説明

切削工具

【課題】耐衝撃性に優れると共に、良好な仕上げ面光沢が得られる切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具10は、超硬合金層11とサーメット層12とが積層されてなり、すくい面全面が超硬合金層11で形成され、逃げ面が超硬合金層11とサーメット層12との積層面で形成される。切刃部分(切削工具10の角部)は、超硬合金層11が薄く、工具10の最大厚さをh1、切刃部分に存在する超硬合金層の最大厚さをh2とするとき、h2/h1が0.002以上0.02以下を満たす。すくい面側にサーメットよりも靭性に優れる超硬合金層を具えることで、切屑などとの接触による衝撃に強く、切刃部分の逃げ面側におけるサーメット層の割合が高いことで、良好な仕上げ面光沢が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超硬合金層及びサーメット層の双方を具えた切削工具に関する。特に、耐衝撃性に優れると共に、良好な仕上げ面光沢が得られる切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、切削工具の基材材料に、WC(炭化タングステン)やTiCN(炭窒化チタン)といったTi化合物などのセラミックス粒子(硬質相)をCoやNiといった鉄族金属(結合相)で結合した超硬合金やサーメットが利用されている。
【0003】
一般に、サーメットは、TiCNなどのTi化合物を主たる硬質相とすることから高硬度であるものの、WCを主たる硬質相とする超硬合金よりも靭性が低いとされる。そのため、サーメットからなる基材を具える切削工具は、適用範囲が狭く、主に低負荷の仕上げ加工に利用される。これに対し、特許文献1では、サーメット中のW濃度を調整することで、耐欠損性を向上することを開示している。また、特許文献2,3では、サーメットと超硬合金とを積層して接合した複合材料を提案している。特許文献2には、超硬合金とサーメットとを別個に作製し、両者の接合面を研削して面粗さを小さくしてから積層したものを加熱して一体化した接合材が開示されている。特許文献3には、別個に作製した焼結体を重ねて通電加熱法により接合したり、別個に作製したプレス成形体を重ねて焼結した超硬合金部材が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005-272877号公報
【特許文献2】特開平6-240308号公報
【特許文献3】特開平7-207398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるW濃度の調整による靭性の向上には限界があり、大きな性能の向上は難しい。一方、特許文献2,3に記載される接合材を切削に用いた場合、靭性に優れる超硬合金を具えることで、耐衝撃性を高められる。しかし、これらの接合材は、超硬合金の割合が高く、例えば、超硬合金とサーメットとが半々である接合材を切削工具に用いると、切刃がサーメットのみ或いは超硬合金のみとなる。超硬合金は、サーメットと比較して鋼と反応性し易い。そのため、ワーク(被削材)との接触面に占める超硬合金の割合が高いと、特に鋼の切削において、サーメットの利点である良好な仕上げ面光沢を得ることが難しい。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、耐衝撃性に優れると共に、良好な仕上げ面光沢が得られる切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サーメット層上に薄い超硬合金層を具えることで上記目的を達成する。具体的には、本発明切削工具は、少なくとも一層の超硬合金層と少なくとも一層のサーメット層とが積層されてなる基材を具え、基材の表面側の少なくとも一部に、特に、切刃及び切刃に繋がるすくい面側の少なくとも一部に超硬合金層が配置されている。この基材の積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh1、切刃部分に存在する上記超硬合金層の積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh2とするとき、h2/h1が0.002以上0.02以下を満たす。上記「切刃部分」とは、基材の切刃及びその近傍の領域であって、逃げ面からすくい面方向に1000μmまでの領域とする。
【0008】
本発明切削工具は、ワークや切屑などと接触する切刃及びすくい面の一部において、サーメット層上に、サーメット層よりも靭性に優れる超硬合金層を具えることで、切屑などとの接触による衝撃を受けても欠損などが生じ難く、耐衝撃性を向上することができ、靭性に優れる。そのため、サーメット工具では欠けなどが生じて適用が困難であった分野にも本発明工具を利用できる。また、本発明工具は、特に、全体厚さに対して切刃部分に具える超硬合金層を薄くしていることで、積層面(積層状態が見える面)におけるサーメットの割合を高められる。従って、この積層面がワークと接触するように本発明工具を用いることで、サーメットと同程度の仕上げ面光沢が得られる。このように本発明工具は、高靭性でありながら、良好な仕上げ面光沢を得ることができる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
〔切削工具〕
<積層構造>
本発明工具は、超硬合金層とサーメット層とが積層されて一体化された積層体(複合材料)で構成される基材を具える。本発明工具は、この基材そのもの、或いは後述するように更に、被覆膜を具えていてもよい。この基材の表面側の少なくとも一部、特に、切刃と、切刃に繋がるすくい面の少なくとも一部とには、超硬合金層を具える。すくい面の全面が実質的に超硬合金層により形成されていてもよい。本発明工具は、一般にサーメットよりも靭性の高い超硬合金層を、切屑が接触し易いすくい面側に具えることで、サーメット工具と比較して耐衝撃性に優れ、切屑との接触による欠損を効果的に抑制できる。特に、切刃部分に超硬合金層を具えることで耐欠損性を向上できる。本発明工具は、部分的に積層構造でもよいが、全体が積層構造であると、製造性がよい。具体的な形態は、一つのサーメット層と一つの超硬合金層とが積層された二層構造、一つのサーメット層を内部層とし、内部層の両側を挟むように一対の超硬合金層を配置した三層構造、一つのサーメット層を内部層とし、その外表面全面を覆うように超硬合金層を配置した内包構造(断面二層)、一つのサーメット層を中心層とし、その外表面の一部を囲むように超硬合金層を配置して、サーメット層の一部を露出させた同心状構造(断面二層)などが挙げられる。内包構造や同心状構造の成形体は、例えば、同心状の金型、具体的には、柱状の内側金型と、内側金型の外周に配される枠状の外側金型と、外側金型の外周に配される枠状の金型本体とを具えるものを用いることで形成可能である。内包構造や同心状構造の場合、ワークに接触する部分は、サーメット層が露出するようにする。上記二層構造や三層構造は、ワークに接触する部分にサーメット層を存在させ易く、好ましい。なお、切刃とは、すくい面と逃げ面との交線(稜線)を言う。
【0010】
<接合方法>
