説明

剥離工程を有する半導体装置の作製方法及び半導体装置

【課題】剥離工程を有する半導体装置の作製方法において、剥離工程を簡略化する。
【解決手段】基板上に金属膜を有する層を形成し、金属膜を有する層上にトランジスタを有する層を形成し、トランジスタを有する層上に樹脂材料を塗布し、第1の加熱処理温度で加熱処理をおこなうことで樹脂材料を硬化させて樹脂層を形成し、第1の加熱処理温度よりも高い第2の加熱処理温度で加熱処理をおこなって基板からトランジスタを有する層を剥離させ、第2の加熱処理温度よりも高い第3の加熱処理温度で加熱処理をおこなってトランジスタを有する層から樹脂層を剥離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の作製方法、及びその方法を適用して作製された半導体装置に関する。特に、基板からトランジスタを有する層を剥離する方法に関する。
【0002】
本明細書において、半導体装置とは、上記トランジスタを有する層を用いた、メモリ、CPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサのような集積回路、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、その他の部品又は製品を含むものとする。RFIDタグは集積回路を有し、RFIDタグのことを無線ICタグとも称する。
【背景技術】
【0003】
トランジスタの一種である薄膜トランジスタを有する層を基板から剥離する方法として、特許文献1に示すような方法がある。この方法の概要は次のとおりである。薄膜トランジスタを有する層と基板との間に、タングステンなどの金属膜とスパッタ法などにより形成された酸化珪素膜を設ける。そしてその金属膜とその酸化珪素膜との界面に金属酸化物が形成されるように加熱処理をおこなう。それから上記薄膜トランジスタを有する層に支持体を接着させる。さらに、その支持体が接着した薄膜トランジスタを有する層を、上記基板から物理的手段により剥離する。剥離した薄膜トランジスタを有する層をフレキシブルなフィルム基板に貼り付け、最後に、上記支持体を除去する。
【特許文献1】特開2004−221561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の剥離方法は、工程数が多いため、必ずしも工業的な量産に適しているとはいえない。したがって、剥離方法を従来よりも簡略化することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する発明の要旨は、基板上に剥離層を形成し剥離層上にトランジスタを有する層を作製した後に樹脂層を形成する。その後、その樹脂層が形成されたトランジスタを有する層を加熱処理によって上記基板から剥離し、上記樹脂層を加熱処理によってそのトランジスタを有する層から剥離するという方法である。これらの剥離は、加熱処理によって完全になされるのが望ましいが、必ずしも完全になされなくてもよい。加熱処理によって、当該加熱処理前と比較してこれらの剥離が助長されることが必要である。
【0006】
すなわち、本明細書に開示する発明の一つは、基板上に金属膜を有する層を形成し、前記金属膜を有する層上にトランジスタを有する層を形成し、前記トランジスタを有する層上に樹脂材料を塗布し、第1の加熱処理温度で加熱処理をおこなうことで前記樹脂材料を硬化させて樹脂層を形成し、前記第1の加熱処理温度よりも高い第2の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記基板から前記トランジスタを有する層を剥離させ、前記第2の加熱処理温度よりも高い第3の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記トランジスタを有する層から前記樹脂層を剥離させることを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0007】
また、本明細書に開示する発明の他の一つは、基板上に金属膜を有する層を形成し、前記金属膜を有する層上にトランジスタを有する層を形成し、前記トランジスタを有する層上に樹脂材料を塗布し、第1の加熱処理温度で加熱処理をおこなうことで前記樹脂材料を硬化させて樹脂層を形成し、前記トランジスタが前記金属膜を有する層上に設けられていない領域で前記金属膜を有する層の一部を露出させ、加熱装置において前記第1の加熱処理温度よりも高い第2の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記基板から前記トランジスタを有する層を剥離させ、前記加熱装置から取り出さずに、前記第2の加熱処理温度よりも高い第3の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記トランジスタを有する層から前記樹脂層を剥離させることを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0008】
