説明

加工体およびその製造方法

【課題】プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基材に対しても、基材の劣化を招くことなく、配線などの所望のパターンを作製できる加工体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】分散剤により覆われたナノ粒子を含む塗料を基材上に塗布する。基材上に塗布した塗料に対してプラズマ処理を施すことにより、低い温度領域においてナノ粒子を覆っている分散剤をナノ粒子表面より脱離させ、粒子間の焼結を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加工体およびその製造方法に関する。詳しくは、ナノ粒子を含むインクを用いて微細パターンが形成される加工体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスなどに金属ナノ粒子や金属化合物ナノ粒子を利用する技術が注目されている。ナノ粒子とは、一般的に粒径が100nm以下の粒子をいい、このナノ粒子は、ガス中蒸発法、アトマイズ法、化学還元法などの方法を用いて製造される。
【0003】
金属をナノサイズの粒子まで小さくなると、金属の融点はバルク状態と比較して急激に低下することが知られている。ナノ粒子はそのままの状態では室温に近い温度環境でも互いに融着、凝集しやすいという性質を有する。しかし、ナノ粒子を工業的に使用するためには、保存の際や、塗工、印刷、描画などの加工時には、ナノ粒子が分散した状態で存在することが望ましい。そこで、ナノ粒子の表面を分散剤によって保護してナノ粒子同士の融着や凝集を抑制する技術が採用されている。
【0004】
このように融着や凝集を抑制したナノ粒子を利用する技術の1つとして、金属配線パターンを作製する技術がある(例えば特許文献1参照)。以下、この金属配線パターンの作製方法について説明する。まず、分散剤によって表面が保護された金属ナノ粒子と、溶媒や樹脂などの添加剤とを配合してインクを調製する。次に、このインクを基板上に印刷などの方法で塗工してパターンを形成した後、インクを加熱して金属ナノ粒子表面を保護している分散剤を脱離させ、粒子同士を融着させる。以上により、基板上に金属配線パターンが形成される。しかし、この金属配線パターンの作製方法は、金属ナノ粒子の焼成温度よりも耐熱温度が低い基材、例えばフィルムに使用することは困難であるという問題がある。
【0005】
特許文献1には、平均粒径1〜100nmのナノ粒子を用いて配線パターンを形成するときの焼成温度を250℃以下にする試みが記載されているが、当該文献の実施例によると150℃もしくは210℃の熱処理が必要であり、その処理温度は低温とは言い難い。したがって、耐熱性に乏しいプラスチックフィルムのような基材に対してもダメージを与えることがないような温度範囲において、ナノ粒子を用いて配線パターンを作製可能な配線パターンの作製法が求められている。
【特許文献1】特開2002−299833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、この発明の目的は、プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基材に対しても、基材の劣化を招くことなく、配線などの所望のパターンを作製できる加工体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、分散剤により覆われたナノ粒子を含む塗料に対してプラズマ処理を施すことにより、低い温度領域においてナノ粒子を覆っている分散剤をナノ粒子表面より脱離させ、粒子間の焼結を促進できることを見出すに至った。
【0008】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
ナノ粒子を含む塗料を基材上に塗布する工程と、
塗料に対してプラズマ処理を施す工程と
を備え、
ナノ粒子が、該ナノ粒子に分散性を付与する分散剤により覆われている加工体の製造方法である。
【0009】
第2の発明は、
ナノ粒子を含む塗料を基材上に塗布し、塗料に対してプラズマ処理を施すことにより得られ、
ナノ粒子が、該ナノ粒子に分散性を付与する分散剤により覆われている加工体である。
【0010】
第1および第2の発明において、ナノ粒子が、金属および金属化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。プラズマ処理の工程では、プラズマを発生させるためのガスとして、不活性ガスと還元性ガスの混合ガスを導入することが好ましい。還元性ガスが、水素ガスを含んでいることが好ましい。
【0011】
第1および第2の発明において、分散剤が、チオール基を有し、分散剤のチオール基が、ナノ粒子表面と反応することにより、ナノ粒子が分散剤により覆われることが好ましい。特に、分散剤が、アルキルチオール(Cn2n+1SH)を含み、アルキルチオールのチオール基が、ナノ粒子表面と反応することにより、ナノ粒子が分散剤により覆われることが好ましい。塗料の塗布の工程では、塗料を配線パターン状に印刷することが好ましい。
【0012】
この発明では、ナノ粒子を含む塗料を基材上に塗布し、基板上に塗布された塗料に対してプラズマ処理を施すことで、分散剤をナノ粒子表面より脱離させ、粒子間の焼結を促進できる。したがって、所望のパターンを基材上に作製することができる。