上記超硬合金層とサーメット層とは、各層を構成する原料粉末を混合後、造粒装置などにより造粒粉末とし、この造粒粉末を金型に順に供給して積層させ、この状態で加圧して積層プレス成形体を作製し、この成形体を焼結することで、一体に接合する。即ち、従来のように焼結体やプレス成形体を積層するのではなく、成形前の原料粉末の段階で積層状態として本発明工具を製造する。特許文献2,3に開示される製造方法は、焼結体を一旦製造してから表面研削を行った後加熱接合したり、別々にプレス成形体や焼結体を製造して接合するため、工程が多い。また、特に、本発明工具における超硬合金層のような薄いプレス成形体や焼結体を作製して、成形体同士、焼結体同士を隙間無く密着させることは難しいと考えられる。そのため、特許文献2,3に開示される接合材は、表面研削を行ったり、金型成形を経ることで、超硬合金とサーメットとの境界(接合界面)を平坦にしていると考えられるが、このような形状では、両者の熱膨張係数といった特性の差などによる剥離が生じ易い。両者が剥離すると、超硬合金の特性及びサーメットの特性の双方を十分に活用できない。なお、焼結体同士間や成形体同士間に隙間が存在するとその隙間に結合相プールが生じ易いことから、上記結合相プールを防止するために、上記従来の技術では、接合面を平坦化していると考えられる。これに対し、本発明工具は、通常の超硬合金やサーメットの製造プロセスに対して一つの金型における給粉回数を増加することで製造できるため、通常行われている粉末冶金の一連の製法から大きく逸脱することなく、簡単に生産性よく製造することができる。また、本発明工具の製造にあたり、プレス工程以外のプロセスコストの増加もほとんどなく、経済的にも好ましい。更に、原料粉末を積層させた成形体を焼結することで、両層が剥離し難く、接合性に優れる複合材料(基材)が得られる。
【0011】
<境界の形状>
本発明工具は、上述のように原料粉末(造粒粉末)を積層させて成形した後、焼結することで、超硬合金層とサーメット層との境界(接合界面)に、原料粉末に起因すると考えられる微小な凹凸が生じる。この凹凸により両層が互いに係合することで剥離し難いと考えられる。また、本発明工具は、超硬合金層が薄いため、超硬合金層の形状がパンチの形状に倣い易い(転写され易い)。従って、押圧面にチップブレーカー用突起や溝といった凹凸を有する凹凸付きパンチを用いると、境界がパンチに沿って凹凸を有することで両層をより係合し易くして、両層の接合性が高められると考えられる。
【0012】
<超硬合金層の厚さ>
本発明工具は、超硬合金層が薄く、サーメット層の体積割合が多い(50%超である)ことを最大の特徴とする。具体的には、本発明工具の両層の積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh1、切刃部分に存在する超硬合金層の積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh2とするとき、h2/h1が0.002以上0.02以下を満たす。特に、h2/h1は、0.002以上0.01以下を満たすことが好ましい。切刃部分に存在する超硬合金層が薄いことで、切刃及びその近傍においてワークとの接触面に占めるサーメット層の割合が高くなるため、本発明工具は、鋼の切削であっても、サーメット工具と同等程度の仕上げ面光沢を得ることができる。また、工具表面に存在する超硬合金層は、超硬合金とサーメットとの熱膨張係数の差に基づく圧縮応力が存在するが、超硬合金層の厚さが薄いことで、この圧縮応力が大きくなる傾向にある。ある程度の圧縮応力は、耐欠損性の向上に寄与すると期待される。本発明工具はこのように靭性や耐欠損性に優れることで、耐欠損性や靭性が低かった従来のサーメット工具よりも適用範囲が広がり、例えば、従来、超硬合金工具を使用していた分野にもサーメット層を主体とする本発明工具を使用可能である。このような本発明工具を利用することで、供給リスクが生じている希少金属(クラーク数:0.006)であるWの使用量を低減し、性能の劣化が生じない範囲で、クラーク数:0.46のTiの化合物を主成分とするサーメット層を多くすることにより、省資源化に寄与することができる。Wは、近年価格が高騰しているため、その使用量の低減は、経済的にも好ましい。
【0013】
h1,h2の測定は、例えば、切削工具の断面の顕微鏡観察像を用いて行う。図1は、工具及び超硬合金層の厚さ、刃先処理量の測定方法を説明する模式断面説明図であり、(I)は、二層構造の工具、(II)は三層構造の工具を示し、(III)は、切刃部分の拡大図である。図1では、多角柱状の切削工具(チップ)を示し、(I)では上面、(II)では上下面がすくい面に相当し、突起の一部及び凹みの一部はチップブレーカーを構成する。また、図1では、超硬合金層、境界の凹凸、チップブレーカー、切刃部分を強調して示す(後述する図2も同様)。図1(I)に示すように超硬合金層101とサーメット層102との積層方向が基準面Sに直交するように切削工具(基材)100を配置し、この状態で超硬合金層101とサーメット層102との境界103が存在する全域に亘って、基準面Sから超硬合金層100の表面101fまでの長さlfを測定し、長さlfを切削工具100の積層方向における厚さTとする。図1(II)に示すように切削工具100が基準面Sに接触していない箇所がある場合、接触していない箇所は、基準面Sから、切削工具100の外表面のうち基準面Sに対向する面までの長さlfuを測定し、同位置における長さlfとlfuとの差:lf-lfuを厚さTとする。そして、厚さTの最大値Tmaxをh1とする。また、上記配置状態で境界103の全域に亘って、基準面Sから境界までの長さl、及び同位置における長さlfを測定し、その差:lf-lを超硬合金層101の積層方向における厚さtとする。そして、切刃部分100c(図1(I),(II)において角部近傍(逃げ面からすくい面方向に1000μmまでの領域))の厚さtの最大値tmaxをh2とする。図1(III)に示すように切刃部分にホーニングといった刃先処理を行っている場合、切刃部分100cは、刃先処理が施された範囲(逃げ面201とすくい面202とを結ぶ稜線200において、逃げ面201から稜線200とすくい面202との交点203までの範囲(刃先処理幅w))を含む。図1(I)に示すように切削工具100の一面全面が基準面Sに接している場合、h1は、超硬合金層101の表面101fをハイトゲージといった測定機器で測定して求めてもよい。
【0014】
超硬合金層の厚さh2の具体的な値としては、10μm以上100μm以下、更に10μm以上50μmが好ましい。10μm未満であると、高靭性層の役割を果たせず、切削時に欠損などが生じ易く、100μm超であると、ワークとの接触面に占める超硬合金層の割合が大きくなり、特に鋼を切削する際、良好な仕上げ面光沢が得られ難くなる。特に、50μm以下とすると、超硬合金層に存在する圧縮応力が大きくなり、靭性の向上効果がより大きくなると考えられる。
【0015】
