説明

加硫装置

【課題】
ゴム材料の射出が完了した複数の金型を積み重ねて加硫を行なう加硫装置において、加硫後のゴム材料の品質ばらつきを低減することである。
【解決手段】
それぞれ内部に電気ヒータを有する金型30a〜30cを積み重ねた積層金型26と、金型30a〜30cの表面に設けられたヒータ側電気接点に給電側電気接点を押圧して接続する接続ユニット40a〜40cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加硫装置に関し、特に、内部にゴム材料を収容した複数の金型を重ねて所定の圧力と所定の温度で金型内のゴム材料を加硫する加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型内に収容したゴム材料の加硫方法として、一般に、内部にゴム材料を収容した金型毎に、プレス装置により所定の圧力を印加しつつ所定の温度を所定の時間(加硫時間)だけ保持する方法が知られている。
しかし、金型毎に加熱・加圧を行なう方法では、加硫時間が長い場合にはプレス装置の単位時間当たりの製品処理数が低下し、製造コストの増大につながる。
【0003】
この問題を解決するものとして、ゴム材料の射出が完了した複数の金型を積み重ね、積み重ねた金型(ここでは、「積層金型」という。)の全体を加熱・加圧する加硫方法が知られている(特許文献1参照)。この加硫方法では、積層金型を上下から挟んで加熱する上熱盤及び下熱盤と、積層金型を下熱盤を介して上熱盤方向に押し付けて各金型を加圧する加圧用シリンダ機構とを用い、新たにゴム材料の射出が完了した金型があれば、加圧を緩めて、その金型を積層金型に追加し、積層金型の中に加硫が完了した金型、すなわち、加熱・加圧の開始から所定の時間が経過した金型があれば、その金型を取り出すことで、複数の金型を処理する。
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、金型温度を維持するための熱源は積層金型を挟む2つの熱盤のみであるため、積層金型への金型挿入作業等に伴って加熱が中断され金型温度が低下すると、低下した金型温度が所定の温度に回復するまでに時間を要する。一方、加硫反応の速度は金型温度と密接に関係しており、金型温度が低下している期間、即ち、加熱中断後所定温度に回復するまでの期間(温度低下期間)には、加硫反応の速度が低下する。このため、上記従来の方法では、例えば加硫時の金型温度を上げて加硫時間を短縮すると、加硫時間に対する温度低下期間の割合が相対的に大きくなり、加硫後のゴム材料の品質(加硫品質)を一定水準に維持するのが容易ではない。
【0005】
また、上記従来の方法では、熱盤と接触していない金型の温度は熱盤からの距離に従って低くなることから金型間でその温度にばらつきを生じ、積み重ねた金型の数が多くなると、金型温度のばらつきにより加硫品質を均一に保つのは容易ではない。
【0006】
上記従来の加硫方法が有する問題の解決策として、金型毎に電気ヒータを組み込む方法が考えられるが、積層金型への金型の挿入や取出しにより各金型の位置は変動することから、金型に組み込んだ電気ヒータへの配線に縺れを生じやすい。特に、ロボットアーム等の自動機械により金型の挿入や取出しを自動で行なう場合には、自動機械の可動部分の動きにより電気ヒータ配線に断線や短絡等の事故を生じやすく、電気ヒータへの電力供給を如何に行なうかが大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3583566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、ゴム材料の射出が完了した複数の金型を積み重ねて加硫を行なう加硫装置において、金型加熱用の電気ヒータへの配線に断線や短絡を生じさせることなく、当該電気ヒータへの電力供給を安定に行なうことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内部にゴム材料を収容した複数の金型を積み重ねた積層金型の両端又は一端を加熱して、所定の圧力と所定の温度で前記金型内のゴム材料を加硫する加硫装置であって、前記積層金型を構成する複数の金型と、前記金型に設けられた電気ヒータと、前記電気ヒータと電気的に接続され、前記金型の表面に設けられたヒータ側電気接点と、前記ヒータ側電気接点に接触して電力を供給する給電側電気接点と、前記給電側電気接点を前記ヒータ側電気接点に押圧する手段と、を備えた加硫装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴム材料の射出が完了した複数の金型を積み重ねて加硫を行なう加硫装置において、金型