説明

加熱調理器

【課題】 調理時間が短く、調理開始時の庫内温度が低い場合、触媒ヒーターへの通電を行わずに調理物を加熱する加熱調理器を提供する。
【解決手段】 調理庫3内に設けられた上下ヒーター1,2と、調理庫3内と外気に通じる排気経路6に設置された触媒7を加熱するための触媒ヒーター8と、排気経路6の触媒7の下流側に設置された除煙ファン9と、調理開始時に調理時間が所定時間未満で、かつ調理開始時の庫内温度が所定温度未満であったとき、触媒ヒーター8のOFF状態を維持しながら除煙ファン9及び上下ヒーター1,2を制御する主制御部15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理中に発生する調理物の煙や臭いの素となる物質を酸化分解する触媒を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、調理庫内に設けられた調理用の上ヒーター及び下ヒーターと、排気経路に設置された触媒と、触媒ヒーターと、除煙ファンとを備え、調理開始時に触媒ヒーターに一定時間通電して、触媒が浄化作用を行うのに必要な温度になるまで加熱し、その後、調理用の上ヒーター及び下ヒーターと除煙ファンとに通電して調理物を加熱するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−317947(第3−4頁、図1,図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、加熱調理器は、一般的に魚を焼くときに用いられるが、加熱調理器を例えばトースターの代わりとして食パン等を焼く使用者もいる。食パン等は、調理時間が3〜4分程度で短く、煙も殆ど発生しない調理物であるが、前述した従来の加熱料理器で食パン等を焼く場合、調理開始時に触媒ヒーターに一定時間通電し、その後、3〜4分程度の間、調理用ヒーターと除煙ファンとに通電して食パン等を焼くことになる。前述の如く調理時間が短く、煙も殆ど発生しない食パン等の調理物においては、触媒ヒーターへの一定時間の通電は不要であり、その分調理時間が長くなっていた。
一般的な酸化触媒の主成分は白金とパラジウムであるが、そのパラジウムにおけるアルコールの酸化分解作用は、以下に示す化学式(1)〜(3)のようになる。
C2H5OH(エタノール)+1/2O2(酸素) →
CH3CHO(アセトアルデヒド)+H2O(水) …(1)
CH3CHO(アセトアルデヒド)+1/2O2(酸素) → CH3COOH(酢酸) …(2)
CH3COOH(酢酸)+2O2(酸素) → 2CO2(二酸化炭素)+2H2O(水) …(3)
調理時間が短く、煙も殆ど発生しない食パン等の調理物を調理するときに、触媒ヒーターへの一定時間通電を行わずに、調理開始時と同時に触媒ヒーターへの通電を開始した場合、調理時間が短いため触媒の温度が十分に上昇せず、食パンのようにアルコール分を含んだ調理物では、煙が殆ど発生しないものの前記化学式(2)までの反応で終わってしまい、食パンに酢酸臭が発生していた。
【0004】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、調理時間が短く、調理開始時の庫内温度が低い場合、触媒ヒーターへの通電を行わずに調理物を加熱する加熱調理器を得るものである。第2の目的は、調理時間が短く、調理開始時の庫内温度が高い場合、或いは調理時間が長い場合、調理開始時に触媒ヒーターに通電して、触媒温度による浄化作用と除煙が充分に行える加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る加熱調理器は、調理庫内に設けられた調理用ヒーターと、調理庫内と外気に通じる排気経路に設置された触媒を加熱するための触媒ヒーターと、排気経路の触媒の下流側に設置された除煙ファンと、調理開始時に調理時間が所定時間未満で、かつ調理開始時の庫内温度が所定温度未満であったとき、触媒ヒーターのOFF状態を維持しながら除煙ファン及び調理用ヒーターを駆動させる制御手段とを備えたものである。
本発明に係る加熱調理器は、調理庫内に設けられた調理用ヒーターと、調理庫内と外気に通じる排気経路に設置された触媒を加熱するための触媒ヒーターと、排気経路の触媒の下流側に設置された除煙ファンと、調理開始時に調理時間が所定時間未満で、かつ調理開始時の庫内温度が所定温度以上であったとき、触媒ヒーター及び除煙ファンを駆動させると共に、調理用ヒーターを駆動させる制御手段とを備えたものである。
