前後進切換操作機構
【課題】簡易な構造で、保持力が小さくて済み、操作性が向上できる前後進切換操作機構を提供する。
【解決手段】クローラベルト33等のクローラ走行部14,16を有する小型除雪機10のハンドル23近傍に設けられる前後進切換操作機構40において、中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により小型除雪機10の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバー42と、ハンドル23側に押し付けることで前後進切換レバー42を前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバー43とを備える。
【解決手段】クローラベルト33等のクローラ走行部14,16を有する小型除雪機10のハンドル23近傍に設けられる前後進切換操作機構40において、中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により小型除雪機10の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバー42と、ハンドル23側に押し付けることで前後進切換レバー42を前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバー43とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪、クローラベルト等の走行部を有する走行機械の前進と後進とを切り換える前後進切換操作機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の前後進切換操作機構として、操縦ハンドルに設けられた前後輪切換えレバーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−271926公報
【0003】
特許文献1の図1、図2によれば、バインダ10の操縦ハンドル22に、バインダ10の前後進を切り換える前後進切換えレバー24が設けられている。
この前後進切換えレバー24は、通常は直立状態に保持され、直立状態から前方に倒せば前進、直立状態から後方に倒せば後進となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の前後進切換えレバー24には、前進又は後進での位置を保持するロック機構が設けられていないため、バインダ10の前進中あるいは後進中は前後進切換えレバー24を直接に作業者の手で前進位置又は後進位置に保持しなければならない。
特に、前進位置では、手を大きく前方に伸ばした姿勢を維持しなくてはならないため、作業者の負担は大きくなる。できれば、保持力は小さい方が望ましく、また、操作性の点でも向上が望まれる。
【0005】
更に、前後進切換えレバー24と2本の操作ケーブル(アウタワイヤ42とインナワイヤ42a、アウタワイヤ44とインナワイヤ44a)とを連結する構造が複雑であり、コストの点で簡易な構造が求められる。
また更に、前後進切換えレバー24が前進位置又は後進位置にある場合に、一方の操作ケーブルはたるんだ状態になり、作業の邪魔になることがある。
【0006】
本発明の目的は、簡易な構造で、保持力が小さくて済み、操作性が向上でき、更には、操作ケーブルがたるみにくい前後進切換操作機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車輪、クローラベルト等の走行部を有する走行機械のハンドル近傍に設けられる前後進切換操作機構において、中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により走行機械の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバーと、ハンドル側に押し付けることで前後進切換レバーを前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバーとを備えることを特徴とする。
【0008】
走行機械を前進させるには、前後進切換レバーを中立位置から前進切換位置に倒し、次に、ロックレバーをハンドル側に押し付けて前後進切換レバーを前進切換位置に保持する。
【0009】
走行機械を後進させるには、前後進切換レバーを中立位置から後進切換位置に倒し、次に、ロックレバーをハンドル側に押し付けて前後進切換レバーを後進切換位置に保持する。
【0010】
単に前後進切換レバーを手で前後進切換位置に保持するのに比べて、前後進切換レバーをロックレバーを介して手で前後進切換位置に保持する構造の方が、前後進切換レバーとロックレバーとの各腕の長さの自由度が増し、保持力を低減することが可能になる。
また、前後進切換レバーにロックレバーを追加する簡易な構造であり、ロックレバーをハンドル側に押し付けるという同じ動作で、前後進切換レバーを前進切換位置又は後進切換位置に保持するため、操作が簡単になる。
【0011】
請求項2に係る発明は、ロックレバーに、前後進切換レバーに設けられた被ロック片に当てることで前後進切換レバーの前後進の各切換位置を保持するロック片をそれぞれ備えることを特徴とする。
【0012】
ロックレバーで前後進切換レバーを保持状態にするには、ロックレバーに備えるロック片を前後進切換レバーに設けられた被ロック片に当てる。
このように、ロックレバーの簡易な構造で前後進切換レバーが保持される。
【0013】
請求項3に係る発明は、前後進切換レバーが、連結部を介して操作ケーブルに連結され、連結部が、操作ケーブルの連結端部が移動可能な長穴を有するリンクで形成されていることを特徴とする。
【0014】
前後進切換レバーを倒して、操作ケーブルを張った状態から弛める状態にするときに、操作ケーブルの連結端部がリンクの長穴内を移動したり、リンク自体が揺動して、操作ケーブルのたるみが吸収される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により走行機械の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバーと、ハンドル側に押し付けることで前後進切換レバーを前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバーとを備えるので、前後進切換レバー自体を切換位置に保持せずに、ロックレバーで前後進切換レバーをロックするため、前後進切換レバーとロックレバーとの各腕の長さを考慮することで、ロックレバーの保持力を低減することができる。
【0016】
また、前後進切換レバーにロックレバーを追加するという簡易な構造であり、前後進切換操作機構のコストを低減することができるとともに、ロックレバーをハンドル側に押し付けるだけで前後進切換レバーを前進切換位置又は後進切換位置に保持できるので、操作性を向上させることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ロックレバーに、前後進切換レバーに設けられた被ロック片に当てることで前後進切換レバーの前後進の各切換位置を保持するロック片をそれぞれ備えるので、ロックレバーにロック片を備える簡易な構造で、ロック片を被ロック片に当てることにより前後進切換レバーの前後進切換位置をそれぞれ確実に保持でき、ロックレバーのコストを低減することができるとともに、信頼性を高めることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、前後進切換レバーが、連結部を介して操作ケーブルに連結され、連結部が、操作ケーブルの連結端部が移動可能な長穴を有するリンクで形成されているので、リンクの長穴、リンクの揺動によって操作ケーブルのたるみを吸収することができ、操作ケーブルをたるみにくくすることができる。従って、操作ケーブルが作業の邪魔にならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る前後進切換操作機構を備えた小型除雪機を示す斜視図であり、小型除雪機10は、機体11に、エンジン12と、このエンジン12の動力を伝達するとともに小型除雪機10の前後進を切り換える主要部を構成する変速機13と、この変速機13の出力側に接続された左右一対のクローラ走行部14,16と、機体11にスイング可能に設けられた左右一対のスイングパイプ17,18と、除雪のためにスイングパイプ17,18の前端部に取付けられた排雪板21と、スイングパイプ17,18の後端部に取付けられた左右一対のハンドル22,23とを備え、エンジン12から左右のクローラ走行部14,16へ動力伝達装置25により動力を伝える。なお、符号26は変速機13を覆うカバーである。
【0020】
エンジン12は、鉛直に配置されたクランクシャフト27を備えるバーチカルエンジンである。
左クローラ走行部14は、排雪板21の後方に設けられた駆動輪31と、この駆動輪31の後方に設けられた遊転輪32と、これらの駆動輪31及び遊転輪32のそれぞれに巻き掛けられたクローラベルト33と、変速機13に連結されるとともに駆動輪31に取付けられた走行軸34と、遊転輪32を回転自在に支持する従動軸36とからなる。
右クローラ走行部16は、左クローラ走行部14と左右対称な部分で、左クローラ走行部14と基本構造は同一であり、詳細説明は省略する。
【0021】
ハンドル22,23は、それぞれ端部にグリップ41を備え、右側のハンドル23は、小型除雪機10の前後進を切り換える前後進切換レバー42と、この前後進切換レバー42をロックするロックレバー43とを備える。
【0022】
上記の前後進切換レバー42及びロックレバー43は、前後進切換操作機構40の主要部を構成する部品である。なお、符号45,46は、前後進を切り換えるために変速機13と前後進切換レバー42との間に渡された第1ケーブル及び第2ケーブルである。
【0023】
図2は本発明に係る動力伝達装置を示す斜視図(図中の矢印(FRONT)は小型除雪機の前方を表している。以下同じ。)であり、動力伝達装置25は、エンジン12(図1参照)のクランクシャフト27の下端部に取付けられたドライブプーリ51と、このドライブプーリ51に掛けられた2本のVベルト52,53と、これらのVベルト52,53介してドライブプーリ51に連結された変速機13とからなる。
【0024】
変速機13は、Vベルト52,53に連結される上部変速部55と、この上部連結部55の下方に配置された下部変速部56とを備える。
上部変速部55は、下部変速部56に設けられた鉛直に延びる駆動軸(不図示。詳細は後述する。)に対して回動自在に取付けられている。
下部変速部56は、機体11(図1参照)に取付けられ、走行軸34に連結されている。
ドライブプーリ51は、Vベルト52が掛けられる第1ドライブプーリ51Aと、Vベルト53が掛けられる第2ドライブプーリ51Bとが一体成形された部品である。
【0025】
上部変速部55は、上部変速部ケース63に回転自在に且つ鉛直に2本の第1入力軸61及び第2入力軸62が取付けられ、これらの第1入力軸61及び第2入力軸62の上端部にそれぞれ第1プーリ64及び第2プーリ66がナット67で取付けられ、第1プーリ64にVベルト52が掛けられ、第2プーリ66にVベルト53が掛けられている。
上部変速部55の前部には、下部変速部56に対する上部変速部55の回動方向の位置を所定位置に保持する保持機構70が設けられている。
【0026】
保持機構70は、上部変速部ケース63の前部にボルト75,75で取付けられたブラケット76と、このブラケット76の先端部に下方に延びるように取付けられた上部変速部位置決めピン77と、下部変速部56の下部変速部ケース78の前部に上方に延びるように取付けられた保持位置ピン81と、一端部がそれぞれ上部変速部55の下部に回動自在に取付けられるとともに他端部がそれぞれ上部変速部位置決めピン77及び保持位置ピン81を挟み込む左右一対の保持プレート82,83と、これらの保持プレート82,83に渡されて取付けられた引張コイルばね84とからなる。
【0027】
保持機構70が保持する所定位置とは、Vベルト52,53の両方が弛んで動力を伝えなくなる中立位置であり、上部変速部55が回動したときに、引張コイルばね84の弾性力で上部変速部55は所定位置に戻され、その中立位置に保持される。
【0028】
