説明

化学的機械的平坦化方法

【課題】 半導体素子などに層間絶縁膜として用いられる低比誘電率のシリカ系被膜に損傷を与えずに研磨するための化学的機械的平坦化方法を提供する。
【解決手段】 加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂と、第2又は第3級アルコールと、を含有してなる被膜形成用組成物を塗設して得られたシリカ系皮膜を層間絶縁膜として用いた半導体集積回路を、重合体粒子にシリコン化合物(B)が結着した複合粒子を含む研磨液で研磨することを特徴とする化学的機械的平坦化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布により形成されるシリカ系膜を層間絶縁膜として有する半導体集積回路の化学的機械的平坦化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、CVD法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低比誘電率の層間絶縁膜が開発されている。更に、比誘電率が2.5以下の絶縁材料としては、膜中に空隙を有するポーラス材が有力と考えられており、LSIの層間絶縁膜に適用するための検討・開発が盛んに行われている。
【0003】
そのようなポーラス材の形成方法として、特許文献1〜5等には、有機SOG材の低誘電率化が提案されている。この方法は、金属アルコキシドの加水分解縮重合物と共に加熱することにより揮発又は分解する特性を有するポリマーを含有してなる組成物から被膜を形成し、この被膜を加熱することによって空孔を形成するものである。
一方、半導体素子などのさらなる高集積化や多層化を達成するために、半導体製造工程において化学機械研磨(CMP)が行われるようになってきているが、研磨工程で生じる負荷により低比誘電率の層間絶縁膜に欠陥が生じることが問題である。より低比誘電率でかつ機械的強度に優れる層間絶縁膜材料が求められると共に、それらに悪影響がない低負荷で研磨することが必要となってきている。
【特許文献1】特開平10−283843号公報
【特許文献2】特開平11−322992号公報
【特許文献3】特開平11−310411号公報
【特許文献4】特開2001−127019号公報
【特許文献5】特開2004−277508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来における問題点に鑑みなされたものであり、半導体素子などに層間絶縁膜として用いられる低比誘電率のシリカ系被膜に損傷を与えずに研磨するための化学的機械的平坦化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、下記の<1>〜<3>の化学的機械的平坦化方法により解決された。
<1> 加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂と、第2又は第3級アルコールと、を含有してなる被膜形成用組成物を塗設して得られたシリカ系皮膜を層間絶縁膜として用いた半導体集積回路を、重合体粒子にシリコン化合物(B)が結着した複合粒子を含む研磨液で研磨することを特徴とする化学的機械的平坦化方法。
【0006】
<2> 前記シラン化合物(A)が、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物からなる群より選ばれた化合物の少なくとも一種であることを特徴とする<1>に記載の化学的機械的平坦化方法。
一般式(I): RxSi(OR14-x
[一般式(I)中、Rは水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表し、R1は1価の有機基を表し、xは1又は2の整数を表す。]
一般式(II): Si(OR24
[一般式(II)中、R2は1価の有機基を表す。]
一般式(III): R3y(R4O)3-ySi−(R7d−Si(OR53-z6z
[一般式(III)中、R3〜R6は、各々独立に1価の有機基を表し、y及びzは、各々独立に0〜2の整数を表し、R7は、酸素原子、フェニレン基、又は−(CH2n−で表される基(ここで、nは1〜6の整数である)を表し、dは0又は1の整数を表す。〕
【0007】
<3> 前記研磨液中の複合粒子が、前記シリコン化合物(B)により無機粒子が重合体粒子に付着している粒子であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の化学的機械的平坦化方法。
【0008】
本発明に係るシロキサン樹脂を含有する被膜形成用組成物は、ウエハ等の基板上に塗布された後、加熱によって硬化され、低誘電率を発現するシリカ系被膜(Low−k膜)が形成される。更に、本発明においては、該被膜形成用組成物に含有される溶剤が、第2又は第3級アルコールであることから、得られるシリカ系被膜が充分な機械特性を発揮し、より優れた電気特性を有する被膜となる。
【0009】
本発明によれば、半導体素子などに層間絶縁膜として用いられる低比誘電率のシリカ系被膜に損傷を与えずに研磨するための化学的機械的平坦化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的態様について説明する。
本発明の化学的機械的平坦化方法は、加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂と、第2又は第3級アルコールと、を含有してなる被膜形成用組成物を塗設して得られたシリカ系皮膜を層間絶縁膜として用いた半導体集積回路を、重合体粒子にシリコン化合物(B)が結着した複合粒子を含む研磨液で研磨することを特徴とする。
ここで、本発明における「半導体集積回路」とは、トランジスタ等の半導体部品と金属配線とが一体になって形成された回路である。本発明は、かかる半導体集積回路において層間絶縁膜として用いられる低比誘電率のシリカ系被膜を、損傷を与えずに研磨することができるという優れた効果を発揮するものである。
【0011】
[被膜形成用組成物]
まず、本発明に係る被膜形成用組成物について説明する。
本発明に係る被膜形成用組成物は、加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂(以下、適宜「特定シロキサン樹脂」と称する。)と、第2又は第3級アルコールと、含有してなる。
【0012】
〔特定シロキサン樹脂〕
本発明に係る被膜形成用組成物は、加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂(特定シロキサン樹脂)を含有する。
【0013】
シラン化合物(A)としては、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物からなる群より選ばれた化合物の少なくとも一種であることが好ましい。
一般式(I): RxSi(OR14-x
[一般式(I)中、Rは水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表し、R1は1価の有機基を表し、xは1又は2の整数を表す。]
一般式(II): Si(OR24
[一般式(II)中、R2は1価の有機基を表す。]
一般式(III): R3y(R4O)3-ySi−(R7d−Si(OR53-z6z
[一般式(III)中、R3〜R6は、各々独立に1価の有機基を表し、y及びzは、各々独立に0〜2の整数を表し、R7は、酸素原子、フェニレン基、又は−(CH2n−で表される基(ここで、nは1〜6の整数を表す。)を表し、dは0又は1の整数を表す。〕
【0014】
特定シロキサン樹脂は、シラン化合物(A)(好ましくは、一般式(I)〜(III)で表される化合物から選ばれたシラン化合物)を、塩基性化合物、及び第2級又は第3級アルコールの存在下に、加水分解、縮合して得られる。シラン化合物(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
一般式(I)で表される化合物について説明する。
一般式(I)中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表す。R1は1価の有機基を表す。
【0016】
一般式(I)において、R及びR1で表される1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基、ビニル基などを挙げることができる。
【0017】
