説明

化学物質をデリバリーするための多孔質物品

液体試薬を保持しうる試薬デリバリー物品、それらの物品の製造方法、および液体試薬を装填するためのそれら物品の使用を提供する。さらに、少なくとも1種類の液体試薬を装填した試薬デリバリー物品、その製造方法、および溶液相化学における装填物品の使用に関する;その際、装填された試薬はデリバリー物品から溶液中へ放出される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、試薬デリバリー物品(reagent delivering article)、好ましくはタブレット状のものに関する。それ故、本発明は、液体試薬または固体試薬を保持しうる試薬デリバリー物品、それらの物品の製造方法、および液体試薬を装填するためのそれらの物品の使用に関する。第2観点において本発明は、少なくとも1種類の化学試薬を装填した試薬デリバリー物品、その製造方法、および溶液相化学における装填済み試薬デリバリー物品の使用に関する;その際、装填された試薬はそれらの物品から溶液中へ放出される。
【0002】
発明の背景
合成化学および分析化学は多数の工程を伴う可能性があり、これには特に有機化学分野、たとえばコンビナトリアルケミストリーおよび医薬化学における、パラレル合成またはミックス−アンド−スプリット合成での化学物質の添加が含まれる。
【0003】
パラレル合成は、たとえば医薬産業および材料科学における新規化合物の探索に際して重要な手段となっている。これらの概念を利用して多数の化合物が合成される。パラレル合成は化学合成組織化の特別な形態であり、この方法では、一般に研究の目的で多数の新規な単一化合物を得るために、多数の化学合成を個別に同時に実施する。
たとえば、特異的アッセイ法においてどの類似体が最も望ましい活性をもつかを判定するために、ある分子の多数(しばしば数百以上)の類似体を製造するために、パラレル合成が使用される。
【0004】
コンビナトリアルケミストリーはパラレル合成の一形態であり、個々のコンビナトリアル法を用いて各工程の順序および特徴が実行される。
パラレル合成を実施するためには、物質の添加および分離を多数回行う必要がある。
【0005】
多数の反応を同時に実施するある種のパラレル合成では、必要な試薬の分散、ピペッティングまたは秤量、および分配それぞれに消費される時間が著しい。さらに、必要な多数回の分散、ピペッティングまたは秤量それぞれに際して誤差や誤りが生じるのを避けられない。さらに、試薬が吸湿性または酸素感受性であるため特に秤量に際して特別な措置が必要な場合があり、これはさらに時間を消費し、またたとえば試薬の部分的な分解または変換によりさらに誤差をもたらす可能性がある。
【0006】
さらに、試薬との接触は合成実施スタッフに対する健康上の危険性を伴う場合がある。
したがって、時間消費を減らして合成の処理量を高め、作業員に対する健康上の危険性を減らし、酸素および水分の劣化作用に対して試薬を保護するために、従来パラレル合成およびスプリット−アンド−ミックス合成に用いられてきた試薬の分散、ピペッティングまたは秤量、および分配に代わる、簡単な投入手段(dosing means)が求められている。
【0007】
前記問題の幾つかを避けるために、タブレットなど、試薬をデリバリーするための多様な投入形態が知られている。
WO 01/68599には、タブレットとして成形されたポリマーマトリックスに少なくとも1種類の固体活性物質を埋め込む投入形態の製造方法が記載されている。WO 01/68598には、官能化ポリスチレン樹脂をデリバリーするための投入形態が記載されている。合成用媒質中に導入されると、それらのタブレットは崩壊して試薬または官能化樹脂を放出する。
【0008】
WO 00/21658からは、多孔質デバイスが知られる。その多孔質デバイスは固体支持合成に使用できる。その多孔質デバイスは、多孔質コア内に捕獲された活性物質を含む。この捕獲された物質は、溶媒に装入された際、捕獲されたままである。
【0009】
各種タイプの物質の投入形態としてタブレットを使用するのは他の技術分野では一般的であることを指摘すべきである。たとえば医薬産業では、経口投与のための薬物を、通常は各種の増量剤および佐剤と一緒に圧縮してタブレット(錠剤)にする。これらのタブレットおよび他の産業において製造されるタブレット、たとえば洗剤タブレットは、水性環境で崩壊して少なくとも部分的には溶解することを意図し、崩壊しないことは全く意図しない。
【0010】
これに対し、溶液相化学のための多孔質物品の形の試薬デリバリー系であって、その系を溶媒に装入した際にそれから液体試薬が放出されるものは、知られていない。
したがって本発明の目的は、溶液相化学において反応を実施するために前記の問題に対処することである。
【0011】
発明の概要
したがって、1観点において本発明は、本質的に多孔質材料、場合により1種類以上の加工助剤、および場合により固体活性物質、を含む試薬デリバリー物品であって、少なくとも1種類の液体試薬を保持しうる試薬デリバリー物品を提供する。
【0012】
好ましい態様において、本発明の試薬デリバリー物品は固体活性物品を含まない。
好ましくは、本発明の試薬デリバリー物品は溶液中で本質的に元の形状のままであり、実質的に崩壊しない。
【0013】
少なくとも1種類の液体試薬または固体試薬を保持しうる本発明物品は、特に溶液相化学に有用である。本発明物品を溶液に添加すると、それから試薬(1種類以上)が放出される;こうして、予め定めた固定量の試薬が反応混合物に供給される。
【0014】
大量の本発明物品を予め簡便に製造しておくことができる。それらの物品をそのまま分配することができ、または化学分野で一般に用いられる各種試薬を予め定めた量で自動的に装填することができる。これにより試薬を簡単に分配でき、有害物質への被曝が少なくなり、投入の精密度および正確度が改善される。さらに、本発明物品は反応に供給しやすく、特に化合物ライブラリーおよびシリーズの合成において合成実施を加速でき、合成操作(手動および自動)の複雑さを減らす。
【0015】
本発明物品に保持される液体試薬または固体試薬に関して、帯電した試薬の取扱いの問題が最小限に抑えられ、また官能基の安定性が高まる。
本発明物品の前記利点はすべて、溶液中で化学合成を実施する時間効率および原価効率の高い手段を構成する。
【0016】
本発明の他の態様においては、前記の試薬デリバリー物品の製造方法が提供される;この方法は、(i)多孔質材料を用意し;(ii)場合により、多孔質材料を1種類以上の加工助剤と混合し;(iii)場合により、多孔質材料および任意の加工助剤(1種類以上)を固体活性物質と混合し;(iv)前記の混合物を常法により試薬デリバリー物品に加工し;そして(v)場合により、試薬デリバリー物品を精製することを含む。
【0017】
本発明は特に、多孔質材料および加工助剤(1種類以上)に対して不活性である少なくとも1種類の液体試薬を保持しうる試薬デリバリー物品の使用に関する。
本発明の第3観点においては、本質的に多孔質材料、場合により加工助剤、および場合により固体活性物質からなり、さらに多孔質材料および任意の加工助剤に対して実質的に不活性である少なくとも1種類の液体試薬を含む、試薬デリバリー物品が提供される。さらに、この試薬デリバリー物品は有機および無機溶媒に実質的に不溶性である。
【0018】
本発明の第4観点においては、この試薬デリバリー物品の製造方法が提供される;この方法は、(i)多孔質材料を用意し;(ii)場合により、多孔質材料を1種類以上の加工助剤と混合し;(iii)場合により、多孔質材料および任意の加工助剤(1種類以上)を固体活性物質と混合し;(iv)前記の混合物を常法により試薬デリバリー物品に加工し;(v)場合により、試薬デリバリー物品を精製し;そして(vi)試薬デリバリー物品に、多孔質材料および任意の加工助剤(1種類以上)に対して実質的に不活性である少なくとも1種類の液体試薬を装填することを含む。
【0019】
好ましい態様において、工程(iv)の混合物の加工は通常のタブレット製造技術により混合物を圧縮してタブレットにすることであり、加工助剤は医薬分野の専門家に既知のタブレット(錠剤)製造助剤である。
【0020】
本発明は特に、溶液相化学に使用することにより、保持されている液体試薬(1種類以上)を物品から放出させるための、特にパラレル溶液相化学に使用するための、試薬デリバリー物品に関する。
【0021】
発明の詳細な記述
試薬デリバリー物品
本発明は、固体多孔質材料に内包された試薬を容易に溶媒中へ放出させることができ、したがって不活性多孔質材料内の試薬を反応媒質へ供給できるという認識に基づく。本発明によれば、この不活性多孔質材料は予め定めた形状およびサイズをもつ試薬デリバリー物品として提供され、これにより化学試薬のための新規な試薬デリバリー系を形成する。
【0022】
本発明の試薬デリバリー物品は、液体試薬または固体試薬を保持し、その後、試薬(1種類以上)を溶液中へ放出することができる物品であり、したがって多孔質の試薬デリバリー物品、デバイスまたは系とみなすことができる。本発明物品およびその各種態様、ならびに本発明物品の製造方法およびその使用を以下に詳述する。
【0023】
用語”化学試薬”は、本明細書において通常どおり理解すべきであり、すなわち化学反応に関与して消費されることが可能な化合物または化合物の混合物である。
本明細書中で用いる”液体試薬”は、いずれかの有機、無機、疎水性または親水性の液体、ならびに有機、無機、疎水性または親水性の液体に溶解または分散したいずれかの固体または液体物質を意味するものとする。液体試薬は、純化合物、または2種類以上の化合物の混合物であってよい。液体試薬という用語には周囲温度で液体である化合物が含まれるだけでなく、それより高い温度または低い温度でのみ液体である試薬も含まれることを理解すべきである。
【0024】
本発明物品に関して用いられる”保持”は、その物品が多孔質材料の由来に応じた特定量の試薬を内部に保有しうることを意味するものとする。
本発明によれば、用語”固体活性物質”は、特定の意図する化学反応において機能をもつ物質を意味するものとする。したがって、固体化学活性物質は、たとえば固体試薬、金属、触媒またはスカベンジャーを含む群から選択され、既知の医薬有効性をもつ化合物は、それらの化合物をさらに特定の反応において試薬、触媒またはスカベンジャーとして使用できない限り、一般に含まれない。
【0025】
本発明の好ましい態様において、試薬デリバリー物品は反応媒質に装入された際に本質的に元の形状のままであり、実質的に崩壊しない。
本明細書において、反応媒質という用語は、通常の意味で理解され、すなわち通常は1種類以上の溶媒、試薬、pH調整成分、スカベンジャーなどからなるものである。
【0026】
反応媒質に装入された際に”本質的に元の形状のままであり”、”実質的に崩壊しない”とは、反応媒質中で一定期間後の試薬デリバリー物品重量の減少が<40%(w/w)、好ましくは<30%(w/w)、より好ましくは<20%(w/w)、よりさらに好ましくは<10%(w/w)、最も好ましくは<5%(w/w)であることを意味するものとする。意図する反応の経過中に試薬デリバリー物品が実質的に崩壊しないことを確実にするには、試薬デリバリー物品が”本質的に元の形状のままであり、実質的に崩壊しない”時間、言い換えれば試薬デリバリー物品の安定性が適切でなければならない。
