説明

加熱処理装置

【課題】回転炉に被処理物を供給して加熱乾留し、発生した可燃性ガスの燃焼熱により前記の加熱乾留を行う加熱処理装置であって、燃焼熱の一層効率的な利用を図ることが出来る加熱処理装置を提供する。
【解決手段】加熱処理装置は、第1被処理物としての廃棄物を加熱乾留処理して可燃性ガスと炭化混合物に分解し、更に第2被処理物を加熱処理する加熱処理装置であり、加熱炉(1)、第1被処理物が加熱乾留処理される内側回転炉(2)、および、第2被処理物が加熱処理される外側回転炉(3)を備えている。内側回転炉(2)には、その周面側に突出し且つ外側回転炉(3)を貫通して加熱炉(1)の燃焼空間に至るガス抜き管(4)が複数設けられており、内側回転炉(2)における加熱乾留処理により発生した可燃性ガスを加熱炉(1)中で燃焼させ、内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)を加熱し、前記の加熱乾留処理および加熱処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理装置に関するものであり、詳しくは、加熱炉に挿通された回転炉に被処理物を供給して加熱乾留処理し、発生した可燃性ガスを加熱炉で燃焼させ、その燃焼熱により前記の加熱乾留処理および更に他の加熱処理を行う加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の解体で発生するカーシュレッダーダストは、繊維質、硬軟、発泡各種プラスチック、ゴム類、布・紙・木、被覆導線、その他雑多なものを含んでおり、そのまま焼却するとダイオキシン類などの有害物質を発生する恐れがある。そのため、加熱乾留処理により、銅などの非鉄金属および燃料ガスとして回収する方法が検討されている。そして、カーシュレッダーダスト等の廃棄物の加熱乾留を行う装置としては、加熱炉に挿通された円筒状の回転炉、いわゆるロータリーキルンの構造を利用した加熱処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−130319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のロータリーキルン方式の加熱処理装置は、回転炉に装填した廃棄物を炉内で移動させながら加熱乾留して可燃性ガスと炭化混合物に分解すると共に、発生した可燃性ガスを加熱炉中で燃焼させ、その燃焼熱によって前記の加熱乾留を促進することが出来る。しかしながら、廃棄物の種類によっては、必要以上に可燃性ガスが発生するため、その燃焼熱の一部を系外に廃棄している。勿論、熱を必要とする他のシステムへ供給することも出来るが、熱効率が極めて悪いため、実際には有効利用されていない。従って、上記の加熱処理装置で発生した余剰の燃焼熱のより有効な利用が望まれる。
【0004】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱炉に挿通された回転炉に被処理物を供給して加熱乾留処理し、発生した可燃性ガスを燃焼させ、その燃焼熱により前記の加熱乾留処理を行う加熱処理装置であって、燃焼熱の一層効率的な利用を図ることが出来る加熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明では、内側回転炉と外側回転炉から成る二重構造の回転炉を加熱炉に挿通し、内側回転炉に第1被処理物を供給し、同時に外側回転炉に第2被処理物を供給し、内側回転炉の加熱乾留処理によって発生する可燃性ガスを加熱炉の燃焼空間に導いて燃焼させ、内側回転炉および外側回転炉を加熱することにより、内側回転炉における加熱乾留処理を促進させ、同時に、外側回転炉において第2被処理物を加熱処理する様に構成した。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、第1被処理物としての廃棄物を加熱乾留処理して可燃性ガスと炭化混合物に分解し、更に第2被処理物を加熱処理する加熱処理装置であって、ガス導入管とガス排出管とが付設された加熱炉、当該加熱炉に挿通され且つその各端部にそれぞれ第1供給装置および第1排出装置が配置された円筒状の内側回転炉、当該内側回転炉の外側に同心状に配置されて前記加熱炉に挿通され且つその各端部にそれぞれ第2供給装置および第2排出装置が配置された円筒状の外側回転炉を備え、前記内側回転炉には、その周面側に突出し且つ前記外側回転炉を貫通して前記加熱炉の燃焼空