R及びR1としては、1価の有機基であることが好ましく、特に、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。ここで、R又はR1で表されるアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基は、鎖状でも、分岐していてもよく、さらにアルキル基が有する水素原子が、フッ素原子などの置換基により置換されていてもよい。また、R又はR1で表されるアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。
R及びR1で表される1価の有機基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい
【0018】
xは1又は2の整数を表す。
【0019】
一般式(I)で表される化合物の具体例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を、好ましい例として挙げることができる。
【0020】
一般式(I)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
一般式(II)で表される化合物について説明する。
一般式(II)中、R2は1価の有機基を表す。一般式(II)中、R2で表される1価の有機基としては、先に一般式(I)におけるRとして挙げた有機基と同様の有機基を挙げることができる。
【0022】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等を、好ましい例として挙げることができる。
が挙げられる。
【0023】
一般式(II)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
一般式(III)で表される化合物について説明する。
一般式(III)中、R3〜R6は、各々独立に1価の有機基を表す。
3〜R6で表される1価の有機基としては、先に一般式(I)におけるRとして挙げた有機基と同様の有機基を挙げることができる。
【0025】
一般式(III)中、R7は、酸素原子、フェニレン基、又は−(CH2n−で表される基(ここで、nは1〜6の整数を表す。)を表す。
dは0又は1の整数を表す
【0026】
一般式(III)で表される化合物の具体例としては、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン等を、好ましい例として挙げることができる。
【0027】
一般式(III)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
シラン化合物(A)を加水分解、縮合させる際には、シラン化合物1モル当たり1モルを越え150モル以下の水を用いることが好ましく、1モルを越え130モル以下の水を加えることが特に好ましい。添加する水の量が5モル以下であると、被膜形成用組成物により形成された塗膜の耐クラック性が劣る場合があり、150モルを越えると加水分解および縮合反応中のポリマーの析出やゲル化が生じる場合がある。
【0029】
(塩基性化合物)
本発明に係る特定シロキサン樹脂は、上記シラン化合物(A)の加水分解、縮合により製造されるが、縮合する際に塩基性化合物を用いることが特徴である。
特定シロキサン樹脂の製造に塩基性化合物を用いることにより、得られた特定シロキサン樹脂を含有する被膜形成用組成物は、低比誘電率、高弾性率であり、さらに基板との密着性に優れたシリカ系被膜を形成することができる。
【0030】
本発明で使用することのできる塩基性化合物としては、無機塩基のほか、有機塩基などが挙げられる。
ここで、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウムなどを挙げることができる。
また、有機塩基としては、例えば、アンモニア、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、メトキシメチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリンなどを挙げることができる。
これらの塩基性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
塩基性化合物の使用量は、例えば、シラン化合物(A)として、一般式(I)〜(III)で表される化合物を用いる場合であれば、これらの化合物中における、R1O−基、R2O−基、R4O−基、及びR5O−基で表される基の総量1モルに対して、通常、0.00001〜10モル、好ましくは0.00005〜5モルである。塩基性化合物の使用量が上記範囲内であれば、反応中のポリマーの析出やゲル化の恐れが少ない。
【0032】
特定シロキサン樹脂の合成に際しては、シロキサン化合物(A)、好ましくは、一般式(I)〜(III)で表される化合物の少なくとも1種を、塩基性化合物の存在下に、加水分解、縮合して、加水分解縮合物を含む反応液を得た後、この反応液をpH7以下に調整することが好ましい。
pHの調整方法としては、反応液へのpH調整剤の添加する方法が挙げられる。pH調整剤としては、無機酸や有機酸が挙げられる。その他の、pHの調整方法としては、常圧または減圧下で塩基性化合物を留去する方法、ガスをバブリングすることにより塩基性化合物を除去する方法、イオン交換樹脂により塩基性化合物を除く方法、抽出や洗浄によって塩基性化合物を系外に除去する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明において、シラン化合物(A)の加水分解時に使用する、第2級又は第3級アルコールには、アルコール類の他にグリコール類が包含される。
アルコール類としては、例えば、イソプロパノール、t−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−オクタノール、3−オクタノールを挙げることができる。また、グリコール類としては、例えば、プロビレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルを挙げることができる。
【0034】
本発明における第2級又は第3級アルコールとしては、特に、イソプロパノール、t−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0035】
第2級又は第3級アルコ−ルの使用量としては、シラン化合物(A)1モルに対して1〜100モルであることが好ましく、5〜30モルであることが特に好ましい。
第2級又は第3級アルコ−ルの使用量が上記範囲内であれば、反応中のポリマーの析出やゲル化の恐れが少ない。
【0036】
本発明における被膜形成用組成物の調製の際、有機溶剤で抽出したり置換したりする場合には、その有機溶剤としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、及び非プロトン系極性溶媒が挙げられる。
【0037】
(その他の添加剤)
本発明における被膜形成用組成物には、さらに、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、有機ポリマー、界面活性剤、シランカップリング剤、ラジカル発生剤、トリアゼン化合物などの成分を添加してもよい。
【0038】
コロイド状シリカとは、例えば、高純度の無水ケイ酸を前記親水性有機溶媒に分散した分散液であり、通常、平均粒径が5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が10〜40質量%程度のものである。このような、コロイド状シリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製のメタノールシリカゾル及びイソプロパノールシリカゾル; 触媒化成工業(株)製のオスカルなどが挙げられる。
【0039】
コロイド状アルミナとしては、例えば、日産化学工業(株)製のアルミナゾル520、同100、同200; 川研ファインケミカル(株)製のアルミナクリアーゾル、アルミナゾル10、同132などが挙げられる。
【0040】
有機ポリマーとしては、例えば、糖鎖構造を有する化合物、ビニルアミド系重合体、(メタ)アクリル系重合体、芳香族ビニル化合物、デンドリマー、ポリイミド,ポリアミック酸、ポリアリーレン、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物などを挙げることができる。