上部変速部55を回動させる回動機構90は、上部変速部ケース63の左右端に下方に延びるように取付けられた左右一対の回動用ピン91,92(手前側の符号91のみ示す。)と、これらの回動用ピン91,92に順に連結された取付片93,93(手前側の符号93のみ示す。)、引張コイルばね94,94(手前側の符号94のみ示す。)、ワイヤ端部部材96,96(手前側の符号96のみ示す。)、第1・第2ケーブル45,46(手前側の符号45のみ示す。)と、前後進切換レバー42(図1参照)及びロックレバー43(図1参照)とからなる。
【0029】
第1ケーブル45は、機体11(図1参照)に設けられたケーブル支持ステー98で一端が支持されるアウタケーブル101と、このアウタケーブル101内に移動自在に挿入されて一端にワイヤ端部部材96が取付けられたインナワイヤ102とからなる。第2ケーブル46は、第1ケーブル45と同一構造であり、詳細説明は省略する。
【0030】
上部変速部ケース63は、上部に複数のボルト111で平板112が取付けられ、この平板112に、第1プーリ64及び第2プーリ66からVベルト52,53が外れるのを防止するベルト外れ止めピン113,113,114,116,116が立てられている。なお、外れ止めピン114については、詳しくは、平板112に補助プレート118を介して取付けられている。
【0031】
上記した変速機13は、上部変速部55と、下部変速部56と、上部変速部55を回動させてVベルト52,53が張った状態と弛んだ状態とを切り換える回動機構90と、Vベルト52,53の両方が弛んだ状態を保持することでVベルト52,53の両方が動力を伝達しない中立状態にする保持機構70とからなる。
【0032】
図3は本発明に係る動力伝達装置を示す平面図であり、エンジンのクランクシャフト27の軸線27aと下部変速部56(図2参照)に設けられた駆動軸121の軸線121aとを通り、小型除雪機の前後方向に延びる中心線122に対して、第1入力軸61は左側に位置し、第2入力軸62は右側に位置し、第1入力軸61に取付けられた第1プーリ64と第2入力軸62に取付けられた第2プーリ66とでは、それぞれの外径をD1、D2とすると、第2プーリ66の外径D2の方が第1プーリ64の外径D1よりも大径にされている。なお、符号123は駆動軸121の軸線121aを通り、中心線122に直交する基準線である。
【0033】
第2プーリ66は後進用の動力を伝える部品であり、第2プーリ66を、前進用の動力を伝える第1プーリ64よりも大径にしたのは、第1プーリ64よりも減速比を大きくして、小型除雪機の後進時の走行速度を前進時の走行速度よりも小さくするためである。
【0034】
保持機構70を構成する上部変速部位置決めピン77及び保持位置ピン81は、中心線122に沿って前後に並べて配置され、保持プレート82,83の挟持面82a,83aに引張コイルばね84の弾性力で挟み込まれている。
【0035】
保持位置ピン81は中心線122上に固定されているから、上部変速部55の回動に伴い上部変速部位置決めピン77が回動したときに、上部変速部位置決めピン77は、引張コイルばね84の弾性力により中心線122上まで戻り、この中心線122上に保持される。
【0036】
図4は本発明に係る動力伝達装置の動力伝達経路を示す説明図であり、第1入力軸61、第2入力軸62及び駆動軸121は、それぞれ第1ドライブギヤ131、第2ドライブギヤ132、ドリブンギヤ133が取付けられている。
ここでは、第1ドライブギヤ131と第2ドライブギヤ132とは、その歯数は同一である。
【0037】
第1ドライブギヤ131は、ドリブンギヤ133に直接に噛み合い、第2ドライブギヤ132は、アイドル軸134に回転自在に取付けられたアイドルギヤ136に噛み合い、アイドルギヤ136がドリブンギヤ133に噛み合う。ここでは、アイドルギヤ136の歯数は、第1ドライブギヤ131及び第2ドライブギヤ132の歯数と同一である。
アイドル軸134は、上部変速部ケース63(図3参照)に取付けられ、第2入力軸62よりも前方で駆動軸121よりも後方に配置されている。
【0038】
上記の第1ドライブギヤ131及びドリブンギヤ133は、駆動軸121を正転させる第1ギヤ列137を構成する部品であり、また、第2ドライブギヤ132、アイドルギヤ134及びドリブンギヤ133は、駆動軸121を逆転させる第2ギヤ列138を構成する部品である。
【0039】
小型除雪機の前進時には、エンジンの動力は、順に、(クランクシャフト27、ドライブプーリ51)→Vベルト52→(第1プーリ64、第1入力軸61、第1ドライブギヤ131)→(ドリブンギヤ133、駆動軸121)のように伝わる。即ち、第1入力軸61から第1ギヤ列137を介して駆動軸121に伝わる。
【0040】
小型除雪機の後進時には、エンジンの動力は、順に、(クランクシャフト27、ドライブプーリ51)→Vベルト53→(第2プーリ66、第2入力軸62、第2ドライブギヤ132)→アイドルギヤ136→(ドリブンギヤ133、駆動軸121)のように伝わる。即ち、第2入力軸62から第2ギヤ列138を介して駆動軸121に伝わる。
【0041】
図5は図3の5−5線断面図であり、動力伝達装置25は、ドライブプーリ51と、Vベルト52,53と、これらのVベルト52,53で駆動される変速機13とからなる。
また、変速機13は、上部変速部55と、下部変速部56と、保持機構70と、回動機構90(図2参照)とからなり、小型除雪機の前後進を切り換えるとともに中立状態(駆動軸121に動力が伝わらない状態)に設定可能である。
【0042】
上部変速部55は、駆動軸121に2つのベアリング141,142を介して回動自在に取付けられた上部変速部ケース63(ロアケース143及びこのロアケース143の上部に取付けられたアッパケース144からなる。)と、この上部変速部ケース63に2つのベアリング146,147を介して回転自在に取付けられた第2入力軸62と、上部変速部ケース63に2つのベアリング146,147(不図示)を介して回転自在に取付けられた第1入力軸61(図3参照)と、上部変速部ケース63のロアケース143及びアッパケース144のそれぞれに開けられた挿入穴143a,144aに挿入されたアイドル軸134と、第1入力軸61、第2入力軸62、駆動軸121にそれぞれスプライン結合されるとともに上部変速部ケース63内の空間148に配置された第1ドライブギヤ131(不図示)、第2ドライブギヤ132、ドリブンギヤ133と、アイドル軸134にブッシュ149を介して回転自在に取付けられたアイドルギヤ136と、第1入力軸61及び第2入力軸62にそれぞれスプライン結合された第1プーリ64(図3参照)及び第2プーリ66とからなる。
【0043】
ここで、符号151は駆動軸121上方のアッパケース144に開けられた開口部144bを塞ぐキャップ、152は第2入力軸62とアッパケース144側の開口部144cとの間に設けられたシール部材、153はロアケース143とアッパケース144との位置決めを行うカラー、154はロアケース143とアッパケース144とを締結するボルトである。
【0044】
下部変速部56は、下部変速部ケース161(ケース本体162及びこのケース本体162の下部に設けられた開口部を塞ぐカバー部材163からなる。)と、この下部変速部ケース161に2つのベアリング164,166を介して回転自在に取付けられた駆動軸121と、この駆動軸121の下部に形成されたウォーム121Aに噛み合うウォームホイール167と、ケース本体162の上部開口部162aと上部変速部55のロアケース143の下端部に形成された筒部143bとの間に設けられたシール部材168とからなり、ウォームホイール167は、ケース本体162に回転自在に取付けられた走行軸34に取付けられている。なお、169は駆動軸121の上端部にねじ結合されたナットであり、駆動軸121からベアリング142が抜けるのを防止するものである。
【0045】
ここで、符号171はケース本体162とカバー部材163との位置決めを行うカラー、172はケース本体162とカバー部材163とを締結するボルト、173はケース本体162を機体11(図1参照)に取付けるボルト、174は下部変速部ケース161内の空間、176は上部変速部55内の空間148と下部変速部56内の空間174とで形成される空間177に貯められた潤滑用オイル、176aは潤滑用オイル176の油面である。
【0046】
以上に説明したように、変速機13は、下部変速部56に上部変速部55を回動自在に取付けるとともに、上部変速部55と下部変速部56とを、下部変速部56の上部開口部162a内に上部変速部55の筒部143bを挿入して上部開口部162aと筒部143bとの間をシール部材168でシールする構造としたことにより、例えば、上部変速部と下部変速部とを上下に分離し、上部変速部及び下部変速部にそれぞれシール部材を設ける構造に比べて、変速機13の部品数を削減でき、変速機13の構造を簡素にすることができる。
【0047】
また、下部変速部56の上部開口部162aと、上部変速部55の筒部143bとを駆動軸121の軸方向にオーバーラップさせることで、上部変速部55と下部変速部56とをより近づけることができ、変速機13の高さHをより小さくすることができる。
【0048】
保持機構70は、上部変速部位置決めピン77が、下側の保持プレート82よりも下方まで延び、保持位置ピン81が、下部変速部56のケース本体162に設けられた取付穴162cに圧入されて上側の保持プレート83よりも上方まで延び、保持プレート82,83が、上部変速部55のロアケース143の下部筒状部143cにプレート受け部材181,182を介して回動自在に取付けられている。なお、184はワッシャ、185は止め輪である。
【0049】
図6は図3の6−6線断面図であり、上部変速部55のアッパケース144の上端部の内側、即ち、アッパケース144の開口部144bと、駆動軸121と、ベアリング142と、ナット169と、キャップ151とで囲まれた空間は、ブリーザ室191を形成し、アッパケース144に開けられた縦孔144eにL字状のブリーザパイプ192の一端が圧入され、このブリーザパイプ192の他端にブリーザホース193が接続され、これらのブリーザパイプ192とブリーザホース193とでブリーザ通路194が形成されている。
【0050】
ブリーザ室191は、ベアリング142の上方に隣接するために、駆動軸121が回転中はベアリング142の温度が上昇するのに伴い高温になり、圧力も高くなるが、ブリーザ通路193によってブリーザ室191と変速機13の外部とを連通させることにより、ブリーザ室191内の温度を降下させるとともに圧力を低下させることができる。
【0051】
ベアリング142は、シールド形であり、外輪142aにシールド板142bが固定され、このシールド板142bと内輪142cのシール面に形成された溝とでラビリンス隙間が形成され、ベアリング142の摺動部へのダスト等の侵入が防止される。
【0052】
図7は本発明に係る保持機構の保持プレート支持構造を示す要部斜視図であり、保持プレート82,83は、それぞれプレート穴部82b,83bを備え、プレート受け部材181,182はそれぞれ、大径部181a,182aと、小径部181b,182bと、これらの大径部181a,182a及び小径部181b,182bのそれぞれの間に設けられた段部181c,182cとを備える。
【0053】
保持プレート82は、プレート受け部材181の段部181cに載せられるとともに、プレート穴部82bが回動自在にプレート受け部材181の小径部181aに嵌合し、同様に、保持プレート83は、プレート受け部材182の段部182cに載せられるとともに、プレート穴部83bが回動自在にプレート受け部材182の小径部182aに嵌合し、保持プレート83の上面にワッシャ184が接することで、保持プレート82,83は、滑りを促すブッシュの機能を有するプレート受け部材181,182及びワッシャ184と摺動し、図5に示された上部変速部55のロアケース143とは接することがない。
【0054】
図8は本発明に係る変速機の背面図であり、第2プーリ66よりも高い位置に第1プーリ64が配置され、上部変速部ケース63、詳しくは、ロアケース143の左右に回動用ピン91,92が設けられ、ブリーザ通路194を形成するブリーザホース193の先端部193aがロアケース143の後部に設けられたホース固定用穴143eに挿入されるとともに下方に向けて開口している。従って、ブリーザ通路194内に雨水等を吸い込む心配がない。
【0055】