超硬合金層の厚さは、切刃部分全体に亘って均一的にしてもよいし、基材全体に亘って均一的にしてもよい。例えば、すくい面全域に亘って均一的な厚さとしてもよい。また、超硬合金層の厚さに差をつけた構成、即ち、部分的に厚さを異ならせてもよい。例えば、すくい面の特定箇所に存在する超硬合金層の厚さを厚くしたり薄くしたりしてもよい。特に、本発明工具を多角柱状の刃先交換型チップとし、その角部に切刃が形成され、この切刃に繋がるすくい面にチップブレーカーを具えており、このブレーカー部分にも超硬合金層を具える場合、ブレーカー部分に存在する超硬合金層を切刃部分よりも厚くすることが好ましい。チップブレーカーは、切屑の接触による衝撃が加わり易い。そこで、靭性に優れる超硬合金層を上記ブレーカー部分に厚く具えることで耐衝撃性を高められると共に、相対的に切刃部分の超硬合金層を薄くすることで、切刃及びその近傍においてワークに接触する逃げ面側のサーメット層の割合が高められるため、良好な仕上げ面光沢をより顕著に得られる。具体的には、チップブレーカーにおいてすくい面から最も突出した部分の超硬合金層の厚さをhb(図1(II)参照)とするとき、h2/hbが0.5以上1以下であることが好ましい。0.5未満では、超硬合金層の厚さの差が大きくなり過ぎて変形が生じ易くなり、1.0超では、上記耐衝撃性の向上及び良好な仕上げ面光沢の維持効果の双方を十分に得難い。
【0016】
<超硬合金層>
《硬質相》
超硬合金層は、WC粒子を主たる硬質相とし、Coといった鉄族金属を主たる結合相とするWC基超硬合金から構成される。この超硬合金層は、硬質相となるWC粒子をサーメット層よりも多く含むものとする。特に、超硬合金層は、W及びWCを合計で65質量%超含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。また、WC粒子は、特に、0.1μm以上1.0μm以下が好ましい。上記範囲において、平均粒径が小さいと、高硬度で耐摩耗性に優れる超硬合金層が得られ、大きいと、耐熱亀裂性といった靭性に優れる超硬合金層が得られる。また、WC粒子が上記範囲であると、刃先処理幅が0.05mm以下という小さな刃先処理が可能であり、切刃稜線をシャープにできる。更に、WC粒子が上記範囲である場合、本発明工具の表面に存在する超硬合金層の上に、PVD法により被覆膜を形成すると、被覆膜において超硬合金層との界面付近で膜の結晶粒が微粒のWC粒子に倣って微細化し、膜の密着力を高められるといった効果が得られる。所望の特性に応じてWC粒子の大きさを選択することができる。超硬合金層中のWC粒子の大きさは、概ね原料粉末に依存するため、原料粉末の大きさにより調整するとよい。後述するサーメット層中の硬質相粒子の大きさも同様に原料粉末の大きさにより調整できる。
【0017】
《結合相》
結合相は、主として鉄族金属からなり(80質量%以上が鉄族金属)、鉄族金属の他に原料粉末に起因すると考えられる元素が含有(固溶)されることを許容する。鉄族金属は、Coの他、FeやNiを含有していてもよいが、Coのみが好ましい。超硬合金層中の結合相の含有量は、3質量%以上20質量%以下が好ましい。20質量%超であると、靭性が高くなる反面、強度や耐摩耗性が低下し易く、3質量%未満であると、靭性が低下し易い。特に、5質量%以上15質量%以下であると、靭性に優れるため、好ましい。
【0018】
《その他の含有物》
超硬合金層は、WC粒子や鉄族金属の他、更に、周期律表IVa,Va,VIa族の金属元素群から選択される1種以上の元素や、同金属元素群から選択される1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群から選択される1種以上の元素とからなる化合物や固溶体を含有していてもよい。具体的な元素は、Cr,Ta,Ti,Nb,Zr,V、化合物は、(Ta,Nb)C,VC,Cr2C3,NbC,TiCNなどが挙げられる。これらの元素や化合物は、結合相に含有(固溶)されて存在したり、粒子で存在して硬質相として機能したりする。これらの元素や化合物は、焼結中においてWC粒子の粒成長を抑制する作用を有するものが多い。超硬合金層がこれらの元素や化合物を含有する場合、その含有量は、合計40質量%以下(但し0質量%を含む)が好ましい。なお、WC粒子は、これらの元素や化合物、結合相及び不純物を除く残部を構成する。
【0019】
特に、超硬合金層は、Crを含有していることが好ましく、超硬合金層の結合相量をx1(質量%)とし、超硬合金層中のCrの含有量をx2(質量%)とするとき、x2/x1が0.02以上0.2以下を満たすことが好ましい。0.02未満とCrが少な過ぎると、粒成長抑制効果が十分に得られず、超硬合金層中のWCが粗大化して、耐摩耗性の低下を招く。逆に、0.2超とCrが多過ぎると、超硬合金の組織中にCrの析出や凝集ができ易くなり、この析出物などを起点として破壊が起こるため、耐欠損性の低下を招く。また、上記範囲でCrを含有することで、超硬合金の液相出現温度を調整することができる。Crの増加に伴い、上記液相出現温度が低下する傾向にあり、超硬合金の液相出現温度とサーメットの液相出現温度との差を小さくすることができる。同差を小さくすることで、液相移動を抑制し、液相移動による性能低下や変形などを低減できる。超硬合金層が所望の組成となるように、原料粉末の組成設計を行う。
【0020】
<サーメット層>
《硬質相》
サーメット層は、少なくとも硬質相としてTi化合物を含有し、Co,Niといった鉄族金属を主たる結合相とする硬質材料から構成される。Ti化合物は、代表的には、Tiの炭化物(TiC)、Tiの窒化物(TiN)及びTiの炭窒化物(TiCN)から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。その他、Ti化合物は、Ti及び周期律表IVa,Va,VIa族の金属元素(Tiを除く)と、C及びNの少なくとも1種とを含む複合化合物、即ち、Tiを含む複合炭化物、Tiを含む複合窒化物、Tiを含む複合炭窒化物が挙げられる。具体的な複合化合物は、(Ti,W,Mo,Ta,Nb)(C,N)、(Ti,W,Nb)(C,N)、(Ti,W,Mo,Ta)(C,N)、(Ti,W,Mo,Zr)(C,N)などが挙げられる。硬質相を構成するTi化合物からなる粒子は、単一の組成から構成されるものでも(例えば、TiCN)、中心部とその周辺部とでTi濃度が異なる有芯構造であってもよい。SEM観察によれば、有芯構造の粒子のうち、中心部にTiを多く含む粒子は、黒っぽく見え(黒芯粒子)、中心部にWを多く含む粒子は、白っぽく見える(白芯粒子)。これら硬質相粒子(有芯構造の粒子の場合、周辺部を含む大きさ)の平均粒径は、0.5〜5.0μm、特に1.0〜3.0μmが好ましい。また、サーメット層は、少なくともWを含有させると、超硬合金層との熱膨張係数の差を小さくして、変形や剥離を抑制し易く好ましい。サーメット層中にWを存在させるには、原料にWCを用いることが挙げられる。原料のWCは、焼結後、Wとなって結合相などに含有(固溶)されて存在し、原料の添加量の増加に伴ってWCやWを多く含む複合化合物が析出する傾向にある。析出されたWCや複合化合物は硬質相として機能する。また、原料のWCの添加量の増加に伴って、白芯粒子が増加する傾向にある。サーメット層を100質量%とするとき、WC及びWを合計15質量%以上含有していれば、上記効果を期待できる。W及びWCの合計含有量の増加に伴い、熱膨張係数の差を小さくし易いが、多過ぎると、超硬合金層に圧縮応力が存在することによる靭性の向上効果が得られ難くなることから、合計含有量は65質量%以下が好ましい。より好ましいWC及びWの合計含有量は、15質量%以上40質量%以下である。サーメット層中のWC及びW量は、原料粉末のWC添加量に概ね依存するため、原料のWC添加量を調整することで、上記所定の範囲とすることができる。また、原料のWCは、平均粒径が1〜8μm、特に3〜5μmと比較的粗大なものを用いると、サーメット層に析出されたWCなどが比較的粗粒となり、亀裂進展の抵抗の向上といった効果が得られる。サーメット層中のWC量の測定は、例えば、XRDなどで化合物の同定を行い、EDX,EPMA,蛍光X線,IPC-AESなどを用いて組成を分析することで行え、W量の測定は、上記EDXなどで組成を分析することで行える。
