剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム
【課題】従来のパラレルメカニズム等の多自由度機構は、一般的に構造が複雑で、柔軟性も低い。
【解決手段】本発明のパラレルメカニズムは、剛性を有する複数の弾性ワイヤーを合理的に用いて構成することにより、従来のパラレルメカニズムでは不可能であった柔軟な動きを行えるようにした多自由度機構を提供するものであり、即ち、剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤー1の複数本が、被駆動側部材2と駆動側部材3の各支点位置において同一配置となるように接続されており、また被駆動側部材と駆動側部材間には弾性ワイヤーを、横断面方向から見た配置を維持しつつ、軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材4が設けられているパラレルメカニズムである。
【解決手段】本発明のパラレルメカニズムは、剛性を有する複数の弾性ワイヤーを合理的に用いて構成することにより、従来のパラレルメカニズムでは不可能であった柔軟な動きを行えるようにした多自由度機構を提供するものであり、即ち、剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤー1の複数本が、被駆動側部材2と駆動側部材3の各支点位置において同一配置となるように接続されており、また被駆動側部材と駆動側部材間には弾性ワイヤーを、横断面方向から見た配置を維持しつつ、軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材4が設けられているパラレルメカニズムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般産業、試験機、航空宇宙、医療福祉、マイクロマシン、遊戯施設等に関する多分野において利用可能な多自由度機構、特に、剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズムに関する。
【背景技術】
【0002】
多自由度機構としてのパラレルメカニズムは、フライトシミュレータや遊戯施設を始めとして、多くの分野において利用されており、その応用例は非常に多い。
【0003】
パラレルメカニズムとしては、ベースと、プレート等のエンドエフェクタとの間に、球面軸受けを有するジョイントを介して6個の伸縮式アクチュエータを配置して、6自由度の運動を行わせるようにした、いわゆるスチュアートプラットホームと称される伸縮型のパラレルメカニズムが広く知られている。この他、パラレルメカニズムの種類としては、回転式アクチュエータを用いた回転型、固定された直動アクチュエータを用いた直動型、複数の弾性ワイヤーを用いた弾性ワイヤー型、弾性ワイヤーとリンクによるハイブリッド型等が知られている。そして、これらに用いるアクチュエータの駆動方式としては、電動方式、油圧方式、空気圧方式など各種の方式が行われている。
【0004】
特許文献1は伸縮型パラレルメカニズムの従来例、特許文献2は回転式パラレルメカニズムの従来例、特許文献3は直動型パラレルメカニズムの従来例を示すものである。
【0005】
これらの型のパラレルメカニズムは、いずれも被駆動側部材に取り付けた複数の支点と、駆動側部材の複数の支点間の夫々に、剛体リンク又は支点間の距離を可変できる伸縮式アクチュエータを連結した構成であり、剛体リンク又は伸縮式アクチュエータで被駆動側部材の支点の位置を移動することにより、被駆動側部材の位置と姿勢を制御する方式である。
【0006】
また特許文献4は複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズムの従来例を示すもので、このパラレルメカニズムは、弾性ワイヤーに加えて剛体リンクを用いたハイブリット型である。このパラレルメカニズムでは、被駆動側部材に取り付けた複数の支点と、駆動側部材の複数の支点間に、弾性ワイヤーを連結し、駆動側部材のアクチュエータにより弾性ワイヤーの長さを変化させて、被駆動側部材の支点の位置を移動することにより、被駆動側部材の位置と姿勢を制御する方式である。この場合、被駆動側部材の姿勢を変更する各動作は、全ての弾性ワイヤーに張力が常に加わる状態を維持して行われるものである。
【0007】
一方、一つ又は剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いた従来の機構として、上述した特許文献4の他に、特許文献5、特許文献6に示されるような内視鏡における先端部の湾曲機構や、特許文献7に示されるようなロボットハンドの関節駆動機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−300290号公報
【特許文献2】特開2001−38551号公報
【特許文献3】特開2001−254798号公報
【特許文献4】特開2007−209572号公報
【特許文献5】特開2003−126024号公報
【特許文献6】特開2003−204926号公報
【特許文献7】特開2006−123149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1−3により例示しているパラレルメカニズム、即ち、被駆動側部材に取り付けた複数の支点と、駆動側部材の複数の支点間の夫々に、剛体リンク又は支点間の距離を可変できる伸縮式アクチュエータを連結した構成では、次のような課題を有している。
1.一般的に構造が複雑である。
2.各支点には球面軸受に代表される自由度の高い軸受が必要で、一般的に回転や滑りを伴うため構造が複雑になる。そのため潤滑の問題やガタの問題や耐久性の問題が発生しやすく、費用も高価になる。
3.被駆動側部材の姿勢の自由度(一般的には6自由度)を得るための剛体リンク又は伸縮式アクチュエータの数は数学的に決まり、一般的には6本であり、そのため6軸モーションとも称される。それ以下の数では姿勢を保てず、また6本以上では冗長な機構となり、制御が各段に難しくなる。
4.駆動機構である剛体リンクや伸縮式アクチュエータを含め、メカニズム全体としての柔軟性がない。
【0010】
一方、特許文献4−7により例示している弾性ワイヤーを用いた機構は、パラレルメカニズムにしても、シリアルメカニズムにしても、柔軟なメカニズム又は構造体を構成することができるが、被駆動側部材の位置と姿勢の制御は、弾性ワイヤーを牽引・弛緩することにより各支点間の距離を変える方式であり、弾性ワイヤーの引張方向の剛性は利用しているが、圧縮、曲げ及び捩り方向の剛性は利用しておらず、従って弾性ワイヤーのみでは空間的自立性がない。
【0011】
そこで本発明では、以上の課題を解決し、複数の弾性ワイヤーのみで空間的な位置・姿勢を保持して自立し、弾性ワイヤーの引張り、圧縮、曲げ及び捩り方向の剛性を利用して柔軟な動きを行えるパラレルメカニズムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上記課題を解決するために、剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤーの複数本が、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置において、同一配置となるように接続されており、また前記被駆動側部材と前記駆動側部材間には、前記弾性ワイヤーを、横断面方向から見て前記配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材が設けられている構成のパラレルメカニズムを提案する。
【0013】
また本発明では、上記課題を解決するために、剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤーの複数本が、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置において、相似配置となるように接続されており、また前記被駆動側部材と前記駆動側部材間には、前記弾性ワイヤーを、横断面方向から見て前記相似配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材が設けられている構成のパラレルメカニズムを提案する。
【0014】
そして本発明では、上記構成において、駆動側部材は、他のパラレルメカニズムの被駆動側部材として構成した、剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズムを提案する。