また、本明細書に開示する発明の他の一つは、基板上に金属膜を有する層を形成し、前記金属膜を有する層上にトランジスタを有する層を形成し、前記トランジスタが前記金属膜を有する層上に設けられていない領域で前記金属膜を有する層の一部を露出させ、前記金属膜を有する層の一部が露出した領域を覆わないように前記トランジスタを有する層上に樹脂材料を塗布し、加熱装置において第1の加熱処理温度で加熱処理をおこなうことで前記樹脂材料を硬化させて樹脂層を形成し、前記加熱装置から取り出さずに、前記第1の加熱処理温度よりも高い第2の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記基板から前記トランジスタを有する層を剥離させ、前記加熱装置から取り出さずに、前記第2の加熱処理温度よりも高い第3の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記トランジスタを有する層から前記樹脂層を剥離させることを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0009】
半導体装置としてRFIDタグ(無線ICタグ)を作製する場合、基板上に金属膜を有する層を介してトランジスタを有する層を形成し、前記トランジスタを有する層のトランジスタと電気的に接続するようにアンテナを形成し、前記トランジスタを有する層及び前記アンテナ上に樹脂層を形成し、前記トランジスタを有する層及び前記アンテナを前記基板から剥離し、さらに前記樹脂層を剥離することによってRFIDタグを作製することができる。
【0010】
また、基板上に金属膜を有する層を介してトランジスタを有する層を形成し、その後アンテナを形成せずに、前記トランジスタを有する層上に樹脂層を形成し、前記トランジスタを有する層を前記基板から剥離し、さらに前記樹脂層を剥離し、剥離した前記トランジスタを有する層のトランジスタと他の基板上に形成され部品として用意されたアンテナ(フィルム状が好ましい)とを電気的に接続させることによって、RFIDタグ(無線ICタグ)を作製することができる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に開示する発明により、基板からトランジスタを有する層を剥離する際、物理的手段を用いる必要がない。物理的手段とは、例えば、人間の手、ノズルから吹付けられるガスの風圧、超音波などを利用して外部から与える衝撃(ストレス)のことをいう。従来よりも工程を簡略にでき、工程数を削減することができるため歩溜りが向上する。また、基板と樹脂層をトランジスタ(特に薄膜トランジスタ)を有する層から剥離することによって、RFIDタグなどの半導体装置の薄膜化を達成することができる。さらに、剥離した基板は再利用することができるので、製造コストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
図1(A)に示すように、基板100を用意し、その上に剥離層101を設ける。具体的に基板100は、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレスなどの金属基板または半導体基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。基板100を、機械的研磨、CMP(Chemical Mechanical Polishing)、などの研磨法により薄くし、又は平坦化しておいても良い。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記ガラス基板、石英基板、セラミック基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば、基板100として用いることが可能である。
【0014】
剥離層101は、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選択された元素を主成分とする金属膜で形成される。本実施の形態では、剥離層101としてタングステンを主成分とする金属膜を用いる。なお、金属膜の形成方法はスパッタ法、CVD法などによって形成することができ、本実施の形態ではスパッタ法を用いて形成する。
【0015】
金属膜上に金属酸化物を形成し、これら金属膜と金属酸化物を剥離層101としてもよい。金属酸化物は、例えば薄膜状に形成されたものである。剥離層101を金属膜を有する層と換言することができる。金属膜がタングステンを主成分とするものであるとき、金属酸化物は酸化タングステンである。酸化タングステンはWOで表され、xは2〜3である。xが2の場合(WO)、xが2.5の場合(W)、xが2.75の場合(W11)、xが3の場合(WO)などがある。酸化タングステンWOを形成するにあたり、xの値は上記範囲であればよい。他にも金属膜とその上に形成する金属酸化物の組み合わせとして、モリブデンと酸化モリブデン、ニオブと酸化ニオブ、チタンと酸化チタンなどが挙げられる。