【0021】
《結合相》
サーメット層中の結合相の含有量は、8質量%以上20質量%以下が好ましい。20質量%超であると、靭性が高くなる反面、強度や耐摩耗性が低下し、8質量%未満であると、焼結性、靭性が低下する。また、この結合相は、主として鉄族金属からなり(80質量%以上が鉄族金属)、鉄族金属の他に原料粉末に起因すると考えられる元素が含有(固溶)されることを許容する。鉄族金属は、Coの他、Niを含有していてもよいが、Niを多く含有すると、焼結中などでNiが超硬合金層に移動する液相移動が生じ易い。液相移動量が多いと、特に、超硬合金層の組成が変化して硬度の低下といった性能低下や本発明工具の変形などを生じる恐れがある。従って、サーメット層の結合相は、Coが多い方が好ましく、サーメット層の結合相中の鉄族金属を100質量%とするとき、80質量%以上、特に90質量%以上がCoであることが好ましく、Coのみとすることが最適である。このように結合相中にCoを多く含有することで、変形の抑制、性能低下の抑制といった効果を奏することができる。
【0022】
超硬合金とサーメットとの積層体は、組成などの違いから、焼結時に液相移動が起こり易く、上述のように液相移動による性能の低下や変形が生じ易い。しかし、サーメット層の結合相の含有量と超硬合金層の結合相の含有量との差が小さいと、上記液相移動量を低減でき、液相移動に伴う特性の劣化を低減できる。具体的には、超硬合金層の結合相の含有量をy1(体積%)、サーメット層の結合相の含有量をy2(体積%)とするとき、y1/y2が0.8以上1.2以下を満たすことが好ましい。0.8未満及び1.2超では、結合相量が多い方から少ない方に液相移動が生じ易くなる。また、上述のように超硬合金層にCrを添加すると、液相移動を抑制することができる。
【0023】
《その他の含有物》
サーメット層も上記超硬合金と同様に、Cr,Ta,Nb,Zr,V,Moといった元素や(Ta,Nb)C,VC,Cr2C3,NbCといった化合物を更に含有していてもよく、その含有量は、合計で5〜50質量%が好ましい。なお、サーメット層において、結合相及び不純物を除く残部が硬質相を構成する。サーメット層が所望の組成となるように、原料粉末の組成設計を行う。
【0024】
《刃先処理》
本発明工具において表面の稜線の少なくとも一部は、切刃になる。切刃は、焼結したままの状態でもよいが、ホーニングといった刃先処理を行うことで、耐チッピング性を向上できることに加えて、ワーク(被削材)の加工面粗さをより小さくして良好な加工面が得られる。ここで、サーメットからなる基材は、焼結したままではシャープな刃先であるものの、靭性が低いためチッピングが生じ易く、刃先処理をしようとしても、靭性が低いため、シャープな刃先処理が難しく、加工面粗さが大きくなり易い。これに対し、本発明工具は、切刃となる部分の少なくとも一部に靭性が高い超硬合金層を具えるため、刃先処理を行わなくても、耐チッピング性に優れる。また、刃先処理を行う場合でも、本発明工具は、刃先処理を施す部分に靭性が高い超硬合金層を具えるため、上記刃先処理により、シャープな刃先が得られることから、加工面粗さをより小さくすることができる。更に、加工精度の向上に加えて、バリの発生も抑制することができる。刃先処理量は、刃先処理幅が0mm超0.05mm以下であることが好ましい。0.05mm超では、刃先が鋭くないため、加工面粗さが小さくならず、加工精度を十分に向上できない。
【0025】
《圧縮応力》
超硬合金層及びサーメット層について、熱膨張係数及び収縮率を調整することにより、上述のように超硬合金層に圧縮応力を存在させることができる。熱膨張係数の異なる材料を積層すると、熱膨張係数の小さい側に圧縮応力が生じ、この圧縮応力が原因で層間剥離が生じることがある。これに対し、本発明工具は、上述のように両層が微視的に係合することで、上記圧縮応力に起因する層間剥離が生じ難く、圧縮応力による靭性の向上効果が期待できる。但し、圧縮応力が大き過ぎると層間剥離が生じるため、剥離が生じない範囲で圧縮応力を存在させることが好ましい。圧縮応力の調整は、上述のように熱膨張係数及び収縮率を調整する、具体的には、原料粉末の組成などを調整することが挙げられる。圧縮応力の大きさは、例えば、超硬合金層の表面をラッピングした後、その表面の中心付近をXRDにより測定することで求められる。好適な圧縮応力の大きさは、0.1〜3.0GPa程度である。
【0026】
<製造方法>
本発明工具は、上述のように造粒粉末を準備して、所望の積層構造となるように順次金型に供給し、全ての粉末を金型に充填した後プレスして、積層構造のプレス成形体を形成し、この成形体を焼結することで製造できる。得られた焼結体(本発明工具)は、超硬合金層とサーメット層との境界に、造粒の大きさや形状に概ね対応した凹凸形状を有する。凹凸形状は、造粒径を例えば、10〜200μmに調整したり、造粒径や造粒粉末の硬さ、密度、形状といった造粒粉末の性状、プレス圧力などを調整することで変化できる。これらの要因を制御することで、超硬合金層とサーメット層との接合性に優れる本発明工具が得られる。押圧時の圧力は、0.5t/cm2以上2.5t/cm2以下が好ましい。0.5t/cm2未満では、プレス成形体の密度が低く、焼結時の収縮量が大きくなって寸法精度が低下し易く、2.5t/cm2超では、プレス成形体が緻密化し過ぎて、亀裂が生じ易く、特に複雑な形状の成形体の場合、亀裂の発生がより多くなる。本発明工具の表面側に具える超硬合金層は、比較的薄いため、押圧に用いるパンチの形状に倣い易く、工具外形と、表面側の超硬合金層とサーメット層との境界の形状とが概ね相似形状となる。
【0027】
上記焼結は、焼結体の形成と共に、超硬合金層とサーメット層との一体接合も兼ねる。焼結は、一般的な条件を利用することができる。例えば、焼結条件は、真空雰囲気で1300〜1500℃に0.5〜3.0時間保持することが挙げられる。
【0028】
<用途>
本発明工具は、超硬合金層とサーメット層との双方の特性を兼ね備え、高靭性で、仕上げ面精度に優れる。従って、本発明工具は、特に、仕上げ加工に好適に利用することができる。本発明工具の代表的な形態としては、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップが挙げられる。その他、ドリル、エンドミル、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの利用が期待できる。
【0029】