加熱用の電気ヒータへの配線に断線や短絡を生じさせることなく、当該電気ヒータへの電力供給を安定に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る加硫装置の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示す加硫装置のI−I線に沿う断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る加硫装置における、金型の構成を示す構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る加硫装置における金型の、下金型の構成を示す構成図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る加硫装置における、接続ユニットの構成を示す構成図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る加硫装置における、接続ユニットの動作を説明する図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る加硫装置の、動作手順を示すフロー図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る加硫装置における、初期処理の手順を示すフロー図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る加硫装置における、射出加硫処理の手順を示すフロー図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る加硫装置における、接続ユニットから見た、積層金型及びその周辺部の構成を示す構成図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る加硫装置における、接続ユニットから見た、積層金型及びその周辺部の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る加硫装置の構成を示す構成図である。
本加硫装置10は、金型内部へのゴム材料の射出(押し出し)と、射出されたゴム材料の加硫とを一連の工程として行なう装置であって、台座12と、天井板14と、台座12上に固定されて天井板14を支える縦枠161、162と、により枠組み構成され、天井板14には上側断熱材18(1)を介して上熱盤20(1)が取り付けられ、台座12には電源部22と加圧用シリンダ機構24が固定されている。
【0013】
加圧用シリンダ機構24は、例えば油圧により作動し、ピストンロッド241、ピストン242及びシリンダ243から成る。また、ピストンロッド241には、下側断熱材18(2)を介して下熱盤20(2)が固定されている。
【0014】
上熱盤20(1)と下熱盤20(2)との間には3つの金型30a〜30cを積み重ねた積層金型26が配置されており、加圧用シリンダ機構24と上熱盤20(1)と下熱盤20(2)により、積層金型26の加圧と加熱が行なわれる。
また、積層金型26の最上部及び中間部に配置された金型30a及び30bの正面部及び背面部には、金型30aと30bを挟み込んで側方から補助的に加圧する加圧機構を有するホルダ28a及び28b(後述)が設けられている(ホルダ28bは背面側につき図1では不図示)。
【0015】
天井板14、上側断熱材18(1)、及び上熱盤20(1)の中央部には、これらを貫通して、ゴム材料を射出する射出ノズル50が取り付けられている。
また、縦枠162には、金型30a〜30cの内部に設けられた電気ヒータ(後述)にそれぞれ給電するための電気接続ユニット40a〜40bと、金型30a〜30cの温度をそれぞれ測定するための温度センサ52a〜52cが取り付けられている。
【0016】
温度センサ52a〜52cとしては、例えば、並べて配置された微小な熱電対(サーモパイル)の温接点(感熱部)に被測定物の像をレンズ等により結像させて温度を測定する非接触型の温度センサを用いることができる。なお、温度センサ52a〜52cは、必ずしも縦枠162に設ける必要はなく、金型30a〜30cを見込める位置であれば、例えば縦枠161に設けてもよい。また、本実施形態では非接触型の温度センサ52a〜52cを使用するものとしたが、温度センサ52a〜52cを接触型の温度センサとし、後述する接続ユニット40a〜40cと同様の構成を用いて、例えば空気圧により作動する加圧用シリンダ機構24により各金型30a〜30cに押圧して温度を測定するものとしてもよい。
【0017】
図2は、図1に示す加硫装置10のI−I線に沿う断面図である。