間に至るガス抜き管が複数設けられており、前記内側回転炉に第1被処理物を供給し且つ前記外側回転炉に第2被処理物を供給し、前記内側回転炉における加熱乾留により発生し且つ前記ガス抜き管から排出される可燃性ガスを前記加熱炉中で燃焼させることにより、前記内側回転炉および前記外側回転炉を加熱する様になされていることを特徴とする加熱処理装置に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱処理装置によれば、内側回転炉に設けられたガス抜き管が外側回転炉を貫通して加熱炉の燃焼空間に伸長されており、内側回転炉で発生した可燃性ガスを加熱炉の燃焼空間に導いて燃焼させ、内側回転炉と外側回転炉を加熱することにより、内側回転炉における加熱乾留処理を促進させ、同時に、外側回転炉において第2被処理物を加熱処理することが出来るため、可燃性ガスの燃焼熱をより有効に利用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る加熱処理装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る加熱処理装置の全体構造を一部破断して示す側面図である。また、図2は、加熱炉と各回転炉の配置関係を回転炉の軸線に直交する断面で示した縦断面図であり、図3は、外側回転炉の構造を一部破断して示す部分的な斜視図であり、そして、図4は、ガス抜き管の外側回転炉に対する接続構造を示す平面図および縦断面図である。
【0009】
本発明の加熱処理装置は、第1被処理物としての廃棄物を加熱乾留処理して可燃性ガスと炭化混合物に分解し、加熱乾留により発生した可燃性ガスの燃焼熱によって前記の加熱乾留処理を行うと共に、前記の燃焼熱によって更に第2被処理物を加熱処理する装置である。
【0010】
第1被処理物としては、加熱処理によって可燃性ガスを発生する各種の廃棄物、典型的には、自動車の解体後に残るカーシュレッダーダスト等が挙げられる。カーシュレッダーダストは、繊維質、硬軟、発泡各種プラスチック、ゴム類、布・紙・木、被覆導線、その他雑多なものを含む廃棄物である。一方、第2被処理物としては、加熱処理の必要な各種の素材、例えば、再生処理において加熱が必要な再資源化ガラスが挙げられる。再資源化ガラスは、珪酸、酸化ソーダ、酸化石灰などを成分とするソーダガラスから成る廃ガラス、具体的には、自動車解体時に発生するフロントガラス等の廃ガラス、建築廃ガラス、ブラウン管の廃ガラス等のカレットである。
【0011】
上記の加熱処理装置は、図1及び図2に示す様に、ガス導入管(11)とガス排出管(12)とが付設された加熱炉(1)と、当該加熱炉に挿通された円筒状の内側回転炉(2)と、当該内側回転炉の外側に同心状に配置されて加熱炉(1)に挿通された円筒状の外側回転炉(3)とを備えている。そして、内側回転炉(2)には、その周面側に突出し且つ外側回転炉(3)を貫通して加熱炉(1)の燃焼空間に至るガス抜き管(4)が複数設けられている。
【0012】
加熱炉(1)は、外形を略蒲鉾状に形成され且つ耐火物によって内側をライニングされた固定式の耐熱炉であり、その内部は、内側回転炉(2)で発生した可燃性ガスを燃焼させる燃焼空間に形成されている。そして、図1に示す様に、加熱炉(1)は、内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)の軸線を下流側が低くなる様に傾斜させ、内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)の第1及び第2被処理物をより円滑に排出するため、水平レベルに対して1〜2度程度傾斜した状態に設置されている。なお、加熱炉(1)の大きさは、処理量によっても異なるが、通常、炉高(内部の燃焼空間の高さ)を1〜4m程度、炉長(内部の燃焼空間の長さ)を6〜25m程度に設計されている。
【0013】
ガス導入管(11)は、酸化剤としての空気を炉内に供給するための流路であり、加熱炉(1)の例えば上流側(回転炉における被処理物の移動方向を基準とした場合の上流側;図1における右側)の端部の底部近傍に取り付けられている。ガス排出管(12)は、加熱炉(1)の例えば下流側(回転炉における被処理物の移動方向を基準とした場合の下流側;図1における左側)の端部の頂部に取り付けられている。更に、加熱炉(1)の底部近傍には、後述する様に内側回転炉(2)で発生する可燃性ガスが不足する場合に補助加熱したり、内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)の温度の均一化を図るため、補助バーナー(13)が付設されている。通常、斯かる補助バーナー(13)は、加熱炉(1)の炉長に沿って複数基配列されている。