本発明工具は、基材表面に被覆膜を具えた被覆切削工具としてもよい。ここで、サーメットからなる基材は、一般に被覆膜との密着性が低い。これに対し、本発明工具は、超硬合金層を具えることで被覆膜との密着性を向上することができ、良好な仕上げ面光沢も得られる。被覆膜は、少なくとも切刃及びその近傍に具えることが好ましい。被覆膜の組成は、例えば、周期律表IVa,Va,VIa族元素,及びSi,Alから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素(C),窒素(N),酸素(O),及び硼素(B)から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、及び立方晶窒化硼素(cBN)から選択される少なくとも1種からなるものが挙げられる。即ち、上記金属などの元素の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物及びこれらの固溶体からなるもの、例えば、TiCN,Al2O3,TiAlN,TiN,AlCrN,TiSiN、ダイヤモンド、DLC、及びcBNのうち、1種以上が挙げられる。上記の候補から選択される膜を1層以上具える被覆切削工具は、被覆膜がない状態と比較して、耐摩耗性をより向上できる。被覆膜は、単層でも複数層でもよく、合計膜厚は、1〜20μmが好ましい。PVD法にて形成する場合、合計膜厚は、1〜10μmがより好ましい。被覆膜の厚さは、成膜時間を調整することで変化させられる。
【0030】
被覆膜の形成は、PVD法,CVD法のいずれも利用することができる。例えば、PVD法としてアークイオンプレーティング法を利用する場合、成膜条件は、基材温度:400〜600℃、雰囲気の圧力:0.5〜5Pa、バイアス電圧:-50〜-150Vが挙げられる。例えば、CVD法として熱CVD法を利用する場合、成膜条件は、基材温度:800〜1000℃、ガス圧:5〜10MPa、反応ガス:CH4,H2,N2,CO2,AlCl3,TiCl4などが挙げられる。成膜条件は、公知の条件を利用することができる。
【0031】
CVD法により例えばTi化合物の成膜を行う場合、サーメット層中にNiを多く含有すると、Niが膜の性能に悪影響を及ぼす可能性があるため、サーメット層の結合相中のCo量を高めることが好ましいと考えられる。一方、PVD法により成膜する場合、通常、CVD法よりもPVD法による膜の方が薄膜であることから、シャープな刃先が得られ易い。また、CVD法よりもPVD法による膜の方が膜の表面粗さも小さくなり易い。従って、上述した刃先処理を行わない基材にPVD法による薄膜を形成した場合でも、耐摩耗性を向上させることができ、また、加工面粗さが小さく、加工精度に優れる。更に、刃先処理幅が0.05mm以下の小さな刃先処理を行った基材にPVD膜を形成すると、加工精度をある程度維持しつつ、刃先の欠けを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明切削工具は、超硬合金層とサーメット層との双方の特性を兼ね備え、耐衝撃性に優れると共に良好な仕上げ面光沢が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(試験例1)
超硬合金層とサーメット層とが積層された複合材料からなる切削工具を作製して、切削性能を調べた。この試験では、切刃部分の超硬合金層の厚さが異なる試料、及び比較としてサーメットのみからなる試料を用いた。
【0034】
切削工具は、以下のように作製した。表1に示す組成となるように原料粉末を秤量し、これら原料粉末をエタノール中で11時間、アトライター(ATR)により混合した後、造粒を行い、平均粒径100μmの超硬合金用粉末(造粒粉末)、及びサーメット用粉末(造粒粉末)を得る。造粒粉末の平均粒径の測定は、粉末のSEM(走査電子顕微鏡)写真を画像解析して行ったが、粒度測定器などを用いて行うこともできる。超硬合金層及びサーメット層が所望の厚さとなるように、得られた超硬合金用粉末、及びサーメット粉末を量り取る。なお、表1及び後述する表15において、超硬合金における「Cr比」とは、結合相(ここでは主にCo)の含有量x1(質量%)に対するCrの含有量x2(質量%)の割合:x2/x1(無単位)を示す。サーメットにおける「Co割合」とは、結合相(ここでは主にCo+Ni)の含有量を100質量%とするときのCoの含有量(質量%)を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
得られた超硬合金用粉末、及びサーメット用粉末を用いて積層プレス成形体を作製する。この試験では、四角柱状のブレーカー付き切削チップ(住友電気工業株式会社型番:SNMG120408N-UX)を作製した。具体的には、所定形状の金型に、超硬合金用粉末、サーメット用粉末、超硬合金用粉末を順に給粉した後、1.0t/cm2で押圧して積層プレス成形体を作製する。得られた成形体を真空雰囲気にて1430℃×60minの条件で焼結して、図2に示すように、一つのサーメット層12を挟むように一対の超硬合金層11を配置した三層構造の複合材料を得る。この複合材料は、上下面の全面が実質的に超硬合金層で形成され、側面が超硬合金層とサーメット層との積層面で形成される。得られたの複合材料の角部において、上下面と側面との交線の一部に刃先処理(刃先処理幅w(図1(III)参照):0.04mm)を施して切削工具10が得られる。なお、切削工具10の上下面がすくい面、側面が逃げ面であり、すくい面と逃げ面との交線が切刃、すくい面に具える凹み部分及び突出部分の一部がチップブレーカーであり、工具中央に本体(図示せず)に取り付けるための取付穴14を具える。
【0037】
得られた切削工具の積層方向における最大厚さh1は4.76mmであり、切刃部分(逃げ面からすくい面方向に1000μmまでの領域)における超硬合金層の最大厚さh2、ブレーカー部分における超硬合金層の最大厚さ(ここでは切刃よりもすくい面側に突出した部分の最大厚さ)hbを表3に示す。切削工具の厚さh1の測定は、ハイトゲージを用いて行い、超硬合金層の厚さh2,hbの測定は、切削工具の断面を顕微鏡観察し(500倍)、その観察像を用いて行った。この観察像において、切削工具の境界13の形状を調べたところ、概ね外形(押圧パンチ)に沿った形状であるが、部分的にパンチの形状に沿わない微細な凹凸が見られる。また、切刃部分の超硬合金層の厚さは、概ね均一的である。更に、超硬合金層のWCの平均粒径を測定したところ、0.9μmである。平均粒径は、工具の切断面をラッピングしてSEMによる結晶解析を行い、解析画像を画像解析装置に取り込んで解析して、切断面におけるWC粒子の結晶粒の粒径(μm)を測定して、これらの平均値とする。これら切削工具について、両層の境界から切刃部分における超硬合金層の最大厚さh2の1/2の地点(例えば、h2=100μmの場合、境界から50μmの地点)の結合相量をEPMAで測定したところ、超硬合金層の結合相量y1は16.2体積%、サーメット層の結合相量y2は15.8体積%、y1/y2:1.0である。超硬合金層中のCr量、サーメット層中のCo量も結合相量の測定と同様にして測定して、Cr比、Co割合を求められる。測定は、EPMAの他、EDXを利用してもよい。また、サーメット層のW及びWCの合計量を測定したところ、36.3質量%である。W量は、上記Co量と同様に測定し、WC量は、両層の境界から100μmの地点について、EPMA及びXRDを用いて測定し、これらを合計してW及びWCの合計含有量としている。これらの測定量は、いずれも平均値である。なお、得られた複合材料についてサーメット層の組織をSEMにより観察したところ、硬質相粒子として、TiCN粒子、黒芯粒子、白芯粒子が存在していた。
【0038】
