説明

動力出力装置およびその制御方法並びに車両

【課題】内燃機関に接続された発電装置や駆動軸に動力を入出力する電動機と電力のやりとりを行なう蓄電装置を備えるものにおいて、蓄電装置に異常が生じているときにより適正に対処する。
【解決手段】エンジンを運転停止している状態でバッテリに異常が生じていると判定された停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref未満のときには(S130,S140)、エンジンを始動し(S150)、システムメインリレーをオフとして二つのモータを駆動するインバータからバッテリを切り離し(S170)、要求トルクTr*が駆動軸に出力されるようエンジンと二つのモータとを制御する(S180〜S230)。一方、停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref以上のときには(S130,S140)、エンジンを始動せずに二つのモータを駆動停止してシステムメインリレーをオフとする(S240,S250)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力出力装置およびその制御方法並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の動力出力装置としては、エンジンと、エンジンのクランクシャフトと駆動軸とに接続された遊星歯車機構と、遊星歯車機構に接続された第1のモータ(MG1)と、駆動軸に接続された第2のモータ(MG2)と、モータMG1,MG2と電力のやりとりをするバッテリと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、バッテリの充放電が禁止されている状態で駆動軸にトルクを出力している最中にモータMG2の駆動制限がなされたときには、エンジンの運転を停止すると共にモータMG1,MG2の駆動を停止することにより、モータMG1,MG2にインバータを介して接続された電力系に接続された他の機器が破損するのを抑制している。
【特許文献1】特開2007−196733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした動力出力装置では、エンジンを運転停止してモータからの動力だけを駆動軸に出力している最中にバッテリに異常が生じたときには、ある程度の走行を継続するために動力源としてのエンジンを始動する必要が生じる。また、バッテリに異常が生じているときには、その破損を防止するためにバッテリの充放電をできるだけ行なわないようにすることも望まれる。
【0004】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、内燃機関に接続された発電装置や駆動軸に動力を入出力する電動機と電力のやりとりを行なう蓄電装置を備えるものにおいて、蓄電装置に異常が生じているときにより適正に対処することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
前記内燃機関をモータリングすると共に該内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電する発電手段と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記発電手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
前記内燃機関の運転を停止している状態で前記蓄電手段に異常が生じていると判定された停止中異常時に該停止中異常時における前記内燃機関の始動回数である停止中異常時始動回数が所定回数未満のときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記発電手段とを制御すると共に該内燃機関が始動された以降は前記蓄電手段の充放電を行なうことなく前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御し、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには前記内燃機関を始動しない制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の動力出力装置では、内燃機関の運転を停止している状態で蓄電手段に異常が生じていると判定された停止中異常時にその停止中異常時における内燃機関の始動回数である停止中異常時始動回数が所定回数未満のときには、内燃機関が始動されるよう内燃機関と発電手段とを制御すると共に内燃機関が始動された以降は蓄電手段の充放電を行なうことなく要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御する。これにより、駆動軸に動力を出力することができると共に内燃機関の始動後は蓄電手段の充放電が行なわれるのを抑制することができる。一方、停止中異常時に停止中異常時始動回数が所定回数以上のときには、内燃機関を始動しない。これにより、蓄電手段の充放電が行なわれるのをより抑制することができ、蓄電手段に更に異常が生じるのを抑制することができる。これらより、停止中異常時に、停止中異常時始動回数に応じてより適正に対処することができると言える。
【0008】
こうした本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、前記蓄電手段に異常が生じていると判定されない通常時に前記内燃機関が始動されたときには、前記停止中異常時始動回数を保持する手段であるものとすることもできる。
【0009】
また、本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには、前記電動機が駆動停止されるよう該電動機を制御する手段であるものとすることもできる。
【0010】
さらに、本発明の動力出力装置において、前記発電手段の駆動回路および前記電動機の駆動回路と前記蓄電手段との接続および接続の解除を行なう接続解除手段を備え、前記制御手段は、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには前記内燃機関を始動することなく前記発電手段の駆動回路および前記電動機の駆動回路と前記蓄電手段との接続が解除されるよう前記接続解除手段を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、蓄電手段の充放電が行なわれるのをより確実に抑制する回避することができる。この場合、前記制御手段は、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数未満のときには前記内燃機関を始動した後に前記発電手段の駆動回路および前記電動機の駆動回路と前記蓄電手段との接続が解除されるよう前記接続解除手段を制御する手段であるものとすることもできる。
【0011】
あるいは、本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、前記蓄電手段に異常が生じていると判定されたときに、該判定された旨を運転者に報知する手段であるものとすることもできる。
【0012】