図9は本発明に係る前後進切換操作機構を示す要部側面図であり、右側のハンドル23の後側に後部ブラケット201が取付けられ、この後部ブラケット201に設けられた後部支軸202に前後進切換レバー42に設けられた軸受部材203が嵌合することで後部ブラケット201に前後進切換レバー42が回動自在に取付けられ、前後進切換レバー42の後部、詳しくは、後端(後部支軸202よりも後方)に第1ケーブル45、前後進切換レバー42の中央部寄り(後部支軸202よりも前方)に第2ケーブル46がそれぞれ連結され、ハンドル23の前側に前部ブラケット204が取付けられ、この前部ブラケット204に設けられた前部支軸206にロックレバー43が回動自在に取付けられている。なお、符号205はロックレバー43の後端部をグリップ41から離れる側に付勢する(図9で反時計回りに付勢する)ためにハンドル23側とロックレバー43側との間に設けられたねじりコイルばねである。
【0056】
前後進切換レバー42は、中央部上部にロックレバー43によって回動がロックされるときに拘束される被ロック片207を備える。なお、211,212は前後進切換レバー42に第1ケーブル45及び第2ケーブル46を連結するために前後進切換レバー42の後部側面に設けられた連結ピンである。
【0057】
前後進切換レバー42は、図2に示された保持機構70の引張コイルばね84の弾性力によって保持プレート82,83が上部変速部位置決めピン77及び保持位置ピン81を挟持するのに伴い、図9では中立位置にあり、第1ケーブル45及び第2ケーブル46共に引張コイルばね94(図2参照)によって張られた状態にある。
【0058】
ロックレバー43は、前部支軸206に支持される軸支部43aと、この軸支部43aから細長く延ばされた把持部43bとが一体成形された部品であり、軸支部43aの側面に前後進切換レバー42の被ロック片207に係合可能な側面視L字形状の2つのロック片214,215を備える。
【0059】
第1ケーブル45及び第2ケーブル46は、各アウタケーブル101が、ハンドル23に設けられたケーブルブラケット217にナット218で取付けられ、各インナワイヤ102の先端に取付けられた端部金具221が前後進切換レバー42の連結ピン211,212に回動自在に連結されている。
【0060】
前後進切換操作機構40は、上記に示した各構成、即ち、前後進切換レバー42と、後部ブラケット201と、後部支軸202と、軸受部材203と、ロックレバー43と、前部ブラケット204と、前部支軸206と、ねじりコイルばね205とからなる。
【0061】
以上に述べた前後進切換操作機構40の作用を次に説明する。
図10(a),(b)は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第1作用図である。
(a)において、前後進切換レバー42が二点鎖線の中立位置にある場合には、エンジンが運転中であっても、図3に示したVベルト52,53は、共に弛んだ状態にあり、エンジンのクランクシャフト27から第1入力軸61及び第2入力軸62に動力が伝わらないから、走行軸34は回転せず、図1に示したクローラ走行部14,16が回転しないため、小型除雪機10は停止した状態にある。即ち、変速機13は中立(いわゆる「ニュートラ」)状態にある。
【0062】
図10(a)に戻って、小型除雪機を前進させるために、前後進切換レバー42を矢印Aで示すように、前方に倒す(二点鎖線の中立位置から実線の前進位置(前進切換位置)に倒す)と、第1ケーブル45のインナワイヤ102が矢印Bで示すように引かれる。(このとき、第2ケーブル46のインナワイヤ102は、引張コイルばね94(図2参照)の引張力により第2ケーブル46のアウタケーブル101内に引き込まれる。)
【0063】
図10(b)において、前後進切換レバー42の前に倒した状態を保ったまま、今度は、ロックレバー43を矢印Cに示すように、グリップ41側に倒し、ロックレバー43の把持部43bをグリップ41と共に手で握る、即ちロックレバー43をハンドル23側に押し付ける。
【0064】
この結果、ロックレバー43の2つのロック片214,215のうちの一方のロック片214が、矢印Dに示すように、前後進切換レバー42の被ロック片207に当たり、前後進切換レバー42の戻り、即ち、時計回りの回動を規制する。これが前後進切換レバー42のロック状態(保持状態)である。
【0065】
図11(a),(b)は本発明に係る動力伝達装置の作用を示す第2作用図である。
(a)において、第1ケーブル45のインナワイヤ102(図10(a),(b)も参照)が矢印Eに示すように引かれると、右側の回動用ピン92が引かれるため、変速機13の上部変速部55が、矢印Fに示すように駆動軸121を中心にして回動し、これに伴って、Vベルト52が張った状態になる(Vベルト53は弛んだ状態になる)。
【0066】
このとき、上部変速部55の回動に伴って上部変速部位置決めピン77が右側の保持プレート83を押すため、保持プレート83は、矢印Gに示すように、回動する。この結果、引張コイルばね84が伸ばされた状態になり、保持プレート83を元の位置(中心線122上)に戻そうとする引張コイルばね84の弾性力が次第に大きくなる。
【0067】
(b)において、Vベルト52が張った状態になると、ドライブプーリ51の回転、例えば、矢印H方向の回転がVベルト52を介して第1プーリ64に伝わり、第1入力軸61に取付けられた第1ドライブギヤ131が矢印H方向に回転し、第1ドライブギヤ131に噛み合うドリブンギヤ133が矢印J方向に回転(正転)する。これにより、小型除雪機は前進する。
【0068】
図10(b)に戻って、小型除雪機の前進を止めて停止させるには、前後進切換レバー42のロックを解除するためにロックレバー43の握りを離せばよい。これにより、ロックレバー42による前後進切換レバー42の拘束が解かれ、前後進切換レバー42は、図2に示した圧縮コイルばね84,94の弾性力で図10(a)の二点鎖線の中立位置に戻り、中立状態になる。
【0069】
図12(a),(b)は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第3作用図である。
(a)において、小型除雪機を後進させるために、前後進切換レバー42を矢印Mで示すように、中立位置から後方に倒す(二点鎖線の中立位置から実線の後進位置(後進切換位置)に倒す)と、第2ケーブル46のインナワイヤ102が矢印Nで示すように引かれる。(このとき、第1ケーブル45のインナワイヤ102は、引張コイルばね94(図2参照)の引張力により第1ケーブル45のアウタケーブル101内に引き込まれる。)
【0070】
(b)において、前後進切換レバー42の後に倒した状態を保ったまま、今度は、ロックレバー43を矢印Pに示すように、グリップ41側に倒し、ロックレバー43の把持部43bをグリップ41と共に手で握る、即ちロックレバー43をハンドル23側に押し付ける。
【0071】
この結果、ロックレバー43の2つのロック片214,215のうちの一方のロック片215が、矢印Qに示すように、前後進切換レバー42の被ロック片207に当たり、前後進切換レバー42の戻り、即ち、反時計回りの回動を規制する。これが前後進切換レバー42のロック状態である。
【0072】
図13(a),(b)は本発明に係る動力伝達装置の作用を示す第4作用図である。
(a)において、第2ケーブル46のインナワイヤ102(図12(a),(b)も参照)が矢印Rに示すように引かれると、左側の回動用ピン91が引かれるため、変速機13の上部変速部55が、矢印Sに示すように駆動軸121を中心にして回動し、これに伴って、Vベルト53が張った状態になる。このとき、上部変速部位置決めピン77が左側の保持プレート82を押すため、保持プレート82は、矢印Tに示すように、回動する。
この結果、引張コイルばね84が伸ばされた状態になり、保持プレート82を元の位置(中心線122上)に戻そうとする引張コイルばね84の弾性力が次第に大きくなる。
【0073】
(b)において、Vベルト53が張った状態になると、ドライブプーリ51の回転、例えば、矢印H方向の回転がVベルト53を介して第2プーリ66に伝わり、第2入力軸62に取付けられた第2ドライブギヤ132が矢印H方向に回転し、第2ドライブギヤ132に噛み合うアイドルギヤ134が矢印U方向に回転し、アイドルギヤ134に噛み合うドリブンギヤ133が矢印H方向に回転(逆転)する。これにより、小型除雪機は後進する。
【0074】
図12(b)に戻って、小型除雪機の後進を止めて停止させるには、前後進切換レバー42のロックを解除するためにロックレバー43の握りを離せばよい。これにより、ロックレバー42による前後進切換レバー42の拘束が解かれ、前後進切換レバー42は、図2に示した圧縮コイルばね84,94の弾性力で図12(a)の二点鎖線の中立位置に戻り、中立状態になる。
【0075】
図14は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第5作用図であり、前進位置での前後進切換レバー42及びロックレバー43に作用するモーメントの釣り合いを説明する。
前後進切換レバー42を前進位置に倒した場合に、前後進切換レバー42の連結ピン211(詳しくは、連結ピン211の軸線211a(紙面の表裏方向に延びる線であり、黒丸で示している。))に第1ケーブル45から作用する力をF1、軸心211aと後部支軸202(詳しくは、後部支持部202の軸線202a(紙面の表裏方向に延びる線であり、黒丸で示している。))との力F1に直交する方向の距離をL1、前後進切換レバー42の先端部(点42a)を押し下げる力(保持力)をF2(軸線202aと点42aとを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、軸線202aと点42aとの距離をL2、被ロック片207とロック片214との接触点である点225に作用する力をF3(軸線202aと点225とを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、軸線202aと点225との距離をL3、点225と前部支軸206の軸線206aとの力F3に直交する方向の距離をL4、ロックレバー43の把持部43bの作用点43cに作用する力(保持力)をF4(軸線206aと作用点43cとを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、軸線206aと作用点43cとの距離をL5とする。
【0076】
まず、前後進切換レバー42の保持力F2を求める。
前後進切換レバー42の時計回りと反時計回りのモーメントの釣り合いから、F1・L1=F2・L2である。従って、F2=L1/L2・F1となる。
【0077】
次に、ロックレバー43の保持力F4を求める。
前後進切換レバー42の時計回りと反時計回りのモーメントの釣り合いから、F1・L1=F3・L3である。従って、F3=L1/L2・F1となる。
また、ロックレバー43の軸線206a回りのモーメントから、F3・L4=F4・L5である。
従って、F4=L4/L5・F3となり、この関係式に上記のF3=L1/L3・F1を代入すると、F4=L1・L4/(L3・L5)・F1となる。
【0078】
以上のF2及びF4から、F2:F4=(1/L2):(L4/(L3・L5))となる。
例えば、L1=2.5cm、L2=17.4cm、L3=5.0cm、L4=0.3cm、L5=20.4cmとすると、F2:F4=19.5:1となり、ロックレバー43の保持力F2は、前後進切換レバー42の保持力F2に対して約1/20に低減される。但し、この値は前後進切換操作機構40における各部の摩擦等の機械損失が考慮されていない。
【0079】
図15は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第6作用図であり、後進位置での前後進切換レバー42及びロックレバー43に作用するモーメントの釣り合いを説明する。
前後進切換レバー42を後進位置に倒した場合に、前後進切換レバー42の連結ピン212(詳しくは、連結ピン212の軸線212a(紙面の表裏方向に延びる線であり、黒丸で示している。)に第2ケーブル46から作用する力をF5、軸線212aと後部支軸202の軸線202aとの力F5に直交する方向の距離をL6、前後進切換レバー42の先端部(点42a)を後方へ引く力(保持力)をF6(軸線202aと点42aとを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、被ロック片207とロック片215との接触点である点226に作用する力をF7(軸線202aと点226とを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、軸線202aと点226との距離をL7、点226と前部支軸206の軸線206aとの力F7に直交する方向の距離をL8、ロックレバー43の把持部43bの作用点43cに作用する力(保持力)をF8(軸線206aと作用点43cとを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)とする。
