説明

化学増幅型レジスト組成物の製造方法

【解決課題】 製造したレジスト組成物より得たレジスト膜の解像性能の安定化を可能とするレジスト組成物の製造方法、及びその製造方法により経時劣化のロット間差の小さなレジスト組成物を提供する。
【解決手段】 結合剤、酸発生剤、窒素含有塩基性物質及び溶剤を含有する化学増幅型レジスト組成物の製造方法であって、前記溶剤として、過酸化物含有量が許容値以下である溶剤を選択する工程と、前記選択された溶剤中でレジスト組成物構成用材料を混合する工程とを含んでなる化学増幅型レジスト組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線などの高エネルギー線に感応する、微細パターン加工用化学増幅型ポジ型レジスト材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路の高集積化に伴いより微細なパターン形成が求められ、波長248nmのKrFエキシマレーザー光やそれよりも短波長の露光光を使用する光リソグラフィーや、電子線、X線等の高エネルギー線を使用するリソグラフィーに用いるレジストは、感度、解像度の点から現在では殆ど全て化学増幅型レジストが使用されている。
【0003】
化学増幅型レジストにはネガ型とポジ型があり、ネガ型(例えば特許文献1等)は、アルカリ水溶液に可溶性の結合剤と、酸の存在下に結合剤間を架橋して結合剤を不溶化する架橋剤(場合により架橋剤と結合剤が一体の場合もある)と、更に高エネルギー線の照射により酸を発生する酸発生剤とを含有するものであり、ポジ型(例えば特許文献2、3等)は、アルカリ水溶液に不溶性であるが酸の存在下に保護基が脱保護を受けてアルカリ可溶性に変化する結合剤と、酸発生剤を含有するものが基本的な材料である。
【0004】
上記材料を含むレジスト膜では、高エネルギー線が照射されると酸発生剤より酸が発生し、その酸による触媒反応が起きることで膜の溶解性が変化するのであるが、微細加工を行う上では一つの酸が触媒反応を起こす範囲、すなわち酸の拡散距離のコントロールが極めて重要である。なぜなら、酸の拡散距離が小さすぎる場合には期待した感度を得ることができず、一方拡散距離が大きすぎる場合には、明暗のコントラストを損ない、解像性能が低下することになる。そこでこの酸の拡散距離をコントロールする材料である塩基性化合物は、ポジ型にせよネガ型にせよ、実質的に必須の構成材料である。このような、レジスト組成物に使用される塩基性化合物は、一般的には、窒素含有塩基性物質であり、それらは多数が公知であり、上記特許文献1〜3にも多数開示されている。
【0005】
更に、化学増幅型レジストを用いて被加工基板を加工する場合には、上記材料の溶液を塗布成膜することでレジスト膜とするので、レジスト組成物には更に必須材料として溶剤が含有される。
【特許文献1】特開2006−201532号公報
【特許文献2】特開2006−225476号公報
【特許文献3】特開2006−124314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、調製されたレジスト組成物製品はその品質を確認するために調製後に基本解像性能が確認される。ところが、合格品のレジスト組成物を用いて室温よりも高い温度による保管で劣化加速をした後にパターン形成を行うと、基準のものに対して形状が大きく劣化したパターンが得られる場合がある。特にパターンが小さい場合に相対的影響が大きくなるが、矩形性の低下は、エッチング時の加工寸法の精度に問題を生じることになる。
加速試験でこのような大きな経時劣化を示したものは、従来事故品として、使用した材料の同一ロットを廃棄する等の処置を取ってきたが、予め問題となる原因が明らかであれば、歩留まりを向上するとともに事故を事前に防止することができる。
本発明は上記問題を解決することにより、製造したレジスト組成物より得たレジスト膜の解像性能の安定化を可能とするレジスト組成物の製造方法、及びその製造方法によりロット間で経時劣化の差が小さいレジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、解像後のレジストパターン形状差を生じる事故の原因について鋭意研究を行った。すると、加速試験でパターン形状の大きな経時劣化を示したレジスト組成物では、その1H−NMR分析において、添加されている窒素含有塩基性物質の一部が酸化された窒素酸化物に変化していることを見出した。即ち、上記窒素酸化物の含有量が大きくなってしまったものはパターン形状に異常が生じるのである。
【0008】