加えて、本発明の動力出力装置において、前記発電手段は、前記駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段であるものとすることもできる。この場合、前記電力動力入出力手段は、動力を入出力する発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であるものとすることもできる。
【0013】
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、前記内燃機関をモータリングすると共に該内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電する発電手段と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記発電手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、前記内燃機関の運転を停止している状態で前記蓄電手段に異常が生じていると判定された停止中異常時に該停止中異常時における前記内燃機関の始動回数である停止中異常時始動回数が所定回数未満のときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記発電手段とを制御すると共に該内燃機関が始動された以降は前記蓄電手段の充放電を行なうことなく前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御し、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには前記内燃機関を始動しない制御手段と、を備える動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなることを要旨とする。
【0014】
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果、例えば、停止中異常時に、停止中異常時始動回数に応じてより適正に対処することができる効果などと同様の効果を奏することができる。
【0015】
この本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、前記内燃機関をモータリングすると共に該内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電する発電手段と、駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記発電手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
前記内燃機関の運転を停止している状態で前記蓄電手段に異常が生じていると判定された停止中異常時に該停止中異常時における前記内燃機関の始動回数である停止中異常時始動回数が所定回数未満のときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記発電手段とを制御すると共に該内燃機関が始動された以降は前記蓄電手段の充放電を行なうことなく前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御し、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには前記内燃機関を始動しない、
ことを特徴とする。
【0016】
この本発明の動力出力装置の制御方法では、内燃機関の運転を停止している状態で蓄電手段に異常が生じていると判定された停止中異常時にその停止中異常時における内燃機関の始動回数である停止中異常時始動回数が所定回数未満のときには、内燃機関が始動されるよう内燃機関と発電手段とを制御すると共に内燃機関が始動された以降は蓄電手段の充放電を行なうことなく要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御する。これにより、駆動軸に動力を出力することができると共に内燃機関の始動後は蓄電手段の充放電が行なわれるのを抑制することができる。一方、停止中異常時に停止中異常時始動回数が所定回数以上のときには、内燃機関を始動しない。これにより、蓄電手段の充放電が行なわれるのをより抑制することができ、蓄電手段に更に異常が生じるのを抑制することができる。これらより、停止中異常時に、停止中異常時始動回数に応じてより適正に対処することができると言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動する駆動回路としてのインバータ41,42と、充放電可能なバッテリ50と、バッテリ50とインバータ41,42との間に介在するシステムメインリレー56と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0019】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0020】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0021】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とをシステムメインリレー56を介して接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。この電力ライン54には、平滑用コンデンサ57が接続されている。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0022】
バッテリ50は、リチウムイオン電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0023】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,電圧センサ57aからの平滑コンデンサ57の電圧(以下、コンデンサ電圧という)Vcなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、システムメインリレー56への駆動信号や警告灯89への点灯信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションセンサ82により検出するシフトレバー81のポジションとしては、駐車ポジション(Pポジション)や中立ポジション(Nポジション),ドライブポジション(Dポジション),リバースポジション(Rポジション)などがある。
【0024】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0025】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にバッテリ50に異常が生じていると判定された際の動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される異常判定時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、バッテリ50に異常が生じていると判定された以降に繰り返し実行される。なお、バッテリ50に異常が生じているか否かの判定は、実施例では、イグニッションオンされた以降に実行される図示しない異常判定ルーチンにより設定されたフラグ(バッテリ50が正常であると判定されたときに値0、バッテリ50に異常が生じていると判定されたときに値1が設定されるフラグ)をバッテリECU52から通信により入力すると共に入力したフラグの値を調べることにより行なうものとした。
