説明

化合物半導体層構造の製造方法

【課題】光学特性を向上可能な化合物半導体層構造の製造方法を提供する。
【解決手段】化合物半導体層2上に、化合物半導体層3A,3Bを順次成長させる。ここで、化合物半導体層2はAlN、化合物半導体層3A,3BはAlGaNからなるが、化合物半導体層3Aを通常のMOVPE法で成長させると、Al組成比が目的の値よりも小さくなってしまう。そこで、化合物半導体層3Bを成長させるときのAl組成比を決定する製造条件よりも、化合物半導体層3Aを成長させるときの製造条件の方が、この条件で化合物半導体層3Bを形成する場合には、Al組成比が高くなる条件に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体層構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光源として、水銀キセノンランプや重水素ランプ等の電子管が用いられてきたが、発光効率が低く、大型であり、また安定性や寿命の点で課題が残っている。
【0003】
一方、電子線励起紫外光源は、高い安定性を生かした光計測分野や、低消費電力性を生かした殺菌や消毒用、あるいは高い波長選択性を利用した医療用光源やバイオ化学用光源として期待されている。電子線励起紫外光源は、紫外線発生用ターゲットと、電子源とを備えており、電子源から出射された電子がターゲットに照射されると、ターゲット内部で紫外線が励起するものである。
【0004】
電子線励起紫外光源は、水銀ランプなどよりも低消費電力であるため、ランニングコストの低減も可能となる。更に、従来の発光ダイオード等では、深紫外波長領域の紫外線が得られていないが、電子線励起紫外光源では、かかる領域、特に、主に300nmよりも短波長側の紫外線発光が期待されている。
【0005】
そして、AlGaN層を紫外線発生用ターゲットとした電子線励起紫外光源では、ターゲットのAlとGaの組成比を変更することで、紫外線波長を200〜360nmの範囲で変更することができる。単一組成の化合物によって励起される紫外線の帯域は狭いため、電子線励起紫外光源では、必要な波長をフィルター無しに得ることも可能であり、電子線励起紫外光源から大面積で均一な発光出力を得ることも可能である。
【0006】
特許文献1は、上記のような紫外線励起発光素子を開示しており、特許文献2にはGaAlNを用いた蛍光発生源を開示している。特許文献3及び特許文献4は、エネルギー線の照射によって発光するシンチレータを開示している。特許文献5は、ガーネット結晶に電子線を照射して、発光させる光源を開示している。特許文献6及び特許文献7は、紫外線帯域に、発光ピークを有する粉末を開示している。非特許文献1は、AlGaNの結晶成長について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−321955号公報
【特許文献2】国際公開WO2002/061458号パンフレット
【特許文献3】特開2004−59722号公報
【特許文献4】特開昭54−18269号公報
【特許文献5】特開昭61−285651号公報
【特許文献6】特開2007−294698号公報
【特許文献7】特開2007−9095号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「AlN/Sapphire基板を用いた高Al組成AlGaNのMOVPE成長と光学特性」,電子情報通信学会技術研究報告・電子デバイス、社団法人電子情報通信学会、2002年、vol.102,No.76(20020516)、pp57−62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の化合物半導体層構造では、十分な光学特性は得られなかった。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、光学特性を向上可能な化合物半導体層構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来、化合物半導体層構造の光学特性を改良する手法は当初不明であったが、本願発明者らが鋭意検討した結果、本願発明者らは、AlN層(或いはAl組成の高いAlGaN層)上に、TMA(トリメチルアンモニウム)、TMG(トリメチルガリウム)及びNHなどの原料ガスを用いて、AlGaN層をMOVPE(有機金属気相エピタキタシャル成長)法を用いて成長させる場合、成長初期層内に含まれるAlの組成比が、低下するという特異な現象を発見した。
【0011】
仮に、成長の下地層がAlN層であるならば、その上に成長するAlGaN層は、組成の連続性を考慮すると、Al組成が高くなるものと推定される。しかしながら、実際には、成長初期層のAl組成比は、意図した組成比よりも低くなり、成長後期において、意図した目的の組成比となるのである。
【0012】
AlGaN層において、Alの組成比が低下すると、エネルギーバンドギャップは狭くなり、これを通過する紫外線を吸収しやすくなる。本願発明者らは、このような理由から、電子線励起紫外光源等においては、Al組成比の低下した初期AlGaN層が、発光の一部分を吸収し、光学特性を劣化させることを発見した。
【0013】
