説明

医学的障害の治療用のCXCR4拮抗薬

本発明は、CXCR4受容体が介在する増殖状態の治療のための、ケモカインCXCR4受容体の拮抗薬である化合物、医薬組成物およびある種の化合物の使用方法を提供する。その化合物は、受容体に対するSDF1の結合を妨害する。これらの化合物は、転移を阻害することで、過剰増殖疾患の治療または重度軽減において特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に関する相互参照)
本出願は、2005年1月7日出願の米国暫定特許出願第60/642375号および2005年1月7日出願の米国暫定特許出願第60/642374号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、化合物、医薬組成物およびケモカインCXCR4受容体の拮抗薬であるある種の化合物の使用方法を提供する。その化合物は、CXCR4受容体シグナル伝達によって調節される医学的状態を調節する上で有用であり、特には転移を阻害することで過剰増殖性疾患を治療または重度低減する上で有用である。
【背景技術】
【0003】
癌は現在、先進国における第2の主要な死亡原因である。2004年に、米国癌学会が、米国のみで約137万人の新たな症例が診断され、約55万人が癌のために死亡したものと推計している(American Cancer Society, Cancer Facts & Figures 2004;URL: http://www.cancer.org/ docroot/STT/stt_0.aspを参照。)。
【0004】
転移は、遠位臓器への腫瘍細胞の広がりおよび成長であり、癌の最も破壊的な属性である。乳癌などのある種の癌に関連するほとんどの罹患率および死亡率は、原発腫瘍によるよりはむしろ転移細胞によって生じる疾患に関連するものである。現在、転移の治療は、原発癌の早期診断および積極的治療の組み合わせによるものである。
【0005】
遠位部位での転移の確立および成長は、腫瘍細胞と宿主環境との間の相互作用によって決まるものと考えられている。転移はいくつかの順次段階の結果であり、高度に系統化された非ランダムの臓器選択的プロセスを代表するものである。乳癌の転移においては、多くの介在物質が示唆されているが、具体的な臓器への腫瘍細胞の有向性移動および侵襲を決定する正確な機序はまだ確立されていない。転移の基礎となる分子機序および細胞機序についての理解が不完全であることが、この状態を排除または改善すると考えられる有効な治療法の開発の障害となってきた。
【0006】
内皮細胞の抗体もしくは接着分子との接着を調節することで悪性細胞の転移侵襲を低減するために、いくつかの戦略が開発されてきた(例えば、PCT公開第WO97/00956号、米国特許第5993817号;6433149号;6475488号および6358915号参照)。しかしながら、商業的戦略で、転移を予防するための有効な治療を提供したものはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケモカインは、Gタンパク質結合受容体との相互作用を介して、細胞骨格再構成および数種類の細胞の方向性のある移動を誘発する小型サイトカインのスーパーファミリーである(Butcher, et al. (1999) Adv Immunol 72: 209-253;Campbell and Butcher (2000) Curr Opin Immunol 12: 336-341;Zlotnik and Yoshie (2000) Immunity 12: 121-127)。これらの分泌タンパク質は、細胞表面タンパク質と協調的に作用して、各種の下位細胞群のホーミングを特定の解剖学的部位に向ける(Morales, et al. (1999) Proc Natl Acad Sd USA96: 14470-14475;Homey, B., et al. (2000) J Immunol 164: 3465-3470;Peled, et al. (1999) Science 283: 845-848;Forster, et al. (1999) Cell 99: 23-33)。
【0008】
ケモカイン類は、炎症の開始および維持における主要な介在物質であると見なされている。それは、怪我の後の血管新生および再内皮化時の蔵増殖、移動および分化などの内皮細胞機能の調節において重要な役割を果たすことも認められている(Gupta et al. (1998) J Biol Chem, 7:4282-4287)。2つの特異的ケモカインが、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による感染の病因においても示唆されている。
【0009】
ケモカイン受容体であるCXCR4は、T細胞系向性HIVの侵入の主要な補助受容体としてウィルス研究において知られている(Feng, et al. (1996) Science 272: 872-877;Davis, et al. (1997) J Exp Med 186: 1793-1798;Zaitseva, et al. (1997) Nat Med 3: 1369-1375;Sanchez, et al. (1997) J Biol Chem.212: 27529-27531)。T間質細胞由来因子1(SDF−1)は、CXCR4と特異的に相互作用するケモカインである。SDF−1がCXCR4に結合すると、CXCR4は、リンパ球、巨核球および造血幹細胞におけるRas/MAPキナーゼ類およびホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)/Aktなどの下流キナーゼ経路を含むGαタンパク質介在シグナル伝達(百日咳毒素感受性)(Chen, et al. (1998) Mol Pharmacol 53: 177-181)を活性化する(Bleul, et al. (1996) Nature 382: 829-833;Deng, et al. (1997) Nature 388: 296-300;Kijowski, et al. (2001) Stem Cells 19: 453-466;Majka, et al. (2001) Folia. Histochem. Cytobiol. 39: 235-244;Sotsios, et al. (1999) J. Immunol. 163: 5954-5963;Vlahakis, et al. (2002) J. Immunol. 169: 5546-5554)。ヒトリンパ節を移植したマウスでは、SDF−1がCXCR4陽性細胞の移植リンパ節への移動を誘発する(Blades, et al. (2002) J. Immunol. 168: 4308-4317)。これらの結果は、SDF−1とCXCR4の間の相互作用によって、高レベルのSDF−1を有する臓器部位に細胞が向かうことを示唆している。
【0010】
最近、研究により、CXCR4相互作用が転移細胞の移動を調節し得ることが明らかになっている。酸素分圧が低下した状態である低酸素状態は、ほとんどの固形腫瘍で起こる微小環境変化であり、腫瘍血管新生および治療耐性の主要な誘発因子である。低酸素状態は、CXCR4レベルを上昇させる(Staller, et al. (2003) Nature 425: 307-311)。転移活性が高い骨転移モデルからの細胞の下位群に関するマイクロアレイ解析で、転移表現型で増える遺伝子の一つがCXCR4であることが明らかになった。さらに、単離細胞中での過剰発現CXCR4が、転移活性を大きく上昇させた(Kang, et al. (2003) Cancer Cell 3: 537-549)。各種乳癌患者から集めたサンプルにおいて、ムラーら(Muller, et al. (2001) Nature 410: 50-56)は、CXCR4発現レベルが正常な乳腺または上皮細胞と比較して原発腫瘍の方が高いことを認めている。これらの結果は、癌細胞表面でのCXCR4の発現が、その癌細胞を高レベルのSDF−1を発現する部位に向けさせる可能性があることを示唆している。 この仮説に一致して、SDF−1は、リンパ節、肺、肝臓および骨髄などの乳癌転移の最も一般的な到達先で高度に発現される。さらに、CXCR4抗体治療が、全てがリンパ節および肺に転移した対照アイソタイプと比較した場合に、局所リンパ節への転移を阻害することが明らかになっている(Muller, et al., (2001))。
【0011】
癌細胞の移動調節に加えて、CXCR4−SDF−1相互作用は、転移に必要な脈管化を調節し得る。CXCR4/SDF−1相互作用またはCXCR4/SDF−1シグナル伝達経路の主要なG−タンパク質(Gα)のいずれかの遮断によって、VEGF依存性新血管形成が阻害される。これらの結果は、内皮細胞の形態形成および血管新生の調節因子であるVEGFシグナル伝達系をSDF−1/CXCR4が制御することを示している。VEGFおよびMMP類が癌の進行および転移に活発に寄与することを、多くの研究が明らかにしている。
【0012】
いくつかのグループが、転移癌治療のための標的としてのCXCR4を含むケモカイン類を確認している。例えばシェリング社(Schering Corporation)に対するPCT公開第WO01/38352号、プロテイン・デザイン・ラブス社(Protein Design Labs, Inc.)に対するWO04/059285およびブルガー(Burger)に対するWO04/024178に、ケモカイン受容体シグナル伝達を遮断することによる疾患の治療方法および転移の特異的阻害方法が記載されている。
【0013】
CXCR4がT−指向性HIV感染の主要な補助受容体であることから、CXCR4を標的とする化合物が、主としてHIVの治療用に開発されてきた。例えば、久光製薬(Hisamitsu Pharmaceutical Co., Inc.)に対する米国特許第6429308号には、抗HIV薬として用いられるCXCR4タンパク質の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドが開示されている。トーマス・ジェファーソン大学に対するPCT公開第WO01/56591号には、CXCR4シグナル伝達を選択的に防止すると記載されているウィルスマクロファージ炎症タンパク質IIのペプチド断片ならびにHIV−1の侵入に介在する上での補助受容体が記載されている。
【0014】
CXCR4受容体のペプチド拮抗薬が開示されている。タマムラ(Tamamura)ら(Tamamura, et al. (2000) Bioorg. Med. Chem. Lett. 10: 2633-2637;Tamamura, et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. Lett. 11: 1897-1902)は、特異的ペプチド系CXCR4阻害薬であるT140の同定を報告している。T140は、全てのCXCR4の拮抗薬の中で抗HIV活性およびT細胞系向性HIV−1侵入の拮抗作用を有する14残基ペプチドである(Tamamura, et al. (1998) Biochem. Biophys. Res. Commun. 253: 877-882)。その化合物は、例えばT−140のC末端をアミド化し、非塩基性極性アミノ酸で塩基性残基を置換することで、 T140と比較して細胞傷害性が低く、血清中での安定性が高いTN14003を形成することによって総正電荷を減らすことによって、それの効力および生物学的利用能が高まるように変えられた。MT−4細胞でのHIV誘発細胞病原性の50%保護に必要なTN14003の濃度は、0.6nMであり、対照的に410μMでは50%毒性が生じる。エモリー大学(Emory University)に対するPCT公開第WO04/087068号には、CXCR4ペプチド拮抗薬、特にはTN14003ならびに転移を治療するためのそれらの使用方法について記載されている。
【0015】
他のペプチド系拮抗薬も開示されている。例えば、ブリティッシュ・コロンビア大学に対する欧州特許公開第1286684号および第1061944号には、天然SDF−1リガンドから誘導される変性ペプチドCXCR4拮抗薬を用いた、転移を含む疾患の治療方法が含まれている。武田薬品工業に対するPCT公開第WO04/020462号では、乳癌および慢性関節リウマチの治療および予防のためのペプチドCXCR4拮抗薬が提供される。一部において米国保健社会福祉省に対する米国特許出願第2004/0132642号は、ポリペプチドCXCR4阻害薬による腫瘍細胞の転移または成長を阻害する方法を含むものである。
【0016】
進歩があったが、ペプチド阻害薬の吸収、分布、代謝、排泄または毒性特性が不十分であるために、それの臨床使用には制限があった。小型の非ペプチド薬が、この分野での医化学プログラムの主要な目標として残っている。
【0017】
現時点で、金属キレート性サイクラム類およびビサイクラム類が、効果的にCXCR4を遮断するいくつかの報告されている非ペプチド分子の一つを代表するものである(Onuffer and Horuk (2002) Trends Pharmacol Sd 23: 459-467.36)。これらの非ペプチド分子のうちの一つがAMD3100であり、それはCXCR4介在ウィルス侵入を遮断する抗HIV薬として臨床試験に入っている(Donzella, et al. (1998) Nat Med 4: 72-77;Hatse, et al. (2002) FEBS Lett 527: 255-262;Fujii, et al. (2003) Expert Opin Investig Drugs 12: 185-195;Schols, et al. (1997) Antiviral Res 35: 147-156)。
【0018】
【化16】

【0019】
AMD3100がCXCR4を介して調節される乳癌転移を効率的に遮断し得るか否かについては報告がない。より重要な点として、臨床試験によって、AMD3100の心臓関連の副作用が明らかになった(Scozzafava, et al. (2002) J Enzyme Inhib Med Chem 17: 69-7641)。実際に、AMD3100は最近、一部に心臓関連の副作用のために臨床試験が中止となった(Hendrix, et al. (2004) Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes 37(2))。後者は、CXCR4機能を遮断する能力の結果ではなく、それの推定されている構造的金属封入能力によるものである。
【0020】
他の含窒素二環式分子も、CXCR4拮抗薬として開発されてきた。呉羽化学工業に対する欧州特許公開第1431290号およびPCT公開WO02/094261は、癌転移疾患などの各種疾患を治療する上で有用となり得るCXCR4阻害薬に関するものである。
【0021】
ヤマザキ(Yamamazi)らに対する米国特許公開2004/0254221も、CXCR4拮抗薬である癌転移などの各種疾患を治療する化合物およびそれの使用を提供している。その化合物は、下記一般式のものである。
【0022】
【化17】

式中、Aは、A−G−N(R)−であり;Aは、水素または置換されていても良い単環式もしくは多環式ヘテロ芳香環もしくは芳香環であり;Gは、単結合または−C(R)(R)−であり;R、RおよびRは、置換されていても良い炭化水素であることができ;Wは、置換されていても良い炭化水素または複素環であり;xは−C(=O)NH−であり;yは−C(=O)−であり ;Dは、水素原子、多環式芳香環を有するアルキルまたはアミンである。
【0023】
アノルメド(AnorMED)に対するPCT公開WO00/56729および米国特許第6750348号には、ある種の複素環小分子CXCR4結合化合物について記載されており、これらがHIV感染、腫瘍発生、乾癬またはアレルギーの治療に有用であることが述べられている。その化合物は下記一般式のものである。
【0024】
【化18】