材料の純度分析は、調製前に全ての材料に対して行われるにも係わらず、調製時に問題がなく、特定のロットに含まれる窒素含有塩基物質の酸化だけが進行してしまう原因としては、使用材料の中に濃度的には微量である酸化物の混入が強く疑われたが、特に溶剤は使用量が多く、酸化物の濃度が明らかに高くなくても充分な酸化物源になる可能性がある。また、分子内に炭素−炭素2重結合、エーテル結合、カルボニルオキシ基、水酸基がある場合には、気中の酸素により潜在的に過酸化物を作る可能性があり、実際にレジスト溶剤の過酸化物測定を行ったところ、明らかに過酸化物を含有するものがあること、過酸化物含量の低いものだけを選んで使用すると、窒素含有塩基性物質の窒素酸化物への化学変化を防止でき、通常設定されている保存期間中に、得られるパターン形状が変化してしまう事故が防止できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち本発明は、結合剤、酸発生剤、窒素含有塩基性物質及び溶剤を含有する化学増幅型レジスト組成物の製造方法であって、前記溶剤として、過酸化物含有量が許容値以下である溶剤を選択する工程と、前記選択された溶剤中でレジスト組成物構成用材料を混合する工程とを含んでなる化学増幅型レジスト組成物の製造方法である。
本発明の製造方法は、前記溶剤を選択する工程が、過酸化物含有量を測定するステップを含んでいてよく、また、過酸化物含有量が前記許容値以下である溶剤によって過酸化物含有量が前記許容値を超える溶剤を希釈するステップを含んでいてもよい。
本発明の製造方法は、前記溶剤が、分子内に炭素―炭素二重結合、エーテル結合、カルボニルオキシ基、および/または、水酸基を含有する場合にも好適に用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化学増幅型レジスト組成物の製造方法により、歩留まりを向上することができ、通常設定される保存期間中に得られるパターン形状が変化してしまうという事故を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
化学増幅型レジストは、ポジ型、ネガ型共に既に多くのものが公知である。必須構成材料としては、膜を形成するための結合剤と、高エネルギー線の照射を受けて分解することで強酸を発生する酸発生剤、更にネガ型の場合には架橋剤を含むものが一般的である。また上述のように化学増幅型レジストを用いて安定した高解像性を得るためには塩基性物質が実質的には必須構成材料であり、塩基性化合物として通常窒素含有塩基性物質が用いられる。従来これらの材料は高い解像性を確実に得るべく、結合剤であれば分子量や分散度の管理、また比較的小さい分子量のものについては純度が厳しく管理されてレジスト組成物に調整される。
【0012】
上記膜を形成するための結合剤は、化学増幅型レジストとして機能するためには、酸発生剤から発生した酸の触媒作用を受けて、ポジ型であればアルカリ性水溶液に対して不溶性から可溶性に、ネガ型であれば可溶性から不溶性に変化する機能を持つ必要がある。
上記溶解性が変化する機能は、ポジ型であれば、通常、フェノール性水酸基やカルボキシル基、更に場合によっては近接位を複数のフッ素で置換されたアルコール性水酸基を、酸により脱保護される保護基でマスクした官能基を有する材料により得られることはよく知られている。この酸により脱保護される保護基も多数のものが知られており、一般的分類としては、3級炭素類、アセタール類が挙げられる。(例えば、特許文献2および3を参照。)
【0013】
またネガ型では、上記アルカリ可溶性を与える官能基と、結合剤間あるいは架橋剤間と結合を形成することができる官能基を有する材料により得られ、場合によってはアルカリ可溶性を与える官能基が架橋剤との結合活性を持つケースもあり、これらのものも多数がよく知られている。更に結合剤間の結合を形成する官能基あるいは架橋剤が持つ架橋官能基は、酸により脱アルコールあるいは脱水等を起こし、水酸基や芳香環に対して酸素−炭素結合や炭素−炭素結合を形成するものであり、それらも多数のものが公知である。(例えば特許文献1を参照。)
【0014】
結合剤に要求されるもう一つの機能は、パターンを形成後、形成されたパターンを用いて被加工基板をエッチング加工する際に用いるフッ素系ドライエッチングあるいは塩素系ドライエッチング等のドライエッチングに対する耐性である。このドライエッチングに対する耐性も多くの研究が行われ、芳香族骨格や脂環式骨格を持つ材料の中から、使用する高エネルギー線に対して比較的吸収の少ないものを用いて使用することはよく知られており、多数の実例が知られている(例えば特許文献1〜3)。また多層レジスト法に使用するレジストでは、酸素系ドライエッチング等に耐性を与えるので、ケイ素を含有する材料を用いられることもよく知られており、多数の実例が知られている(例えば特許文献4)。
【0015】
また、酸発生剤は紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線などの高エネルギー線の照射により分解して、強酸を発生する物質であり、そのような分解を起こす化合物群はスルホニウム類、ヨードニウム類、多数知られており、また発生する酸はフルオロアルキルスルホン酸を初めとして多数のものが知られている。(例えば特許文献1〜4)
【0016】