得られた切削工具を用いて、表2に示す切削条件で靭性試験及び仕上げ加工試験(いずれも旋削加工)を行った。その結果を表3に示す。靭性(耐欠損性)は、工具が破損するまでの衝撃回数を評価した。仕上げ加工では、仕上げ面光沢を評価した。仕上げ面光沢は、加工後のワークを目視により確認し、黒光りの金属光沢を有する場合を○、白光りの金属光沢を有する場合を△、白濁した状態である場合を×とした。なお、仕上げ面が綺麗であれば、金属光沢が黒っぽく見え、通常の金属光沢は、白っぽく見え、仕上げ面が粗いと白濁して見える。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
表3に示すように、超硬合金層を具える試料は、サーメットのみからなる試料No.100と比較して、靭性に優れることが分かる。かつ、切刃部分の超硬合金層が100μm以下の薄い試料は、良好な仕上げ面光沢が得られることが分かる。特に、切刃部分の超硬合金層が10μm以上50μm以下の試料は、靭性及び仕上げ精度の双方に優れることが分かる。なお、超硬合金層を具える試料はいずれも、超硬合金層が剥離することが無かった。この理由は、超硬合金層とサーメット層との境界に微視的な凹凸が存在したためであると考えられる。
【0042】
(試験例2)
試験例1と同様にして同じ形状の切削工具(切削チップ)を作製し、超硬合金層の剥離状態、及び切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた工具のサーメット層に対して組成(W及びWCの合計含有量)を変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(超硬合金層の組成:試験例1と同様、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、刃先処理幅:0.04mm、超硬合金層のCr比:0.06、サーメット層のCo割合:88.9質量%、超硬合金層のWC粒子の平均粒径:0.9μm)。原料に用いたWCの添加量を変化させることで、表4に示すようにサーメット層のW及びWCの合計含有量を変化させた。上記原料のWCの添加量の増減した分に対して、原料のTiCNの添加量を増減させ、TiCNとWCとの合計量が試験例1と同様になるようにした。サーメット層中のW量及びWC量の測定は、試験例1と同様に行った。また、工具の両層の結合相量比y1/y2を試験例1と同様にして調べたところ、いずれの試料もy1/y2:0.8〜1.2を満たしていた。
【0043】
得られた切削工具について、超硬合金層の剥離状態を調べた。その結果を表4に示す。また、得られた切削工具を用いて、表2に示す切削条件で靭性(耐欠損性)試験を行った。その結果を表4に示す。剥離状態は顕微鏡又は目視で観察し、超硬合金層とサーメット層との接合界面において、超硬合金層の少なくとも一部がサーメット層と接合せず、浮き上がっていたり、超硬合金層の一部が脱落しているものを×、脱落や浮きが無いものの微小なヒビを有するものを△、上記浮き、脱落、ヒビの無いものを○と評価する。靭性の評価は、試験例1と同様である。靭性の評価が「×」の試料は、焼結後に超硬合金層の剥離が生じたために切削試験を行っていない。
【0044】
【表4】

【0045】
表4に示すように、サーメット層に含有されるW及びWCの合計含有量が多くなるほど、剥離し難いことが分かる。しかし、W及びWCが多過ぎると、靭性が低下し易いことが分かる。この理由は、工具中にW及びWCの合計含有量が多くなり過ぎて超硬合金層とサーメット層との熱膨張係数の差が小さくなり、超硬合金層に導入される圧縮応力が小さくなったためと考えられる。なお、原料のWCの添加量が多くなるにつれて、サーメット層中にWCや白芯粒子の析出が認められた。
【0046】
(試験例3)
試験例1と同様にして同じ形状の切削チップを作製して基材とし、この基材に被覆膜を形成して被覆切削工具を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた切削チップに対して、サーメット層のCo割合を変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(超硬合金層の組成:試験例1と同様、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、刃先処理幅:0.04mm、超硬合金層のCr比:0.06、サーメット層のW及びWCの合計含有量:36.3質量%、超硬合金層のWC粒子の平均粒径:0.9μm)。Coの含有量の増減した分に対して、Niの含有量を増減させ、結合相の合計量が試験例1と同様になるようにした。そして、原料に用いたCo量を変化させることで、表7に示すようにサーメット層の結合相中のCo量を変化させた。表7中のCo割合は、結合相中の鉄族金属量を100質量%とする。鉄族金属量及びCo量は、試験例1の結合相量の測定と同様にEPMAで同様にして測定した。また、基材の両層の結合相量比y1/y2を試験例1と同様にして調べたところ、いずれの試料も0.8〜1.2を満たしていた。
【0047】
得られた基材に、CVD法(ここでは熱CVD法)により、公知の条件で表5に示す組成の被覆膜(三層)を形成して被覆切削工具を作製し、表6に示す切削条件で切削試験(いずれも旋削加工)を行い、耐摩耗性及び靭性(耐欠損性)を調べた。その結果を表7に示す。靭性の評価は、試験例1と同様であり、耐摩耗性の評価は、30分後の逃げ面摩耗量(mm)を測定して行った。
【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
表7に示すように、サーメット層の結合相に対するCo割合が高くなるほど、靭性に優れることが分かる。かつ、耐摩耗性にも優れることが分かる。これは、Niを低減して液相の移動を抑制することで変形を防止して硬度の低下を低減したことで、結果として耐摩耗性を向上できたと考えられる。また、この試験では、CVD膜を形成したが、基材が超硬合金層を具えることで基材と被覆膜との密着性に優れていた。
【0052】
(試験例4)
試験例1と同様にして同じ形状の切削チップを作製して基材とし、この基材に被覆膜を形成して被覆切削工具を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた切削チップにおいて、刃先処理幅を変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(基材の組成:同様(両層の結合相量比y1/y2:1.0)、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、超硬合金層のCr比:0.06、サーメット層のW及びWCの合計含有量:36.3質量%、サーメット層のCo割合:88.9質量%、超硬合金層のWC粒子の平均粒径:0.9μm)。
【0053】
得られた基材に、以下のようにして、PVD法(ここでは、アークイオンプレーティング法)により被覆膜を形成する。成膜装置のチャンバ内にアルゴンガスを導入して、チャンバ内の圧力を3.0Paに保持し、基材バイアス電圧を-1000Vとし、タングステン(W)フィラメントを利用して、基材表面のクリーニングを30分間行った後、チャンバ内からアルゴンガスを排気し、引き続いて成膜を行う。成膜は、基材温度を所定の温度とし、真空状態、或いは反応ガスとして窒素、メタン及び酸素のいずれか1種以上のガスを導入させながら、蒸発源とチャンバ間のアーク放電により、蒸発源からカソード物質を蒸発させて行う。この試験では、表8に示す組成の被覆膜(二層)を形成した。成膜条件は、基材温度:500℃、バイアス電圧:-100V、雰囲気の圧力:1.5Paとした。