式中、Wは、窒素または炭素原子であることができ;Yは非存在であるか水素であり;R〜Rは水素または直鎖、分岐もしくは環状のC1−6アルキルであることができ;Rは、 置換複素環もしくは芳香族基であり;Arは、芳香環またはヘテロ芳香環であり;Xは指定の環構造である。
【0025】
アノルメドに対するPCT公開WO2004/091518にも、CXCR4受容体に結合するある種の置換含窒素化合物が記載されている。その化合物は、前駆細胞および/または幹細胞を増加させ、白血球の生成を促進し、抗ウィルス特性を示す効果を有すると記載されている。アノルメドに対するPCT公開WO2004/093817でも、置換複素環CXCR4拮抗薬が開示されており、それらが炎症状態を改善し、前駆細胞を増加させ、そして白血球数を高める上で有用であると記載されている。同様に、アノルメドに対するPCT公開WO2004/106493には、3つの懸垂基によって囲まれた核窒素原子からなるCXCR4およびCCR5受容体に結合する複素環化合物が記載されており、その場合に3個の懸垂基のうちの2個は好ましくはベンズイミダゾリルメチルおよびテトラヒドロキノリルであり、第3の懸垂基は窒素を有し、別の環を有していても良い。その化合物は、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による標的細胞に対する保護効果を示す。
【0026】
CXCR4受容体が転移シグナル伝達ならびに多くの他の病的状態において示唆されることを考慮すると、新たな効果的受容体拮抗薬を確認することが重要である。
【0027】
従って、本発明の一つの目的は、CXCR4受容体シグナル伝達を阻害する新たな化合物、方法および組成物を提供することにある。
【0028】
本発明の別の目的は、CXCR4受容体に結合し、それの天然リガンドへの結合を妨害する化合物、方法および組成物を提供することにある。
【0029】
本発明のより具体的な目的は、増殖障害の治療、特には癌転移の阻害のための化合物、方法および組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
病原的もしくは望ましくないCXCR4受容体活性および/またはシグナル伝達に関連する疾患の治療もしくは予防のための化合物、方法および医薬組成物が提供される。特に、本明細書で提供される化合物が、CXCR4受容体に対する天然SDF−1リガンドの結合を妨害し、受容体の活性化およびその後の下流シグナル伝達経路を阻害するものと考えられている。この経路に基づいて本発明は、過剰増殖性疾患などの病原性の状態の治療、特にはCXCR4を介して調節される癌転移に関連する細胞移動および分化の低減のための化合物、方法および医薬組成物を提供する。その化合物、方法および組成物は、有効治療量の式(I)〜(XVII)の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを含む。
【0031】
第1の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式Iの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0032】
【化19】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、OH、OR、NH、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。
【0033】
別の実施形態では、前記化合物は下記式を有する。
【0034】
【化20】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、UおよびVは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、OH、OR、NH、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、各RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
は独立に、R、アシル、F、Cl、Br、I、OH、OR、NH、NHR、NO、NR、SO、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、C(O)R、COH、CORから選択され;
n、n′およびn″は独立に、0、1、2、3、4または5であり;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。
【0035】
別の実施形態では、前記化合物は下記式を有する。
【0036】
【化21】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、UおよびVは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、OH、OR、NH、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S′−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、各RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、n、n′およびn″ならびにR、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0037】
第2の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式IIaもしくはIIbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0038】
【化22】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
AおよびBは、独立に−CR=、−CR−、−CR=、−N=、−O−、−NR−、−S−、−CR=CR−、−CR−CR−、−CR=N−、−CR−NR−、−N=CR−および−NR−CR−から選択される1原子および2原子連結部であり;
RおよびR′は上記で定義の通りであり;
−D−E−および−G−J−は独立に、−NR−CR−または−N=C−のいずれかであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。
【0039】
第3の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式IIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0040】
【化23】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
R、R′、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0041】
第4の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式IVaもしくはIVbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0042】
【化24】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
R、R′、R、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBおよび−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0043】
第5の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式Va、VbもしくはVcの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0044】
【化25】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
R、R′、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0045】
第6の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式VIaもしくはVIbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0046】
【化26】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
R、R′、R、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBおよび−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0047】
第7の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式VIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0048】
【化27】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
MはO、SまたはNRである。
【0049】
第8の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式VIIIaもしくはVIIIbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0050】
【化28】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBおよび−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りであり;
Mは、O、SまたはNRである。
【0051】
第9の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式IXの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0052】
【化29】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
は独立に、下記式a〜g:
【0053】
【化30】

からなる群から選択され;
MはO、SまたはNRである。
【0054】
第10の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式Xの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0055】
【化31】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBおよび−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りであり;
は上記で定義の通りであり;
Mは上記で定義の通りである。
【0056】
第11の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式XIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0057】
【化32】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0058】
第12の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式XIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0059】
【化33】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBおよび−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0060】
第13の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式XIIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0061】
【化34】

式中、
K、Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
「スペーサー」は独立に、結合、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、C〜CアルケノキシおよびC〜Cアルキノキシであり、前記アルキル基はヘテロ原子(N、OまたはSなど)によって置換されていても良く、それには−CH−OCH−、−CHCH−OCH−、−CHCH−OCHCH−、−CH−OCHCH−、−CHCH−OCHCHCH−、−CHCHCH−OCH−、−CHCHCH−OCHCH−、−CHCH−OCHCHCH−、−(CH−OH(CH)−(CH−、CH−OH(CH)−O−CH、−(CH−、−(CH−CO−、−(CH−N−、−(CH−O−、−(CH−S−、−(CHO)−、−(OCH)−、−(SCH)−、−(CHS−)、−(アリール−O)−、−(O−アリール)−、−(アルキル−O)−、−(O−アルキル)−などがあるがそれらに限定されるものではなく、nは独立に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0062】
第14の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供され、それには下記式XIVaもしくはXIVbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが含まれる。
【0063】
【化35】

式中、
K、Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
「スペーサー」は上記で定義の通りであり;
「複素環」および「ヘテロ芳香族」は本明細書で定義の通りである。
【0064】
本発明の化合物は、天然リガンドとのCXCR4受容体相互作用を阻害する上で特に有用である。1実施形態では、細胞を式(I)〜(XVII)の化合物と接触させることでCXCR4介在障害を阻害する方法が提供される。上記の化合物は、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防において特に有用である。
【0065】
1実施形態では、悪性細胞の転移の予防方法であって、宿主に対して式(I)〜(XVII)の化合物を投与する段階を有する方法が提供される。その悪性細胞は腫瘍細胞であることができる。ある種の実施形態では、前記化合物を宿主に提供してから、第2の活性化合物で腫瘍を治療することができる。別の実施形態では、癌に関して治療を行ったことがある患者に対して前記化合物を提供して、再発の可能性を低下させるか、特定の腫瘍に関連する死亡率を下げる。式(I)〜(XVII)の化合物は、別の活性化合物と併用して提供することもできる。
【0066】
ある特定の実施形態では、悪性細胞の転移を予防する方法が提供され、それには細胞を式XVの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグと接触させる段階が含まれる。
【0067】
【化36】

【0068】
ある特定の下位実施形態では、前記化合物は式XVの化合物の塩、特には塩化物塩である。
【0069】
別の特定の実施形態では、悪性細胞の転移を予防する方法が提供され、それには細胞を式XVIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグと接触させる段階が含まれる。
【0070】
【化37】

【0071】
別の特定の実施形態では、悪性細胞の転移を予防する方法が提供され、それには細胞を式XVIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグと接触させる段階が含まれる。
【0072】
【化38】

