説明

加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーからなる複合成形体およびその用途

本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを溶融接着させた場合に、接着剤層を介さずとも十分な接着強度が得られ、剥離時に母材破壊を生じる成形複合体を形成し得る加硫ゴム成形体、および溶融接着された成形複合体を提供することを目的とする。
本発明の加硫ゴム成形体(1)は、示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度が10%以上のオレフィン系樹脂を2〜10重量%含有する。
また、本発明の成形複合体は、当該加硫ゴム成形体(1)と、示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度が10%以上のオレフィン系樹脂の含有量が10重量%を超え、かつゲル分率が30重量%以下である熱可塑性エラストマーからなる成形体(2)とが接合してなるものである。
本発明の成形複合体は、自動車内外装材用、特にウェザーストリップ用途に用いるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマーと加硫ゴムとを融着成形した複合成形体(成形複合体ともいう)およびその用途に関し、詳しくは、特に自動車のウェザーストリップ、ドアトリム等のコーナー異形接続部や異形端末部として使用されるに複合成形体に関する。
【背景技術】
従来、接続部を有するウェザーストリップの製造は、一般的に、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(EPDM)のゴム配合物からなる押出加硫成形品を裁断して、一方または双方から金型にセットし、形成されるキャビティに、このEPDMのゴム配合物と同種のゴム成形材料を注入し加硫型成形することにより行なわれている。
他方、この型成形の材料として、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体(EPDM)を使用した加硫ゴムに代わって、生産性、環境対応性および軽量化の見地から、加硫工程が不要な熱可塑性エラストマー(組成物)が使用され始めている。
しかしながら、一般に加硫ゴムと熱可塑性エラストマーとは、加硫接着等ができないため、接着剤を用いて一体化がなされたりしていたが、生産性あるいは対環境性の点で十分とは言えない。
熱可塑性エラストマーの組成を工夫することにより接着性を向上させる技術としては、熱可塑性エラストマーに極性基含有樹脂を添加するものが挙げられる。(例えば特開平2−115249号公報、特開平8−244068号公報、特開平10−324200号公報)
また、熱可塑性エラストマー成形前に特定のエチレン・1−オクテンコポリマーを添加するものもある。(例えば特開平9−40814号公報)
加硫ゴムの組成を工夫することにより接着性を向上させる技術としては、従来の加硫ゴムに微結晶性のポリプロピレンを添加するもの(例えば特開平10−7849号公報参照。)が挙げられる。しかしながら、アタクチックポリプロピレンのような微結晶性のポリプロピレンを添加すると、従来の加硫ゴムのゴム弾性が低下したり、経時後の成形品のベタツキ等が生じる場合がある。
以上のような熱可塑性エラストマーや加硫ゴムの組成に関しての技術だけでなく、加硫ゴムを裁断した後、切断面の凹凸を付けてアンカー効果を得ようとするもの(例えば特開平9−118133号公報参照。)や、加硫ゴムの切断面にポリオレフィン樹脂パウダーを塗布したもの(例えば特開平6−47816号公報参照。)等の技術もある。
本発明は、加硫ゴム成形体およびその用途に関し、さらに詳しくは、特に自動車のウェザーストリップ、ドアトリム等のコーナー異形接続部や異形端末部として使用される熱可塑性エラストマーを融着成形するのに好適な加硫ゴム成形体およびその用途に関する。
【発明の開示】
本発明は、接着剤層を介さずとも熱可塑性エラストマーを融着させた場合、十分な接着強度と剥離時に母材破壊を生じる成形体を形成し得る加硫ゴム成形体およびその加硫ゴム成形体に熱可塑性エラストマーを融着させた成形複合体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
本発明の加硫ゴム成形体は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとの融着用として用いられる加硫ゴム成形体であって、かつ示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度が10%以上のオレフィン系樹脂を2〜10重量%含有することを特徴とする加硫ゴムの成形体である。また、本発明の成形複合体は、示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度が10%以上のオレフィン系樹脂を2〜10重量%含有する加硫ゴム成形体(1)と、示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度が10%以上のオレフィン系樹脂含量が10重量%を超え、かつゲル分率が30wt%以下である熱可塑性エラストマーからなる成形体(2)が、接合してなることを特徴とする成形複合体である。前記成形複合体は、自動車内外装材用、特にウェザーストリップ用途に用いるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1の(A)は、直線部が加硫ゴム成形体から形成され、コーナー部分が熱可塑性エラストマー組成物から形成されている自動車用ウェザーストリップの1例を示す模式斜視図であり、図1の(B)は、そのウェザーストリップのコーナー部分の形成方法を説明するための模式斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る加硫ゴム成形体およびその用途について具体的に説明する。
加硫ゴム成形体
本発明に係る加硫ゴム成形体は、オレフィン系樹脂を2〜10重量%含有するものである。
本発明の「加硫」の定義は、たとえば高分子大辞典(丸善株式会社、1994年刊)においてなされているような架橋した分子の網目構造をつくることであり、加硫ゴムは完全に架橋したゴムである。
加硫ゴムに配合するオレフィン系樹脂は、示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度10%以上のオレフィン系樹脂であり、このようなオレフィン系樹脂として炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数2〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。