【0016】
上記金属酸化物は、金属膜に対するプラズマ酸化により形成することができる。プラズマ酸化の際、電子密度が1×1011cm−3以上、例えば1×1012cm−3以上1×1013cm−3以下、電子温度が1.5eV以下、例えば0.5eV以上1.0eV以下という、高電子密度かつ低電子温度のプラズマを無磁場で生成しうる装置を用いることによって、プラズマダメージが抑制された高品質の金属酸化物を得ることができる。金属膜の形成と、金属酸化物の形成を、連続的におこなってもよい。その際、スパッタ用又はCVD用のチャンバとプラズマ処理用のチャンバを備えた、マルチチャンバ装置を用いることができる。プラズマ酸化は、酸素を含むガスから生成させたプラズマに金属膜表面をさらすことによって行われる。NOプラズマ処理、すなわちNOを含むガスから生成させたプラズマに金属膜表面をさらすことによって形成された被膜を用いて剥離層101を構成してもよい。
【0017】
図1(A)においては、基板100上に直に剥離層101を形成しているが、基板100と剥離層101の間に、酸化珪素、窒化珪素、窒素を含む酸化珪素(シリコンオキシナイトライド)、酸素を含む窒化珪素などの絶縁膜により、図示しない下地層を形成してもよい。特に、基板からの汚染が懸念される場合には、下地層を形成するのが好ましい。基板100としてガラス基板又は石英基板を用いた場合、上記高電子密度かつ低電子温度のプラズマを無磁場で生成しうる装置によって、基板100の表面に対しプラズマ酸化又はプラズマ窒化をおこなって下地層を形成することができる。CVD法によって上記絶縁膜を形成し、これに対し、上記高電子密度かつ低電子温度のプラズマを無磁場で生成しうる装置によって、プラズマ酸化又はプラズマ窒化をおこなって下地層を形成してもよい。上記絶縁膜の形成と、プラズマ酸化又はプラズマ窒化を、連続的におこなってもよい。その際、CVD用のチャンバとプラズマ処理用のチャンバを備えた、マルチチャンバ装置を用いることができる。
【0018】
剥離層101上に、必要に応じて絶縁層102を設ける。絶縁層102は、酸化珪素、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素、窒素を含む酸化珪素(シリコンオキシナイトライド)などを、例えばCVD法によって形成すればよい。
【0019】
次に、剥離層101上(絶縁層102を形成する場合は絶縁層102上)にトランジスタを有する層103を形成する。本実施の形態では、トランジスタとして薄膜トランジスタを用いる。トランジスタを有する層103は、薄膜トランジスタ、ゲート電極から延びる配線、ソース領域又はドレイン領域に接続された配線、層間絶縁膜を含むものとする。図1(B)にトランジスタを有する層103の例を示す。この例では、トランジスタを有する層103は、ゲート電極の側面に酸化珪素などで形成されたサイドウォール、及び窒化珪素などの無機絶縁物からなるパッシべーション膜(ゲート電極、ソース領域及びドレイン領域を覆うように設けられている保護膜)をさらに有する。薄膜トランジスタは、図1(B)に示す構造に限定されず、例えば、2つ以上の薄膜トランジスタを直列接続させたマルチゲート構造、チャネル領域を含む活性層の上及び下に絶縁膜を介してゲート電極を設けた構造、チャネル領域を含む活性層と基板との間にゲート絶縁膜を介してゲート電極を設けた逆スタガー型でもよい。また、作製する半導体装置に対応して、Nチャネル型、Pチャネル型、それらを組み合わせたもの、いずれの薄膜トランジスタでもよい。
【0020】
図1(B)に示す薄膜トランジスタ104a、104b、104c、104d及び104eのゲート電極は、少なくとも2層で構成される。例えば、これらのゲート電極の最下層を導電性を有する金属窒化物(窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステンなど)を主成分とする層、上層を高融点金属(チタン、モリブデン、タンタル、タングステンなど)を主成分とする層で構成することができる。そして、薄膜トランジスタ104a、104c、104d及び104eはソース領域又はドレイン領域とチャネル形成領域との間にLDD領域が設けられ、薄膜トランジスタ104bはLDD領域が設けられていない。薄膜トランジスタ104bをPチャネル型とし、薄膜トランジスタ104aをNチャネル型として、両者を組み合わせることでCMOS回路を形成することができる。
【0021】
薄膜トランジスタ104a、104c、104d及び104eにおいて、LDD領域、ソース領域及びドレイン領域がゲート電極をマスクとして容易に形成されるようにするために、ゲート電極の最下層のゲート長を上層のゲート長よりも長くしてLDD領域と重なるように形成してもよい。
【0022】