【0073】
別の実施形態では、処置を必要とする宿主に対して式(I)〜(XVII)の化合物を投与することで、転移などのCXCR4が介在する障害を治療する方法が提供される。ある種の実施形態では、前記増殖性障害は癌であり、特定の下位実施形態では、その障害は転移癌である。本発明の化合物を、処置を必要とする宿主に投与することで、転移の発生率を低下させることができる。特定の実施形態では、前記疾患は乳癌、脳腫瘍、膵臓癌、卵巣癌、特には卵巣上皮癌、前立腺癌、腎臓癌または非小細胞肺癌である。ある下位実施形態では、前記化合物は、別の活性化合物と併用投与または交互投与される。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、細胞を本明細書に記載の化合物と接触させることで新血管形成、特にはVEGF依存性新血管形成を低下させる方法を提供する。その細胞は、ヒトなどの宿主動物でのものであることができる。
【0075】
別の実施形態では、式(I)〜(XVII)の化合物のうちの少なくとも一つを含む医薬組成物が提供される。ある種の実施形態では、少なくとも第2の活性化合物が組成物中に含まれる。第2の活性化合物は、特には原発腫瘍に対して活性な化学療法薬であることができる。
【0076】
1実施形態では、式(I)〜(XVII)の化合物を用いて、CXCR4受容体を有する幹細胞および前駆細胞の産生、増殖および単離を刺激する。そのような細胞には、骨髄前駆細胞および/または幹細胞または心臓組織のための前駆細胞などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
別の実施形態では、式(I)〜(XVII)の化合物を宿主に投与する段階を有する、血管系疾患、炎症疾患および変性疾患の治療方法が提供される。
【0078】
別の実施形態では、可能性がある候補薬剤のスクリーニング方法が提供される。その方法は、CXCR4受容体に結合した時に検出可能な信号を有する標識ペプチドに基づくCXCR4拮抗薬を提供する段階;CXCR4受容体を、既知濃度の少なくとも1種類の被験分子と接触させて、試験サンプルを形成する段階;前記試験サンプルをペプチド系拮抗薬と接触させる段階;別個に、前記ペプチド系拮抗薬を被験分子を含まないサンプルに接触させて対照サンプルを形成する段階;前記試験サンプルからのシグナルを前記対照サンプルからのシグナルと比較する段階を有する。ある特定の下位実施形態では、前記ペプチド系拮抗薬は、TN14003から誘導されるものである(エモリー大学に対するPCT公開第WO04/087068号に記載されている)。別の下位実施形態では、前記拮抗薬をビオチン分子で標識し、そのビオチン標識拮抗薬がストレプトアビジン結合シグナル分子と接触した時にシグナルが誘発される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
図面の簡単な説明
図1には、TN14003の特異性を示す染色細胞およびブロットの画像を示してある。A:TN14003のCXCR4への結合が、400ng/mLのSDF−1の前インキュベーションによって遮断された。細胞を、ビオチン標識対照ペプチド(a)またはビオチン標識TN14003(bおよびc)およびストレプトアビジン結合ローダミン(赤)を用いることで免疫染色した。細胞をSDF−1とともに10分間前インキュベートし、次に氷冷アセトン中で固定した(c)。B:ノーザンブロット分析およびウェスタンブロット分析結果は、乳癌細胞系MDA−MB−231およびMDA−MB−435からのCXCR4の異なる発現レベルを示している。両方に対する負荷対照として、β−アクチンを用いた。C:ビオチン化TN14003およびストレプトアビジン結合R−PE(赤色)を用いることによるMDA−MB−231およびMDA−MB−435細胞系からの細胞表面上のCXCR4タンパク質の共焦点顕微鏡写真。核を、サイトックス・ブルー(cytoxblue)によって対比染色した。D:乳癌患者および正常乳房組織のパラフィン包埋組織切片に関するビオチン化TN14003によるCXCR4の代表的免疫蛍光染色。
【0080】
図2は、Aktのリン酸化を示すウェスタンブロットの画像である。100ng/mLのSDF−1とともにMDA−MB−231細胞を30分間インキュベートすることで、Aktのリン酸化を刺激した。この活性化は、用量依存的にTN14003またはAMD3100で遮断された。
【0081】
図3は、染色細胞およびCXCR4siRNAでトランスフェクションされたMDA−MB−231細胞の侵襲を示すブロットの画像を示す図である。A:マトリゲル侵襲アッセイで対照siRNA、siRNA1単独またはsiRNA2単独によってトランスフェクションされたMDA−MB−231細胞の侵襲のH&E染色。対照と比較したsiRNA1+2、siRNA1およびsiRNA2でトランスフェクションされたMDA−MB−231細胞の侵襲性は、それぞれ16%(P<0.0003)、39%(P<0.0014)および51%(P<0.0026)である。B:VEGF、HIF−1およびCD44mRNAレベル。負荷対照としてアクチンを用いた。
【0082】
図4は、細胞および肺の画像、ならびにイン・ビボでの乳癌転移の阻害に対するCXCR4siRNAの効果のグラフを示す図である。A:各群からの一つの代表的なものの肺およびそれのH&E染色の写真である。B:対照群と比較した、siRNA処理群からのヒト細胞のみを認識するプライマーを用いたhHPRTの平均リアルタイムPCR(RT−PCR)。1:群2;2:群2;3:群3;4:群4。C:各処理群のヒトCXCR4平均発現のパーセントは、対照群のものとの比較である。
【0083】
図5は、群1(対照siRNA)および群2(siRNA1+2)における動物のFDG−PETの代表的画像を示す図であり、イン・ビボでの乳癌転移の阻害に対するCXCR4siRNAの効果を示している。A:群1(左3匹のマウス)および群2(右3匹のマウス)からの6匹の代表的なマウスの最大強度投射。B:Aにおける同じ動物からの肺領域からの冠状断面画像。C:Aにおける同じ動物からの肺領域からの体軸横断断面画像。
【0084】
図6はHRE活性のグラフである。そのグラフは、HRE−LucMB−231細胞がCXCR4siRNAまたはHIF−1siRNAのいずれかによって抑制することができる通常酸素状態での中等度に高いHRE活性を有することを示している。HRE活性は、CXCR4siRNAまたはHIF−1siRNAのいずれかによって抑制することもできる低酸素状態で2.5倍上昇する。
【0085】
図7は、レポーターとしてビオチン標識TN14003を用いる薬剤スクリーニング方法を示す細胞の蛍光顕微鏡写真画像である。
【0086】
図8は、染色細胞の蛍光顕微鏡写真画像である。ビオチン標識TN14003を用いて、各種濃度のWZZL811Sとともに前インキュベートした細胞からのCXCR4タンパク質を検出した。結果は、WZZL811SのIC50が1nM未満であることを示している。
【0087】
図9は、WZZL811Sの化学構造の表示である。
【0088】
図10は、細胞におけるマトリゲル侵襲およびAktリン酸化のグラフおよび代表的ブロットである。A:WZZL811Sによるイン・ビトロでのMDA−MB−231のCXCR4/SDF−1介在侵襲の阻害。MDA−MB−231のCXCR4/SDF−1介在侵襲は、2nMのTN14003またはWZZL811Sのいずれかによって遮断された。B:30分間にわたって100ng/mLのSDF−1とともにMDA−MB−231細胞をインキュベーションすることでAktのリン酸化が刺激され、それはWZZL811Sによって用量依存的に遮断された。
【0089】
図11は、MDA−MB−231細胞の骨転移を示すマウスのX線画像である。A:FDG−PET(左、体軸横断;右、冠状)。B:X線マンモグラフィー。脛骨内に腫瘍細胞を注入することで、動物異種移植片を発生させた。
【0090】
図12は、実施例7に記載のマウス動物のFDG−PET画像である。
【0091】
図13は、実施例8に記載の方法に従って行われるHPLC分析のグラフである。
【0092】
図14は、内皮毛細管形成アッセイの画像およびグラフである。A)は、内皮細胞管形成の顕微鏡写真である。B)は、各処置群における管数のグラフである。
【0093】
図15は、指定量のWZZL811S、WZ40またはWZ41Sとともにインキュベーションした後に測定されたp27レベルのグラフである。
【0094】
図16は、指定量のWZ40とともにインキュベートし、SHIVで2、4または5日間感染させた後に測定したp27レベルのグラフである。
【0095】
図17は、全身投与後の指定時点で測定したWZZL811S量のグラフであり、WZZL811SおよびWZ40のイン・ビボでの安定性を示す図である。A)は、強制経口投与によって400mg/kgの化合物を投与した後の指定時点でのWZZL811Sのレベルのグラフである。B)は、400mg/kgの腹腔内注射から15、30、60および90分後のWZ40のレベルのグラフである。
【0096】
CXCR4受容体の効果を調節する化合物、方法および組成物が提供される。これらの化合物を用いて、CXCR4が関与する腫瘍転移またはいずれか他の疾患、特には過剰増殖性疾患を治療することができる。
【0097】
本発明の例示的化合物は、公知のCXCR4拮抗薬であるAMD3100(金属キレート形成性ビシクラム(bicyclam))およびT140(ペプチド拮抗薬)の構造的比較を用いて同定した。CXCR4のロドプシンに基づく相同モデルは、AMD3100は、2つのアスパラギン酸によるCXCR4/SDF−1結合と相互作用することから弱い部分作動薬であるが、ペプチド系CXCR4拮抗薬であるT140(TN14003と同様)は細胞表面に対して近位である疎水性核の細胞外ドメインおよび領域でCXCR4のSDF−1結合部位に強力に結合することを示している。この構造データを用いて、分子フレームワークを通じて複数窒素を有する化合物のライブラリを形成したが、構造的にはAMD3100と異なっていた。これら化合物を、CXCR4へのSDF−1結合に関して、ペプチドリガンドT140と競合する能力についてスクリーニングした。
【0098】
本明細書に記載の化合物は、CXCR4受容体と相互作用し、それの活性化を阻害する能力を有する。例示的化合物は、公知のCXCR4拮抗薬と比較して、CXCR4受容体およびSDF−1依存性シグナル伝達の阻害における生物学的利用能および効力が高い。理論に拘束されるものではないが、これら化合物は、SDF−1−CXCR4相互作用を阻害する能力を有することで転移を阻害し得るものであり、それは細胞標的化を低下させ得るものであり、VEGF依存性の内皮細胞形態形成および血管新生をも低下させ得る。この内皮細胞成長は、腫瘍の転移における重要な事象である。
【0099】
活性化合物ならびにそれの生理的に許容される塩およびプロドラッグ
第1の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式Iの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0100】
【化39】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、OH、OR、NH、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。
【0101】
式Iの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0102】
ゾウら(Zou, et al. (2003) Acta Cryst. E59: online 1312-o1313)は、四座配位子となり得る1,4−ビス−(ピリジン−2−アミノメチル)ベンゼンの合成について記載している。ゾウは、この化合物が金属イオンに対する配位子となり得ると記載している。この文献では、当該化合物を疾患治療、特にはCXCR4を介して調節される癌転移の治療に用いることが可能であるという示唆はない。
【0103】
1下位実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式I−1〜I−10の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0104】
【化40】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0105】
別の下位実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特には癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式I−11〜I−20の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0106】
【化41】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0107】
第2の主たる実施形態では、本発明は、下記式IIaもしくはIIbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0108】
【化42】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
AおよびBは、独立に−CR=、−CR−、−CR=、−N=、−O−、−NR−、−S−、−CR=CR−、−CR−CR−、−CR=N−、−CR−NR−、−N=CR−および−NR−CR−から選択される1原子および2原子連結部であり;
−D−E−および−G−J−は独立に、−NR−CR−または−N=C−のいずれかであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。
【0109】
式IIの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0110】
1下位実施形態では、本発明は下記式II−1〜II−18の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0111】
【化43】


式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
Aおよび−D−E−は上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0112】
別の下位実施形態では、本発明は下記式II−19〜II−30の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0113】
【化44】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
A、B、−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0114】
第3の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特には癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式IIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0115】
【化45】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0116】
式IIIの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0117】
レイエスら(Reyes, et al. (2002) Tetrahedron 58:8573-8579)は、原料のピリジニウムN−アミニド類からのある種のポリアミン類の合成について記載している。これらの化合物に帰する具体的な機能については何ら記載されていない。
【0118】
1下位実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特には癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式III−1〜III−10の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグが提供される。
【0119】
【化46】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0120】
別の下位実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特には癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式III−11〜III−20の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグが提供される。
【0121】
【化47】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0122】
第4の主たる実施形態では、本発明は、下記式IVaもしくはIVbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0123】
【化48】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBおよび−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0124】
式IVaもしくはIVbの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0125】
1下位実施形態では、本発明は下記式IV−1〜IV−12の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0126】
【化49】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
Aおよび−D−E−は上記で定義の通りである。
【0127】
別の下位実施形態では、本発明は下記式IV−13〜IV−20の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0128】
【化50】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
A、B、−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0129】
第5の主たる実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特には癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式Va、VbもしくはVcの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグが提供される。
【0130】
【化51】


式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0131】
式Va〜cの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0132】
1下位実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特には癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式V−1〜V−3の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグが提供される。
【0133】
【化52】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0134】
別の下位実施形態では、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特には癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のために、下記式V−4〜V−9の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグが提供される。
【0135】
【化53】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0136】
第6の主たる実施形態では、本発明は、下記式VIaもしくはVIbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0137】
【化54】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBおよび−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0138】
式VIaもしくはbの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0139】
1下位実施形態では、式VI−1〜VI−6の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0140】
【化55】

式中、
Q、T、U、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
Aおよび−D−E−は上記で定義の通りである。
【0141】
別の下位実施形態では、式VI−7〜VI−10の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0142】
【化56】

式中、
Q、T、U、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBならびに−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0143】
第7の主たる実施形態では、本発明は、下記式VIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0144】
【化57】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
MはO、SまたはNRである。
【0145】
式VIIの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0146】
1下位実施形態では、式VII−1〜VII−10の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0147】
【化58】

式中、
U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
MはO、SもしくはNRである。
【0148】
別の下位実施形態では、式VII−11〜VII−20の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0149】
【化59】

式中、
U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
Mは、O、SまたはNRである。
【0150】
第8の主たる実施形態では、本発明は、下記式VIIIaもしくはVIIIbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0151】
【化60】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBならびに−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りであり;
MはO、SまたはNRである。
【0152】
式VIIIaもしくはVIIIbの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0153】
1下位実施形態では、式VIII−1〜VIII−12の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0154】
【化61】

式中、
M、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
Aおよび−D−E−は上記で定義の通りである。
【0155】
別の下位実施形態では、式VIII−13〜VIII−20の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0156】
【化62】

式中、
M、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
A、B、−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0157】
第9の主たる実施形態では、本発明は、下記式IXの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0158】
【化63】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
は独立に、下記式a〜g:
【0159】
【化64】

からなる群から選択され:
Mは、O、SまたはNRである。
【0160】
1下位実施形態では、式IX−1〜IX−12の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0161】
【化65】

式中、
W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0162】
別の下位実施形態では、式IX−13〜IX−24の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0163】
【化66】

式中、
M、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0164】
さらに別の下位実施形態では、式IX−25〜IX−36の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0165】
【化67】

式中、
M、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0166】
第10の主たる実施形態では、本発明は、下記式Xの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0167】
【化68】

式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBならびに−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りであり;
は上記で定義の通りであり;
Mは上記で定義の通りである。
【0168】
1下位実施形態では、式X−1〜X−14の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0169】
【化69】

式中、
M、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBならびに−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0170】
別の下位実施形態では、式X−15〜X−28の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0171】
【化70】

式中、
M、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBならびに−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0172】
さらに別の下位実施形態では、式X−29〜X−38の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0173】
【化71】

式中、
M、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBならびに−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0174】
第11の主たる実施形態では、本発明は、下記式XIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0175】
【化72】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0176】
式XIの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0177】
1下位実施形態では、式XI−1〜XI−6の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0178】
【化73】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りである。
【0179】
第12の主たる実施形態では、本発明は、下記式XIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0180】
【化74】

式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBおよび−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0181】
式XIIの1下位実施形態では、YおよびZはそれぞれ水素である。あるいは、WおよびXはそれぞれ水素である。さらに別の下位実施形態では、W、X、YおよびZはいずれも水素である。
【0182】
1下位実施形態では、式XII−1〜XII−5の化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグが提供される。
【0183】
【化75】

式中、
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
AおよびBならびに−D−E−および−G−J−は上記で定義の通りである。
【0184】
第13の主たる実施形態では、下記式XIIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグを含む、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供される。
【0185】
【化76】

式中、
K、Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
「スペーサー」は独立に、結合、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、C〜CアルケノキシおよびC〜Cアルキノキシであり、前記アルキル基はヘテロ原子(例えばN、OまたはS)によって置換されていても良く、例としては−CH−OCH−、−CHCH−OCH−、−CHCH−OCHCH−、−CH−OCHCH−、−CHCH−OCHCHCH−、−CHCHCH−OCH−、−CHCHCH−OCHCH−、−CHCH−OCHCHCH−、−(CH−OH(CH)−(CH−、CH−OH(CH)−O−CH、−(CH−、−(CH−CO−、−(CH−N−、−(CH−O−、−(CH−S−、−(CHO)−、−(OCH)−、−(SCH)−、−(CHS−)、−(アリール−O)−、−(O−アリール)−、−(アルキル−O)−、−(O−アルキル)−であり、nは独立に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0186】
第14の主たる実施形態では、下記式XIVaもしくはXIVbの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグを含む、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特にはCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防のための方法、化合物および医薬組成物が提供される。
【0187】
【化77】

式中、
K、Q、T、U、V、W、X、YおよびZは上記で定義の通りであり;
、R、R、R、RおよびRは上記で定義の通りであり;
「スペーサー」は上記で定義の通りであり;
「複素環」および「ヘテロ芳香族」は本明細書で定義の通りである。
【0188】
ある特定の実施形態では、悪性細胞の転移を予防する方法が提供され、それには細胞を下記式XVの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグと接触させる段階が含まれる。
【0189】
【化78】

【0190】
ある特定の下位実施形態では、前記化合物は式XVの化合物の塩、特には塩化物塩である。
【0191】
別の特定の実施形態では、悪性細胞の転移を予防する方法が提供され、それには細胞を下記式XVIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグと接触させる段階が含まれる。
【0192】
【化79】

【0193】
別の特定の実施形態では、悪性細胞の転移を予防する方法が提供され、それには細胞を下記式XVIIの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグと接触させる段階が含まれる。
【0194】
【化80】