この発明において焼結とは、プラズマ処理のみ、またはプラズマ処理と加熱処理との併用により、粒子を接着するプロセスを言う。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、この発明によれば、プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基材に対しても、基材の劣化を招くことなく、ナノ粒子を含む塗料を用いて配線などの所望のパターンを基板上に作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、電界放射型ディスプレイ(Field Emission Display:FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)、電子ペーパなどのディスプレイ、DMD(Digital Micro-Mirror Device:DMD)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの半導体装置、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子、タッチパネルなどの入力装置の微細配線回路およびその製造方法に適用して好適なものである。
【0015】
(1)第1の実施形態
以下、図1A〜図1Dを参照して、この発明の第1の実施形態により回路基板の製造方法の一例について説明する。
【0016】
まず、図1Aに示すように、基材1を準備する。基材1の形状としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。
【0017】
基材1の材料としては、例えば、ガラスなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリオレフィン、アクリルなどの高分子材料を用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。また、基材には、必要に応じて光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤などの各種添加剤を添加するようにしてもよい。
【0018】
次に、必要に応じて、基材表面にプライマー層を形成するようにしてもよい。プライマー層としては、例えば、樹脂などを主成分とする有機層、金属または金属化合物を主成分とする無機層を用いることができる。また、有機層と無機層とを複数積層させるようにしてもよい。
【0019】
また、薄膜の密着性を向上させるために、基材表面に対して表面処理を施すことが好ましい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などを用いることができる。
【0020】
次に、分散剤により覆われたナノ粒子と、溶剤と、必要に応じて樹脂および添加剤とを調製し、塗料であるインクを合成する。ナノ粒子としては、例えば、金属、および金属化合物の少なくとも1種を含むものを用いることができる。金属材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、In、Al、Si、Ni、Rh、Os、Ru、Ir、Fe、Sn、Zn、Co、Ni、Cr、Ti、Ta、W、In、Siなどの単体、またはこれらを2種以上含む合金を主成分とするものが挙げられるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。金属化合物材料としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、金属炭化物などを主成分とするものが挙がられるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。ナノ粒子の合成方法としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの気相法、噴霧法などの液相法などを用いることができる。
【0021】
ナノ粒子の直径は、一般的にナノサイズと言われる粒径である100nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜100nm、さらにより好ましくは0.5nmから50nm、最も好ましくは0.5nm〜20nm程度である。
【0022】
分散剤は、ナノ粒子に分散性を付与するものである。分散剤が、例えば、配位子としてナノ粒子に作用し、ナノ粒子表面を覆うことで、安定した状態でナノ粒子表面に分散剤が存在できる。このため、非常に小さいサイズのナノ粒子でも凝集することなくインク中に分散させることができる。
【0023】
分散剤としては、例えば、−COOH、−SH、−SOH、−SO2H、―SO3H、―NH2、―NOH、−NO2H、―OH、−SiOH、−Si(OH)2、―Si(OH)3、―PO22、―PO32、―PO4H、−COO−、−CON―、―CONH−、−CONH2、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NO−、−O−、−SiO−、−PH−、−PH2−、−PO−、−POH−、−POH2−、−PO2−、−PO2H−、−PO3−、−PO3H−、−PO4−、−N(−)−、−Si(O−)2および−Si(O−)3からなる群から選択される1以上を含むアルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、アルキル置換された芳香族炭化水素、複素環およびアルキル置換された複素環からなる群から選択される1以上を用いることができるができ、好ましくはチオール類、スルフィド、アミン化合物、カルボキシル類を用いことができるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。
【0024】