そこで、本発明に係る化合物半導体層構造の製造方法は、成長チャンバ内に基板を配置する工程と、基板上に形成された第1化合物半導体層上に、第2化合物半導体層を成長させる工程と、第2化合物半導体層上に、第3化合物半導体層を成長させる工程とを備え、第1化合物半導体層は、0<X≦1として、AlGa1−XNからなり、第2化合物半導体層は、0<Y<1として、AlGa1−YNからなり、第3化合物半導体層は、0<Z<1として、AlGa1−ZNからなり、X>Yであり、第3化合物半導体層を成長させるときのAl組成比を決定する製造条件よりも、第2化合物半導体層を成長させるときの製造条件の方が、この条件で第3化合物半導体層を形成する場合には、Al組成比が高くなる条件(条件Aとする)に設定されていることを特徴とする。なお、第2化合物半導体層の製造条件で、第3化合物半導体層を製造した場合に得られるAl組成比を、「目的とするAl組成比」ということとする。
【0014】
また、第2化合物半導体層のAlの組成比Yは一定である必要はなく、成長後期になるほど、段階的或いは連続的に、目的とするAl組成比が低くなるように、製造条件を変化させてもよい。すなわち、少なくとも成長初期にあたる第2化合物半導体層の成長時において、Al組成比を高くするような製造条件に設定すればよい。なお、第2化合物半導体層内のAl組成比が、第3化合物半導体層内のAl組成比よりも、実際に高くなる必要はなく、目的とするAl組成比が高くなればよい。換言すれば、第2化合物半導体層のAl組成比は、第3化合物半導体層のAl組成比と同一であってもよい。
【0015】
上記製造条件を用いて製造する場合、第2化合物半導体層の成長時におけるAl組成比の低下現象が抑制され、エネルギーバンドギャップが狭くなるのが抑制されるため、第3化合物半導体層における発光を吸収しにくくなり、光学特性が改善する。
【0016】
電子線励起紫外光源に、かかる化合物半導体層構造を用いた場合、電子線の照射によって、第3化合物半導体層で発生した紫外線は、第2化合物半導体層、第1化合物半導体層、及び基板を透過して、外部に出力される。第2化合物半導体層における紫外線の吸収は抑制されるので、出力強度が高くなるという効果が得られる。
【0017】
また、第2化合物半導体層を成長させるときの原料Gaの単位時間当たりの成長チャンバへの供給量をF2(Ga)、第2化合物半導体層を成長させるときの原料Alの単位時間当たりの成長チャンバへの供給量をF2(Al)、第3化合物半導体層を成長させるときの原料Gaの単位時間当たりの成長チャンバへの供給量をF3(Ga)、第3化合物半導体層を成長させるときの原料Alの単位時間当たりの成長チャンバへの供給量をF3(Al)とした場合、製造条件は、以下の関係式を満たすように、設定されていることが好ましい。
【0018】
(F2(Al)/F2(Ga))>(F3(Al)/F3(Ga))
【0019】
なお、MOVPE法において、原料をキャリアガスに含ませて気相で成長チャンバ内に供給する場合には、上記単位時間当たりの各原料の供給量(Gaのモル数、Alのモル数)は、これらの原料ガス(TMG、TMA)の濃度が一定であれば、原料ガスの流量となる。
【0020】
この製造条件の場合、第2化合物半導体層の成長時の方が、第3化合物半導体層の成長時と比較して、AlのGaに対する相対的供給量が高くなるため、上述の製造条件が満たされることとなる。
【0021】
また、上記製造条件は、F2(Ga)<F3(Ga)を満たすように設定することができる。すなわち、第2化合物半導体層の成長時において、原料Gaの供給量を小さくすることで、相対的に、第2化合物半導体層内に含有されるAlの比率が高くなり、上記製造条件が満たされることになる。このとき、例えば、原料Alの供給量は、双方の化合物半導体層の成長期間を通じて一定としておけばよい。
【0022】
また、上記製造条件は、F2(Al)>F3(Al)を満たすように設定することができる。すなわち、第2化合物半導体層の成長時において、原料Alの供給量を大きくすることで、相対的に、第2化合物半導体層内に含有されるAlの比率が高くなり、上記製造条件が満たされることになる。このとき、例えば、原料Gaの供給量は、双方の化合物半導体層の成長期間を通じて一定としておけばよい。
【0023】
また、第2化合物半導体層を成長させるときの基板温度をT2、第3化合物半導体層を成長させるときの基板温度をT3とした場合、上記製造条件は、T2>T3を満たすように、設定することができる。すなわち、第2化合物半導体層の成長時において、基板温度を高くすることにより、相対的に、第2化合物半導体層内に含有されるAlの比率が高くなり、上記製造条件が満たされることになる。このとき、例えば、原料Al及び原料Gaの供給量は、共に、第2及び第3化合物半導体層の成長期間を通じて一定としておいてもよい。
【0024】
また、第2化合物半導体層を成長させるときの成長チャンバ内圧力をP2、第3化合物半導体層を成長させるときの成長チャンバ内圧力をP3とした場合、上記製造条件は、P2<P3を満たすように、設定することができる。すなわち、第2化合物半導体層の成長時において、成長チャンバ内圧力を低くすることにより、相対的に、第2化合物半導体層内に含有されるAlの比率が高くなり、上記製造条件が満たされることになる。このとき、例えば、原料Al及び原料Gaの供給量は、共に、第2及び第3化合物半導体層の成長期間を通じて一定としておいてもよい。
【0025】
なお、上述の各種の条件は、上述のメインの製造条件(条件A)を満たす限りにおいて、組み合わせて採用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の化合物半導体層構造によれば、光学特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】化合物半導体層構造の縦断面図である。