また、本発明に係る加熱調理器は、調理庫内に設けられた調理用ヒーターと、調理庫内と外気に通じる排気経路に設置された触媒を加熱するための触媒ヒーターと、排気経路の触媒の下流側に設置された除煙ファンと、調理開始時に調理時間が所定時間以上のとき、触媒ヒーター及び除煙ファンを駆動させると共に、調理用ヒーターを駆動させる制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、調理開始時に調理時間が所定時間未満で、かつ調理開始時の庫内温度が所定温度未満であったとき、触媒ヒーターのOFF状態を維持しながら除煙ファン及び調理用ヒーターを駆動させるようにしたので、調理時間が短く煙も殆ど出ない調理物に対して触媒ヒーターに通電する時間分短くすることができ、前述した従来の加熱調理器と比べ消費電力を抑えることができる。
本発明においては、調理開始時に調理時間が所定時間未満で、かつ調理開始時の庫内温度が所定温度以上であったとき、触媒ヒーター及び除煙ファンを駆動させると共に、調理用ヒーターを駆動させるようにしたので、アルコール分を含んだ食パンのような調理物の場合でも酢酸臭を完全に除去できるという効果がある。
また、本発明においては、調理開始時に調理時間が所定時間以上のとき、触媒ヒーター及び除煙ファンを駆動させると共に、調理用ヒーターを駆動させるようにしたので、触媒温度による浄化作用と除煙が充分に行われるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の実施の形態に係る加熱調理器の構成を示すブロック図である。
本実施の形態の加熱調理器は、例えばグリルのユニットとして組込式の電磁調理器に搭載されたもので、調理庫3と、この調理庫3内の上部に設置された上ヒーター1と、調理庫3内の下部側に設置された下ヒーター2と、調理庫3内に出し入れ自在に設置された受け皿4及びその受け皿4に載置された焼き網5と、調理庫3から延びて外気に通じる排気経路6と、排気経路6の吸引口側に配設された触媒ヒーター8と、排気経路6の触媒ヒーター8の上流側に設置された触媒7と、排気経路6の触媒7の上流側に設置された除煙ファン9と、調理庫3内の温度を検出する庫内温度センサ10と、触媒の加熱温度を検出する触媒温度センサ11とを備えている。
【0008】
また、この加熱調理器は、上ヒーター1及び下ヒーター2の通電を制御する上下ヒーター制御部12と、触媒ヒーター8の通電を制御する触媒ヒーター制御部13と、除煙ファン9の運転を制御する除煙ファン制御部14と、主制御部15と、各種のキーが設けられた操作部16と、表示部17と、調理終了等を音で知らせる報知部18とを備えている。操作部16と表示部17は、図示していないがトッププレートの外枠に配置されている。また、操作部16に設けられた各種のキーは、手動メニューキー、自動メニューキー、火力設定キー、調理時間設定キー、調理スタートキー等である。
【0009】
前記の主制御部は、例えば1チップマイコンからなり、調理スタート時に調理時間が所定時間の例えば5分以上かどうかを判定し、調理時間が5分未満のときに調理スタート時の庫内温度が所定温度の例えば60℃未満であったとき、触媒ヒーター8のOFF状態を維持しながら上下ヒーター制御部12及び除煙ファン制御部14をそれぞれ制御して、上下ヒーター1,2に通電させると共に、除煙ファン9を駆動させる。調理時間が5分未満で、かつ、調理スタート時の庫内温度が60℃以上のとき、上下ヒーター制御部12、触媒ヒーター制御部13及び除煙ファン制御部14をそれぞれ制御して、上下ヒーター1,2及び触媒ヒーター8に通電させると共に、除煙ファン9を駆動させる。調理時間が5分以上のときは、前記と同様に上下ヒーター制御部12、触媒ヒーター制御部13及び除煙ファン制御部14をそれぞれ制御して、上下ヒーター1,2及び触媒ヒーター8に通電させると共に、除煙ファン9を駆動させる。庫内温度は、庫内温度センサ10を通じて検知しており、火力に応じた庫内温度になるように上下ヒーター1,2を制御している。また、触媒7の温度は、触媒温度センサ11を通じて検知しており、触媒温度がほぼ一定になるように触媒ヒーター8を制御している。
【0010】