例えば、チオールとしては、Cnn+2−SHの鎖状構造を持つアルキルチオールが代表的であり、nが大きく鎖が長いほど安定してナノ粒子を保護することができ分散性も良いとされる。具体的には、アルキルチオールのnの値は、好ましくは3〜12、より好ましくは3〜9、さらにより好ましくは3〜6である。
【0025】
ナノ粒子が金属を主成分とする場合には、分散剤としてアルキルチオールを用いることが好ましい。チオール基がナノ粒子表面の金属元素と直接結合し、分散剤によりナノ粒子を容易に覆うことができるからである。また、ナノ粒子が金属酸化物を主成分とする場合には、分散剤としてシランカップリング剤を有するものを用いることが好ましい。Siを介して炭化水素鎖などをナノ粒子表面に結合できるからである。
【0026】
溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。
【0027】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。
【0028】
添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、レベリング剤などの表面調整剤を使用することもできるが特にこれらの材料に限定されるものではない。
【0029】
次に、図1Bに示すように、塗料であるインク2を、所望とする配線パターン状に塗布する。塗布の方法としては、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法、凸版印刷法、平板印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法などを用いることができるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0030】
次に、図1Cに示すように、基材1上に塗布したインク2に対してプラズマ処理を施す。これにより、図1Dに示すように、基材1上に配線パターン4が形成される。プラズマ処理の方式としては、一般的に半導体製造でレジスト層、金属層、および金属化合物層などの除去に利用されているものを使用することができ、例えば、プラズマエッチング(PE:plasma Etching)方式、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)方式を用いることができる。プラズマエッチングは、イオンを基材1と逆方向に引くためプラズマ中で化学反応によってエッチングを行うので、基材1への物理的ダメージが少なく金属はほとんど除去されないため有機物のみを除去することができる。反応性イオンエッチングは、基材1をマイナスに帯電させイオンを引き付けて化学的・物理的にエッチングを行うので、基材1への物理的ダメージも大きく金属と有機物の両方がエッチングされる。
【0031】
本発明では、ナノ粒子を保護している分散剤などの有機物のみを除去して、金属ナノ粒子や金属化合物ナノ粒子などのみを基材1上に残し、配線パターンなどの微細加工パターンを形成するのが目的であるため、プラズマエッチング方式を用いることが好ましい。
【0032】
プラズマ処理装置としては、例えば、大気中にてプラズマを発生させて基材表面を処理する大気圧プラズマ処理装置、減圧環境下にてプラズマを発生させて基材表面を処理する減圧プラズマ処理装置を用いることができ、大気圧プラズマ処理装置を用いることが好ましい。大型の真空チャンバが必要なくなるため、ロール・ツー・ロールなどの連続処理工程により微細配線パターンを有するデバイスを作製することが可能となり、デバイスの生産性を向上することができるからである。
【0033】
このプラズマ処理では、基材1にはほとんど温度が掛からないため、例えば、ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度:80℃)のようなガラス転移温度が低い材料なども、基材1の材料として用いることができる。
【0034】
基材表面に塗布したインク2に対してプラズマ処理を施すときに、基材1を加熱した状態でプラズマ処理を施すようにしてもよい。基材1の加熱の温度は、基材1の耐熱温度を越えない程度の温度とすることが好ましい。
【0035】
基材表面に塗布したインク2に対してプラズマ処理を施した後に、基材1の耐熱温度を越えない程度の温度で基材1を加熱するようにしてもよい。また、基材加熱の雰囲気は、大気に限定されるものではなく、不活性ガスなどのガスで置換した雰囲気でもよい。
【0036】
プラズマを発生させるために導入するガスとしては、特に限定されるものではなく、複数種のガスを混合して使用することも可能である。例えば、不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス、より具体的には、アルゴンと酸素との混合ガス、アルゴンと水素との混合ガスを用いることができる。Auのようにガスと反応しにくい材料をナノ粒子の材料として用いる場合には、不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、例えばアルゴンと酸素との混合ガスを用いて粒子を焼結させることで、高温(200℃以上)で熱処理した場合と同等の電気特性を得ることができる。しかし、Agなどのようにガスと反応する可能性のある材料をナノ粒子の材料として用いる場合には、酸素ガスを用いると、酸化されやすく十分な効果が得られないことが懸念される。したがって、Agなどのようにガスと反応する可能性のある材料をナノ粒子の材料として用いる場合には、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス、例えばアルゴンと水素との混合ガスを用いて粒子を焼結させることで、高温(200℃以上)で熱処理した場合と同等の電気特性を得ることができる。