積層金型26を構成する各金型30a〜30cの上面部分には、その内部のキャビティ(空洞)へゴム材料を導入するための開口部が設けられており、積層金型26の最上部に位置する金型30aに対し、その開口部を介して射出ノズル50からゴム材料が射出される。また、金型30a〜30cの左右側面部(図1における正面部及び背面部)には、それぞれ上下2箇所の溝が設けられている。
【0018】
ホルダ28a及び28bは、積層金型26の補助加圧手段であり、その腕部分を金型30aの上側の溝と金型30bの下側の溝にそれぞれ入り込ませ、金型39aと30bとを、互いに押し付ける方向に挟み込んで加圧する。なお、加圧機構は前記加圧ができるものであれば任意である。
【0019】
図3は、金型30aの構成を示す構成図である。なお、金型30b及び30cは、図3に示す金型30aと同様の構造を有している。
金型30aは、互いに分割可能な上金型30(1)と下金型30(2)とを有し、上金型30(1)と下金型30(2)とを密着させたときに、金型30aの内部にゴム成型用のキャビティが形成される。
【0020】
上金型30(1)は、その中央部に、加硫装置10の射出ノズル50から射出されるゴム材料を上記キャビティに導入するための開口部31が設けられており、左右の側面部には、ホルダ28a、28bの腕が入り込む溝が形成されている。
【0021】
下金型30(2)は、成型用キャビティを構成する凹部が形成され、かつ、左右側面部に溝が形成された金属製の本体部32と、本体部32の正面部に取り付けられたプレート33とで構成されている。また、本体部32の内部には後述する電気ヒータ34a、34bが取り付けられており、プレート33には、電気ヒータ34a、34bに給電するための電気接点35a、35bが設けられている。
【0022】
ここで、上金型30(1)、及び下金型30(2)の本体部32の素材としては、例えば、金型用炭素鋼に比して4〜5倍の熱伝導率と2倍の比熱を持つアルミ合金を用いることができる。これにより、上金型30(1)及び本体部32は、加硫装置10の上熱盤20(1)及び下熱盤20(2)並びに電気ヒータ34a、34bからの熱供給が途絶えたときには蓄熱体としても機能し、内部のゴム材料の温度低下を緩和することができる。
【0023】
図4は、下金型30(2)の構成を示す構成図である。図4A、図4B、及び図4Cは、それぞれ、下金型30(2)の平面図、正面図、及び右側面図である。
図4Aに示すように、下金型30(2)の本体部32には、貫通穴36a、36bが互いに平行に設けられており、この貫通穴36a、36bには、円柱状の電気ヒータ34a、34bがそれぞれ挿入されている。また、電気ヒータ34a、34bへの電力供給用リード線は、プレート33に設けられた電気接点35a、35bに並列に接続されている。
【0024】
プレート33は樹脂等の不導体(電気的絶縁物)で構成されており、ネジ37a、37bにより本体部32に固定されている。また、電気接点35a、35bは、図4Cに示すように、プレート33から距離Lh(>0)だけ突出しており、加硫装置10の接続ユニット40a(図1)に設けられた電気接点(後述)と接触して電気的に接続される。
【0025】
図5は、接続ユニット40aの構成を示す構成図である。図5A、図5B、及び図5Cは、それぞれ、接続ユニット40aの平面図、正面図、及び右側面図である。なお、他の接続ユニット40b及び40cも、図5に示した接続ユニット40aと同様の構成を有している。
【0026】
接続ユニット40aは、図5Aに示すように、シリンダ411、ピストン412及びピストンロッド413から成る空気シリンダ機構41と、背面がピストンロッド413に固定された筐体部42と、筐体部42の正面に設けられた給電側電気接点である電気接点43a、43bを有している。ここで、電気接点43a、43bは、加硫装置10が備える電源部22(図1)に電気的に接続されている。なお、この接続ユニット40aは、シリンダ411を縦枠162に固定することにより取り付けられる。
【0027】
空気シリンダ機構41は、給電側電気接点である電気接点43a、43bを、ヒータ側電気接点である下金型30(2)の電気接点35a、35b(図4)に押圧することにより、これらを電気的に接続する。これにより、電源部22から金型30aの電気ヒータ34a、34bへ電力が供給されることとなる。
【0028】
筐体部42の正面には、左右両側部を突出させたガード部44a、44bが設けられており、これにより、電気接点43a及び43bが保護されている。すなわち、ガード部44a、44bの突出量La(図5C)は、電気接点43a、43bの突出量Lsに対し La>Lsとなるように設定されているため、例えば金型挿入作業等の途中で電気接点43a、43bが不用意に金型等と接触して短絡(ショート)してしまうような事故が防止される。