【0026】
異常判定時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、バッテリ50に異常が生じている旨を運転者に報知するために警告灯89を点灯し(ステップS100)、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,電圧センサ57aからのコンデンサ電圧Vcなど制御に必要なデータを入力する処理を実行し(ステップS110)、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定する(ステップS120)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。なお、実施例では、イグニッションオンされた直後などシフトポジションSPが駐車ポジションにあるときには、要求トルクTr*に値0が設定されるものとした。
【0027】
続いて、エンジン22が運転停止されているか否かを判定し(ステップS130)、エンジン22が運転停止されていない即ち運転されていると判定されたときには、システムメインリレー56をオフとしてバッテリ50を電力ライン54から切り離す(ステップS170)。以下、バッテリ50が電力ライン54から切り離された状態をバッテリ遮断状態という。
【0028】
そして、コンデンサ57の目標電圧Vc*を設定する(ステップS180)。目標電圧Vc*は、モータMG1,MG2から出力可能なトルクの領域がコンデンサ電圧Vcによって定まることから、実施例では、インバータ41,42の電力ライン54からバッテリ50が遮断された状態で走行するために必要なモータMG1,MG2のトルクの領域を考慮してコンデンサ57の耐圧未満の電圧を設定するものとした。
【0029】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*を設定し(ステップS190)、設定した目標回転数Ne*と現在の回転数Neとに基づいて次式(1)によりエンジン22から出力すべき目標トルクTe*を設定する(ステップS200)。ここで、目標回転数Ne*は、バッテリ遮断状態で走行する際にコンデンサ57に作用させるべき電圧などを考慮して例えば1800rpmや2000rpmなどに設定することができる。また、式(1)は、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(1)中、「k1」は比例項のゲインであり、「k2」は積分項のゲインである。
【0030】
Te*=k1(Ne*-Ne)+k2∫(Ne*-Ne)dt (1)
【0031】
そして、コンデンサ電圧Vcと目標電圧Vc*とに基づいて次式(2)によりコンデンサ57に入出力すべき目標電力W*を設定すると共に(ステップS210)、式(3)および式(4)を用いてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する(ステップS220)。ここで、式(2)は、コンデンサ電圧Vcを目標電圧Vc*に一致させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、「k3」は比例項のゲインであり、「k4」は積分項のゲインである。また、式(3)は、モータMG1やモータMG2から駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が要求トルクTr*となる関係であり、式(4)は、モータMG1やモータMG2によりコンデンサ57に入出力される電力の総和が目標電力W*となる関係である。式(3)中、「ρ」は動力分配統合機構30のギヤ比を示し、「Gr」は減速ギヤ35のギヤ比を示す。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する様子を図4に示す。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*は、図示するように、式(3)の関係を満たすラインと式(4)の関係を満たすラインとの交点におけるトルク(図中、T1,T2)として求めることができる。バッテリ遮断状態で走行する際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図5に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(3)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。
【0032】
W*=k3(Vc-Vc*)+k4∫(Vc-Vc*)dt (2)
-Tm1*/ρ+Tm2*・Gr=Tr* (3)
Tm1*・Nm1+Tm2*・Nm2=W* (4)
【0033】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS230)、異常判定時制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。この場合、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vc*に近づくと共に要求トルクTr*に応じたトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22と二つのモータMG1,MG2とを制御することになる。したがって、バッテリ50に異常が生じたと判定されたときでも、要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力して走行することができる。しかも、この際には、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vc*に対して低下し過ぎたり上昇し過ぎたりするのを抑制することができる。さらに、コンデンサ57の耐圧未満の電圧を目標電圧Vc*に設定するから、コンデンサ57をより確実に保護することができる。
【0034】
ステップS130でエンジン22が運転停止されていると判定されたときには、過去にバッテリ50に異常が生じていると判定された状態でエンジン22を始動した回数である停止中異常時始動回数nを閾値nrefと比較する(ステップS140)。ここで、停止中異常時始動回数nは、バッテリ50が修理されたり交換されたときなどに初期値としての値0にリセットされ、異常判定始動時回数nの値に拘わらずバッテリ50に異常が生じていないと判定された状態でエンジン22が始動されたときには前回値が保持される。この停止中異常時始動回数nは、実施例では、図示しない不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリなど)や、イグニッションの状態に拘わらず図示しない補機バッテリから電力が供給される図示しない電源用電子制御ユニットのRAMなど、イグニッションオフされた以降でも記憶したデータを保持可能な記憶媒体に記憶させるものとした。閾値nrefは、バッテリ50に異常が生じていると判定された状態でエンジン22の始動を許容する回数であり、バッテリ50の特性などにより定められる。いま、エンジン22が運転停止されているときを考えているから、エンジン22を始動しないと、システムメインリレー56を切り離した以降は、コンデンサ57の容量の範囲内でモータMG2から駆動軸としてのリングギヤ軸32aに動力を出力するか惰性で走行するかになるため、要求トルクTr*を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力しながら走行を継続することは困難となる。一方、モータMG1によってエンジン22をモータリングして始動する際には、モータMG1による発電や電力消費によってバッテリ50の充放電が行なわれることが多いが、バッテリ50に異常が生じたと判定された以降にこうしたバッテリ50の充放電が頻繁に行なわれると、バッテリ50に更に異常(例えば、破損など)を生じるおそれがある。これらを考慮して、実施例では、ステップS140の停止中異常時始動回数nと閾値nrefとの比較により、エンジン22の始動を許容するか否かを判定するものとした。