薄膜トランジスタ104a、104b、104c、104d及び104eの、チャネル形成領域を有する活性層を形成するための半導体材料は、シリコン、ゲルマニウム、ゲルマニウムとシリコンの両者を含む材料から選択することができ、また多結晶、単結晶、微結晶、非晶質のいずれか最適な構造を選択することができる。多結晶シリコン膜は、ニッケル等の金属を用いて非晶質シリコン膜をガラス基板の歪点以下の温度で加熱して結晶化し、その後ニッケル等の金属を結晶化した膜からゲッタリングにより除去することによって得られる。非晶質シリコン膜に吸収される、例えば波長が紫外光領域のレーザビームを、その非晶質シリコン膜に照射して、多結晶シリコン膜を形成してもよい。基板100として石英基板を用いると、ニッケル等の金属を用いることなく、800℃以上の温度で加熱することによって、非晶質シリコン膜を結晶化することによって多結晶シリコン膜が得られるので、ニッケル等の金属をゲッタリングにより除去する工程が不要になる。
【0023】
次に、トランジスタを有する層103上に樹脂を塗布した後、オーブン、炉などの加熱装置で第1の加熱処理をおこなうことによって樹脂を硬化させ、樹脂層105を形成する(図1(C))。ここで塗布する樹脂材料として、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、酢酸ビニル樹脂、ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などから適当な材料を選択する。ただし、硬化温度が150℃を超える樹脂材料を用いない。第1の加熱処理温度は、例えば50℃以上90℃未満とする。エポキシ樹脂を用いた場合、第1の加熱処理温度を80℃とし、2時間加熱処理することによって、塗布した樹脂を硬化させることができた。
【0024】
また、樹脂層105を形成するための樹脂を塗布する方法として、スクリーン印刷法、スピンコーティング法、液滴吐出法又はディップコーティング法などを適用することができる。
【0025】
樹脂層105を形成する前に、トランジスタを有する層103上に、第1の加熱処理並びに、後述する第2の加熱処理及び第3の加熱処理に耐えうる、トランジスタを有する層103の機械的強度を補強するための新たな絶縁層を形成しても良い。この場合、絶縁層として、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、酢酸ビニル樹脂、ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酸化珪素、窒素を含む酸化珪素(シリコンオキシナイトライド)、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素、シロキサン系材料などから適当な材料を選択すればよい。シロキサン系材料とは、置換基に少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられるもの、又はシリコンと酸素との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む有機基とフルオロ基とが用いられるものである。
【0026】
RFIDタグ用のアンテナを設ける場合は、トランジスタを有する層103に含まれる薄膜トランジスタのソース領域又はドレイン領域に接続された配線と電気的に接続するように、スパッタ法、スクリーン印刷法などによりアンテナを形成することができる。スパッタ法の場合は、アルミニウムなどの金属膜を成膜した後、所定のアンテナの形状に形成する。スクリーン印刷法の場合は、導電性金属ペースト(例えば銀ペースト)を用いて所定のアンテナの形状に印刷し、その後導電性金属ペーストを焼成する。上述の薄膜トランジスタを有する層103の機械的強度を補強するための絶縁層を形成する場合は、アンテナを覆うように形成することができる。アンテナの形状は、輪状(例えばループアンテナ)、らせん状(例えばスパイラルアンテナ)、線状(例えばダイポールアンテナ)、又は平板形状(例えばパッチアンテナ)とすることができる。信号の伝送方式として、860〜960MHzのUHF又は2.45GHzの周波数帯の無線周波数を適用する場合は、ダイポールアンテナを形成するための形状又はパッチアンテナを形成するための形状を採用すればよい。
【0027】
図5(A)は、トランジスタを有する層103上に、アンテナ501、及びトランジスタを有する層103を補強するための絶縁層502を設ける例を示す。パッシベーション膜503(保護膜ともいう)及び第1の層間絶縁膜504に形成されたコンタクトホールを介して、薄膜トランジスタ104eのソース領域又はドレイン領域と接続された配線505が設けられている。その配線505上に第2の層間絶縁膜506が設けられ、アンテナ501はその第2の層間絶縁膜506上に配線505と電気的に接続されるように設けられている。絶縁層502はアンテナ501を覆うように形成されるので、アンテナ501を保護する効果も期待できる。そして、樹脂層105は、絶縁層502上に形成される。
【0028】
