経過後に試薬不足が発生する分析項目間においては、分析項目Dの試薬設置順位「1位」と分析項目Jの試薬設置順位「2位」とが各試薬不足欄に表示されるため、操作者は、分析項目Dの試薬設置を分析項目Jの試薬設置よりも優先すべきことを認識できる。
【0059】
また、表示制御部232は、試薬が当時不足する分析項目の試薬不足欄を青色表示させる。図11においては、試薬が当日不足する分析項目A,Eが青色表示される。さらに、青色表示された分析項目A,Eの試薬不足欄においては、分析項目A,E間における試薬設置順位を表している。このため、操作者は、試薬設置順位が分析項目Aよりも高い分析項目Eの試薬を分析項目Jの試薬の次に優先して設置すべきことを認識できる。
【0060】
このように、分析装置201は、試薬不足が発生する時間を、即時および当日のみに限らず、たとえば「3時間後」のようにさらに詳細に区別して表示させている。このため、操作者は、試薬不足欄がいずれの表示色で表示されているかを確認することによって、各分析項目の試薬不足時期を詳細に判断することが可能になる。
【0061】
従来は、図12に示すように、分析項目Nに示すように試薬が現に不足する場合、分析項目Fに示すように試薬が即時不足する場合、および、分析項目A、D,E,Jに示すように試薬が当日不足する場合に分けて各分析項目の試薬不足状態を表示させていた。このため、操作者は、当日試薬不足となる分析項目の試薬が実際にいつ頃不足するかを予測することができず、当日試薬不足となる分析項目が図12に示す分析項目A、D,E,Jのように多数あった場合、いずれの分析項目の試薬をまず補充すべきかを判断することができなかった。このため、分析中に試薬不足となる場合が発生し、試薬補充を行なった結果、本来分析対象である検体測定の処理能力が低下してしまう。
【0062】
これに対し、本実施の形態2においては、図9および図11に示す「3時間」のように試薬不足表示を所望する各所定時間および各所定時間経過後に試薬不足が見込まれる残テスト数を設定し、各所定時間経過後に試薬不足が見込まれる分析項目を各所定時間に対応させた表示方法で表示させている。このため、操作者は、各分析項目の試薬がいつ不足するかを試薬設置順位とともに詳細に判別することができ、適切に各試薬を補充することができる。たとえば、操作者は、検体分析の受付がなく分析装置がスタンバイ状態となる時間に合わせて試薬不足表示を所望する所定経過時間を設定することによって、分析開始時に試薬庫14に空き収納室がない場合であっても、分析終了中に空となり試薬容器が取り除かれた空いた収納室に、スタンバイ状態となる時間を利用して試薬を補充することができる。このように、実施の形態2によれば、スタンバイ状態などの1日のうちに分析装置が稼動していない時間に合わせて試薬不足表示の時間を設定し、各所定時間経過後にいずれの分析項目の試薬が不足するかを表示させることができるため、より厳密に試薬の補充管理を行なうことができ、試薬不足による分析処理能力低下および操作者の処理負担を軽減できる。
【0063】
なお、本実施の形態2においては、設定した各所定期間に対応させた表示色で試薬不足欄をそれぞれ表示した場合を例に説明したが、これに限らず、たとえば、設定した各所定時間に対応させた点滅間隔および表示色で各試薬不足欄を表示してもよい。また、本実施の形態2においては、各所定期間にそれぞれ対応させた音声出力方法で各試薬不足情報を音声出力してもよい。また、図9および図11においては、試薬不足表示を所望する所定時間として「即時」、「3時間」、「当日」の3種の時間を設定した場合について説明したが、もちろん、上記時間と異なる時間間隔で複数の時間を設定してもよい。
【0064】
また、本実施の形態1,2においては、検体の光学的特性を測定する分析装置を例に説明したが、これに限らず、各分析項目に対応する各試薬を分析装置内に設置する必要がある分析装置に適用することが可能である。
【0065】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1,201は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態1にかかる分析装置の要部構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す分析装置が試薬設置順位を表示出力するまでの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に示す判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】各分析項目と、判定処理の基準となる各分析項目の分析残数、所定時間あたりの各分析項目の分析依頼数および各試薬の特性とを対応させた表を示す図である。
【図5】図1に示す表示部の画面上に表示出力されるメニュー画像を例示する図である。
【図6】各分析項目と、判定処理の基準となる各分析項目の分析残数、所定時間あたりの各分析項目の分析依頼数および各試薬の特性とを対応させた表の他の例を示す図である。
【図7】図2に示す判定処理の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2にかかる分析装置の要部構成を示す模式図である。
【図9】図8に示す表示部の画面上に表示される設定メニュー欄を例示する図である。
【図10】実施の形態における試薬不足欄を説明する図である。
【図11】図8に示す表示部の画面上に表示される試薬不足表示欄を例示する図である。
【図12】従来技術における試薬不足表示を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
1,201 分析装置
2 測定機構
3,203 制御機構
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 検体分注機構
12a,17a アーム
13 反応テーブル
14 試薬庫
15 試薬容器
16 読取部
17 試薬分注機構
18 攪拌部
19 測光部
20 洗浄部
21 反応容器
31,231 制御部
32,232 表示制御部
33 入力部
34 分析部
35 判定部
36 記憶部
37 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各分析項目に応じた試薬を用いて検体を分析する分析装置において、
当該分析装置に現に設置されている試薬を用いて分析可能な各分析項目の分析残数、所定時間あたりの各分析項目の分析依頼数、および、各試薬の特性をもとに当該分析装置へ新たに設置する前記試薬の設置順位を判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定された各試薬の設置順位を表示出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記分析項目ごとに前記分析依頼数に対する前記分析残数の比率を演算し、判定対象である試薬のうち前記比率が低い分析項目の試薬の設置順位を高くすることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記判定手段は、判定対象である試薬のうち試薬設置時にキャリブレーション処理が必要である分析項目の試薬の設置順位を高くすることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記判定手段は、判定対象である試薬のうち前記キャリブレーション処理におけるキャリブレーター数が多い分析項目の試薬の設置順位を高くすることを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記判定手段は、判定対象である試薬のうち試薬調製が必要である分析項目の試薬の設置順位を高くすることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項6】
試薬不足表示を所望する所定期間を複数設定できるとともに前記所定期間経過後に試薬不足が見込まれる分析残数を各所定時間および各分析項目に応じてそれぞれ設定できる設定手段と、
当該分析装置に現に設置されている試薬を用いて分析可能な分析残数が、複数設定された前記所定期間経過後に試薬不足が見込まれる分析残数のいずれかを下回った分析項目があった場合、該分析項目の試薬の設置順位および前記分析残数を各所定期間にそれぞれ対応する表示方式を用いて前記出力手段に出力させる制御手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−190958(P2008−190958A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24583(P2007−24583)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】