説明

化粧材

【課題】凹みなどの復元性に優れ、かつ色調の調整が容易であり、かつ耐キャスター性、耐衝撃性などもあり、容易に製造可能で加工適性も優れた化粧材を提供すること。
【解決手段】木質系基材上に熱可塑性樹脂化粧シートを積層してなる化粧材において、前記熱可塑性樹脂化粧シートより下層に、25℃の雰囲気で引張弾性率が106〜107N/m2で破断強度が1×106N/m2以上かつ伸び100%(JIS K6251−1993)以上からなるエラストマー層を厚み0.05〜2mmで設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗、事務所、体育館など用いられる化粧材に関する。さらに詳しくは、耐衝撃性、耐キャスター性、生産性、凹みなどの復元性に優れた化粧材のうち床材や壁装材に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系基材からなる板張り様の化粧材としては、合板に突き板を張り、木工機械にて溝加工して、溝部を着色した後、表面に紫外線硬化型塗料を塗布し硬化させたものが知られている。しかしながら、突き板が天然木のため、色にバラツキがあり、壁や天井や他の家具との色調の調和が困難であった。
【0003】
また、合板の表面に凹状溝を設け、表面に導管着色用合成樹脂塗料を塗布し、凹状溝に前記塗料を埋め込み、凹状溝以外の表面に付着した前記導管着色用合成樹脂塗料塗料を除去した後、凹状溝以外の合板表面に透明塗料を塗布する方法も知られている。しかしながら、木質基材と合成樹脂塗料からなる構成のため、キャスター付き椅子による傷付き耐性いわゆる耐キャスター性を出すことが困難であった。
【0004】
また、木質系基材上に熱可塑性樹脂化粧シートを積層した化粧材も知られている。しかしながら熱可塑性樹脂化粧シートが厚すぎると、ウエーブ状(巻き状態)で巻き取りにくく、木質系基材との連続ラミネート時にライン上でシートカットが困難なものとなる。よって生産性が上がらないため、木質系基材と熱可塑性樹脂化粧シートとをラミネートする際には、予め木質系基材と同等の大きさにカットした熱可塑性樹脂化粧シートを準備して、枚葉方式で1枚1枚積層するなどの方法をとらなければならないこともあった。
【特許文献1】特開昭52−76409号公報
【特許文献2】特開2004−17590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、凹みなどの復元性に優れ、かつ色調の調整が容易であり、かつ耐キャスター性、耐衝撃性などもあり、容易に製造可能で加工適性も優れた化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決するものであり即ち請求項1記載の発明は、木質系基材上に熱可塑性樹脂化粧シートを積層してなる化粧材において、前記熱可塑性樹脂化粧シートより下層に、25℃の雰囲気で引張弾性率が106〜107N/m2で破断強度が1×106N/m2以上かつ伸び100%(JIS K6251−1993)以上からなるエラストマー層を厚み0.05〜2mmで設けたことを特徴とする化粧材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明はその請求項1記載の発明により、エラストマー層を設けることで、衝撃を受けて凹みが生じても、キャスターなどの動いた跡が変形を起こしても、エラストマーが流動してきて平滑性が回復する効果がある。また、壁面に使えば、壁面に人や什器や車椅子等が衝突しても、衝撃を吸収できるといった効果もある。さらに万が一化粧材が傷付いたりしてもエラストマー層が漏れ出すようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧材の断面の構造を示す。木質系基材1の上に接着剤層2を介してエラストマー層3を設け、熱可塑性樹脂化粧シート4を設けてなる。さらに適宜表面保護層5、透明熱可塑性樹脂層6、U字溝10、V字溝11を設けてもよい。また、図2に示す様に、木質系基材1の下にエラストマー層3を設けても良い。
【0009】
木質系基材1としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。厚みは3〜25mm程度が好適である。
【0010】
接着剤層2に用いる接着剤としては、公知の2液のウレタン変性ビニル樹脂からなる水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤等が使用可能である。また熱可塑性樹脂ホットメルト接着剤も使用可能である。塗布量は、乾燥後の重さが3〜20g/m2程度が接着性の観点から好適である。
【0011】
エラストマー層3に用いるエラストマーとしては、25℃の雰囲気で引張弾性率が106〜107N/m2、破断強度が1×106N/m2以上、伸び100%以上で(JIS K6251−1993)程度となるものであれば特に限定しないが、シリコーンゲル、脂肪族多価アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ヒマシ油系ポリオール等のポリオールと、ポリイソシアネートからなる(環状イソシアネートも使えるが、弾性を出すためには脂肪族ポリイソシアネートがさらに望ましい)ポリウレタンゲル、熱可塑性樹脂からなるゴム弾性樹脂が好適に使用可能である。具体的には、シス−1,4−ポリイソプレン構造を持つ天然ゴムを加硫したり、カーボンブラックを添加したゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム(共重合体)、アクリロノトリル−ブタジンエン(共重合体)、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アイオノマー樹脂(ハイミラン 三井・デュポンポリケミカル(株)製)他硫化ゴムなどの単体やこれらの混合物が使用可能である。また、高伸長率の弾性を示すゲルやスポンジゴム、ウレタンフォームなどの多孔質であって見かけ上の高弾性を有するものも使用可能である。
【0012】
熱可塑性樹脂化粧シート4としては、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などからなる単層あるいは複数の層からなるものが好適に用いられる。特には下層に着色熱可塑性樹脂層を設け、絵柄層を設けてから上面に透明熱可塑性樹脂層6を設ける方法が挙げられる。熱可塑性樹脂化粧シート4の厚みは、耐キャスター性、耐衝撃性、耐傷付き性、ハンドリング性、刃物摩滅度などを考慮すると、50〜200μmが望ましい。図示しないが絵柄層としては、公知の不透明な無機、有機顔料からなる2液のウレタン系樹脂バインダー、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂共重合体等からなるグラビアインキが使用可能である。