【0080】
まず、前後進切換レバー42の保持力F6を求める。
前後進切換レバー42の時計回りと反時計回りのモーメントの釣り合いから、F5・L6=F6・L2である。従って、F6=L6/L2・F5となる。
【0081】
次に、ロックレバー43の保持力F8を求める。
前後進切換レバー42の時計回りと反時計回りのモーメントの釣り合いから、F5・L6=F7・L7である。従って、F7=L6/L7・F5となる。
また、ロックレバー43の軸線206a回りのモーメントから、F7・L8=F8・L5である。
従って、F8=L8/L5・F7となり、この関係式に上記のF7=L6/L7・F5を代入すると、F8=L6・L8/(L5・L7)・F5となる。
【0082】
以上のF2及びF4から、F6:F8=(1/L2):(L8/(L5・L7))となる。
例えば、L2=17.4cm、L5=20.4cm、L6=2.5cm、L7=5.4cm、L8=0.3cmとすると、F6:F8=21.1:1となり、ロックレバー43の保持力F8は、前後進切換レバー42の保持力F6に対して約1/20に低減される。但し、この値は前後進切換操作機構40における各部の摩擦等の機械損失が考慮されていない。
【0083】
図16は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第7作用図であり、前後進切換操作機構40による前進解除の作用を説明する。
前後進切換レバー42が前進位置(実線で示されている。)にあり、この前進位置をロックレバー43で保持した状態から、矢印aで示すように、ロックレバー43の把持部43bをハンドル23のグリップ41から所定の距離離す。
【0084】
詳しくは、ロックレバー43のロック片214が、矢印bで示すように、前後進切換レバー42の被ロック片207の回動軌跡207Aから外れるまで、ロックレバー43を前部支軸206を中心にして反時計回りに回動させる。
【0085】
この結果、被ロック片207を拘束するものが無くなり、前後進切換レバー42は、矢印cで示すように、二点鎖線で示す中立位置まで戻る。これで、小型除雪機の前進が解除され、停止する。
【0086】
図17は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第8作用図であり、前後進切換操作機構40による後進解除の動作を説明する。
前後進切換レバー42が後進位置(実線で示されている。)にあり、この後進位置をロックレバー43で保持した状態から、矢印dに示すように、ロックレバー43の把持部43bをハンドル23のグリップ41から所定の距離離す。
【0087】
詳しくは、ロックレバー43のロック片215が、矢印eに示すように、前後進切換レバー42の被ロック片207の回動軌跡207Aから外れるまで、ロックレバー43を前部支軸206を中心にして反時計回りに回動させる。
【0088】
この結果、被ロック片207を拘束するものが無くなり、前後進切換レバー42は、矢印fに示すように、二点鎖線で示す中立位置まで戻る。これで、小型除雪機の後進が解除され、停止する。
【0089】
以上の図1、図9に示したように、車輪、クローラベルト33等の走行部(クローラ走行部14,16)を有する走行機械としての小型除雪機10のハンドル23近傍に設けられる前後進切換操作機構40において、中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により小型除雪機10の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバー42と、ハンドル23側に押し付けることで前後進切換レバー42を前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバー43とを備えるので、前後進切換レバー42自体を切換位置に保持せずに、ロックレバー43で前後進切換レバー42をロックするため、前後進切換レバー42とロックレバー43との各腕の長さを考慮することで、ロックレバー43の保持力を低減することができる。
【0090】
また、前後進切換レバー42にロックレバー43を追加するという簡易な構造であり、前後進切換操作機構40のコストを低減することができるとともに、ロックレバー43をハンドル23側に押し付けるだけで前後進切換レバー42を前進切換位置又は後進切換位置に同様に保持できるので、操作性を向上させることができる。
【0091】
また、図9に示したように、ロックレバー43に、前後進切換レバー42に設けられた被ロック片としてのストッパピン207に当てることで前後進切換レバー42の前後進の各切換位置を保持するロック片214,215をそれぞれ備えるので、ロックレバー43にロック片214,215を備える簡易な構造で、ロック片214,215をストッパピン207に当てることにより前後進切換レバー42の前後進切換位置をそれぞれ確実に保持でき、ロックレバー43のコストを低減することができるとともに、信頼性を高めることができる。
【0092】
図18は本発明に係る前後進切換操作機構の別実施形態を示す側面図であり、前後進切換操作機構230は、前後進切換操作機構40(図9参照)の構成に加え、連結ピン211,212にスイング自在に連結されたリンク231,231と、これらのリンク231,231を第1ケーブル45及び第2ケーブル46にそれぞれ連結させるための連結ピン233,234とを備える。
上記のリンク231,231及び連結ピン233,234は、前後進切換レバー42と第1ケーブル45、第2ケーブル46とを連結する連結部236を構成する部品である。
【0093】
リンク231は、底壁231aの両縁からそれぞれ側壁231bが立ち上げられて断面コ字形状に折曲げ形成された部品であり、2つの側壁231b,231bにそれぞれ、連結ピン211,212が回動自在に挿入されるピン挿入穴231cと、連結ピン233,234が回動自在且つ移動自在に挿入される長穴231dとが形成されている。
【0094】
図18では、前後進切換レバー42は中立位置にあり、第1ケーブル45、第2ケーブル46及び2つのリンク231は、引張コイルばね94(図2参照)によって張られた状態にある。
【0095】
図19(a),(b)は本発明に係る前後進切換操作機構の別実施形態の作用を示す側面図である。
(a)は前進位置にある前後進切換レバー42に連結された第1ケーブル45、第2ケーブル46及びリンク231の状態を示している。
即ち、第1ケーブル45のインナワイヤ102は張られた状態にあり、第2ケーブル46のインナワイヤ102は張りが無くなった状態にある。
【0096】
第2ケーブル46側のリンク231は垂れ下がり、第2ケーブル46の端部の連結ピン234は長穴231dの上側の端部に移動することで第2ケーブル46のインナワイヤ102のたるみが少なくなっている。
【0097】
(b)は後進位置にある前後進切換レバー42に連結された第1ケーブル45、第2ケーブル46及びリンク231の状態を示している。
即ち、第2ケーブル46のインナワイヤ102は張られた状態にあり、第1ケーブル45のインナワイヤ102は張りが無くなった状態にある。
【0098】
第1ケーブル45側のリンク231は垂れ下がり、第1ケーブル45の端部の連結ピン233は長穴231dの上側の端部に移動することで第1ケーブル45のインナワイヤ102のたるみが少なくなっている。
【0099】
以上の(a),(b)に示したように、前後進切換レバー42と、第1ケーブル45及び第2ケーブル46との間に、リンク231,231及び連結ピン233,234を介在させることで、リンク231が揺動したり、連結ピン233,234が長穴231d内を移動することで、第1ケーブル45及び第2ケーブル46のたるみを抑えることができる。
【0100】
以上の図18、図19(a),(b)に示したように、前後進切換レバー42が、連結部236を介して操作ケーブルとしての第1ケーブル45、第2ケーブル46に連結され、連結部236が、第1ケーブル45、第2ケーブル46の連結端部が移動可能な長穴231d,231dを有するリンク231,231で形成されているので、リンク231の長穴231d、リンク231の揺動によって第1ケーブル45、第2ケーブル46のたるみを吸収することができ、第1ケーブル45、第2ケーブル46をたるみにくくすることができる。従って、第1ケーブル45、第2ケーブル46が作業の邪魔にならない。
【0101】
尚、本実施形態では、図18に示したように、リンク231を断面コ字形状としたが、これに限らず、リンクを断面矩形状(角パイプ状)、断面円形状(丸パイプ状)、平板状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の前後進切換操作機構は、車輪、クローラベルト等の走行部を備えた除雪機等の走行機械に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る前後進切換操作機構を備えた小型除雪機を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る動力伝達装置を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る動力伝達装置を示す平面図である。
【図4】本発明に係る動力伝達装置の動力伝達経路を示す説明図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係る保持機構の保持プレート支持構造を示す要部斜視図である。
【図8】本発明に係る変速機の背面図である。
【図9】本発明に係る前後進切換操作機構を示す要部側面図である。
【図10】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第1作用図である。
【図11】本発明に係る動力伝達装置の作用を示す第2作用図である。
【図12】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第3作用図である。
【図13】本発明に係る動力伝達装置の作用を示す第4作用図である。
【図14】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第5作用図である。
【図15】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第6作用図である。
【図16】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第7作用図である。
【図17】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第8作用図である。
【図18】本発明に係る前後進切換操作機構の別実施形態を示す側面図である。
【図19】本発明に係る前後進切換操作機構の別実施形態の作用を示す側面図である。
【符号の説明】
【0104】
10…走行機械(小型除雪機)、14,16…走行部(クローラ走行部)、23…ハンドル、33…クローラベルト、40,230…前後進切換操作機構、42…前後進切換レバー、43…ロックレバー、45…操作ケーブル(第1ケーブル)、46…操作ケーブル(第2ケーブル)、207…ストッパピン(被ロック片)、214,215…ロック片、231…リンク、231d…長穴、236…連結部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪、クローラベルト等の走行部を有する走行機械の前進と後進とを切り換える前後進切換操作機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の前後進切換操作機構として、操縦ハンドルに設けられた前後輪切換えレバーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−271926公報
【0003】