化学増幅型レジストが現像液に対する溶解性のスイッチを起こす機能は、上記材料の組み合わせにより実現される。その際、よく知られているようにエネルギーの照射を受けて発生した酸は、熱拡散しながら結合剤あるいは架橋剤の官能基と触媒的に反応することで、化学増幅型の特徴である高感度性能が得られる。しかし拡散距離が大きすぎると、酸が発生した領域と、発生しない領域のコントラストが落ち、解像性が低下してしまうので、一定距離以上の拡散を防止するために、塩基性化合物を入れることにより、酸の拡散距離をコントロールすることもよく知られている。
【0017】
上記高い解像性を得るための、酸の拡散距離をコントロールする塩基性物質としては、多数のものが知られており(例えば特許文献1〜4)、トリフェニルスルホニウムヒドロキシドのような例外を除くと、殆ど窒素含有塩基性物質が使用される。
【0018】
このような窒素含有塩基性物質としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
具体的には、第一級の脂肪族アミン類として、ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が例示され、
第二級の脂肪族アミン類として、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が例示され、
第三級の脂肪族アミン類として、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
また、混成アミン類としては、例えば、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。
芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、アニリン誘導体(例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えば、ピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えば、オキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えば、チアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えば、ピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えば、ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えば、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリジン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えば、キノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
更に、カルボキシル基を有する含窒素化合物としては、例えば、アミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えば、ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン等)などが例示され、
スルホニル基を有する含窒素化合物として、3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が例示され、
ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物としては、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が例示される。
アミド誘導体としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が例示される。
イミド誘導体としては、フタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が例示される。
更に下記一般式(B)−1で示される塩基性化合物から選ばれる1種または2種以上を添加することもできる。
N(Z)n(Y)3-n (B)−1
式中、n=1、2、3である。側鎖Zは同一でも異なっていてもよく、下記一般式(Z)−1〜(Z)−3で表すことができる。側鎖Yは同一または異種の、水素原子もしくは直鎖状、分岐状、あるいは環状の炭素数1〜20のアルキル基を示し、エーテル基もしくはヒドロキシル基を含んでもよい。また、Z同士が結合して環を形成してもよい。
【0019】
【化1】

ここで、R300、R302、R305は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、R301、R304は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、あるいは環状のアルキル基であり、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。R303は単結合、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、R306は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、あるいは環状のアルキル基であり、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。