パッシベーション膜503は、薄膜トランジスタを保護するために設けられ、窒化珪素、酸素を含む窒化珪素、窒素を含む酸化珪素(シリコンオキシナイトライド)などの無機絶縁膜を例えばCVD法により形成する。その際、前述の高電子密度かつ低電子温度のプラズマを無磁場で生成しうる装置を用いて、プラズマ酸化又はプラズマ窒化をおこなってもよい。無機絶縁膜の形成と、プラズマ酸化又はプラズマ窒化を、連続的におこなってもよい。その際、CVD用のチャンバとプラズマ処理用のチャンバを備えた、マルチチャンバ装置を用いることができる。
【0029】
第1の層間絶縁膜504及び第2の層間絶縁膜506として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オキサゾール樹脂、シロキサン系材料などを用いることができる。これらの層間絶縁膜の表面は平坦であることが望ましい。オキサゾール樹脂は、ポリイミド樹脂より誘電率が低いため、寄生容量の生成を抑制でき、第1の層間絶縁膜504及び第2の層間絶縁膜506に適している。
【0030】
配線505は、アルミニウムを主成分とする材料で形成する場合は2層以上の積層構造とすることが好ましい。例えば、アルミニウムを主成分とする第1の層と耐熱性の高い高融点金属(チタン、モリブデン、タンタル、タングステンなど)を主成分とする第2の層を積層した構造、又は当該第1の層を当該第2の層で挟んだ3層構造を、スパッタ法により大気に曝さず連続的におこなうとよい。
【0031】
メモリの一種であるDRAMなどに用いる容量素子を設ける場合は、薄膜トランジスタを有する層103の薄膜トランジスタのソース領域又はドレイン領域に接続された配線と電気的に接続するように容量素子を形成する。
【0032】
樹脂層105を形成した後、第1の加熱処理温度よりも高い温度で第2の加熱処理をおこない、基板100とトランジスタを有する層103とを分離する(図1(D))。第2の加熱処理によって、当該第2の加熱処理前と比較して基板100とトランジスタを有する層103との分離が助長される。第2の加熱処理の際、第1の加熱処理に用いた加熱装置を用いることができる。分離後、トランジスタを有する層103に、絶縁層102及び/又は剥離層101の一部(例えば金属酸化物)が付着していてもよい。タングステンを主成分とする膜の表面にNOプラズマ処理によって窒素を含む酸化タングステン膜が形成された剥離層101を用いた場合、その酸化タングステン膜は、2層に分離して、基板100側とトランジスタを有する層103側の両方に付着する。
【0033】
第2の加熱処理の後、引き続き第2の加熱処理温度よりも高い温度で第3の加熱処理をおこなうことによってトランジスタを有する層103と樹脂層105とを分離する(図1(E))。第3の加熱処理によって、樹脂層105とその下に接する層との密着性は弱くなり又は密着性を失う。第3の加熱処理によって、当該第3の加熱処理前と比較してトランジスタを有する層103と樹脂層105との分離が助長される。第3の加熱処理の際、第2の加熱処理に用いた加熱装置を用いることができる。第2の加熱処理によって分離されたトランジスタを有する層103を加熱装置から取り出さずに、第3の加熱処理をおこなうことによって、第2の加熱処理と第3の加熱処理を連続しておこなうことができる。第1の加熱処理から第3の加熱処理までを、加熱装置から出さずに連続しておこなってもよい。
【0034】
第2の加熱処理温度は、例えば90℃以上120℃以下とする。また、第3の加熱処理温度は、上記のように密着性を弱め又は失わせるために、例えば150℃以上とする。第3の加熱処理温度の上限は、基板100及びトランジスタを有する層103に影響を与えない温度であることが必要で、例えば250℃、好ましくは200℃とする。第2の加熱処理及び第3の加熱処理をおこなうことによって、樹脂層105は膨張などにより変形し、樹脂層105に応力が生じる。その結果、基板100とトランジスタを有する層103との分離が可能となり、さらにトランジスタを有する層103と樹脂層105との分離が可能となると考えられる。
【0035】
図5(B)は、図5(A)の状態から樹脂層105及び基板100を剥離した後のトランジスタを有する層103を示す。絶縁層502が設けられているので、基板100を剥離した後でもトランジスタを有する層103の強度が高まり、トランジスタを有する層103が破壊されることを抑制できる。また、絶縁層502はアンテナ501を保護する効果も有する。
【0036】
以上の工程により、基板100及び樹脂層105とトランジスタを有する層103とを分離することができる。その後、必要に応じて、トランジスタを有する層103に、可撓性を有する基板、フィルムなどを、剥離した基板100の代わりに貼り付けてもよい。
【0037】
本実施の形態では、加熱処理温度を調整することで、樹脂層105形成時の第1の加熱処理と、基板100からトランジスタを有する層103を剥離する第2の加熱処理と、トランジスタを有する層103から樹脂層105を剥離する第3の加熱処理を一括でおこなうことができる。したがって、従来よりも剥離工程の簡略化及びその工程数を削減することができる。