【図2】電子線励起紫外光源の構成を示す図である。
【図3】比較例に係る化合物半導体層構造を製造する際のタイムチャートを示すグラフである。
【図4】比較例に係る化合物半導体層のX線回折スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施例に係る化合物半導体層を製造する際のタイムチャートを示すグラフである。
【図6】実施例に係る化合物半導体層のX線回折スペクトルを示すグラフである。
【図7】出力された紫外線の強度スペクトルを示すグラフである。
【図8】LEDの縦断面図である。
【図9】PDの縦断面図である。
【図10】基板温度を制御して化合物半導体層3A、3Bを製造する際のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態に係る化合物半導体層構造の製造方法について説明する。なお、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0029】
図1は、実施形態に係る化合物半導体層構造の縦断面図である。
【0030】
この化合物半導体層構造10は、基板1上に、順次成長した第1化合物半導体層2、第2化合物半導体層3A及び第3化合物半導体層3Bを備えており、第3化合物半導体層3B上にはメタルバック電極4が形成されている。この化合物半導体層構造10は、好適には紫外線発生用のターゲットに適用される。
【0031】
メタルバック電極4を透過して、化合物半導体層3B(3A)に電子線EBが入射すると、化合物半導体層3B(3A)内で紫外線が発生する。発生した紫外線UVは、化合物半導体層3A、化合物半導体層(バッファ層)2、及び基板1を順次介して、外部に出射される。電子線EBの加速エネルギーは、本例では10keVに設定される。なお、メタルバック電極3の厚みは、電子が透過できる厚み以下のであることが必要であり、加速電圧にもよるが、例えば100nm以下である。
【0032】
各要素の材料、厚みは以下の通りである。
【0033】
【表1】

【0034】
Alの組成比X,Y,Zは、以下の関係を満たしている。
・0<X≦1
・0<Y<1
・0<Z<1
・X>Y
・X>Y≧Z
【0035】
なお、AlGaNにおいては、Al組成比が増加するほど、エネルギーバンドギャップは大きくなる。すなわち、化合物半導体層3Aは、化合物半導体層3Bのエネルギーバンドギャップ以上の大きさのエネルギーバンドギャップを有している。化合物半導体層2は、化合物半導体層3Aのエネルギーバンドギャップよりも大きいエネルギーバンドギャップを有している。なお、サファイアのエネルギーバンドギャップは上記要素の中で最も大きい。この構造の場合、基本的に化合物半導体層3Bで発生した紫外線は、化合物半導体層3A,2においては殆ど吸収されないため、紫外線が減衰することなく外部に出力される。
【0036】
なお、予め形成されたバッファ層としての化合物半導体層2(例:AlN)上に、その結晶性の改善を目的として、同一組成の化合物半導体層(AlN)をエピタキシャル成長させ、これを新たな化合物半導体層2としてもよい。この場合には、さらに良好な結晶性を有する化合物半導体層3Aを化合物半導体層2上に成長させることができる。
【0037】
なお、以下において説明する比較例の製造方法を用いた場合、すなわち目的とするAl組成比を一定とする製造条件で、化合物半導体層3A,3Bを製造した場合、化合物半導体層3AのAl組成比が減少し、すなわち、Y<Zを満たす構造が形成され、化合物半導体層3Aにおいて紫外線の吸収が生じてしまう。なお、Al組成比の減少が生じる現象がおきる化合物半導体層3Aの厚みは、少なくとも0μmよりも大きく、0.4μm以下である。後述の実施例及び比較例における製造条件では、この範囲の厚みを有する化合物半導体層3Aにおいて、原料ガスTMGの流量について着目する。
【0038】
図2は、電子線励起紫外光源の構成を示す図である。
【0039】
真空排気されたガラス容器(電子管)11の中に電子源12とグリッド状引き出し電極13が配置されている。容器11の電子源12が配置されていない側の面に、上記化合物半導体層構造(AlGaN薄膜紫外ターゲット)10が配置されている。化合物半導体層構造10のメタルバック電極4を接地し、電子源12に負の高電圧を電源15から印加し、電子源12とグリッド状引き出し電極13間に、可変電源14から適当な引き出し電圧を印加することで、電極12から、高電圧で加速された電子線EBを、化合物半導体層構造10に照射することができる。
【0040】
電子線EBは、メタルバック電極4を透過して、内部の化合物半導体層3Bに到達する。電子線照射の際に化合物半導体層3B(及び3A)で発生する紫外線UVは、化合物半導体層3A,2及びサファイア基板1を介して外部に出射される。電子源12は、大面積の電子線を出射する電子源(例えばカーボンナノチューブ等の冷陰極、或いは熱陰極)を用いることができる。
【0041】
ターゲットとして用いられる化合物半導体層構造10の各要素の機能は、以下の通りである。
【0042】
メタルバック電極4は、好適にはAlを化合物半導体層3Bの表面に蒸着して形成される薄膜であり、チャージアップを抑制するための導電性の薄膜として機能し、電子線EBが損失なく透過できる厚さ(厚さは電子線の加速電圧に依存)に設定されている。そして、メタルバック電極4は、化合物半導体層3B(3A)内で発生した紫外発光成分で電子線入射側に伝播する成分を反射するという機能を併せ持っている。