【0014】
内側回転炉(2)は、その一端(図1における右側の端部)から他端(図1における左側の端部)へ上記の第1被処理物を移動させながら加熱する回転炉であり、一般的な金属製ロータリーキルンに類似する構造を備えている。通常、内側回転炉(2)の内径は0.5〜2.5m程度、内側回転炉(2)の炉長は6〜25m程度に設計されている。
【0015】
内側回転炉(2)は、加熱炉(1)の長手方向に沿って当該加熱炉に回転可能に挿通されている。具体的には、内側回転炉(2)の両端部は、これら両端部の外周に装着された補強リング(25)を支持ローラー(52)で受けることにより回動自在に支持されている。一方、内側回転炉(2)の一端側外周面には歯車(26)が設けられており、また、加熱炉(1)の一端側側方には電動機(6)が設置されており、電動機(6)の駆動歯車(62)と内側回転炉(2)の歯車(26)とが噛合している。そして、内側回転炉(2)は、電動機(6)の作動により、例えば0.3〜10rpmの速さで一方向に回転する様になされている。
【0016】
内側回転炉(2)の各端部には、各々、上記の第1被処理物を当該内側回転炉内に供給するための第1供給装置(21)、および、処理済みの第1被処理物を装置外へ排出するための第1排出装置(22)が配置されている。
【0017】
内側回転炉(2)の開放された一端(図1における右側の端部)は、摺動部材としてのシール部(27s)を介して装着されたフード(27)により気密に封止されている。上記の第1供給装置(21)は、ホッパー(21b)を備えたスクリューコンベヤ(21a)によって構成されており、そして、スクリューコンベヤ(21a)は、上記のフード(27)を貫通し、内側回転炉(2)の一端部の中心へ第1被処理物を装入する様に配置されている。従って、ホッパー(21b)に第1被処理物を投入することにより、回転状態の内側回転炉(2)に第1被処理物を略定量供給することが出来る。
【0018】
他方、内側回転炉(2)の開放された他端(図1における左側の端部)は、摺動部材としてのシール部(22s)を介して装着されたフード(22a)により気密に封止されている。上記の第1排出装置(22)は、フード(22a)の下部に付設され且つ上下方向に複数段配置されたシャッター構造のゲートバルブ(22b)によって構成されている。従って、第1排出装置(22)のゲートバルブ(22b)を操作することにより、内側回転炉(2)で発生する油蒸気などの可燃性ガスを漏出させることなく、内側回転炉(2)で得られた金属残渣などの処理済みの第1被処理物を装置外に取り出すことが出来る。
【0019】
外側回転炉(3)は、その一端(図1における右側の端部)から他端(図1における左側の端部)へ上記の第2被処理物を移動させながら加熱する回転炉である。通常、外側回転炉(3)の内径は0.7〜3m程度、外側回転炉(3)の炉長は6〜25m程度に設計されている。すなわち、外側回転炉(3)は、上記の内側回転炉(2)よりも炉長を幾分短く設計されており、内側回転炉(2)を覆う状態で当該内側回転炉の外側に且つ内側回転炉と同心状に配置されている。
【0020】
外側回転炉(3)は、加熱炉(1)の長手方向に沿って当該加熱炉に回転可能に挿通されている。具体的には、外側回転炉(3)の両端部は、これら両端部の外周に装着された補強リング(35)を支持ローラー(53)で受けることにより回動自在に支持されている。更に、外側回転炉(3)は、加熱炉(1)の燃焼空間のガスが装置外に漏洩しない様に、加熱炉(1)の長手方向の両端に形成された各開口に対してシール部(1s)を介して回動自在に挿通されている。一方、内側回転炉(2)には、後述する様に、ガス抜き管(4)が複数設けられており、斯かるガス抜き管(4)が外側回転炉(3)の外周面側まで貫通し、これらガス抜き管(4)を介して内側回転炉(2)の回転力が外側回転炉(3)に伝達されることにより、外側回転炉(3)は、内側回転炉(2)に同伴して回転する様に構成されている。
【0021】
外側回転炉(3)の各端部には、各々、上記の第2被処理物を当該外側回転炉内に供給するための第2供給装置(31)、および、処理済みの第2被処理物を装置外へ排出するための第2排出装置(32)が配置されている。