【0038】
(実施の形態2)
以下に説明する本実施の形態は、前述の実施の形態1と組み合わせて実施することができる。
【0039】
本実施の形態では、実施の形態1において、樹脂層105を形成するための第1の加熱処理後、又は樹脂層105を形成するための樹脂を塗布する前に、剥離層101(金属膜を有する層)の一部、例えば剥離層101を構成する金属膜又は薄膜状の金属酸化物の断面(側面)を露出させる工程を追加することを特徴とする。この工程をおこなうことによって、おこなわない場合よりも容易に、基板100からトランジスタを有する層103を剥離することができる。
【0040】
剥離層101の一部、例えば剥離層101を構成する金属膜の断面を露出させる方法としては、樹脂層105を形成した後、又は樹脂層105を形成する前に、レーザビームを照射する、剥離層101が形成された基板100の端面を研削する、剥離層101が形成された基板100を切断すること、などによる方法が挙げられる。いずれの方法であっても、薄膜トランジスタと重ならない領域で、剥離層101の一部を露出させることが望ましい。薄膜トランジスタと重ならない領域とは、剥離層101上に薄膜トランジスタが設けられていない領域である。樹脂層105を形成するための樹脂を塗布する前に剥離層101の一部を露出させた場合、剥離層101の一部が露出した領域を覆わないように、樹脂を塗布する必要がある。
【0041】
図2(A)は、樹脂層105を形成した後に、樹脂層105の上方からレーザビームを照射することによって剥離層101の一部を露出させる開口部201を形成した状態を示す。図2(B)は、樹脂層105を形成するための樹脂を塗布する前に、トランジスタを有する層103の上方からレーザビームを照射することによって剥離層101の一部を露出させる開口部202を形成した状態を示す。開口部201又は開口部202がきっかけとなり、基板100からトランジスタを有する層103を容易に剥離させることができる。
【0042】
使用するレーザビームの種類は、樹脂層105、トランジスタを有する層103、絶縁層102、及び剥離層101に開口を形成できるものであれば、何でもよい。例えば、波長が紫外光領域である、Nd:YAG、Nd:YVOなどの固体を媒質とするレーザの高調波、エキシマレーザなどが使える。
【0043】
本実施の形態でも、実施の形態1と同様、樹脂層105を形成する前に、トランジスタを有する層103上にトランジスタを有する層103の機械的強度を補強するための絶縁層を形成することができる。その絶縁層を形成する前に剥離層101の一部を露出させる開口部202を形成した場合、開口部202を覆わないように、その絶縁層を形成する。
【0044】
なお、本実施の形態及び実施の形態1によって作製された薄膜トランジスタを有する層103を用いた集積回路は、その厚さを0.2μm以下、代表的には40nm〜170nm、好ましくは50nm〜150nmとすることができる。このように、シリコンウェハに形成される従来のICチップと比較して、集積回路の薄膜化を達成することができる。
【0045】
また、本実施の形態及び実施の形態1において、剥離した基板100は、何度でも再利用することができる。このように、基板100を再利用すれば、コストを削減することができる。基板100を再利用する場合、剥離の工程において基板100に傷が形成されないように制御するのが望ましい。仮に傷が形成された場合であっても、基板100に平坦化処理を行えばよい。
【実施例1】
【0046】
本明細書に開示する発明によって得られたトランジスタを有する層103を用いて作製されるメモリの例を示す。
【0047】
図3(A)は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のメモリセル構造の一例を示す回路図であり、このDRAMはビット線301、ワード線302、トランジスタ303、容量素子304を有する。実際は、このような構造のメモリセルが縦横に複数配列している。
【0048】
図3(B)は、SRAM(Static Random Access Memory)のメモリセル構造の一例を示す回路図であり、このSRAMはビット線311a、ビット線311b、ワード線312、トランジスタ313,314,315,316,317及び318を有する。実際は、このような構造のメモリセルが縦横に複数配列している。
【0049】
図3(A)及び図3(B)に示すようなメモリを作製する際に、本明細書の実施の形態1又は2にしたがって得られたトランジスタを有する層103を用いることによって、シリコンウエハに形成されたメモリと比較して格段に薄く、可撓性を有するメモリを低コストで作製することができる。
【0050】
上記DRAM、SRAM以外のメモリ、及びCPUを作製する際にも、本明細書に開示する発明を適用することができる。