【0054】
【表8】

【0055】
得られた被覆切削工具を用いて、表9に示す切削条件で切削試験(いずれも旋削加工)を行い、靭性(耐欠損性)及びワークのバリ状態を調べた。その結果を表10に示す。靭性の評価方法は、試験例1と同様である。ワークのバリ状態は、ワークに生じたバリの高さを測定し、バリの高さが1mm以下:○、1mm超1.5mm以下:△、1.5mm超:×として評価した。
【0056】
【表9】

【0057】
【表10】

【0058】
表10に示すように、刃先処理を行うことで、靭性を向上できることが分かる。特に、刃先処理幅が0.05mm以下の小さな刃先処理によりシャープな刃先が得られたことで、バリの発生も抑制することができることが分かる。また、基材が超硬合金層を具えることで被覆膜との密着性に優れており、かつ0.05mm以下の刃先処理を行った基材にPVD膜を具えることで、上記靭性を向上できる上に、良好な加工精度を達成することができる。
【0059】
(試験例5)
試験例1と同様にして同じ形状の切削工具(切削チップ)を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた工具に対して、超硬合金層におけるCrの含有量を変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(サーメット層の組成:試験例1と同様、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、刃先処理幅:0.04mm、超硬合金層のWC粒子の平均粒径:0.9μm、サーメット層のW及びWCの合計含有量:36.3質量%、サーメット層のCo割合:88.9質量%)。原料に用いたCrの添加量を変化させることで、表12に示すように超硬合金層のCrの含有量を変化させた。原料のCrの添加量の増減した分に対して、原料のWCの添加量を増減させ、Coの含有量は一定にした(Co:10質量%)。また、基材の両層の結合相量比y1/y2を試験例1と同様にして調べたところ、いずれの試料もy1/y2:0.8〜1.2を満たしていた。
【0060】
得られた切削工具を用いて、表11に示す切削条件で切削試験を行い、耐摩耗性及び靭性(耐欠損性)を調べた。その結果を表12に示す。耐摩耗性及び靭性の評価方法は、試験例3と同様である。表12において「x2/x1」は、超硬合金層中の結合相(Co)の含有量:x1(質量%)に対するCrの含有量:x2(質量%)の割合を示す。Cr量の測定は、EPMAで試験例1と同様にして行った。その結果を表12に示す。
【0061】
【表11】

【0062】
【表12】

【0063】
表12に示すように、超硬合金層中のCrの含有割合x2/x1が0.02以上0.2以下を満たすことで、WC粒子の粗大化による耐摩耗性の低下やCrの析出などによる耐欠損性の低下を抑制することができ、耐摩耗性及び靭性の双方に優れることが分かる。また、適量のCrを含有することで、液相移動による変形や性能の低下も抑制できたと考えられる。
【0064】
(試験例6)
サーメット層における結合相量(体積%)を一定として、超硬合金層における結合相量(体積%)を変化させた切削工具を作製し、焼結後における変形状態を調べた。ここでは、超硬合金層の厚さが均一的な二層構造で、表面が平面的な四角柱状のもの(図1(I)参照)、即ち、ブレーカーが無いものを作製した(厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01))。両層の結合相量を変えた点以外は試験例1と同様の原料粉末を用い、所定形状の金型に、サーメット用粉末、超硬合金用粉末を順に給粉した後、1.0t/cm2で押圧して作製した積層プレス成形体を試験例1と同様の条件で焼結して切削工具を得た。超硬合金層の結合相を増減した分に対して、WCを増減させた。なお、粉末の給粉順序は上記と逆でもよい。
【0065】
得られた切削工具に対して、超硬合金層とサーメット層との境界近傍の結合相量(体積%)を測定した。結合相量の測定は、工具の断面を顕微鏡観察し(500倍)、上記境界から超硬合金層の厚さh2の1/2の地点(25μm)をEPMAにてライン分析して行った。また、得られた切削工具の変形状態を評価した。変形状態は、各試料を超硬合金層が上方を向くように水平な台上に配置し、ハイトゲージで表面全体を測定し、この表面のうち、最も高い位置と最も低い位置の差(反りの度合い)を算出し、その差が0.1mm超を×、0.1mm以下を○と評価する。これらの結果を表13に示す。
【0066】
【表13】

【0067】
表13に示すように、両層の結合相量の差が小さいほど、結合相の移動が少なく、変形が小さいことが分かる。
【0068】
(試験例7)
試験例1と同様にして同じ形状の切削チップを作製して基材とし、この基材に試験例4と同様にして被覆膜(PVD膜)を形成して被覆切削工具を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた切削チップにおいて、超硬合金層に用いたWC粉末の大きさを変えた点以外の点は、試験例1と概ね同様としている(基材の組成:試験例1と同様(両層の結合相量比y1/y2:1.0)、厚さh1:4.76mm、切刃部分の超硬合金層の厚さh2:50μm(h2/h1=0.01)、ブレーカー部分の超硬合金層の厚さhb:100μm(h2/hb=0.5)、刃先処理幅:0.04mm、超硬合金層のCr比:0.06、サーメット層のW及びWCの合計含有量:36.3質量%、サーメット層のCo割合:88.9質量%)。
【0069】
得られた切削工具について、超硬合金層の平均粒径を調べた。その結果を表14に示す。また、得られた被覆切削工具を用いて、表6に示す切削条件で切削試験を行い、耐摩耗性及び靭性(耐欠損性)を調べた。その結果を表14に示す。平均粒径は、試験例1と同様にして測定した。耐摩耗性及び靭性の評価方法は、試験例3と同様である。
【0070】
【表14】

【0071】
表14に示すように超硬合金層中のWCの平均粒径が1.0μm以下と小さい試料は、耐摩耗性に優れることが分かる。かつ、これらの試料は、靭性にも優れることが分かる。これは、超硬合金層の微細なWC粒子に倣って、PVD膜における基材との境界近傍の結晶粒も微粒化し、基材とPVD膜との密着力を高めたことで靭性を向上できたと考えられる。
【0072】
(試験例8)
試験例1と同様にして同じ形状の切削工具(切削チップ)を作製し、切削性能を調べた。この試験では、試験例1で用いた工具に対して、サーメット層の組成を異ならせた点以外の点は、試験例1と概ね同様とし、超硬合金層の厚さが異なる試料を複数作製した。
【0073】
切削工具は、以下のように作製した。表15に示す組成となるように原料粉末を秤量し、試験例1と同様にして平均粒径100μmの造粒粉末を作製する。得られた超硬合金用粉末及びサーメット用粉末を用いて、試験例1と同様にして三層構造の積層プレス成形体を作製し、得られた成形体を真空雰囲気にて1480℃×60minの条件で焼結して図2に示す三層構造の複合材料を得る。得られた複合材料の角部において、試験例1と同様に刃先処理(刃先処理幅:0.04mm)を施して、試験例1と同様に四角柱状のブレーカー付き切削チップ(住友電気工業株式会社型番:SNMG120408N-UX)を得る。
