説明

医療画像表示制御装置及びプログラム

【課題】医師による医療画像診断において、異常部位を効率的に発見できるように支援することができる。
【解決手段】画像圧縮処理部22によって、複数種類の断層画像に対して、圧縮処理を行った圧縮断層画像を生成する。特徴抽出部26によって、圧縮断層画像を分割した分割領域の特徴を抽出する。異常判定部28によって、各断層の各分割領域について、異常箇所であるか否かを判定し、パターン生成部30によって、異常箇所のパターンを各断層について生成する。アニメーション生成部36によって、生成されたパターンを圧縮断層画像上に重畳させた画像を、各断層についてタッチパネル14に連続して表示させ、入力受付部37によって、ユーザからの入力を受け付ける。3Dダイヤグラム生成部38によって、入力を受け付けたときの断層に対応する圧縮断層画像と、異常判定部28による判定結果とを表わす3Dダイヤグラムを、タッチパネル14に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療画像表示制御装置及びプログラムに係り、特に、診断対象の臓器等の身体の部位を表わす断層画像を表示装置に表示させる医療画像表示制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本人の最も大きな死亡原因「がん」は、国民生活の安全・安心を脅かす重要な社会問題であることは言及するに及ばない。医学、薬学、理学、工学、それぞれの観点から早期がん診断への取り組みは、国内外で盛んに行われてきた。これらを受けて、我が国が得意とする産業としての「ものづくり」が医学との連携体制を強くすることにより、様々な診断薬、デバイス、診断機器の研究開発が目覚しく進んでいる。一方、がん診療・治療に現場で携わる医師からの生の声として、多様化した種々の薬物と高度に発達した診断機器により得られる情報が氾濫しており、医師から見たときの情報量が膨大になり、その処理がきわめて複雑になりつつあるといわれている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】今村惠子、小林和子、中島康雄、「CT、MRI設置施設における画像診断医の充足度」、日本放射線科専門医会News、No.170、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような状況下を鑑みて、医師による医療画像診断において、異常部位を効率的に発見できるように支援する医療画像表示制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明に係る医療画像表示制御装置は、診断対象の臓器等の身体の部位における複数の断層を表わす断層画像を撮像する複数種類の医療用撮像装置によって撮像された複数種類の前記断層画像の各々に対して、データ圧縮処理を行った圧縮断層画像を複数種類生成する画像処理手段と、前記複数種類の圧縮断層画像について、前記圧縮断層画像が表わす臓器等の身体の部位の位置が対応するように、前記圧縮断層画像上の位置の対応付けを行う位置対応付け手段と、前記複数種類の圧縮断層画像の各々について、前記圧縮断層画像を分割した複数の分割領域の各々の特徴を抽出する特徴抽出手段と、各断層の前記分割領域の各々について、位置が対応する前記複数種類の圧縮断層画像間で該分割領域と位置が対応する各分割領域について抽出された前記特徴に基づいて、前記臓器等の身体の部位の該分割領域が表わす部分が、異常箇所であるか否かを各々判定する異常判定手段と、前記異常箇所であると判定された前記分割領域から知覚される視覚的なパターンを各断層について生成するパターン生成手段と、前記パターン生成手段によって生成された各断層の前記パターンを各断層の前記圧縮断層画像上に重畳させた重畳画像を、各断層について表示装置に連続して表示させる連続表示制御手段と、前記連続表示制御手段によって前記重畳画像が連続して表示されているときに、ユーザからの入力を受け付ける入力受付手段と、前記入力受付手段によって入力を受け付けたときに表示されていた前記重畳画像が表わす断層に対応する前記圧縮断層画像と、前記異常判定手段によって該圧縮断層画像の各分割領域について判定された判定結果とを表わす3次元画像を、前記表示装置に表示させる3次元表示制御手段と、を含んで構成されている。