【0015】
また本発明では、上記の構成において、駆動側部材は、夫々の弾性ワイヤー毎に設け、弾性ワイヤーを進退及び捩り回転可能とした複数の駆動装置により構成した、剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズムを提案する。
【0016】
また本発明では、以上の構成にパラレルメカニズムの中間支持部材を密閉室の壁に気密的に取り付けて、被駆動側部材を密閉室内に位置させると共に、駆動側部材を密閉室外に位置させた構成の密閉室内作業機構を提案する。
【0017】
そして本発明では、上記構成において、密閉室は真空又は特殊環境の材料試験室とした密閉室内作業機構を提案する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパラレルメカニズムは、中間支持部材を、被駆動側部材と駆動側部材間に配置した適宜の支持部位に取り付けて使用する。この状態において、被駆動側部材は、駆動側部材から中間支持部材を経て延びている弾性ワイヤーの剛性によって自立的に位置と姿勢が維持される。
【0019】
駆動側部材を、他のパラレルメカニズムの被駆動側部材として構成した場合において、この駆動側部材を、初期状態から、その姿勢を維持しながら軸方向、即ち、弾性ワイヤーの延びている方向に移動させると、全ての弾性ワイヤーが、中間支持部材に支持されて前進又は後退方向に等距離移動するので、被駆動側部材は、初期状態の姿勢が維持されたまま前進又は後退する。
【0020】
次に、初期状態において、駆動側部材を適宜の方向に傾斜させると、この傾斜により、駆動側部材側において中間支持部材までの距離が近くなる場合には、対応する弾性ワイヤーは被駆動側部材を押す方向に作用し、一方、傾斜により、駆動側部材側において中間支持部材からの距離が遠くなる場合には、対応する弾性ワイヤーは被駆動側部材を引く方向に作用するため、被駆動側部材は、駆動側部材の傾斜方向と同方向に傾斜する。
【0021】
次に、初期状態において、駆動側部材を軸方向の回りに適宜角度回転させると、全ての弾性ワイヤーが回転軌跡に沿って移動し、これにより全ての弾性ワイヤーが回転方向に捩られる。このように全ての弾性ワイヤーが同一方向に捩られるため、被駆動側部材は、全ての弾性ワイヤーに駆動されて、軸方向の回りに、駆動側部材と同方向に同角度回転する。
【0022】
以上の各方向の動作は、駆動側部材として、夫々の弾性ワイヤー毎に設け、弾性ワイヤーを進退及び捩り回転可能とした複数の駆動装置により構成した場合においても同様に行うことができる。
【0023】
また、以上の各方向の動作は、組み合わせて行わせることができ、これらにより多自由度で柔軟な動きを行わせることができる。そして柔軟な動きは、剛性を有する弾性ワイヤーによって実現しており、弾性ワイヤーと、駆動側部材及び被駆動側部材とは単に固定すれば良く、相対回転や相対滑りがないので、軸受けは不要である。
【0024】
以上のことから本発明では、従来のパラレルメカニズムと比較して構造が非常に簡素化される。
【0025】
また従来の多自由度のパラレルメカニズムで必要な球面軸受等の複雑な軸受要素は不要となるため、この点においても構造の簡素化に寄与し、コストを低減すると共に、ガタがなく、耐久性も高い。
【0026】
本発明において、弾性ワイヤーの数は、2本以上適宜であり、数を増やすことにより、より剛性を高めることができる。
【0027】
被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置における複数の弾性ワイヤーの配置は適宜であり、設計上の自由度が高い。
【0028】
本発明のパラレルメカニズムでは、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置における弾性ワイヤーの接続の配置と、中間支持部材における弾性ワイヤーの支持の配置は、同一配置とすることが基本であるが、この同一配置の場合と比較して、動きが制限されることを許容する場合において相似配置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明のパラレルメカニズムを構成する基本構成要素の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明のパラレルメカニズムを構成する基本構成要素の実施の形態を、他の構成要素と共に示す模式的正面図である。
【図3】図3は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態を示すもので、(a)は模式的正面図、(b)は模式的斜視図である。
【図4】図4(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態の第1の動作を示す模式的正面図である。
【図5】図5(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態の第2の動作を示す模式的正面図である。
【図6】図6(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態の第3の動作を示す模式的正面図であり、また(c)、(d)は夫々(a)、(b)を上方から見た模式的平面図である。
【図7】図7は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態を示すもので、(a)は模式的正面図、(b)は模式的斜視図、(c)は(a)を上方から見た模式的平面図である。
【図8】図8(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態の第1の動作を示す模式的正面図である。
【図9】図9(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態の第2の動作を示す模式的正面図である。
【図10】図10(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態の第3の動作を示す模式的正面図であり、また(c)、(d)は夫々(a)、(b)を上方から見た模式的平面図である。
【図11】図11(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態を利用して構成した密閉室内作業機構の構成及び動作を示す一部断面模式的正面図である。
【図12】図12(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態を利用して構成した密閉室内作業機構の構成及び動作を示す一部断面模式的正面図である。
【図13】図13(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムを構成する基本構成要素の他の実施の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に本発明のパラレルメカニズムの実施の形態を添付図面を参照して説明する。
まず図1は本発明に係るパラレルメカニズムを構成する基本構成要素を示すもので、この基本構成要素は、剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤー1の複数本が、被駆動側部材2と駆動側部材3の各支点位置において、同一配置となるように接続されている。被駆動側部材2と駆動側部材3の各支点に対しての弾性ワイヤー1の接続は、単なる固定接続であり、相対回転や相対滑りを設ける必要はない。このため従来のパラレルメカニズムでは必要であった球面軸受等の複雑な構成の軸受は不要である。本発明の基本構成要素は、以上の構成に加えて、被駆動側部材2と駆動側部材3間に、前記弾性ワイヤー1を、横断面方向から見て前記配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材4を設けた構成である。
【0031】
本発明において、弾性ワイヤー1は、予め設定した荷重を自立的に支持可能な剛性、即ち、引張り、圧縮、曲げ及び捩り方向の剛性を有し、円形断面の単線であり、材質は、鉄系、非鉄系の金属や、合成樹脂、複合材料等の非金属等、適宜に選択することができる。
【0032】
この実施の形態においては、弾性ワイヤー1は5本としており、これらの弾性ワイヤー1を、横断面方向から見て正五角形の各頂点に対応させた配置として、被駆動側部材2と駆動側部材3に固定すると共に、中間支持部材4には、弾性ワイヤー1を、前記配置を維持しつつ、軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する部材として案内孔5を設けている。