【0043】
AlGaNからなる化合物半導体層3B(3A)は、紫外発光源であり、好適にはメタルバック電極4を透過して侵入する電子線を完全に吸収できる厚さ(厚さは電子線の加速電圧に依存)に設定されている。
【0044】
好適にはAlNからなる化合物半導体層2は、結晶欠陥の少ない高品質なAlGaN層を基板1上に成長させるためのバッファ層である。サファイアからなる基板1は、上述の半導体層の支持基板として機能し、且つ、紫外線UVを透過させる機能を有している。
【0045】
この実施形態では基板1をサファイアとしたが、基板1はその上部にAlNまたはAlGaNを形成できる、発光該当紫外波長に対して透過特性を有するその他の異種の基板であっても良いし、基板1と半導体層2に代えてAlN基板やAlGaN基板を用いることも出来る。
【0046】
化合物半導体層構造10は、基板1上に、化合物半導体層2、3A,3Bを順次成長させ、次に、メタルバック電極4を化合物半導体層4上に形成することで製造することができる。化合物半導体層2は、予め形成されているものとすると、次に、半導体化合物層3A,3Bを順次MOVPE法を用いて成長させる。AlGaNのMOVPE法は、確立されており、成長チャンバ(図示せず)内に、基板を配置し、基板温度を反応が生じる温度まで昇温し、キャリアガス(H又はN)と共に、原料ガスTMA、TMG,NHを成長チャンバ内に供給する。原料ガスTMA,TMG,NHは、基板表面に供給されるため、表面上にAlGaN層が成長する。
【0047】
化合物半導体層3A,3Bの具体的な成長方法について説明する。以下では、比較例(TMG流量を一定とした製造方法)と、実施例(TMG流量を段階的に変更した製造方法)について説明する。まず、比較例について説明する。
【0048】
図3は、比較例に係る化合物半導体層3A,3Bを製造する際のタイムチャートを示すグラフである。
【0049】
原料ガス(TMG)の保持温度を−10℃、(TMA)の保持温度を20℃とする。TMGの流量は一定である。成長チャンバ内で1180℃に加熱されたAlN層付サファイア基板(AlNからなる化合物半導体層2が予め形成された基板1)に、原料ガスを供給する際、原料ガスのTMG流量は、目的とするAl組成比が60%となるように、25sccm(60.22μmol/min)一定とする。TMAの流量は15sccm(9.09μmol/min)、NHの流量は1500sccmとする。なお、sccmは、1気圧、室温(25℃)下で規格化された流量(cm/min)である。
【0050】
この製造方法では、上述の化合物半導体層3A,3Bは、区別なく製造されるが、成長時間の20%の間に形成された化合物半導体層を、化合物半導体層3Aとし、残りの80%の間に形成された化合物半導体層を、化合物半導体層3Bとする。
【0051】
この製造条件は、以下の通りである。
・成長温度:1180℃
・成長チャンバ内圧力:50Torr(6.7×10Pa)
・昇温時のキャリアガス:N
・昇温時に供給される原料ガス:NH
・成長開始時刻:昇温完了時
・成長時間:136分
・成長時に供給されるキャリアガス:H
・成長時に供給される原料ガス:NH、TMG、TMA
・成長終了時刻:降温開始時
・降温初期(基板温度300℃以上の期間)のキャリアガス:N
・降温初期に供給される原料ガス:NH
・降温後期(基板温度が300℃未満になった場合)のキャリアガス:H
【0052】
図4は、比較例に係る化合物半導体層(AlGaN層全体)のX線回折スペクトルを示すグラフである。
【0053】
なお、GaNのスペクトルは、グラフ外の左側(角度の小さい領域)に存在しており、AlNのスペクトルは、グラフ外の右側(角度の大きい領域)に存在している。製造された化合物半導体層(AlGaN層)のX線回折スペクトルは、GaNスペクトルとAlNスペクトルの間に位置するものであり、スペクトルのピーク位置によって、その組成比が決定される。すなわち、X線回折スペクトルでは、ピーク位置がグラフの右側にあるほど、Alの組成が高くなっているものと推定される。
製造されたAlGaN層のX線回折スペクトルは、2つの面方位(0002)、(10−12)において計測された(図4(a)、図4(b)参照)。以下は、メインピークの位置と、GaN側ピークの位置、及びこれらから求められるAlの組成比を示す表である。
【0054】
【表2】

【0055】
この結果から、AlN層との境界付近に、目的とするAl組成比60%(実際はZ=58%)よりも低いAl組成比(実際はY=54%)のAlGaN層が存在していることが明らかになった。なお、プロセス時の膜厚モニタリング(モニター光を照射してその反射光強度の変化を計測)より求めた成長速度の評価結果(成長初期段階でAlGaNの成長速度が大きく、成長が進むにつれて成長速度が一定になること)及び、結晶方位(01−15)におけるX線逆格子マッピングの評価結果(AlGaNは基板AlNより若干緩和しており、AlNとAlGaNの界面に58%よりも組成の低い層が形成されていること)から、AlNとの境界付近に低Al組成比AlGaN層の存在が確認できている。
【0056】
次に、実施例について説明する。
【0057】
図5は、実施例に係る化合物半導体層3A,3Bを製造する際のタイムチャートを示すグラフである。
【0058】