【0195】
定義
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、別段の断りがない限り、代表的にはC〜C10の飽和の直鎖、分岐もしくは環状1級、2級もしくは3級炭化水素を指し、具体的にはメチル、トリフルオロメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチルおよび2,3−ジメチルブチルなどがある。その用語は、置換アルキル基を含んでいても良い。アルキル基が置換されていても良い部分は、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、サルフェート、ホスホン酸、ホスフェートまたはホスホネートからなる群から選択され、それらは未保護であっても例えばグリーンらの著作(Greene, et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, Second Edition, 1991;参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のような当業者には公知のように、必要に応じて保護されていても良い。
【0196】
「C〜Cアルキル」、「C〜Cアルケニル」、「C〜Cアルコキシ」、「C〜Cアルケノキシ」、「C〜Cアルキニル」および「C〜Cアルキノキシ」という用語を用いる場合は必ず、これらが独立にその基の各構成員を含むものと見なされ、例えばC〜Cアルキルは直鎖、分岐および適宜に環状のC、C、C、CおよびCアルキル官能基を含み;C〜Cアルケニルは直鎖、分岐および適宜に環状のC、C、CおよびCアルケニル官能基を含み;C〜Cアルコキシは直鎖、分岐および適宜に環状のC、C、C、CおよびCアルコキシ官能基を含み;C〜Cアルケノキシは直鎖、分岐および適宜に環状のC、C、CおよびCアルケノキシ官能基を含み;C〜Cアルキニルは直鎖、分岐および適宜に環状のC、C、C、CおよびCアルキニル官能基を含み;C〜Cアルキノキシは直鎖、分岐および適宜に環状のC、C、CおよびCアルキノキシ官能基を含むことになる。
【0197】
本明細書で使用される低級アルキルという用語は、別段の断りがない限り、C〜C飽和の直鎖、分岐または適切であれば環状(例えば、シクロプロピル)アルキル基を指し、置換型を含んでいても良い。本願において別段で具体的に記載されていない限り、アルキルが好適な部分である場合、低級アルキルが好ましい。同様に、アルキルまたは低級アルキルが好適な部分である場合、未置換アルキルまたは低級アルキルが好ましい。
【0198】
アルキルアミノまたはアリールアミノという用語は、それぞれ1個もしくは2個のアルキルまたはアリール置換基を有するアミノ基を指す。
【0199】
本明細書で使用される「保護(された)」という用語は、別段の定義がない限り、酸素、窒素またはリン原子に付加されて、それのそれ以上の反応を防止したり、他の目的を行う基を指す。非常に多様な酸素および窒素保護基が、有機合成の当業者には公知である。
【0200】
本明細書で使用されるアリールという用語は、別段の断りがない限り、フェニル、ビフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルを指す。その用語は、置換部分および未置換部分の両方を含む。そのアリール基は、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、サルフェート、ホスホン酸、ホスフェートまたはホスホネートからなる群から選択される1以上の部分で置換されていても良く、それらは未保護であるか、例えばグリーンらの著作(Greene, et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, Second Edition, 1991)に記載のような当業者には公知のように、必要に応じて保護されている。
【0201】
アルカリールまたはアルキルアリールという用語は、アリール置換基を有するアルキル基を指す。アラルキルまたはアリールアルキルという用語は、アルキル置換基を有するアリール基を指す。
【0202】
本明細書で使用されるハロという用語は、クロロ、ブロモ、ヨードおよびフルオロを含む。
【0203】
アシルという用語は、エステル基の非カルボニル部分が直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたは低級アルキル、メトキシメチルなどのアルコキシアルキル、ベンジルなどのアラルキル、フェノキシメチルなどのアリールオキシアルキル、ハロゲンで置換されていても良いフェニルなどのアリール、C〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシ、メタンスルホニル等のアルキルまたはアラルキルスルホニルなどのスルホン酸エステル、モノ、ジもしくはトリリン酸エステル、トリチルもしくはモノメトキシトリチル、置換ベンジル、トリアルキルシリル(例:ジメチル−t−ブチルシリル)またはジフェニルメチルシリルから選択されるカルボン酸エステルを指す。エステルにおけるアリール基は、至適にはフェニル基を含む。「低級アシル」という用語は、非カルボニル部分が低級アルキルであるアシル基を指す。
【0204】
「製薬上許容される塩、エステルまたはプロドラッグ」という用語は、本明細書全体を通じて、患者に投与した時に明細書に記載の化合物を与える製薬上許容される形態(エステル、リン酸エステル、エステルの塩または関連する基など)の化合物を説明するのに用いられる。製薬上許容される塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸などの製薬上許容される無機もしくは有機塩基および酸から誘導されるものなどがある。好適な塩には、当業界で公知の多くの他の酸の中で、カリウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属から誘導されるものなどがある。
【0205】
製薬上許容される「プロドラッグ」は、宿主において、代謝、例えば加水分解または酸化されて本発明の化合物を形成する化合物を指す。プロドラッグの代表的例には、活性化合物の官能性部分に生体で不安定な保護基を有する化合物などがある。プロドラッグには、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱水、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、ホスホリル化、脱ホスホリル化して、活性化合物を形成することができる化合物などがある。
【0206】
「複素環」という用語は、部分飽和(少なくとも1個の二重結合を有する)もしくは完全飽和していても良く、環中に酸素、硫黄、窒素もしくはリンなどの少なくとも1個のヘテロ原子がある非芳香族環状基を指す。本明細書で使用されるヘテロアリールまたはヘテロ芳香族という用語は、芳香族環中に少なくとも1個の硫黄、酸素、窒素またはリンを含む芳香族を指す。複素環およびヘテロ芳香族の例には、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、ピペラジニル、ピペリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロピラニル、イミダゾリル、ピロリニル、ピラゾリニル、インドリニル、ジオキソラニルもしくは1,4−ジオキサニル.アジリジニル、フリル、フラニル、ピリジル、ピリミジニル、ベンゾオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,3,4−チアジアゾール、インダゾリル、1,3,5−トリアジニル、チエニル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、プリン、カルバゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、キサンチニル、ハイポキサンチニル、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、チアジン、ピリダジン、ベンゾチオフェニル、イソピロール、チオフェン、ピラジンまたはプテリジニルがあり(それらに限定されるものではない)、その場合に前記ヘテロアリールまたは複素環基は、ハロゲン、ハロアルキル、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシル誘導体、アミド、ヒドロキシル、アシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、サルフェート、ホスホン酸、ホスフェートまたはホスホネートからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていても良く、それらは未保護であっても例えばグリーンらの著作(Greene, et al., ″Protective Groups in Organic Synthesis″, John Wiley and Sons, Second Edition, 1991;参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のような当業者には公知のように、必要に応じて保護されている。
【0207】
ヘテロアリール基上の官能性酸素および窒素基は、必要または所望に応じて保護することができる。好適な保護基は当業者には公知であり、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリル、トリチルもしくは置換トリチル、アルキル基、アセチルおよびプロピオニルなどのアシル基、メタンスルホニルおよびp−トルエンスルホニルなどがある。
【0208】
プリンまたはピリミジンという用語は、アデニン、N−アルキルプリン類、N−アシルプリン類(アシルはC(O)(アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル)である)、N−ベンジルプリン、N−ハロプリン、N−ビニルプリン、N−アセチレン系プリン、N−アシルプリン、N−ヒドロキシアルキルプリン、N−チオアルキルプリン、N−アルキルプリン類、N−アルキル−6−チオプリン類、チミン、シトシン、5−フルオロシトシン、5−メチルシトシン、6−アザシトシンなどの6−アザピリミジン、2−および/または4−メルカプトピリミジン、ウラシル、5−フルオロウラシルなどの5−ハロウラシル、C−アルキルピリミジン類、C−ベンジルピリミジン類、C−ハロピリミジン類、C−ビニルピリミジン、C−アセチレン系ピリミジン、C−アシルピリミジン、C−ヒドロキシアルキルプリン、C−アミドピリミジン、C−シアノピリミジン、C−ニトロピリミジン、C−アミノピリミジン、N−アルキルプリン類、N−アルキル−6−チオプリン類、5−アザシチジニル、5−アザウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロピリジニル、ピロロピリミジニルおよびピラゾロピリミジニルを含むが、これらに限定されるものではない。プリン塩基には、グアニン、アデニン、ヒポキサンチン、2,6−ジアミノプリンおよび6−クロロプリンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0209】
活性化合物の製造方法
一般的方法
H NMRまたは13C NMRスペクトラムは、400MHzもしくは100MHz INOVAスペクトル装置または600MHzもしくは150MHz INOVAスペクトル装置のいずれかで記録した。得られたスペクトラムは、残留溶媒ピークを基準としたものである。それは、重クロロホルム、ジメチルスルホキシド−d、重水またはアセトン−d中で記録した。融点は、トーマス・フーバー(Thomas Hoover)キャピラリー融点装置で得たもので、未補正である。低分解能EI質量スペクトラムは、JEOLスペクトル装置で記録した。元素分析は、アトランティック・ミルコラブ(Atlantic Mircolab, Norcross, GA)が行った。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、サイエンティフィック・アブソルベント社(Scientific Absorbent Incorporated)シリカゲル60を用いて行った。分析薄層クロマトグラフィー(TLC)は、サイエンティフィック・アブソルベンツ社(Scientific Absorbents Incorporated)からのプレコートガラス裏材プレート(シリカゲル60F254)で行った。プレートは、紫外線またはヨウ素蒸気またはリンモリブデン酸(PMA)を用いて肉眼観察できるようにした。
【0210】
6種類の異なる方法を用いて本発明の化合物を製造し、特性決定データを表1に挙げた。
【0211】
方法A:アミン類とシアナミド類の間の求核付加
この方法は、文献法(Braun, et al. (1938) J. Am. Chem. Soc. 3: 146-149)の変法に従って行う。1.0当量のジアミン・ジヒドロハライドおよび3.0当量のシアナミドの純粋エタノール溶液を一緒に、還流下に1時間攪拌した。溶媒を減圧下に除去して粗塩を得て、それをメタノールでの再結晶によって精製した。
【0212】
【化81】

【0213】
方法B:アミン類とメチルメルカプト誘導体の間の付加−脱離
この方法は、文献法とほぼ同様である(Linton, et al. (2001) J. Org. Chem. 66(22): 7313-7319)。1.0当量のジアミンおよび2.0当量のメチルメルカプト・ヒドロハライド誘導体をメタノールに溶かした。頂部にNaOHトラップを取り付けた冷却管を装着した。1時間還流後、溶液を減圧下に減量して最小量とした。エチルエーテルを加えて白色沈殿を得た。これを熱メタノール中で再結晶して、純粋生成物を得た。
【0214】
【化82】

【0215】
方法C:アルデヒド/ケトンとアミノグアニジンの間の縮合によるグアニルヒドロゾン誘導体の取得
この方法は、文献法からの変法である(Murdock, et al. (1982) J. Med. Chem. 25:505-518)。1.0当量のジアルデヒド/ケトンおよび2.0当量のアミノグアニジン・ヒドロハライドのエタノール中混合物を、還流下に1時間加熱した。混合物を冷却して室温とし、濾過して、グアニルヒドロゾン・ヒドロハライドを得た。
【0216】
【化83】

【0217】
方法D:アルデヒド/ケトンとアミンの間の還元的アミノ化(Abdel-Magid, et al. (1996) J. Org. Chem. 61:3849-3862)
1.0当量のジアルデヒドまたはケトンおよび2.0当量のアミンを1,2−ジクロロエタン中で混合し、で処理し3.0当量の水素化ホウ素トリアセトキシナトリウム(ケトンの反応では1.0〜2.0mol当量の酢酸を加えることもできる)。TLCプレートでの反応物の消失まで、混合物をアルゴンまたは窒素下に室温で1時間攪拌した。1N NaOHを加えることで反応混合物を反応停止し、生成物をエチルエーテルによって抽出し、ブラインによって洗浄し、無水MgSOによって脱水した。溶媒を留去して粗遊離塩基を得て、それはクロマトグラフィーによって精製することができた。得られた遊離塩基をエタノール性塩酸塩または酒石酸に溶かして塩を得て、それは通常、MeOH/EtOから再結晶することができる。
【0218】
【化84】

【0219】
方法E:アミドの還元(Micovic and Mihailovic (1953) J. Org. Chem. 18:1190)
アミドは、相当するカルボン酸またはカルボン酸クロライドから製造することができた。カルボン酸および塩化チオニルの混合物を、頂部にNaOHトラップを取り付けた冷却管を装着した無水系で1時間還流した。過剰の塩化チオニルを減圧下に除去して、カルボン酸クロライドを得た。そのカルボン酸クロライドを、2.0当量のアミンおよび3当量のピリジンを加えた後に塩化メチレンに溶かした。TLCプレートで反応物が消失するまで、混合物を室温で攪拌した。溶媒を減圧下に除去して粗アミドを得て、それをクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0220】
1当量のアミドおよび1.9当量のLiAlHのTHF中混合物を、TLCプレートからアミドが消失するまで還流させた。次に、文献5に記載の方法に従って水および15%NaOH水溶液を加えることで、溶液を反応停止し、エチルエーテルで抽出し、MgSOで脱水した。溶媒の除去によって遊離アミン生成物を得て、それはクロマトグラフィーによって精製することができる。遊離塩基をエタノール性塩酸塩または酒石酸に溶かして塩を得て、それは通常MeOH/EtOから再結晶することができる。
【0221】
【化85】

【0222】
方法F:アミンによるハライドの求核置換
1.0当量のハライド、2.0当量のアミンおよび3当量のピリジンのエタノール中混合物を、反応物が消失するまで1時間還流させた。溶液を濃縮し、エチルエーテルで抽出し、ブラインで洗浄し、MgSOで脱水した。溶媒除去によって遊離アミン生成物を得て、それはクロマトグラフィーによって精製することができる。遊離塩基をエタノール性塩酸塩または酒石酸に溶かして塩を得て、それは通常MeOH/EtOから再結晶することができる。
【0223】
【化86】