【0013】
また、表面保護層5として、すべり性を考慮して公知の紫外線吸収剤、光安定剤、ガラスビーズなどが添加された紫外線硬化型樹脂や2液ウレタン樹脂を塗布量6〜15g/m2塗布しても良い。この場合、耐衝撃性試験、耐キャスター性試験の復元性を考慮にいれておて、表面硬度を調節することが望ましい。
【0014】
また、熱可塑性樹脂化粧シート4に金属ロールなどからなるエンボス版を押し当てて、U字溝10、V字溝11等を施してもよい。凹部の溝部を着色をする場合、凹部着色インキ層は、公知の不透明な無機、有機顔料からなる1液、又は2液のウレタン系樹脂バインダーからなるグラビアインキが使用可能である。
【実施例1】
【0015】
厚さ70μmの着色ポリプロピレンフィルム(リケンテクノス(株)製「リベスターTPO」)の片面に、グラビアインキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)で木目柄をグラビア印刷機により印刷した。その後、印刷を施した面とは逆の面にシリカ粉末を含有する2液ウレタン系プライマー樹脂を乾燥後の厚みが1μmとなるようにグラビア塗工した。
【0016】
前記印刷を施した面上に、アンカー剤としてポリエステルポリオールと硬化剤としてイソホロンジイソシアネートの2液ウレタン樹脂系接着剤を乾燥後の塗布量が1g/m2になるように塗工し、さらにこの上に、ホモポリプロピレン50部、ランダムポリプロピレン50部の混合物に紫外線吸収剤0.5部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5部、熱安定剤0.2部を添加してマレイン酸変成したポリプロピレン系樹脂を乾燥後の厚みが80μmとなるようにし、さらに同時にその上に接着性樹脂を乾燥後の厚みが10μmとなるようにして、オゾンガスを吹き付けながら共押出しラミネートした。以上のようにして熱可塑性樹脂化粧シート4を得た。
【0017】
前記熱可塑性樹脂化粧シート4の共押出ラミネート面上に、乾燥後の厚みが1g/m2となるように2液ウレタン樹脂からなるリコート層を設け、その後、ウレタンアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl4858」)100部とペンタエリスリトールテトラアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「PETA−K」)20部、ベンゾフェノン系光開始剤(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl BZO」)0.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5部、ガラスビーズ2部を添加した紫外線硬化型樹脂を厚さ5μmとなるように塗布し、メタルハライドランプによる紫外線照射により硬化させて表面保護層5を設けた。
【0018】
この表面保護層5を設けた熱可塑性樹脂化粧シート4のグラビア塗工した面に、2液ウレタン樹脂接着剤(東洋モートン(株)製「TM−593」)を乾燥後の塗布量が10g/m2になるように塗工し、この面に、25℃の雰囲気で引張弾性率が2.6×106N/m2、破断強度が50×106N/m2かつ伸び(JIS K6251−1993)が710%のエラストマー(無黄色ポリウレタンエラストマーフィルム、倉敷紡績株式会社製:「U−1202」)により厚み0.1mmのエラストマー層を設け、化粧板基材1として厚み12mm×303mm×1818mmのラワン合板を用い、この表面に接着剤層2として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(BA−10L/BA−11B=100/5」))をウエット状態で100g/m2に塗工したあと、前記高分子ゲル層を設けた面とをラミネータにて張り合わせ、12時間養生後、端部の実加工及び木質系基材まで達する溝加工してV字溝を設けた後、2液ウレタン樹脂着色剤にて目地着色を行い本発明の化粧材を得た。
<比較例1>
実施例1においてエラストマー層3を設けなかった以外は実施例1と同様にして化粧材を作製した。
<性能評価>
耐キャスター性試験として、ポリカーボネート製のダブルキャスター(直径40mm、1輪の幅9mm、2輪間の幅18mm)に25kgの重りで荷重をかけ(約245N)、1万回(1ストローク20cm以上、5千往復)、キャスターを速度20cm/秒で化粧材上で動かした。その後の痕について観察した。
【0019】
耐衝撃性試験として、本来は、塗膜の評価法である、デュポン式落球試験(JIS K5400)に準拠して試験を行った。ただし、評価方法としては、化粧材の凹み量の測定を行った。結果を表1に示す
【0020】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、耐衝撃性、耐キャスター性の求められる化粧材として適用可能であり、特に室内運動スペースや体育館などの壁や床に用いられる化粧材として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の化粧材の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1…基材
2…接着剤層
3…エラストマー層
4…熱可塑性樹脂化粧シート
5…表面保護層
6…透明熱可塑性樹脂層
10…U字溝
11…V字溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材上に熱可塑性樹脂化粧シートを積層してなる化粧材において、前記熱可塑性樹脂化粧シートより下層に、25℃の雰囲気で引張弾性率が106〜107N/m2で破断強度が1×106N/m2以上かつ伸び100%(JIS K6251−1993)以上からなるエラストマー層を厚み0.05〜2mmで設けたことを特徴とする化粧材。




【図1】
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【公開番号】特開2007−30225(P2007−30225A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213278(P2005−213278)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】