特許文献1の図1、図2によれば、バインダ10の操縦ハンドル22に、バインダ10の前後進を切り換える前後進切換えレバー24が設けられている。
この前後進切換えレバー24は、通常は直立状態に保持され、直立状態から前方に倒せば前進、直立状態から後方に倒せば後進となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の前後進切換えレバー24には、前進又は後進での位置を保持するロック機構が設けられていないため、バインダ10の前進中あるいは後進中は前後進切換えレバー24を直接に作業者の手で前進位置又は後進位置に保持しなければならない。
特に、前進位置では、手を大きく前方に伸ばした姿勢を維持しなくてはならないため、作業者の負担は大きくなる。できれば、保持力は小さい方が望ましく、また、操作性の点でも向上が望まれる。
【0005】
更に、前後進切換えレバー24と2本の操作ケーブル(アウタワイヤ42とインナワイヤ42a、アウタワイヤ44とインナワイヤ44a)とを連結する構造が複雑であり、コストの点で簡易な構造が求められる。
また更に、前後進切換えレバー24が前進位置又は後進位置にある場合に、一方の操作ケーブルはたるんだ状態になり、作業の邪魔になることがある。
【0006】
本発明の目的は、簡易な構造で、保持力が小さくて済み、操作性が向上でき、更には、操作ケーブルがたるみにくい前後進切換操作機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車輪、クローラベルト等の走行部を有する走行機械のハンドル近傍に設けられる前後進切換操作機構において、中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により走行機械の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバーと、ハンドル側に押し付けることで前後進切換レバーを前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバーとを備えることを特徴とする。
【0008】
走行機械を前進させるには、前後進切換レバーを中立位置から前進切換位置に倒し、次に、ロックレバーをハンドル側に押し付けて前後進切換レバーを前進切換位置に保持する。
【0009】
走行機械を後進させるには、前後進切換レバーを中立位置から後進切換位置に倒し、次に、ロックレバーをハンドル側に押し付けて前後進切換レバーを後進切換位置に保持する。
【0010】
単に前後進切換レバーを手で前後進切換位置に保持するのに比べて、前後進切換レバーをロックレバーを介して手で前後進切換位置に保持する構造の方が、前後進切換レバーとロックレバーとの各腕の長さの自由度が増し、保持力を低減することが可能になる。
また、前後進切換レバーにロックレバーを追加する簡易な構造であり、ロックレバーをハンドル側に押し付けるという同じ動作で、前後進切換レバーを前進切換位置又は後進切換位置に保持するため、操作が簡単になる。
【0011】
請求項2に係る発明は、ロックレバーに、前後進切換レバーに設けられた被ロック片に当てることで前後進切換レバーの前後進の各切換位置を保持するロック片をそれぞれ備えることを特徴とする。
【0012】
ロックレバーで前後進切換レバーを保持状態にするには、ロックレバーに備えるロック片を前後進切換レバーに設けられた被ロック片に当てる。
このように、ロックレバーの簡易な構造で前後進切換レバーが保持される。
【0013】
請求項3に係る発明は、前後進切換レバーが、連結部を介して操作ケーブルに連結され、連結部が、操作ケーブルの連結端部が移動可能な長穴を有するリンクで形成されていることを特徴とする。
【0014】
前後進切換レバーを倒して、操作ケーブルを張った状態から弛める状態にするときに、操作ケーブルの連結端部がリンクの長穴内を移動したり、リンク自体が揺動して、操作ケーブルのたるみが吸収される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により走行機械の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバーと、ハンドル側に押し付けることで前後進切換レバーを前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバーとを備えるので、前後進切換レバー自体を切換位置に保持せずに、ロックレバーで前後進切換レバーをロックするため、前後進切換レバーとロックレバーとの各腕の長さを考慮することで、ロックレバーの保持力を低減することができる。
【0016】
また、前後進切換レバーにロックレバーを追加するという簡易な構造であり、前後進切換操作機構のコストを低減することができるとともに、ロックレバーをハンドル側に押し付けるだけで前後進切換レバーを前進切換位置又は後進切換位置に保持できるので、操作性を向上させることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ロックレバーに、前後進切換レバーに設けられた被ロック片に当てることで前後進切換レバーの前後進の各切換位置を保持するロック片をそれぞれ備えるので、ロックレバーにロック片を備える簡易な構造で、ロック片を被ロック片に当てることにより前後進切換レバーの前後進切換位置をそれぞれ確実に保持でき、ロックレバーのコストを低減することができるとともに、信頼性を高めることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、前後進切換レバーが、連結部を介して操作ケーブルに連結され、連結部が、操作ケーブルの連結端部が移動可能な長穴を有するリンクで形成されているので、リンクの長穴、リンクの揺動によって操作ケーブルのたるみを吸収することができ、操作ケーブルをたるみにくくすることができる。従って、操作ケーブルが作業の邪魔にならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る前後進切換操作機構を備えた小型除雪機を示す斜視図であり、小型除雪機10は、機体11に、エンジン12と、このエンジン12の動力を伝達するとともに小型除雪機10の前後進を切り換える主要部を構成する変速機13と、この変速機13の出力側に接続された左右一対のクローラ走行部14,16と、機体11にスイング可能に設けられた左右一対のスイングパイプ17,18と、除雪のためにスイングパイプ17,18の前端部に取付けられた排雪板21と、スイングパイプ17,18の後端部に取付けられた左右一対のハンドル22,23とを備え、エンジン12から左右のクローラ走行部14,16へ動力伝達装置25により動力を伝える。なお、符号26は変速機13を覆うカバーである。
【0020】
エンジン12は、鉛直に配置されたクランクシャフト27を備えるバーチカルエンジンである。
左クローラ走行部14は、排雪板21の後方に設けられた駆動輪31と、この駆動輪31の後方に設けられた遊転輪32と、これらの駆動輪31及び遊転輪32のそれぞれに巻き掛けられたクローラベルト33と、変速機13に連結されるとともに駆動輪31に取付けられた走行軸34と、遊転輪32を回転自在に支持する従動軸36とからなる。
右クローラ走行部16は、左クローラ走行部14と左右対称な部分で、左クローラ走行部14と基本構造は同一であり、詳細説明は省略する。
【0021】
ハンドル22,23は、それぞれ端部にグリップ41を備え、右側のハンドル23は、小型除雪機10の前後進を切り換える前後進切換レバー42と、この前後進切換レバー42をロックするロックレバー43とを備える。
【0022】
上記の前後進切換レバー42及びロックレバー43は、前後進切換操作機構40の主要部を構成する部品である。なお、符号45,46は、前後進を切り換えるために変速機13と前後進切換レバー42との間に渡された第1ケーブル及び第2ケーブルである。
【0023】
図2は本発明に係る動力伝達装置を示す斜視図(図中の矢印(FRONT)は小型除雪機の前方を表している。以下同じ。)であり、動力伝達装置25は、エンジン12(図1参照)のクランクシャフト27の下端部に取付けられたドライブプーリ51と、このドライブプーリ51に掛けられた2本のVベルト52,53と、これらのVベルト52,53介してドライブプーリ51に連結された変速機13とからなる。
【0024】
変速機13は、Vベルト52,53に連結される上部変速部55と、この上部連結部55の下方に配置された下部変速部56とを備える。
上部変速部55は、下部変速部56に設けられた鉛直に延びる駆動軸(不図示。詳細は後述する。)に対して回動自在に取付けられている。
下部変速部56は、機体11(図1参照)に取付けられ、走行軸34に連結されている。
ドライブプーリ51は、Vベルト52が掛けられる第1ドライブプーリ51Aと、Vベルト53が掛けられる第2ドライブプーリ51Bとが一体成形された部品である。
【0025】
上部変速部55は、上部変速部ケース63に回転自在に且つ鉛直に2本の第1入力軸61及び第2入力軸62が取付けられ、これらの第1入力軸61及び第2入力軸62の上端部にそれぞれ第1プーリ64及び第2プーリ66がナット67で取付けられ、第1プーリ64にVベルト52が掛けられ、第2プーリ66にVベルト53が掛けられている。
上部変速部55の前部には、下部変速部56に対する上部変速部55の回動方向の位置を所定位置に保持する保持機構70が設けられている。
【0026】
保持機構70は、上部変速部ケース63の前部にボルト75,75で取付けられたブラケット76と、このブラケット76の先端部に下方に延びるように取付けられた上部変速部位置決めピン77と、下部変速部56の下部変速部ケース78の前部に上方に延びるように取付けられた保持位置ピン81と、一端部がそれぞれ上部変速部55の下部に回動自在に取付けられるとともに他端部がそれぞれ上部変速部位置決めピン77及び保持位置ピン81を挟み込む左右一対の保持プレート82,83と、これらの保持プレート82,83に渡されて取付けられた引張コイルばね84とからなる。
【0027】
保持機構70が保持する所定位置とは、Vベルト52,53の両方が弛んで動力を伝えなくなる中立位置であり、上部変速部55が回動したときに、引張コイルばね84の弾性力で上部変速部55は所定位置に戻され、その中立位置に保持される。
【0028】
上部変速部55を回動させる回動機構90は、上部変速部ケース63の左右端に下方に延びるように取付けられた左右一対の回動用ピン91,92(手前側の符号91のみ示す。)と、これらの回動用ピン91,92に順に連結された取付片93,93(手前側の符号93のみ示す。)、引張コイルばね94,94(手前側の符号94のみ示す。)、ワイヤ端部部材96,96(手前側の符号96のみ示す。)、第1・第2ケーブル45,46(手前側の符号45のみ示す。)と、前後進切換レバー42(図1参照)及びロックレバー43(図1参照)とからなる。
【0029】
第1ケーブル45は、機体11(図1参照)に設けられたケーブル支持ステー98で一端が支持されるアウタケーブル101と、このアウタケーブル101内に移動自在に挿入されて一端にワイヤ端部部材96が取付けられたインナワイヤ102とからなる。第2ケーブル46は、第1ケーブル45と同一構造であり、詳細説明は省略する。
【0030】
上部変速部ケース63は、上部に複数のボルト111で平板112が取付けられ、この平板112に、第1プーリ64及び第2プーリ66からVベルト52,53が外れるのを防止するベルト外れ止めピン113,113,114,116,116が立てられている。なお、外れ止めピン114については、詳しくは、平板112に補助プレート118を介して取付けられている。
【0031】
上記した変速機13は、上部変速部55と、下部変速部56と、上部変速部55を回動させてVベルト52,53が張った状態と弛んだ状態とを切り換える回動機構90と、Vベルト52,53の両方が弛んだ状態を保持することでVベルト52,53の両方が動力を伝達しない中立状態にする保持機構70とからなる。
【0032】
図3は本発明に係る動力伝達装置を示す平面図であり、エンジンのクランクシャフト27の軸線27aと下部変速部56(図2参照)に設けられた駆動軸121の軸線121aとを通り、小型除雪機の前後方向に延びる中心線122に対して、第1入力軸61は左側に位置し、第2入力軸62は右側に位置し、第1入力軸61に取付けられた第1プーリ64と第2入力軸62に取付けられた第2プーリ66とでは、それぞれの外径をD1、D2とすると、第2プーリ66の外径D2の方が第1プーリ64の外径D1よりも大径にされている。なお、符号123は駆動軸121の軸線121aを通り、中心線122に直交する基準線である。