【0224】
【表1】










【0225】
製造し、細胞アッセイで調べてウィルス阻害を求めた別の化合物
【0226】
【表2】


【0227】
製剤
化合物が無毒性の酸塩もしくは塩基塩を形成する上で十分に塩基性または酸性である場合、製薬上許容される塩としての化合物の投与が適切である場合がある。製薬上許容される塩の例としては、生理的に許容されるアニオンを形成する酸と形成された有機酸付加塩があり、例えばトシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩およびα−グリセロリン酸塩がある。好適な無機塩も形成可能であり、それには硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩および炭酸塩などがある。
【0228】
製薬上許容される塩は、当業界で公知の標準的な手順を用いて、例えば生理的に許容されるアニオンを与える好適な酸とアミンなどの十分に塩基性の化合物を反応させることで得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)塩またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩も製造することができる。
【0229】
活性化合物は、イン・ビボで生理活性に変換されるプロドラッグとして提供することもできる。プロドラッグは、酵素プロセスおよび代謝的加水分解などの各種機序によって親薬剤に変換することができる(Harper, NJ. (1962) in Jucker, ed. Progress in Drug Research, 4:221-294;Morozowich et al. (1977) in E. B. Roche ed. Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs, APhA (Acad. Pharm. Sci.);E. B. Roche, ed. (1977) Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design, Theory and Application, APhA;H. Bundgaard, ed. (1985) Design of Prodrugs, Elsevier;Wang et al. (1999) Curr. Pharm. Design. 5(4):265-287;Pauletti et al. (1997) Adv. Drug. Delivery Rev. 27:235-256;Mizen et al. (1998) Pharm. Biotech. 11:345-365;Gaignault et al. (1996) Pract. Med. Chem. 671-696;M. Asghamejad (2000) in G. L. Amidon, P. I. Lee and E. M. Topp, Eds., Transport Proc. Pharm. Sys., Marcell Dekker, p. 185-218;Balant et al. (1990) Eur. J. Drug Metab. Pharniacokinct., 15(2): 143-53;Balimane and Sinko (1999) Adv. Drug Deliv.Rev., 39(1-3): 183-209;Browne (1997). Clin. Neuropharm. 20(1): 1-12;Bundgaard (1979) Arch. Pharm. Chemi. 86(1): 1-39;H. Bundgaard, ed. (1985) Design of Prodrugs, New York: Elsevier;Fleisher et al. (1996) Adv. Drug Delivery Rev, 19(2): 115-130;Fleisher et al. (1985) Methods Enzymol. 112: 360-81; Farquhar D, et al. (1983) J. Pharm. Set, 72(3): 324- 325;Han, H.K. et al. (2000) AAPS Pharm Sci, 2(1): E6;Sadzuka Y. (2000) Curr. Drug Metab., 1:31-48;D.M. Lambert (2000) Eur. J. Pharm. Set, 11 Suppl 2:S1 5-27;Wang, W. et al. (1999) Curr. Pharm. Des., 5(4):265)。
【0230】
活性化合物は、脂質プロドラッグとして提供することもできる。化合物に共有結合的に組み込むことができるか、親油性製剤で組み込むことができる好適な親油性置換基を開示している米国特許の例としては、米国特許第5149794号(ヤトビン(Yatvin)ら、1992年9月22日);5194654号(ホステトラー(Hostetler)ら、1993年3月16日)、5223263号(ホステトラーら、1993年6月19日);5256641号(ヤトビンら、1993年10月26日);5411947号(ホステトラーら、1995年5月2日);5463092号(ホステトラーら、1995年10月31日);5543389号(ヤトビンら、1996年8月6日);5543390号(ヤトビンら、1996年8月6日);5543391号(ヤトビンら、1996年8月6日);および5554728号(バサバ(Basava)ら、1996年9月10日)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0231】
治療方法
本明細書に記載の化合物は、CXCR4受容体の結合または活性化に関連する障害特にCXCR4を介して調節される癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防に特に有用である。
【0232】
1実施形態では、悪性細胞の転移を予防する方法が提供され、それには宿主に対して式(I)〜(XVII)のうちの少なくとも一つを投与する段階がある。悪性細胞は腫瘍細胞であることができる。ある種の実施形態では、当該化合物を宿主に与えてから、腫瘍の治療を行う。別の実施形態では、当該化合物を、癌治療を受けたことがある患者に与えて、再発の可能性を低くしたり、特定の腫瘍に関連する死亡率を低下させる。別の実施形態では、当該化合物を、増殖性疾患を患うリスクの高い宿主に投与する。そのような高リスクは、例えば家族歴または既知もしくは推定発癌物質に対する曝露歴に基づいたものであることができる。
【0233】
増殖性障害を患っているかそれのリスクがあるヒトなどの宿主は、製薬上許容される担体または希釈剤の存在下に有効量の活性化合物またはそれの製薬上許容されるプロドラッグもしくは塩を投与することで治療することができる。投与は、CXCR4受容体活性化に関連する障害、特には癌転移を含む増殖性傷害の予防のために予防的であることができる。活性材料は、液体もしくは固体形で、いずれか適切な経路によって、例えば経口投与、非経口投与、静脈投与、皮内投与、皮下投与または局所投与することができる。しかしながら、当該化合物は、経口投与に特に適している。
【0234】
化合物の好ましい用量は、約1〜50mg/kg/日、好ましくは1〜20mg/kg/日、より一般的には0.1〜約100mg/kg(被投与者体重)/日の範囲である。製薬上許容される塩およびプロドラッグの有効用量範囲は、送達される親化合物の重量に基づいて計算することができる。塩、エステルまたはプロドラッグ自体が活性を示す場合、有効用量は、その塩、エステルまたはプロドラッグの重量を用いて、または当業者に公知の他の手段によって推算することができる。
【0235】
ある特定の実施形態では、悪性細胞の転移の予防方法が提供され、それには細胞を下記式XVの化合物またはそれの製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグと接触させる段階がある。
【0236】
【化87】

【0237】
ある特定の下位実施形態では、その化合物は式XVの化合物の塩、特には塩化物塩である。
【0238】
別の実施形態では、処置を必要とする宿主に対して式(I)〜(XVII)の化合物を投与することで増殖性障害を治療する方法が提供される。ある種の実施形態では、前記増殖性障害は転移癌である。本発明の化合物を処置を必要とする宿主に投与することで、癌などの増殖性障害の転移の発生率を低下させることができる。特定の実施形態では、前記の癌は乳癌、脳腫瘍、膵臓癌、卵巣腫瘍、特には卵巣上皮腫瘍、前立腺癌、腎臓癌または非小細胞肺癌である。
【0239】
別の実施形態では、本発明は、細胞を式(I)〜(XVII)の化合物と接触させることで、新血管形成、特にはVEGF依存性新血管形成を低減される方法を提供する。その細胞は宿主動物でのものであることができる。
【0240】
別の実施形態では、式(I)〜(XVII)の化合物を投与する段階を含む血管系疾患、炎症疾患および変性疾患の治療方法が提供される。1実施形態では、式(I)〜(XVII)の化合物を用いて、幹細胞および前駆細胞の産生および増殖を刺激する。
【0241】
当該化合物は、CXCR4活性に関連する疾患、特には宿主における増殖性疾患を予防または重度低下させることができる。しかしながら代表的には、宿主は哺乳動物であり、より代表的にはヒトである。ある種の実施形態では、宿主は過剰増殖性障害と診断されており、それから化合物を投与するが、他の実施形態では、宿主は単にそのような障害を患うリスクがあると見なされるものである。
【0242】
医薬組成物
ある実施形態では、式(I)〜(XVII)の化合物のうちの少なくとも一つを含む医薬組成物が提供される。ある種の実施形態では、少なくとも第2の活性化合物が組成物に含まれる。その第2の活性化合物は、化学療法薬、特には原発腫瘍に対して活性な薬剤であることができる。
【0243】
有効量の活性化合物の医薬組成物を投与することで、増殖性障害を患っているかそれのリスクがある宿主を治療することができる。
【0244】
その化合物は簡便には、単位製剤当たり7〜3000mg、好ましくは70〜1400mgの有効成分を含むものなど(それに限定されるものではない)のいずれか好適な単位製剤で投与される。50〜1000mgの経口用量が通常は簡便である。理想的には、有効成分を投与して、活性化合物のピーク血漿濃度を約1μM〜100mMまたは0.2〜700μMまたは約1.0〜10μMとするべきである。
【0245】
薬剤組成物中の活性化合物の濃度は、その薬剤の吸収速度、失活速度および排泄速度ならびに当業者には公知の他の要素によって決まる。留意すべき点として、用量値は改善すべき状態の重度によって変動する。さらに理解すべき点として、特定の被験者において、具体的な投与法は個々のニーズおよび組成物を投与または投与管理する者の専門的判断に応じて時間経過に伴って調節すべきであり、本明細書に記載の濃度範囲は例示のみであり、特許請求の組成物の範囲や実務を限定するものではない。有効成分は、1回で投与することができるか、時間間隔を変動させて相対的に少ない用量を多数回に分けて投与することができる。
【0246】
活性化合物の好ましい投与形態は経口投与である。経口組成物は通常、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入することができるか、打錠して錠剤とすることができる。経口治療投与に関して、活性化合物は賦形剤と組み合わせることができるか、錠剤、トローチもしくはカプセルの形態で用いることができる。製薬上適合性の結合剤および/または補助材料を、組成物の一部として含めることができる。
【0247】
錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、下記の成分または同様の性質の化合物のいずれかを含むことができる。すなわち、微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたは乳糖などの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)またはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテスなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;ショ糖またはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバーなどの香味剤である。単位製剤がカプセルである場合、それは上記の種類の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含むことができる。さらに単位製剤は、その単位製剤の物理的形状を変える各種他の材料、例えば糖、シェラックその他の腸溶剤のコーティングを含むことができる。
【0248】
当該化合物は、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハ、チューインガムなどの成分として投与することができる。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてのショ糖ならびにある種の保存剤、色素および着色料および香味剤を含むことができる。
【0249】
当該化合物またはそれの製薬上許容されるプロドラッグまたは塩は、所望の作用を妨害しない他の活性材料または抗生物質、抗真菌剤、抗炎症剤または抗ウィルス化合物などの所望の作用を補う材料もしくは別の化学療法剤と混合することができる。非経口投与、皮内投与、皮下投与または局所投与に用いられる液剤または懸濁液は、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコールその他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン類などの抗細菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩などの緩衝剤ならびに塩化ナトリウムもしくはブドウ糖などの等張性の調節のための薬剤などの成分を含むことができる。非経口製剤は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多用量バイアル中に封入することができる。
【0250】
好ましい実施形態では、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化投与系のような徐放製剤などの身体からの急速の排出に対して化合物を保護する担体とともに製剤される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類およびポリ乳酸などの生体分解性で生体適合性のポリマーを用いることができる。そのような製剤の製造方法は、当業者には明らかであろう。それらの材料は、アルザ社(Alza Corporation)から市販もされている。静脈投与する場合、好ましい担体は生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0251】
リポソーム懸濁液(ウィルス抗原に対するモノクローナル抗体を含む感染細胞を標的としたリポソームなど)も、製薬上許容される担体として好ましい。これらは、例えば米国特許第4522811号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているような、当業者には公知の方法に従って製造することができる。例えば、リポソーム製剤は、適切な脂質(ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルホスファチジルコリンおよびコレステロールなど)を無機溶媒に溶かし、次にそれを溶媒留去して、容器表面に乾燥脂質の薄層を残すことで製造することができる。次に、活性化合物またはそれのモノリン酸、ジリン酸および/またはトリリン酸誘導体の水溶液を容器に導入する。次に容器を手で渦回転させて、容器側面から脂質材料を遊離させ、脂質凝集物を分散させることで、リポソーム懸濁液を形成する。
【0252】
併用療法および交互療法
1実施形態では、本明細書に記載の化合物は、別の活性化合物と併用投与または交互投与される。
【0253】
1実施形態では、活性化合物は化学療法薬として用いられる化合物である。併用投与または交互投与される化合物は、例えば下記のリストから選択することができる。
【0254】
【表3】