【0037】
還元性ガスとしては、水素、アンモニア、フッ素、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、4フッ化炭素、フルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどのフロン類が挙げられるが、特にこれらのガスに限定はしない。
以上により、目的とする回路基板が得られる。
【0038】
この発明の第1の実施形態によれば、ナノ粒子が分散されたインク2を基材1上に塗布し、このインク2に対してプラズマ処理3を施す。したがって、プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基材1に対しても熱ダメージを与えることなく、ナノ粒子表面を保護している分散剤を除去し、さらにナノ粒子同士を融着させて焼結を促進し、所望の電気特性を有する配線パターンを基材1上に形成することができる。
【0039】
一般的にナノ粒子を含むインク2を基板上に塗布して、そのナノ粒子を覆う分散剤を除去するためには分散剤の種類にも依存するが最低でも150℃以上での熱処理が必要とされる(特許文献1参照)。これに対して、上述したように、この第1の実施形態によれば、インクに対して熱処理を施す必要がない。したがって、プラスチックフィルムのように耐熱性の低い基材1を用いて回路基板を作製できるので、ナノ粒子を含むインクを用いてフレキシブルなデバイスなどを作製することが可能となる。
【0040】
従来、微細配線加工の主流となっているフォトリソグラフィ方式は、エッチング加工時に薬液を必要とするのに対して、この第1の実施形態による回路基板の製造方法は、薬液を必要とせず、さらに従来のフォトリソグラフィ方式に比して工程を削減することもできる。また、この第1の実施形態による回路基板の製造方法は、従来のフォトリソグラフィ方式のものに比して、環境・エネルギーの点でも優れている。
【0041】
(2)第2の実施形態
以下、図2を参照して、この発明の第2の実施形態による回路基板の製造方法の一例について説明する。なお、以下の工程において、上述の第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
まず、図2Aに示すように、基材1を準備する。次に、図2Bに示すように、この基材1上に塗料であるインク2を塗布する。塗布の方法としては、例えば、スピンコーター、スプレーコーター、ディップコーター、バーコーター、ダイコーター、コンマコーター、CAPコーターなどを用いることができるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0043】
次に、図2Cに示すように、基材1上に塗布された塗料に対して、プラズマ処理3を施す。これにより、図2Dに示すように、例えば金属または金属化合物を主成分とする薄膜5が基材1上に作製される。次に、図2Eに示すように、例えばフォトリソグラフィ技術やスクリーン印刷により所望とする配線パターン状にレジストを積層した後にエッチングなどの方法で不要な膜を除去して、その後にレジストを剥離しパターンを形成する方法、もしくはスポット状のレーザーを照射してパターンに沿って走査することで不要な膜を除去してパターンを形成する方法などを用いて、所望の配線パターン4を基材1上に作製する。
以上により、目的とする回路基板が得られる。
【0044】
この発明の第2の実施形態によれば、プラスチックフィルムのような耐熱性の低い基材1に対しても熱ダメージを与えることなく、所望の電気特性を有する配線パターンを基材1上に形成することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
この実施例において、膜厚、体積抵抗率、密着性、および基材の外観の評価は以下のように実施した。
(膜厚)
膜厚は、プラズマ処理後または加熱処理後に触針式精密表面段差計を用いて測定した。
(体積抵抗率)
体積抵抗率は、抵抗率計(ダイアインスツルメンツ製 ロレスタGP)を用いて測定した。
(密着性)
基材(基板、フィルム)と薄膜との密着性は10×10クロスハッチ試験にて評価した。
(基材の外観)
プラズマ処理後または加熱処理後の基材(基板、フィルム)の外観を目視により評価した。
【0047】
(実施例1)
まず、アルキルチオールによって周囲を保護された銀ナノ粒子を100重量部、トルエン150重量部を配合し混合して印刷用インクを得た。次に、そのインクをスピンコート法にて0.7mm厚のガラス基板上に塗布し、溶剤を乾燥した。その後、SAMCO社製プラズマ装置(PC−300)にてアルゴンと水素の混合比(体積比)が96/4となるように混合ガスを導入して250Wのパワーで5分間、基板へのプラズマ処理を実施して基板上に金属薄膜を形成し、サンプルを得た。
【0048】
プラズマ処理後の基板を観察したところ、熱による変形や白化などの異常は見られず、クロスハッチ剥離試験も100/100で良好であった。また、金属薄膜の膜厚は100nm、体積抵抗率は4.8μΩ・cmであった。
【0049】
(実施例2)
まず、実施例1と同様にしてインクを作製し、125μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、溶剤を乾燥した。その後、実施例1と同様にプラズマ処理を実施してフィルム上に金属薄膜を形成し、サンプルを得た。
【0050】
プラズマ処理後のフィルムを観察したところ、熱による変形や白化などの異常は見られず、クロスハッチ剥離試験も100/100で良好であった。また、金属薄膜の膜厚は100nm、体積抵抗率は5.2μΩ・cmであった。
【0051】
(実施例3)