一般式(B)−1で表される化合物は具体的には下記に例示される。
トリス[2−(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−メトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−エトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−エトキシプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンを例示できる。これらは場合により2種以上が組み合わされて用いられる場合もある。
【0020】
これらの窒素含有塩基性物質は、その構造の相違から、pKb以外にも、化学増幅反応の触媒である水素イオンの補足能や結合剤中での分配等の物理的性質に差があり、組成物に配合するそれら窒素含有塩基性物質の選択や組み合わせによりパターン形状の微妙なコントロールができる。そこで、上述の結合剤、酸発生剤等の基本材料が選択された後、最適なパターン形成を与えるべく、その最適な窒素含有塩基性物質、あるいはその組み合わせが選択される。
【0021】
これらの窒素含有塩基性物質は酸化剤が共存すると窒素酸化物となることは初歩の有機化学の教科書にも示される通りであるが、後述実験項に記載したとおり、0℃で保管した場合でも、溶剤中に過酸化物が存在すると、窒素酸化物が形成されてしまう。また、窒素原子の置換基の1つ以上が水素、即ち1級あるいは2級アミンである窒素含有塩基性物質の場合には、酸化されると、酸化物の段階で留まらず、比較的低い温度でも分解反応を起こす。また分解物は場合によっては揮発性の強いものとなり塗布膜から失われてしまったり、分解により水素イオン補足能を大幅に減少、あるいは完全に失うので、重大な感度変化を起こしてしまう。したがって、窒素原子の置換基の1つ以上が水素である窒素含有塩基性物質を用いる場合、本発明にかかる化学増幅型レジスト組成物の製造方法が特に有利に適用できる。
【0022】
窒素原子に直接結合する全ての原子が水素原子以外の原子である窒素含有塩基性物質の場合、窒素酸化物となってもある程度の安定性を持つことから塗布までは組成物溶液中に残存する。また、加熱を伴う塗布成膜工程で分解が生じるものと思われるが、分解生成物もある程度の水素イオン補足能を持つことから、わずかな量の酸化で許容できない変化を生じることはない。従来使用されてきた窒素含有塩基性物質は、そのような窒素原子に直接結合する全ての原子が水素原子以外の原子であるものが殆どであったので、これまで窒素酸化物への変化の重大性に注目されなかったのであるが、上述の通り、窒素含有塩基性物質の選択はパターン形状に影響を与えることにより分かるように、窒素酸化物になることで、パターン形状を変化させる。線幅が200nm以下のパターンを形成する場合には、経験的には窒素酸化物に酸化された割合が20モル%を超えると、パターン形状が許容できないものとなることが多い。
【0023】
レジスト組成物調製用に使用する材料は、使用に先立って精密な純度分析が行われる。しかし、溶剤のように使用量が多量である場合には、純度が高いものであっても、上記窒素含有塩基性物質の添加量が微量であるので、わずかに含有される過酸化物で、重大な量の窒素酸化物を与える危険性がある。
【0024】
レジスト組成物に一般的に使用される溶剤は、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸3−メトキシブチル、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3−エトキシエチルプロピオネート、3−エトキシメチルプロピオネート、3−メトキシメチルプロピオネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ジアセトンアルコール、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、等が挙げられる。これらの溶剤の使用法は、上記レジスト組成物構成材料を予め準備して、それらを順次または夫々溶解混合するという手順で用いられる場合もあり、別法としては、例えば結合剤の合成の後工程で、反応に使用した溶剤と減圧留去を伴う溶剤交換による方法で上記レジスト溶剤への溶液とする場合もある。更に場合によっては合成時の反応溶剤として使用する場合もある。また、上記溶剤は単独で用いられる場合もあり、また混合して用いられる場合もある。
【0025】