【0029】
ただし、電気接点43a、43bと電気接点35a、35bとの接触が妨げられないように、ガード部44a、44bの突出量Laは、下金型30(2)の電気接点35a、35bの突出量Lh(図4C)に対し、La<Ls+Lh の関係が成立するように設定されている。なお、ガード部44a、44bは、筐体部42の正面の上下両側部に設けてもよく、また、左右及び上下の両側部の全てに設けてもよい。
【0030】
図6は、接続ユニット40aの動作を説明する図である。なお、他の接続ユニット40b及び40cの動作も、以下に示す接続ユニット40aの動作と同様である。
図1において下熱盤20(2)の上に積層金型26が載置され、加圧用シリンダ機構24により上熱盤20(1)と下熱盤20(2)との間で積層金型26が加圧されて各金型30a〜30cの位置が固定されると、接続ユニット40aは、図6に示すように、空気シリンダ機構41のピストン412を移動させてピストンロッド413を前方へ延ばし、筐体部42の電気接点43a、43bを、それぞれ、下金型30(2)の電気接点35a、35bに押圧し、これらを電気的に接続させる。
【0031】
これにより、積層金型26の金型の取出・挿入作業等の前後で金型30aと接続ユニット40aとの間の距離が変わっても、空気シリンダ機構41のピストン412がその距離変動を吸収し、電気接点43a、43bはそれぞれ電気接点35a、35bに確実に接続される。また、接続ユニット40a〜40cは金型30a〜30c毎に設けられているため、金型30a〜30cの水平方向位置がそれぞれ異なっていても、金型30a〜30cの各電気接点と接続ユニット40a〜40cの各電気接点はそれぞれ確実に接続される。
【0032】
一方、積層金型26からの金型の取り外し等のため加熱を中止し、電気接点間の接続を解除するときは、接続ユニット40aは、空気シリンダ機構41のピストンロッド413を後方へ移動させ、電気接点43a、43bと電気接点35a、35bとの接触を解除する。
【0033】
なお、電気接点43a、43bと電気接点35a、35bとの間でスパーク(放電)が生じて各接点が損傷するのを防止するため、電気ヒータ34a、34bへの通電のオン・オフは、加硫装置10に設けられたリレー(不図示)等により、電気接点43a、43bと電気接点35a、35bとがそれぞれ電気的に接続された状態で行なわれる。
【0034】
また、加硫時の金型30aの温度は、例えば150〜200℃程度の高温となるため、この高温に晒された電気接点35a、35b、43a、43bの表面に電気伝導度の低い金属酸化膜が形成され、電気ヒータ34a、34bへの通電に支障を生ずることがある。このため、金属酸化膜の形成を防止すべく、電気接点35a、35b、43a、43bの表面に金メッキを施してもよい。
【0035】
上記の構成を備える加硫装置10は、接続ユニット40a〜40cの給電側電気接点が金型30a〜30cのヒータ側電気接点に押圧されて接続されることにより、金型30a〜30cの電気ヒータ34a、34b等へ電力が供給される。すなわち、金型30a〜30cは電気ヒータ34a、34b等への電力供給用のリード線を持たないため、積層金型26への金型の挿入等の際にリード線の縺れや断線・短絡等の事故を引起すことがなく、電気ヒータ34a、34b等へ安定に電力を供給することができる。
【0036】
次に、加硫装置10の動作手順について、図7に示すフロー図に従って説明する。なお、加硫装置10の稼動後における金型の挿入及び取り外しは、加硫装置10の近傍に設置されたロボットアーム等の自動機械により行なわれるものとする。また、加硫装置10の各部の動作制御及び自動機械への動作指示は、加硫装置10に設けられた制御装置(不図示)により行なわれるものとする。
【0037】
まず、ユーザは、準備作業として、内部にゴム材料を収容していない金型30a〜30cを下熱盤20(2)上に積み上げて積層金型26を構成し(図1)、ホルダ28a、28bの腕を金型30a及び30bの両側面の溝に入れて金型30a、30bを挟み込む(図2)。
【0038】
ユーザが準備作業を完了して加硫装置10の電源を投入すると(S101)、加硫装置10は、まず、全ての金型30a〜30cへゴム材料を射出する準備処理を行う(S102)。その後、金型30a〜30cを用いて所定の個数だけ連続的に射出及び加硫を行う連続処理を行って(S103)、処理を終了する。なお、上記所定の個数は、予め、加硫装置10の制御装置(不図示)に設定されているものとする。
【0039】
次に、本加硫装置10における準備処理の手順を、図8に示すフロー図を用いて説明する。