【0027】
多孔質物品に関して”実質的に不溶性”とは、起きる可能性のある反応を汚染するほど容易にはその物品が溶解しないことを意味するものとする。より具体的には、化学試薬を除いて、溶液中における試薬デリバリー物品の溶解は10重量%を越えず、好ましくは5重量%を越えず、より好ましくは2重量%を越えず、よりさらに好ましくは1重量%を越えず、よりいっそう好ましくは0.5重量%を越えず、特に好ましい態様においては試薬デリバリー物品の溶解は0.1重量%を越えないことを意味する。これに対し、物品に含有されている試薬は容易に、好ましくはほぼ定量的な量で、反応媒質中へ放出されるであろう。
【0028】
本発明物品が溶液中に存在することがもはや望まれなくなった場合、本発明の試薬デリバリー物品が本質的に元の形状のままであるという特性のため、本発明物品は取出しおよび/または廃棄が容易である。これは、本発明物品が濾過プロセスを遮断せず、または無傷であるため濾過せずに簡単に取り出せるからである。
【0029】
本発明による試薬デリバリー物品が”本質的に元の形状のままであり、実質的に崩壊しない”のが好ましい態様であるというだけで、物品が崩壊する状況が除外されることはない。この非崩壊性は、たとえば下記の状況(これらに限定されない)では重要性が低いことがある:ごく少量の試薬デリバリー物品を使用するので濾過の問題が生じない場合、または反応生成物が蒸留され、残りの溶液が廃棄される場合、または当該反応が潜在的に有害な化学物質を廃棄前に不活性化することを意図する場合など。個々の反応における非崩壊性の重要性の低さは、当業者が容易に認識できる。
【0030】
本発明の試薬デリバリー物品は、好ましくは予め定めた形状をもつ。その形状は、たとえば球、楕円、タブレットなど、いかなる形状であってもよく、これらに限定されない。物品の形状は液体試薬を保持するという物品の機能を制限するものではなく、物品の貯蔵および包装、製造しやすさ、ならびに種々の形状および寸法をもつ種々の反応容器における使用に適合させるために物品を変更する手段である。さらに、試薬デリバリー物品を、特定の道具、たとえば試薬デリバリー物品を分配するためのディスペンサーに適合させることができる。
【0031】
本発明の試薬デリバリー物品は、好ましくは球、楕円、タブレット、バー、シリンダーの形状である。
試薬デリバリー物品は、そのデバイスの添加および取り出しを容易にするために、ティーバッグから知られる原理と同様なストリングを備えていてもよい。溶液からデバイスを容易に取り出すための他の既知の処置、たとえばピンセット、磁気により取り出すための磁性材料の含有も含まれる。
【0032】
装填済み試薬デリバリー物品をたとえばブリスターパック内に包装することもさらに含まれる。ブリスターパックは、包装形態が好都合であるほか、試薬デリバリー物品を機械的衝撃、水分、酸素などに対して保護し、さらにその利用者を物品に装填された試薬に対して、たとえば揮発性試薬のガスに対して保護する。そのようなブリスターパックは、ブリスターパック内のすべての物品を同時にアレイ状の反応管またはウェル、たとえばマイクロタイタープレート内へ分配しうるように設計することすらできる。
【0033】
さらに他の好ましい態様において、本発明により製造した物品は、異なる試薬(固体および/または液体)を含む物品を互いに同定するための同定手段を備えている。
同定手段は、たとえば番号、文字、記号または色をコード化した組合わせ、バーコード、化学構造、マークまたはプリントしたパンチカード形式、紫外線可能読デバイス、あるいは他のいずれかの可読デバイス、たとえば磁気ストリップであってよい。同定手段は、放射性標識もしくはIrori標識技術により、または当業者に既知のいずれか好都合な標識技術により付与することができる。
【0034】
これらの同定手段を本発明物品に付与するのは当業者が容易になしうるであろう。
空の本発明物品の製造
本発明の好ましい1態様においては、まず空の形の物品、すなわち化学試薬を含まない物品を製造する。
【0035】
したがって本発明の他の態様においては、空の試薬デリバリー物品の製造方法が提供される;この方法は、(i)多孔質材料を用意し;(ii)場合により、多孔質材料を1種類以上の加工助剤と混合し;(iii)場合により、多孔質材料および任意の加工助剤(1種類以上)を固体活性物質と混合し;(iv)前記の混合物を常法により試薬デリバリー物品に加工し;そして(v)場合により、試薬デリバリー物品を精製することを含む。
【0036】
多孔質材料ならびに任意の加工助剤および任意の固体活性物質を混合する工程は、当業者に既知のいずれかの常法により実施できる。
同様に、多孔質材料、任意の加工助剤(1種類以上)および任意の固体活性物質の加工は、一定の均一な形状およびサイズをもつ物品の製造のための当技術分野で既知の常法により、たとえばプレミックスの圧縮、押出し、注入、注型、成形、凝固などにより実施できる。
【0037】
本発明による加工助剤は、前記成分の混合物を得る際に、混合物を試薬デリバリー物品に加工する際に、または製造された物品において、機能をもついずれかの化合物である。関連加工技術においてそれらの機能が知られている加工助剤を本発明により使用できることは、当業者に自明であろう。たとえば、試薬デリバリー物品を押出しにより製造する場合は押出し技術分野で既知の加工助剤を使用でき、試薬デリバリー物品をタブレット圧縮法により製造する場合は医薬技術分野で用いられる錠剤製造助剤を使用できるなどである。
【0038】
多孔質材料を含む混合物の加工のための好ましい技術は、一般的なタブレット製造技術および装置を用いて圧縮してタブレットにするものであり、加工助剤はタブレット製造助剤、より好ましくは滑剤である。
【0039】
本発明に用いる多孔質材料は、いずれかの形の液体(有機、無機、疎水性、親水性、粘性、非粘性など)を多孔質材料と保持された液体との実質的な相互作用なしに保持でき、この材料が溶液に装入された際にその液体を即時または連続的に多孔質材料から溶液中へ放出できる、いずれかの多孔質材料である。
【0040】
用語”多孔質材料”には、加工後または後続の追加工程後に初めて多孔性を獲得する材料になるいずれかの材料、たとえば押出し後に多孔質になるいずれかの材料、または熱処理後に初めて多孔質になるいずれかの材料も含まれるが、これらに限定されない;この後続の追加工程は、空の試薬デリバリー物品を形成した後に行うのが好都合であろう。
【0041】
本発明に用いる多孔質材料は、それを装入する環境、たとえば空気または溶液(有機または無機)に対して実質的に不活性な多孔質材料である;すなわち、多孔質材料はそれを使用する溶媒と実質的に反応および/または相互作用せず、製造された試薬デリバリー物品を貯蔵する際の周囲環境とも実質的に反応および/または相互作用しない。多孔質材料は、無機液体もしくは有機液体またはその混合物に実質的に不溶性の無機材料であってもよい。
【0042】
適切な多孔質材料の例としては、金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属炭酸塩、金属ホスホン酸塩および金属硫酸塩を挙げることができる。本発明に用いる多孔質材料の他の例は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素であり、Aerosil、Cab-O-Sil、Syloid、Porasil、Lichrosorp、Aeroperl、Sunsil、Zeofree、Sopernat、膨潤性クレー、たとえばベントナイト、ベーガム(veegum)およびラポナイト(laponite)が含まれる。
【0043】
好ましい多孔質材料には、ミクロ細孔および/またはメソ細孔を含む固体材料が含まれ、その際、ミクロ細孔は2nm未満の直径をもつ細孔と定義され、メソ細孔は2〜約50nmの直径をもつ細孔と定義される。
【0044】
好ましい材料の例として、シリカ、たとえばセライト、ゼオライト、アルミナおよびセラミックスを挙げることができる;好ましいシリカは、50 nm未満の到達可能な秩序ミクロ細孔またはメソ細孔をもつものであり、特に好ましいシリカはゼオライト、または非ゼオライト化学組成をもつ他のミクロ多孔質およびメソ多孔質材料である:L. B. McCUSKER et al. (Pure and Applied Chemistry 73, pp. 381-394)に定義。ゼオライトの例は、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトである。多孔質材料の例には、Neusilin (米国Fuji Chemical Industries Inc.が供給)が含まれる。
【0045】
選択された多孔質材料は、1反応に適切であって、他の反応には適切でないものであってもよい。個々の用途のための多孔質材料を選択する方法は当業者に既知であろう。
多孔質材料を、場合により当技術分野で既知のいずれかの加工助剤と混合してもよい。
【0046】
本発明の試薬デリバリー物品は、多孔質材料および加工助剤(1種類以上)に対して不活性な液体試薬を保持するのに特に有用である。
液体試薬を保持しうる本発明の多孔質材料は、保持したい液体試薬、目的とするその試薬の吸収時間、および試薬デリバリー物品内に保持すべき目的量に応じて選択できる。
【0047】
多孔質材料の孔径は、保持すべき液体試薬の吸収速度および液体試薬を保持した物品の蒸気圧の形で物品に対して影響をもつ。
たとえば、小さい孔径はより低い蒸気圧をもたらし、逆に大きい孔径はより高い蒸気圧をもたらす。したがって、揮発性有害物質、たとえば臭素またはCS2を扱う場合には健康上の理由で、悪臭をもつ物質を扱う場合には快適性および品質維持向上の理由で、蒸気圧に応じて孔径を変更することが重要である。
【0048】
同様に、大きい孔径はより低い吸収速度をもたらし、逆に小さい孔径はより高い吸収速度をもたらす。理想的には装填する試薬デリバリー物品にとって高い吸収速度が装填時間の促進に好ましいが、有害な揮発性物質および/または悪臭をもつ物質を扱う際に物品からの揮発を避けるために、また品質維持向上のために、吸収時間を妥協する場合がある。
【0049】
しかし、孔径は個々の反応媒質中における個々の試薬の放出時間に対しても影響をもつことを指摘すべきである。したがって、個々の試薬デリバリー物品に適切な多孔質材料の選択は、しばしば装填時間、気化および放出時間に対する考慮間の妥協である。
【0050】
多孔質材料に関する”気孔率(void volume)”は、間隙容積(interstitial volume)/有効容積(available volume)をもつとみなすことができる容積を意味し、これは本発明物品内において物品に進入する液体が到達できる本質的にすべての容積、すなわち細孔表面で囲まれ、物品を形成する無機材料を含まない容積と定義される。”間隙容積”、”有効容積”および”気孔率”は互換性をもって使用できる。
【0051】
本発明の多孔質材料は、多孔質材料の全容積に対して可能な限り高い気孔率をもつことができる。意図する用途に応じて、たとえば少なくとも20% (V/V)、より好ましくは少なくとも30% (V/V)、より好ましくは少なくとも40% (V/V)、特により好ましくは少なくとも50% (V/V)、より好ましくは少なくとも60% (V/V)、よりさらに好ましくは少なくとも70% (V/V)、最も好ましくは少なくとも80% (V/V)、特に好ましい態様においては少なくとも85% (V/V)。