【0033】
中間支持部材4は、上述したように、弾性ワイヤー1を、前記配置を維持しつつ、軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持することができれば、直線状に構成することは勿論であるが、直線状でなく、曲がった構成とすることもできる。また中間支持部材4は、剛体により構成することは勿論であるが、可撓性を有する材質により構成することもできるものである。
【0034】
この実施の形態において、被駆動側部材2と駆動側部材3は円環状プレートとして構成しているが、その形状等は適宜である。また中間支持部材4は、軸方向の貫通穴6を有するスリーブ状に構成しているが、貫通穴6を有しない適宜の構成とすることもできる。
【0035】
本発明のパラレルメカニズムでは、このような基本構成要素において、中間支持部材4を被駆動側部材2と駆動側部材3間に配置した適宜の支持部位7に取り付けて使用し、駆動側部材3を、適宜の駆動機構8により駆動するようにして、パラレルメカニズムとして動作させることができる。尚、駆動機構8は手動でも良く、被駆動側部材2の動きを見ながら、被駆動側部材2が、所望の位置・姿勢になるように駆動側部材3を手動で動かすようにすることも可能である。
【0036】
次に、本発明のパラレルメカニズムを動作させる具体的な実施の形態を説明すると、まず図3〜図6は第1の実施の形態を示すもので、この実施の形態では、駆動側部材3は、他のパラレルメカニズム8の被駆動側部材として構成したものであり、このパラレルメカニズム8が上述した駆動機構に相当するものである。
【0037】
このパラレルメカニズム8は、従来技術として説明したスチュアートプラットホームと称される伸縮型のパラレルメカニズムであり、駆動側部材9と、被駆動側部材、即ち、本発明のパラレルメカニズムにおける駆動側部材3との間に、球面軸受けを有するジョイント10を介して6個の伸縮式アクチュエータ11を配置して、6自由度の運動を行わせるようにしたものである。このパラレルメカニズムの構成や動作は周知であるので、詳細な説明は省略する。尚、図3(b)においては、支持部位7を模式的に描いている。
【0038】
以上の構成において、他のパラレルメカニズム8により、駆動側部材3を、図4(a)に示す状態から、(b)に示すように、その姿勢を維持しながら軸方向、即ち、図中下方に移動させると、全ての弾性ワイヤー1が、中間支持部材4の案内孔5に支持されて下降するので、被駆動側部材2は、(a)の姿勢が維持されたまま下降する。また逆の動作により、(b)の状態から(a)の状態まで動作させることができる。
【0039】
次に図5の(a)に示す状態において、他のパラレルメカニズム8により駆動側部材3を、(b)に示すように傾斜させると、傾斜により、駆動側部材3側において中間支持部材4までの距離が近くなる側に対応する弾性ワイヤー1、即ち、図中左側の弾性ワイヤー1は被駆動側部材2の対応個所を押す方向に作用する。一方、傾斜により、駆動側部材3側において中間支持部材4からの距離が遠くなる側に対応する弾性ワイヤー1、即ち、図中右側の弾性ワイヤー1は被駆動側部材2の対応個所を引く方向に作用するため、被駆動側部材2は、駆動側部材3の傾斜方向と同方向に傾斜する。
【0040】
次に図6の(a)に示す状態において、駆動側部材3を軸方向の回りに適宜角度θ回転させると、全ての弾性ワイヤー1が回転軌跡に沿って移動し、これにより全ての弾性ワイヤー1が回転方向に捩られる。このように全ての弾性ワイヤー1が同一方向に捩られるため、被駆動側部材2は、全ての弾性ワイヤー1に駆動されて、(b)に示すように軸方向の回りに、駆動側部材3と同方向に同角度θだけ回転する。尚、(b)中には、2点鎖線の円で囲んだ個所の拡大図を示している。
【0041】
以上の各方向の動作は、組み合わせて行わせることができ、こうして、多自由度で柔軟な動きを行わせることができる。
【0042】
そして、本発明においては、被駆動側部材2の位置及び姿勢の制御は、ティーチング等による制御方法により正確に行わせることができる。以下にこの制御方法の例を説明する。
【0043】
まず、図3の駆動機構8のパラレルメカニズムに使用される6本の伸縮式アクチュエータ11は電動方式、油圧方式、空気圧方式およびそれらを組合せたハイブリッド方式などがある。通常、これらのアクチュエータ11には伸縮ロッドの変位量を検出するための位置検出器を取り付けて、位置信号をフィードバック信号とする位置制御系が構成されている。そしてコンピュータからの各アクチュエータ11への位置指令信号に追従して各アクチュエータの伸縮ロッドが駆動される。その結果、駆動部材3の姿勢制御が正確に行われ、最終的には被駆動側部材2の位置および姿勢が正確に制御される。
【0044】
また位置検出器だけでなく、さらに各アクチュエータ11の伸縮ロッドに、ロッドに加わる荷重を検出する荷重検出器を取り付けるか、または歪みゲージを貼って荷重を検出し、この荷重信号を検出して各アクチュエータ11の荷重モニタまたは荷重制御を行うこともできる。
【0045】
以上の位置および荷重を検出する検出器を装備した各アクチュエータ11によりパラレルメカニズム8の位置制御系を構成し、例えば、中立位置に静止させる。次に被駆動部材2が希望する動きや姿勢をとるように、駆動部材3を人間の手により希望する方向に動くような力を加える。このとき、各アクチュエータ11には、夫々押しまたは引きの荷重が加わる。この荷重を荷重検出器または歪みゲージにより検出して、同時に位置制御系への変位指令信号とする。すると各アクチュエータ11の伸縮ロッドは押しまたは引きの荷重に対応して短縮方向または伸長方向に変位する。このとき人間の手はあたかもバネを介して駆動部材3を動かしているように感じる。
【0046】
このときの各アクチュエータ11の伸縮ロッドの位置信号を記憶装置に記憶しておく。そして、この位置信号を位置指令信号として再生し、位置制御系が構成された各アクチュエータ11を駆動すると、先に手動で動かした時の駆動側部材3の動作を忠実、且つ正確に再現させることができる。従って結果的に、被駆動側部材2の位置および姿勢の動きを正確かつ忠実に再現できる。以上によりプレイバック方式のティーチングが実現できる。
【0047】
以上の方法では、ティーチングを行う際に伸縮アクチュエータ11の荷重信号を使って伸縮ロッドを動かしているが、油圧または空気圧シリンダの場合には油圧または空気圧をゼロにすればロッドはほとんど抵抗なく動くので、この状態で駆動部材3を手動で動かして、そのときの各伸縮アクチュエータ11の位置信号を記憶装置に記憶しておき、この位置信号を再生して位置指令信号として油圧または空気圧シリンダを駆動してもティーチングは実現できる。
【0048】
次に、図7〜図10は本発明のパラレルメカニズムを動作させる第2の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態と同様な構成要素には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。この実施の形態では、駆動側部材3は、夫々の弾性ワイヤー1毎に設け、夫々の弾性ワイヤー1を進退及び捩り回転可能とするようにベース12に突設した複数の駆動装置13により構成している。この実施の形態では、弾性ワイヤー1は3本としており、これらの弾性ワイヤー1を、横断面方向から見て正三角形の各頂点に対応させた配置として、被駆動側部材2と、駆動側部材3としての3つの駆動装置13に固定している。そして第1の実施の形態と同様に、中間支持部材4には、弾性ワイヤー1を、前記配置を維持しつつ、軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する案内孔5を設けている。尚、図7(b)においては、図3(b)と同様に、支持部位7を模式的に描いている。
【0049】
以上の構成において、例えば図8(a)の状態から、全ての駆動装置13を等距離短縮させると、被駆動側部材2は全ての弾性ワイヤー1により引っ張られて、図8(b)に示すように姿勢が維持されたまま下降する。また逆に、図8(b)の状態において、全ての駆動装置13を等距離伸長させると、被駆動側部材2は全ての弾性ワイヤー1により押されて、図8(a)に示すように姿勢が維持されたまま上昇する。
【0050】
次に図9(a)の状態において、図9中の右側に示された駆動装置13を図中矢印に示すように短縮させると、図9中の右側の弾性ワイヤー1のみが被駆動側部材2の対応個所を引っ張るので、被駆動側部材2は図9(a)に示すように右側方向に傾斜して行き、更に短縮することにより、被駆動側部材2の傾斜角度を図9(b)に示すように、更に大きくすることができる。