まず、アルキルチオールによって周囲を保護された金ナノ粒子を100重量部、トルエン150重量部を配合し混合して印刷用インクを得た。次に、そのインクをスピンコート法にて0.7mm厚のガラス基板上に塗布し、溶剤を乾燥した。その後、SAMCO社製プラズマ装置(PC−300)にてアルゴンと酸素の混合比(体積比)が99/1となるように混合ガスを導入して250Wのパワーで5分間、基板へのプラズマ処理を実施して基板上に金属薄膜を形成し、サンプルを得た。
【0052】
プラズマ処理後の基板を観察したところ、熱による変形や白化などの異常は見られず、クロスハッチ剥離試験も100/100で良好であった。また、膜厚は100nm、体積抵抗率は6.3μΩ・cmであった。
【0053】
(実施例4)
デバイスの一例として、抵抗膜式タッチパネルを以下のようにして作製した。
まず、188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に、透明導電膜であるITO膜を形成した。次に、オフセット印刷法によりインクを塗布し、電極端子および引き回し配線をフィルム上に形成する以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用の上部基板を得た。
【0054】
次に、下部基板も上部基板と同様の方法で作製した後、ITO層の上に高さ5μmのドットスペーサーを4mm間隔の格子状に印刷した。次に、上述のように作製した上部基板と下部基板を各々の透明導電膜が内向きになるように周囲を両面テープで貼り合わせることでタッチパネルを得た。
作製したタッチパネルを動作させたところ、問題なく動作することが確認できた。
【0055】
(比較例1)
実施例1と同様にしてインクを作製し、0.7mm厚のガラス基板上に塗布し、溶剤を乾燥した。その後、180℃に加熱したホットプレート上に基板を30分間静置して金属薄膜を形成し、サンプルを得た。
【0056】
薄膜のクロスハッチ剥離試験も100/100で良好であった。また、膜厚は100nm、体積抵抗率は5.1μΩ・cmであった。
【0057】
(比較例2)
ホットプレートの加熱温度を100℃に変更する以外は、比較例1と同様にしてサンプルを得た。
【0058】
加熱処理後の基板を観察したところ、塗布膜表面に金属光沢はない状態であった。また、薄膜のクロスハッチ剥離試験を行ったところ0/100であり、体積抵抗率は測定不能であった。これらの結果から判断すると、ナノ粒子は焼結していないと考えられる。
【0059】
(比較例3)
125μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる以外は、比較例1と同様にしてサンプルを得た。
【0060】
加熱処理後のフィルムを観察したところ、ガラス転移温度以上の熱が加えられたためにフィルムの溶解が見られた。体積抵抗率および密着性については評価不能であった。
【0061】
表1に、上述した実施例1〜3、比較例1〜3の評価結果をまとめて示す。
【表1】

【0062】
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0063】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1A〜図1Dは、この発明の第1の実施形態による回路基板の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図2】図2A〜図2Eは、この発明の第2の実施形態による回路基板の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【符号の説明】
【0065】
1 基材
2 インク
3 プラズマ処理
4 配線パターン
5 薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を含む塗料を基材上に塗布する工程と、
上記塗料に対してプラズマ処理を施す工程と
を備え、
上記ナノ粒子が、該ナノ粒子に分散性を付与する分散剤により覆われている加工体の製造方法。
【請求項2】
上記ナノ粒子が、金属および金属化合物の少なくとも1種を含む請求項1記載の加工体の製造方法。
【請求項3】
上記プラズマ処理の工程では、プラズマを発生させるためのガスとして、不活性ガスと還元性ガスの混合ガスを導入する請求項1記載の加工体の製造方法。
【請求項4】
上記還元性ガスが、水素ガスを含んでいる請求項3記載の加工体の製造方法。
【請求項5】
上記分散剤が、チオール基を有し、
上記分散剤のチオール基が、上記ナノ粒子表面と反応することにより、上記ナノ粒子が上記分散剤により覆われる請求項1記載の加工体の製造方法。
【請求項6】
上記分散剤が、アルキルチオール(Cn2n+1SH)を含み、
上記アルキルチオールのチオール基が、上記ナノ粒子表面と反応することにより、上記ナノ粒子が上記分散剤により覆われる請求項5記載の加工体の製造方法。
【請求項7】
上記塗料の塗布の工程では、上記塗料を配線パターン状に印刷する請求項1記載の加工体の製造方法。
【請求項8】
ナノ粒子を含む塗料を基材上に塗布し、上記塗料に対してプラズマ処理を施すことにより得られ、
上記ナノ粒子が、該ナノ粒子に分散性を付与する分散剤により覆われている加工体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−278045(P2009−278045A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130627(P2008−130627)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】