上記の汎用される溶剤は、何れも酸素含有官能基を持ち、過酸化物を形成する可能性がある。特に2級あるいは3級炭素に酸素が結合している構造を持つものでは、空気中の酸素により過酸化物を形成する危険性が高い。上記例の中では、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピルは特に3級炭素に酸素が結合しており、空気中に放置するだけでかなり容易に過酸化物を形成する性質が認められた。
【0026】
更に、過酸化物を含む溶剤を用いて窒素含有塩基性物質を含有する溶液を作成した場合、過酸化物含有量に従って、窒素酸化物が形成されてしまい、その形成は0℃で保存した場合にも充分な抑制をすることができない。そこで、上記のような窒素酸化物の形成の問題を回避するためには、使用する溶剤、特に分子構造中に炭素−炭素2重結合や、2級あるいは3級炭素に酸素が結合している構造を持つ溶剤、更に特に乳酸エステル類は、使用に当たり、問題を生じる量の過酸化物を含んでいないことを確認する必要がある。
【0027】
またそれらの溶剤は原料として、あるいは上記レジスト組成物構成用材料を含有する溶液として保管する際にも、酸素による酸化を防止するために、空間の小さな密封容器に保管するか、窒素、アルゴン等の不活性ガスによる酸素の遮断を行うことが好ましい。
【0028】
溶剤に含まれる過酸化物は、生成する過酸化物が特定されている場合にはGC、HPLC等のクロマトグラフィーによって定量分析をすることが可能である。また、酸化される部位が確定しており、かつその構造が既知であれば、NMRを使用してシグナル強度による定量分析を行うことも可能である。
【0029】
一方、脂質や生体関連材料に含有される過酸化物含有量の分析は極めて一般的な方法で行うことができ、酸化還元反応を分析原理とする分析法、例えばヨウ素還元滴定法であれば、未知の過酸化物が含まれている場合や、多数の種類の過酸化物が含まれている場合にも、過酸化物としての含有量を定量分析することができる。
【0030】
レジスト組成物は、全ての構成用材料が溶解された後に、精密フィルターろ過され、気密容器に注入される。気密容器中の酸素量は限られており、あるいは、好ましくは窒素やアルゴンのような不活性ガスを封入して酸素を実質的に含有しない雰囲気とすることで、容器注入後における溶剤の酸化の進行は開封までの間、事実上停止する。そこで、レジスト組成物構成材料を混合する際、上記過酸化物の含有量の分析が行われた溶剤を用い、レジスト溶剤中に含有される過酸化物の許容値を決めておくことにより、レジスト組成物中で窒素含有塩基性化合物が保存期間中に酸化されてしまう最大量を一定値以下とすることが可能になる。そこで、使用する溶剤を、上記過酸化物の含有量の分析値に基づき、許容値以下であるものを選択することで、保存期間中に窒素含有塩基性物質の酸化に由来する解像性変化という事故を防止することができる。なお、選択とは、許容値以上のものを使用しないことだけを指すのではなく、許容値を若干超えているものは過酸化物含有量の低いもので希釈して許容値以下とした後に使用することも含む。特に混合溶剤系では、過酸化物を作り易いものと、そうでないものが組み合わされる可能性があるので、溶剤全体としての過酸化物含有量基準で判断することが経済的に好ましいが、過酸化物含有量は、それぞれ単独で分析された値に基づいても、混合されたのちに分析された値に基づいてもよい。
【0031】
レジスト組成物の調製に使用する溶剤中の過酸化物の許容値は、レジスト組成、要求される保存安定性や、解像性等に依存するので、一概に決定されないが、例えば200nm以下の線幅のパターンを形成するためのレジスト組成物であり、4ヶ月程度保存しても解像性に大きな変化が生じないようにするためには、過酸化物含量を目安として2.5mmol/L以下になるよう、溶剤を選択することで、窒素含有塩基性化合物の酸化に由来する品質劣化が防止できる。そこで、上記のようなケースでは、材料として使用する溶剤の選択および管理要件において、過酸化物含有量を2.5mmol/L以下とすることでレジスト組成物の保存時の劣化事故を防止することができる。
【0032】
化学増幅型レジスト組成物の製造に際しては、通常結合剤80質量部に対し、溶剤を300質量部〜3000質量部、酸発生剤を0.5質量部〜20質量部、及び、窒素含有塩基性物質を0.001質量部〜10質量部混合し、更に必要に応じて界面活性剤のような一般的に使用される改質剤を加えて得ることができる。
【実施例】
【0033】
[ヨウ素還元滴定による過酸化物の分析]
200ml共栓付フラスコに試料10mlを精密に採取し、酢酸:クロロホルム溶液(3:2)25mlを加えた。これに飽和ヨウ化カリウム溶液を1ml加えた混ぜた後、暗所に10分間放置した。これに蒸留水30mlとでんぷん溶液1mlを加え、0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で無色になるまで滴定した。
次に試料を加えない状態で上記操作を行って空試験とした。
過酸化物量は下記式に基づいて算出した。
過酸化物(mmol/L)=(A−B)xF/試料量(ml)x100÷2
A:滴定に要した0.01Nチオ硫酸ナトリウムの消費量(ml)
B:空試験の滴定に要した0.01Nチオ硫酸ナトリウムの消費量(ml)