【0022】
外側回転炉(3)の一端(図1における右側の端部)には、内側回転炉(2)の外径に略相当する内径のドーナツ板が配置されており、外側回転炉(3)の一端は、ドーナツ板の内径部がシール部を介して内側回転炉(2)の外周面に摺動自在に当接することにより、気密に封止されている。そして、外側回転炉(3)の一端部の外周面には、当該外側回転炉に第2被処理物を投入するシューター(36)が付設されている。
【0023】
シューター(36)は、図3に示す様に、外側回転炉(3)の円周に沿って外周面から漸次膨出する箱体であって且つ外側回転炉(3)の回転中心線に直交して断面視した場合に一端側が切り欠かれた円弧状に形成されている。しかも、切り欠かれた形状のシューター(36)の端部には、第2被処理物が投入される投入口(36c)が設けられており、外側回転炉(3)の外周面と滑らかに一体化されたシューター(36)の他方の端部に相当する外側回転炉(3)の外周面には、シューター(36)に投入された第2被処理物を外側回転炉(3)の内部に導入するための開口が設けられている。
【0024】
更に、図1に示す様に、外側回転炉(3)の一端側の外周部には、シューター(36)の最大高さ部分(切り欠かれた形状の部分)を収容可能なフード(31a)がシール部を介して外側回転炉(3)の全周に亙って気密に配置される。そして、上記の第2供給装置(31)は、ホッパー(31b)を備えたゲートバルブ(31c)によって構成され、上記のフード(31a)の上部に配置されている。しかも、ゲートバルブ(31c)は、外側回転炉(3)の回転に同期して作動し、シューター(36)の投入口(36c)が上部を通過する一定時間だけ開く様に制御される。従って、ホッパー(31b)に第2被処理物を投入することにより、回転状態の外側回転炉(3)に第2被処理物を一定間隔で供給することが出来る。
【0025】
また、図1及び図3に示す様に、外側回転炉(3)の内周面には、上記のシューター(36)の他方の端部に相当する位置に設けられた開口から外側回転炉(3)の他端(図1における左側の端部)まで連続するガイドスクリュー(33)が付設されている。斯かるガイドスクリュー(33)は、内側回転炉(2)と外側回転炉(3)との隙間距離の10〜50%の高さを備えた螺旋状に連続する堰板であり、シューター(36)から投入された第2被処理物を外側回転炉(3)の回転に伴って当該外側回転炉の他端側へ移動させる機能を有している。
【0026】
他方、外側回転炉(3)の開放された他端(図1における左側の端部)は、摺動部材としてのシール部(33s)及び(32s)を介して外側回転炉(3)の他端と内側回転炉(2)の外周面に気密に装着されたフード(32a)により封止されている。そして、上記の第2排出装置(32)は、フード(32a)の下部に付設され且つ上下方向に複数段配置されたシャッター構造のゲートバルブ(32b)によって構成されている。従って、第2排出装置(32)のゲートバルブ(32b)を操作することにより、外側回転炉(3)で得られた処理済みの第2被処理物を装置外に取り出すことが出来る。
【0027】
また、図1及び図2に示す様に、内側回転炉(2)には、その内部で発生した油蒸気などの可燃性ガスを加熱炉(1)の燃焼空間へ取り出すため、複数のガス抜き管(4)が設けられている。ガス抜き管(4)は、内側回転炉(2)の回転中心から立ち上げられて当該内側回転炉の周面側に突出し且つ外側回転炉(3)を貫通して加熱炉(1)の燃焼空間に至る管路である。
【0028】
ガス抜き管(4)は、内側回転炉(2)内の可燃性ガスを効率的に且つ加熱炉(1)の燃焼空間へ均一に排出するため、内側回転炉(2)の炉長に沿って一定のピッチ、例えば40〜250cmの間隔で配列されており、しかも、各隣接するガス抜き管(4)は、図2に示す様に、内側回転炉(2)の中心線周りに順次90°ずれた方向に伸長されている。すなわち、内側回転炉(2)の回転中心に直交して断面視した場合、多数のガス抜き管(4)は、スパイラル状に順次ずれた状態で中心から伸長されている。更に、第1被処理物によるガス抜き管(4)の閉塞や加熱炉(1)への第1被処理物の落下を防止するため、図1に示す様に、内側回転炉(2)の回転中心に位置する各ガス抜き管(4)の開口された基端部は、内側回転炉(2)の他端側、すなわち、下流側に向けて屈曲している。
【0029】
