説明

半導体基板処理システム及び半導体基板を処理する方法

【課題】半導体処理装置の耐食性を向上させる、半導体基板処理システム及び半導体基板を処理する方法を提供する。
【解決手段】半導体処理装置用コーティングのシステム及び方法である。半導体基板処理システムは、半導体処理ガスを封じ込めるためのエンクロージャを含む。エンクロージャは、その内側表面が少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで希望の厚さに被膜される。エンクロージャは、半導体基板を処理するための処理チャンバに半導体処理ガスを運ぶための吸込み配管、処理チャンバ、及び使用済み半導体処理ガスを処理チャンバから離れた場所に運ぶための吐出し管、或いはそのいずれかであることが可能である。内側表面は、珪素及びダイアモンド状炭素、或いはそのいずれかを含む追加コーティングを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体集積回路製造の分野に関するものである。より具体的には本発明の実施形態は、半導体処理装置用コーティングのシステム及び使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体業界では、複雑な集積回路半導体デバイスを製造するために専門的な半導体処理システムが利用される。極めて複雑で一層小型化した集積回路デバイスは、進歩したフォトリソグラフィ製造方法、堆積及び専門的ドーピング技法が基板又はウェハに適用されることを必要とし、製造(組立て)プロセスにおいて腐食性及び毒性、若しくは腐食性又は毒性のガスを使用する。かかる例示的プロセスの1つは、単結晶珪素が単結晶基板上で成長するか又は単結晶基板上に堆積する珪素エピタキシーである。例示的プロセスは化学蒸着(CVD)を含み、化学蒸着では水素キャリアガス内の、四塩化珪素(SiCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)及びシラン(SiH)、或いはそのいずれかのような気相珪素源が、珪素基板上を高温(例えば約700℃〜1200℃)で通過してエピタキシャル堆積プロセスが生じる。
【0003】
かかるガスだけでなく、ウェハをその場でエッチングするか又はチャンバをその場で洗浄するために使用される可能性のある塩化水素もまた、一般に高腐食性であり、半導体業界では、半導体処理装置に対する当該ガスの腐食作用の軽減が長く求められてきた。例えば、半導体製造業界では耐食性の向上及び生産区域への金属汚染物質の導入の軽減、或いはそのいずれかのために、ガス配管を「316」ステンレス鋼にすることから、次には「316L」ステンレス鋼の使用へ、その後、「316L」ステンレス鋼と電解研磨との併用へと進んできた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−100781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、歴代デバイス世代において常に減少し続ける重要寸法(CD)と増大し続ける半導体処理単位面積当たりデバイス密度とによって、集積回路デバイスは、腐食作用の影響(例えば金属汚染)を一層受けやすくなった。例えば、1.0μmプロセス向けには許容可能であるような腐食粒子及び密度も、45nmプロセス向けには極めて有害である。よって一般に、かかる腐食性ガスの封じ込め、流動及び処理使用に用いられる従来の技材の耐食性は不十分なものである。
【0006】
従って、半導体処理装置用コーティングのシステム及び方法が必要とされる。加えて、ガスフロー装置から放出される金属汚染を減らす半導体処理装置用コーティングのシステム及び方法も必要とされる。更なるニーズが、保守要求事項が少ない半導体処理装置用コーティングのシステム及び方法に対して存在する。一層更なるニーズが、既存の半導体製造システム及び方法と、適合性及び補完性を有する半導体処理装置用コーティングのシステム及び方法に対して存在する。本発明の実施形態は、これらの利点と、下記説明から明白である通りのその他の利点とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これに応じて、半導体処理装置用コーティングのシステム及び方法が開示される。