F:0.01Nチオ硫酸ナトリウムの力価
なお、本分析法による過酸化物の検出限界は0.01mmol/Lである。
[実験例1]乳酸エチルの空気酸化量の測定
日常実験室中で開封使用されている18Lのポリタンクに入った実験用乳酸エチルを、経時的に過酸化物含量の分析を行ったところ、下記表1に示したように、日数を追って、空気酸化がかなり進行していることが確認された。
【0034】
【表1】

【0035】
[実験例2]乳酸エチル中でのアミンの酸化
上記試験法により過酸化物をそれぞれ5.0mmol/L、8.3mmol/L、15.0mmol/L含有することが確認された乳酸エチルを用いて、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン2gの乳酸エチル1L溶液を調製した。窒素雰囲気下、これらをそれぞれ23℃及び0℃で160時間攪拌した後、1H−NMRを測定して、窒素酸化物の生成量(未酸化アミンに対するモル比)を求めた。
1H−NMRの測定は、日本電子製JNM−EPP−300(300MHz)を用いて行い、上記サンプル溶液にDMSO−d6を加えて測定した。得られたシグナルのアミン(4.574ppm)の積分強度に対するアミン酸化物(4.598ppm)の積分強度から、アミン酸化物の生成量を求めたところ、23℃では、37.1%、54.0%、62.8%のアミンが、0℃では20.3%、38.4%、45.2%が、それぞれアミン酸化物に酸化されていることが確認された。
【0036】
[実施例1]ポジ型レジスト
下記組成の化学増幅型レジスト組成物を、過酸化物をそれぞれ(I)2.1mmol/L、(II)5.3mmol/L、(III)10.4mmol/L含有する乳酸エチル及び0.01mmol/L以下の過酸化物を含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用して調整した。
レジスト組成
ポリマーとして、下記式で表されるポリマー 80質量部、
【0037】
【化2】

酸発生剤1として、下記式で表されるオニウム塩 6質量部、
【0038】
【化3】

酸発生剤2として、下記式で表されるオニウム塩 2質量部、
【0039】
【化4】

窒素含有塩基性物質として、下記式で表されるアミン 0.315質量部、
N(CH2CH2OCH2OCH33
乳酸エチルとして1100質量部、および、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとして470質量部、
以上の材料を混合して溶液とした後、0.03μmのフィルターで濾過し、レジスト塗布組成物とした。
それぞれのレジスト組成物は、遮光容器に空間が殆どないように充填し、室温で1ヶ月間保存したものを、それぞれサンプル(I)、サンプル(II)、サンプル(III)とした。
次に標準サンプル(I)として過酸化物を1.8mmol/Lに対して含有する過酸化物が0.01mmol/L以下であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合し、標準サンプル(II)として過酸化物を10.1mmol/L含有する乳酸エチルに対して含有する過酸化物が0.01mmol/L以下であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合し、上記組成のレジスト組成物を調製し、比較用標準サンプル(I)及び(II)とした。なお、比較用標準サンプルは調製後、直ちに下記処理に使用した。
上記3つの保存サンプル及び比較用サンプルをそれぞれ、表面にCrを積層したシリコンウエハー上にスピンコートし、次いで、このウエハーを110℃のホットプレート上で4分間加熱して、厚さ約300nmのレジストのレジスト膜を得た。
更に電子線露光装置(日立ハイテクノロジー社製、HL−800D、加速電圧50keV)を用いて露光し、110℃で4分間ベーク(PEB:post exposure bake)を行って、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像を行うと、ポジ型のレジストパターンを得た。
得られたパターンの評価は、ウエハーを割断した後、走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S4700H)を用いてレジストパターン形状を観察した。
結果を下記表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
[実施例2]ネガ型レジスト
下記組成の化学増幅型レジスト組成物を、過酸化物をそれぞれ(IV)2.1mmol/L、(V)5.3mmol/L、(VI)10.4mmol/L含有する乳酸エチル及び0.01mmol/L以下の過酸化物を含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用して調整した。
レジスト組成
ポリマー 下記式で表されるポリマー 80質量部、
【0042】
【化5】

架橋剤 下記式で表される架橋剤 8質量部、
【0043】