準備処理を開始すると、加硫装置10は、加圧用シリンダ機構24により金型30a〜30cを加圧し(S201)、接続ユニット40a〜40cを動作させて、接続ユニット40a〜40cの給電側電気接点を金型30a〜30cのヒータ側電気接点にそれぞれ押圧して接続する(S202)。
【0040】
続いて、加硫装置10は、上熱盤20(1)と下熱盤20(2)による加熱を開始すると共に、金型30a〜30cの電気ヒータへの通電を開始して、金型30a〜30cを、加硫に必要な所定の温度(加硫温度)まで予熱する(S203)。以降においては、上熱盤20(1)、下熱盤20(2)、金型30a〜30cの各電気ヒータによる加熱が行なわれるときは、これらの熱源と温度センサ52a〜52cとが協働して、金型30a〜30cの温度を所定の加硫温度に保つものとする。なお、温度センサ52a〜52cは、常に、金型30a〜30cの温度を測定しているものとする。
【0041】
次に、加硫装置10は、積層金型26の最上部にある金型(電源投入直後においては金型30a)に、射出ノズル50からゴム材料を射出し(S204)、その射出した金型についての射出後の経過時間の計測を開始する(S205)。
【0042】
続いて、加硫装置10は、積層金型26の最下部の金型について、ゴム材料の射出が完了しているか否かを判断し(S206)、完了しているとき(S206、Yes)、すなわち金型30a〜30cのすべての金型についてゴム材料の射出が完了しているときは、準備処理を完了する。
【0043】
一方、積層金型26の最下部の金型について射出を完了していないときは(S206、No)、積層金型26の最下部にある金型を最上部へ移動すべく、まず、接続ユニット40a〜40cと金型30a〜30cとの電気接点の接続を解除した後、加圧用シリンダ機構24による加圧を解除する(S207)。
【0044】
次に、加硫装置10は、自動機械に指示し、自動機械によりホルダ28a、28bを把持して積層金型26の最上部及び中間部の金型(電源投入直後においては金型30a及び30b)を支え、積層金型26の最下部に位置する金型(電源投入直後においては金型30c)を取り出して積層金型26の最上部に配置する(S208)。また、自動機械により、ホルダ28a、28bを、新たに積層金型26の最上部及び中間部となった金型に付け替える(S209)。これにより、ホルダ28a、28bは、常に、積層金型26の最上部及び中間部の金型を挟んで加圧している状態となる。
【0045】
続いて、加圧用シリンダ機構24による加圧を再開した後、接続ユニット40a〜40cの電気接点を金型30a〜30cの電気接点に押圧して接続し(S210)、ステップS204に戻って処理を繰り返す。
【0046】
次に、本加硫装置10における連続処理の手順を、図9に示すフロー図を用いて説明する。ここで、ゴム材料を射出する射出ノズル50は天井板14に配置されているため、ゴム材料の射出後の経過時間は、積層金型26の最下部にある金型が最も長い。このため、常に、最下部の金型から順に加硫が完了することとなる。
【0047】
連続処理を開始すると、加硫装置10は、積層金型26の最下部の金型について、ゴム材料の射出後の経過時間が加硫に必要な時間(加硫時間)を経過していることを確認し(S301)、その最下部の金型を取り出すべく、まず、接続ユニット40a〜40cと金型30a〜30cとの電気接点の接続を解除した後、加圧用シリンダ機構24による加圧を解除する(S302)。
【0048】
次に、加硫装置10は、自動機械に指示し、自動機械によりホルダ28a、28bを把持して積層金型26の最上部及び中間部の金型を支え、積層金型26から最下部の金型を取り出すと共に(S303)、内部にゴム材料を収容していない新たな金型(又は積層金型26から取り出して加硫後のゴムを取り外した金型)を積層金型26の最上部に配置する(S304)。続いて、ホルダ28a、28bを、新たに積層金型26の最上部及び中間部となった金型に付け替える(S305)。
【0049】
次に、加硫装置10は、加圧用シリンダ機構24による加圧を再開した後、接続ユニット40a〜40cの電気接点を金型30a〜30cの電気接点に押圧して接続する(S306)。続いて、所定の個数だけ加硫を完了したか否かを判断し(S307)、完了したときは(S307、Yes)、射出加硫処理を完了する。
一方、所定個数の加硫を完了していないときは(S307、No)、所定個数分のゴム材料の射出を完了しているか否かを判断し(S308)、完了しているときは(S308、Yes)、ステップS301に戻って処理を繰り返す。
【0050】