【0041】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、さらには、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤などを挙げることができ、好ましくはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0042】
本発明に係る被膜形成用組成物の全固形分濃度は、好ましくは、2〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。なお、この全固形分濃度の調整は、必要であれば、濃縮及び前記した有機溶剤による希釈によって行われる。
【0043】
本発明に係る被膜形成用組成物を、シリコンウエハ、SiO2ウエハ、SiCウエハ、SiNウエハ、SiCNウエハなどの基材に塗設することにより、シリカ系被膜が形成される。当該シリカ系被膜は半導体集積回路の層間絶縁膜として用いられる。
本発明に係る被膜形成用組成物を、上記基材に塗設する際には、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗布手段を用いることができる。
【0044】
被膜形成用組成物の基材上への塗布は、形成されるシリカ系被膜が乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜2.5μm、2回塗りでは厚さ0.1〜5.0μmの塗膜となるように行われる。
【0045】
基材上に被膜形成用組成物を塗布した後は、常温で乾燥するか、或いは、80〜600℃程度の温度で、通常、5〜240分程度加熱して乾燥することにより、ガラス質又は巨大高分子の絶縁膜(シリカ系被膜)を形成することができる。
この際の加熱方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することができ、加熱雰囲気としては、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行うことができる。
また、基材上に被膜形成用組成物を塗布後、電子線や紫外線を照射することによっても塗膜を形成させることができる。
また、得られる塗膜の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的に加熱したり、窒素、空気、酸素、減圧などの雰囲気を選択することができる。
【0046】
本発明に係るシリカ系被膜の比誘電率としては、通常、2.3〜1.2、好ましくは2.2〜1.5、さらに好ましくは2.1〜1.7であり、弾性率としては、通常、2.0GPa以上、好ましくは2.1GPa以上、さらに好ましくは2.2GPa以上である。
【0047】
[研磨液]
次に、本発明に係る研磨液について説明する。
本発明に係る研磨液は、重合体粒子にシリコン化合物(B)が結着した複合粒子を含有する。
【0048】
〔複合粒子〕
(重合体粒子)
重合体粒子は、各種の単量体を重合させて得られる重合体からなる粒子である。該単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン及びジビニルベンゼン等の不飽和芳香族化合物類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類、並びにアクリロニトリル等の不飽和ニトリル類などを好適に使用することができる。更に、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアクリレート及びアリルメタクリレート等のアクリル酸エステル類或いはメタクリル酸エステル類を用いることもできる。
【0049】
これらの単量体は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、この重合体粒子に水酸基、エポキシ基、カルボキシル基等の官能基を導入することもできる。このように重合体粒子に官能基を導入した場合は、シランカップリング剤等の連結用化合物を要することなく、重合体粒子に対して、直接的に、後述するシリコン化合物(B)を結合させることもできる。しかし、特に、重合体粒子に導入された官能基と反応し得る官能基を有するシランカップリング剤等を併用した場合には、複合粒子におけるシリコン化合物(B)由来部位(以下、適宜「シリコン化合物部」と称する。)を形成するシリコン化合物(B)と、重合体粒子と、の結合がより促進され、更に優れた性能の複合粒子を得ることができる。
【0050】
重合体粒子は、上記のごとき単量体を、乳化重合、懸濁重合、及び分散重合等、各種の方法によって重合することによって得ることができる。更に、塊状等の重合体を粉砕し、所要の粒径の重合体粒子とすることもできる。また、特に、強度等が大きく、耐熱性に優れる重合体粒子を必要とする場合は、重合体粒子を製造するに際し、多官能の単量体を併用し、分子内に架橋構造を導入することもできる。
【0051】
重合体粒子としては、上記した単量体から得られる粒子の他、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート及びポリオレフィン等の各種の重合体からなる粒子を用いることもできる。これらの重合体粒子においても、上記と同様に官能基を導入することができ、更に、分子内に架橋構造を導入することもできる。
【0052】
重合体粒子の形状は特に限定されないが、より球形に近いものが好ましい。重合体粒子の平均粒径は0.02〜50μmであることが好ましく、特に0.05〜20μm、更には0.05〜1.0μmであることがより好ましい。
重合体粒子の平均粒径は、後述する実施例に示す方法により測定することができる。
【0053】
(シリコン化合物(B))
シリコン化合物(B)について説明する。
本発明に係る複合粒子は、重合体粒子にシリコン化合物(B)が結着してなるものである。ここで、「重合体粒子にシリコン化合物(B)が結着する」とは、シリコン化合物(B)の少なくとも一部が、直接的に或いは間接的に重合体粒子に結合されていることを指す。本発明に係るシリコン化合物(B)は、重合体粒子に結着されていることから、研磨時、容易に重合体粒子から脱落したり、被研磨面に残留するといった問題を生ずることがない。
【0054】
本発明に係るシリコン化合物(B)は、シロキサン結合含有部又はシリカ粒子部を含んで構成される。
【0055】
シリコン化合物(B)を構成する上記部分は、この部分が重合体粒子に直接結合されていてもよいし、シランカップリング剤等の連結用化合物(カップリング剤)を介して結合されていてもよい。
このシランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらのうちでも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0056】
重合体粒子と前記カップリング剤の使用量は、重合体粒子が有する、或いは、この粒子に導入される官能基1モルに対して、好ましくは0.1〜50モルである。この使用量は特に0.5〜30モル、更には1.0〜20モルとすることがより好ましい。カップリング剤の使用量が0.1モル未満であると、シリコン化合物部が重合体粒子に充分に強固に結合されず、研磨時、重合体粒子から脱落し易くなる場合がある。また、使用量が50モルを越えると、カップリング剤分子の縮合反応が進行し、重合体粒子を構成する分子との反応以外に新たな重合体が生成し、化合物部の重合体粒子への結合が妨げられることがある。
尚、カップリング剤を重合体粒子に化学結合させる際には、反応を促進するため酸及び塩基等の触媒を用いることもできる。また、反応系を昇温させて反応を促進させることもできる。
【0057】
シリカ化合物(B)に含まれる「シリカ粒子部」は、「コロイド状シリカ」により構成されることが好ましい。該コロイド状シリカとしては、水等の分散媒に分散した平均粒径5〜500nmのシリカ微粒子であることが好ましい。該シリカ微粒子は、アルカリ水溶液において粒成長させる方法、或いは気相法等によって調製することができ、実用上、これらを水等の分散媒に分散させたコロイドとして使用される。
【0058】
シリカ化合物(B)がシリカ粒子部を含む場合、当該粒子部を構成する微粒子は、重合体粒子の表面等と直接結合することなく、シリカ粒子部を構成していてもよい。但し、この場合には、シリカ粒子部はシロキサン結合含有部によって捕捉されている必要がある。