ところで、上記の様な加熱処理装置においては、加熱処理の違いにより生じる内側回転炉(2)と外側回転炉(3)の温度差から、これら回転炉の膨張量が相違する。そこで、本発明においては、上記の様に、内側回転炉(2)と外側回転炉(3)とが別体で設けられている。そして、ガス抜き管(4)を介して内側回転炉(2)の回転力を外側回転炉(3)に伝達する様になされているが、本発明においては、ガス抜き管(4)に剪断力が加わるのを防止するため、内側回転炉(2)に設けられた各ガス抜き管(4)が外側回転炉(3)に対して遊動可能に接続されている。
【0030】
具体的には、ガス抜き管(4)は、図1に示す様に、内側回転炉(2)との貫通部分において当該内側回転炉に固定されており、先端部が外側回転炉(3)の外側まで貫通している。そして、ガス抜き管(4)の先端部は、図4に示す様に、接続プレート(7)を介して外側回転炉(3)に接続されている。
【0031】
接続プレート(7)は、略長方形の平面形状を有し且つその長手方向が外側回転炉(3)の外周面の円周に倣って僅かに湾曲した平板状の金物であり、その中心に設けられたガス抜き管取付穴にガス抜き管(4)を溶着する様に構成されている。接続プレート(7)の背面には、ガス抜き管(4)の外径よりも大きな内径の短軸円筒状の保護筒(74)が上記のガス抜き管取付穴を囲む状態で取り付けられている。また、接続プレート(7)の長手方向の両端部側には、各々、外側回転炉(3)の外周面にボルト(8)及びワッシャ(81)を使用して固定するためにボルト挿通穴(78)が設けられている。そして、斯かるボルト挿通穴(78)は、接続プレート(7)の幅方向、すなわち、外側回転炉(3)の炉長方向に沿って長い長穴に形成されている。しかも、斯かる長穴の幅も、ボルト(8)のねじ部の直径よりも大きく且つワッシャ(81)の直径よりも狭く設定されている。
【0032】
一方、外側回転炉(3)には、ガス抜き管挿通穴(34)が設けられており、接続プレート(7)は、当該接続プレートの保護筒(74)をガス抜き管挿通穴(34)に外側回転炉(3)の外周面側から挿入し、上記のボルト(8)で固定することにより、外側回転炉(3)に取り付けられる様になされている。しかも、ガス抜き管挿通穴(34)の直径は、接続プレート(7)の保護筒(74)が緩く勘合する大きさ、換言すれば、ガス抜き管(4)の遊動量を加えた大きさに設定されている。これにより、ガス抜き管(4)の先端部は、これに予め接続プレート(7)を溶着した後、ボルト(8)を締めつけて接続プレート(7)を固定することにより、外側回転炉(3)に遊動可能に接続することが出来る。
【0033】
本発明の加熱処理装置は、上記の様に構成されていることにより、第1被処理物を加熱乾留処理して可燃性ガスと炭化混合物に分解し、更に第2被処理物を加熱処理するに際し、内側回転炉(2)に第1被処理物を供給し且つ外側回転炉(3)に第2被処理物を供給し、内側回転炉(2)における加熱乾留により発生し且つガス抜き管(4)から排出された可燃性ガスを加熱炉(1)中で燃焼させ、その燃焼熱によって内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)を加熱し、前記の加熱乾留処理および加熱処理を行う様になされている。
【0034】
次に、上記の加熱処理装置使用した加熱処理方法について説明する。なお、以下の説明では、加熱処理の一例として、カーシュレッダーダストを第1被処理物として加熱処理し、再資源化ガラスを第2被処理物として加熱処理して発泡ガラスを製造する例を挙げる。
【0035】
先ず、最初は加熱炉(1)の補助バーナー(13)を使用して内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)を所定温度まで加熱する。そして、第1供給装置(21)から内側回転炉(2)に第1被処理物としてカーシュレッダーダストを供給し、第2供給装置(31)から外側回転炉(3)に第2被処理物として再資源化ガラスを供給する。
【0036】
加熱される内側回転炉(2)内では、カーシュレッダーダストの加熱乾留によって可燃性ガス及び炭化混合物が生成する。生成した可燃性ガスは、内側回転炉(2)に設けられたガス抜き管(4)を通じて加熱炉(1)の燃焼空間に排出される。排出された可燃性ガスは、加熱炉(1)内においてガス導入管(11)から供給された酸化剤としての空気と混合されて燃焼する。そして、可燃性ガスが十分に発生し、その燃焼により内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)を加熱できる様になった時点で、補助バーナー(13)の作動を停止し、ガス抜き管(4)から加熱炉(1)の燃焼室に排出される可燃性ガスの燃焼熱により内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)の加熱を続ける。