炭素原子数2〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン、およびこれらの組合わせが挙げられる。
このようなオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR;ASTMD1238、190℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.1〜100g/10分である。またこのようなオレフィン系樹脂の[η](デカリン中、135℃で測定した極限粘度)は0.1〜10dl/g、好ましくは0.5〜5dl/gである。
上記オレフィン系樹脂の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が上げられるが、特に低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
本発明の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンは、密度(ASTM D 1505)が0.870〜0.94g/cm、好ましくは0.875〜0.935g/cm、さらに好ましくは0.880〜0.930g/cmであることが望ましい。
また本発明の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンは、そのDSC測定において80〜140℃、好ましくは90〜130℃、より好ましくは100〜130℃に少なくとも1つの吸熱ピーク(Tm)を有する。尚、DSC測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持したのち、100℃/分で−150℃まで10℃/minで降温し、ついで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。
この低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン単独重合体ないしエチレンと炭素原子数3〜20、好ましくは3〜8のα−オレフィンとからなる結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体である。コモノマーを含む場合には、そのコモノマー含量は少量であり、全体の25モル%以下である。
本発明で用いられる低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンは、示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度が10%以上のものであるのが通常である。また、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ヘキセン−共重合体、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられ、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。例えば2種以上のブレンドでも良く、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの2種からなっていても良い。また、低密度ポリエチレンを2種以上、直鎖状低密度ポリエチレンを2種以上、でも良い。また、結晶性エチレン系重合体の製造時に用いられる触媒等は特に制約しないが、一般的なチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒等によって製造される。
本発明で用いられる低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンは、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)が、好ましくは0.01〜500g/10分以下、通常0.1〜100g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/10分であることが望ましい。
本発明で用いられるポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4〜20のα−オレフィンとをランダム共重合あるいはブロック共重合したプロピレン共重合体共重合体が挙げられる。
炭素原子数4〜20のα−オレフィンのα−オレフィンとしては、具体的には、前記したα−オレフィンを挙げることができる。プロピレンと共重合させるコモノマーとしては、エチレン、1−ブテンが好ましい。
このプロピレン共重合体におけるプロピレンから誘導される構成単位含量(プロピレン含量)は、通常50〜90重量%であり、コモノマーから誘導される構成単位含量(コモノマー含量)は、通常50〜10重量%である。なお、プロピレン共重合体の組成は、13C−NMRによる測定で求められる。
ポリプロピレンは、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜80g/10分、さらに好ましくは0.3〜60g/10分であることが望ましい。
ポリプロピレンのDSCにて測定される融点(Tm)は、通常170℃以下である。
上記の加硫ゴム成形体のオレフィン系樹脂含有量は、2重量%以上10重量%以下である。好ましくは3重量%〜8重量%、さらに好ましくは4重量%〜5重量%である。(加硫ゴム成形体の総重量を100重量%とする。)
本発明に係る加硫ゴム成形体としては、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが主成分であるのが好ましい。エチレン・α−オレフィン非共役ポリエン共重合体ゴムにおけるα−オレフィンとしては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンが好ましく、具体的には前述したα−オレフィンを挙げることができる。これらのα−オレフィンのうち、炭素原子数3〜8のα−オレフィン、たとえばプロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、耐熱老化性、強度特性、ゴム弾性、耐寒性および加工性に優れた加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、(a)エチレンから導かれる単位と(b)炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位とを、50/50〜90/10[(a)/(b)]のモル比で含有していることが好ましい。このモル比はより好ましくは65/35〜90/10、さらに好ましくは65/35〜85/15、特に好ましくは65/35〜80/20である。