原料ガス(TMG)の流量は段階的に増加する。成長チャンバ内で1180℃に加熱されたAlN層付サファイア基板(AlNからなる化合物半導体層2が予め形成された基板1)に、原料ガスを供給する際、原料ガスのTMG流量は、目的とするAl組成比が60%よりも高くなるように、最初に15sccm(36.13μmol/min)として、16分間、成長チャンバ内に供給し、続いて、20sccm(48.17μmol/min)として、17分間、成長チャンバ内に供給する。これにより、下層側の化合物半導体層3Aが成長する。しかる後、目的とするAl組成比が60%となるように、TMGの流量を25sccm(60.22μmol/min)に設定し、142分間、成長チャンバ内に供給する。全体の成長期間は175分間である。成長期間内において、TMAの流量は15sccm(9.09μmol/min)であり、NHの流量は1500sccmとする。
【0059】
この製造方法では、成長時間の約20%(最初の16分間と17分間の和=33分間(19%)の間に形成された化合物半導体層を、化合物半導体層3Aとし、残りの約80%(残りの142分間(81%))の間に形成された化合物半導体層を、化合物半導体層3Bとする。
【0060】
この製造条件は、以下の通りである。
・成長温度:1180℃
・成長チャンバ内圧力:50Torr(6.7×10Pa)
・昇温時のキャリアガス:N
・昇温時に供給される原料ガス:NH
・成長開始時刻:昇温完了時
・第1成長時間:16分
・第1成長時に供給されるキャリアガス:H
・第1成長時に供給される原料ガス:NH、TMG、TMA
・第2成長時間:17分
・第2成長時に供給されるキャリアガス:H
・第2成長時に供給される原料ガス:NH、TMG、TMA
・第3成長時間:142分
・第3成長時に供給されるキャリアガス:H
・第3成長時に供給される原料ガス:NH、TMG、TMA
・成長終了時刻:降温開始時
・降温初期(基板温度300℃以上の期間)のキャリアガス:N
・降温初期に供給される原料ガス:NH
・降温後期(基板温度が300℃未満になった場合)のキャリアガス:H
【0061】
なお、全ての実験において、基板を保持して加熱するサセプターは、結晶成長期間において回転させ、結晶成膜の均一性を向上させている。
【0062】
図6は、実施例に係る化合物半導体層(AlGaN層全体)のX線回折スペクトルを示すグラフである。
【0063】
なお、GaNのスペクトルは、グラフ外の左側(角度の小さい領域)に存在しており、AlNのスペクトルは、グラフ外の右側(角度の大きい領域)に存在している。製造された化合物半導体層(AlGaN層)のX線回折スペクトルは、GaNスペクトルとAlNスペクトルの間に位置するものであり、スペクトルのピーク位置によって、その組成比が決定される。すなわち、X線回折スペクトルでは、ピーク位置がグラフの右側にあるほど、Alの組成が高くなっているものと推定される。
【0064】
製造されたAlGaN層のX線回折スペクトルは、2つの面方位(0002)、(10−12)において計測された(図6(a))、図6(b)参照)。以下は、メインピークの位置と、GaN側ピークの位置、及びこれらから求められるAlの組成比を示す表である。
【0065】
【表3】

【0066】
この結果から、AlN層との境界付近に、目的とするAl組成比60%(実際はZ=62%)よりも高いAl組成比(実際はY=70%)のAlGaN層の化合物半導体層3Aが存在していることが明らかになった。なお、化合物半導体層3BのAlの組成比Zは62%である。
【0067】
プロセス時の膜厚モニタリング(モニター光を照射してその反射光強度の変化を計測)より求めた成長速度の評価結果(成長初期段階でAlGaNの成長速度が大きく、成長が進むにつれて成長速度が一定になること)及び、結晶方位(01−15)におけるX線逆格子マッピングの評価結果(AlGaNは基板AlNより若干緩和しており、AlNとAlGaNの界面に62%よりも組成比の高い層が形成されていること)から、AlNとの境界付近に高Al組成比AlGaN層の存在が確認できている。
【0068】
なお、実施例における流量の決定方法について説明する。
【0069】
実施例においては、原料ガスのTMG流量を段階的に制御して、AlN層との境界面付近に低Al組成比のAlGaN層が作製されないようなプロセスを実現するが、TMG流量を決定するために、以下のような手順を採用することが好ましい。
(1)予め、目的のAl組成のAlGaN層を形成する条件となるTMG流量にてAlGaN層を形成する。
(2)AlN層との境界面付近のAl組成をX線回折解析等により確認する。
(3)その結果、本来、目的としていたAl組成よりも低いAl組成の層領域の存在が認められた場合に、形成されるAlGaN層のAl組成が目的のAl組成よりも高くなるよう補正するために、TMG流量を高く設定して、AlN層との境界面付近に目的のAl組成よりも高いAl組成のAlGaN層を形成できるまで(1)から(3)を繰り返してTMG流量の条件出しを実施する。
(4)上記(3)で得られたTMG流量の条件でAlN層との境界面付近に目的となるAl組成よりも高いAl組成のAlGaN層を形成した後、目的のAl組成のAlGaN層を形成する。
【0070】
ここでは、Al組成比の制御方法として、原料ガスのTMG流量を制御した場合について述べたが、TMA流量、基板温度、及び/又は圧力を変更しても、Al組成比を制御することができ、その条件は、上記(1)〜(4)と同様の手順で決定することができる。