【0052】
好ましい多孔質材料ゼオライトの気孔率は、たとえば天然ゼオライトについては最高50% (V/V)、合成ゼオライトについては最高85% (V/V)またはそれ以上を構成できる。
多孔質材料は、物品に保持すべき液体試薬の予め定めた目的量に対応する気孔率を試薬デリバリー物品が含むように選択できる。
【0053】
物品のサイズは、その物品の意図する用途に応じて異なるであろう。すなわち、試薬の目的量が多いほど物品は大きい。それに保持される液体試薬の目的量に対応する物品サイズの選択は当業者が容易になしうる。
【0054】
こうして、気孔率、孔径、意図する装填量および試薬などを考慮して多孔質材料を選択できる。
さらに他の態様においては、触媒特性をもつ多孔質材料を選択する。
【0055】
加工助剤は、物品の圧縮および/または成形を補助する以外は、試薬デリバリー物品の他のいずれかの構成部分を妨害しないように選択されるべきである。さらに、加工助剤は溶液中で溶解すべきでない。
【0056】
これは、本発明の方法の任意の精製工程(v)を実施して、いずれかの実質量の加工助剤を含有しない物品を得ることにより、または意図する反応に用いる溶媒に不溶性である加工助剤を使用することにより、達成できる。これに関して”いずれかの実質量の”とは、有意ではない量の物質が溶解するにすぎず、この量は意図する化学反応または目的生成物の純度に何らかの影響を及ぼすには少なすぎることを意味するものとする。当業者には、どの物質が前記の要件に好適かが分かるであろう。
【0057】
任意の精製工程(v)の目的は、製造した試薬デリバリー物品から、可溶性多孔質材料、過剰の/分配される可能性のある加工助剤(1種類以上)、および過剰の固体活性物質など、実質的にすべての有機物質を除去することである。これにより、本発明物品が特定の試薬媒質中で使用される際に物品に含有されている試薬以外のいずれかの化合物を放出しないことが確実となる。
【0058】
この精製は、周知の洗浄法により、たとえば溶媒などの洗浄液への浸漬、続いて一般的な乾燥操作により実施できる。
洗浄工程は、本発明の試薬デリバリー物品の圧縮を補助した後の加工助剤(1種類以上)を洗浄除去し、その結果、本質的に多孔質材料からなり、したがって任意の固体活性物質以外の混入物質を含まない物品を得ることも可能にする。
【0059】
これは、反応混合物中の混入物質が目的反応を妨害する場合、または妨害する疑いのある場合に、特に有用である。しかし、反応媒質中の不要な物質を避けるために、本発明により空の物品を製造する際に一般に洗浄工程を含めることが好ましい。
【0060】
あるいは、試薬デリバリー物品の内側に存在する加工助剤および/または他の有機化合物は、タブレットをたとえば400℃より高温に加熱することにより除去できる。そのような高温では、多くの有機化合物が蒸発または分解し、タブレットから気体として離脱する。加熱は、タブレットの内側に存在するいずれかの有機物質を燃焼させるために、酸素の存在下で、たとえば周囲の空気中で実施できる。主に多孔質材料からなるタブレットは、一般にきわめて高い温度まで、たとえば最高500℃またはそれ以上ですら安定であるので、これが可能となる。試薬デリバリー物品からそれらの有機化合物を効果的に除去するために、個々の有機化合物を含有する個々の試薬デリバリー物品を加熱するのに適切な温度を選択すること、あるいは個々の状況に適切なそのような温度を見いだすための簡単な実験を実施することは、当業者が容易になしうる。
【0061】
1態様において、多孔質材料は熱処理後に初めて多孔質になる材料である。この場合、いずれかの加工助剤を除去し、同時に多孔質材料の多孔性を得るために、工程(v)を形成された物品の加熱として含めることが好ましい。
【0062】
好ましい態様において、加工助剤は医薬技術分野で滑剤(滑沢剤)として知られるものである。本発明物品に用いる滑剤の例としては下記のものを挙げることができる:ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または他のステアリン酸金属塩、タルク、ろうおよびグリセリド、軽量の鉱油、PEG、ベヘン酸グリセリル、コロイドシリカ、水素化植物油、トウモロコシデンプン、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、硫酸アルキル、安息香酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウム。
【0063】
好ましい滑剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
他の好ましい態様において、本発明による試薬デリバリー物品は、医薬技術分野でも知られている流動促進剤(glidant)をさらに含む。
【0064】
多孔質材料、滑剤および流動促進剤は、当技術分野、特に医薬技術分野で周知である。医薬技術分野ではこれらの物質は医薬的に許容できる品質で用いられる。しかし、本発明に関してこれらの成分が医薬的に許容できるものである必要がないことは、当業者に自明であろう。本発明の要件は、意図する試薬および意図する反応に関してこれらの成分が不活性でなければならないことを指摘するにすぎず、したがって本発明には医薬的に許容できる品質の成分、すなわち純度などがたとえば欧州薬局方に挙げられた公式に承認された要件に従う成分を使用することは要求されないからである。
【0065】
1態様において、空の物品の成分は医薬的に許容できる品質のものである。
他の好ましい態様において、不活性多孔質材料および加工助剤のうち少なくとも1種類は医薬的に許容できる品質のものではない。
【0066】
他の好ましい態様において、試薬デリバリー物品は固体活性物質を含む。固体活性物質は、固体化学試薬、たとえば金属、触媒、または固体担体に結合した化合物部分であってよい。
【0067】
原則として、本発明によればいかなる固体担体に結合したいかなる化合物部分も使用できる。文献中に既知の、または供給業者から入手できる、いずれかの固体担体に結合したいずれかの化合物部分を使用できる。化合物部分は、固体担体に結合した状態で化学反応に関与できるいずれかの種類の官能基から選択できる。本発明により使用できるそのような化合物部分の多くは、当技術分野で周知である。固体担体は原則として、化合物部分に結合でき、意図する反応に対して本質的に不活性である、いかなる担体であってもよい。固体担体は、有機物質、たとえばポリウレタンまたはポリスチレンをベースとする樹脂であってもよく、あるいは無機であってもよい。どの担体を本発明により使用できるかは、同様に当業者に自明であろう。
【0068】
好ましい1態様においては、固体担体自体が少なくとも1種類の試薬を保持しうる多孔質材料である。
固体担体への化合物部分の結合は当技術分野で周知である。
【0069】
固体担体に結合した化合物部分は、たとえばその部分において起きる特定の反応のための担体(この場合、生成物は1以上の合成工程後に離脱する)、触媒またはスカベンジャーとして使用できる。
【0070】
本発明による固体活性物質を含む試薬デリバリー物品を製造するためには、固体活性物質を多孔質材料および任意の加工助剤と混合した後、この混合物を試薬デリバリー物品に加工する。固体活性物質は、好ましくは任意の加工助剤に対して不活性であり、かつ多孔質材料と接触した際に変換されない。
【0071】
空の物品の装填
製造した空の物品に、化学反応に使用する前に、デリバリーすべき試薬を装填しなければならない。
【0072】
空の物品を液体試薬と接触させることにより、試薬デリバリー物品に液体試薬を装填できる。
試薬が周囲温度で液体である場合、試薬デリバリー物品を液体試薬に浸漬することにより、液体試薬を手動もしくは自動でピペットを用いて装填することにより、または液体を固体物品に供給するのに適切な他のいずれかの手段で、その液体を装填できる。吸収時間の短縮のために、または液体がきわめて粘稠であって容易に物品に吸収されない場合は、液体を加圧下で物品に供給することもできる。
【0073】
試薬が周囲温度で固体である場合、試薬を適切な溶媒に溶解し、得られた溶液を前記に従って物品に装填することができる。通常は装填後に蒸発により溶媒を除去することが好ましい。
【0074】
あるいは、試薬が周囲温度で固体である場合、それを融解し、前記に従って物品に装填することができる。装填後、物品を周囲温度に冷却すると試薬は物品の内側で凝固するであろう。通常は、凝固した試薬は装填された物品から反応媒質中へ満足すべき速度で溶解するであろう。この方法は融解温度で十分な安定性をもつ試薬に適用できる。さらに多孔質材料がその融解温度で安定であることが要求され、これは通常は問題ない。
【0075】
試薬が周囲温度で気体である場合、試薬を低温で液化し、低温で装填することができる。装填された試薬が不都合なほど著しく蒸発するのを避けるために、装填後は装填物品を低温に保存することが必要であろう。
【0076】
大部分の試薬は本発明の試薬デリバリー物品に容易に装填されるが、わずかな試薬が毛管力のみでの装填に抵抗する。たとえば水銀またはジエチルアミノスルファ-トリフルオリドを、本質的にNeusilinからなる本発明の試薬デリバリー物品に装填するのは困難であることが示された。そのような困難がある場合、装填を実施する容器に高圧をかけることにより試薬を装填することができ、あるいは異なる多孔質材料に基づく異なる試薬デリバリー物品をその試薬に使用できる。
【0077】
一定のサイズおよび組成をもつ個々の本発明物品については、高い再現性で一定量がその物品に装填されることが観察された。したがって、数個の本発明物品に同一試薬を装填すると、装填物品はすべてほぼ同一量の液体試薬を含有するであろう。一連の同一の試薬デリバリー物品に同一試薬を装填する際、装填済み試薬デリバリー物品間の装填された試薬の含量の分散は、通常は5%未満であることがルーティンに概算された。
【0078】
通常は装填率は高い。すなわち、装填された試薬が占める気孔率画分は高い。好ましくは、装填率は50%より高く、より好ましくは60%より高く、よりさらに好ましくは70%より高く、よりさらに好ましくは80%より高く、特に好ましい態様においては85%より高い。
【0079】
空の本発明物品に含有させる試薬には、有機試薬、無機試薬および有機金属化合物が含まれる。試薬は中性化合物または塩類であってもよい。
試薬の混合物を物品に装填することにより、試薬デリバリー物品に1種類より多い試薬を装填することすらできる。あるいは、固体活性化合物または担体結合した官能基を含有する多孔質材料に、液体試薬を装填することができる。この方法で、装填済み粒子はたとえば反応に1種類より多い試薬を供給でき、1種類以上の試薬と官能基を供給でき、あるいは1種類以上の試薬と触媒を供給できる。
【0080】
有機試薬としては、液体有機物質をそのまま、または固体有機物質を適切な溶媒に溶解して使用できる。個々の試薬に適切な溶媒の選択は、当業者が容易になしうるであろう。適切な溶媒の例として、水、エタノール、ジメチルホルムアミド、エタノール、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。