【0255】
1実施形態では、本発明の化合物は別の活性薬剤と併用投与される。その化合物は、他の活性薬剤と同時に投与することもできる。この場合、その化合物は、同じ製剤または別個の製剤で投与することができる。それら化合物を同じように投与する必要はない。例えば、第2の活性薬剤は静脈注射によって投与することができ、本発明の経口投与することができる。別の実施形態では本発明の化合物は、少なくとも1種類の他の活性化合物と交互に投与される。別の実施形態では、本発明の化合物は、例えば上記の薬剤などの化学療法薬による治療中に投与され、他の活性化合物の投与終了後も本発明の化合物の投与は続ける。その化合物は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4、6、7、8、9、10、11、12ヶ月またはそれ以上投与して、転移の発生率を低下させることができる。
【0256】
本発明の化合物は別の活性化合物投与が終わる前または終わった後に投与することができる。ある種の例では、当該化合物は、例えば原発腫瘍の一連の治療開始前に投与することができる。別の実施形態では、当該化合物は、一連の化学療法後に投与して、転移腫瘍の再発を低減することができる。
【0257】
疾患
本明細書に記載の化合物は、CXCR4受容体の結合もしくは活性化に関連する障害、特には癌転移などの増殖性障害の治療もしくは予防に特に有用である。しかしながら、多くの他の疾患が、CXCR4受容体シグナル伝達に関連していた。さらに、その化合物を用いて、異常細胞増殖の障害を治療することができ、その例としては、下記で挙げる各種の癌および増殖性障害などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0258】
異常細胞増殖、特には過剰増殖は、遺伝子突然変異、感染、毒物への曝露、自己免疫障害および良性もしくは悪性腫瘍誘発などの非常に多様な因子の結果として起こり得る。
【0259】
細胞過剰増殖に関連する皮膚障害が多くある。例えば乾癬は、肥厚鱗屑によって覆われたプラークを特徴とするヒト皮膚の良性疾患である。その疾患は、原因が未知の表皮細胞の増殖亢進によって引き起こされる。正常な皮膚では、細胞が基底層から上層の顆粒層に移動するのに要する時間は約5週間である。乾癬では、この時間はわずか6〜9日であり、それは一部には、増殖細胞数の増加および分裂する細胞の割合の増加によるものである(G. Grove, Int. J. Dermatol. 18:111, 1979)。慢性湿疹も、表皮の大幅な過剰増殖に関連している。皮膚細胞の過剰増殖が原因である他の疾患には、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、疣、尋常性天疱瘡、光線性角化症、基底細胞癌および扁平細胞癌などがある。
【0260】
他の増殖細胞障害には、血管増殖障害、線維障害、自己免疫障害、移植片対宿主拒絶、腫瘍および癌などがある。
【0261】
血管増殖性障害には、血管新生障害および血管性障害などがある。血管組織におけるプラーク発達の途中における平滑筋細胞の増殖によって、例えば再狭窄、網膜症およびアテローム性動脈硬化が生じる。アテローム性動脈硬化の進行病変は、動脈壁の内皮および平滑筋に対する損傷への過剰の炎症−増殖応答から生じるものである(Ross, R. Nature, 1993, 362:801-809)。細胞移動および細胞増殖の両方が、アテローム性動脈硬化病変の形成において役割を果たす。
【0262】
線維障害は多くの場合、細胞外基質の異常形成によるものである。線維障害の例には、肝硬変およびメサンギウム増殖細胞障害などがある。肝硬変は、細胞外基質構成成分の増加による肝臓瘢痕形成を特徴とする。肝硬変は、肝臓の硬変などの疾患の原因となり得る。肝臓瘢痕を生じる細胞外基質増加は、肝炎などのウィルス感染によっても生じ得る。脂肪細胞は、肝硬変において主要な役割を果たすように思われる。
【0263】
メサンギウム障害は、メサンギウム細胞の異常増殖によって生じる。メサンギウム過剰増殖細胞障害には、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症症候群、移植片拒絶反応および糸球体症等の各種のヒト腎臓疾患などがある。
【0264】
増殖性要素を有する別の疾患は関節リウマチである。関節リウマチは一般に、自己反応性T細胞の活性に関連し(例えば、Harris, E. D., Jr.(1990) The New England Journal of Medicine, 322:1277-1289)、コラーゲンおよびIgEに対して産生される自己抗体によって引き起こされると思われる自己免疫疾患と考えられている。
【0265】
異常細胞増殖要素を含み得る他の障害には、ベーチェット症候群、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、虚血性心疾患、透析後症候群、白血病、後天性免疫不全症候群、脈管炎、脂質性組織球増殖症、敗血症ショックおよび炎症全般などがある。
【0266】
治療される原発腫瘍であることができるか、転移が阻害もしくは低減される部位であることができる増殖障害の例には、結腸、腹部、骨、乳房、消化系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼球、頭部および頸部、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸郭および尿生殖路にある新生物などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0267】
具体的な種類の疾患には、小児急性リンパ芽球性白血病;急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発)肝細胞癌、成人(原発)肝臓癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発肝臓癌、成人軟組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨肉腫、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳癌、腎盂および尿管の癌、中枢神経系(原発)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫、子宮頸癌、小児(原発)肝細胞癌、小児(原発)肝臓癌、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹グリオーマ、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部および視覚伝導路グリオーマ、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽細胞腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体部およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、小児原発性肝癌、小児横紋筋肉腫、小児軟組織肉腫、小児視覚伝導路および視床下部膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、膵臓内分泌腺島細胞癌、子宮体癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連する腫瘍、外分泌膵臓癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管癌、眼癌、女性乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管腫瘍、胚細胞腫瘍、懐胎絨毛性腫瘍、有毛状細胞性白血病、頭部および頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内メラノーマ、島細胞癌、島細胞膵臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇癌および口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖症候群、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、メラノーマ、中皮腫、転移潜伏原発性頸部扁平上皮癌、転移原発性頸部扁平上皮癌、転移頸部扁平上皮癌、多発性硬化症、多発性骨髄腫/形質細胞腫、脊髄形成異常症候群、骨髄性白血病、骨髄球性白血病、骨髄増殖症候群、鼻腔癌および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、妊娠時非ホジキンリンパ腫、非メラノーマ皮膚癌、非小細胞肺癌、潜伏原発性転移性頸部扁平上皮癌、口腔咽頭癌、骨肉腫/悪性線維性肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、類タンパク血症、紫斑、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂および尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、頸部扁平上皮癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉腫瘍および松果体部腫瘍、T細胞リンパ腫、睾丸癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行上皮癌、移行性腎盂および尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管および腎盂細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚伝導路および視床下部膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍ならびに上記で挙げた臓器系にある他の過剰増殖性疾患などがある。
【0268】
過形成障害には、縦隔リンパ節過形成、好酸球増多随伴性血管類リンパ組織増殖症、異型メラニン細胞過形成、基底細胞過形成、良性巨大リンパ節過形成、セメント質過形成、先天性副腎過形成、先天性脂肪過形成,嚢胞性過形成、乳房の嚢胞性過形成、義歯過形成、腺管過形成、子宮内膜過形成、線維筋過形成、限局性上皮過形成、歯肉過形成、炎症性線維性過形成、炎症性乳頭状過形成、血管内乳頭状内皮過形成、前立腺の結節性過形成、結節性再生性過形成、偽上皮腫性過形成、老人性脂腺過形成および疣贅性肥厚;白血病(急性白血病(例:急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病および赤白血病など))および慢性白血病(例:慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)など)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例:ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病ならびに線維肉腫、粘液肉腫、フィポ肉腫(fiposarcoma)、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎臓細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫などの肉腫および癌など(これらに限定されるものではない)の固形腫瘍などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0269】
別の実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1種類の化合物を投与する段階を有する加齢性黄斑変性(ARMD)および黄斑網膜色素上皮(RPE)細胞が関与する他の病的状態の治療、予防または重度低減方法が提供される。
【0270】
CXCR4は、加齢性黄斑変性(ARMD)などの網膜が関与する眼球疾患において非常に重要な役割を果たす。網膜色素上皮は、光受容体層に必須の栄養素に関する輸送および貯蔵系の提供における光受容体外節の生理的再生で主要な役割を有する。網膜色素上皮(RPE)細胞は、CXCR4受容体を主に発現する(Crane, et al. (2000) J. Immunol.165: 4372-4278)。血液−網膜関門からのヒト網膜色素上皮細胞でのCXCR4受容体発現により、間質細胞由来因子Iaに対する応答でケモカインの分泌および移動が生じる(J. Immunol.. 200; 165: 4372-4278)。CXCR4 mRNA発現のレベルは、IL−1βまたはTNFαによる刺激で上昇する(Dwinell, et al. (1999) Gastroenterology. 117: 359-367)。RPE細胞もSDF−1αに応答して移動し、それはSDF−1α/CXCR4相互作用が血液−網膜障壁のRPE部位での慢性炎症および網膜下新血管形成の影響を調節し得ることを示している(Crane IJ, Wallace CA, McKillop-Smith S, Forrester JV. CXCR4 receptor expression on human retinal pigment epithelial cells from the blood-retina barrier leads to chemokine secretion and migration in response to stromal cell-derived factor Ia: J. Immunol. 200; 165: 4372-4278)。
【0271】
加齢性黄斑変性は、黄斑RPE細胞の一次および二次の両方の損傷を特徴とする。ARMDの早期の段階は、黄斑ドルーゼならびにRPEの不規則な増殖および萎縮を特徴とする。ARMDの後期段階は、地図状RPE萎縮、RPE剥離および破裂、脈絡膜血管新生および線維血管性円板状瘢痕化を生じる。共通する第1の症状には、読書不能および顔検出困難を生じる変視症および/または中心視力低下などがある。ARMDの後期段階によって中心視力低下が生じ、それが両眼に起こると極端に見えなくなる(Bressler and Bressler (1995) Ophthalmology. 1995; 102: 1206-1211)。
【0272】
別の実施形態では、本明細書に記載の少なくとも一つの化合物を投与する段階を有する、炎症疾患状態、新血管形成および創傷治癒の治療、予防または重度低減方法が提供される。
【0273】
血管内皮細胞は多数のケモカイン受容体を発現し、CXCR4が特に顕著である(Gupta, et al. (1998) J Biol Chem. 273: 4282;Volin, et al. (1998) Biochem Biophys Res Commnun. 242: 46)。
【0274】
CXCR4特異的プライマーを用いたRT−PCRに基づく戦略によって、ケモカイン受容体CXCR4に関するmRNAが初代培養および形質転換II型肺胞上皮細胞(肺細胞)だけでなく、各種の他組織由来の多くの上皮細胞系でも発現されることが明らかになった(Murdoch, et al. (1998) Immunology. 98(1): 36- 41)。内皮細胞とは異なり、CXCR4は上皮細胞上で発現される唯一のケモカイン受容体である。その受容体は、上皮の病理において機能的な役割を有し得る。CXCR4が炎症応答に関与するか否かについては、現在でも不明である。上皮上で発現されるCXCR4は、上皮細胞に対する直接効果により、食細胞の炎症部位への召集を促進し得る。CXCR4は、免疫応答内の他の機能的役割を果たし、創傷治癒もしくは新血管形成に関与もし得る。CXCR4は、上皮に関連するいくつかの急性もしくは慢性炎症疾患状態の病態生理に関与している可能性もある(Murdoch, etal. (1999) Immunology. 98(1): 36-41)。
【0275】
さらに本発明は、前駆細胞および/または幹細胞の強化または増加を行うために、動物被験者、特には動物およびヒト被験者を治療する方法に関するものでもある。前駆細胞および/または幹細胞は、回収し、細胞移植で用いることができる。1実施形態では、骨髄前駆細胞および/または幹細胞を動員して心筋修復を行う。さらに本発明は、本明細書に開示の化合物を用いて、白血球(WBC)数が少ないか、WBCレベル上昇が有益であると考えられる動物被験者、特には動物およびヒト被験者を治療する方法に関するものでもある。さらに本発明は、開示の化合物を用いて、再生を必要とする被験者で心臓組織の再生を行う方法に関するものでもある。
【0276】
本発明の化合物は、免疫抑制;受容体機能における先天的欠損その他の原因による免疫抑制;および線虫などの蠕虫感染(それに限定されるものではない)等の寄生虫疾患のような感染疾患を引き起こす、化学療法、放射線療法、創傷治癒促進および熱傷処置、自己免疫疾患療法その他の薬物療法(例:コルチコステロイド治療療法)または自己免疫疾患および移植片/移植拒絶の治療で用いられる従来の薬剤の組み合わせを受けている個体などの免疫抑制に関連する疾患の治療に用いることができる。そこで本発明は、被験者における前駆細胞および/または幹細胞の増加が有用であるか、後の幹細胞移植のための前駆細胞および/または幹細胞の回収が有益であると考えられる広範囲の状態を標的とするものである。さらに本発明の方法は、白血球数の低下を特徴とするか、前記WBC数の上昇が有益であると考えられる広範囲の状態を標的とする。
【0277】
「前駆細胞」という用語は、ある種の刺激に応答して、分化した造血細胞または骨髄性細胞を形成し得る細胞を指す。前駆細胞の存在は、サンプル中の細胞が、例えばCFU−GM(コロニー形成単位、顆粒球マクロファージ);CFU− GEMM(コロニー形成単位、多分化能);BFU−E(バースト形成単位、赤血球);HPP−CFC(高増殖能コロニー形成細胞);または公知のプロトコールを用いて培養で得ることができる他の種類の分化コロニーなどの各種のコロニー形成単位を形成する能力によって評価することができる。「幹」細胞は、分化程度の相対的に低い形態の前駆細胞である。代表的には、そのような細胞はCD34に関して陽性である場合が多い。しかしながら、一部の幹細胞はこのマーカーを含まない。一般に、CD34+細胞は血液中には低レベルでしか存在しないが、骨髄では多数存在する。
【0278】
本発明の化合物は、単独の有効成分として、式(I)〜(XVII)の各種化合物の混合物として、ないしは抗生物質、ビタミン、ハーブ抽出物、抗炎症薬、グルコース、解熱剤、鎮痛薬、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−8(IL−8)、PIXY−321(GM−CSF/IL−3融合タンパク質)、マクロファージ炎症性タンパク質、幹細胞因子、トロンボポイエチン、増殖関連腫瘍遺伝子または化学療法などの治療上または栄養上有用な別の有効成分との混合物で投与することができる。さらに、本発明の化合物は、抗生物質、ビタミン、ハーブ抽出物、抗炎症薬、グルコース、解熱剤、鎮痛薬など、治療上もしくは栄養上有用な別の有効成分との混合物で投与することができる。
【0279】
SDF−1のCXCR4への結合は、アテローム性動脈硬化(Abi-Younes et al. Circ. Res. 86, 131-138 (2000))、腎臓同種移植拒絶(Eitner et al. Transplantation 66, 1551-1557 (1998))、喘息およびアレルギー性気道炎症(Yssel et al. Clinical and Experimental AllerD; 28, 104-109 (1998); J 1777771unol. 164, 59355943 (2000); Gonzalo et al. J Immunol. 165, 499-508 (2000))、アルツハイマー病(Xia et al. J. Neurovirology 5, 32-41 (1999))および関節炎(Nanlci et al. J Immunol. 164, 5010-5014 (2000))の発症においても示唆されている。
【0280】
CXCR4拮抗薬の確認方法
別の実施形態では、候補薬剤をスクリーニングする方法が提供される。その方法には、CXCR4受容体に結合した時に検出可能な信号を有する標識ペプチド系CXCR4拮抗薬を提供する段階;CXCR4受容体を既知濃度の少なくとも1種類の被験分子と接触させて試験サンプルを形成する段階;試験サンプルをペプチド系拮抗薬と接触させる段階;別個に、ペプチド系拮抗薬を、被験分子を含まないサンプルに接触させることで対照サンプルを形成する段階;ならびに試験サンプルからの信号を対照サンプルからの信号と比較する段階がある。ある具体的な下位実施形態では、ペプチド系拮抗薬はTN14003に由来するものである(エモリー大学に対するPCT公開第WO04/087068号に記載)。別の下位実施形態では、前記拮抗薬はビオチン分子で標識されており、ビオチン標識拮抗薬がストレプトアビジン結合信号分子と接触した時に前記信号が誘発される。
【0281】
CXCR4拮抗薬および受容体の結合によって誘発される信号は、蛍光信号であることができる。1実施形態では、例えば標識拮抗薬分子に結合する分子に結合した蛍光分子などの第2の補助分子を加えた時に信号が誘発される。1実施形態では、前記拮抗薬分子はビオチンで標識され、前記補助分子は蛍光的に標識されたストレプトアビジン分子である。
【0282】
前記ペプチド系拮抗薬は代表的には、受容体に対して高アフィニティを有する分子である。1実施形態では、前記分子は「T140」ペプチド拮抗薬由来のものである。ある具体的な実施形態では、前記拮抗薬はTN14003(エモリー大学に対するPCT公開第WO04/087068号に記載)である。 その受容体は代表的には、細胞系で発現される。そのプロセスは、用量−応答曲線として行うことができる。この実施形態では、被験化合物を各種濃度の受容体とともにインキュベートし、標識拮抗薬の結合後に誘発された信号を測定し、対照と比較し、そして互いに比較する。
【0283】
(実施例)
【実施例1】
【0284】
ペプチド系CXCR4拮抗薬であるTN14003は、CXCR4に特異的な新規な造影プローブである
最初に、TN14003がCXCR4受容体上の予想SDF−1結合部位に結合することを実証するための実験を行った。これらの試験では、MDA−MB−231細胞を、400mg/mLのSDF−1αの非存在下(図1A、B)または存在下(図1A、C)に10分間インキュベートし、次に氷冷アセトンで固定した。ビオチン標識TN14003の免疫蛍光がSDF−1αで10分間前処理した細胞において膜および細胞質ゾルの両方で陰性であった(図1A、C)。
【0285】
CXCR4のプローブとしてのビオチン化TN14003の有用性を、乳癌患者からの培養乳癌細胞およびパラフィン包埋組織の免疫蛍光染色と組み合わせて調べた。MDA−MB−231は、MDA−MB−435と比較したノーザンブロットおよびウェスタンブロットによって示されたように、CXCR4に関して高レベルのmRNAおよびタンパク質を有していた(図1B)。ビオチン化TN14003を用いてその2種類の細胞型を染色した時、高CXCR4発現MDA−MD−231細胞は明るく染色されたが(図1C左)、低CXCR4発現MDA−MB−435はそれより程度が低く(図1C右)、これら細胞における低表面CXCR4発現と一致していた。
【0286】
癌患者のパラフィン包埋組織切片でのビオチン化TN14003を用いた免疫蛍光染色によって、TN14003を用いて、保存されたパラフィン包埋組織切片からの腫瘍細胞上でCXCR4受容体を検出することが可能であることが示された(図1D)。ジョージア州アトランタのグレイディメモリアル病院トランスレイショナルジェノミクス研究所エイボン組織バンクによって提供された合計41名の患者の組織を染色し、4個の正常乳房組織のうちの0個、12個の非浸潤性乳管癌(DCIS)のうちの9個および25個の節陽性の症例のうちの23個がCXCR4陽性であった。DCISの診断を有する多くのサンプルが、すでにCXCR4過剰発現を獲得していた(図1D)。
【実施例2】
【0287】
TN14003は、AMD3100より強力なCXCR4関連シグナル伝達阻害薬である
CXCR4/SDF−1相互作用は、Gαタンパク質(PTX感受性)依存的にPI3K/AktおよびRas/Raf/MEK/Erk経路を活性化する。実験を行って、各種濃度(0、0.01、0.1、1、10、100、1000nM)でのTN14003またはAMD3100のいずれかによるCXCR4/SDF−1相互作用の遮断がAktおよびErk1/2シグナル伝達のリン酸化に与える効果を求めた。細胞を100ng/mLのSDF−1とともに30分間インキュベートすることで、Aktを活性化した。サブナノモル濃度のTN14003または数ナノモルのAMD3100のいずれかによってAkt活性化を遮断した(図2)。サブナノモル濃度のTN14003または100nM AMD3100の存在下に、Erk1/2リン酸化を弱めた(データは不図示)。しかしながら、SDF−1によるErk1/2リン酸化の増加は、Aktリン酸化における増加ほど顕著ではなかった。その結果は、CXCR4介在シグナル伝達の阻害において、TN14003の方がAMD3100より強力であることを示している。SDF−1、TN14003またはAMD3100による細胞の処理は、CXCR4タンパク質レベルに影響しなかった。
【実施例3】
【0288】
siRNAによるCXCR4のノックダウンが、肺における転移を遮断する
哺乳動物細胞での標的遺伝子を沈黙させるRNA干渉技術が、遺伝子機能の研究に対する強力な手段となってきた。CXCR4(ジェンバンク受託番号NM_003467)の2つの異なるsiRNA二本鎖、siRNA1(センス、5′−UAAAAUCUUCCUGCCCACCdTdT−3′)およびsiRNA2(センス、5′−GGAAGCUGUUGGCUGAAAAdTdT−3′)を、ダーマコン(Dharmacon)(Lafayette, CO)が設計し、そこから購入した。CXCR4 siRNAと同じGC含有率(42%、D001206−10)で、非特異的対照siRNA二本鎖をダーマコンから購入した。
【0289】
siRNAによってCXCR4 siRNAレベルを低下させることで、マトリゲル侵襲アッセイによって測定されるCXCR4/SDF−1介在侵襲を阻害した。CXCR4リガンドであるSDF−1(400ng/mL)を下側チャンバに加えて、CXCR4陽性乳癌細胞を引きつけることで、マトリゲルを通過して移動させた。siRNA1でトランスフェクションしたMDA−MB−231細胞の侵襲は、対照細胞の39±4%まで低下し、siRNA2では51±8%であり、siRNA1+2の両方では16±6%に過ぎなかった(図3A)。図3Bは、CXCR4の低下がVEGFおよびCD44のmRNAレベルに影響し、HIF−1αのmRNAレベルに影響しなかったことを示している。
【0290】
MDA−MB−231細胞でのCXCR4レベル低下が実験動物モデルでの肺転移を遮断するか否かを確認するため、MDA−MB−231細胞を各種組み合わせのCXCR4siRNAでトランスフェクションし、雌SCIDマウスに、腫瘍細胞注入後にそれのみで(リポソームなし)尾静脈から週2回静脈注射した(群2〜4)。腫瘍細胞注射から45日後、対照群(群1)における全ての動物で肺転移が発生した。対照的に、群2で転移が発生したのは1匹の動物のみであり、それはほとんど肉眼で見えないものであった。図4Aにおける肺の代表的な写真は、対照群において顕著に嚢胞性の肺微小転移を示した。他方、3つの処置群からの肺の3つの代表的な写真では、肺転移はほとんど肉眼で認められず、最も顕著には群2および3でそうであることが明らかになった。群2からの肺組織のH&E染色では正常な肺の形態が示されたが、対照群からのものは侵襲性腫瘍細胞が示された(図4A)。
【0291】
これらの結果を、マウスでの対応するものと交差反応しないヒトハウスキーピング遺伝子hHPRTについてのプライマーを用いる半定量的リアルタイムRT−PCRによってさらに確認した(図4B)。リアルタイムRT−PCR分析で、対照群でのSCIDの転移浸潤肺においてhHPRT mRNAの発現が高度であることが明らかになった。群2および3でのマウスの肺におけるヒトHRPTの発現レベルは、対照群のものより有意に低かった(図4B)。対照群マウス肺では高いCXCR4発現があり、処置群マウスの肺ではかなり低いCXCR4発現があった(図4C)。FDGを用いたマイクロPET撮像を用いて、群1および2のマウスでの肺転移を検出した。図5には代表的なFDG−PET画像が示してあり、対照群での肺転移および群2での有意に少ない肺転移が確認される。図5Aは、群1(対照)の3匹の代表的マウスから得られた最大強度投射(3次元)である。胸部領域は、siRNA1+2処置群のいずれのマウス(右)と比較しても、対照群の各マウス(左)の方が有意に明るい。FDGの分泌のために、膀胱では高FDG取り込みも認めることができる。図5Bおよび5Cは、それぞれ特定の冠状断面画像および体軸横断面画像である。図5中の肺領域の最大標準化取り込み値(SUVmax)は、8.6、7.1、9.3、2.2、2.5および 2.1であった。総合して、これらの画像は、FDG取り込みが、siRNA1+2処置群(右)より対照群(左)からの肺の方がはるかに高値であることを示しており、それはsiRNA1+2処置群より対照群での肺転移が多いことと関連している。
【実施例4】
【0292】
CXCR4およびHIF−1αによるVEGFプロモーター調節
CXCR4レベルの低下がHIF−1αと比較してVEGF転写に影響し得るか否かを確認するため、ファン・メイア(Van Meir)博士の研究室からの低酸素症レポーティングルシフェラーゼ/LacZプラスミドをレポーターシステムとして用いて、VEGFプロモーター活性の低酸素症応答要素(HRE)を検出した(Post, D. E. and Van Meir, E. G. (2001) Gene Ther 8: 1801-1807)。HIF−1αsiRNAの配列は、5′−UUCAAGUUGGAAUUGGUAGdTdT−3′であった。このプラスミドで安定にトランスフェクションされたMDA−MB−231細胞を用いて、プール細胞クローンを形成した(HRE−LucMB−231と称する)。予想外に、通常酸素状態でのHRE活性は、通常酸素状態での高CXCR4レベル(図6左)を有するMDA−MB−231細胞で中等度に高く、それは低CXCR4およびHIF−1レベルである他の細胞系(LN229、U87、9LおよびMDA−MB−435)では認められなかった。MDA−MB−231細胞でのこの中等度に高いHRE活性は、CXCR4siRNAまたはHIF−1αsiRNAによって抑制された。HRE活性は、CXCR4siRNAおよびHIF−1αsiRNAの併用治療を48時間行うことで大きく低下した。予想通り、HRE活性は低酸素処置(窒素中1%酸素および5%CO)によって2.5倍上昇した。この高HRE活性もやはり、CXCR4またはHIF−1αのsiRNAによって抑制された(図6、右)。
【実施例5】
【0293】
ビオチン標識TN14003(ペプチド系)を用いる競争アッセイによる新規な抗CXCR4小分子のスクリーニング
CXCR4のロドプシン系相同モデルの分子力学シミュレーションは、AMD3100は、2つのアスパラギン酸によるCXCR4/SDF−1結合と相互作用することから弱い部分作動薬であるが、ペプチド系CXCR4拮抗薬であるT140(TN14003と同様)は細胞表面に対して近位である疎水性核の細胞外ドメインおよび領域でCXCR4のSDF−1結合部位に強力に結合することを示している(Trent, et al. (2003) J Biol Chem 278: 47136-47144)。この構造データを用いて、分子フレームワークを通じて複数窒素を有する化合物のライブラリを形成したが、構造的にはAMD3100と異なっていた。
【0294】
ストレプトアビジン結合ローダミンとともにビオチン標識TN14003を用いることで、腫瘍細胞上のCXCR4のSDF−1結合部位に対するこれら化学物質の結合有効性の測定が可能となり、AMD3100−SDF−1相互作用とそれを比較した(図7)。リガンド結合部位に高いアフィニティを有する化合物とともにインキュベートした細胞は青色の核染色のみを示し、低アフィニティを有する化合物では両方のCXCR4で赤(ローダミン)および青核染色を生じた。細胞を、各種濃度のAMD3100とともに前インキュベートした。その結果は、ビオチン標識TN14003に対して競争させるには、AMD3100については10μM濃度が必要であることを示していた。他方、一部の候補化合物は、非常に低濃度でTN14003と同様に強力であった。従って、これら化合物のうちの一つであるWZZL811Sを選択して、効力および細胞に対する低毒性に基づくそれの治療潜在力を調べた(図9)。図8に、ナノモル濃度での腫瘍細胞上のCXCR4のリガンド結合部位(TN14003結合部位とほぼ同じ)に対するWZZL811Sの結合アフィニティを示している。WZZL811Sは、100μM(調べた中で最も高い濃度)であってもMDA−MB−231細胞の細胞生存率を低下させなかった。
【実施例6】
【0295】
WZZL811Sは、CXCR4/SDF−1介在マトリゲル侵襲およびCXCR4/SDF−1介在Akt活性化を阻害する
WZZL811Sをマトリゲル侵襲アッセイで調べて、CXCR4/SDF−1介在侵襲を阻害し得るか否かを確認した。図10Aに示したように、WZZL811Sは、同じ濃度(2nM)でのSDF−1誘発侵襲の遮断において、TN14003と同等の効力を有していた。図10Bは、WZZL811Sが用量依存的にSDF−1/CXCR4誘発Aktリン酸化を遮断したことを示している。
【実施例7】
【0296】
動物モデル
MDA−MB−231細胞を尾静脈から注射することで、転移に関して実験動物モデルを作った。90%を超える動物が、45日以内に肺転移を生じた。腫瘍細胞を脛骨内注射することで、転移に関する別の実験動物モデルを形成した。約50%の動物が45日以内に骨転移を生じた。FDG−PETは、肺転移(図5)および骨転移(図11)が本発明者らのMDA−MB−231細胞から生じたことを明瞭に示している。
【0297】
転移性686LN細胞を、尾静脈から静脈注射することで、CXCR4を介して調節される頭部および頸部癌転移に関する実験動物モデルを形成した。30日後、これらの転移性細胞は、対照群(媒体処置)において肺、肝臓および骨髄に転移したが、非侵襲性[18F]−フルオロデオキシグルコース陽電子放出型断層撮影(FDG−PET)によって測定されたペプチド系CXCR4拮抗薬TN14003(20mg/マウス/週2回)ではいずれの臓器にも転移しなかった(図12)。各パネルは、6匹のマウスのFDG−PET画像を示しており、緑色の矢印によって大きい肺転移が示されている(膀胱は、排泄のために高FDG取り込みを示しており、腫瘍関連ではない)。これらの3D投射画像は、肺転移を良好に示している(対照群のマウスの骨転移および肝臓転移が、横断面画像で認められたが、データは示していない)。小分子抗CXCR4化合物WZZL811S(20mg/マウス/週2回)は、恐らくは化合物の半減期が短いためにTN14003の80%の効力を示した。
【実施例8】
【0298】
新規な抗HIF1α化合物の薬物動態
新規な抗HIF−1α小分子の薬物動態研究を行った。神経膠腫細胞の低酸素レポーティングプラスミド(上記)でトランスフェクションした安定に統合された低酸素レポーター系を利用した。化合物10000個の天然産物様小分子ライブラリをスクリーニングし、「ベストヒット」を確認した。血漿および他の生体サンプル中のKCN−1を定量的に検出するために、HPLC方法を開発した。薬物動態試験のため、KCN−1(100mg/kg)をDMSOに溶かし、マウスに静脈投与した。血漿サンプルを所定の時間点で採取し(0.25、0.5、1、2、4および8時間)、KCN−1レベルをHPLCによって定量した。HPLC系は、バリアンのプロスター(Prostar)勾配ポンプ、プロスターオートサンプラーおよびプロスターフォトダイオードアレイ検出器からなるものであった。カラムは、ルナ(Luna)5μ C18カラム(4.6mm×250mm、フェノメネクス(Phenomenex))であった。KCN1および内部標準の保持時間は、それぞれ8.7分および17.7分であった(図13)。2時間かけて化合物を全身投与した後に、WZZL811SおよびWZ40のイン・ビボ安定性を測定した(図17)。
【実施例9】
【0299】
内皮毛細管形成アッセイ
内皮細胞の増殖および管形成を分析することで、被験化合物の抗血管新生効果を測定した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)による毛細管形成に対するSDF−1 (100ng/mL)の血管新生効果を、マトリゲルで前コーティングし、18時間インキュベートしたマトリゲルコート24ウェルプレートを用いてイン・ビトロで調べた。SDF−1の血管新生効果は、100nMのTN14003(ペプチド系CXCR4拮抗薬)またはWZZL811S処理のいずれかによって阻害された(図14a、グラフ図14b)。図14Bは、対照(NC)に対して正規化された内皮細胞管数のグラフでの解析を示す図である。
【実施例10】
【0300】
HIVのモデルにおける効力
モデル細胞でのHIV感染に対する被験化合物の効果を、SHIV感染細胞を用いてp27抗原捕捉によって分析した。細胞を0、0.1、1、10または100nMの薬剤とともにインキュベートしてから、SHIVで感染させた。p27抗原のレベルを分析することで、感染後にウィルス力価を測定した。WZ40、WZZL811SおよびWZ41とともにインキュベーションした場合の結果を、図15および16に示してある。被験化合物は、調べた濃度全てでSHIV感染を阻害した。その阻害は、2日目に測定可能であり、5日間のインキュベーションまで続いた。
【実施例11】
【0301】
CXCR4への結合でSDF−1に対して調べた化合物
SDF−1と比較した場合の、CXCR4に結合する被験化合物のnM単位でのIC50を示すアッセイ結果(競争アッセイ)を下記の表2に示してある。マウスでの化合物の半減期を測定した場合には、それも示してある。
【0302】
【表4】