【0033】
第2プーリ66は後進用の動力を伝える部品であり、第2プーリ66を、前進用の動力を伝える第1プーリ64よりも大径にしたのは、第1プーリ64よりも減速比を大きくして、小型除雪機の後進時の走行速度を前進時の走行速度よりも小さくするためである。
【0034】
保持機構70を構成する上部変速部位置決めピン77及び保持位置ピン81は、中心線122に沿って前後に並べて配置され、保持プレート82,83の挟持面82a,83aに引張コイルばね84の弾性力で挟み込まれている。
【0035】
保持位置ピン81は中心線122上に固定されているから、上部変速部55の回動に伴い上部変速部位置決めピン77が回動したときに、上部変速部位置決めピン77は、引張コイルばね84の弾性力により中心線122上まで戻り、この中心線122上に保持される。
【0036】
図4は本発明に係る動力伝達装置の動力伝達経路を示す説明図であり、第1入力軸61、第2入力軸62及び駆動軸121は、それぞれ第1ドライブギヤ131、第2ドライブギヤ132、ドリブンギヤ133が取付けられている。
ここでは、第1ドライブギヤ131と第2ドライブギヤ132とは、その歯数は同一である。
【0037】
第1ドライブギヤ131は、ドリブンギヤ133に直接に噛み合い、第2ドライブギヤ132は、アイドル軸134に回転自在に取付けられたアイドルギヤ136に噛み合い、アイドルギヤ136がドリブンギヤ133に噛み合う。ここでは、アイドルギヤ136の歯数は、第1ドライブギヤ131及び第2ドライブギヤ132の歯数と同一である。
アイドル軸134は、上部変速部ケース63(図3参照)に取付けられ、第2入力軸62よりも前方で駆動軸121よりも後方に配置されている。
【0038】
上記の第1ドライブギヤ131及びドリブンギヤ133は、駆動軸121を正転させる第1ギヤ列137を構成する部品であり、また、第2ドライブギヤ132、アイドルギヤ134及びドリブンギヤ133は、駆動軸121を逆転させる第2ギヤ列138を構成する部品である。
【0039】
小型除雪機の前進時には、エンジンの動力は、順に、(クランクシャフト27、ドライブプーリ51)→Vベルト52→(第1プーリ64、第1入力軸61、第1ドライブギヤ131)→(ドリブンギヤ133、駆動軸121)のように伝わる。即ち、第1入力軸61から第1ギヤ列137を介して駆動軸121に伝わる。
【0040】
小型除雪機の後進時には、エンジンの動力は、順に、(クランクシャフト27、ドライブプーリ51)→Vベルト53→(第2プーリ66、第2入力軸62、第2ドライブギヤ132)→アイドルギヤ136→(ドリブンギヤ133、駆動軸121)のように伝わる。即ち、第2入力軸62から第2ギヤ列138を介して駆動軸121に伝わる。
【0041】
図5は図3の5−5線断面図であり、動力伝達装置25は、ドライブプーリ51と、Vベルト52,53と、これらのVベルト52,53で駆動される変速機13とからなる。
また、変速機13は、上部変速部55と、下部変速部56と、保持機構70と、回動機構90(図2参照)とからなり、小型除雪機の前後進を切り換えるとともに中立状態(駆動軸121に動力が伝わらない状態)に設定可能である。
【0042】
上部変速部55は、駆動軸121に2つのベアリング141,142を介して回動自在に取付けられた上部変速部ケース63(ロアケース143及びこのロアケース143の上部に取付けられたアッパケース144からなる。)と、この上部変速部ケース63に2つのベアリング146,147を介して回転自在に取付けられた第2入力軸62と、上部変速部ケース63に2つのベアリング146,147(不図示)を介して回転自在に取付けられた第1入力軸61(図3参照)と、上部変速部ケース63のロアケース143及びアッパケース144のそれぞれに開けられた挿入穴143a,144aに挿入されたアイドル軸134と、第1入力軸61、第2入力軸62、駆動軸121にそれぞれスプライン結合されるとともに上部変速部ケース63内の空間148に配置された第1ドライブギヤ131(不図示)、第2ドライブギヤ132、ドリブンギヤ133と、アイドル軸134にブッシュ149を介して回転自在に取付けられたアイドルギヤ136と、第1入力軸61及び第2入力軸62にそれぞれスプライン結合された第1プーリ64(図3参照)及び第2プーリ66とからなる。
【0043】
ここで、符号151は駆動軸121上方のアッパケース144に開けられた開口部144bを塞ぐキャップ、152は第2入力軸62とアッパケース144側の開口部144cとの間に設けられたシール部材、153はロアケース143とアッパケース144との位置決めを行うカラー、154はロアケース143とアッパケース144とを締結するボルトである。
【0044】
下部変速部56は、下部変速部ケース161(ケース本体162及びこのケース本体162の下部に設けられた開口部を塞ぐカバー部材163からなる。)と、この下部変速部ケース161に2つのベアリング164,166を介して回転自在に取付けられた駆動軸121と、この駆動軸121の下部に形成されたウォーム121Aに噛み合うウォームホイール167と、ケース本体162の上部開口部162aと上部変速部55のロアケース143の下端部に形成された筒部143bとの間に設けられたシール部材168とからなり、ウォームホイール167は、ケース本体162に回転自在に取付けられた走行軸34に取付けられている。なお、169は駆動軸121の上端部にねじ結合されたナットであり、駆動軸121からベアリング142が抜けるのを防止するものである。
【0045】
ここで、符号171はケース本体162とカバー部材163との位置決めを行うカラー、172はケース本体162とカバー部材163とを締結するボルト、173はケース本体162を機体11(図1参照)に取付けるボルト、174は下部変速部ケース161内の空間、176は上部変速部55内の空間148と下部変速部56内の空間174とで形成される空間177に貯められた潤滑用オイル、176aは潤滑用オイル176の油面である。
【0046】
以上に説明したように、変速機13は、下部変速部56に上部変速部55を回動自在に取付けるとともに、上部変速部55と下部変速部56とを、下部変速部56の上部開口部162a内に上部変速部55の筒部143bを挿入して上部開口部162aと筒部143bとの間をシール部材168でシールする構造としたことにより、例えば、上部変速部と下部変速部とを上下に分離し、上部変速部及び下部変速部にそれぞれシール部材を設ける構造に比べて、変速機13の部品数を削減でき、変速機13の構造を簡素にすることができる。
【0047】
また、下部変速部56の上部開口部162aと、上部変速部55の筒部143bとを駆動軸121の軸方向にオーバーラップさせることで、上部変速部55と下部変速部56とをより近づけることができ、変速機13の高さHをより小さくすることができる。
【0048】
保持機構70は、上部変速部位置決めピン77が、下側の保持プレート82よりも下方まで延び、保持位置ピン81が、下部変速部56のケース本体162に設けられた取付穴162cに圧入されて上側の保持プレート83よりも上方まで延び、保持プレート82,83が、上部変速部55のロアケース143の下部筒状部143cにプレート受け部材181,182を介して回動自在に取付けられている。なお、184はワッシャ、185は止め輪である。
【0049】
図6は図3の6−6線断面図であり、上部変速部55のアッパケース144の上端部の内側、即ち、アッパケース144の開口部144bと、駆動軸121と、ベアリング142と、ナット169と、キャップ151とで囲まれた空間は、ブリーザ室191を形成し、アッパケース144に開けられた縦孔144eにL字状のブリーザパイプ192の一端が圧入され、このブリーザパイプ192の他端にブリーザホース193が接続され、これらのブリーザパイプ192とブリーザホース193とでブリーザ通路194が形成されている。
【0050】
ブリーザ室191は、ベアリング142の上方に隣接するために、駆動軸121が回転中はベアリング142の温度が上昇するのに伴い高温になり、圧力も高くなるが、ブリーザ通路193によってブリーザ室191と変速機13の外部とを連通させることにより、ブリーザ室191内の温度を降下させるとともに圧力を低下させることができる。
【0051】
ベアリング142は、シールド形であり、外輪142aにシールド板142bが固定され、このシールド板142bと内輪142cのシール面に形成された溝とでラビリンス隙間が形成され、ベアリング142の摺動部へのダスト等の侵入が防止される。
【0052】
図7は本発明に係る保持機構の保持プレート支持構造を示す要部斜視図であり、保持プレート82,83は、それぞれプレート穴部82b,83bを備え、プレート受け部材181,182はそれぞれ、大径部181a,182aと、小径部181b,182bと、これらの大径部181a,182a及び小径部181b,182bのそれぞれの間に設けられた段部181c,182cとを備える。
【0053】
保持プレート82は、プレート受け部材181の段部181cに載せられるとともに、プレート穴部82bが回動自在にプレート受け部材181の小径部181aに嵌合し、同様に、保持プレート83は、プレート受け部材182の段部182cに載せられるとともに、プレート穴部83bが回動自在にプレート受け部材182の小径部182aに嵌合し、保持プレート83の上面にワッシャ184が接することで、保持プレート82,83は、滑りを促すブッシュの機能を有するプレート受け部材181,182及びワッシャ184と摺動し、図5に示された上部変速部55のロアケース143とは接することがない。
【0054】
図8は本発明に係る変速機の背面図であり、第2プーリ66よりも高い位置に第1プーリ64が配置され、上部変速部ケース63、詳しくは、ロアケース143の左右に回動用ピン91,92が設けられ、ブリーザ通路194を形成するブリーザホース193の先端部193aがロアケース143の後部に設けられたホース固定用穴143eに挿入されるとともに下方に向けて開口している。従って、ブリーザ通路194内に雨水等を吸い込む心配がない。
【0055】
図9は本発明に係る前後進切換操作機構を示す要部側面図であり、右側のハンドル23の後側に後部ブラケット201が取付けられ、この後部ブラケット201に設けられた後部支軸202に前後進切換レバー42に設けられた軸受部材203が嵌合することで後部ブラケット201に前後進切換レバー42が回動自在に取付けられ、前後進切換レバー42の後部、詳しくは、後端(後部支軸202よりも後方)に第1ケーブル45、前後進切換レバー42の中央部寄り(後部支軸202よりも前方)に第2ケーブル46がそれぞれ連結され、ハンドル23の前側に前部ブラケット204が取付けられ、この前部ブラケット204に設けられた前部支軸206にロックレバー43が回動自在に取付けられている。なお、符号205はロックレバー43の後端部をグリップ41から離れる側に付勢する(図9で反時計回りに付勢する)ためにハンドル23側とロックレバー43側との間に設けられたねじりコイルばねである。
【0056】
前後進切換レバー42は、中央部上部にロックレバー43によって回動がロックされるときに拘束される被ロック片207を備える。なお、211,212は前後進切換レバー42に第1ケーブル45及び第2ケーブル46を連結するために前後進切換レバー42の後部側面に設けられた連結ピンである。
【0057】
前後進切換レバー42は、図2に示された保持機構70の引張コイルばね84の弾性力によって保持プレート82,83が上部変速部位置決めピン77及び保持位置ピン81を挟持するのに伴い、図9では中立位置にあり、第1ケーブル45及び第2ケーブル46共に引張コイルばね94(図2参照)によって張られた状態にある。
【0058】
ロックレバー43は、前部支軸206に支持される軸支部43aと、この軸支部43aから細長く延ばされた把持部43bとが一体成形された部品であり、軸支部43aの側面に前後進切換レバー42の被ロック片207に係合可能な側面視L字形状の2つのロック片214,215を備える。
【0059】
第1ケーブル45及び第2ケーブル46は、各アウタケーブル101が、ハンドル23に設けられたケーブルブラケット217にナット218で取付けられ、各インナワイヤ102の先端に取付けられた端部金具221が前後進切換レバー42の連結ピン211,212に回動自在に連結されている。