【0081】
有機液体物質の例には、脂肪族物質および芳香族物質が共に含まれ、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:置換芳香族環、たとえばm-ニトロトルエン、m-ブロモアニリン、m-フルオロフェノール、3,4-ジクロロベンジルクロリド、o-ヨードアニソール、イソシアン酸フェニル;芳香族ヘテロ環、たとえばピリジン類、たとえばm-ブロモピリジン;脂肪族非環式化合物、たとえばヘキサメチルリントリアミド(HMPA)、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、ブタン酸、ジヨードメタン、ヨードメタン;および脂肪族環式化合物、たとえば15-クラウン-5。
【0082】
有機固体の例には、ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウム(PyBOP)、ピバロン酸銅(II)、BiPh3およびPhSeSePhが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
無機液体としては、液体無機物質をそのまま、または固体無機物質を溶媒に溶解して使用できる。無機液体の例には、H202(安定な水溶液として)、Br2、CS2、および高分子シロキサン類、たとえば高分子ジメチルシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
装填前に、溶媒、たとえば水に溶解させることができる無機固体の例には、K2Cr207、B10H14、CuS04・5H20、HgCl2、ZnCl2、LiC104、CS2CO3、CeCl3・7H2O、SnCl2・2H2O、NH4+PF6-、K2C03、Cu(NO3)2・3H2O、KCN、FeC13、S8、BiCl3およびNH4+SO3NH2-が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
本発明物品に装填できる有機および無機化学物質の他の例を表1および表2に示す。
固体試薬を溶液として装填するために用いる溶媒の選択は、個々の試薬に依存する。たとえば、溶媒はその溶媒中での試薬の溶解度を考慮して選択すべきである。個々の試薬および意図する反応に適切な溶媒の選択は、当業者が容易になしうる。所望により、個々の試薬について各種溶媒を簡単な比較試験により評価できる。
【0086】
通常は、試薬溶液を本発明の試薬デリバリー物品に装填した後、溶媒を蒸発させる。
特定の状況では、本発明の試薬デリバリー物品に試薬溶液を装填し、続いて溶媒を蒸発させ、さらに同一または異なる液体試薬を装填することすら可能である。この溶媒蒸発と再装填を反復実施することすら可能である。
【0087】
本発明物品に液体試薬を保持させることは、化学物質の取扱いおよび手動での分配に関して幾つかの利点をもたらす。試薬を保持した物品は、液体試薬を入れた大型フラスコの取扱いとそれに伴う特に有害化学物質の被曝を回避し、これにより化学企業で作業する者にとってより安全な作業環境が提供される。
【0088】
本発明の試薬デリバリー物品は一般に不活性であると考えられるが、ある組合わせの試薬デリバリー物品と液体試薬に関して予想外の不都合な反応が観察された。
たとえば、Neusilin含有物品に装填したイソシアン酸フェニルを室温に保存した際、1,3,5-トリフェニル-[1,3,5]-トリアジン-2,4,6-トリオンへの三量体化により劣化するのが観察された。
【0089】
他の例では、ヨウ化カリウムをNeusilin含有物品に装填した場合、物品が徐々に崩壊し、離散するのが観察された。
他の例では、トリ酢酸タリウムをNeusilin含有物品に装填した場合、試薬が分解し、装填物品の色が白色から黒色に変化するのが観察された。
【0090】
しかし、表1および2から、大部分の化学物質については何ら観察された問題なしに問題なく装填が行われることが分かる。
何らかの理論により拘束されたくはないが、多孔質材料は特定の試薬の分解/重合を助長/加速/触媒する場合があると考えられる。
【0091】
当業者は、簡単な実験に基づいてその組合わせの多孔質材料と液体試薬について不都合な反応が起きるかを判定できる。
不都合な反応が観察された場合、その試薬については異なる多孔質材料に基づく試薬デリバリー物品を選択することができる。
【0092】
本発明の好ましい1態様においては、本発明物品の使用直前に液体試薬を装填する。たとえば、ある作業日について十分な個数の物品をその朝に装填してその日に使用することができる。より頻繁な装填が望ましい状況すらありうる。この態様は、当該試薬が不安定である場合、またはその使用頻度が少ない場合に好ましい。
【0093】
あるいは、当該液体試薬の保存性に応じて、より大量の試薬デリバリー物品に定期的に、たとえば各週、各月、またはより少ない頻度で装填してもよい。特定の態様の試薬デリバリー物品と試薬については、装填物品を有意の反応性損失なしに数カ月間、または数年間すら保存することができる。この態様は、当該試薬が頻繁に用いられ、十分な安定性を示す場合に好ましい。
【0094】
所望により、特定の組合わせの試薬と試薬デリバリー物品の安定性を判定するために簡単な実験を実施できる。安定性が不十分なことが観察された場合、その試薬には、最初に試験した試薬デリバリー物品の代わりに、異なる多孔質材料を含む試薬デリバリー物品を使用すべきである。
【0095】
前記のように、本発明物品の試薬装填は手動および自動のいずれでも達成できる。試薬デリバリー物品に自動装填すると、実験室で作業する際、特に有機合成作業をする際に、ヒトと使用される有害物質との接触が実質的に最小限に抑えられ、あるいは完全に避けられる。自動装填はさらに、化学企業および/または研究室でそのまま使用できる標準および注文生産”ピル”の商業的製造を提供する。
【0096】
他の態様においては、本発明物品に揮発性または不安定な液体試薬を装填する場合、物品を環境曝露に対してさらにシールするために、および/または環境(たとえば実験室作業員)を物品から発生するガスに対して保護するために、物品をコーティング剤でコーティングする。これは、環境に対して有害であって小さい孔径の多孔質材料の選択では十分に保持されないきわめて揮発性の物質を本発明物品に装填する場合に、特に有用である。
【0097】
物品のコーティングにより、装填された試薬を周囲空気への曝露による劣化に対してさらに保護することができ、かつその物品を扱うスタッフの試薬被曝がさらに少なくなるであろう。
【0098】
コーティング剤には、本発明物品に保持された試薬と反応せず、物品を溶液に装入した際に容易に溶解し、かつその溶液中で反応せず、またはそこで起きる反応を妨害しない、いずれか適切な物質を含めることができる。
【0099】
本発明物品のコーティング剤は、当技術分野で既知のいずれか適切な一般的コーティング剤であってよい。当業者は、本発明の試薬デリバリー物品内の試薬および意図する反応を十分に考慮して、適切なコーティング剤を選択できる。
【0100】
本発明の試薬デリバリー物品は満足すべき圧壊安定性を示し、これは試薬デリバリー物品の輸送および取扱いに際して十分な安定性を提供する。
たとえば圧壊強さは通常は10 Nを超え、好ましくは20Nを超え、最も好ましくは30Nを超える。
【0101】
意外にも、本発明の試薬デリバリー物品の安定性は、試薬を装填してもさほど低下せず、実際には装填すると圧壊強さがしばしば増大する。たとえば、非装填状態で33Nの圧壊強さをもつ本質的にNeusilinからなる試薬デリバリー物品は、S8を装填すると100Nの圧壊強さをもつことが観察された。
【0102】
したがって、本発明の試薬デリバリー物品の圧壊強さは、空の状態および装填状態のいずれにおいても取扱いおよび輸送に際して満足すべきものである。
本発明の装填物品の製造
別法として、各成分を試薬デリバリー物品に加工する前に、デリバリーすべき試薬を多孔質材料に含有させることができる。
【0103】
この態様は、固体活性化合物、たとえば金属または触媒を試薬デリバリー物品に含有させたい場合に使用できる。これは、適切な溶媒に溶解させるのが容易でない固体試薬、または融解温度で安定でない固体試薬を含有させるためにも使用できる。
【0104】
そのような装填物品を製造するためには、固体活性化合物を多孔質材料、任意の加工助剤および任意の固体活性物質の混合物に添加し、その後この混合物を常法により加工して本発明の試薬デリバリー物品にする。加工後、前記に従って液体試薬を物品に装填することすら可能であり、これにより固体活性化合物および液体試薬を含む本発明の装填物品が得られる。
【0105】
他の態様においては、本発明の試薬デリバリー物品に加工する前の多孔質材料に液体試薬を装填することすら可能である。そのような態様に洗浄工程が通常は不可能なことは、当業者に自明であろう。
【0106】
本発明の装填物品を製造した後、それらを前記に従ってコーティングすることができる。
試薬のデリバリーのための本発明物品の使用
少なくとも1種類の試薬を含有する装填物品は、原則として、試薬が装填物品から離脱できる流体媒質中で起きるいかなる化学反応にも使用できる。本発明は特に、溶液相化学に使用するための試薬デリバリー物品に関する。
【0107】
試薬を装填した本発明の試薬デリバリー物品は、試薬を化学反応にデリバリーするためのきわめて容易な手段を提供する。特に、多数の試薬添加を要する複雑な反応が、本発明物品の使用によって容易になる。
【0108】
さらに、試薬は本発明物品の内側にのみ存在し、反応媒質中で初めて放出されるので、本発明物品はスタッフが試薬デリバリー物品内の試薬に被曝するのを少なくする。本発明の試薬デリバリー物品は装填された試薬への被曝を少なくするが、試薬が毛管作用により放出している可能性があり、またヒトの皮膚にある水分が試薬をわずかに放出させる可能性があるので、装填物品に素手で触れるのは推奨されない。
【0109】
溶液に装入する際、本発明の試薬デリバリー物品の目的は、保持されている液体試薬をそれから放出することである。この放出は、選択した多孔質材料に応じて、特に選択した材料の孔径に応じて、即時または経時的に起きる可能性がある。
【0110】
たとえば、小さい孔径は低い放出速度をもたらし、逆に大きい孔径は高い放出速度をもたらす。これは、反応における試薬供給を制御しうることが望ましい場合に特に重要である。ある反応では試薬の即時供給が要求され、逆にある反応では試薬の連続供給が要求される。
【0111】
したがって、本発明物品の孔径の適切な選択は、化学反応に強い影響をもつ。孔径は、試薬の1回添加を模倣して試薬を反応媒質中へ速やかに放出できるように選択できる。あるいは、孔径は、試薬の連続添加を模倣して試薬を反応媒質中へ徐々に放出できるように選択できる。
【0112】
パラレル溶液合成における本発明物品の使用は、本発明の好ましい観点である。本発明の前装填物品は、多重反応に容易に供給でき、多数の反応を同時に実施するための迅速な再現性のある手段を提供する。より具体的には、本発明物品は化合物ライブラリーおよびシリーズの合成を加速し、さらに特に自動装填する場合は、試薬を秤量、分散、ピペッティングまたは測定する際にヒトの誤りによる統計的偏差がないため投入の精密度および正確度が改善されるので再現性をもって混合物に液体試薬を一定量装入できる。