【図面の簡単な説明】
【0303】
【図1】TN14003の特異性を示す染色細胞およびブロットの画像である。
【図2】Aktのリン酸化を示すウェスタンブロットの画像である。
【図3】染色細胞およびCXCR4siRNAでトランスフェクションされたMDA−MB−231細胞の侵襲を示すブロットの画像を示す図である。
【図4】細胞および肺の画像、ならびにイン・ビボでの乳癌転移の阻害に対するCXCR4siRNAの効果のグラフを示す図である。
【図5】群1(対照siRNA)および群2(siRNA1+2)における動物のFDG−PETの代表的画像を示す図であり、イン・ビボでの乳癌転移の阻害に対するCXCR4siRNAの効果を示す図である。
【図6】HRE活性のグラフである。
【図7】レポーターとしてビオチン標識TN14003を用いる薬剤スクリーニング方法を示す細胞の蛍光顕微鏡写真画像である。
【図8】染色細胞の蛍光顕微鏡写真画像である。
【図9】WZZL811Sの化学構造の表示である。
【図10】細胞におけるマトリゲル侵襲およびAktリン酸化のグラフおよび代表的ブロットである。
【図11】MDA−MB−231細胞の骨転移を示すマウスのX線画像である。
【図12】実施例7に記載のマウス動物のFDG−PET画像である。
【図13】実施例8に記載の方法に従って行われるHPLC分析のグラフである。
【図14】内皮毛細管形成アッセイの画像およびグラフである。
【図15】指定量のWZZL811S、WZ40またはWZ41Sとともにインキュベーションした後に測定されたp27レベルのグラフである。
【図16】指定量のWZ40とともにインキュベートし、SHIVで2、4または5日間感染させた後に測定したp27レベルのグラフである。
【図17】全身投与後の指定時点で測定したWZZL811S量のグラフであり、WZZL811SおよびWZ40のイン・ビボでの安定性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主に対して下記式Iの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルを投与する段階を有する、CXCR4受容体活性化に関連する増殖障害の治療または予防方法。
【化1】