コロイド状シリカを使用する場合、その使用量は、SiO2に換算して、重合体粒子に対して質量比で0.001〜100とすることが好ましい。この質量比は、特に0.01〜50、更には0.1〜10とすることがより好ましい。
【0059】
重合体粒子へのカップリング剤の結合、及び、コロイド状シリカ等のシリカ化合物(B)のカップリング剤への反応又は重合体粒子への直接的な反応は、水又はアルコール等の各種の有機溶媒を分散媒とする分散系において行うことができる。これら分散媒は1種のみであってもよいし、水とアルコール等、適宜の2種以上の分散媒を併用することもできる。尚、水を含む分散媒である場合は、重合体粒子を分散系に安定に、且つ均一に分散させるために、重合体粒子に水酸基、エポキシ基及びカルボキシル基等の親水性の官能基を導入しておくことが好ましい。
【0060】
上記有機溶媒として用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等、低級飽和脂肪族アルコールを使用することが好ましい。これらのアルコールは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。更に、アルコール以外の有機溶媒としては、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等を用いることができ、これらの有機溶媒、水及びアルコールを適宜の量比で併用することもできる。
【0061】
また、上記反応において、分散媒中の重合体粒子の含有量は、0.001〜70質量%、特に0.01〜50質量%、更には0.1〜25質量%とすることが好ましい。この含有量が0.001質量%未満であると、複合粒子の収量が少なく、一方、70質量%を越えると、重合体粒子の分散安定性が低下し、複合化の段階でゲルが発生し易くなる場合がある。
【0062】
更に、シリコン化合物部を形成させるための反応は、加熱し、或いは触媒を用いることにより促進させることができる。加熱する場合、反応系の温度を40〜100℃とすることが好ましい。また、触媒としては、酸、塩基、アルミニウム化合物及びスズ化合物等を用いることができる。特に、酸触媒及びアルミニウム触媒は反応促進の効果が大きい。更に、この製造方法においては、化合物部を形成させた後、水又はアルカリ性水溶液によって分散体を希釈し、必要に応じてアルコール等の有機溶媒をエバポレータ等を用いて除去することが好ましい。
【0063】
希釈は、水又はアンモニア水溶液及び水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を使用して行うことができる。このアルカリ性水溶液の濃度は、0.001〜10%、特に0.01〜1%であることが好ましい。
【0064】
本発明にかかる複合粒子の形状は特に限定されないが、より球形に近いものが好ましい。その平均粒径(球相当径として)は0.03〜100μmであることが好ましく、特に0.05〜20μm、更には0.05〜1.0μmであることがより好ましい。
なお、複合粒子の平均粒径は後述する実施例に示す方法により測定することができる。
【0065】
本発明における研磨液は、上記複合粒子と水とを含有する水系分散体であることが好ましい。
研磨液中における複合粒子の含有量としては、0.001〜70質量%であることが好ましい。複合粒子の含有量は、特に0.01〜50質量%、更には0.1〜20質量%とすることがより好ましい。
【0066】
〔酸化剤、有機酸、他の添加剤〕
本発明の研磨液は、さらに、酸化剤、有機酸、他の添加剤を含有することが好ましい。
(酸化剤)
酸化剤として具体的には、過酸化水素、過酸化物、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン水、銀(II)塩、及び鉄(III)塩が挙げられ、過酸化水素がより好ましく用いられる。
酸化剤の添加量は、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.003mol〜8molとすることが好ましく、0.03mol〜6molとすることがより好ましく、0.1mol〜4molとすることが特に好ましい。即ち、酸化剤の添加量としては、金属の酸化を充分に高くしてCMP速度を確保する点からは0.003mol以上が好ましく、研磨面の荒れ防止の点からは8mol以下が好ましい。
【0067】
酸化剤は、研磨液を使用して研磨を行う際に混合して使用することが好ましい。酸化剤を混合する時期としては、研磨液を使用する直前の1時間以内が好ましく、更に好ましくは5分以内、特に好ましくは、研磨装置にて研磨液を供給する直前に混合器を設け、被研磨面へ供給する直前5秒以内に混合することである。
【0068】
(有機酸)
有機酸としては種々の化合物が用いられるが、水溶性のものが望ましく、例えば、アミノ酸、アミノ酸以外の有機酸が挙げられる。
アミノ酸としては、以下の群から選ばれたものが好適に用いられる。
即ち、グリシン、L−アラニン、β−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−イソロイシン、L−アロイソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロシン、3,5−ジヨ−ド−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、L−チロキシン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−L−システィン、4−アミノ酪酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、アザセリン、L−アルギニン、L−カナバニン、L−シトルリン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、クレアチン、L−キヌレニン、L−ヒスチジン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、エルゴチオネイン、L−トリプトファン、アクチノマイシンC1、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等のアミノ酸等が挙げられる。
【0069】
アミノ酸以外の有機酸としては、以下の群から選ばれたものが好適に用いられる。
即ち、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、及びそれらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等の塩が挙げられる。これらの中では、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン等が実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点で好ましい。
【0070】
研磨液における有機酸の添加量は、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0005〜0.5molとすることが好ましく、0.005mol〜0.3molとすることがより好ましく、0.01mol〜0.1molとすることが特に好ましい。即ち、酸の添加量は、エッチングの抑制の点からは0.5mol以下が好ましく、充分な研磨効果を得る点からは0.0005mol以上が好ましい。
【0071】
有機酸としては、リンゴ酸やアミノ酸が特に好ましく、研磨液中における濃度は0.07〜0.2質量%程度である。
【0072】
(他の添加剤)
本発明に係る研磨液には、以下に添加剤を用いることが好ましい。