【0051】
駆動装置13における伸縮速度が不変の場合において、所定の傾斜角度に至るまでの時間を短縮するために、右側の駆動装置13の短縮動作と共に、左側の駆動装置13を伸長動作することもできる。
【0052】
このように駆動側部材3の支点位置に対応して設けられた複数の駆動装置13において、伸長又は短縮させる駆動装置13を選択することにより、適宜の方向に被駆動側部材2を傾斜させることができる。
【0053】
次に、図10(a)に示す状態において、駆動側部材3を構成する3つの駆動装置13の全てを同一方向に同角度θ1だけ回転させると、全ての弾性ワイヤー1が回転方向に捩られる。このように全ての弾性ワイヤー1が同一方向に捩られるため、被駆動側部材2は、全ての弾性ワイヤー1に駆動されて、(b)に示すように、軸方向の回りに、角度θ2だけ回転する。尚、(b)中には、2点鎖線の円で囲んだ個所の拡大図を示している。
【0054】
この実施の形態においても、以上の各方向の動作は、組み合わせて行わせることができ、こうして、多自由度で柔軟な動きを行わせることができる。そして被駆動側部材2の位置及び姿勢の制御は、ティーチング等による制御方法により正確に行わせることができる。以下にこの制御方法の例を説明する。
【0055】
図7の駆動装置13の駆動部材3は伸縮および軸回りの回転である捩りの機能を持ったアクチュエータの伸縮・回転ロッドに相当する。それらの駆動方法には電動方式、油圧方式、空気圧方式およびそれらを組合せたハイブリッド方式などがある。通常はロッドの伸縮量を検出するための位置検出器、ロッドの回転角度を検出するための角度検出器を取り付けてロッドの位置制御および角度制御を行なっている。
【0056】
また位置センサ、角度センサだけでなく、ロッドにかかる圧縮・引張り力を検出する荷重センサまたは歪みゲージ、ロッドにかかる捩りトルクを検出するトルク検出器を取り付けて、荷重およびトルクのモニタまたは荷重制御、トルク制御を行うこともできる。
【0057】
以上の、位置・角度・荷重・トルクを検出する検出器を装備したアクチュエータで駆動装置13を構成し、位置制御および角度制御で、例えば、中立位置に静止させておく。次に、被駆動部材2が希望する位置・姿勢になるように駆動装置13の駆動部材3である各アクチュエータのロッド先端部を、手で押したり、引いたり、捩ることによって、押す方向や引く方向の力、そして捩りのトルクを加える。このとき各アクチュエータの荷重検出器およびトルク検出器は、手から加えられた荷重とトルクを検出すると同時に、この荷重信号とトルク信号を、それぞれ位置制御系および角度制御系への指令信号にする。するとアクチュエータのロッドは荷重およびトルク信号に応じて、伸縮および回転動作を行ない、手から加えられた力およびトルクに応じて伸縮動作・回転動作を行う。このとき人間の手はあたかもバネを介してロッドを動かしているように感じる。
【0058】
このときの各アクチュエータ伸縮ロッドの位置信号・角度信号を記憶装置に記憶しておく。そして、この位置信号・角度信号を位置指令信号・角度指令信号として再生し、位置制御系・角度制御系が構成された各アクチュエータを駆動すると、先に手動で動かした時の各駆動側部材3の動作を忠実かつ正確に再現させることができる。従って結果的に、被駆動側部材2の位置および姿勢の動きを正確かつ忠実に再現できる。以上によりプレイバック方式のティーチングが実現できる。
【0059】
尚、以上に説明した第1、第2の実施の形態においては、被駆動側部材2と駆動側部材3は円環状プレートとして構成すると共に、中間支持部材4は、軸方向の貫通穴6を有するスリーブ状に構成しているが、このような構成においては、貫通穴6や円環状プレートの穴を通して、センサやモータ用のケーブル又は別の目的のワイヤー等を挿通する手段として利用することができる。
【実施例1】
【0060】
図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)は、夫々本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態及び第2の実施の形態を利用して構成した密閉室内作業機構を示すものであり、この密閉室内作業機構は、密閉室14の壁15に中間支持部材4を取り付けて、密閉室14内に被駆動側部材2を、そして密閉室14外に駆動側部材3を配置した構成である。この場合、中間支持部材4は気密を保持可能な構成とし、弾性ワイヤー1を支持する案内孔5も気密を保持可能な構成としている。
【0061】
このような構成においては、密閉室14内を真空又は特殊環境に保持した状態で、例えば夫々の図の(b)に示すように、材料試験片16に対しての捩り試験を行うことができる。尚、図では捩り試験の場合を示したが、捩り試験だけでなく、図4、図5、図8及び図9に示す動きを利用して、引張・圧縮試験や曲げ試験を行うことができ、更に、これらを合成した試験を行うことができる。
【0062】
次に、図13(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムを構成する基本構成要素の他の実施の形態を示すもので、この実施の形態では、被駆動側部材2と駆動側部材3の各支点位置における弾性ワイヤー1の接続の配置と、中間支持部材4における弾性ワイヤー1の支持の配置を相似位置として構成している。即ち、(a)では、駆動側部材3と中間支持部材4における配置は同一配置とすると共に、被駆動側部材2の配置はそれらの配置よりも大きい相似配置としたものであり、また(b)では、被駆動側部材2と駆動側部材3における配置は同一配置とすると共に、中間支持部材4における配置はそれらの配置よりも小さい相似配置としたものである。
【0063】
これらの構成においては、中間支持部材4から被駆動側部材2又は駆動側部材3に至る弾性ワイヤー1が拡大又は縮小方向に曲がる部分が生じるため、それに起因して、例えば、軸方向の移動範囲が狭くなる等、動きが制限されることがあるが、これを許容する用途においては、適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のパラレルメカニズムは、上述したように剛性を有する複数の弾性ワイヤーを合理的に用いて構成することにより、従来のパラレルメカニズムでは不可能であった柔軟な動きを行えるようにした多自由度機構を提供するものであり、一般産業、試験機、航空宇宙、医療福祉、マイクロマシン、遊戯施設等に関する多分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 弾性ワイヤー
2 被駆動側部材
3 駆動側部材
4 中間支持部材
5 案内孔
6 貫通穴
7 支持部位
8 駆動機構(他のパラレルメカニズム)
9 駆動側部材
10 ジョイント
11 伸縮式アクチュエータ
12 ベース
13 駆動装置
14 密閉室
15 壁
16 材料試験片
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般産業、試験機、航空宇宙、医療福祉、マイクロマシン、遊戯施設等に関する多分野において利用可能な多自由度機構、特に、剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズムに関する。
【背景技術】
【0002】
多自由度機構としてのパラレルメカニズムは、フライトシミュレータや遊戯施設を始めとして、多くの分野において利用されており、その応用例は非常に多い。
【0003】
パラレルメカニズムとしては、ベースと、プレート等のエンドエフェクタとの間に、球面軸受けを有するジョイントを介して6個の伸縮式アクチュエータを配置して、6自由度の運動を行わせるようにした、いわゆるスチュアートプラットホームと称される伸縮型のパラレルメカニズムが広く知られている。この他、パラレルメカニズムの種類としては、回転式アクチュエータを用いた回転型、固定された直動アクチュエータを用いた直動型、複数の弾性ワイヤーを用いた弾性ワイヤー型、弾性ワイヤーとリンクによるハイブリッド型等が知られている。そして、これらに用いるアクチュエータの駆動方式としては、電動方式、油圧方式、空気圧方式など各種の方式が行われている。
【0004】
特許文献1は伸縮型パラレルメカニズムの従来例、特許文献2は回転式パラレルメカニズムの従来例、特許文献3は直動型パラレルメカニズムの従来例を示すものである。
【0005】