【0113】
担体に結合した官能基を本発明の試薬デリバリー物品が含む場合、意図する反応を試薬デリバリー物品の内側で行わせることすら可能である。この場合、官能基を含む、場合により化学試薬を装填した試薬デリバリー物品を反応媒質に添加し、ここで化学試薬が試薬デリバリー物品から放出され、物品の内側で反応が起きる。反応が完了した時点で試薬デリバリー物品を反応媒質から取り出して第2の反応媒質へ移し、ここで他の反応を行わせることができる。これは、前工程で形成された化合物の放出、または物品の内側でのさらに他の反応であってもよい。そのような工程を数回実施できることは自明であろう。
【0114】
本発明の試薬デリバリー物品を再使用することすら可能である。初回使用の後、試薬デリバリー物品を初回反応媒質の残部から、たとえば前記のように1回以上の洗浄または有機含有物の燃焼により精製することができる。精製の後、試薬デリバリー物品に再装填し、新たな化学反応へ試薬をデリバリーするために使用できる。
【0115】
本発明の試薬デリバリー物品が官能基を含有する場合、使用済みタブレット内の有機物質の燃焼によりこれらの基を破壊することができるのは、当業者に自明であろう。そのような物品については、再使用前の精製のために行う可能性があるのは洗浄のみであろう。
【0116】
本発明を具体例により説明する。これらは説明のために提示したにすぎず、本発明の限定とみなすべきではない。
実験の部
すべての反応を正圧の窒素下で実施した。別途明記しない限り、出発物質は業者から購入され、さらに精製することなく用いられた。テトラヒドロフラン(THF)は、使用直前にN2下でナトリウム/ベンゾフェノンから蒸留された。DMFは使用前にモレキュラーシーブ(4Å)で乾燥させた。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Merck 60 F254 0.25μmシリカゲルプレート上で実施された。マイクロ波補助反応は、Emrys Optimizer(Personal Chemistryから)を用いて行われた。1H NMRおよび1H-デカップルド13C NMRスペクトルは、それぞれ500.13 MHzおよび125.67 MHzで、Bruker Avance DRX 500計測器により記録された。別途明記しない限り、化合物をジュウテリウム化クロロホルム(99.8 %)中で測定した。1H NMRに関する化学シフトを内標準としてのTMSに対するppmで報告する。13C NMRに関する化学シフトをジュウテリウム化溶媒の化学シフトと対比したppmで報告する。結合定数(J値)はヘルツである。NMR信号の多重度に関して下記の略号を用いる:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、qui=五重線、dd=二重の二重線、およびm=多重線。LC-MSデータは、425℃で作動する加熱噴霧式供給源(Heated Nebulizer source)を備えたPE Sciex API150EXにより得た。LCポンプは島津8Aシリーズであり、Waters C-18 4.6×50 mm、3.5μmのカラムを用いて操作された。溶媒A 100 %の水+0.05 %のトリフルオロ酢酸、溶媒B 95 %のアセトニトリル、5 %の水+0.035 %のトリフルオロ酢酸。勾配(2 ml/分) : 10 % B−100 % Bを4分間で、10 % Bを1分間。平衡化を含めて総時間5分間。注入容量10μLをGilson 215 Liquid Handlerから。化合物純度を254 nmでのUV検出、およびELSD (蒸発型光散乱検出、Evaporation Light Scattering Detection)により測定した。GC-MSデータをVarian CP-3800/Saturn 2000計測器により得た。カラムはVarian CP-Sil8 CB-MS Rapid-MS (10×0.53 mm)、He流速1.1 mL/分であった。温度勾配は、15分間で60℃から300℃までであった。質量検出器をEIモードで操作した。高分解能質量分析(HR MS)は、Jeol JMS-HX/HX110A質量分析計(コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)、デンマーク)により行われた。タブレットの圧縮は、シングルパンチ機Korsch EKOまたはDiaf TM20により、約60個/分のタブレット製造速度で行われた。圧壊強さをSchleuniger 6Dタブレット硬度試験機で測定した。元素分析は、ウィーン大学(University of Vienna)物理化学部(オーストリア、ウィーン)でPerkin- Elmer 2.400 CHN元素分析機により、およびCE Elantech-Termoquest Flash EA 1112計測器により(コペンハーゲン大学、デンマーク)行われた。
【0117】
タブレットの製造
メタケイ酸アルミニウムマグネシウム(Neusilin US2粉末、平均粒径: 60〜120μm)および0.5 %のステアリン酸マグネシウムを、Turbulaブレンダー内で3分間混合した。混合物をシングルパンチタブレット製造機により圧縮して、直径9 mmのコンパウンドカップ状タブレット(約60個/分)にした。タブレットに圧縮した後、約400個(総重量60.68 g)のタブレットからソックスレー抽出(2 Lのメタノールで24時間を1回、2 Lのトルエンで24時間を1回、およびTHFで24時間を1回)によりステアリン酸マグネシウムを除去した。溶媒を室温で16時間、真空除去して、総重量60.10 gのタブレットを得た。1個のタブレットの平均重量は144 mg±2 %、圧壊強さは33 N±9 %であった。これらのタブレットをオイルポンプ真空中で150℃に16時間加熱すると、総重量55.11 gの無水タブレットが得られる。1個のタブレットの平均重量は129 mg±2 %、圧壊強さは33 N±9 %であった。得られたタブレット(直径 = 9 mm)は、ポリエチレン製フリット(孔径約25μm)を備えた反応器48個(4.5mL、直径 = 10 mm)のBohdan microblockなどの装置における自動パラレル合成に適切である。
【0118】
タブレットの装填
実施例1.1
タブレットに液体有機試薬を装填するための代表的な方法
[A]タブレットへのアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)の装填
10個の未装填Neusilin US2タブレット(1.282 g)を、アルゴン下に純アゾジカルボン酸ジエチル(約5 mL)で覆った。タブレットへのDEADの最大吸収を達成するために、この混合物を撹拌せずに5℃で16時間放置した。ガラスフリット(孔径約1 mm)で濾過することにより、過剰のDEADを除去した。タブレットを50 mlのDCMで2回、速やかにすすぎ、次いで室温で16時間、真空乾燥して、装填量1.4 mmol DEAD/個のタブレットを得た。埋め込まれた試薬の化学的安定性を試験するために(5℃で4カ月後)、1個のタブレットをCDC13で抽出し、濾液を13C NMRにより分析して、DEADが実際に経時変化なしに残留することを証明した。
【0119】
実施例1.2
タブレットに固体有機試薬を装填するための代表的な方法
[A]タブレットへのヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム(PyBOB)の装填
DCM中の1.3 M PyBOB溶液3.0 mLに、10個の未装填Neusilin US2タブレット(1.292 g)を室温で添加した。3時間後、ガラスフリット(孔径約1 mm)で混合物を濾過することにより、タブレットを溶液から分離した。タブレットを15 mlのDCMで2回、速やかにすすぎ、次いで室温で16時間、真空乾燥して、装填量0.30 mmol PyBOB/個のタブレットを得た。
【0120】
[B]タブレットへの9,10-ジフェニル-アントラセンの装填
シールしたフラスコ内で、3個の未装填Neusilin US2タブレット(合計429.9 mg)および1.5 g (4.54 mmol)の9,10-ジフェニル-アントラセン(mp 245-248℃)を270℃に加熱した。2時間後、過剰の融解9,10-ジフェニル-アントラセンをガラスピペットで除去し、次いで直ちにタブレットの表面を濾紙上で清浄にして、装填量0.69 mmol 9,10-ジフェニル-アントラセン/個のタブレットを得た。
【0121】
実施例1.3
タブレットに液体非有機試薬を装填するための代表的な方法
[A]タブレットへの臭素の装填
25 mLの臭素に、30個の未装填Neusilin US2タブレット(4.28 g)を室温で添加した。2時間後、混合物をガラスフリット(孔径約1 mm)で濾過することにより、タブレットを臭素から分離した。濾過後、室温および大気圧で約30秒間の蒸発によりタブレット表面から過剰の臭素を除去して、装填量4.7 mmol臭素/個のタブレットを得た。これらの発煙性タブレットをシールしたフラスコ内に5℃で保存した。
【0122】
実施例1.4
タブレットに固体非有機試薬を装填するための代表的な方法
[A]タブレットへの塩化水銀(II)の装填
アセトン中の3.3 M塩化水銀(II)溶液2.0 mLに、5個の未装填Neusilin US2タブレット(0.707 g)を室温で添加した。2時間後、混合物をガラスフリット(孔径約1 mm)で濾過することにより、タブレットを溶液から分離した。タブレットを10 mlのアセトンで2回、速やかにすすぎ、次いで室温で16時間、真空乾燥して、装填量1.0 mmol HgCl2/個のタブレットを得た。
【0123】
[B]タブレットへのビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドの装填
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(80 mg, 114 mol)および400 mgのNeusilin US2粉末のブレンド混合物を、IRタブレット製造機で圧縮して(1130 kg/cm2、約2分間)、直径13 mm、装填量29μmolビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド/個のタブレット4個を得た。
【0124】
[C]タブレットへの塩化ビスマス(III)の装填
シールしたフラスコ内で、3個の未装填の乾燥Neusilin US2タブレット(合計381.3 mg)および5.0 g (15.9 mmol)の塩化ビスマス(III)(mp 230℃)を260℃に加熱した。2時間後、過剰の融解塩化ビスマス(III)をガラスピペットで除去し、次いで直ちにタブレットの表面を濾紙上で清浄にして、装填量2.94 mmol塩化ビスマス(III)/個のタブレットを得た。
【0125】
以下は前記の実施例1.1〜1.4の代表的な基質と同様な方法で装填した基質の完全なリストである。下記の表1および2に述べた具体的な基質に前記の例示方法を適用することは、当業者が容易になしうる。
【0126】
【表1−1】