【0071】
次に、上述の電子線励起紫外光源に、比較例と実施例の方式で作製した化合物半導体層構造(AlGaN紫外ターゲット)を適用した場合について説明する。
【0072】
図7は、実施例及び比較例のターゲットから出力された紫外線の強度スペクトルを示すグラフである
【0073】
上記実施例に係る製造方法で形成されたターゲットを用いた場合、比較例と比較して、外部に取り出せる紫外発光出力の大幅な向上が認められ、実施例の効果を実際に確認した。なお、実施例のスペクトルのピークは、比較例と比較して短波長側にシフトしている。この理由は以下の通りである。
【0074】
図1を参照すると、比較例のターゲットでは、ターゲットに照射された電子線EBはメタルバック電極4を透過後、化合物半導体層(AlGaN)3Bで吸収され、紫外光を発生させる。化合物半導体層3Bで発生した紫外光は、化合物半導体層(AlGaN)3A,化合物半導体層(AlN)2、サファイア基板1を透過して、外部に取り出されるが、化合物半導体層2と化合物半導体層3Bとの境界付近に形成されている低Al組成比の化合物半導体層3Aによって、吸収損失が発生してしまい、外部に取り出せる紫外発光出力が低下しているものと考えられる。
【0075】
一方、実施例のターゲットでは、化合物半導体層3Aのエネルギーバンドギャップは、化合物半導体層3Bのエネルギーバンドギャップ以上の大きさを有するため、かかる領域において吸収損失が殆ど発生せず、外部に取り出せる紫外発光出力が低下しない。すなわち、短波長側の紫外線も出力されるため、スペクトルのピーク位置が短波長側にシフトしている。
【0076】
また、上述の化合物半導体層構造は、電子線励起紫外光源用の紫外ターゲットに限らず、
基板側から光を取り出す構造の紫外LED(発光ダイオード)、紫外LD(レーザダイオード)及びPD(フォトダイオード)にも、同様に適用することができ、同様に光学特性の改善効果が期待される。
【0077】
図8は、LEDの縦断面図である。
【0078】
サファイア基板1上に、化合物半導体層2,3A,3B、21,22,23が順次形成されており、化合物半導体層23上には電極24が形成され、化合物半導体層3Bの露出表面上には電極25が形成されている。各要素1,2,3A,3Bの構成及び要素3A,3Bの製造方法は、上述の製造方法と同様のものを用いることができる。バッファ層としての化合物半導体層(Al0.47Ga0.53N)3A,3Bには、N型の不純物(Si)が添加されており、その上に、活性層としての化合物半導体層(InAlGaN)21が形成され、更に、その上に、P型の不純物(Mg)を添加した化合物半導体層(Al0.53Ga0.47N)22が形成されている。化合物半導体層23は、Mgを添加したGaNからなるコンタクト層である。なお、電極材料としてはPd/Auなどを用いることができる。
【0079】
電極25,24間に駆動電流を供給すると、このLEDの活性層21は発光し、基板1の方向へ出射されるが、上述の実施例の製造方法を用いれば、この際に、化合物半導体層3Aのエネルギーバンドギャップが狭くなることがないため、出力される紫外線強度を高くすることが可能である。なお、その他の各化合物半導体層の製造にもMOVPE法を用いることができる。
【0080】
図9は、PDの縦断面図である。
【0081】
サファイア基板1上に、化合物半導体層2,3A,3B,31,32,33,34,35,36が順次形成されており、化合物半導体層36上には電極37が形成され、化合物半導体層31の露出表面上には電極38が形成されている。各要素1,2,3A,3Bの構成及び要素3A,3Bの製造方法は、上述の製造方法と同様のものを用いることができる。
【0082】
化合物半導体層2はAlN(350nm)、化合物半導体層3A,3BはAlGaN、化合物半導体層31はAlN(75nm)、化合物半導体層32はN型不純物としてのSiとInを添加したAl0.5Ga0.5N(100nm)、化合物半導体層33はN型のAl0.45Ga0.55N(100nm)、化合物半導体層34はI型のAl0.36Ga0.64N(200nm)、化合物半導体層35はP型のAl0.36Ga0.64N(50nm)、化合物半導体層36はP型のGaN(50nm)である。電極材料としては、Ti/Alなどを用いることができる。
【0083】
サファイア基板1を透過して下側から入射した光は、最終的にはI型の光吸収層としての化合物半導体層34に到達する。上述の実施例の製造方法を用いれば、下方からの光の入射の際に、化合物半導体層3Aのエネルギーバンドギャップが狭くなることがないため、I型の光吸収層34で検出される紫外線強度を高くすることが可能である。なお、その他の各化合物半導体層の製造にもMOVPE法を用いることができる。
【0084】
以上、説明したように、上述の化合物半導体層構造の製造方法は、成長チャンバ内に基板1を配置する工程と、基板1上に形成された第1化合物半導体層2上に、第2化合物半導体層3Aを成長させる工程と、第2化合物半導体層3A上に、第3化合物半導体層3Bを成長させる工程とを備えている。
【0085】
化合物半導体層2は、好適にはAlNであるが、一般的には0<X≦1として、AlGa1−XNとして記載できる。化合物半導体層3Aは、0<Y<1として、AlGa1−YNからなり、化合物半導体層3Bは、0<Z<1として、AlGa1−ZNからなる。ここで、バッファ層としての化合物半導体層2のAl組成比Xは、その上の化合物半導体層3AのAl組成比Yよりも大きい。