即ち、アンモニア、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピレンジアミン等のアルキルアミンや、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム及びキトサン等のアミン;ジチゾン、クプロイン(2,2’−ビキノリン)、ネオクプロイン(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)、バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)及びキュペラゾン(ビスシクロヘキサノンオキサリルヒドラゾン)等のイミン;ベンズイミダゾール−2−チオール、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオプロピオン酸、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオブチル酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾール、4−メトキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、4−ブトキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、4−オクチルオキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、5−ヘキシルベンゾトリアゾール、N−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル)−N−(1,2,4−トリアゾリル−1−メチル)−2−エチルヘキシルアミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等のアゾール;ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、トリアジンチオール、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール等のメルカプタン、その他、アントラニル酸、アミノトルイル酸、キナルジン酸などが挙げられる。これらの中でもキトサン、エチレンジアミンテトラ酢酸、L−トリプトファン、キュペラゾン、トリアジンジチオール、ベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾールブチルエステル、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、キナルジン酸、等が高いCMP速度と低いエッチング速度を両立する観点から好ましい。
特に、複素芳香環化合物を用いることが好ましい。
【0073】
これら添加剤の添加量は、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0001mol〜0.5molとすることが好ましく0.001mol〜0.2molとすることがより好ましく、0.005mol〜0.1molとすることが特に好ましい。即ち、他の添加剤の添加量は、エッチング抑制の点からは0.0001mol以上が好ましく、CMP速度低下防止の点からは0.5mol以下が好ましい。
【0074】
〔界面活性剤/親水性ポリマー〕
本発明に係る研磨液は、上記した以外にも、さらに他の成分を含有してもよく、例えば、界面活性剤、及び、親水性ポリマーを含有することが好ましい。
【0075】
界面活性剤及び親水性ポリマーは、いずれも被研磨面の接触角を低下させる作用を有して、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤や親水性ポリマーとしては、以下の群から選ばれたものが好適である。
【0076】
陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、陽イオン界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩が挙げられ、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができ、非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、また、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0077】
親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール等のポリグリコール類、ポリビニルアルコール、ポロビニルピロリドン、アルギン酸等の多糖類、ポリメタクリル酸等のカルボン酸含有ポリマー等が挙げられる。
【0078】
これらの界面活性剤及び親水性ポリマーの重量平均分子量としては、500〜100000が好ましく、特には2000〜50000が好ましい。
【0079】
界面活性剤及び/又は親水性ポリマーの添加量は、総量として、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
【0080】
〔アルカリ、酸、又は緩衝剤〕
研磨液のpHの調製は、例えば、アルカリ、酸、又は緩衝剤の添加により行うことができる。
【0081】
アルカリ、酸、又は緩衝剤としては、水酸化アンモニウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドなどの有機水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのようなアルカノールアミン類などの非金属アルカリ剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、硝酸、硫酸、りん酸などの無機酸、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸三ナトリウムなどのリン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩等を好ましく挙げることができる。特に好ましいアルカリ剤として水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドである。
【0082】
アルカリ、酸、又は緩衝剤の添加量としては、pHが好ましい範囲に維持される量であればよく、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0001mol〜1.0molとすることが好ましく0.003mol〜0.5molとすることがより好ましい。
【0083】
本発明に係る研磨液のpHとしては、2〜14が好ましく、3〜12が特に好ましい。この範囲において本発明の研磨液は特に優れた効果を発揮する。
【0084】
〔キレート剤〕
本発明の研磨液は、混入する多価金属イオンなどの悪影響を低減させるために、必要に応じてキレート剤を含有していてもよい。キレート剤としては、カルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤である汎用の硬水軟化剤やその類縁化合物を用いることができ、必要に応じてこれらを2種以上併用してもよい。キレート剤の添加量は混入する多価金属イオンなどの金属イオンを封鎖するのに充分な量であればよく、例えば、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0003mol〜0.07molになるように添加することができる。
【0085】
本発明においては、研磨面への吸着性や反応性、研磨体の溶解性、被研磨面の電気化学的性質、化合物官能基の解離状態、液としての安定性などにより、適宜、化合物種、添加量やpH、分散媒を設定することが好ましい。
【0086】
なお、研磨液の濃縮液作製時に添加する成分の内、室温での溶媒に対する溶解度が5質量%未満の物の配合量は、室温での溶媒に対する溶解度の2倍以内とすることが好ましく、1.5倍以内とすることがより好ましい。この添加量が2倍以上では濃縮液を5℃に冷却した際の析出を防止するのが困難となる。
【0087】
以下、本発明の化学的機械的平坦化方法における研磨について詳細に説明する。
本発明においては、研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨する研磨方法を用いることが好ましい。
【0088】
研磨する装置としては、被研磨面を有する半導体基板等を保持するホルダーと研磨パッドを貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)研磨定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。
【0089】
研磨条件には制限はないが、研磨定盤の回転速度は基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨面(被研磨膜)を有する半導体基板の研磨パッドへの押しつけ圧力が9.8〜98.1kPa(100〜1000gf/cm2)であることが好ましく、研磨速度のウエハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、9.8から49.0KPa(100〜500gf/cm2)であることがより好ましい。