【0006】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、診断対象の臓器等の身体の部位における複数の断層を表わす断層画像を撮像する複数種類の医療用撮像装置によって撮像された複数種類の前記断層画像の各々に対して、データ圧縮処理を行った圧縮断層画像を複数種類生成する画像処理手段、前記複数種類の圧縮断層画像について、前記圧縮断層画像が表わす臓器等の身体の部位の位置が対応するように、前記圧縮断層画像上の位置の対応付けを行う位置対応付け手段、前記複数種類の圧縮断層画像の各々について、前記圧縮断層画像を分割した複数の分割領域の各々の特徴を抽出する特徴抽出手段、各断層の前記分割領域の各々について、位置が対応する前記複数種類の圧縮断層画像間で該分割領域と位置が対応する各分割領域について抽出された前記特徴に基づいて、前記臓器等の身体の部位の該分割領域が表わす部分が、異常箇所であるか否かを各々判定する異常判定手段、前記異常箇所であると判定された前記分割領域から知覚される視覚的なパターンを各断層について生成するパターン生成手段、前記パターン生成手段によって生成された各断層の前記パターンを各断層の前記圧縮断層画像上に重畳させた重畳画像を、各断層について表示装置に連続して表示させる連続表示制御手段、前記連続表示制御手段によって前記重畳画像が連続して表示されているときに、ユーザからの入力を受け付ける入力受付手段、及び前記入力受付手段によって入力を受け付けたときに表示されていた前記重畳画像が表わす断層に対応する前記圧縮断層画像と、前記異常判定手段によって該圧縮断層画像の各分割領域について判定された判定結果とを表わす3次元画像を、前記表示装置に表示させる3次元表示制御手段として機能させるためのプログラムである。
【0007】
本発明によれば、画像処理手段によって、診断対象の臓器等の身体の部位における複数の断層を表わす断層画像を撮像する複数種類の医療用撮像装置によって撮像された複数種類の前記断層画像の各々に対して、データ圧縮処理を行った圧縮断層画像を複数種類生成する。
【0008】
そして、位置対応付け手段によって、複数種類の圧縮断層画像について、圧縮断層画像が表わす臓器等の身体の部位の位置が対応するように、圧縮断層画像上の位置の対応付けを行い、特徴抽出手段によって、複数種類の圧縮断層画像の各々について、圧縮断層画像を分割した複数の分割領域の各々の特徴を抽出する。
【0009】
異常判定手段によって、各断層の前記分割領域の各々について、位置が対応する前記複数種類の圧縮断層画像間で該分割領域と位置が対応する各分割領域について抽出された前記特徴に基づいて、前記臓器等の身体の部位の該分割領域が表わす部分が、異常箇所であるか否かを各々判定する。パターン生成手段によって、異常箇所であると判定された分割領域から知覚される視覚的なパターンを各断層について生成する。
【0010】
そして、連続表示制御手段によって、パターン生成手段によって生成された各断層のパターンを各断層の圧縮断層画像上に重畳させた重畳画像を、各断層について表示装置に連続して表示させ、入力受付手段によって、連続表示制御手段によって重畳画像が連続して表示されているときに、ユーザからの入力を受け付ける。3次元表示制御手段によって、入力受付手段によって入力を受け付けたときに表示されていた重畳画像が表わす断層に対応する圧縮断層画像と、異常判定手段によって該圧縮断層画像の各分割領域について判定された判定結果とを表わす3次元画像を、表示装置に表示させる。
【0011】
このように、複数種類の断層画像から判定される異常箇所を表わすパターンを、各断層の圧縮断層画像と重畳させて表示させ、表示に対するユーザからの入力に対応する断層の圧縮断層画像と異常箇所の判定結果とを表わした3次元画像を表示させることにより、医師による医療画像診断において、異常部位を効率的に発見できるように支援することができる。
【0012】
本発明に係る医療画像表示制御装置は、パターン生成手段によって生成されたパターンに所定の色彩を付与する色彩付与手段を更に含み、連続表示制御手段は、色彩付与手段によって所定の色彩が付与されたパターンを圧縮断層画像上に重畳させた重畳画像を、各断層について表示装置に連続して表示させるようにすることができる。これによって、異常部位をより効率的に発見できるように支援することができる。
【0013】
本発明に係る医療画像表示制御装置は、入力受付手段によって入力を受け付けたときに表示されていた重畳画像が表わす断層に対応する、圧縮前の断層画像を記憶手段に記憶させる記憶制御手段を更に含むことができる。
【0014】