半導体基板処理システムは、半導体処理ガスを封じ込めるためのエンクロージャを含む。エンクロージャは、その内側表面が少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで希望の厚さに被膜される。エンクロージャは、半導体基板を処理するための処理チャンバに半導体処理ガスを運ぶための吸込み配管、処理チャンバ、及び使用済み半導体処理ガスを処理チャンバから離れた場所に運ぶための吐出し管、或いはそのいずれかであることが可能である。内側表面は、珪素及びダイアモンド状炭素、或いはそのいずれかを含む追加コーティングを含むことができる。
【0008】
本発明の方法実施形態に従って、半導体基板を処理する方法は、半導体処理ガスを吸込み配管を介して処理チャンバに運ぶステップを含む。吸込み配管は、その内側表面が半導体処理ガスに曝露され、内側表面は少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで希望の厚さに被膜される。半導体基板は、処理チャンバ内で処理ガスを用いて処理される。処理は、基板上でのエピタキシャル層の成長、ウェハ洗浄、エッチング、化学蒸着、化学機械研磨、スパッタリング、イオン注入、フォトリソグラフィ、ストリッピング及び拡散、或いはそのいずれかを含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る半導体基板処理システムは、半導体処理装置の耐食性を向上させることができる。
【0010】
本発明に係る半導体基板を処理する方法は、半導体処理装置の耐食性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
添付の図面に例を示した発明の様々な実施形態について、以下に詳細に述べる。これらの実施形態に関連して発明は説明されるが、これらの実施形態が発明をそれらに限定することを意図したものでないことが理解される。逆に発明は、添付の請求項によって規定される通りの発明の趣旨及び範囲内に含まれる可能性のある代替手段、修正及び同等物を対象として含むことを意図したものである。更に、以下の発明の詳細な説明には、発明の完全な理解を提供するために数多くの具体的詳細が記される。しかしながら、これらの具体的詳細なしに発明を実施できることを、当業者は認めるであろう。それ以外の場合、発明の側面を不必要に曖昧にしないように、良く知られた方法、手順、構成要素及び回路については詳細には説明しなかった。
【0012】
以下の詳細な説明のある部分(例えばプロセス400)は、コンピュータによる記録又は制御装置上において、実行可能な手順、ステップ、論理ブロック、処理、及びデータビット上でのその他の操作の記号的表現の形で提示される。これらの説明及び表現は、データ処理技術分野の技能者が、その作業の実体をその他の当業者に最も効果的に伝えるのに用いる手段である。手順、コンピュータ実行ステップ、論理ブロック、プロセスなどは、本明細書でも一般にも、希望の結果をもたらす一連の首尾一貫したステップ又は指示であると考えられる。これらのステップは、物理量の物理的操作を必要とするものである。必ずではないものの通例、当該量は、コンピュータシステム又は制御装置内においてコンピュータシステムが保存、転送、結合、比較及びその他のやり方で操作することのできる電気的又は磁気的信号の形を取る。これらの信号をビット、数値、要素、記号、文字、項、数などと呼ぶことは、それが一般的な使用法であることを主たる理由として時に便利であることが判明している。
【0013】
本発明の例示的実施形態は、珪素ウェハ又は基板上でのエピタキシャル層の形成について示すものであるが、本発明に従った実施形態がかかる例示的なデバイス及び適用に限定されず、多くの半導体製造プロセス及び半導体処理装置タイプに良く適したものであることが、正しく理解される。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に従った一般化した半導体処理装置100の構成図である。処理装置100は、吸込み配管110、処理チャンバ120及び吐出し管140を含む。吸込み配管110、処理チャンバ120及び吐出し管140は、フランジ(図示せず)(例えば、処理装置100のその他の部材との連結を容易にするために用いられる突出リム又は縁端部)を更に含むことができる。例えば、吸込み配管110は、処理チャンバ120の処理チャンバ入口フランジに連結するための吸込み配管フランジを含むことができる。かかるフランジは存在する場合、当該フランジが付属する部材の一部と見なされる。よって、例えば、吸込み配管110は、存在する場合には付属フランジを含む。