これらの型のパラレルメカニズムは、いずれも被駆動側部材に取り付けた複数の支点と、駆動側部材の複数の支点間の夫々に、剛体リンク又は支点間の距離を可変できる伸縮式アクチュエータを連結した構成であり、剛体リンク又は伸縮式アクチュエータで被駆動側部材の支点の位置を移動することにより、被駆動側部材の位置と姿勢を制御する方式である。
【0006】
また特許文献4は複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズムの従来例を示すもので、このパラレルメカニズムは、弾性ワイヤーに加えて剛体リンクを用いたハイブリット型である。このパラレルメカニズムでは、被駆動側部材に取り付けた複数の支点と、駆動側部材の複数の支点間に、弾性ワイヤーを連結し、駆動側部材のアクチュエータにより弾性ワイヤーの長さを変化させて、被駆動側部材の支点の位置を移動することにより、被駆動側部材の位置と姿勢を制御する方式である。この場合、被駆動側部材の姿勢を変更する各動作は、全ての弾性ワイヤーに張力が常に加わる状態を維持して行われるものである。
【0007】
一方、一つ又は剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いた従来の機構として、上述した特許文献4の他に、特許文献5、特許文献6に示されるような内視鏡における先端部の湾曲機構や、特許文献7に示されるようなロボットハンドの関節駆動機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−300290号公報
【特許文献2】特開2001−38551号公報
【特許文献3】特開2001−254798号公報
【特許文献4】特開2007−209572号公報
【特許文献5】特開2003−126024号公報
【特許文献6】特開2003−204926号公報
【特許文献7】特開2006−123149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1−3により例示しているパラレルメカニズム、即ち、被駆動側部材に取り付けた複数の支点と、駆動側部材の複数の支点間の夫々に、剛体リンク又は支点間の距離を可変できる伸縮式アクチュエータを連結した構成では、次のような課題を有している。
1.一般的に構造が複雑である。
2.各支点には球面軸受に代表される自由度の高い軸受が必要で、一般的に回転や滑りを伴うため構造が複雑になる。そのため潤滑の問題やガタの問題や耐久性の問題が発生しやすく、費用も高価になる。
3.被駆動側部材の姿勢の自由度(一般的には6自由度)を得るための剛体リンク又は伸縮式アクチュエータの数は数学的に決まり、一般的には6本であり、そのため6軸モーションとも称される。それ以下の数では姿勢を保てず、また6本以上では冗長な機構となり、制御が各段に難しくなる。
4.駆動機構である剛体リンクや伸縮式アクチュエータを含め、メカニズム全体としての柔軟性がない。
【0010】
一方、特許文献4−7により例示している弾性ワイヤーを用いた機構は、パラレルメカニズムにしても、シリアルメカニズムにしても、柔軟なメカニズム又は構造体を構成することができるが、被駆動側部材の位置と姿勢の制御は、弾性ワイヤーを牽引・弛緩することにより各支点間の距離を変える方式であり、弾性ワイヤーの引張方向の剛性は利用しているが、圧縮、曲げ及び捩り方向の剛性は利用しておらず、従って弾性ワイヤーのみでは空間的自立性がない。
【0011】
そこで本発明では、以上の課題を解決し、複数の弾性ワイヤーのみで空間的な位置・姿勢を保持して自立し、弾性ワイヤーの引張り、圧縮、曲げ及び捩り方向の剛性を利用して柔軟な動きを行えるパラレルメカニズムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上記課題を解決するために、剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤーの複数本が、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置において、同一配置となるように接続されており、また前記被駆動側部材と前記駆動側部材間には、前記弾性ワイヤーを、横断面方向から見て前記配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材が設けられている構成のパラレルメカニズムを提案する。
【0013】
また本発明では、上記課題を解決するために、剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤーの複数本が、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置において、相似配置となるように接続されており、また前記被駆動側部材と前記駆動側部材間には、前記弾性ワイヤーを、横断面方向から見て前記相似配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材が設けられている構成のパラレルメカニズムを提案する。
【0014】
そして本発明では、上記構成において、駆動側部材は、他のパラレルメカニズムの被駆動側部材として構成した、剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズムを提案する。
【0015】
また本発明では、上記の構成において、駆動側部材は、夫々の弾性ワイヤー毎に設け、弾性ワイヤーを進退及び捩り回転可能とした複数の駆動装置により構成した、剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズムを提案する。
【0016】
また本発明では、以上の構成にパラレルメカニズムの中間支持部材を密閉室の壁に気密的に取り付けて、被駆動側部材を密閉室内に位置させると共に、駆動側部材を密閉室外に位置させた構成の密閉室内作業機構を提案する。
【0017】
そして本発明では、上記構成において、密閉室は真空又は特殊環境の材料試験室とした密閉室内作業機構を提案する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパラレルメカニズムは、中間支持部材を、被駆動側部材と駆動側部材間に配置した適宜の支持部位に取り付けて使用する。この状態において、被駆動側部材は、駆動側部材から中間支持部材を経て延びている弾性ワイヤーの剛性によって自立的に位置と姿勢が維持される。
【0019】
駆動側部材を、他のパラレルメカニズムの被駆動側部材として構成した場合において、この駆動側部材を、初期状態から、その姿勢を維持しながら軸方向、即ち、弾性ワイヤーの延びている方向に移動させると、全ての弾性ワイヤーが、中間支持部材に支持されて前進又は後退方向に等距離移動するので、被駆動側部材は、初期状態の姿勢が維持されたまま前進又は後退する。
【0020】
次に、初期状態において、駆動側部材を適宜の方向に傾斜させると、この傾斜により、駆動側部材側において中間支持部材までの距離が近くなる場合には、対応する弾性ワイヤーは被駆動側部材を押す方向に作用し、一方、傾斜により、駆動側部材側において中間支持部材からの距離が遠くなる場合には、対応する弾性ワイヤーは被駆動側部材を引く方向に作用するため、被駆動側部材は、駆動側部材の傾斜方向と同方向に傾斜する。
【0021】
次に、初期状態において、駆動側部材を軸方向の回りに適宜角度回転させると、全ての弾性ワイヤーが回転軌跡に沿って移動し、これにより全ての弾性ワイヤーが回転方向に捩られる。このように全ての弾性ワイヤーが同一方向に捩られるため、被駆動側部材は、全ての弾性ワイヤーに駆動されて、軸方向の回りに、駆動側部材と同方向に同角度回転する。
【0022】
以上の各方向の動作は、駆動側部材として、夫々の弾性ワイヤー毎に設け、弾性ワイヤーを進退及び捩り回転可能とした複数の駆動装置により構成した場合においても同様に行うことができる。
【0023】
また、以上の各方向の動作は、組み合わせて行わせることができ、これらにより多自由度で柔軟な動きを行わせることができる。そして柔軟な動きは、剛性を有する弾性ワイヤーによって実現しており、弾性ワイヤーと、駆動側部材及び被駆動側部材とは単に固定すれば良く、相対回転や相対滑りがないので、軸受けは不要である。
【0024】
以上のことから本発明では、従来のパラレルメカニズムと比較して構造が非常に簡素化される。
【0025】
また従来の多自由度のパラレルメカニズムで必要な球面軸受等の複雑な軸受要素は不要となるため、この点においても構造の簡素化に寄与し、コストを低減すると共に、ガタがなく、耐久性も高い。
【0026】
本発明において、弾性ワイヤーの数は、2本以上適宜であり、数を増やすことにより、より剛性を高めることができる。
【0027】