【0035】
停止中異常時始動回数nが閾値nref未満のときには、エンジン22の始動を許容すると判断し、エンジン22が始動されるよう始動指令をエンジンECU24とモータECU40とに送信する(ステップS150)。始動指令を受信したモータECU40は、エンジン22をモータリングするためのトルクがモータMG1から出力されるようモータMG1を制御する。また、始動指令を受信したエンジンECU24は、モータMG1によるエンジン22のモータリングによってエンジン22の回転数Neが所定回転数Nref以上に至ったときにエンジン22の点火制御や燃料噴射制御を開始する。なお、このとき、モータMG2については要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるよう制御するものとした。ここで、要求トルクTr*は、エンジン22の始動に要する時間が比較的短時間(例えば、数百msec程度)であるため、実施例では、始動指令をエンジンECU24とモータECU40に送信する直前に設定された値を保持するものとした。
【0036】
そして、エンジン22の始動が完了するのを待って(ステップS155)、前回の停止中異常時始動回数(前回n)に値1を加えて停止中異常時始動回数nを更新し(ステップS160)、システムメインリレー56をオフとして(ステップS170)、ステップS180〜S230以降の処理を実行して、異常判定時制御ルーチンを終了する。これにより、エンジン22を運転停止している状態でバッテリ50に異常が生じたと判定されたときでも、エンジン22を始動し、エンジン22からの出力された動力の一部をモータMG1とモータMG2とによる動力−電力、電力−動力の変換を伴って要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力して走行することができる。こうしてエンジン22が始動されると、次回以降にこのルーチンが実行されたときには、ステップS130でエンジン22は運転停止されていない即ち運転されていると判定され、ステップS170以降の処理を実行する。
【0037】
一方、停止中異常時始動回数nが閾値nref以上のときには、エンジン22の始動を許容しないと判断し、エンジン22を始動することなく、モータMG1,MG2の駆動を停止するよう駆動停止指令をモータECU40に送信し(ステップS240)、システムメインリレー56をオフとして(ステップS250)、異常判定時制御ルーチンを終了する。駆動停止指令を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2の駆動を停止する(例えば、インバータ41,42のゲート遮断を行なう)。即ち、走行を停止するのである。これにより、バッテリ50の充放電が行なわれるのを抑制することができ、バッテリ50に更に異常が生じる(例えば、破損など)のを抑制することができる。
【0038】
図6は、イグニッションの状態とバッテリ50の異常判定の状態とエンジン22の状態と停止中異常時始動回数nとの時間変化の様子を模式的に示す説明図である。図6の例では、図示するように、イグニッションオンされている状態でバッテリ50の異常判定がなされた時刻t1に、エンジン22が運転停止されているときにはエンジン22を始動し、システムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離し、それ以降はエンジン22の運転を伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行する。これにより、バッテリ50の異常判定がなされた以降でも走行することができる。そして、イグニッションオフされた時刻t2にエンジン22を運転停止すると共にバッテリ50の異常判定を解除し、その後は、バッテリ50の異常判定がなされていない状態でエンジン22を始動したときには停止中異常時始動回数nの値を保持し(時刻t3〜t4)、バッテリ50の異常判定がなされた状態でエンジン22を始動したときには停止中異常時始動回数nを更新する(時刻t5)。そして、バッテリ50の異常判定がなされたときに停止中異常時始動回数nが閾値nref以上のときには(時刻t6)、エンジン22を始動せずにモータMG1,MG2を駆動停止状態とすると共にシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離す。これにより、バッテリ50に更に異常が生じる(例えば、破損など)のを抑制することができる。
【0039】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の運転を停止している状態でバッテリ50に異常が生じていると判定された停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref未満のときには、エンジン22を始動し、システムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離し、要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22と二つのモータMG1,MG2とを制御するから、バッテリ50に異常が生じていると判定されたときでも走行することができる。また、停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref以上のときには、エンジン22を始動することなくモータMG1,MG2を駆動停止してシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離すから、バッテリ50に更に異常が生じるのを抑制することができる。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の異常判定がなされていない状態でエンジン22を始動したときには、停止中異常時始動回数nの値を保持するものとしたが、値0にリセットするものとしてもよい。