【0090】
研磨している間、研磨パッドには研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0091】
なお、本明細書に示される、平均粒径、比誘電率、機械的強度(弾性率)の測定は、以下のように行うことができる。
【0092】
[平均粒径]
重合体粒子、複合粒子の平均粒径は、LASER PARTICLE ANALYZER PAR−III(大塚電子株式会社製)を用いて測定する。
【0093】
[比誘電率]
8インチシリコンウエハ(基板)上に、スピンコート法を用いて被膜形成用組成物を塗布し、大気雰囲気中ホットプレート上で80℃で1分間、続いて200℃で1分間基板を乾燥し、さらに425℃真空の条件で1時間基板を焼成する。得られた膜に対して、蒸着法によりアルミニウム電極パターンを形成させ比誘電率測定用サンプルを作製する。このサンプルの比誘電率を、カスケード・マイクロテック(株)製マニュアル・ステーション(SUMMIT11751HT)、ヒューレットパッカード(株)製HP4285AプレシジョンLCRメータを用いて100kHzの周波数でCV法により測定する。
【0094】
[機械的強度(弾性率)]
8インチシリコンウエハ上に、スピンコート法を用いて被膜形成用組成物を塗布し、大気雰囲気中ホットプレート上で80℃で1分間、つづいて200℃で1分間基板を乾燥し、さらに425℃真空の条件で1時間、当該ウェハ(基板)を焼成する。得られた膜の弾性率を、ナノインデンターXP(MTSシステムズ社製)を用いて、連続剛性測定法により測定する。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特記しない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」である。
【0096】
[実施例1〜22]
1.シリカ系被膜を形成したウェハの作製
(1)シリカ系被膜(1)を形成したウェハの作製
<被膜形成用組成物1の調製>
石英製セパラブルフラスコに蒸留プロピレングリコールモノメチルエーテル410g、イオン交換水180gと25%メチルアミン水溶液14gを入れ、60℃で攪拌を行った。この混合液にメチルトリエトキシシラン45.3gとテトラエトキシシラン69.2gの混合物を一定速度で2時間かけて添加した。この溶液を60℃で更に4時間反応させた。この溶液に10%マレイン酸のプロピレングリコールモノプロピルエーテル溶液を添加し、溶液のpHを7以下とし、50℃のエバポレーターを用いて溶液を10%(完全加水分解縮合物換算)となるまで濃縮し、反応液を得た。この反応液を0.2μm径のテフロン(登録商標)製フィルターでろ過を行い、被膜形成用組成物1を得た。
【0097】
<シリカ系被膜(1)の形成>
上記にて得られた被膜形成用組成物1を、8インチシリコンウエハ上に、スピンコート法で塗布後焼成することで、シリカ系被膜(1)が形成されたウェハを得た。
【0098】
(2)シリカ系被膜(2)を形成したウェハの作製
<被膜形成用組成物2の調製>
被膜形成用組成物1の調製において、蒸留プロピレングリコールモノメチルエーテルの代わりに蒸留プロピレングリコールモノエチルエーテルを使用し、メチルアミン水溶液の代わりにエチルアミン水溶液を使用した以外は被膜形成用組成物1と同様にして、被膜形成用組成物2を得た。
<シリカ系被膜(2)の形成>
被膜形成用組成物2を用いた以外は、シリカ系被膜1と同様にして、シリカ系被膜(2)が塗設されたウェハを得た。
【0099】
(3)シリカ系被膜(3)を形成したウェハの作製
<被膜形成用組成物3の調製>
被膜形成用組成物1の調製において、蒸留プロピレングリコールモノメチルエーテルの代わりに蒸留t−ブタノールを使用し、メチルアミン水溶液の代わりにプロピルアミン水溶液を使用した以外は被膜形成用組成物1と同様にして、被膜形成用組成物3を得た。
<シリカ系被膜(3)の形成>
被膜形成用組成物3を用いた以外は、シリカ系被膜1と同様にして、シリカ系被膜(3)が形成されたウェハを得た。
【0100】
(4)シリカ系被膜(4)を形成したウェハの作製
<被膜形成用組成物4の調製>
被膜形成用組成物1の調製において、蒸留プロピレングリコールモノメチルエーテルの代わりに蒸留イソプロパノールを使用し、メチルアミン水溶液の代わりに水酸化テトラメチルアンモニウムを使用した以外は被膜形成用組成物1と同様にして、被膜形成用組成物4を得た。
<シリカ系被膜(4)の形成>
被膜形成用組成物4を用いた以外は、シリカ系被膜1と同様にして、シリカ系被膜(4)が形成されたウェハを得た。
【0101】
(5)シリカ系被膜(5)を形成したウェハの作製
<被膜形成用組成物5の調製>
被膜形成用組成物1の調製において、メチルトリエトキシシラン45.3gの代わりにメチルトリエトキシシラン63.4gを使用し、テトラエトキシシラン69.2gの代わりにテトラエトキシシラン41.5gを使用した以外は被膜形成用組成物1と同様にして、被膜形成用組成物5を得た。
<シリカ系被膜(5)の形成>
被膜形成用組成物5を用いた以外は、シリカ系被膜1と同様にして、シリカ系被膜(5)が形成されたウェハを得た。
【0102】
(6)シリカ系被膜(6)を形成したウェハの作製
<被膜形成用組成物6の調製>
被膜形成用組成物1の調製において、メチルトリエトキシシラン45.3gの代わりにメチルトリメトキシシラン20.8gを使用し、テトラエトキシシラン69.2gの代わりにテトラエトキシシラン96.9gを使用した以外は被膜形成用組成物1と同様にして、被膜形成用組成物6を得た。
<シリカ系被膜(6)の形成>
被膜形成用組成物6を用いた以外は、シリカ系被膜1と同様にして、シリカ系被膜(6)が形成されたウェハを得た。
【0103】
(7)シリカ系被膜(7)を形成したウェハの作製
<被膜形成用組成物7の調製>
被膜形成用組成物1の調製において、メチルトリエトキシシラン45.3gとテトラエトキシシラン69.2gの混合物の代わりに、メチルトリエトキシシラン45.3g、テトラメトキシシラン40.5g、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン36.0gを使用した以外は被膜形成用組成物1と同様にして、被膜形成用組成物7を得た。
<シリカ系被膜(7)の形成>
被膜形成用組成物7を用いた以外は、シリカ系被膜1と同様にして、シリカ系被膜(7)が形成されたウェハを得た。
【0104】
2.研磨液の調製
(1)重合体粒子の水分散体の製造
<重合体粒子の合成例1: ジビニルベンゼン重合体粒子の水分散体の製造例>
容量7リットルの4つ口フラスコに、イオン交換水を3353g及びアニオン系界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名「MON−7」)の15%水溶液を7.4g投入し、10分間攪拌した。その後、球状スチレン重合体(平均粒径;0.15μm)の32%水分散体を343g添加し、窒素ガスを吹き込みながら5分間攪拌した。次いで、フラスコをウォーターバスに浸漬し、温度が80℃に達した時点で過硫酸ソーダの2%水溶液を110g添加した。
その後、このフラスコに、イオン交換水344g、MON−7の15%水溶液147g、ノニオン系界面活性剤(花王株式会社製、商品名「E920」)の25%水溶液35g、及びジビニルベンゼン1100gを予め混合したものを3時間かけて連続的に投入した。次いで、フラスコの内容物を80℃で2時間反応させた後、メタクリル酸55g、イオン交換水550g、及び過硫酸ソーダの1%水溶液55gを更に添加し、80℃の温度を維持しつつ、2時間反応させた。その後、室温にまで冷却し、フィルタによって凝集物を除去し、ジビニルベンゼン重合体粒子(1)の水分散体を得た。この水分散体の固形分濃度は19.8%であった。得られた重合体粒子の平均粒径は0.33μmであった。
【0105】
<重合体粒子の合成例2: ジビニルベンゼン重合体粒子の水分散体の他の製造例>
合成例1におけるメタクリル酸に代えて、アクリル酸55gを使用した他は合成例1の場合と同様にしてジビニルベンゼン重合体粒子の水分散体を得た。この水分散体の固形分濃度は19.7%であった。得られた重合体粒子の平均粒径は0.31μmであった。
【0106】
<重合体粒子の合成例3: スチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水分散体の製造例>