また、非共役ポリエンとしては、具体的には、
1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;
2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ナノジエン等のトリエンなどが挙げられる。中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ナノジエンが好ましい。
これらの非共役ポリエンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムのヨウ素価は、架橋効率の高いゴム組成物が得られ、耐圧縮永久歪み性に優れる加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られ、かつ、コスト的に有利である点で、1〜40であることが好ましく、1〜30であることが更に好ましい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムのムーニー粘度[ML1+4(125℃)]は強度特性、耐圧縮永久歪み性および加工性に優れた加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、10〜250が好ましく、更に40〜150が好ましい。これらのエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、単独で用いてもよく、また2種類以上組み合わせて用いてもよい。
加硫ゴム中には、十分な機械強度を有する押出成形加硫ゴム成形体を得るために、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを30〜300重量部の割合で用いるのが好ましい。
カーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、機械的強度および製品肌の良好な加硫ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるという点で、窒素吸着比表面積が10〜100m/gであることが好ましい。
加硫ゴム中には、意図する加硫物の用途に応じて、老化防止剤、加工助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤等の従来公知の配合剤が配合される。
また、加硫ゴム中には補強剤として無機充填剤を用途に応じて適宜用いることができるが、通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して最大100重量部である。
無機充填剤としては、具体的には、シリカ、軟質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
加硫ゴム中に配合される軟化剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。具体的には、
プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油系軟化剤;
トール油;
サブ、(ファクチス);
蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;
ナフテン酸;
パイン油、ロジンまたはその誘導体;
テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;
マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、末端変性ポリイソプレン、水添末端変性ポリイソプレン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。中でも、石油系軟化剤、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。これらの軟化剤の配合量は、加硫物の用途により適宜選択される。
加硫ゴムの加硫に用いる加硫剤としては、イオウおよびイオウ化合物が挙げられる。なお、ここでいう加硫ゴムとは、イオウを用いて架橋したもののみならず、他の架橋剤で架橋したものも含まれる。
イオウとしては、具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどが挙げられる。
イオウ化合物としては、具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物などが挙げられる。また、加硫温度で活性イオウを放出して加硫するイオウ化合物、たとえばモルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなども使用することができる。
これらの中では、イオウが好ましい。
イオウまたはイオウ化合物は、前記共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜10重量部の割合で用いられる。
また、加硫剤としてイオウまたはイオウ化合物を使用するときは、加硫促進剤を併用することが好ましい。加硫促進剤としては、具体的には、
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;
2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;
ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン(DOTG)、オルソトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン系化合物;
アセトアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン(H)、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンまたはアルデヒド−アンモニア系化合物;
2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;
チオカルバニリド、ジエチルチオウレア(EUR)、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア系化合物;
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム系化合物;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩;
ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩;
亜鉛華(酸化亜鉛)等の化合物が挙げられる。
これらの加硫促進剤は、前記共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜20重量部の割合で用いられる。
加硫ゴムにおいて使用する老化防止剤としては、たとえばアミン系、ヒンダードフェノール系またはイオウ系老化防止剤等が挙げられるが、これらの老化防止剤は、本発明の目的を損なわない範囲で用いられる。
アミン系老化防止剤としては、ジフェニルアミン類、フェニレンジアミン類等が挙げられる。
イオウ系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるイオウ系老化防止剤が用いられる。
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される加工助剤を使用することができる。具体的には、リノール酸、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;前記高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。
このような加工助剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム100重量部に対して、通常10重量部以下の量で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
発泡剤としては、具体的には、重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AZBN)、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、p,p’―オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。
また、加硫ゴムの成分中に、公知の他のゴムをブレンドして用いることができる。このような他のゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
[ゴム組成物およびその加硫ゴム成形体の調製]
加硫ゴム成形体の調製の際に用いられるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム、カーボンブラック、ゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤等の添加剤を80〜170℃の温度で2〜20分間混練した後、イオウ等の加硫剤をオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
上記のようにして調製された押出成形用ゴム組成物は、押出成形機により意図する形状とし、成形と同時に、または成形物を加硫槽内に導入し、140〜300℃の温度で1〜20分間加熱することにより、加硫することができる。
加硫の工程は、通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、溶融塩槽(LCM)、PCM(Powder Curing MediumまたはPowder Curing Method)、UHF(極超短波電磁波)、スチーム等の加熱手段を用いることができる。
本発明の加硫ゴム成形体はゲル化しており、成形体を粉砕して流動性(例えばMFR)を測定しても測定不可である。
オレフィン系熱可塑性エラストマー
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマーは、「オレフィン系熱可塑性エラストマー」とは、オレフィン系樹脂とオレフィン系ゴムとからなる熱可塑性エラストマーのことを指す。
熱可塑性エラストマーとは、ゴムと類似の物理的性質、たとえば柔軟性や反発弾性を有し、通常のゴムと対照的に熱可塑性プラスチックとして加工できるものであり、このような説明は、たとえば高分子大辞典(丸善株式会社、1994年刊)においてなされている。
さらに本発明に係る熱可塑性エラストマーはオレフィン系樹脂の含有量が10重量%を超えるものであり、15〜70重量%がより好ましく、20〜60重量%がより好ましい。
本発明に使用される熱可塑性エラストマーは、海島構造のモルフォロジーを形成する熱可塑性エラストマーであって、島相の平均粒子径が2μm以下である。そして島相は主に架橋(ゲル化)した成分から構成される。ここで海島構造とはマトリックス中に分散した粒子が存在している相構造を指す。島相の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡で1万倍に拡大した写真から、任意にサンプリングし、そのサンプルについて測定することができる。具体的には、電子顕微鏡写真中の全ての島相の短径と長径とを足して平均し、島相の平均粒子径とした。
また、本発明の熱可塑性エラストマーは、ゲル分率が30重量%以下である。
本発明に係る熱可塑性エラストマーのゲル分率は、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。下限は特に制限はなく、架橋体を含有しない0重量%でも良い。ゲル分率の測定法は下記の通りである。
[ゲル分率の測定法]
試料として熱可塑性エラストマーのペレットを約100mg秤量し、325メッシュのスクリーンに包んで、密閉容器中にてこのペレットに対して充分な量である30mlのp−キシレンに、140℃で24時間浸漬する。
次に、この試料を濾紙上に取り出し、80℃にて2時間以上恒量になるまで乾燥する。ゲル分率は、次式で表わされる。
ゲル分率[重量%]=〔p−キシレン浸漬後の試料乾燥重量/p−キシレン浸漬前の試料重量〕×100
本発明に係る熱可塑性エラストマーの架橋していないエチレン系成分(エチレン系樹脂またはエチレン系ゴム)の含有量は、好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは10〜35重量%、特に好ましくは15重量%〜30重量%である。架橋していないエチレン系成分(エチレン系樹脂、エチレン系ゴム)の含有量はゲル分率により求めることができる。本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、海相は非架橋成分であり、島相が架橋成分である場合が多い。
ここでエチレン系樹脂成分としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどがあげられる。エチレン系ゴム成分としては、中でもエチレン・プロピレンゴム、エチレン・ブテン−1共重合体ゴム、エチレン・ヘキセン−1共重合体ゴム、エチレン・オクテン−1共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体ゴムなどが好ましい。このような熱可塑性エラストマーを上記の加硫ゴム成形体に溶融接着させた場合、引張剥離時に母材破壊が生じやすくなる。