【0127】
【表1−2】

【0128】
【表2】

【0129】
タブレットのプロファイリング:放出速度および吸収速度
実施例2.1
代表的方法:未装填Neusilin US2タブレット中への純2-ヨードアニソールの吸収速度の測定
すべての実験をBohdanマイクロリアクター(4.5mL、直径 = 10 mm、ポリエチレンフリット付き;孔径約25μm)内で実施した。予め秤量した未装填Neusilin US2タブレットを、室温で下記の時間、2 mLの純2-ヨードアニソールで覆った:2秒; 5秒; 10秒; 15秒; 20秒; 25秒; 30秒; 40秒; 50秒; 1.0分; 1.5分; 2分; 6分; 8分および16時間。各吸収実験につき1個の予め秤量した個別のタブレットを用い、マイクロリアクターのフリット下に真空を付与することにより、2-ヨードアニソールをタブレットから速やかに分離した。その直後、タブレット表面を濾紙で乾燥させ、タブレット重量を測定した。実験誤差を最小限に抑えるために、各実験を3回繰り返した。DCM、トルエン、メタノールおよび水の吸収速度を上記の方法に従って測定した(図1)。
【0130】
実施例2.2
代表的方法:Neusilin US2タブレットから溶媒中への純2-ヨードアニソールの放出速度の測定
すべての実験をBohdanマイクロリアクター(4.5mL、直径 = 10 mm、ポリエチレンフリット付き;孔径約25μm)内で実施した。2-ヨードアニソールを含有する予め秤量したNeusilin US2タブレット(398 mg±1 %, 1.7 mmol±1 % )を、下記の時間、2 mLのDCMに浸漬した:30秒; 1.0分; 1.5分; 2.0分; 2.5分; 3.0分; 4.0分; 6.0分; 12分; 18分; 24分; 30分; 36分; 42分; 48分; 54分; 1時間; 2時間; 3時間; 5時間; 20時間。拡散実験に1個の予め秤量した個別のタブレットを用い、マイクロリアクターのフリット下に真空を付与することにより、タブレットからDCMを速やかに分離した。室温で16時間、真空下で溶媒をタブレットから除去し、タブレット重量を測定した。実験誤差を最小限に抑えるために、各実験を3回繰り返した。トルエン、メタノールおよび水中での拡散速度を前記の方法に従って測定した(図2)。
【0131】
タブレットを用いた場合と用いない場合の有機反応の性能
実施例3.1
5-ニトロ-2-(2-フェニルスルファニル-エチル)-イソインドール-1,3-ジオン
[A]アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)を含有するタブレットの使用による
5-ニトロ-イソインドール-1,3-ジオン(250 mg, 1.3 mmol, 1.0当量)、2-スルファニル-エタノール(252 mg, 1.6 mmol, 1.2当量)およびトリフェニルホスフィン(921 mg, 3.5 mmol, 2.7当量)の、THF 20 mL中における溶液に、(合計)680 mg (3.9 mmol, 3.0当量)のアゾジカルボン酸ジエチル(227 mg/タブレット, 1.3 mmol/タブレット)を含有する製造したばかりのタブレット3個を0℃で添加した。反応混合物を0℃で1時間、次いで室温で15時間、穏やかに撹拌した。タブレットを濾過により取り出し、5 mLのTHFで2回抽出した。濾液を200 mLの酢酸エチルで希釈し、25 mLの水および25 mLのブラインで2回、洗浄した。有機相をMgS04で乾燥させ、溶媒を真空中での蒸発により除去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル 12: 1)により精製して、362 mg (1.10 mmol, 収率85 %)の目的生成物を黄色固体として得た(GC-MS: 純度96 %, Rt= 10.7分)。
【0132】
【化1】

【0133】
[B]5-ニトロ-イソインドール-1,3-ジオンを含有するタブレットの使用による
5-ニトロ-イソインドール-1,3-ジオン(207 mg, 1.1 mmol, 1.0当量)を含有するタブレット1個を用いて、前記方法と同様にの合成を実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル 12: 1)の後、228 mg (0.69 mmol, 収率63 %)のを得た(GC-MS: 純度82 %)。
【0134】
[C]タブレットを使用しない一般的製造
1.2 mmolの5-ニトロ-イソインドール-1,3-ジオンを用いて、の一般的製造を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル 12: 1)の後、329 mg (1.0 mmol, 収率84 %)のを得た(GC-MS: 純度99 %)。
【0135】
実施例3.2
4-(3,4-ジクロロ-ベンジル)-ピペラジン-l-カルボン酸 tert-ブチルエステル
[A]3,4-ジクロロベンジルクロリドを含有するタブレットの使用による
ピペラジン-l-カルボン酸 tert-ブチルエステル(242 mg 1.3 mmol, 1.0当量)およびジイソプロピル-エチルアミン(DIEA) (1.01 g, 7.8 mmol, 6.0当量)の、THF 3 ml中における溶液に、3,4-ジクロロベンジルクロリド (306 mg, 1.6 mmol, 1.2当量)を含有するタブレット1個を添加した(注釈:3,4-ジクロロベンジルクロリドタブレットは1年前に装填された)。反応混合物を60℃で16時間、穏やかに撹拌した。タブレットを濾別し、5 mLのTHFで2回抽出した。濾液を真空中での蒸発により溶媒から分離した。残留物を100 mLの酢酸エチルに溶解し、有機相を25 mLの水および25 mLのブラインで洗浄した。混合物をMgS04で乾燥させ、濾過した後、真空中での蒸発により溶媒を除去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 8:1)により精製して、341 mg (0.99 mmol, 収率76 %)の目的生成物を無色固体として得た(GC-MS: 純度99 %, Rt= 9.5分)。MS (m/e) 345 M+。Mp 75-76℃(再結晶なし)。
【0136】
【化2】

【0137】
[B]タブレットを使用しない一般的製造
300 mg (1.5 mmol, 1.2当量)の3,4-ジクロロベンジルクロリドを用いて、の一般的製造を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 8:1)の後、332 mg (0.93 mmol, 収率77 %)のを得た(GC-MS: 純度99 %)。
【0138】
実施例3.3
1-(4-tert-ブチルフェニル)スルファニル-4-ニトロ-ベンゼン
[A]炭酸カリウムを含有するタブレットの使用による
4-tert-ブチルベンゼンチオール(3.00 g, 18.0 mmol, 1.2当量)、4-フルオロニトロベンゼン(2.11 g, 15.0 mmol, 1.0当量)、および(合計)5.12 g (37 mmol, 2.5当量)の炭酸カリウム(183 mg/タブレット, 1.32 mmol/タブレット)を含有するタブレット28個の、THF 75 mL中における混合物を、穏やかに撹拌しながら16時間、加熱還流した。タブレットおよび過剰の炭酸カリウムを濾別し、50 mLのTHFで3回抽出した。溶媒を真空中での蒸発により除去し、残留物を100 mLの酢酸エチルに懸濁し、50 mLの水および50 mLのブラインで2回、洗浄した。混合物をMgS04で乾燥させ、濾過した後、真空中での蒸発により溶媒を除去した。残留物(5.33 g)をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 15:1)により精製して、4.13 g (14.4 mmol, 収率96 %)の目的生成物を黄色固体として得た(GC-MS: 純度98 %, Rt= 9.2分)。MS (m/e) 287 M+。Mp 65-66℃(再結晶なし)。
【0139】
【化3】

【0140】
[B]タブレットを使用しない一般的製造
5.18 g (38 mmol)の炭酸カリウムを用いて、の一般的製造を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 15:1)の後、4.13 g (14.4 mmol, 収率96 %)のを黄色固体として得た(GC-MS: 純度96 %)。
【0141】
実施例3.4
1,2-ジブロモ-4,5-ジメトキシ-ベンゼン
[A]臭素タブレットの使用による
1,2-ジメトキシ-ベンゼン(veratrol)(6.9 g, 50.0 mmol)の、テトラクロロメタン50 mL中における溶液を、穏やかに撹拌しながら0℃に冷却し、(合計)17.9 g (112.0 mmol, 2.2当量)の臭素(746 mg/タブレット, 4.67 mmol/タブレット)を含有するタブレット24個を、反応温度が確実に+5℃を超えないように約20分間かけて慎重に添加した(1回に3個ずつ)。臭素の添加が完了した後、反応混合物を0〜5℃でさらに2時間撹拌した。タブレットを濾別し、50 mLのテトラクロロメタンで2回抽出した。濾液を10 mLの10 % NaHS03水溶液で2回、続いて10 mLの10 % NaOH水溶液で2回、最後に25 mLの水および25 mLのブラインで2回、洗浄した。有機相をNa2S04で乾燥させ、濾過し、真空中での蒸発により溶媒から分離した。残留物を再結晶して(エタノール)、13.3 g (44.9 mmol, 収率90 %)の1,2-ジブロモ-4,5-ジメトキシ-ベンゼンを無色結晶として得た(GC-MS: 純度100 %, Rt= 5.9分)。MS (m/e) 296 M+。Mp 84-86℃(エタノール)。1H NMR δ 3.85 (s, 6H), 7.06 (s, 2H). 13CNMR δ 56.7, 115.2, 116.4, 149.3。
【0142】
[B]タブレットを使用しない一般的製造による
臭素タブレットの代わりに、臭素(17.6 g, 110.1 mmol, 2.2当量)の、テトラクロロメタン10 mL中における溶液を用いて、一般的な臭素化法を同様に実施した。再結晶の後、13.8 g (46.6 mmol, 収率93 %)の1,2-ジブロモ-4,5-ジメトキシ-ベンゼンを得た(GC-MS: 純度99 %)。
【0143】
実施例3.5
4-フェニルカルバモイル-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
[A]イソシアン酸フェニルを含有するタブレットの使用による
ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(300 mg, 1.6 mmol, 1.0当量)の、THF 3 mL中における溶液に、イソシアン酸フェニル(228 mg, 1.9 mmol, 1.2当量)を含有するタブレット1個を室温で添加した(注釈:装填後、3日以内にタブレットを使用した;室温で長期間保存すると、埋め込まれたイソシアン酸フェニルが1,3,5-トリフェニル-[1,3,5]-トリアジン-2,4,6-トリオンへの三量体化により劣化する)。混合物を室温で16時間、穏やかに撹拌し、50 mLの酢酸エチルで希釈した。タブレットを濾別し、5 mLの酢酸エチルで2回抽出した。濾液を50 mLの水および25 mLのブラインで3回洗浄し、MgS04で乾燥させた。濾過後、溶媒を真空中で蒸発させ、油性残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 7:1)により精製して、429 mg (1.4 mmol, 収率88 %)の目的生成物を無色固体として得た(LC-MS: 90 %のUV純度および99 %のELSD純度; Rt= 2.5分)。MS(m/e): 250 (M++l-C4H8), 206 M++1-Boc。Mp 168-169℃(再結晶なし)。
【0144】
【化4】