被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置における複数の弾性ワイヤーの配置は適宜であり、設計上の自由度が高い。
【0028】
本発明のパラレルメカニズムでは、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置における弾性ワイヤーの接続の配置と、中間支持部材における弾性ワイヤーの支持の配置は、同一配置とすることが基本であるが、この同一配置の場合と比較して、動きが制限されることを許容する場合において相似配置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明のパラレルメカニズムを構成する基本構成要素の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明のパラレルメカニズムを構成する基本構成要素の実施の形態を、他の構成要素と共に示す模式的正面図である。
【図3】図3は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態を示すもので、(a)は模式的正面図、(b)は模式的斜視図である。
【図4】図4(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態の第1の動作を示す模式的正面図である。
【図5】図5(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態の第2の動作を示す模式的正面図である。
【図6】図6(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態の第3の動作を示す模式的正面図であり、また(c)、(d)は夫々(a)、(b)を上方から見た模式的平面図である。
【図7】図7は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態を示すもので、(a)は模式的正面図、(b)は模式的斜視図、(c)は(a)を上方から見た模式的平面図である。
【図8】図8(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態の第1の動作を示す模式的正面図である。
【図9】図9(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態の第2の動作を示す模式的正面図である。
【図10】図10(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態の第3の動作を示す模式的正面図であり、また(c)、(d)は夫々(a)、(b)を上方から見た模式的平面図である。
【図11】図11(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態を利用して構成した密閉室内作業機構の構成及び動作を示す一部断面模式的正面図である。
【図12】図12(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムの第2の実施の形態を利用して構成した密閉室内作業機構の構成及び動作を示す一部断面模式的正面図である。
【図13】図13(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムを構成する基本構成要素の他の実施の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に本発明のパラレルメカニズムの実施の形態を添付図面を参照して説明する。
まず図1は本発明に係るパラレルメカニズムを構成する基本構成要素を示すもので、この基本構成要素は、剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤー1の複数本が、被駆動側部材2と駆動側部材3の各支点位置において、同一配置となるように接続されている。被駆動側部材2と駆動側部材3の各支点に対しての弾性ワイヤー1の接続は、単なる固定接続であり、相対回転や相対滑りを設ける必要はない。このため従来のパラレルメカニズムでは必要であった球面軸受等の複雑な構成の軸受は不要である。本発明の基本構成要素は、以上の構成に加えて、被駆動側部材2と駆動側部材3間に、前記弾性ワイヤー1を、横断面方向から見て前記配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材4を設けた構成である。
【0031】
本発明において、弾性ワイヤー1は、予め設定した荷重を自立的に支持可能な剛性、即ち、引張り、圧縮、曲げ及び捩り方向の剛性を有し、円形断面の単線であり、材質は、鉄系、非鉄系の金属や、合成樹脂、複合材料等の非金属等、適宜に選択することができる。
【0032】
この実施の形態においては、弾性ワイヤー1は5本としており、これらの弾性ワイヤー1を、横断面方向から見て正五角形の各頂点に対応させた配置として、被駆動側部材2と駆動側部材3に固定すると共に、中間支持部材4には、弾性ワイヤー1を、前記配置を維持しつつ、軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する部材として案内孔5を設けている。
【0033】
中間支持部材4は、上述したように、弾性ワイヤー1を、前記配置を維持しつつ、軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持することができれば、直線状に構成することは勿論であるが、直線状でなく、曲がった構成とすることもできる。また中間支持部材4は、剛体により構成することは勿論であるが、可撓性を有する材質により構成することもできるものである。
【0034】
この実施の形態において、被駆動側部材2と駆動側部材3は円環状プレートとして構成しているが、その形状等は適宜である。また中間支持部材4は、軸方向の貫通穴6を有するスリーブ状に構成しているが、貫通穴6を有しない適宜の構成とすることもできる。
【0035】
本発明のパラレルメカニズムでは、このような基本構成要素において、中間支持部材4を被駆動側部材2と駆動側部材3間に配置した適宜の支持部位7に取り付けて使用し、駆動側部材3を、適宜の駆動機構8により駆動するようにして、パラレルメカニズムとして動作させることができる。尚、駆動機構8は手動でも良く、被駆動側部材2の動きを見ながら、被駆動側部材2が、所望の位置・姿勢になるように駆動側部材3を手動で動かすようにすることも可能である。
【0036】
次に、本発明のパラレルメカニズムを動作させる具体的な実施の形態を説明すると、まず図3〜図6は第1の実施の形態を示すもので、この実施の形態では、駆動側部材3は、他のパラレルメカニズム8の被駆動側部材として構成したものであり、このパラレルメカニズム8が上述した駆動機構に相当するものである。
【0037】
このパラレルメカニズム8は、従来技術として説明したスチュアートプラットホームと称される伸縮型のパラレルメカニズムであり、駆動側部材9と、被駆動側部材、即ち、本発明のパラレルメカニズムにおける駆動側部材3との間に、球面軸受けを有するジョイント10を介して6個の伸縮式アクチュエータ11を配置して、6自由度の運動を行わせるようにしたものである。このパラレルメカニズムの構成や動作は周知であるので、詳細な説明は省略する。尚、図3(b)においては、支持部位7を模式的に描いている。
【0038】
以上の構成において、他のパラレルメカニズム8により、駆動側部材3を、図4(a)に示す状態から、(b)に示すように、その姿勢を維持しながら軸方向、即ち、図中下方に移動させると、全ての弾性ワイヤー1が、中間支持部材4の案内孔5に支持されて下降するので、被駆動側部材2は、(a)の姿勢が維持されたまま下降する。また逆の動作により、(b)の状態から(a)の状態まで動作させることができる。
【0039】
次に図5の(a)に示す状態において、他のパラレルメカニズム8により駆動側部材3を、(b)に示すように傾斜させると、傾斜により、駆動側部材3側において中間支持部材4までの距離が近くなる側に対応する弾性ワイヤー1、即ち、図中左側の弾性ワイヤー1は被駆動側部材2の対応個所を押す方向に作用する。一方、傾斜により、駆動側部材3側において中間支持部材4からの距離が遠くなる側に対応する弾性ワイヤー1、即ち、図中右側の弾性ワイヤー1は被駆動側部材2の対応個所を引く方向に作用するため、被駆動側部材2は、駆動側部材3の傾斜方向と同方向に傾斜する。
【0040】