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の運転を停止している状態でバッテリ50に異常が生じていると判定された停止中異常時には、停止中異常時始動回数nに拘わらずシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離すものとしたが、停止中異常時始動回数nが閾値nref以上のときにだけシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離すものとしてもよいし、停止中異常時始動回数nに拘わらずシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離さないものとしてもよい。システムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離さない場合、システムメインリレー56を備えないハード構成としてもよい。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50に異常が生じていると判定されたときには、警告灯89を点灯するものとしたが、これに限られず、例えば、音声出力により運転者に報知するものなどバッテリ50に異常が生じている旨を運転者に報知するものであれば如何なるものとしてもよい。また、こうした運転者への報知を行なわないものとしてもよい。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図7の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図7における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図8の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図9の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22に発電用のモータMG1が接続されていると共に駆動輪63a,63bにモータMG2が接続され、モータMG1,MG2を駆動するインバータ41,42にシステムメインリレー56を介してバッテリ50が接続されているものとしてもよい。
【0046】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の車両や船舶,航空機などの移動体に搭載される動力出力装置の形態や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた動力出力装置の形態としても構わない。さらに、こうした動力出力装置の制御方法の形態としてもよい。
【0047】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1と動力分配統合機構30とを組み合わせたものが「発電手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、エンジン22の運転を停止している状態でバッテリ50に異常が生じていると判定された停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref未満のときには、エンジン22の始動指令をエンジンECU24とモータECU40とに送信しエンジン22の始動が完了するのを待ってシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離し要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジンECU24やモータECU40に送信し、停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref以上のときには、エンジン22を始動することなくモータMG1,MG2の駆動停止指令をモータECU40に送信してシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離す図2の異常判定時制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、始動指令を受信したときにはエンジン22の回転数Neが閾値Nref以上に至ったときにエンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始しエンジン22の始動完了後は目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24と、始動指令を受信したときにはエンジン22をモータリングするためのトルクが出力されるようモータMG1を制御しエンジン22の始動完了後はトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御し駆動停止指令を受信したときにはモータMG1,MG2の駆動を停止するモータECU40とが「制御手段」に相当する。また、システムメインリレー56が「接続解除手段」に相当する。さらに、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当する。対ロータ電動機230も「発電手段」に相当する。
【0048】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電手段」としては、モータMG1と動力分配統合機構30とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、内燃機関をモータリングすると共に内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、リチウムイオン電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素電池としたり鉛蓄電池としたりするなど、発電手段や電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、エンジン22の運転を停止している状態でバッテリ50に異常が生じていると判定された停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref未満のときには、エンジン22を始動してシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離して要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref以上のときには、エンジン22を始動することなくモータMG1,MG2を駆動停止するものに限定されるものではなく、バッテリ50に異常が生じている旨を運転者に報知するために警告灯89を点灯するものとしたり、停止中異常時に停止中異常時始動回数nが閾値nref未満のときに又は停止中異常時始動回数nに拘わらずシステムメインリレー56によりバッテリ50を電力ライン54から切り離さないものとしたり、バッテリ50の異常判定がなされていない状態でエンジン22を始動したときに停止中異常時始動回数nの値を保持する又は値0にリセットするものとしたりするなど、内燃機関の運転を停止している状態で蓄電手段に異常が生じていると判定された停止中異常時に停止中異常時における内燃機関の始動回数である停止中異常時始動回数が所定回数未満のときには内燃機関が始動されるよう内燃機関と発電手段とを制御すると共に内燃機関が始動された以降は蓄電手段の充放電を行なうことなく駆動軸に要求される要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御し、停止中異常時に停止中異常時始動回数が所定回数以上のときには内燃機関を始動しないものであれば如何なるものとしても構わない。「接続解除手段」としては、システムメインリレー56に限定されるものではなく、発電手段の駆動回路や電動機の駆動回路と蓄電手段との接続および接続の解除を行なうものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0049】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、動力出力装置や車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される異常判定時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する様子を示す説明図である。