【0074】
【表15】

【0075】
焼結後、得られた切削工具について、サーメット層の組織をSEMで観察したところ、TiCNからなる芯部(黒芯)の周辺に(Ti,W,Mo,Ta,Nb)(C,N)からなる周辺部を有する有芯構造を持つ粒子が存在する組織であった。また、後述する厚さの測定に用いた観察像において、工具における超硬合金層とサーメット層との境界の形状を調べたところ、概ね外形(押圧パンチ)に沿った形状であるが、部分的にパンチの形状に沿わない微細な凹凸が見られる。また、切刃部分の超硬合金層の厚さは、概ね均一的である。
【0076】
得られた各切削工具について、試験例1と同様にして、工具の積層方向における最大厚さh1を測定したところ、いずれの試料も4.76mmであった。また、各切削工具について、切刃部分における超硬合金層の最大厚さh2、ブレーカー部分における超硬合金層の最大厚さhbを試験例1と同様にして測定した。その結果を表16に示す。更に、試験例1と同様にして種々の特性を測定したところ、超硬合金層のWCの平均粒径:0.9μm、超硬合金層の結合相量y1:16.2体積%、サーメット層の結合相量y2:16.4体積%、y1/y2:1.0、サーメット層のW及びWCの合計量:32.6質量%である。
【0077】
得られた切削工具を用いて、表2に示す切削条件で靭性試験及び仕上げ加工試験(いずれも旋削加工)を行った。その結果を表16に示す。試験の評価方法は、試験例1と同様である。
【0078】
【表16】

【0079】
表16に示すように、この試験例で作製した切削工具も、超硬合金層を具える試料は、サーメットのみからなる試料No.800と比較して、靭性に優れることが分かる。かつ、切刃部分の超硬合金層が100μm以下の薄い試料は、良好な仕上げ面光沢が得られることが分かる。特に、切刃部分の超硬合金層が10μm以上50μm以下の試料は、靭性及び仕上げ精度の双方に優れることが分かる。また、超硬合金層を具える試料はいずれも、超硬合金層が剥離することが無かった。
【0080】
なお、上述した実施の形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、超硬合金層及びサーメット層の組成や被覆膜の種類、成膜方法などを変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明切削工具は、耐衝撃性及び仕上げ面光沢に優れることが望まれる切削加工に好適に利用することができる。例えば、仕上げ加工に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明切削工具の厚さ、超硬合金層の厚さ、刃先処理量の測定方法を説明する模式断面説明図であり、(I)は、二層構造の工具、(II)は三層構造の工具、(III)は、刃先部分の拡大図である。
【図2】本発明切削工具の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0083】
10 切削工具(基材) 11 超硬合金層 12 サーメット層 13 境界
14 取付穴 100 切削工具(基材) 100c 切刃部分 101 超硬合金層
101f 表面 102 サーメット層 103 境界 S 基準面
200 稜線 201 逃げ面 202 すくい面 203 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金層とサーメット層とが積層されてなる基材を具え、
前記基材の切刃及び切刃に繋がるすくい面側の少なくとも一部に前記超硬合金層が配置されており、
前記基材は、積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh1、切刃部分に存在する超硬合金層の積層方向における厚さが最も大きい部分の厚さをh2とするとき、h2/h1が0.002以上0.02以下を満たすことを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記超硬合金層の厚さh2が10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記超硬合金層の厚さh2が10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項4】
前記サーメット層は、WC及びWを合計で15質量%以上65質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項5】
前記超硬合金層は、鉄族金属を含む結合相と、Crとを含んでおり、前記結合相量をx1(質量%)とし、Crの含有量をx2(質量%)とするとき、x2/x1が0.02以上0.2以下を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項6】
前記超硬合金層及びサーメット層は、鉄族金属を含む結合相を具え、超硬合金層の結合相の含有量をy1(体積%)とし、サーメット層の結合相の含有量をy2(体積%)とするとき、y1/y2が0.8以上1.2以下を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項7】
前記基材は、
多角柱状の刃先交換型チップであり、その角部に切刃が形成されており、
前記切刃に繋がるすくい面にチップブレーカーを具え、このブレーカー部分に超硬合金層が存在しており、
前記チップブレーカーにおいてすくい面から最も突出した部分の超硬合金層の厚さをhbとするとき、h2/hbが0.5以上1以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項8】
前記サーメット層は、鉄族金属を含む結合相を具え、結合相中の鉄族金属の80質量%以上がCoであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項9】
前記切削工具は、更に、前記基材表面に形成された被覆膜を具え、
前記被覆膜は、CVD法により形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項10】
前記切削工具は、更に、前記基材表面に形成された被覆膜を具え、
前記被覆膜は、PVD法により形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項11】
前記基材において、前記超硬合金層中の硬質相粒子の平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項12】
前記基材は、刃先処理部を有しており、その刃先処理幅が0.05mm以下であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の切削工具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−83096(P2009−83096A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234053(P2008−234053)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(503212652)住友電工ハードメタル株式会社 (390)
【Fターム(参考)】