本発明のプログラムは、記録媒体に格納して提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の医療画像表示制御装置及びプログラムによれば、複数種類の圧縮断層画像から判定される異常箇所を表わすパターンを、各断層の断層画像と重畳させて表示させると共に、表示に対するユーザからの入力に対応する断層の圧縮断層画像と異常箇所の判定結果とを表わした3次元画像を表示させることにより、医師による医療画像診断において、異常部位を効率的に発見できるように支援することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る医療画像表示システムの構成を示す概略図である。
【図2】空間周波数画像の周波数分割を示すイメージ図である。
【図3】ニューラルネットワークの例を示す図である。
【図4】プレグナンツの法則における近接の要因を説明するための図である。
【図5】プレグナンツの法則における類同の要因を説明するための図である。
【図6】プレグナンツの法則における閉合の要因を説明するための図である。
【図7】3Dダイヤグラムの例を示すイメージ図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るコンピュータの医療画像表示処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】断層画像の空間分割を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、医師であるユーザによる医療画像診断を支援するための医療画像表示システムに、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る医療画像表示システム10は、MRI、CT、PETなどの複数種類の医療用撮像装置から得られる複数種類の断層画像を入力として、医療画像診断のための画像を生成してタッチパネル14に表示させるコンピュータ12と、タッチパネル14とを備えている。
【0019】
タッチパネル14は、コンピュータ12から出力された表示データを表示させると共に、ユーザによる操作入力をコンピュータ12へ出力する。
【0020】
コンピュータ12は、CPU、ROM、RAM、及びHDDを備え、HDDには、後述する医療画像表示処理ルーチンに対するプログラムが記憶されている。
【0021】
コンピュータ12は、機能的には次に示すように構成されている。図1に示すように、コンピュータ12は、画像取得部20、画像圧縮処理部22、位置合わせ処理部24、特徴抽出部26、異常判定部28、パターン生成部30、正常パターン取得部32、色付け処理部34、アニメーション生成部36、入力受付部37、3Dダイヤグラム生成部38、及びデータ保存部40を備えている。なお、画像圧縮処理部22は、画像処理手段の一例であり、アニメーション生成部36は、連続表示制御手段の一例である。また、色付け処理部34が、色彩付与手段の一例であり、3Dダイヤグラム生成部38が、3次元表示制御手段の一例である。また、データ保存部40が、記憶制御手段の一例であり、コンピュータ12が、医療画像表示制御装置の一例である。
【0022】
診断対象の臓器等の身体の部位における複数の断層を表わす断層画像を撮像する、CT、MRI、PETなどの複数種類の医療用撮像装置によって撮像された、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)データである複数種類の断層画像が、オペレータによってコンピュータ12に入力され、画像取得部20は、これらの複数種類の断層画像(オリジナルデータ)を取得して、メモリに一次的に保存する。
【0023】
画像圧縮処理部22は、各断層画像について、診断対象の臓器等の身体の部位を表わす部分を切り出すと共に、切り出された部分の画像について、Wavelet変換又はDCT変換を行って、得られた空間周波数画像に対して、図2に示すように周波数分割を行う。また、画像圧縮処理部22は、例えば、周波数分割された結果から高周波成分を除去すると共にWavelet逆変換又はDCT逆変換を行う、データ圧縮処理を行うことにより、画像データをデータ圧縮した圧縮断層画像を生成する。なお、このときに、例えばリフティング構造を用いることによって可逆変換で画像データをデータ圧縮した圧縮断層画像を生成するようにしてもよいし、不可逆変換で画像データをデータ圧縮した圧縮断層画像を生成するようにしてもよい。また、画像圧縮処理部22は、Wavelet変換又はDCT変換、及び圧縮処理を行う際に、よりよく圧縮するためにノイズ除去処理を行うようにしてもよい。