【実施例2】
【0051】
本明細書に開示する発明によって得られたトランジスタを有する層103を用いて作製されるRFIDタグ(無線ICタグ)の例を示す。
【0052】
図4(A)及び図4(B)にRFIDタグの一例をブロック図で示す。RFIDタグ400は、非接触でデータを交信することができ、電源回路401、クロック発生回路402、データ復調/変調回路403、制御回路404、インタフェイス回路405、記憶回路406、バス407、及びアンテナ408を有する。図4(B)は、図4(A)にさらにCPU421を備えた場合を示している。
【0053】
電源回路401は、アンテナ408から入力された交流信号をもとに電源を生成する。クロック発生回路402は、アンテナ408から入力された信号をもとにクロック信号を生成する。データ復調/変調回路403は、リーダライタ409と交信するデータを復調/変調する。制御回路404は、記憶回路406を制御する。アンテナ408は、信号の受信とデータの送信をおこなう。
【0054】
記憶回路406として、本明細書の実施例1に示したDRAM、SRAMの他、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ、有機メモリなどを用いることができる。なお、有機メモリとは、有機化合物層を一対の電極間に設けた構造、又は有機化合物と無機化合物を有する層を一対の電極間に設けた構造であり、RFIDタグの記憶回路406に採用することで、RFIDタグの小型化、薄型化、軽量化に寄与する。
【0055】
図6(A)乃至図6(D)に、RFIDタグの使用例を示す。本実施例に示すようなRFIDタグは、音楽や映画が記録された記録媒体601、記録媒体601が収納されるケース、書籍602、商品のパッケージ603、衣類604などの物品に取り付けて、RFIDタグが取り付けられた物品の売り上げ、在庫、貸し出しなどの管理、紛失又は盗難の防止、その他の用途に利用することができる。図6(A)乃至図6(D)の各図において、RFIDタグの取り付け位置600の例を示す。
【0056】
図4(A)及び図4(B)に示すようなRFIDタグを作製する際に、本明細書の実施の形態1又は2にしたがって得られたトランジスタを有する層103を用いることによって、RFIDタグを薄型にし、かつ低価格で供給できる。したがって、本明細書に開示する発明は、RFIDタグの普及に貢献することができる。
【0057】
本実施例は、本明細書の実施例1と組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施の形態1による半導体装置の作製過程を示す断面図。
【図2】実施の形態2による半導体装置の作製過程を示す断面図。
【図3】メモリセル構造の一例を示す回路図。
【図4】RFIDタグの一例を示すブロック図。
【図5】RFIDタグの作製過程を示す断面図。
【図6】RFIDタグの使用例を示す図。
【符号の説明】
【0059】
100 基板
101 剥離層
102 絶縁層
103 トランジスタを有する層
104a 薄膜トランジスタ
104b 薄膜トランジスタ
104c 薄膜トランジスタ
104d 薄膜トランジスタ
104e 薄膜トランジスタ
105 樹脂層
201 開口部
202 開口部
301 ビット線
302 ワード線
303 トランジスタ
304 容量素子
311a ビット線
311b ビット線
312 ワード線
313 トランジスタ
314 トランジスタ
315 トランジスタ
316 トランジスタ
317 トランジスタ
318 トランジスタ
400 RFIDタグ
401 電源回路
402 クロック発生回路
403 データ復調/変調回路
404 制御回路
405 インタフェイス回路
406 記憶回路
407 バス
408 アンテナ
409 リーダライタ
501 アンテナ
502 絶縁層
503 パッシベーション膜
504 第1の層間絶縁膜
505 配線
506 第2の層間絶縁膜
600 取り付け位置
601 記録媒体
602 書籍
603 パッケージ
604 衣類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に金属膜を有する層を形成し、
前記金属膜を有する層上にトランジスタを有する層を形成し、
前記トランジスタを有する層上に樹脂材料を塗布し、
第1の加熱処理温度で加熱処理をおこなうことで前記樹脂材料を硬化させて樹脂層を形成し、
前記第1の加熱処理温度よりも高い第2の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記基板から前記トランジスタを有する層を剥離させ、
前記第2の加熱処理温度よりも高い第3の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記トランジスタを有する層から前記樹脂層を剥離させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