次に図6の(a)に示す状態において、駆動側部材3を軸方向の回りに適宜角度θ回転させると、全ての弾性ワイヤー1が回転軌跡に沿って移動し、これにより全ての弾性ワイヤー1が回転方向に捩られる。このように全ての弾性ワイヤー1が同一方向に捩られるため、被駆動側部材2は、全ての弾性ワイヤー1に駆動されて、(b)に示すように軸方向の回りに、駆動側部材3と同方向に同角度θだけ回転する。尚、(b)中には、2点鎖線の円で囲んだ個所の拡大図を示している。
【0041】
以上の各方向の動作は、組み合わせて行わせることができ、こうして、多自由度で柔軟な動きを行わせることができる。
【0042】
そして、本発明においては、被駆動側部材2の位置及び姿勢の制御は、ティーチング等による制御方法により正確に行わせることができる。以下にこの制御方法の例を説明する。
【0043】
まず、図3の駆動機構8のパラレルメカニズムに使用される6本の伸縮式アクチュエータ11は電動方式、油圧方式、空気圧方式およびそれらを組合せたハイブリッド方式などがある。通常、これらのアクチュエータ11には伸縮ロッドの変位量を検出するための位置検出器を取り付けて、位置信号をフィードバック信号とする位置制御系が構成されている。そしてコンピュータからの各アクチュエータ11への位置指令信号に追従して各アクチュエータの伸縮ロッドが駆動される。その結果、駆動部材3の姿勢制御が正確に行われ、最終的には被駆動側部材2の位置および姿勢が正確に制御される。
【0044】
また位置検出器だけでなく、さらに各アクチュエータ11の伸縮ロッドに、ロッドに加わる荷重を検出する荷重検出器を取り付けるか、または歪みゲージを貼って荷重を検出し、この荷重信号を検出して各アクチュエータ11の荷重モニタまたは荷重制御を行うこともできる。
【0045】
以上の位置および荷重を検出する検出器を装備した各アクチュエータ11によりパラレルメカニズム8の位置制御系を構成し、例えば、中立位置に静止させる。次に被駆動部材2が希望する動きや姿勢をとるように、駆動部材3を人間の手により希望する方向に動くような力を加える。このとき、各アクチュエータ11には、夫々押しまたは引きの荷重が加わる。この荷重を荷重検出器または歪みゲージにより検出して、同時に位置制御系への変位指令信号とする。すると各アクチュエータ11の伸縮ロッドは押しまたは引きの荷重に対応して短縮方向または伸長方向に変位する。このとき人間の手はあたかもバネを介して駆動部材3を動かしているように感じる。
【0046】
このときの各アクチュエータ11の伸縮ロッドの位置信号を記憶装置に記憶しておく。そして、この位置信号を位置指令信号として再生し、位置制御系が構成された各アクチュエータ11を駆動すると、先に手動で動かした時の駆動側部材3の動作を忠実、且つ正確に再現させることができる。従って結果的に、被駆動側部材2の位置および姿勢の動きを正確かつ忠実に再現できる。以上によりプレイバック方式のティーチングが実現できる。
【0047】
以上の方法では、ティーチングを行う際に伸縮アクチュエータ11の荷重信号を使って伸縮ロッドを動かしているが、油圧または空気圧シリンダの場合には油圧または空気圧をゼロにすればロッドはほとんど抵抗なく動くので、この状態で駆動部材3を手動で動かして、そのときの各伸縮アクチュエータ11の位置信号を記憶装置に記憶しておき、この位置信号を再生して位置指令信号として油圧または空気圧シリンダを駆動してもティーチングは実現できる。
【0048】
次に、図7〜図10は本発明のパラレルメカニズムを動作させる第2の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態と同様な構成要素には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。この実施の形態では、駆動側部材3は、夫々の弾性ワイヤー1毎に設け、夫々の弾性ワイヤー1を進退及び捩り回転可能とするようにベース12に突設した複数の駆動装置13により構成している。この実施の形態では、弾性ワイヤー1は3本としており、これらの弾性ワイヤー1を、横断面方向から見て正三角形の各頂点に対応させた配置として、被駆動側部材2と、駆動側部材3としての3つの駆動装置13に固定している。そして第1の実施の形態と同様に、中間支持部材4には、弾性ワイヤー1を、前記配置を維持しつつ、軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する案内孔5を設けている。尚、図7(b)においては、図3(b)と同様に、支持部位7を模式的に描いている。
【0049】
以上の構成において、例えば図8(a)の状態から、全ての駆動装置13を等距離短縮させると、被駆動側部材2は全ての弾性ワイヤー1により引っ張られて、図8(b)に示すように姿勢が維持されたまま下降する。また逆に、図8(b)の状態において、全ての駆動装置13を等距離伸長させると、被駆動側部材2は全ての弾性ワイヤー1により押されて、図8(a)に示すように姿勢が維持されたまま上昇する。
【0050】
次に図9(a)の状態において、図9中の右側に示された駆動装置13を図中矢印に示すように短縮させると、図9中の右側の弾性ワイヤー1のみが被駆動側部材2の対応個所を引っ張るので、被駆動側部材2は図9(a)に示すように右側方向に傾斜して行き、更に短縮することにより、被駆動側部材2の傾斜角度を図9(b)に示すように、更に大きくすることができる。
【0051】
駆動装置13における伸縮速度が不変の場合において、所定の傾斜角度に至るまでの時間を短縮するために、右側の駆動装置13の短縮動作と共に、左側の駆動装置13を伸長動作することもできる。
【0052】
このように駆動側部材3の支点位置に対応して設けられた複数の駆動装置13において、伸長又は短縮させる駆動装置13を選択することにより、適宜の方向に被駆動側部材2を傾斜させることができる。
【0053】
次に、図10(a)に示す状態において、駆動側部材3を構成する3つの駆動装置13の全てを同一方向に同角度θ1だけ回転させると、全ての弾性ワイヤー1が回転方向に捩られる。このように全ての弾性ワイヤー1が同一方向に捩られるため、被駆動側部材2は、全ての弾性ワイヤー1に駆動されて、(b)に示すように、軸方向の回りに、角度θ2だけ回転する。尚、(b)中には、2点鎖線の円で囲んだ個所の拡大図を示している。
【0054】
この実施の形態においても、以上の各方向の動作は、組み合わせて行わせることができ、こうして、多自由度で柔軟な動きを行わせることができる。そして被駆動側部材2の位置及び姿勢の制御は、ティーチング等による制御方法により正確に行わせることができる。以下にこの制御方法の例を説明する。
【0055】
図7の駆動装置13の駆動部材3は伸縮および軸回りの回転である捩りの機能を持ったアクチュエータの伸縮・回転ロッドに相当する。それらの駆動方法には電動方式、油圧方式、空気圧方式およびそれらを組合せたハイブリッド方式などがある。通常はロッドの伸縮量を検出するための位置検出器、ロッドの回転角度を検出するための角度検出器を取り付けてロッドの位置制御および角度制御を行なっている。
【0056】
また位置センサ、角度センサだけでなく、ロッドにかかる圧縮・引張り力を検出する荷重センサまたは歪みゲージ、ロッドにかかる捩りトルクを検出するトルク検出器を取り付けて、荷重およびトルクのモニタまたは荷重制御、トルク制御を行うこともできる。
【0057】
以上の、位置・角度・荷重・トルクを検出する検出器を装備したアクチュエータで駆動装置13を構成し、位置制御および角度制御で、例えば、中立位置に静止させておく。次に、被駆動部材2が希望する位置・姿勢になるように駆動装置13の駆動部材3である各アクチュエータのロッド先端部を、手で押したり、引いたり、捩ることによって、押す方向や引く方向の力、そして捩りのトルクを加える。このとき各アクチュエータの荷重検出器およびトルク検出器は、手から加えられた荷重とトルクを検出すると同時に、この荷重信号とトルク信号を、それぞれ位置制御系および角度制御系への指令信号にする。するとアクチュエータのロッドは荷重およびトルク信号に応じて、伸縮および回転動作を行ない、手から加えられた力およびトルクに応じて伸縮動作・回転動作を行う。このとき人間の手はあたかもバネを介してロッドを動かしているように感じる。
【0058】
このときの各アクチュエータ伸縮ロッドの位置信号・角度信号を記憶装置に記憶しておく。そして、この位置信号・角度信号を位置指令信号・角度指令信号として再生し、位置制御系・角度制御系が構成された各アクチュエータを駆動すると、先に手動で動かした時の各駆動側部材3の動作を忠実かつ正確に再現させることができる。従って結果的に、被駆動側部材2の位置および姿勢の動きを正確かつ忠実に再現できる。以上によりプレイバック方式のティーチングが実現できる。