容量7リットルの4つ口フラスコに、イオン交換水を5078g、アニオン系界面活性剤(花王株式会社製、商品名「エマールAD−25R」)の1%水溶液を112g、スチレンを119g、及びメタクリル酸を21g投入し、窒素ガスによってパージしながら5分間攪拌した。その後、フラスコをウォーターバスに浸漬し、温度が75℃に達した時点で過硫酸アンモニウムの5%水溶液を140g添加した。
次いで、75℃の温度で1時間反応させた後、このフラスコに、1232gのスチレンと28gのメタクリル酸との混合物を、4時間かけて連続的に投入し、75℃で3時間反応させた後、室温にまで冷却し、スチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水分散体を得た。この水分散体の固形分濃度は20%であった。得られた重合体粒子の平均粒径は0.19μmであった。
【0107】
(2)複合粒子を含む水系分散体の製造
<複合粒子(1)の水系分散体: 合成例1のジビニルベンゼン重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の製造例>
重合体粒子の合成例1で得られたジビニルベンゼン重合体粒子の水分散体の固形分が40%になるまで加熱、濃縮し、冷却後、2−プロパノールを添加して固形分が15%になるまで希釈した後、10分間攪拌し、ジビニルベンゼン重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を調製した。その後、容量2リットルの3つ口フラスコに、この水/2−プロパノール混合分散体を533g投入し、60℃に調温されたウォーターバスに浸漬し、攪拌した。次いで、シランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「GPTS」と略記する。)11gを2時間かけて連続的に添加し、60℃で3時間反応させた後、室温にまで冷却した。
その後、オルトケイ酸テトラエチル(以下、「TEOS」と略記する。)200gを2時間かけて連続的に添加し、2時間反応させた。次いで、イオン交換水を1000g投入して1時間攪拌し、更に水酸化カリウムの1%水溶液を50g添加して1時間攪拌を続けた後、室温にまで冷却した。その後、2−プロパノールを除去し、固形分濃度が12%である複合粒子の水系分散体を得た。得られた複合粒子(1)の平均粒径は0.43μmであった。
【0108】
<複合粒子(2)の水系分散体: 合成例2のジビニルベンゼン重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の他の製造例>
複合粒子(1)の水系分散体の製造において、水酸化カリウム水溶液の添加を省略した他は、複合粒子(1)の水系分散体の製造と同様にして、固形分濃度が11%である複合粒子(2)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(2)の平均粒径は0.45μmであった。
【0109】
<複合粒子(3)の水系分散体: 合成例1の重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の他の製造例>
重合体粒子の合成例1で得られたジビニルベンゼン重合体粒子の水分散体の固形分が40%になるまで加熱、濃縮し、冷却後、2−プロパノールを添加して固形分が24%になるまで希釈し、その後、10分間攪拌し、ジビニルベンゼン重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を調製した。その後、容量300ミリリットルの3つ口フラスコに、この水/2−プロパノール混合分散体を170g投入し、60℃に調温されたウォーターバスに浸漬し、攪拌した。次いで、GPTS10gを2時間かけて連続的に添加し、60℃で3時間反応させた後、室温にまで冷却した。
その後、このGPTSが結合された重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体(固形分;22%)36gを、容量300ミリリットルの他のフラスコに投入し、これに2−プロパノールを39g添加し、45℃に調温されたウォーターバスに浸漬し、攪拌した。次いで、TEOS79gを2時間かけて連続的に添加し、2時間反応させた。反応終了後、冷却し、反応液150gを水酸化カリウムの0.01%水溶液3リットル中に連続的に滴下し、その後、2−プロパノールを除去し、固形分濃度が8%である複合粒子(3)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(3)の平均粒径は0.43μmであった。
【0110】
<複合粒子(4)の水系分散体: 合成例2の重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の製造例>
合成例2で得られたジビニルベンゼン重合体粒子の水分散体の固形分が37%になるまで加熱、濃縮し、冷却後、2−プロパノールを添加して固形分が15%になるまで希釈し、その後、10分間攪拌し、ジビニルベンゼン重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を調製した。
次いで、複合粒子(1)の水系分散体の製造において用いたジビニルベンゼン重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を、上記の水/2−プロパノール混合分散体に代え、シランカップリング剤をGPTSからN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン9gに代えた他は、複合粒子の合成例1と同様にして、固形分濃度が12%である複合粒子(4)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(4)の平均粒径は0.48μmであった。
【0111】
<複合粒子(5)の水系分散体: 合成例3の重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の製造例>
重合体粒子の合成例3で得られたスチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水分散体の固形分が36%になるまで加熱、濃縮し、冷却後、2−プロパノールを添加して固形分が15%になるまで希釈し、その後、10分間攪拌し、スチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を調製した。
次いで、複合粒子(1)の水系分散体の製造において用いたジビニルベンゼン重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を、上記の水/2−プロパノール混合分散体に代え、GPTSを10g、TEOSを100g、更に水酸化カリウム水溶液を10%のアンモニア水5gとした他は、複合粒子の合成例1と同様にして、固形分濃度が10%である複合粒子(5)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(5)の平均粒径は0.26μmであった。
【0112】
<複合粒子(6)の水系分散体: 合成例3の重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の他の製造例>
重合体粒子の合成例3で得られたスチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水分散体の固形分が40%になるまで加熱、濃縮し、冷却後、2−プロパノールを添加して固形分が15%になるまで希釈し、その後、10分間攪拌し、スチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を調製した。
次いで、容量2リットルの3つ口フラスコに、この水/2−プロパノール混合分散体を533g投入し、60℃に調温されたウォーターバスに浸漬し、攪拌した。その後、GPTS11gを2時間かけて連続的に添加し、60℃で3時間反応させた。次いで、このフラスコにTEOS100g及び気相法シリカの30%2−プロパノール分散体120gを2時間かけて連続的に添加し、2時間反応させた。その後、水酸化カリウムの1%水溶液を50g添加して1時間攪拌を続けた後、イオン交換水を1000g投入して室温まで冷却した。次いで、2−プロパノールを除去し、固形分濃度が9%である複合粒子(6)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(6)の平均粒径は0.24μmであった。