基板上に金属膜を有する層を形成し、
前記金属膜を有する層上にトランジスタを有する層を形成し、
前記トランジスタを有する層上に樹脂材料を塗布し、
第1の加熱処理温度で加熱処理をおこなうことで前記樹脂材料を硬化させて樹脂層を形成し、
前記トランジスタが前記金属膜を有する層上に設けられていない領域で前記金属膜を有する層の一部を露出させ、
加熱装置において前記第1の加熱処理温度よりも高い第2の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記基板から前記トランジスタを有する層を剥離させ、
前記加熱装置から取り出さずに、前記第2の加熱処理温度よりも高い第3の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記トランジスタを有する層から前記樹脂層を剥離させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
基板上に金属膜を有する層を形成し、
前記金属膜を有する層上にトランジスタを有する層を形成し、
前記トランジスタが前記金属膜を有する層上に設けられていない領域で前記金属膜を有する層の一部を露出させ、
前記金属膜を有する層の一部が露出した領域を覆わないように前記トランジスタを有する層上に樹脂材料を塗布し、
加熱装置において第1の加熱処理温度で加熱処理をおこなうことで前記樹脂材料を硬化させて樹脂層を形成し、
前記加熱装置から取り出さずに、前記第1の加熱処理温度よりも高い第2の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記基板から前記トランジスタを有する層を剥離させ、
前記加熱装置から取り出さずに、前記第2の加熱処理温度よりも高い第3の加熱処理温度で加熱処理をおこなって前記トランジスタを有する層から前記樹脂層を剥離させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
前記金属膜を有する層の一部を露出させる際、前記樹脂層の上方からレーザビームを照射して前記金属膜を有する層が露出した開口部を形成することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項5】
前記金属膜を有する層の一部は該金属膜を有する層の断面であることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項6】
前記金属膜を有する層の一部を露出させる際、前記トランジスタを有する層の上方からレーザビームを照射して前記金属膜を有する層の断面が露出した開口部を形成することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項7】
前記金属膜を有する層の一部は該金属膜を有する層の断面であることを特徴とする請求項3又は請求項6に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項8】
前記金属膜を有する層を形成する前に前記基板上に絶縁膜でなる下地層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項9】
前記樹脂材料はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項10】
前記第1の加熱処理温度は50℃以上90℃未満、前記第2の加熱処理温度は90℃以上120℃以下、前記第3の加熱処理温度は150℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項11】
前記トランジスタは薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の方法を適用して作製されたRFIDタグ。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の方法を適用して作製されたメモリ。
【請求項14】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の方法を適用して作製されたCPU。
【請求項15】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の方法を適用して作製された集積回路。
【請求項16】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の方法を適用して作製された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−13121(P2007−13121A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147676(P2006−147676)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】