【0037】
ガス導入管(11)から供給する酸化剤としては、空気の他、酸素や酸素富化空気でもよい。酸化剤の供給量は、可燃性ガスの発生量、加熱炉(1)内の酸素濃度、加熱炉(1)の温度、内側回転炉(2)及び外側回転炉(3)の温度を勘案して制御される。
【0038】
加熱炉(1)内の酸素濃度は、通常、絶乾状態におけるカーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が50重量%以上の場合で5容量%以下とされ、絶乾状態におけるカーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が50重量%未満の場合で5〜15容量%とされる。その理由は次の通りである。すなわち、加熱炉(1)にてダイオキシン類の発生を抑制するには、加熱炉(1)に供給する酸化剤の量を多くして可燃性ガスを完全燃焼させるのがよい。しかしながら、カーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が多くなると、当然ながら可燃性ガスの量が多くなり、供給される酸化剤の量も多くなるので経済的ではない。
【0039】
そこで、カーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が50重量%以上の場合は、酸素濃度を5容量%以下とされ、カーシュレッダーダストの加熱乾留および再資源化ガラスの焼成に必要な熱量を生成するに足る燃焼に制御される。その場合、多くの可燃性ガスは、燃焼、軽質化、改質されることなく、ガス排出管(12)から排出され、別途設けられた燃焼炉(図示省略)で完全燃焼されるか、或いは、改質装置(図示省略)で軽質化または改質される。他方、カーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が50重量%未満の場合は、生成した可燃性ガスを加熱炉(1)で完全燃焼させるため、酸素濃度を5〜15容量%とされる。
【0040】
また、加熱炉(1)には、水分供給管(図示省略)を通じて水および/またはスチームを供給するのが好ましい。水および/またはスチームの供給により、加熱炉(1)内の可燃性ガスは、水性ガス反応を生起し、可燃性ガスの軽質化、改質が行われる。更に、カーシュレッダーダストの構成および性状が変動しても、加熱炉(1)への水および/またはスチームの供給量の増減により、水性ガス反応量、それに伴う熱発生量、加熱量を容易に調節できるため、運転が暴走することがなく、処理の安定化を図ることが出来る。また、水および/またはスチームを供給することにより、可燃性ガスが蒸気で稀釈されるため、重合およびタール化が抑制される。
【0041】
水および/またはスチームの供給量は、カーシュレッダーダスト中の有機成分量に対して通常は重量比で0.2〜3.0倍である。水および/またはスチームの量が0.2倍未満の場合は、ダイオキシン類の発生を抑制することが困難となり、ガス排出管(12)から排出される排ガス中のダイオキシン類の濃度が高くなることがある。一方、水および/またはスチームの量が3.0倍を超える場合は、加熱炉(1)が大型化するので好ましくない。
【0042】
通常、加熱炉(1)内の温度は700〜950℃に設定される。そして、加熱炉(1)内の圧力は、内側回転炉(2)で発生した重質の可燃性ガスが加熱炉(1)へ排出される様に、内側回転炉(2)内のガス圧力よりも僅かに低く保持される。加熱炉(1)では重質の可燃性ガスが酸化剤と混合して部分燃焼し、スチームと混合して水性ガス化され、それらの反応に伴って発生する熱が外側回転炉(3)を介して内側回転炉(2)のカーシュレッダーダストに伝達される。
【0043】
内側回転炉(2)には、上記の様に加熱乾留によって可燃性ガスと炭化混合物を得るため、第1供給装置(21)からカーシュレッダーダストを供給する。第1供給装置(21)においては、カーシュレッダーダストがホッパー(21b)によってスクリューコンベヤ(21a)に投入され、スクリューコンベヤ(21a)から内側回転炉(2)の一端側へ略一定量で供給される。内側回転炉(2)は、他端側が低くなる様に水平レベルに対して所定角度傾斜した状態に設置されているため、その回転に伴って内部のカーシュレッダーダストが漸次他端側へ移送されながら加熱処理される。