一方、所定個数分の射出を完了していないときは(S308、No)、積層金型26の最上部にある金型にゴム材料を射出し(S309)、その金型についての射出後の経過時間計測を開始した後(S310)、ステップS301に戻って処理を繰り返す。
【0051】
なお、本実施形態では、積層金型26は3つの金型30a〜30cにより構成されるものとしたが、これに限らず、積層金型26を構成する金型の数は4以上であってもよい。この場合には、ホルダ28a、28bは、積層金型26の最下部に配置された金型以外の金型を挟み込むように構成すればよい。また、本実施形態では、1対のホルダ28a及び28bにより補助加圧を行なうものとしたが、2対以上のホルダを用いて補助加圧を行なうものとしてもよい。
【0052】
次に、本発明の第2の実施形態に係る加硫装置について説明する。
本実施形態では、第1の実施形態に係る加硫装置10における金型30a〜30cの代わりに、各金型は、電気ヒータを有さない成型部と成型部を加熱するための加熱部とで構成され、各加熱部に電気ヒータ及びヒータ側電気接点を設けるものとする。
【0053】
本実施形態によれば、金型が小さく電気ヒータを取り付けることができない場合にも、各成型部に隣接する加熱部により成型部を加熱して、その内部に収容されたゴム材料を加硫することができる。
【0054】
本実施形態に係る加硫装置は、第1の実施形態に係る加硫装置10における積層金型26及びこれを構成する金型30a〜30cの構成のみが異なる。
図10は、接続ユニット40a〜40cから見た、本実施形態に係る加硫装置の積層金型26’及びその周辺部の構成を示す構成図である。
積層金型26’は、金型30’a〜30’cで構成されており、金型30’a〜30’cは、それぞれ、成型部60aと加熱部62a、成型部60bと加熱部62b、及び成型部60cと加熱部62cで構成されている。また、成型部60a〜60c及び加熱部62a〜62cの両側面部には溝が設けられている。
【0055】
ホルダ28a、28bは、成型部60aの溝部と加熱部62bの溝部に腕を入れて、金型30’aと30’bとを互いに押し付ける方向に加圧している。
【0056】
加熱部62a〜62cの構造は、成型用キャビティを構成する凹部がないことを除き、第1の実施形態に係る加硫装置10における金型30aの下金型30(2)の構造(図4)と同様である。すなわち、加熱部62a〜62cは、その内部に電気ヒータを有し、図4正面部に相当する位置にヒータ側電気接点が設けられている。
【0057】
なお、成型部60a〜60c及び加熱部62a〜62cは、第1の実施形態に係る加硫装置10の金型30a〜30cと同様に、金型用炭素鋼に比して4〜5倍の熱伝導率と2倍の比熱を持つアルミ合金を用いて構成することができる。これにより、電気ヒータへの電力供給が中断したときは、成型部60a〜60c及び加熱部62a〜62cのそれぞれが蓄熱体としても機能し、成型部60a〜60cの温度低下を緩和して加硫反応速度の低下を緩和することができる。
【0058】
本実施形態に係る加硫装置の動作手順は、図7ないし図9のフロー図により示した手順と同様であり、積層金型26が積層金型26’となる点、及び金型30a〜30cが金型30’a〜30’cとなる点が相違する。
【0059】
次に、本発明の第3の実施形態に係る加硫装置について説明する。
本実施形態では、第2の実施形態に係る加硫装置における金型30’a〜30’cに、さらに蓄熱部が加わり、加熱部と蓄熱部により成型部を挟むように各金型が構成されるものとする。
【0060】
本実施形態によれば、加熱部への通電が中断した際に、蓄熱部に蓄えられていた熱が成型部へ伝導していくことにより、成型部の温度低下をさらに緩和して加硫反応速度の低下をさらに緩和することができる。
【0061】
本実施形態に係る加硫装置は、第2の実施形態に係る加硫装置における積層金型26’の部分が異なる。
図11は、接続ユニット40a〜40cから見た、本実施形態に係る加硫装置の積層金型26’’及び周辺部の構成を示す構成図である。
【0062】
積層金型26’’は、金型30’’a〜30’’cで構成されており、金型30’’a〜30’’cは、それぞれ、成型部60a〜60cと、成型部60a〜60cをそれぞれ挟むように配置された加熱部62a〜62c及び蓄熱部64a〜64cから成る。また、蓄熱部64a〜64cの側面部にも、成型部60a〜60c及び加熱部62a〜62cと同様の溝が設けられている。
【0063】
なお、蓄熱部64a〜64cは、成型部60a〜60c及び加熱部62a〜62cと同様に、金型用炭素鋼に比して4〜5倍の熱伝導率と2倍の比熱を持つアルミ合金を用いて構成することにより、蓄熱効果を高めて加熱中断時の成型部60a〜60cの温度低下を緩和し、加硫反応速度の低下を緩和することができる。