次に、本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法について説明する。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系樹脂と、オレフィン系ゴムとからなるブレンド物を、架橋剤の存在下あるいは非存在下に、動的に熱処理することにより得られる。
また、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系樹脂と、オレフィン系ゴムとからなるブレンド物を、架橋剤の存在下あるいは非存在下に、動的に熱処理することにより得られた熱可塑性エラストマーに、さらに非架橋のオレフィン系樹脂及び/またはオレフィン系ゴム成分(好ましくは前記したエチレン系成分)を添加して動的に熱処理してもよい。
原料となるオレフィン系樹脂、オレフィン系ゴムの配合比率は、最終的に得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物中のオレフィン系樹脂の含有量が10重量%を越えるように、適宜決定することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー中の示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化度が10%以上であるオレフィン系樹脂の量は、熱可塑性エラストマーを沸騰キシレンで抽出し、その可溶部をメチルエチルケトン中に析出させ、得られたポリマーの重量および示差走査熱量計(DSC)から求められる。
なお、架橋剤の使用量、架橋後に添加する非架橋のオレフィン系樹脂及び/またはオレフィン系ゴム成分の量を制御することにより、目的とするゲル分率、架橋していないエチレン系成分の含有量を達成することができる。
〔オレフィン系樹脂〕
本発明の熱可塑性エラストマーの原料となるオレフィン系樹脂は、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化度が10%以上である。
このようなオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR;ASTMD1238、190℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.1〜100g/10分である。
本発明のオレフィン系樹脂としては、炭素原子数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。上記のα−オレフィンとしては、前述したα−オレフィンと同様のものを挙げることができる。上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられるが、特に低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンとしては、前記加硫ゴムに添加するオレフィン系樹脂の項目で説明したものと同様の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンを用いることができる。
高密度ポリエチレンの密度(ASTM D 1505)が0.94g/cmを超え、好ましくは 0.945〜0.980g/cm、さらに好ましくは0.950〜0.975g/cmである。
この高密度ポリエチレンは、エチレン単独重合体ないしエチレンと炭素原子数3〜20、好ましくは3〜8のα−オレフィンとからなる結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体である。コモノマーを含む場合には、そのコモノマー含量は少量であり、全体の25モル%以下である。
具体的にはエチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。
〔オレフィン系ゴム〕
本発明の熱可塑性エラストマーの原料となるオレフィン系ゴムは、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化度が10%未満である。本発明のオレフィン系ゴムとしては、炭素原子数2〜20のα−オレフィン含有量が50モル%以上の無定形ランダムな弾性共重合体であって、2種以上のα−オレフィンからなる非晶性α−オレフィン共重合体、2種以上のα−オレフィンと非共役ジエンとからなるα−オレフィン・非共役ジエン共重合体などが挙げられる。
このようなオレフィン系共重合体ゴムの具体的な例としては、以下のようなゴムが挙げられる。
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム[エチレン/α−オレフィン(モル比)=90〜50/10〜50(エチレンとα−オレフィンの合計を100とする。)]。
(2)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム[エチレン/α−オレフィン/非共役ジエン(モル比)=90〜50/10〜50/0.1〜10(エチレン、α−オレフィン、非共役ジエンの合計を100とする。)]。
上記α−オレフィンとしては、具体的には、前述したα−オレフィンが挙げられる。
また、上記非共役ジエンとしては、具体的には、前述した非共役ジエンを挙げることができ、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが好ましい。
これらの共重合体ゴムのムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、10〜250、特に40〜150が好ましい。また上記(2)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、ヨウ素価が25以下であることが好ましい。
上記のようなオレフィン系共重合体ゴムのうち、特にエチレン・プロピレン・非共役ジエンゴムが好ましく用いられる。
本発明で用いられるゴムとしては、上記オレフィン系共重合体ゴムのほかに、オレフィン系共重合体ゴム以外のゴム、たとえばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム、SEBS、ポリイソブチレンなどが挙げられる。
〔架橋剤〕
本発明で用いられる架橋剤としては、たとえば有機過酸化物、イオウ、イオウ化合物、フェノール樹脂等のフェノール系加硫剤などが挙げられるが、中でも有機過酸化物が好ましく用いられる。