【0044】
内側回転炉(2)内の酸素濃度は、通常、3容量%以下とされる。酸素濃度が3容量%を超える場合は、ダイオキシン類の発生を抑制することが困難になる。カーシュレッダーダストの加熱乾留は、通常、空気遮断状態下で行われる。しかしながら、原料のカーシュレッダーダスト中に酸素が含有されている場合は、加熱乾留中の熱分解により、内側回転炉(2)内の可燃性ガス中に酸素ガスとして存在することがある。そして、内側回転炉(2)の温度が可燃性ガスの着火温度よりも高い場合、生成した酸素ガスは、その酸素当量分の可燃性ガスを燃焼(部分燃焼)させる。
【0045】
内側回転炉(2)の温度が可燃性ガスの着火温度よりも低い場合は、酸素ガスが可燃性ガスの燃焼によって消費されることがないので、酸素濃度が3容量%を超えることがある。この場合、内側回転炉(2)内の温度を可燃性ガスの着火温度よりも高くして、可燃性ガスの部分燃焼によって酸素ガスを消費する等の手段により、内側回転炉(2)内の酸素濃度を3容量%以下にするのが好適である。通常、内側回転炉(2)内の温度は450〜550℃に保持される。
【0046】
内側回転炉(2)においては、カーシュレッダーダストのガス化に必要な熱が加熱炉(1)内の重質可燃性ガスの部分燃焼によって十分賄われるため、精製された高価な燃料は殆ど不要である。そして、上記のカーシュレッダーダストの加熱乾留により、取り扱いが容易で且つ貯蔵が可能であって、ガスタービンやボイラの燃料として利用可能な軽質可の燃性ガス及び有用な非鉄金属を含む炭化混合物が得られる。
【0047】
内側回転炉(2)で得られた炭化混合物は、第1排出装置(22)を通じて装置外に取り出すことが出来る。そして、取り出された炭化混合物は、溶融しておらず、崩壊し易いため、風簸、水簸などの比重差を利用した選別操作により、炭化混合物からは、還元雰囲気下で酸化されなかった銅線屑などの非鉄金属を容易に回収できる。また、上記の炭化混合物の灰分に硫黄と塩素が固定されるため、ガス排出管(12)を通じて得られる軽質可燃性ガスは、これに含まれる硫黄と塩素の量が微量であり且つこれらは塩基性溶液によって容易に吸収、除去できるため、精製が容易であり、環境汚染の問題もない。
【0048】
他方、外側回転炉(3)には、再資源化ガラスを焼成するため、第2供給装置(31)から前述の再資源化ガラスと発泡剤を供給する。第2供給装置(31)においては、ホッパー(31b)から再資源化ガラスと発泡剤がゲートバルブ(31c)を介して外側回転炉(3)の一端側のシューター(36)に一定のタイミングで断続的に投入され、シューター(36)を通じて外側回転炉(3)に装入される。そして、外側回転炉(3)に供給された再資源化ガラス及び発泡剤は、当該外側回転炉の内周面に設けられたガイドスクリュー(33)により、外側回転炉(3)の回転に伴って当該外側回転炉の他端側へ漸次移送されながら加熱焼成される。
【0049】
外側回転炉(3)に供給される再資源化ガラスは、微粉砕されたガラス粉体であれば特に制限はないが、前述のガラス粉体に発泡剤とベントナイト、水ガラス等のバインダーと水とを添加し、混練りした後に成形したペレットとして供給してもよい。発泡剤としては、炭化ケイ素、微粉カーボン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、石灰石、タルクの群から選択される少なくとも1種類の粉末が挙げられる。また、発泡剤として、自動車鋳物工場から排出される、炭化珪素、鉄などを含有する研磨汚泥やスラッジを使用することも出来る。通常、再資源化ガラスに対する発泡剤の量は1〜5重量%である。また、ペレットにした場合の再資源化ガラスに対するバインダーの量は3〜5重量%であり、再資源化ガラスに対する水の量は15〜25重量%である。
【0050】
前述の可燃性ガスの燃焼熱で加熱される外側回転炉(3)においては、ガラス粉体を含有するペレットが加熱焼成されて発泡する。通常、ペレットが発泡する外側回転炉(3)の温度は700〜900℃であり、外側回転炉(3)内でのペレットの滞留時間は20〜60分間とされる。そして、焼成して得られた発泡ガラスは、第2排出装置(32)から装置外へ取り出され、空気によって冷却される。
【0051】