【0086】
そして、化合物半導体層3Bを成長させるときのAl組成比Zを決定する製造条件よりも、化合物半導体層3Aを成長させるときの製造条件の方が、この条件で化合物半導体層3Bを形成する場合には、Al組成比が高くなる条件(条件Aとする)に設定されている。なお、上述のように、「目的とするAl組成比」は、化合物半導体層3Aの製造条件で、化合物半導体層3Bを製造した場合に得られるAl組成比をいう。
【0087】
化合物半導体層3AのAlの組成比Yは一定である必要はなく、成長後期になるほど、段階的或いは連続的に、目的とするAl組成比が低くなるように、製造条件を変化させてもよい。すなわち、少なくとも成長初期にあたる化合物半導体層3Aの成長時において、Al組成比Yを高くするような製造条件に設定すればよい。なお、化合物半導体層3A内のAl組成比Yが、化合物半導体層3B内のAl組成比よりも、実際に高くなる必要はなく、目的とするAl組成比が高くなればよい。換言すれば、化合物半導体層3AのAl組成比Yは、化合物半導体層3BのAl組成比Zと同一であってもよい。
【0088】
上記製造条件を用いて製造する場合、化合物半導体層3Aの成長時におけるAl組成比Yの低下現象が抑制され、エネルギーバンドギャップが狭くなるのが抑制されるため、化合物半導体層3Bにおける発光を吸収しにくくなり、光学特性が改善する。
【0089】
また、上述の実施形態においては、AlGaNの成長初期層におけるAl組成比が高くなるように、製造条件は、以下の関係式(EQ1とする)を満たすように設定されている。
【0090】
(F2(Al)/F2(Ga))>(F3(Al)/F3(Ga))
なお、化合物半導体層3Aを成長させるときの原料Gaの単位時間当たりの成長チャンバへの供給量をF2(Ga)、化合物半導体層3Aを成長させるときの原料Alの単位時間当たりの成長チャンバへの供給量をF2(Al)、化合物半導体層3Bを成長させるときの原料Gaの単位時間当たりの成長チャンバへの供給量をF3(Ga)、化合物半導体層3Bを成長させるときの原料Alの単位時間当たりの成長チャンバへの供給量をF3(Al)とする。
【0091】
MOVPE法において、原料をキャリアガスに含ませて気相で成長チャンバ内に供給する場合には、上記単位時間当たりの各原料の供給量(Gaのモル数、Alのモル数)は、これらの原料ガス(TMG、TMA)の濃度が一定であれば、原料ガスの流量となる。なお、上記関係式は、比率によって規定されているため、その供給量は原料となるGa,Alの質量で規定することもできる。
【0092】
上記製造条件の場合、化合物半導体層3Aの成長時の方が、化合物半導体層3Bの成長時と比較して、AlのGaに対する相対的供給量が高くなるため、上述の製造条件(条件A)が満たされることとなる。
【0093】
また、上記製造条件は、上述の実施例では、F2(Ga)<F3(Ga)を満たすように設定した。すなわち、化合物半導体層3Aの成長時において、原料Gaの供給量を小さくすることで(TMG流量:15sccm、20sccm)、相対的に、化合物半導体層3A内に含有されるAlの比率が高くなり、上記製造条件(条件A、関係式(EQ1))が満たされることになる。上述の実施例では、原料Alの供給量(TMAの流量)は、双方の化合物半導体層3A,3Bの成長期間を通じて一定としたが、これは上記関係式(EQ1)が満たされる限りにおいて、変動させてもよい。
【0094】
また、上記製造条件は、関係式(EQ1)が満たされるように、F2(Al)>F3(Al)を満たすように設定することができる。すなわち、化合物半導体層3Aの成長時において、原料Alの供給量(TMAの流量)を、化合物半導体層3Bの成長時の原料Alの供給量(TMAの流量)よりも大きくすることで、相対的に、化合物半導体層3A内に含有されるAlの比率が高くなり、上記製造条件(EQ1)が満たされることになる。このとき、例えば、原料Gaの供給量(TMGの流量)は、双方の化合物半導体層3A,3Bの成長期間を通じて一定としておくことができるが、関係式(EQ1)が満たされる限りにおいて、変動させてもよい。
【0095】
また、化合物半導体層3Aを成長させるときの基板温度をT2、化合物半導体層3Bを成長させるときの基板温度をT3とした場合、上記製造条件は、T2>T3を満たすように、設定することができる。すなわち、化合物半導体層3Aの成長時において、基板温度T2を高くすることにより、相対的に、化合物半導体層3A内に含有されるAlの比率が高くなり、上記製造条件(条件A)が満たされることになる。このとき、例えば、原料Al及び原料Gaの供給量(TMA,TMGの流量)は、共に、化合物半導体層3A,3Bの成長期間を通じて一定としておいてもよいが、上記条件Aが満たされる限りにおいて変動させることもできる。
【0096】
図10は基板温度を制御して化合物半導体層3A、3Bを製造する際のタイムチャートを示す。図3で示した比較例と同様に原料Al及び原料Gaの供給量は、それぞれTMA=15sccm(9.09μmol/min)、TMG=25sccm(60.22μmol/min)一定とする。これは基板温度1180℃の場合に目的とするAl組成比が60%となるような原料ガス供給条件である。
【0097】