【0145】
[B]タブレットを使用しない一般的製造
298 mg (1.6 mmol, 1.0当量)の、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルを用いて、の一般的製造を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 7:1)の後、421 mg (1.4 mmol, 収率86 %)のを無色固体として得た(LC-MS: 94 %のUV純度および100 %のELSD純度)。
【0146】
実施例3.6
2-(4-メトキシ-ベンジリデン)-マロノニトリル
[A]塩化亜鉛(II)を含有するタブレットの使用による
純4-メトキシ-ベンズアルデヒド(1.36 g, 10.0 mmol, 1.0当量)、純マロノニトリル(0.66 g, 10.0 mmol, 1.0当量)、および(合計) 206 mg (1.5 mmol, 15 mol %)の塩化亜鉛(II) (103 mg/タブレット, 0.76 mmol/タブレット)を含有するタブレット2個の混合物を、穏やかに撹拌しながら100℃に90分間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、75 mLの酢酸エチル/DCM (5:1)に溶解した。タブレットを濾別し、50 mLの酢酸エチル/DCM (5:1)で2回抽出した。濾液を50 mLの水および50 mLのブラインで2回洗浄した。MgS04で乾燥させ、濾過した後、溶媒を真空中での蒸発により除去し、さらに精製せずに目的生成物(1.78 g, 9.7 mmol, 収率97 %)を黄色固体として高純度で得た(GC-MS: 純度99 %, Rt= 6.4分)。
【0147】
【化5】

【0148】
[B]タブレットを使用しない一般的製造
純4-メトキシ-ベンズアルデヒド(1.36 g, 10.0 mmol, 1.0当量)、純マロノニトリル(0.66 g, 10.0 mmol, 1.0当量)、および純塩化亜鉛(II) (136 mg, 1.0 mmol, 15 mol %)を用いて、の一般的製造を同様に実施して1.81 g (9.82 mmol, 収率98 %)のを得た(GC-MS: 純度95 %)。
【0149】
実施例3.7
[2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-tert-ブトキシ-フェニル)-プロピオニル-アミノ]-酢酸 tert-ブチル]エステル
[A]ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム(PyBOB)タブレットの使用による
(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(4-tert-ブトキシ-フェニル)-プロピオン酸(337.5 mg, 1.0 mmol, 1.0当量)の、DCM 5 mL中における溶液に、穏やかに撹拌しながら、アミノ酢酸tert-ブチルエステル(144.3 mg, 1.1 mmol, 1.1当量)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA) (362.0 mg, 2.8当量)、および(合計) 660 mg (1.3 mmol, 1.3当量)のPyBOB (132 mg/タブレット, 0.25 mmol/タブレット)を含有するタブレット5個を室温で添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、50 mLのDCMで希釈した。タブレットを濾別し、10 mLのDCMで2回抽出した。濾液を50 mLの水で3回洗浄後、MgS04で乾燥させた。濾過後、溶媒を真空中で蒸発させ、油性残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 4:1)により精製して、366.4 mg (0.81 mmol, 収率81 %)の目的生成物(1H NMRによる純度>95 %)を粘稠な無色の油として得た。
【0150】
【化6】

【0151】
[B]タブレットを使用しない一般的製造による
純PyBOB 520.4 mg (1.0 mmol, 1.0当量)を用いて、一般的なアミド形成法を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 4:1)の後、361.0 mg (0.80 mmol, 収率80 %)のを得た(1H NMRによる純度>95 %)。
【0152】
実施例3.8
ジベンジルスルホン
[A]過酸化水素タブレットの使用による
硫化ジベンジル(3.6 g, 16.8 mmol, 1.0当量)をまず75℃で20 mLの酢酸に完全に溶解する。次いで(合計)5.01 gの35 %過酸化水素水溶液(純過酸化水素1.75 g, 51.5 mmol, 3.1当量) (92 mg/タブレット, 2.71 mmol/タブレット)を含有するタブレット19個を少量ずつ(1回に3個ずつ)、反応温度が確実に75℃を超えないように約30分間かけて、混合物に穏やかに撹拌しながら添加する。反応混合物を75℃でさらに3〜4時間、穏やかに撹拌した。室温に冷却した後、タブレットを濾別し、10 mLの酢酸で2回抽出した。約20 mLの酢酸を真空中で蒸発させることにより濾液を濃縮し、4℃に一夜保存した。目的生成物が無色結晶として結晶化し、これを濾過により単離し、60℃で一夜、真空乾燥して、3.87 g (15.7 mmol, 収率94 %)のを得た(GC-MS: 純度99 %, Rt= 8.2分)。Mp 148-150℃。1H NMR δ 4.13 (s, 4H), 7.40 (m, 10H).13C NMR δ 58.4, 127.9, 129.4, 131.3。
【0153】
[B]タブレットを使用しない一般的製造による
4.85 gの35 %過酸化水素水溶液(純過酸化水素1.70 g, 49.9 mmol, 3.0当量)を用いて、一般的な酸化法を同様に実施した。酢酸から結晶化し、乾燥させた後、3.68 g (14.9 mmol, 収率89 %)のを得た(GC-MS: 純度85 %)。
【0154】
実施例3.9
4-メトキシ-アニリン
[A]塩化スズ(II)・2水和物タブレットの使用による
4-メトキシ-ニトロベンゼン(765.7 mg, 5.00 mmol, 1.0当量)、および(合計) 5.58 g (24.7 mmol, 4.9当量)の塩化スズ(II) 2水和物(186 mg/タブレット, 0.82 mmol/タブレット)を含有するタブレット30個の、THF 80 mL中における混合物を、穏やかに撹拌しながら16時間、加熱還流した。タブレットを濾別し、10 mLのエタノールで3回抽出した。真空中での蒸発により濾液を溶媒から分離し、残留物を50 mLの水で処理し、2 M NaOH水溶液で塩基性にした(pH約10に)。混合物を100 mLの酢酸エチルで2回抽出し、得られた有機相を25 mLの水および25 mLのブラインで洗浄し、MgS04で乾燥させた。濾過し、溶媒を真空中で蒸発させた後、残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 5:1)により精製して、579.0 mg (4.7 mmol, 収率94 %)のを得た(GC-MS: 純度95 %, Rt= 3.1分)。
【0155】
【化7】

【0156】
[B]タブレットを使用しない一般的製造による
純塩化スズ(II)・2水和物5.64 g (25.0 mmol, 5.0当量)を用いて、一般的な還元法を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 5:1)の後、580.0 mg (4.7 mmol, 収率94 %)のを得た(GC-MS: 純度97 %)。
【0157】
実施例3.10
(4-ニトロ-フェニル)-(1-フェニル-エチル)-アミン10
[A]デカボラン(14)タブレットの使用による
4-ニトロ-フェニルアミン(199.0 mg, 1.44 mmol, 1.0当量)およびアセトフェノン(173.0 mg, 1.44 mmol, 1.0当量)の穏やかに撹拌した溶液を、(合計)約228 mg (1.87 mmol, 1.3当量)のデカボラン(14)(約 0.62 mmol/タブレット)を含有するタブレット3個により、20 mLのメタノール中、室温で処理した。混合物を室温で16時間撹拌した。タブレットを濾別し、10 mLのメタノールで2回抽出した。真空中での蒸発により濾液を溶媒から分離し、残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 8:1)により精製して、266.4 mg (41.1 mmol, 収率76 %)の10を得た(GC-MS: 純度97 %, Rt= 9.0分)。MS (m/e) 243 M++1。Mp 95-96℃(ジエチルエーテル/ペンタン)。
【0158】
【化8】

【0159】
[B]タブレットを使用しない一般的製造による
純デカボラン(14)88.0 mg (0.72 mmol, 0.5当量)を用いて、一般的な還元アミノ化法を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 8:1)の後、350.0 mg (1.4 mmol, 収率100 %)の10を得た(GC-MS: 純度95 %)。
【0160】
実施例3.11
4-{2-[2-(2-エトキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシ}-ビフェニル11
[A]トリブチルスズタブレットの使用による
4-{2-[2-(2-フェニルセラニル-エトキシ)エトキシ]エトキシ}-ビフェニル14(350.0 mg, 0.79 mmol, 1.0当量)、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル) (AIBN) (25.0 mg, 0.15 mmol, 0.2当量)、およびトリブチルスズ(267.0 mg, 0.92 mmol, 1.2当量)を含有するタブレット1個の、トルエン20 mL中における混合物を、穏やかに撹拌しながら90℃に16時間加熱した。タブレットを濾別し、5 mLのトルエンで2回抽出した。真空中での蒸発により濾液を溶媒から分離し、残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 15:1)により精製した。残留する出発物質を完全に除去することはできなかった。2回目のカラムクロマトグラフィーの後、生成物11と出発物質14の混合物(1H NMRによれば約17: 5) 159.1 mgが得られた。11の収量は1H NMRにより123.1 mg (0.43 mmol, 収率54 %)に補正された。GC-MS: Rt= 8.9分; MS (m/e) 286 M+;出発物質14は検出できなかった。
【0161】
【化9】