【0060】
前後進切換操作機構40は、上記に示した各構成、即ち、前後進切換レバー42と、後部ブラケット201と、後部支軸202と、軸受部材203と、ロックレバー43と、前部ブラケット204と、前部支軸206と、ねじりコイルばね205とからなる。
【0061】
以上に述べた前後進切換操作機構40の作用を次に説明する。
図10(a),(b)は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第1作用図である。
(a)において、前後進切換レバー42が二点鎖線の中立位置にある場合には、エンジンが運転中であっても、図3に示したVベルト52,53は、共に弛んだ状態にあり、エンジンのクランクシャフト27から第1入力軸61及び第2入力軸62に動力が伝わらないから、走行軸34は回転せず、図1に示したクローラ走行部14,16が回転しないため、小型除雪機10は停止した状態にある。即ち、変速機13は中立(いわゆる「ニュートラ」)状態にある。
【0062】
図10(a)に戻って、小型除雪機を前進させるために、前後進切換レバー42を矢印Aで示すように、前方に倒す(二点鎖線の中立位置から実線の前進位置(前進切換位置)に倒す)と、第1ケーブル45のインナワイヤ102が矢印Bで示すように引かれる。(このとき、第2ケーブル46のインナワイヤ102は、引張コイルばね94(図2参照)の引張力により第2ケーブル46のアウタケーブル101内に引き込まれる。)
【0063】
図10(b)において、前後進切換レバー42の前に倒した状態を保ったまま、今度は、ロックレバー43を矢印Cに示すように、グリップ41側に倒し、ロックレバー43の把持部43bをグリップ41と共に手で握る、即ちロックレバー43をハンドル23側に押し付ける。
【0064】
この結果、ロックレバー43の2つのロック片214,215のうちの一方のロック片214が、矢印Dに示すように、前後進切換レバー42の被ロック片207に当たり、前後進切換レバー42の戻り、即ち、時計回りの回動を規制する。これが前後進切換レバー42のロック状態(保持状態)である。
【0065】
図11(a),(b)は本発明に係る動力伝達装置の作用を示す第2作用図である。
(a)において、第1ケーブル45のインナワイヤ102(図10(a),(b)も参照)が矢印Eに示すように引かれると、右側の回動用ピン92が引かれるため、変速機13の上部変速部55が、矢印Fに示すように駆動軸121を中心にして回動し、これに伴って、Vベルト52が張った状態になる(Vベルト53は弛んだ状態になる)。
【0066】
このとき、上部変速部55の回動に伴って上部変速部位置決めピン77が右側の保持プレート83を押すため、保持プレート83は、矢印Gに示すように、回動する。この結果、引張コイルばね84が伸ばされた状態になり、保持プレート83を元の位置(中心線122上)に戻そうとする引張コイルばね84の弾性力が次第に大きくなる。
【0067】
(b)において、Vベルト52が張った状態になると、ドライブプーリ51の回転、例えば、矢印H方向の回転がVベルト52を介して第1プーリ64に伝わり、第1入力軸61に取付けられた第1ドライブギヤ131が矢印H方向に回転し、第1ドライブギヤ131に噛み合うドリブンギヤ133が矢印J方向に回転(正転)する。これにより、小型除雪機は前進する。
【0068】
図10(b)に戻って、小型除雪機の前進を止めて停止させるには、前後進切換レバー42のロックを解除するためにロックレバー43の握りを離せばよい。これにより、ロックレバー42による前後進切換レバー42の拘束が解かれ、前後進切換レバー42は、図2に示した圧縮コイルばね84,94の弾性力で図10(a)の二点鎖線の中立位置に戻り、中立状態になる。
【0069】
図12(a),(b)は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第3作用図である。
(a)において、小型除雪機を後進させるために、前後進切換レバー42を矢印Mで示すように、中立位置から後方に倒す(二点鎖線の中立位置から実線の後進位置(後進切換位置)に倒す)と、第2ケーブル46のインナワイヤ102が矢印Nで示すように引かれる。(このとき、第1ケーブル45のインナワイヤ102は、引張コイルばね94(図2参照)の引張力により第1ケーブル45のアウタケーブル101内に引き込まれる。)
【0070】
(b)において、前後進切換レバー42の後に倒した状態を保ったまま、今度は、ロックレバー43を矢印Pに示すように、グリップ41側に倒し、ロックレバー43の把持部43bをグリップ41と共に手で握る、即ちロックレバー43をハンドル23側に押し付ける。
【0071】
この結果、ロックレバー43の2つのロック片214,215のうちの一方のロック片215が、矢印Qに示すように、前後進切換レバー42の被ロック片207に当たり、前後進切換レバー42の戻り、即ち、反時計回りの回動を規制する。これが前後進切換レバー42のロック状態である。
【0072】
図13(a),(b)は本発明に係る動力伝達装置の作用を示す第4作用図である。
(a)において、第2ケーブル46のインナワイヤ102(図12(a),(b)も参照)が矢印Rに示すように引かれると、左側の回動用ピン91が引かれるため、変速機13の上部変速部55が、矢印Sに示すように駆動軸121を中心にして回動し、これに伴って、Vベルト53が張った状態になる。このとき、上部変速部位置決めピン77が左側の保持プレート82を押すため、保持プレート82は、矢印Tに示すように、回動する。
この結果、引張コイルばね84が伸ばされた状態になり、保持プレート82を元の位置(中心線122上)に戻そうとする引張コイルばね84の弾性力が次第に大きくなる。
【0073】
(b)において、Vベルト53が張った状態になると、ドライブプーリ51の回転、例えば、矢印H方向の回転がVベルト53を介して第2プーリ66に伝わり、第2入力軸62に取付けられた第2ドライブギヤ132が矢印H方向に回転し、第2ドライブギヤ132に噛み合うアイドルギヤ134が矢印U方向に回転し、アイドルギヤ134に噛み合うドリブンギヤ133が矢印H方向に回転(逆転)する。これにより、小型除雪機は後進する。
【0074】
図12(b)に戻って、小型除雪機の後進を止めて停止させるには、前後進切換レバー42のロックを解除するためにロックレバー43の握りを離せばよい。これにより、ロックレバー42による前後進切換レバー42の拘束が解かれ、前後進切換レバー42は、図2に示した圧縮コイルばね84,94の弾性力で図12(a)の二点鎖線の中立位置に戻り、中立状態になる。
【0075】
図14は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第5作用図であり、前進位置での前後進切換レバー42及びロックレバー43に作用するモーメントの釣り合いを説明する。
前後進切換レバー42を前進位置に倒した場合に、前後進切換レバー42の連結ピン211(詳しくは、連結ピン211の軸線211a(紙面の表裏方向に延びる線であり、黒丸で示している。))に第1ケーブル45から作用する力をF1、軸心211aと後部支軸202(詳しくは、後部支持部202の軸線202a(紙面の表裏方向に延びる線であり、黒丸で示している。))との力F1に直交する方向の距離をL1、前後進切換レバー42の先端部(点42a)を押し下げる力(保持力)をF2(軸線202aと点42aとを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、軸線202aと点42aとの距離をL2、被ロック片207とロック片214との接触点である点225に作用する力をF3(軸線202aと点225とを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、軸線202aと点225との距離をL3、点225と前部支軸206の軸線206aとの力F3に直交する方向の距離をL4、ロックレバー43の把持部43bの作用点43cに作用する力(保持力)をF4(軸線206aと作用点43cとを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、軸線206aと作用点43cとの距離をL5とする。
【0076】
まず、前後進切換レバー42の保持力F2を求める。
前後進切換レバー42の時計回りと反時計回りのモーメントの釣り合いから、F1・L1=F2・L2である。従って、F2=L1/L2・F1となる。
【0077】
次に、ロックレバー43の保持力F4を求める。
前後進切換レバー42の時計回りと反時計回りのモーメントの釣り合いから、F1・L1=F3・L3である。従って、F3=L1/L2・F1となる。
また、ロックレバー43の軸線206a回りのモーメントから、F3・L4=F4・L5である。
従って、F4=L4/L5・F3となり、この関係式に上記のF3=L1/L3・F1を代入すると、F4=L1・L4/(L3・L5)・F1となる。
【0078】
以上のF2及びF4から、F2:F4=(1/L2):(L4/(L3・L5))となる。
例えば、L1=2.5cm、L2=17.4cm、L3=5.0cm、L4=0.3cm、L5=20.4cmとすると、F2:F4=19.5:1となり、ロックレバー43の保持力F2は、前後進切換レバー42の保持力F2に対して約1/20に低減される。但し、この値は前後進切換操作機構40における各部の摩擦等の機械損失が考慮されていない。
【0079】
図15は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第6作用図であり、後進位置での前後進切換レバー42及びロックレバー43に作用するモーメントの釣り合いを説明する。
前後進切換レバー42を後進位置に倒した場合に、前後進切換レバー42の連結ピン212(詳しくは、連結ピン212の軸線212a(紙面の表裏方向に延びる線であり、黒丸で示している。)に第2ケーブル46から作用する力をF5、軸線212aと後部支軸202の軸線202aとの力F5に直交する方向の距離をL6、前後進切換レバー42の先端部(点42a)を後方へ引く力(保持力)をF6(軸線202aと点42aとを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、被ロック片207とロック片215との接触点である点226に作用する力をF7(軸線202aと点226とを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)、軸線202aと点226との距離をL7、点226と前部支軸206の軸線206aとの力F7に直交する方向の距離をL8、ロックレバー43の把持部43bの作用点43cに作用する力(保持力)をF8(軸線206aと作用点43cとを結ぶ線分に直交する方向に作用する。)とする。
【0080】
まず、前後進切換レバー42の保持力F6を求める。
前後進切換レバー42の時計回りと反時計回りのモーメントの釣り合いから、F5・L6=F6・L2である。従って、F6=L6/L2・F5となる。
【0081】
次に、ロックレバー43の保持力F8を求める。
前後進切換レバー42の時計回りと反時計回りのモーメントの釣り合いから、F5・L6=F7・L7である。従って、F7=L6/L7・F5となる。
また、ロックレバー43の軸線206a回りのモーメントから、F7・L8=F8・L5である。
従って、F8=L8/L5・F7となり、この関係式に上記のF7=L6/L7・F5を代入すると、F8=L6・L8/(L5・L7)・F5となる。
【0082】
以上のF2及びF4から、F6:F8=(1/L2):(L8/(L5・L7))となる。
例えば、L2=17.4cm、L5=20.4cm、L6=2.5cm、L7=5.4cm、L8=0.3cmとすると、F6:F8=21.1:1となり、ロックレバー43の保持力F8は、前後進切換レバー42の保持力F6に対して約1/20に低減される。但し、この値は前後進切換操作機構40における各部の摩擦等の機械損失が考慮されていない。
【0083】
図16は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第7作用図であり、前後進切換操作機構40による前進解除の作用を説明する。
前後進切換レバー42が前進位置(実線で示されている。)にあり、この前進位置をロックレバー43で保持した状態から、矢印aで示すように、ロックレバー43の把持部43bをハンドル23のグリップ41から所定の距離離す。