【0024】
位置合わせ処理部24は、複数種類の圧縮断層画像に対して、エッジ抽出などの特徴点抽出を行い、抽出された特徴点を、複数種類の圧縮断層画像間で対応付けることにより、複数種類の圧縮断層画像が表わす臓器等の身体の部位の位置を対応付ける位置合わせ処理を行う。位置合わせ処理部24は、位置合わせ処理の結果に基づいて、各圧縮断層画像を分割した分割領域に対して、複数種類の圧縮断層画像間で、位置が対応する分割領域を対応付け、複数種類の圧縮断層画像間で対応付けられた分割領域の対応関係を示すデータを生成する。なお、上記の位置合わせは、断層の位置合わせも含めた3次元的な位置の位置合わせであり、複数種類の圧縮断層画像間で、同じ断層を表わし、かつ、同じ断層上(2次元上)の位置を表わす分割領域の対応付けを行う。
【0025】
以下、ある断層について行われる処理について説明するが、各処理は、各断層について行われる。
【0026】
特徴抽出部26は、複数種類の圧縮断層画像の各々について、複数の分割領域の各々の特徴を抽出する。抽出する特徴は、例えば、形状が整っているか否か、信号の強弱、信号が均一であるか否か、分布が単発であるか多発しているか、などである。これらの特徴抽出方法は、個別の抽出方式によって行われる。また、脳・肝臓・腎臓などの実質臓器と、消化管や血管などの管腔構造をもつ組織とでも、別々の抽出方式を用いて処理する。
【0027】
異常判定部28は、複数の分割領域の各々について、複数種類の圧縮断層画像間で位置が対応する各分割領域に対して抽出された特徴に基づいて、当該分割領域が表わす臓器等の身体の部位の部分が、異常箇所であるか否かを判定する。例えば、図3に示すようなニューラルネットワークや、ファジーベクトル量子化法、GAやParticle Swam Optimizationのような最適化問題で解く方法により、異常箇所であるか否かを判定する。
【0028】
パターン生成部30は、複数の分割領域に対する異常箇所の判定結果を表わした画像から、ゲシュタルトを知覚する法則であるプレグナンツの法則(近接(図4参照)、類同(図5参照)、閉合(図6参照)の要因)によって、知覚される視覚的な異常箇所のパターンを生成する。
【0029】
正常パターン取得部32は、HDDに予め記憶された正常時のパターン画像を取得する。正常時のパターン画像は、正常な臓器等の身体の部位を撮像した複数種類の断層画像に対して、上記の各処理を同様に行った場合に得られる異常箇所のパターンを表わす画像であり、予め生成してHDDに記憶される。
【0030】
色付け処理部34は、パターン生成部30によって生成された異常箇所のパターンに半透明に色彩を付与すると共に、正常パターン取得部32によって取得された正常時のパターン画像に対しても同様に、異常箇所のパターンに半透明に色彩を付与する。
【0031】
ここで、付与される色彩は、アクセシビリティーを向上させるために、彩度、明度、色相、の効率良いバランスを考慮して決定される。例えば、眼に飛び込む色彩や、完全な補色関係からずらした色彩を用いて隣り合う色のバランスを考える事で、見落としや幻惑を軽減するように、色彩を決定する。
【0032】
また、病状、正常、異常、など表示するべき内容に合わせた色設定を行う事で、知りたい情報を整理して表現するようにしてもよい。
【0033】
また、パターンに使用する色彩と、タッチパネル14に表示される表示画面に利用する色彩のバランスを明確にしておく事で、視るべき事と操作するべき事を効率よく分けるようにしてもよい。
【0034】
アニメーション生成部36は、色付けされたパターンをいずれか1種類の圧縮断層画像の上に重畳させた重畳画像、及び色付けされた正常時のパターンを同じ種類の正常時の圧縮断層画像の上に重畳させた重畳画像を、各断層について連続して表示させるためのアニメーションデータを生成して、タッチパネル14に出力し、アニメーション化した重畳画像を、タッチパネル14に表示させる。
【0035】
アニメーション生成部36は、異常箇所のパターンが存在する断層の重畳画像を表示するときに、スピーカ(図示省略)から警告音を出力するようにしてもよい。音声によるアナウンスによって、視覚のみでは見落としがちな変化やコンピュータが判断する異常などを自動的に知らせ、医師の診断の軽減に役立てることができる。
【0036】
医師は、タッチパネル14に表示されたアニメーション化した重畳画像を見て、注意深く診断したい断層があれば、タッチパネル14を入力操作することによって、診断したい箇所(断層)を指示することができ、入力受付部37は、タッチパネル14の上記の操作入力を受け付ける。