次に、本実施の形態の動作を図2に基づいて説明する。図2は実施の形態における手動調理時の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
焼き網5に載せた調理物が受け皿4と共に調理庫3に収納された後、操作部16の手動メニューキーがONされると(S1)、主制御部15は、表示部7に火力及び調理時間を選択可能に表示し、火力設定キーにより例えば上ヒーター1及び下ヒーター2の火力が選択操作され(S2)、次いで、調理時間設定キーにより調理時間が設定されて(S3)、調理スタートキーがONされると(S4)、主制御部15は、調理時間設定キーにより設定された調理時間が5分以上かどうかを判定する(S5)。調理時間が5分以上のときはS7に進むが、調理時間が5分未満のときは、庫内温度センサ10により検出された庫内温度を読み込んで、その庫内温度が60℃以上かどうかを判定する(S6)。
【0011】
調理スタート時の庫内温度が60℃以上のときはS7に進むが、庫内温度が60℃未満のとき、つまり、調理時間が5分未満で短く、かつ調理スタート時の庫内温度が60℃未満で低いときは、触媒7が浄化作用を行うのに必要な温度まで上げることができず、また、調理物から発生する煙も少ないため、触媒ヒーター8のOFF状態を維持し、上下ヒーター1,2及び除煙ファン9をONさせる(S8)。この場合、主制御部15は、火力設定キーにより選択操作された火力に応じた制御信号を上下ヒーター制御部12に出力すると共に、除煙ファン制御部14に運転開始信号を出力する。この時、上下ヒーター制御部14は、制御信号に基づいて上ヒーター1及び下ヒーター2を通電制御し、除煙ファン制御部14は、運転開始信号に応じて除煙ファン9を駆動する。
【0012】
主制御部15は、S5において、調理時間が5分以上設定されていることを確認したとき、触媒7が浄化作用を行うのに必要な温度まで上げることができると判断して、触媒ヒーター8をONさせると共に、上下ヒーター1,2及び除煙ファン9をONさせる(S7)。この場合、主制御部15は、通電開始信号を触媒ヒーター制御部13に出力して触媒ヒーター8に通電させ、火力設定キーにより選択操作された火力が得られるように上下ヒーター制御部12を通じて上ヒーター1及び下ヒーター2を通電制御させ、運転開始信号を除煙ファン制御部14に出力して除煙ファン9を駆動させる。
【0013】
また、主制御部15は、S6において、60℃以上の庫内温度を確認したとき、連続調理とみなし、触媒7が浄化作用を行うのに必要な温度まで達していると判断して、前記と同様にS7に進んで、通電開始信号を触媒ヒーター制御部13に出力して触媒ヒーター8に通電させ、火力設定キーにより選択操作された火力が得られるように上下ヒーター制御部12を通じて上ヒーター1及び下ヒーター2を通電制御させ、運転開始信号を除煙ファン制御部14に出力して除煙ファン9を駆動させる。
【0014】
次に、図3に基づいて動作を説明する。図3は実施の形態における自動調理時の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
前記と同様に調理物を載せた焼き網5が受け皿4と共に調理庫3に収納された後、操作部16の自動メニューキーがONされると(S11)、主制御部15は、表示部7にメニューを選択可能に表示し、自動メニューキーによりメニューが選択操作され(S12)、次いで、調理スタートキーがONされると(S13)、主制御部15は、選択されたメニューに設定された調理時間が5分以上かどうかを判定する(S14)。
【0015】
前述したように、調理時間が5分未満で短く(S14)、かつ調理スタート時の庫内温度が60℃未満で低いときは(S15)、触媒7が浄化作用を行うのに必要な温度まで上げることができず、また、調理物から発生する煙も少ないため、触媒ヒーター8のOFF状態を維持し、上下ヒーター1,2及び除煙ファン9をONさせる(S17)。また、S14において、調理時間が5分以上設定されていることを確認したときは、触媒7が浄化作用を行うのに必要な温度まで上げることができると判断して、触媒ヒーター8をONさせると共に、上下ヒーター1,2及び除煙ファン9をONさせる(S16)。また、S15において、60℃以上の庫内温度を確認したときは、連続調理とみなし、触媒7が浄化作用を行うのに必要な温度まで達していると判断してS16に進み、前記と同じ動作を行う。