【0084】
詳しくは、ロックレバー43のロック片214が、矢印bで示すように、前後進切換レバー42の被ロック片207の回動軌跡207Aから外れるまで、ロックレバー43を前部支軸206を中心にして反時計回りに回動させる。
【0085】
この結果、被ロック片207を拘束するものが無くなり、前後進切換レバー42は、矢印cで示すように、二点鎖線で示す中立位置まで戻る。これで、小型除雪機の前進が解除され、停止する。
【0086】
図17は本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第8作用図であり、前後進切換操作機構40による後進解除の動作を説明する。
前後進切換レバー42が後進位置(実線で示されている。)にあり、この後進位置をロックレバー43で保持した状態から、矢印dに示すように、ロックレバー43の把持部43bをハンドル23のグリップ41から所定の距離離す。
【0087】
詳しくは、ロックレバー43のロック片215が、矢印eに示すように、前後進切換レバー42の被ロック片207の回動軌跡207Aから外れるまで、ロックレバー43を前部支軸206を中心にして反時計回りに回動させる。
【0088】
この結果、被ロック片207を拘束するものが無くなり、前後進切換レバー42は、矢印fに示すように、二点鎖線で示す中立位置まで戻る。これで、小型除雪機の後進が解除され、停止する。
【0089】
以上の図1、図9に示したように、車輪、クローラベルト33等の走行部(クローラ走行部14,16)を有する走行機械としての小型除雪機10のハンドル23近傍に設けられる前後進切換操作機構40において、中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により小型除雪機10の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバー42と、ハンドル23側に押し付けることで前後進切換レバー42を前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバー43とを備えるので、前後進切換レバー42自体を切換位置に保持せずに、ロックレバー43で前後進切換レバー42をロックするため、前後進切換レバー42とロックレバー43との各腕の長さを考慮することで、ロックレバー43の保持力を低減することができる。
【0090】
また、前後進切換レバー42にロックレバー43を追加するという簡易な構造であり、前後進切換操作機構40のコストを低減することができるとともに、ロックレバー43をハンドル23側に押し付けるだけで前後進切換レバー42を前進切換位置又は後進切換位置に同様に保持できるので、操作性を向上させることができる。
【0091】
また、図9に示したように、ロックレバー43に、前後進切換レバー42に設けられた被ロック片としてのストッパピン207に当てることで前後進切換レバー42の前後進の各切換位置を保持するロック片214,215をそれぞれ備えるので、ロックレバー43にロック片214,215を備える簡易な構造で、ロック片214,215をストッパピン207に当てることにより前後進切換レバー42の前後進切換位置をそれぞれ確実に保持でき、ロックレバー43のコストを低減することができるとともに、信頼性を高めることができる。
【0092】
図18は本発明に係る前後進切換操作機構の別実施形態を示す側面図であり、前後進切換操作機構230は、前後進切換操作機構40(図9参照)の構成に加え、連結ピン211,212にスイング自在に連結されたリンク231,231と、これらのリンク231,231を第1ケーブル45及び第2ケーブル46にそれぞれ連結させるための連結ピン233,234とを備える。
上記のリンク231,231及び連結ピン233,234は、前後進切換レバー42と第1ケーブル45、第2ケーブル46とを連結する連結部236を構成する部品である。
【0093】
リンク231は、底壁231aの両縁からそれぞれ側壁231bが立ち上げられて断面コ字形状に折曲げ形成された部品であり、2つの側壁231b,231bにそれぞれ、連結ピン211,212が回動自在に挿入されるピン挿入穴231cと、連結ピン233,234が回動自在且つ移動自在に挿入される長穴231dとが形成されている。
【0094】
図18では、前後進切換レバー42は中立位置にあり、第1ケーブル45、第2ケーブル46及び2つのリンク231は、引張コイルばね94(図2参照)によって張られた状態にある。
【0095】
図19(a),(b)は本発明に係る前後進切換操作機構の別実施形態の作用を示す側面図である。
(a)は前進位置にある前後進切換レバー42に連結された第1ケーブル45、第2ケーブル46及びリンク231の状態を示している。
即ち、第1ケーブル45のインナワイヤ102は張られた状態にあり、第2ケーブル46のインナワイヤ102は張りが無くなった状態にある。
【0096】
第2ケーブル46側のリンク231は垂れ下がり、第2ケーブル46の端部の連結ピン234は長穴231dの上側の端部に移動することで第2ケーブル46のインナワイヤ102のたるみが少なくなっている。
【0097】
(b)は後進位置にある前後進切換レバー42に連結された第1ケーブル45、第2ケーブル46及びリンク231の状態を示している。
即ち、第2ケーブル46のインナワイヤ102は張られた状態にあり、第1ケーブル45のインナワイヤ102は張りが無くなった状態にある。
【0098】
第1ケーブル45側のリンク231は垂れ下がり、第1ケーブル45の端部の連結ピン233は長穴231dの上側の端部に移動することで第1ケーブル45のインナワイヤ102のたるみが少なくなっている。
【0099】
以上の(a),(b)に示したように、前後進切換レバー42と、第1ケーブル45及び第2ケーブル46との間に、リンク231,231及び連結ピン233,234を介在させることで、リンク231が揺動したり、連結ピン233,234が長穴231d内を移動することで、第1ケーブル45及び第2ケーブル46のたるみを抑えることができる。
【0100】
以上の図18、図19(a),(b)に示したように、前後進切換レバー42が、連結部236を介して操作ケーブルとしての第1ケーブル45、第2ケーブル46に連結され、連結部236が、第1ケーブル45、第2ケーブル46の連結端部が移動可能な長穴231d,231dを有するリンク231,231で形成されているので、リンク231の長穴231d、リンク231の揺動によって第1ケーブル45、第2ケーブル46のたるみを吸収することができ、第1ケーブル45、第2ケーブル46をたるみにくくすることができる。従って、第1ケーブル45、第2ケーブル46が作業の邪魔にならない。
【0101】
尚、本実施形態では、図18に示したように、リンク231を断面コ字形状としたが、これに限らず、リンクを断面矩形状(角パイプ状)、断面円形状(丸パイプ状)、平板状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の前後進切換操作機構は、車輪、クローラベルト等の走行部を備えた除雪機等の走行機械に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る前後進切換操作機構を備えた小型除雪機を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る動力伝達装置を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る動力伝達装置を示す平面図である。
【図4】本発明に係る動力伝達装置の動力伝達経路を示す説明図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係る保持機構の保持プレート支持構造を示す要部斜視図である。
【図8】本発明に係る変速機の背面図である。
【図9】本発明に係る前後進切換操作機構を示す要部側面図である。
【図10】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第1作用図である。
【図11】本発明に係る動力伝達装置の作用を示す第2作用図である。
【図12】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第3作用図である。
【図13】本発明に係る動力伝達装置の作用を示す第4作用図である。
【図14】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第5作用図である。
【図15】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第6作用図である。
【図16】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第7作用図である。
【図17】本発明に係る前後進切換操作機構の作用を示す第8作用図である。
【図18】本発明に係る前後進切換操作機構の別実施形態を示す側面図である。
【図19】本発明に係る前後進切換操作機構の別実施形態の作用を示す側面図である。
【符号の説明】
【0104】
10…走行機械(小型除雪機)、14,16…走行部(クローラ走行部)、23…ハンドル、33…クローラベルト、40,230…前後進切換操作機構、42…前後進切換レバー、43…ロックレバー、45…操作ケーブル(第1ケーブル)、46…操作ケーブル(第2ケーブル)、207…ストッパピン(被ロック片)、214,215…ロック片、231…リンク、231d…長穴、236…連結部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪、クローラベルト等の走行部を有する走行機械のハンドル近傍に設けられる前後進切換操作機構において、
中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により前記走行機械の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバーと、前記ハンドル側に押し付けることで前記前後進切換レバーを前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバーとを備えることを特徴とする前後進切換操作機構。
【請求項2】
前記ロックレバーは、前記前後進切換レバーに設けられた被ロック片に当てることで前記前後進切換レバーの前後進の各切換位置を保持するロック片をそれぞれ備えることを特徴とする請求項1記載の前後進切換操作機構。
【請求項3】
前記前後進切換レバーは、連結部を介して操作ケーブルに連結され、前記連結部は、前記操作ケーブルの連結端部が移動可能な長穴を有するリンクで形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の前後進切換操作機構。
【請求項1】
車輪、クローラベルト等の走行部を有する走行機械のハンドル近傍に設けられる前後進切換操作機構において、
中立位置に付勢され、この中立位置から倒す方向により前記走行機械の前進と後進とを切り換え可能な前後進切換レバーと、前記ハンドル側に押し付けることで前記前後進切換レバーを前後進の各切換位置に保持状態とするロックレバーとを備えることを特徴とする前後進切換操作機構。
【請求項2】
前記ロックレバーは、前記前後進切換レバーに設けられた被ロック片に当てることで前記前後進切換レバーの前後進の各切換位置を保持するロック片をそれぞれ備えることを特徴とする請求項1記載の前後進切換操作機構。
【請求項3】
前記前後進切換レバーは、連結部を介して操作ケーブルに連結され、前記連結部は、前記操作ケーブルの連結端部が移動可能な長穴を有するリンクで形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の前後進切換操作機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−281486(P2009−281486A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133699(P2008−133699)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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