【図5】バッテリ遮断状態で走行する際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を示す説明図である。
【図6】イグニッションの状態とバッテリ50の異常判定の状態とエンジン22の状態と停止中異常時始動回数nとの時間変化の様子を模式的に示す説明図である。
【図7】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0052】
20,120,220,320 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、56 システムメインリレー、57 平滑用コンデンサ、57a 電圧センサ、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 警告灯、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
前記内燃機関をモータリングすると共に該内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電する発電手段と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記発電手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
前記内燃機関の運転を停止している状態で前記蓄電手段に異常が生じていると判定された停止中異常時に該停止中異常時における前記内燃機関の始動回数である停止中異常時始動回数が所定回数未満のときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記発電手段とを制御すると共に該内燃機関が始動された以降は前記蓄電手段の充放電を行なうことなく前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御し、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには前記内燃機関を始動しない制御手段と、
を備える動力出力装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記蓄電手段に異常が生じていると判定されない通常時に前記内燃機関が始動されたときには、前記停止中異常時始動回数を保持する手段である請求項1記載の動力出力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには、前記電動機が駆動停止されるよう該電動機を制御する手段である請求項1または2記載の動力出力装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の動力出力装置であって、
前記発電手段の駆動回路および前記電動機の駆動回路と前記蓄電手段との接続および接続の解除を行なう接続解除手段を備え、
前記制御手段は、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには前記内燃機関を始動することなく前記発電手段の駆動回路および前記電動機の駆動回路と前記蓄電手段との接続が解除されるよう前記接続解除手段を制御する手段である、
動力出力装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数未満のときには前記内燃機関を始動した後に前記発電手段の駆動回路および前記電動機の駆動回路と前記蓄電手段との接続が解除されるよう前記接続解除手段を制御する手段である請求項4記載の動力出力装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記蓄電手段に異常が生じていると判定されたときに、該判定された旨を運転者に報知する手段である請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の動力出力装置。
【請求項7】
前記発電手段は、前記駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段である請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載の動力出力装置。
【請求項8】
前記電力動力入出力手段は、動力を入出力する発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段である請求項7記載の動力出力装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つの請求項に記載の動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなる車両。
【請求項10】
内燃機関と、前記内燃機関をモータリングすると共に該内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電する発電手段と、駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記発電手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
前記内燃機関の運転を停止している状態で前記蓄電手段に異常が生じていると判定された停止中異常時に該停止中異常時における前記内燃機関の始動回数である停止中異常時始動回数が所定回数未満のときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記発電手段とを制御すると共に該内燃機関が始動された以降は前記蓄電手段の充放電を行なうことなく前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御し、前記停止中異常時に前記停止中異常時始動回数が前記所定回数以上のときには前記内燃機関を始動しない、
ことを特徴とする動力出力装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−184634(P2009−184634A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29445(P2008−29445)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】