有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
中でも、臭気性、スコーチ安定性の点で2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびn−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、中でも1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが 最も好ましい。
この有機過酸化物は、オレフィン系樹脂とオレフィン系ゴムとの合計量100重量部に対して、0.01〜0.4重量部、好ましくは約0.03〜0.3重量部の割合で用いられる。
本発明においては、前記有機過酸化物による架橋処理に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミド等の架橋助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーを配合することができる。このような化合物により、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンを用いると、取扱い易さ、前記被処理物であるオレフィン系樹脂やオレフィン系ゴムへの相溶性が良好であり、かつ有機ペルオキシド可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた組成物が得られるため最も好ましい。
本発明においては、このような架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーの配合量は、オレフィン系樹脂とオレフィン系ゴムの合計量100重量%に対して、通常、0.01〜0.4重量%、特に0.03〜0.3重量%の範囲が好ましい。
〔その他の成分〕
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー中に、必要に応じて、軟化剤、スリップ剤、充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、着色剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
次に動的に熱処理について説明する。「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう(以下、同じ。)。
本発明における動的な熱処理は、非開放型の装置中で行なうことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
その混練温度は、通常150〜280℃、好ましくは170〜240℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは3〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度として10〜100,000sec−1、好ましくは100〜50,000sec−1である。
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用い得るが、非開放型の装置が好ましい。
上記のようにして得られる、本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)は、通常0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分、さらに好ましくは0.1〜100g/10分である。メルトフローレートが上記範囲内にある熱可塑性エラストマーは、成形性に優れている。
成形複合体
本発明に係る成形複合体は、前記加硫ゴム成形体に、オレフィン系熱可塑性エラストマーを接合好ましくは融着させてなる。
本発明に係る成形複合体の接合部分の接着性は後述する剥離試験において剥離強度が40MPa以上、好ましくは45MPa以上であり、界面剥離はほとんど見られず、母材の破壊率が80%以上、好ましくは90%以上である。
本発明に係る加硫ゴム成形物と熱可塑性エラストマーの複合成形体は、自動車用内外装材に用いるのが好ましく、特に自動車用ウェザーストリップに好適に用いられる。また、本発明に係る加硫ゴム成形体はウェザーストリップに限定されるものではなく、熱可塑性エラストマーとの接着性が必要とされる他の用途での使用も可能である。
なお、本発明では、ウェザーストリップ材とは、自動車のシール材を意味し、ドアウェザーストリップやボンネットウェザーストリップ、グラスランチャンネルなどが挙げられる。
具体的には、加硫ゴムの押出成形物を裁断し、得られた裁断押出物同士を異なる方向から接続するコーナー部分の成形において、オレフィン系熱可塑性エラストマーを融点以上の温度で射出成形して、加硫ゴムの押出成形品と接触させて融着させることにより、ウェザーストリップを得ることができる。
本発明に係る加硫ゴム成形体とオレフィン系熱可塑性エラストマーからなるコーナー部成形体を有するウェザーストリップについて図1に基づいてより具体的に説明する。
図1は、自動車のウェザーストリップ(グラスランチャンネル)およびその成形方法を説明する模式斜視図である。
図1の(A)に示すように、ウェザーストリップは、加硫ゴム製の裁断押出成形物1、2と、この裁断押出成形物1、2を異なる方向から接続する際に形成される接合コーナー部材3とで構成されている。この裁断押出成形物1、2は、加硫ゴムをチャンネル状に押出成形した後、所定の長さに裁断したものである。この裁断押出成形物1、2は長手方向の形状が直線形状をしている。また、ここでいう「接合コーナー部材」とは、裁断押出成形物同士を異なる方向から接続する際に形成される熱可塑性エラストマー製の部分をいう。
このようなウェザーストリップは、次のようにして調製することができる。まず、射出成形用金型4を予め所定の温度に加熱しておく。次に、図1の(B)に示すように、この金型4に加硫ゴムからなる裁断押出成形物1、2を挿入する。
次いで、図示していないが、加熱室内(スクリュー内)で融点以上の温度で溶融されたオレフィン系熱可塑性エラストマーを、金型4のキャビティとコアの間にできる空間部に注入し、裁断押出成形物1、2の端面に、融点以上の温度で溶融させたオレフィン系熱可塑性エラストマーを融着させた後、この熱可塑性エラストマーを冷却し、図1の(A)に示すようなコーナー部材3を有するウェザーストリップを得る。
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で用いた加硫ゴム成形体の硬度、引張強度、伸び、実施例および比較例で用いたポリエチレンおよびポリプロピレンの融点(Tm)、実施例および比較例で用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)、硬度、引張強度、伸び、引張剥離時の剥離形態の測定ないし評価は、次の方法に従って行なった。