【0037】
また、入力受付部37は、アニメーション速度の変更等や、注意深く判定をしなければならない箇所の一時停止、ピンチによる拡大指示などの入力操作を受け付ける。
【0038】
なお、認知科学の領域である(アフォーダンス)の理論を利用する事によって、タッチパネル14の表示画面において、感覚的に扱えるインターフェースを構築するようにしてもよい。また、CTなどの断層画像とは別に、操作を促すためのアイコンなどにも、色彩やアニメーションなどを付加する事で、操作の行いやすさ、操作ミスの軽減、病原の発見の為の効率の良い手順などをサポートしてもよい。また、異常部位にコメントをつける機能を設けたり、圧縮断層画像のサムネイル表示を行うようにしてもよい。また、タッチパネル14上の表示画面として、入力用の液晶画面とビューワ液晶画面との2つを用意し、ミラーリング表示するようにしてもよい。
【0039】
3Dダイヤグラム生成部38は、タッチパネル14によって入力を受け付けたときに表示されていた重畳画像が表わす断層に対応する圧縮断層画像と、異常判定部28によって該圧縮断層画像の各分割領域について判定された判定結果を表わす3次元記号化画像とを重ねて表示した、図7に示すような3次元画像(3Dダイヤグラム)を生成し、タッチパネル14に表示させる。これによって、医師は、特異箇所を多元的に視認することが可能となる。
【0040】
データ保存部40は、タッチパネル14によって入力を受け付けたときに表示されていた重畳画像が表わす断層に対応する、圧縮前の複数種類の断層画像(オリジナルデータ)を、一時的に記憶されたメモリから取得して、HDDに記憶させる。
【0041】
次に、本実施の形態に係る医療画像表示システム10の作用について説明する。
【0042】
まず、オペレータが、CT、MRI、PETなどの複数種類の医療用撮像装置を用いて、診断対象の臓器等の身体の部位を表わした複数種類の断層画像を、複数の断層の各々について撮像し、撮像された各断層の複数種類の断層画像を、コンピュータ12に入力する。
【0043】
コンピュータ12は、医療画像診断を行う医師から、医療画像を表示するように指示がタッチパネル14を介して操作入力されると、図8に示す医療画像表示処理ルーチンが実行される。
【0044】
まず、ステップ100で、入力された複数種類の断層画像を、各断層について取得して、メモリに一時的に格納する。そして、ステップ102において、各断層画像から、診断対象の臓器等の身体の部位を表わす画像を切り出す。次のステップ104では、上記ステップ102で得られた切り出し画像の各々に対して、空間周波数変換、データ圧縮処理、空間周波数逆変換、及びノイズ除去処理を行って、複数種類の圧縮断層画像を、各断層について生成する。
【0045】
そして、ステップ106では、各圧縮断層画像を複数の分割領域に分割し、複数種類の圧縮断層画像間で、分割領域を対応付けて、位置合わせを行う。次のステップ108では、各圧縮断層画像の各分割領域について、特徴抽出を行い、ステップ110で、複数の分割領域の各々について、当該分割領域と対応付けられた複数種類の圧縮断層画像の分割領域の各々について抽出された特徴に基づいて、当該分割領域が表わす臓器等の身体の部位の部分が、異常箇所であるか否かを判定する。上記ステップ110の異常箇所の判定は、各断層について行われる。
【0046】
そして、ステップ112において、上記ステップ110で判定された、複数の分割領域の各々に対する判定結果に基づいて、異常部分の分割領域のパターンを各断層について生成する。ステップ114では、予め用意された、正常時の臓器等の身体の部位を表わす断層画像から得られる異常部分のパターンを、各断層について取得する。
【0047】
次のステップ116では、上記ステップ114で生成された各断層のパターン、及び上記ステップ114で得られた各断層のパターンに対して、色付け処理を行う。ステップ118において、上記ステップ116で色付け処理が施された各断層のパターンを、対応する各断層の圧縮断層画像に重畳させた、各断層の重畳画像を、診断対象の画像と正常時の画像とについて並べ、各断層について連続表示されるようにアニメーション化したアニメーションデータを生成し、表示させるためにタッチパネル14へ出力する。
【0048】
これによって、タッチパネル14には、各断層の重畳画像が、診断対象の画像と正常時の画像とについて並べられ、かつ、連続して表示される。
【0049】