【0064】
本実施形態に係る加硫装置の動作手順は、図7ないし図9のフロー図に示した手順と同様であり、積層金型26が積層金型26’’となる点、及び金型30a〜30cが金型30’’a〜30’’cとなる点が相違する。
【0065】
以上説明したように、第1ないし第3の実施形態によれば、内部にゴム材料を収容した複数の金型を積み重ねてゴム材料の加硫を行なう際に、金型加熱用の電気ヒータへの配線に断線や短絡を生じさせることなく、当該電気ヒータへの電力供給を安定に行なうことができる。
【符号の説明】
【0066】
10・・・加硫装置、12・・・台座、14・・・天井板、161、162・・・縦枠、18(1)・・・上側断熱材、18(2)・・・下側断熱材、20(1)・・・上熱盤、20(2)・・・下熱盤、22・・・電源部、24・・・加圧用シリンダ機構、241、411・・・ピストンロッド、242、412・・・ピストン、243、413・・・シリンダ、26、26’、26’’・・・積層金型、28a、28b・・・ホルダ、30a、30’a、30’’a、30b、30’b、30’’b、30c、30’c、30’’c・・・金型、30(1)・・・上金型、30(2)・・・下金型、31・・・開口部、32・・・本体部、33・・・プレート、34a、34b・・・電気ヒータ、35a、35b、43a、43b・・・電気接点、36a、36b・・・貫通穴、37a、37b・・・ネジ、40a、40b、40c・・・接続ユニット、41・・・空気シリンダ機構、42・・・筐体部、44a、44b・・・ガード部、50・・・射出ノズル、52a、52b、52c・・・温度センサ、60a、60b、60c・・・成型部、62a、62b、62c・・・加熱部、64a、64b、64c・・・蓄熱部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にゴム材料を収容した複数の金型を積み重ねた積層金型の両端又は一端を加熱して、所定の圧力と所定の温度で前記金型内のゴム材料を加硫する加硫装置であって、
前記積層金型を構成する複数の金型と、
前記金型に設けられた電気ヒータと、
前記電気ヒータと電気的に接続され、前記金型の表面に設けられたヒータ側電気接点と、
前記ヒータ側電気接点に接触して電力を供給する給電側電気接点と、
前記給電側電気接点を前記ヒータ側電気接点に押圧する手段と、
を備えた加硫装置。
【請求項2】
請求項1に記載された加硫装置において、
前記積層金型の全体を加圧する加圧手段と、
前記積層金型内において隣接して配置された2以上の金型に取り付けられ、前記金型への加圧を補助する補助加圧手段を有する加硫装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された加硫装置において、
前記押圧する手段は、前記給電側電気接点と機械的に接続されたシリンダ機構である加硫装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された加硫装置において、
前記金型は、アルミ合金より成る加硫装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載された加硫装置において、
前記金型は、それぞれ別体に構成された、内部にゴム材料を収容するキャビティを有する成型部と、前記電気ヒータを備え前記成型部を加熱する加熱部とを有し、
前記ヒータ側電気接点は、前記金型の加熱部の表面に設けられている加硫装置。
【請求項6】
請求項5に記載された加硫装置において、
前記金型は、さらに、前記成型部を挟んで前記加熱部と反対側に配置された蓄熱部を有する加硫装置。
【請求項7】
請求項6に記載された加硫装置において、
前記金型を構成する前記成型部、加熱部、及び蓄熱部は、アルミ合金より成る加硫装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載された加硫装置において、
前記各金型の温度をそれぞれ測定する温度センサと、
前記各温度センサを前記各金型にそれぞれ押圧する手段を有する加硫装置。
【請求項9】
請求項8に記載された加硫装置において、
前記各温度センサを押圧する手段は、前記温度センサと機械的に接続されたシリンダ機構である加硫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−111122(P2012−111122A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261811(P2010−261811)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】