【0016】
以上のように実施の形態によれば、設定された調理時間が5分未満で短く、かつ調理スタート時の庫内温度が60℃未満で低いとき、触媒ヒーターをONすることなく、除煙ファン及び上下ヒータをONして調理物を加熱するようにしたので、調理時間が短く煙も殆ど出ない調理物に対して触媒ヒーターに通電する時間分短くすることができ、前述した従来の加熱調理器と比べ消費電力を抑えることができる。
【0017】
また、設定された調理時間が5分未満で短く、調理スタート時の庫内温度が60℃以上で高いとき、触媒ヒーターをONすると共に、除煙ファン及び上下ヒータをONして調理物を加熱するようにしたので、アルコール分を含んだ食パンのような調理物の場合でも酢酸臭を完全に除去できるという効果がある。
【0018】
また、設定された調理時間が5分以上のとき、触媒ヒーターをONすると共に、除煙ファン及び上下ヒータをONして調理物を加熱するようにしたので、触媒温度による浄化作用と除煙が充分に行われるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態における手動調理時の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態における自動調理時の加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0020】
1 上ヒーター、2 下ヒーター、 3 調理庫、4 受け皿、5 焼き網、6 排気経路、7 触媒、8 触媒ヒーター、9 除煙ファン、10 庫内温度センサ、11 触媒温度センサ、12 上下ヒーター制御部、13 触媒ヒーター制御部、14 除煙ファン制御部、15 主制御部、16 操作部、17 表示部、18 報知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理庫内に設けられた調理用ヒーターと、
調理庫内と外気に通じる排気経路に設置された触媒を加熱するための触媒ヒーターと、
前記排気経路の前記触媒の下流側に設置された除煙ファンと、
調理開始時に調理時間が所定時間未満で、かつ調理開始時の庫内温度が所定温度未満であったとき、前記触媒ヒーターのOFF状態を維持しながら前記除煙ファン及び調理用ヒーターを駆動させる制御手段と
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記調理時間が所定時間未満で、かつ調理開始時の庫内温度が所定温度以上のとき、前記触媒ヒーター及び除煙ファンを駆動させると共に、前記調理用ヒーターを駆動させることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記調理時間が所定時間以上のとき、前記触媒ヒーター及び除煙ファンを駆動させると共に、前記調理用ヒーターを駆動させることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
調理庫内に設けられた調理用ヒーターと、
調理庫内と外気に通じる排気経路に設置された触媒を加熱するための触媒ヒーターと、
前記排気経路の前記触媒の下流側に設置された除煙ファンと、
調理開始時に調理時間が所定時間未満で、かつ調理開始時の庫内温度が所定温度以上であったとき、前記触媒ヒーター及び除煙ファンを駆動させると共に、前記調理用ヒーターを駆動させる制御手段と
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
調理庫内に設けられた調理用ヒーターと、
調理庫内と外気に通じる排気経路に設置された触媒を加熱するための触媒ヒーターと、
前記排気経路の前記触媒の下流側に設置された除煙ファンと、
調理開始時に調理時間が所定時間以上のとき、前記触媒ヒーター及び除煙ファンを駆動させると共に、前記調理用ヒーターを駆動させる制御手段と
を備えたことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−75309(P2006−75309A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261852(P2004−261852)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】