ステップ120では、医師から、タッチパネル14の入力操作があったか否かを判定し、診断した断層を指示するための入力操作があった場合には、アニメーションの表示を中止して、ステップ122へ進み、タッチパネル14の入力操作によって指示された断層に対応し、かつ、上記ステップ110の各分割領域に対する異常箇所の判定結果を示すデータを取得する。また、ステップ124において、タッチパネル14の入力操作によって指示された断層に対応する何れかの種類の圧縮断層画像を、メモリから取得する。
【0050】
そして、ステップ126において、上記ステップ122で取得した異常箇所の判定結果を示すデータを表わす3次元記号化画像を生成すると共に、上記ステップ124で取得した圧縮断層画像を重畳させた3Dダイヤグラムを生成して、タッチパネル14に表示させる。また、ステップ128において、タッチパネル14の入力操作によって指示された断層に対応し、かつ、上記ステップ100で取得した複数種類の断層画像を、メモリから取得して、HDDに記憶させ、医療画像表示処理ルーチンを終了する。
【0051】
なお、他の断層についても引き続き診断したい場合には、上記ステップ118でアニメーションの表示を再開させて、上記ステップ120〜ステップ128の処理を同様に行えばよい。
【0052】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る医療画像表示システムによれば、CT、MRI、PETなどの複数種類の圧縮断層画像に基づいて判定された異常箇所を表わすパターンを、各断層の圧縮断層画像と重畳させて表示させると共に、この表示に対する医師からの入力操作に対応する断層の圧縮断層画像と異常箇所の判定結果とを表わした3Dダイヤグラムを表示させることにより、多元的な三次元情報を医師が効率よく認識することができるため、医師による医療画像診断において、異常部位を効率的に発見できるように支援することができる。また、異常箇所を表わすパターンに色彩を付与することにより、異常部位をより効率的に発見できるように支援することができる。
【0053】
また、医療情報を医師に対して分かりやすく提示することにより、医師の負担を軽減させながらも、病変の早期発見を可能とする。
【0054】
また、各断層の圧縮断層画像と異常箇所とを重畳させた画像を連続的に表示させるアニメーションデータを生成することによって、見えにくかった異常箇所の変化を見やすくすることができる。
【0055】
また、具体的な断層画像と合わせて、異常箇所判定に関する情報を分かりやすく表示した3Dダイヤグラムを表示することによって、問題点がどこにあるのかを分かりやすく表現する事ができる。
【0056】
また、タッチパネル等の感覚的な操作が行えるデバイスを入力機器にして、直感的な操作感覚(スライド、ピンチ、タップ、ダブルタップ)などを適度に利用することにより、短時間で医師が問題(病原等)にたどり着く事を支援することができる。
【0057】
なお、上記の実施の形態では、タッチパネル式のハードウェア入力方式を用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、マウスやキーボードなどの入力操作端末を用いて、深く診断したい断層を指示するようにしてもよい。
【0058】
また、断層画像に対して周波数分割を行ってデータ圧縮処理を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、図9に示すように、断層画像に対して空間分割を行って、データ圧縮処理を行うようにしてもよい。
【0059】
また、アニメーション化した画像又は3Dダイヤグラムの表示では、1種類の圧縮断層画像を用いて表示した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、2種類以上の圧縮断層画像を合成した合成画像を用いて、アニメーション化した画像又は3Dダイヤグラムの表示を行ってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 医療画像表示システム
12 コンピュータ
14 タッチパネル
20 画像取得部
22 画像圧縮処理部
24 位置合わせ処理部
26 特徴抽出部
28 異常判定部
30 パターン生成部
32 正常パターン取得部
34 色付け処理部
36 アニメーション生成部
37 入力受付部
38 3Dダイヤグラム生成部