【化6】

酸発生剤 下記式で表されるオニウム塩 10質量部、
【0044】
【化7】

窒素含有塩基性物質 下記式で表されるアミン 0.52質量部、
N(CH2CH2OCH2OCH33
乳酸エチル 760質量部、および、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 320質量部、
以上の材料を混合して溶液とした後、0.03μmのフィルターで濾過し、レジスト塗布組成物とした。
それぞれのレジスト組成物は、遮光容器に空間が殆どないように充填し、室温で1ヶ月間保存したものを、それぞれサンプル(IV)、サンプル(V)、サンプル(VI)とした。
次に標準サンプル(III)として過酸化物を1.8mmol/L含有する乳酸エチルに対して過酸化物が0.01mmol/L以下であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合し、標準サンプル(IV)として過酸化物を10.1mmol/Lを含有する乳酸エチルに対して過酸化物が0.01mmol/L以下であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合し、上記組成のレジスト組成物を調製し、比較用標準サンプル(III)及び(IV)とした。なお、比較用標準サンプルは調製後、直ちに下記処理に使用した。
上記3つの保存サンプル及び比較用サンプルをそれぞれ、表面にCrを積層したシリコンウエハー上にスピンコートし、次いで、このウエハーを110℃のホットプレート上で4分間加熱して、厚さ約300nmのレジストのレジスト膜を得た。
更に電子線露光装置(日立ハイテクノロジー社製、HL−800D、加速電圧50keV)を用いて露光し、120℃で4分間ベーク(PEB:post exposure bake)を行って、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像を行うと、ポジ型のレジストパターンを得た。
得られたパターンの評価は、ウエハーを割断した後、走査型電子顕微鏡[SEM](日立製作所製 S4700H)を用いてレジストパターン形状を観察した。
結果を下記表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表2および表3に示した結果の通り、使用する溶剤に含有される過酸化物の含有量が高い場合、調整直後には大きな差は見られないものの、保存安定性が損なわれ、特にポジ型にせよネガ型にせよパターンの矩形性が損なわれ、形状不良を生じることが明らかになった。
そこで、レジストを調製する際、使用する溶剤に含有される過酸化物の濃度を測定しておくことにより、そのような不良品を生じさせる危険性が回避でき、製品の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、サンプル(I)より得られた150nmラインアンドスペースパターンのSEM画像である。
【図2】図2は、サンプル(III)より得られた150nmラインアンドスペースパターン像のSEM画像である。
【図3】図3は、サンプル(IV)より得られた150nmラインアンドスペースパターン像のSEM画像である。
【図4】図4は、サンプル(VI)より得られた150nmラインアンドスペースパターン像のSEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤、酸発生剤、窒素含有塩基性物質及び溶剤を含有する化学増幅型レジスト組成物の製造方法であって、
前記溶剤として、過酸化物含有量が許容値以下である溶剤を選択する工程と、前記選択された溶剤中でレジスト組成物構成用材料を混合する工程とを含んでなる化学増幅型レジスト組成物の製造方法。
【請求項2】
前記溶剤を選択する工程が、過酸化物含有量を測定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の化学増幅型レジスト組成物の製造方法。
【請求項3】
前記溶剤を選択する工程が、過酸化物含有量が前記許容値以下である溶剤によって過酸化物含有量が前記許容値を超える溶剤を希釈するステップを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の化学増幅型レジスト組成物の製造方法。
【請求項4】
前記溶剤が、分子内に炭素―炭素二重結合、エーテル結合、カルボニルオキシ基、および/または、水酸基を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の化学増幅型レジスト組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−276045(P2008−276045A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121545(P2007−121545)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】