TMG、TMAの供給を始めるプロセス開始時の基板温度を目的とするAl組成比60%となる基板温度の1180℃よりも高い1220℃として、上述の一定ガス供給条件の下で、1220℃で20分間、1200℃で15分間として、段階的に温度を低下させながら、化合物半導体層3Aを成長させた後、目的とするAl組成比60%となる基板温度の1180℃で140分間として化合物半導体層3Bを成長させることができる。
【0098】
これにより、化合物半導体層3Aの成長時において、基板温度を、第3化合物半導体層3Bの成長時よりも、高くすることにより、相対的に、化合物半導体層3A内に含有されるAlの組成比を、好適には化合物半導体層3B内のAlの組成比よりも、高くすることができる。
【0099】
また、化合物半導体層3Aを成長させるときの成長チャンバ内圧力をP2、化合物半導体層3Bを成長させるときの成長チャンバ内圧力をP3とした場合、上記製造条件は、P2<P3を満たすように、設定することができる。すなわち、化合物半導体層3Aの成長時において、成長チャンバ内圧力P2を低くすることにより、相対的に、化合物半導体層3A内に含有されるAlの比率が、目的とするAl組成比よりも高くなり、上記製造条件が満たされることになる。このとき、例えば、原料Al及び原料Gaの供給量(TMA,TMGの流量)は、共に、化合物半導体層3A,3Bの成長期間を通じて一定としておいてもよいが、上記条件Aが満たされる限りにおいて変動させることもできる。
【0100】
なお、上述の各種の条件は、上述のメインの製造条件(条件A)を満たす限りにおいて、組み合わせて採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、AlGaN層を有する化合物半導体層構造の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1・・・基板、2・・・化合物半導体層(第1化合物半導体層)、3A・・・化合物半導体層(第2化合物半導体層)、3B・・・化合物半導体層(第3化合物半導体層)、4・・・メタルバック電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長チャンバ内に基板を配置する工程と、
前記基板上に形成された第1化合物半導体層上に、第2化合物半導体層を成長させる工程と、
前記第2化合物半導体層上に、第3化合物半導体層を成長させる工程と、
を備え、
前記第1化合物半導体層は、0<X≦1として、AlGa1−XNからなり、
前記第2化合物半導体層は、0<Y<1として、AlGa1−YNからなり、
前記第3化合物半導体層は、0<Z<1として、AlGa1−ZNからなり、
X>Yであり、
前記第3化合物半導体層を成長させるときのAl組成比を決定する製造条件よりも、
前記第2化合物半導体層を成長させるときの製造条件の方が、この条件で前記第3化合物半導体層を形成する場合には、Al組成比が高くなる条件に設定されている、
ことを特徴とする化合物半導体層構造の製造方法。
【請求項2】
前記第2化合物半導体層を成長させるときの原料Gaの単位時間当たりの前記成長チャンバへの供給量をF2(Ga)、
前記第2化合物半導体層を成長させるときの原料Alの単位時間当たりの前記成長チャンバへの供給量をF2(Al)、
前記第3化合物半導体層を成長させるときの原料Gaの単位時間当たりの前記成長チャンバへの供給量をF3(Ga)、
前記第3化合物半導体層を成長させるときの原料Alの単位時間当たりの前記成長チャンバへの供給量をF3(Al)とした場合、
前記製造条件は、以下の関係式:
(F2(Al)/F2(Ga))>(F3(Al)/F3(Ga))
を満たすように、設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体層構造の製造方法。
【請求項3】
前記製造条件は、
F2(Ga)<F3(Ga)
を満たすように、設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体層構造の製造方法。
【請求項4】
前記製造条件は、
F2(Al)>F3(Al)
を満たすように、設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体層構造の製造方法。
【請求項5】
前記第2化合物半導体層を成長させるときの基板温度をT2、
前記第3化合物半導体層を成長させるときの基板温度をT3、
とした場合、
前記製造条件は、
T2>T3
を満たすように、設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体層構造の製造方法。
【請求項6】
前記第2化合物半導体層を成長させるときの成長チャンバ内圧力をP2、
前記第3化合物半導体層を成長させるときの成長チャンバ内圧力をP3、
とした場合、
前記製造条件は、
P2<P3
を満たすように、設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体層構造の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−212458(P2010−212458A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56999(P2009−56999)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)独立行政法人科学技術振興機構、産学共同シーズイノベーション化事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】