40 データ保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象の臓器等の身体の部位における複数の断層を表わす断層画像を撮像する複数種類の医療用撮像装置によって撮像された複数種類の前記断層画像の各々に対して、データ圧縮処理を行った圧縮断層画像を複数種類生成する画像処理手段と、
前記複数種類の圧縮断層画像について、前記圧縮断層画像が表わす臓器等の身体の部位の位置が対応するように、前記圧縮断層画像上の位置の対応付けを行う位置対応付け手段と、
前記複数種類の圧縮断層画像の各々について、前記圧縮断層画像を分割した複数の分割領域の各々の特徴を抽出する特徴抽出手段と、
各断層の前記分割領域の各々について、位置が対応する前記複数種類の圧縮断層画像間で該分割領域と位置が対応する各分割領域について抽出された前記特徴に基づいて、前記臓器等の身体の部位の該分割領域が表わす部分が、異常箇所であるか否かを各々判定する異常判定手段と、
前記異常箇所であると判定された前記分割領域から知覚される視覚的なパターンを各断層について生成するパターン生成手段と、
前記パターン生成手段によって生成された各断層の前記パターンを各断層の前記圧縮断層画像上に重畳させた重畳画像を、各断層について表示装置に連続して表示させる連続表示制御手段と、
前記連続表示制御手段によって前記重畳画像が連続して表示されているときに、ユーザからの入力を受け付ける入力受付手段と、
前記入力受付手段によって入力を受け付けたときに表示されていた前記重畳画像が表わす断層に対応する前記圧縮断層画像と、前記異常判定手段によって該圧縮断層画像の各分割領域について判定された判定結果とを表わす3次元画像を、前記表示装置に表示させる3次元表示制御手段と、
を含む医療画像表示制御装置。
【請求項2】
前記パターン生成手段によって生成された前記パターンに所定の色彩を付与する色彩付与手段を更に含み、
前記連続表示制御手段は、前記色彩付与手段によって前記所定の色彩が付与された前記パターンを前記圧縮断層画像上に重畳させた重畳画像を、各断層について表示装置に連続して表示させる請求項1記載の医療画像表示制御装置。
【請求項3】
前記入力受付手段によって入力を受け付けたときに表示されていた前記重畳画像が表わす断層に対応する、圧縮前の前記断層画像を記憶手段に記憶させる記憶制御手段を更に含む請求項1又は2記載の医療画像表示制御装置。
【請求項4】
コンピュータを、
診断対象の臓器等の身体の部位における複数の断層を表わす断層画像を撮像する複数種類の医療用撮像装置によって撮像された複数種類の前記断層画像の各々に対して、データ圧縮処理を行った圧縮断層画像を複数種類生成する画像処理手段、
前記複数種類の圧縮断層画像について、前記圧縮断層画像が表わす臓器等の身体の部位の位置が対応するように、前記圧縮断層画像上の位置の対応付けを行う位置対応付け手段、
前記複数種類の圧縮断層画像の各々について、前記圧縮断層画像を分割した複数の分割領域の各々の特徴を抽出する特徴抽出手段、
各断層の前記分割領域の各々について、位置が対応する前記複数種類の圧縮断層画像間で該分割領域と位置が対応する各分割領域について抽出された前記特徴に基づいて、前記臓器等の身体の部位の該分割領域が表わす部分が、異常箇所であるか否かを各々判定する異常判定手段、
前記異常箇所であると判定された前記分割領域から知覚される視覚的なパターンを各断層について生成するパターン生成手段、
前記パターン生成手段によって生成された各断層の前記パターンを各断層の前記圧縮断層画像上に重畳させた重畳画像を、各断層について表示装置に連続して表示させる連続表示制御手段、
前記連続表示制御手段によって前記重畳画像が連続して表示されているときに、ユーザからの入力を受け付ける入力受付手段、及び
前記入力受付手段によって入力を受け付けたときに表示されていた前記重畳画像が表わす断層に対応する前記圧縮断層画像と、前記異常判定手段によって該圧縮断層画像の各分割領域について判定された判定結果とを表わす3次元画像を、前記表示装置に表示させる3次元表示制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−177241(P2011−177241A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42591(P2010−42591)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(503034157)学校法人同朋学園名古屋造形大学 (1)
【出願人】(510097747)独立行政法人国立がん研究センター (35)
【Fターム(参考)】