【0162】
[B]タブレットを使用しない一般的製造による
トリブチルスズ278.0 mg (0.96 mmol, 1.2当量)を用いて、一般的なホモリシス法を同様に実施した。2回目のカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル= 15:1)の後、生成物11と出発物質14の混合物(約58:5)221.4 mgが得られた。11の収量は1H NMRにより185.5 mg (0.65 mmol, 収率82 %)に補正された。
【0163】
実施例3.12
ナフタレン12
THF中における0.1 Mヨウ化サマリウム(II)溶液(150 mLの溶液)の調製:
純1,2-ジヨードエタンを、過剰の約10 % NaS203水溶液により分液ろうと内で、無色になるまで抽出した。この無色1,2-ジヨードエタンを水で2回洗浄し、MgS04で乾燥させ、ガラスフリットで濾過した後、直ちに使用した。遮光下にアルゴン雰囲気下で、2.93 g (19.5 mmol, 1.3当量)の金属サマリウム粉末(約100メッシュ)および4.30 g (15.0 mmol)の無色1,2-ジヨードエタンをTHF (全容量150 mL)に懸濁した。混合物を加熱還流することにより、黄緑色沈殿が生成した。この有色沈殿が完全に消失して透明な濃青色溶液が得られるまで数時間、加熱を続けた。室温に冷却した後、直ちに溶液を1-ヨードナフタレンの脱ハロゲンに使用した。
【0164】
[A]ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)タブレットの使用による
(合計)2.44 g (13.6 mmol, 6.8当量)のHMPA (243 mg/タブレット, 1.36 mmol/タブレット)を含有するタブレット10個を(10分以内に)、調製したばかりのTHF中0.1 Mヨウ化サマリウム(II)溶液50 mL(5.0 mmolのSmI2, 2.5当量)に室温で添加した。約10分後、純1-ヨードナフタレン(508 mg, 2.0 mmol, 1.0当量)を室温で添加した。室温で1時間撹拌した後、タブレットを濾別し、25 mLのTHFで2回抽出した。溶媒を大気圧下での蒸発により除去し、残留物をシリカゲル上での固相抽出(ペンタン)により精製して、205 mg (1.60 mmol, 収率80 %)のナフタレン12を得た(GC-MS: 純度94 %, Rt= 2.8分)。MS (m/e) 128 M+。Mp 79-80℃。1H NMR δ 7.46 (m, 4H), 7.83 (m, 4H). 13C NMR δ 126.3, 128.4, 134.0。
【0165】
[B]タブレットを使用しない一般的製造による
2.15 g (12.1 mmol, 6.0当量)のHMPAを用いて、一般的な脱ハロゲン法を同様に実施した。シリカゲル上での固相抽出(ペンタン)後、218 mg (1.7 mmol, 収率85 %)のナフタレン12を得た(GC-MS: 純度94 %)。
【0166】
実施例3.13
3,4-ジフルオロ-2'-メトキシ-ビフェニル13
[A]ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドタブレットの使用による
炭酸カリウム(465 mg, 3.4 mmol, 6.0当量)、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸(88 mg, 0.56 mmol, 1.0当量)および2-ヨードアニソール(157 mg, 0.67 mmol, 1.2当量)、ならびにビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(20 mg, 29μmol, 5 mol%)を含有するタブレット1個の、DMF 2.5 mL中における懸濁液を、80℃で16時間、穏やかに撹拌した。タブレットを濾別し、10 mLの酢酸エチルで2回抽出した。濾液を100 mLの酢酸エチルで希釈し、25 mLの水および25 mLのブラインで2回洗浄し、MgS04で乾燥させた。溶媒を真空中での蒸発により除去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー(溶離剤:純ヘプタン)により精製して、106 mg (0.48 mmol, 収率86 %)の目的生成物13を無色の油として得た(GC-MS: 純度99 %, Rt= 5.0分)。MS (m/e) 220 M+
【0167】
【化10】

【0168】
[B]ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドタブレットおよびマイクロ波の使用による
マイクロ波(10分/ 150℃)により、3.8 mmolの3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(20 mg, 29μmol, 5 mol %)を含有するタブレット1個を、2.5 mLのDMF中で用いて、前記の方法と同様に13の合成を実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘプタン)により精製した後、725 mg (3.3 mmol, 収率86 %)の13を得た(GC-MS: 純度98 %)。
【0169】
[C]2-ヨードアニソールタブレットの使用による
3,5-ジフルオロフェニルボロン酸(80 mg, 0.5 mmol, 1.0当量)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(20 mg, 29μmol, 6 mol%)、および2-ヨードアニソール(138 mg, 0.59 mmol, 1.2当量)を含有するタブレット1個(注釈:タブレットは5℃で12カ月間保存してあった)を用い、2.5 mLのDMF中、80℃で16時間、穏やかに撹拌しながら、13の合成を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘプタン)により精製した後、95 mg (0.43 mmol, 収率85 %)の13を得た(GC-MS: 純度98 %)。
【0170】
[D]タブレットを使用しない一般的製造による
600 mg (3.8 mmol, 1.0 eq.)の3,5-ジフルオロフェニルボロン酸を用いて、一般的なスズキ法を同様に実施した。カラムクロマトグラフィー(ヘプタン)により精製した後、728 mg (3.3 mmol, 収率87 %)の13を得た(GC-MS: 純度98 %)。
【0171】
実施例3.14
(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-フェニル-アミン14
[A]ピバロン酸銅(II)タブレットの使用による
(合計) 80 mg (0.3 mmol, 15 mol%)のピバロン酸銅(II) (40 mg/タブレット, 0.15 mmol/タブレット)を含有するタブレット2個を、2,6-ジイソプロピル-フェニルアミン(355 mg, 2.0 mmol, 1.0当量)およびビス(アセタート-O)トリフェニルビスマス(1.2 g, 2.2 mmol, 1.1当量)の、DCM 20 mL中における溶液に、室温で添加した。室温で16時間、穏やかに撹拌した後、タブレットを濾別し、10 mLのDCMで2回抽出した。溶媒を真空中での蒸発により除去し、残留物を50 mLの酢酸エチルに溶解した。混合物を激しく撹拌しながら10 ml の3 M HCl水溶液で処理し(過剰のビス(アセタート-O)トリフェニルビスマス、および可能性のある他のいずれかのビスマス中間体を破壊するため)、次いで20 mLの3 M NaOH水溶液により0℃で処理した。有機相を分離し、水相を25 mLの酢酸エチルで2回洗浄した。有機相を合わせて10 mLの水で2回、10 mLのブラインで1回、洗浄した。混合物をMgS04で乾燥させ、濾過した後、溶媒を真空中での蒸発により除去した。残留物をシリカゲル上での固相抽出(純ペンタン)により精製して、440 mg (1.74 mmol, 収率87 %)の目的生成物14を無色結晶質固体として得た(GC-MS: 純度99 %; Rt= 6.6分)。
【0172】
【化11】

【0173】
[B]タブレットを使用しない一般的製造による
60 mg (0.23 mmol, 0.1当量)のピバロン酸銅(II)を用いて、一般的な芳香族アミノ化法を同様に実施した。シリカゲル上での固相抽出(純ペンタン)の後、456 mg (1.80 mmol, 収率90 %)の14を得た(GC-MS: 純度98 %)。
【0174】
下記の表3は、本発明の装填タブレットを使用して、または使用せずに実施した比較反応のまとめである。
【0175】
【表3−1】

【0176】
【表3−2】

【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1は5種類の化合物の吸収プロフィールを示すグラフである;実験は実施例2.1の概説に従って実施された。
【図2】図2は4種類の溶媒中におけるヨードアニソールの放出プロフィールを示すグラフである;実験は実施例2.2の概説に従って実施された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に多孔質材料、場合により1種類以上の加工助剤、および場合により固体活性物質、を含む試薬デリバリー物品であって、少なくとも1種類の化学試薬を保持し、該化学試薬を溶媒中に放出することができる試薬デリバリー物品。
【請求項2】
1種類以上の加工助剤が滑剤である、請求項1に記載の試薬デリバリー物品。
【請求項3】
多孔質材料または滑剤が医薬的に許容できる品質のものではない、請求項2に記載の試薬デリバリー物品。
【請求項4】
試薬デリバリー物品が溶液中で本質的に元の形状のままであり、実質的に崩壊しない、請求項1〜3のいずれかに記載の試薬デリバリー物品。
【請求項5】
多孔質材料が、ミクロ細孔またはメソ細孔を含む固体材料である、請求項1〜4のいずれかに記載の試薬デリバリー物品。
【請求項6】
試薬デリバリー物品が固体活性物質を含み、この固体活性物質は多孔質材料および任意の加工助剤に対して不活性である、請求項1〜5のいずれかに記載の試薬デリバリー物品。
【請求項7】
固体活性物質が、固体試薬、触媒、金属、または結合した官能基をもつ担体から選択される、請求項6に記載の試薬デリバリー物品。
【請求項8】
試薬デリバリー物品が本質的にタブレットとして成形された、請求項1〜7のいずれかに記載の試薬デリバリー物品。
【請求項9】
さらに同定手段を備えた、請求項1〜8のいずれかに記載の試薬デリバリー物品。
【請求項10】
少なくとも1種類の試薬を反応媒質へデリバリーするための、請求項1〜9のいずれかに記載の試薬デリバリー物品の使用。
【請求項11】
請求項1に記載の試薬デリバリー物品の製造方法であって、
(i)多孔質材料を用意し;
(ii)場合により、多孔質材料を1種類以上の加工助剤と混合し;
(iii)場合により、多孔質材料および任意の加工助剤(1種類以上)を固体活性物質と混合し;
(iv)前記の混合物を試薬デリバリー物品に加工し;
(v)場合により、試薬デリバリー物品を精製する
工程を含む方法。
【請求項12】
工程(iv)の加工が、混合物を一般的なタブレット製造技術により圧縮してタブレットにすることである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(v)が洗浄操作として実施される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載の試薬デリバリー物品に少なくとも1種類の化学試薬を装填することにより製造された、装填済み試薬デリバリー物品。
【請求項15】
物品がさらにコーティング層を含む、請求項14に記載の装填済み試薬デリバリー物品。
【請求項16】
溶液相化学における、請求項14または15に記載の装填済み試薬デリバリー物品の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−504123(P2008−504123A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518449(P2007−518449)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000428
【国際公開番号】WO2006/000227
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(507002251)ホー・ルンドベック・アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】