【0059】
尚、以上に説明した第1、第2の実施の形態においては、被駆動側部材2と駆動側部材3は円環状プレートとして構成すると共に、中間支持部材4は、軸方向の貫通穴6を有するスリーブ状に構成しているが、このような構成においては、貫通穴6や円環状プレートの穴を通して、センサやモータ用のケーブル又は別の目的のワイヤー等を挿通する手段として利用することができる。
【実施例1】
【0060】
図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)は、夫々本発明のパラレルメカニズムの第1の実施の形態及び第2の実施の形態を利用して構成した密閉室内作業機構を示すものであり、この密閉室内作業機構は、密閉室14の壁15に中間支持部材4を取り付けて、密閉室14内に被駆動側部材2を、そして密閉室14外に駆動側部材3を配置した構成である。この場合、中間支持部材4は気密を保持可能な構成とし、弾性ワイヤー1を支持する案内孔5も気密を保持可能な構成としている。
【0061】
このような構成においては、密閉室14内を真空又は特殊環境に保持した状態で、例えば夫々の図の(b)に示すように、材料試験片16に対しての捩り試験を行うことができる。尚、図では捩り試験の場合を示したが、捩り試験だけでなく、図4、図5、図8及び図9に示す動きを利用して、引張・圧縮試験や曲げ試験を行うことができ、更に、これらを合成した試験を行うことができる。
【0062】
次に、図13(a)、(b)は本発明のパラレルメカニズムを構成する基本構成要素の他の実施の形態を示すもので、この実施の形態では、被駆動側部材2と駆動側部材3の各支点位置における弾性ワイヤー1の接続の配置と、中間支持部材4における弾性ワイヤー1の支持の配置を相似位置として構成している。即ち、(a)では、駆動側部材3と中間支持部材4における配置は同一配置とすると共に、被駆動側部材2の配置はそれらの配置よりも大きい相似配置としたものであり、また(b)では、被駆動側部材2と駆動側部材3における配置は同一配置とすると共に、中間支持部材4における配置はそれらの配置よりも小さい相似配置としたものである。
【0063】
これらの構成においては、中間支持部材4から被駆動側部材2又は駆動側部材3に至る弾性ワイヤー1が拡大又は縮小方向に曲がる部分が生じるため、それに起因して、例えば、軸方向の移動範囲が狭くなる等、動きが制限されることがあるが、これを許容する用途においては、適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のパラレルメカニズムは、上述したように剛性を有する複数の弾性ワイヤーを合理的に用いて構成することにより、従来のパラレルメカニズムでは不可能であった柔軟な動きを行えるようにした多自由度機構を提供するものであり、一般産業、試験機、航空宇宙、医療福祉、マイクロマシン、遊戯施設等に関する多分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 弾性ワイヤー
2 被駆動側部材
3 駆動側部材
4 中間支持部材
5 案内孔
6 貫通穴
7 支持部位
8 駆動機構(他のパラレルメカニズム)
9 駆動側部材
10 ジョイント
11 伸縮式アクチュエータ
12 ベース
13 駆動装置
14 密閉室
15 壁
16 材料試験片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤーの複数本が、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置において、同一配置となるように接続されており、また前記被駆動側部材と前記駆動側部材間には、前記弾性ワイヤーを、横断面方向から見て前記配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材が設けられていることを特徴とする剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム。
【請求項2】
剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤーの複数本が、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置において、相似配置となるように接続されており、また前記被駆動側部材と前記駆動側部材間には、前記弾性ワイヤーを、横断面方向から見て前記相似配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材が設けられていることを特徴とする剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム。
【請求項3】
駆動側部材は、他のパラレルメカニズムの被駆動側部材として構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム。
【請求項4】
駆動側部材は、夫々の弾性ワイヤー毎に設け、弾性ワイヤーを進退及び捩り回転可能とした複数の駆動装置により構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかのパラレルメカニズムの中間支持部材を密閉室の壁に気密的に取り付けて、被駆動側部材を密閉室内に位置させると共に、駆動側部材を密閉室外に位置させたことを特徴とする密閉室内作業機構。
【請求項6】
密閉室は真空又は特殊環境の材料試験室であることを特徴とする請求項5に記載の密閉室内作業機構。
【請求項1】
剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤーの複数本が、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置において、同一配置となるように接続されており、また前記被駆動側部材と前記駆動側部材間には、前記弾性ワイヤーを、横断面方向から見て前記配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材が設けられていることを特徴とする剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム。
【請求項2】
剛性を有し、円形断面で単線の弾性ワイヤーの複数本が、被駆動側部材と駆動側部材の各支点位置において、相似配置となるように接続されており、また前記被駆動側部材と前記駆動側部材間には、前記弾性ワイヤーを、横断面方向から見て前記相似配置を維持しつつ軸方向に移動及び軸方向の回りに回転可能に支持する中間支持部材が設けられていることを特徴とする剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム。
【請求項3】
駆動側部材は、他のパラレルメカニズムの被駆動側部材として構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム。
【請求項4】
駆動側部材は、夫々の弾性ワイヤー毎に設け、弾性ワイヤーを進退及び捩り回転可能とした複数の駆動装置により構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の剛性を有する複数の弾性ワイヤーを用いたパラレルメカニズム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかのパラレルメカニズムの中間支持部材を密閉室の壁に気密的に取り付けて、被駆動側部材を密閉室内に位置させると共に、駆動側部材を密閉室外に位置させたことを特徴とする密閉室内作業機構。
【請求項6】
密閉室は真空又は特殊環境の材料試験室であることを特徴とする請求項5に記載の密閉室内作業機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−96337(P2012−96337A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248098(P2010−248098)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(510294047)有限会社流体サーボ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(510294047)有限会社流体サーボ (1)
【Fターム(参考)】
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