[式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、CN、OH、OR、NH、NO、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。]
【請求項2】
各環における少なくとも1個のKが窒素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
YおよびZがそれぞれ水素である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
WおよびXがそれぞれ水素である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
W、X、YおよびZがいずれも水素である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
およびRが水素である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
UがアシルまたはNHアシルである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
W、X、YおよびZのうちの少なくとも一つがCl、F、BrまたはIである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
W、X、YおよびZのうちの少なくとも一つがOHである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
W、X、YおよびZのうちの少なくとも一つがCNである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
W、X、YおよびZのうちの少なくとも一つがNOである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が、下記式I−1〜I−10の化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【化2】

【請求項13】
前記化合物が、下記式I−11〜I−20の化合物または該化合物の製薬上許容される塩、エステルもしくはプロドラッグからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【化3】

【請求項14】
前記化合物が下記構造XVの化合物であるか、該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルである請求項1に記載の方法。
【化4】

【請求項15】
前記化合物が塩である請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が塩化物塩である請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が下記構造XVIの化合物であるか、該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルである請求項1に記載の方法。
【化5】

【請求項18】
下記式IIaもしくはIIbの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルを投与する段階を有する、CXCR4受容体活性化に関連する増殖障害の治療または予防方法。
【化6】

[式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、CN、OH、OR、NH、NO、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
AおよびBは、独立に−CR=、−CR−、−CR=、−N=、−O−、−NR−、−S−、−CR=CR−、−CR−CR−、−CR=N−、−CR−NR−、−N=CR−および−NR−CR−から選択される1原子および2原子連結部であり;
−D−E−および−G−J−は独立に、−NR−CR−または−N=C−のいずれかであり;
、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。]
【請求項19】
YおよびZがそれぞれ水素である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
WおよびXがそれぞれ水素である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
W、X、YおよびZがいずれも水素である請求項18に記載の方法。
【請求項22】
下記式IIIの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルを投与する段階を有する、CXCR4受容体活性化に関連する増殖障害の治療または予防方法。
【化7】

[式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、CN、OH、OR、NH、NO、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。]
【請求項23】
前記化合物が、下記式III−1〜III−10の化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルからなる群から選択される請求項22に記載の方法。
【化8】

【請求項24】
前記化合物が、下記式III−11〜III−20の化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルからなる群から選択される請求項22に記載の方法。
【化9】

【請求項25】
宿主に対して下記式IXの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルを投与する段階を有する、CXCR4受容体活性化に関連する増殖障害の治療または予防方法。
【化10】

[式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、CN、OH、OR、NH、NO、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択され;
は独立に、下記式a〜g:
【化11】

からなる群から選択され;
MはO、SまたはNRである。]
【請求項26】
宿主に対して下記式XIの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルを投与する段階を有する、CXCR4受容体を介して調節される増殖障害の治療または予防方法。
【化12】

[式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、CN、OH、OR、NH、NO、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。]
【請求項27】
YおよびZがそれぞれ水素である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
WおよびXがそれぞれ水素である請求項26に記載の方法。
【請求項29】
W、X、YおよびZがいずれも水素である請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が、下記式XI−1〜XI−6の化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルからなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【化13】

【請求項31】
宿主に対して下記式XIIIの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルを投与する段階を有する、CXCR4受容体を介して調節される増殖障害の治療または予防方法。
【化14】

[式中、
各Kは独立にNまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、CN、OH、OR、NH、NO、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択され;
「スペーサー」は独立に、結合、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、C〜CアルケノキシおよびC〜Cアルキノキシであり、前記アルキル基はヘテロ原子(例えばN、OまたはS)によって置換されていても良く、それには−CH−OCH−、−CHCH−OCH−、−CHCH−OCHCH−、−CH−OCHCH−、−CHCH−OCHCHCH−、−CHCHCH−OCH−、−CHCHCH−OCHCH−、−CHCH−OCHCHCH−、−(CH−OH(CH)−(CH−、CH−OH(CH)−O−CH、−(CH−、−(CH−CO−、−(CH−N−、−(CH−O−、−(CH−S−、−(CHO)−、−(OCH)−、−(SCH)−、−(CHS−)、−(アリール−O)−、−(O−アリール)−、−(アルキル−O)−、−(O−アルキル)−が含まれるがそれらに限定されるものではなく、nは独立に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。]
【請求項32】
前記障害が癌転移である請求項1、18、22、25、26または31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患が、乳癌、脳腫瘍、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌または非小細胞肺癌から選択される請求項1、18、22、25、26または31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与が内皮細胞移動または増殖を低減させる請求項1、18、22、25、26または31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記投与が血管新生を低減させる請求項1、18、22、25、26または31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物を、増殖性疾患を患う高リスクの宿主に投与する請求項1、18、22、25、26または31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物を、第2の薬剤と併用投与または交互投与する請求項1、18、22、25、26または31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の薬剤が化学療法薬である請求項1、18、22、25、26または31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物を、別の薬剤の投与停止後に投与する請求項1、18、22、25、26または31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
宿主におけるCXCR4受容体活性化に関連する増殖障害の治療または予防のための医薬製造における下記式Iの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはエステルの使用。
【化15】

[式中、
各Kは独立に、NまたはCHであり;
Q、T、U、V、W、X、YおよびZは独立に、H、R、アシル、F、Cl、Br、I、CN、OH、OR、NH、NO、NHR、NR、SR、SR、SR、S−NHR、S−NHR、S−NRR′、S−NRR′、NHアシル、N(アシル)、COH、CORから選択され、RおよびR′は独立に、直鎖、分岐もしくは環状アルキルまたはアラルキル基ならびにアリールおよびヘテロアリール基から選択され;
、R、R、R、RおよびRは独立に、H、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アラルキル、アリールヘテロアリール、アシル(RC−)およびイミドイル(RC(NH)−またはRC(NR′)−)基から選択される。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2008−526884(P2008−526884A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550526(P2007−550526)
【出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/000604
【国際公開番号】WO2006/074428
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(501178433)エモリー・ユニバーシテイ (18)
【Fターム(参考)】