(1)硬度
硬度は、JIS K6301に準拠して、ショアーA硬度を測定した。
(測定条件)プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
(2)引張強度および伸び
JIS K6301に準拠して、引張試験を下記の条件で行ない、破断時の引張強度と伸びを測定した。
(試験条件)プレス成形機によりシートを作製し、JIS3号試験片を打ち抜き引張速度200mm/分の条件で行なった。
(3)メルトフローレート(MFR)
オレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレートは、ASTM D 1238−65Tに準拠して230℃、2.16kg荷重で測定した。
(4)引張剥離強度および剥離時の破壊形態 後述する。
(参考例1)
(加硫ゴムプレスシートの調製)
油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量:68モル%、プロピレン含量:32モル%、ヨウ素価:12、ムーニー粘度[ML1+4(125℃)]63、油展量:ゴム100重量部に対してパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名PW−380)を10重量部)100重量部に対してブロックPP(230℃、2.16kg荷重のMFR=35g/10分、Tm=161℃、エチレン量5.6wt%)20重量部を含有するゴム組成物(以下、EPT−1と略す。)を原料ゴムとして用いた。原料ゴムEPT−1を130重量部と、FEF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製、商品名 旭#60G]165重量部と、炭酸カルシウム[白石カルシウム(株)、商品名 ホワイトンSB]30重量部と、軟化剤[出光興産(株)製、商品名 PW−380]82重量部と、ステアリン酸1重量部と、亜鉛華3号5重量部と、酸化カルシウム[井上石灰工業(株)、商品名VESTA−BS]5重量部とを、容積1.7リットルのバンバリーミキサー[(株)神戸製鋼所製、BB−2形ミキサー]で混練した。
混練方法は、まず原料ゴムを1分素練りし、次いで、カーボンブラック、炭酸カルシウム、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華3号、活性剤を入れ2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、更に2分間混練しゴム配合物(1)1670gを得た。この混練は充填率75%で行ない、更に同様の手順により、3バッチ混練し、合計5010gを得た。
得られたゴム配合物(I)から3670gを秤量し、14インチロール(日本ロール(株)製)(前ロールの表面温度60℃、後ロールの表面温度60℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、そのゴム配合物(I)に、イオウ1.5重量部、2−メルカプトベンゾチアゾール[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーM]0.5重量部、テトラメチルチウラムジスルフィド[三新化学工業(株)製、商品名 サンセラーTT)1.0重量部を添加し、14インチオープンロール(日本ロール(株)製、ロール温度60℃)で7分間混練し、ゴム配合物(II)を得た。
150tonプレスを用いてゴム配合物(II)を170℃、10分間加熱して加硫成形し、縦12cm、横14.7cm、厚さ2mmの平板を製造する。このようにして加硫ゴムプレスシート(以下、加硫ゴム成形体−1)を得る。
(参考例2)
高密度ポリエチレン[密度(ASTM D 1505):0.956g/cm、MFR(ASTM D 1238,190℃、2.16kg荷重):6g/10分、融点(Tm):127℃;以下、HDPE−1と略す。]15重量部と、
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム[エチレン含量:78モル%、プロピレン含量:22モル%、ヨウ素価:13、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]74、油展量:ゴム100重量部に対してパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名 PW−380)を40重量部;以下、EPT−2と略す。]55重量部と、
ポリプロピレンとしてプロピレン・エチレン・1−ブテン三元共重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):7.0g/10分、融点(Tm):136℃;以下、PP−1と略す。]30重量部と、
酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 イルガノックス1010]0.1重量部と、
耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 チヌビン326]0.1重量部と、
架橋剤として有機過酸化物「日本油脂(株)製、商品名 パーヘキサ25B]0.08重量部と、
架橋助剤としてジビニルベンゼン(DVB)0.06重量部とをヘンシェルミキサーで充分混合し、押出機[品番 TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C6 180℃、C7〜C8 200℃、C9〜C12 220℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:200rpm、押出量:40kg/h)にてパラフィン系プロセスオイル[出光興産(株)製、商品名 PW−380]20重量部をシリンダーに注入しながら造粒を行ない、熱可塑性エラストマーのペレット(熱可塑性エラストマー−1)を得た。
(参考例3)
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPT−2)を70重量部と、
ポリプロピレンとしてプロピレン・エチレン・1−ブテン三元共重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):7.0g/10分、融点(Tm):136℃;以下、PP−1と略す。)30重量部と、
酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 イルガノックス1010]0.1重量部と、
耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 チヌビン326]0.1重量部と、
架橋剤として有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名 パーヘキサ25B]0.32重量部と、
架橋助剤としてジビニルベンゼン(DVB)0.24重量部とを
ヘンシェルミキサーで充分混合し、押出機[品番 TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C6 180℃、C7〜C8 200℃、C9〜C12 220℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:200rpm、押出量:40kg/h)にてパラフィン系プロセスオイル[出光興産(株)製、商品名 PW−380]20重量部をシリンダーに注入しながら造粒を行ない、熱可塑性エラストマーのペレット(熱可塑性エラストマー−2)を得た。
【実施例1】
加硫ゴム成形体−1と熱可塑性エラストマー−1の物性を表1に示す。
100ton射出成形機にて、前記加硫ゴム成形体−1の切断面にこの熱可塑性エラストマー−1が、その射出成形段階にて溶融接着するように成形した。得られた成形品について下記の引張剥離試験を行なった。
<成形品の引張剥離試験>
加硫ゴムの成形体と、熱可塑性エラストマーからなる成形体が接合している成形体、即ち、図1のウェザーストリップについて、接合部を挟む2個所を把持して引張速度200mm/分で引張試験を行ない、試験後の断面を観察し、母材破壊か界面剥離かを確認し、剥離断面に残っている熱可塑性エラストマーの接着面に対しての比率を母材破壊率とした。その結果を表1に示す。
【実施例2】
参考例1においてEPT−1の代わりに下記EPT−3を使用し、加硫ゴム成形体−2を得た。実施例1の加硫ゴム成形体−1の代わりに加硫ゴム成形体−2を使用した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
EPT−3
油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量:68モル%、プロピレン含量:32モル%、ヨウ素価:12、油展量:ゴム100重量部に対してパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名PW−380)を10重量部、ムーニー粘度[ML1+4(125℃)]63)を100重量部に対して、低密度ポリエチレン(190℃、2.16kg荷重のMFR=1.6g/10分、密度0.920g/cm)を12重量部、直鎖状低密度ポリエチレン(190℃、2.16kg荷重のMFR=1.6g/10分、密度0.921g/cm)を8重量部含有するゴム組成物(以下EPT−3と略す)を用いた以外は参考例1と同様におこない、加硫ゴム成形体−2を得た。
(比較例1)
参考例1のEPT−1の代わりにエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量:68モル%、プロピレン含量:32モル%、ヨウ素価:12、油展量:ゴム100重量部に対してパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名PW−380を10重量部、ムーニー粘度[ML1+4(125℃)]63)を使用し、FEF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製、商品名 旭#60G]185重量部として加硫ゴム成形体−3を得た。実施例1の加硫ゴム成形体−1の代わりに加硫ゴム成形体−3を使用した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1の熱可塑性エラストマー−1の代わりに、参考例3の熱可塑性エラストマー−2を使用した以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
比較例2の加硫ゴム成形体−1の代わりに加硫ゴム成形体−2を使用した以外は比較例2と同様に行った。評価結果を表1に示す。
(比較例4)
比較例1で使用したの熱可塑性エラストマー−1代わりに熱可塑性エラストマー−2を使用した以外は、比較例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【実施例3】
熱可塑性エラストマー−2のペレット85重量部と直鎖状低密度ポリエチレン(190℃、2.16kg荷重のMFR=8g/10分、密度0.920g/cm)15重量部をTEM押出機にてブレンドし、熱可塑性エラストマー−3を得た。そこで実施例2の熱可塑性エラストマー−1の代わりに熱可塑性エラストマー−3を使用した以外は実施例2と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【比較例5】
比較例1で使用した熱可塑性エラストマー−1の代わりに熱可塑性エラストマー−3を使用した以外は、比較例1と同様に行った。結果を表1に示す。


【産業上の利用可能性】
本発明によれば、接着剤層を介さずとも加硫ゴム成形体にオレフィン系熱可塑性エラストマーを溶融接着させた場合、十分な接着強度と剥離時に母材破壊を生じる成形体を形成し得る加硫ゴム成形体およびその融着させた成形体を提供することができる。
本成形複合体は、自動車内外装材用、特にウェザーストリップ用途に好適に用いられる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度が10%以上のオレフィン系樹脂を2〜10重量%含有する加硫ゴム成形体(1)と、示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化度が10%以上のオレフィン系樹脂含量が10重量%を超え、かつゲル分率が30wt%以下であって、海島構造を有する熱可塑性エラストマーからなる成形体(2)が接合してなることを特徴とする成形複合体。
【請求項2】
成形複合体が自動車内外装材用であることを特徴とする請求項1に記載の成形複合体。
【請求項3】
自動車内外装材が、ウェザーストリップ材であることを特徴とする請求項2に記載の成形複合体。

【国際公開番号】WO2004/092255
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505362(P2005−505362)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004911
【国際出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】