【0113】
<複合粒子(7)の水系分散体: 合成例3の重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の他の製造例>
複合粒子(1)の水系分散体の製造において用いたジビニルベンゼン重合体粒子の水分散体を、重合体粒子の合成例3のスチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水分散体に代え、TEOS200gをメチルトリメトキシシラン160gに代えた他は、複合粒子(1)の水系分散体と同様にして、固形分濃度が10%である複合粒子(7)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(7)の平均粒径は0.22μmであった。
【0114】
<複合粒子(8)の水系分散体: 合成例3の重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の他の製造例>
容量2リットルの3つ口フラスコに、重合体粒子の合成例3で得られたスチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水分散体(固形分;20質量%)を421g投入し、60℃に調温されたウォーターバスに浸漬し、攪拌した。その後、GPTS10gを2時間かけて連続的に添加し、60℃で3時間反応させた。次いで、このフラスコにTEOS15gを2時間かけて連続的に添加して1時間攪拌を続けた後、イオン交換水を1000g投入して室温にまで冷却した。その後、2−プロパノールを除去し、固形分濃度が11%である複合粒子(8)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(8)の平均粒径は0.19μmであった。
【0115】
<複合粒子(9)の水系分散体: 合成例3の重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の他の製造例>
重合体粒子の合成例3で得られたスチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水分散体の固形分が39%になるまで加熱、濃縮し、冷却後、2−プロパノールを添加して固形分が15%になるまで希釈し、その後、10分間攪拌し、スチレン−メタクリル酸共重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を調製した。
次いで、複合粒子(1)の水系分散体の製造において用いたジビニルベンゼン重合体粒子の水/2−プロパノール混合分散体を、上記の水/2−プロパノール混合分散体に代え、GPTSの添加を省略した他は、複合粒子(1)の水系分散体と同様にして、固形分濃度が9%である複合粒子(9)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(9)の平均粒径は0.25μmであった。
【0116】
<複合粒子(10)の水系分散体: 合成例3の重合体粒子を用いて得られる複合粒子の水系分散体の他の製造例>
前記複合粒子(8)の水系分散体の製造において、GPTSの添加を省略した他は複合粒子(8)の水系分散体と同様にして、固形分濃度が10%である複合粒子(10)の水系分散体を得た。得られた複合粒子(10)の平均粒径は0.20μmであった。
【0117】
なお、上記により得られた複合粒子(1)〜(10)の水系分散体は、ポアサイズ5μmのフィルタを使用して凝集物等を除去した。
【0118】
(3)研磨液の調製
上記の合成例1〜10により得られた複合粒子の水系分散体を用いて研磨液を調製した。研磨液組成及びpHを以下に示す。なお、各実施例に用いた各研磨液に含有される成分の詳細ついては表1に示す通りである。
なお、酸化剤については、表1に示す時期に添加を行った。
【0119】
−研磨液組成−
・複合砥粒 : 1質量%
・有機酸 : 添加する場合は2質量%
・複素芳香環化合物: 添加する場合は0.05質量%
・界面活性剤 : 添加する場合は0.5質量%
・酸化剤 : 添加する場合は2質量%
・pH : 9.5
【0120】
3.研磨
上記により得られた「シリカ系被膜を形成したウェハ」及び「研磨液」を用いて研磨を行った。
研磨機としては、ラップマスターSFT社製の研磨装置(型式「LFP612」)を用い、定盤にロデール・ニッタ社製のパッド(品番「IC1400」)を貼り付け、このパッドに、上記によりシリカ系被膜(1)〜(7)(層間絶縁膜)を形成したウェハを押し付けて10分間研磨した。研磨条件は、加工圧力70g/cm2、定盤回転数65rpm及び研磨剤供給量200cc/秒とした。研磨後、ウェハを洗浄し、乾燥した。
【0121】
各実施例に用いたシリカ系被膜を形成したウェハの種類と研磨液との組み合わせの詳細を表1に示す。
【0122】
4.評価
研磨後の各ウェハについて、研磨傷の個数を評価した。研磨傷の個数は、KLAテンコール社製のSP−1を用いて計測した。表1に結果を示す。
【0123】
[比較例1]
シリカ系被膜に代えてSiO2膜を形成した8インチウェハと、複合粒子(1)を含む研磨液(表1に示す組成の研磨液)とを用いた以外は、上記各実施例と同様にして研磨を行い、評価した。表1に結果を示す。
【0124】
[比較例2]
シリカ系被膜(1)を形成したウェハと、平均粒径0.2μmのコロイダルシリカ含む研磨液(表1に示す組成)とを用いた以外は、上記各実施例と同様にして研磨を行い、評価した。表1に結果を示す。
【0125】
[比較例3]
シリカ系被膜に代えてSiO2膜を形成した8インチウェハと、平均粒径0.2μmのコロイダルシリカを含む研磨液(表1に示す組成)とを用いた以外は、上記各実施例と同様にして研磨を行い、評価した。表1に結果を示す。
【0126】
【表1】

【0127】
表1に示されるように、実施例の化学的機械的平坦化方法によれば、シリカ系被膜に損傷を与えずに研磨できることが分かる。
即ち、本発明によれば、通常は機械的強度が弱くなる有機系シリカ絶縁膜を研磨する際に、有機系成分を有する砥粒(本発明に係る複合粒子)を含む研磨液を用いて研磨することによって、特異的に研磨傷の少ない仕上がりが実現できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂と、第2又は第3級アルコールと、を含有してなる被膜形成用組成物を塗設して得られたシリカ系皮膜を層間絶縁膜として用いた半導体集積回路を、重合体粒子にシリコン化合物(B)が結着した複合粒子を含む研磨液で研磨することを特徴とする化学的機械的平坦化方法。
【請求項2】
前記シラン化合物(A)が、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物からなる群より選ばれた化合物の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の化学的機械的平坦化方法。
一般式(I): RxSi(OR14-x
[一般式(I)中、Rは水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表し、R1は1価の有機基を表し、xは1又は2の整数を表す。]
一般式(II): Si(OR24
[一般式(II)中、R2は1価の有機基を表す。]
一般式(III): R3y(R4O)3-ySi−(R7d−Si(OR53-z6z
[一般式(III)中、R3〜R6は、各々独立に1価の有機基を表し、y及びzは、各々独立に0〜2の整数を表し、R7は、酸素原子、フェニレン基、又は−(CH2n−で表される基(ここで、nは1〜6の整数を表す。)、dは0又は1の整数を表す。〕
【請求項3】
前記研磨液中の複合粒子が、前記シリコン化合物(B)により無機粒子が重合体粒子に付着している粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化学的機械的平坦化方法。

【公開番号】特開2007−95833(P2007−95833A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280646(P2005−280646)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】