外側回転炉(3)における上記の加熱処理により、例えば比重が0.1〜1.5g/cm程度の発泡ガラスを得ることが出来る。そして、得られた発泡ガラスは、鉄鋼用保温材、断熱・防音ボード、断熱・防音床材、土壌改良材、屋上緑化人工土壌材などに利用できる。上記の様な外側回転炉(3)における再資源化ガラスの加熱焼成に必要な熱は、カーシュレッダーダストの加熱乾留によって生成した可燃性ガスを加熱炉(1)内で燃焼することによって十分賄われるため、外部からの燃料は殆ど不要である。
【0052】
上記の様に、本発明の加熱処理装置においては、内側回転炉(2)と外側回転炉(3)から成る二重構造の回転炉が加熱炉(1)に挿通され、内側回転炉(2)に設けられたガス抜き管(4)が外側回転炉(3)を貫通して加熱炉(1)の燃焼空間に伸長されており、内側回転炉(2)に第1被処理物を供給し、同時に外側回転炉(3)に第2被処理物を供給し、内側回転炉(2)の加熱乾留処理によって発生する可燃性ガスを加熱炉(1)の燃焼空間に導いて燃焼させることにより、その燃焼熱を利用し、内側回転炉(2)において第1被処理物を加熱乾留処理し、同時に、外側回転炉(3)において第2被処理物を加熱処理することが出来る。換言すれば、第1被処理物の加熱乾留によって得られた可燃性ガスにより、内側回転炉(2)と外側回転炉(3)を同時に加熱でき、燃焼熱を一層有効に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る加熱処理装置の全体構造を一部破断して示す側面図である。
【図2】本発明の加熱処理装置における加熱炉と各回転炉の配置関係を回転炉の軸線に直交する断面で示した縦断面図である。
【図3】本発明の加熱処理装置における外側回転炉の構造を一部破断して示す部分的な斜視図である。
【図4】本発明の加熱処理装置におけるガス抜き管の外側回転炉に対する接続構造を示す平面図および縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 :加熱炉
11 :ガス導入管
12 :ガス排出管
13 :補助バーナー
2 :内側回転炉
21 :第1供給装置
22 :第1排出装置
31 :第2供給装置
32 :第2排出装置
36 :シューター
36c:投入口
4 :ガス抜き管
7 :接続プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被処理物としての廃棄物を加熱乾留処理して可燃性ガスと炭化混合物に分解し、更に第2被処理物を加熱処理する加熱処理装置であって、ガス導入管とガス排出管とが付設された加熱炉、当該加熱炉に挿通され且つその各端部にそれぞれ第1供給装置および第1排出装置が配置された円筒状の内側回転炉、当該内側回転炉の外側に同心状に配置されて前記加熱炉に挿通され且つその各端部にそれぞれ第2供給装置および第2排出装置が配置された円筒状の外側回転炉を備え、前記内側回転炉には、その周面側に突出し且つ前記外側回転炉を貫通して前記加熱炉の燃焼空間に至るガス抜き管が複数設けられており、前記内側回転炉に第1被処理物を供給し且つ前記外側回転炉に第2被処理物を供給し、前記内側回転炉における加熱乾留により発生し且つ前記ガス抜き管から排出される可燃性ガスを前記加熱炉中で燃焼させることにより、前記内側回転炉および前記外側回転炉を加熱する様になされていることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項2】
内側回転炉と外側回転炉とが別体で設けられ、内側回転炉に設けられた各ガス抜き管が外側回転炉に対して遊動可能に接続されている請求項1に記載の加熱処理装置。
【請求項3】
内側回転炉の回転力が各ガス抜き管を介して外側回転炉に伝達され、外側回転炉が内側回転炉に同伴回転する様に構成されている請求項1又は2に記載の加熱処理装置。
【請求項4】
加熱炉に補助バーナーが付設されている請求項1〜3の何れかに記載の加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−240031(P2007−240031A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59825(P2006−59825)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(598098467)株式会社 メッツコーポレーション (10)
【出願人】(300078615)広島ガステクノ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】