【0015】
また、処理装置100は任意に、吸込み多岐管150及び吐出し多岐管160、若しくは吸込み多岐管150又は吐出し多岐管160をも含むことができる。吸込み多岐管150は、吸込み配管110を処理チャンバ120に物理的に適合させる。例えば、吸込み配管110は、断面が概ね円形であることもできるのに対して、処理チャンバ120の内部容積はそれよりもずっと大きく四角張っている。吸込み多岐管150は、吸込み配管110を処理チャンバ120により直接的に連結した場合に生じるものよりも分散した均等な処理ガス分配を、処理チャンバ120に提供する可能性がある。また、吸込み多岐管150は、多数の吸込みパイプ(例えば多数ガス用)を連結して一つにすることもできる。同様に吐出し多岐管16は、処理チャンバ120を吐出し管140により直接的に連結した場合よりも効率的に、処理チャンバから使用済み処理ガスを収集することができる。
【0016】
吸込み配管110は、処理ガスを処理チャンバ120に運ぶ。吸込み配管110は一般に、複雑な形状が可能であり、例えば、吸込み配管110は円管よりも複雑な形状の場合がある。かかる複雑さは、多数ガスの多数供給源、多数吸込み箇所、流量調節機能、保守点検口及びそれらに類似のものを有することに起因する可能性がある。
【0017】
処理チャンバ120は、良く知られた様々な半導体処理ステップ(例えばウェハ洗浄、エッチング、化学蒸着、化学機械研磨、スパッタリング、イオン注入、フォトリソグラフィ、ストリッピング及び拡散或いはそのいずれかなど)に適用できる。良く知られた化学蒸着プロセスの1つは、エピタキシーによる堆積又は「成長」である。処理チャンバ120は、例示的ウェハ又は基板130が処理チャンバ120の内部にある状態で示されている。他にも機能はあるが処理チャンバ120は、ウェハキャリア又はサセプタを、非常に高いレベル(例えば約700℃〜1200℃)に加熱することもできる。同様にウェハ130も、例えば同様の温度に、加熱される可能性がある。
【0018】
吐出し管140は、処理チャンバ120内で使用した後の処理ガスを運び去る。吐出し管140は、スクラバー(図示せず)(例えば、排気流から粒子及びガス、若しくは粒子又はガスを除去するための装置)へのガスフロー配管を含むこともできる。また、吐出し管140は、スクラバー内及びスクラバー外のガスフロー配管をも含むことができる。吐出し管140は、単数又は多数の処理チャンバから処理ガスを受け入れることもでき、使用済み処理ガスを様々なガス捕捉装置(例えば、リサイクル、収集及び濾過装置、或いはそのいずれか)に運ぶ配管だけでなく、ガスを大気中に排出する配管もまた含むことができる。吐出し管140及び吐出し多岐管160、若しくは吐出し管140又は吐出し多岐管160内のガスが、処理チャンバ120の高い処理温度のために非常に高温である可能性があり、また、処理チャンバ120内で発生する化学反応から生じた様々な不純物をも含む可能性があることが、正しく理解されている。
【0019】
上記の通り、吸込み配管110、処理チャンバ120及び吐出し管140内を流れる処理ガスは、一般に高腐食性である。加えて、処理チャンバから出て吐出し管に沿って移動する反応副生成物も、高腐食性である可能性がある。更に、かかるガスフロー構造の定期的な保守及び洗浄に利用される作用物質(例えば硝酸(HNO)及びフッ化水素酸(HF)、若しくは硝酸又はフッ化水素酸)及びそれらの副生成物もまた、腐食性である可能性がある。かかる洗浄用又は洗浄副生成物の化学物質は、有害な汚染物質もまた形成すると思われる。更にまた、定期的な保守及び洗浄は通例、処理装置を「通常の」大気、水及びその他の作用物質に曝露し、当該作用物質は単独でか又はその他の作用物質と共に、追加汚染物質を生成する。よって通常、初期処理ランは、かかる定期的な保守及び洗浄の後、かかる洗浄用及びその他の化学物質が連続的な処理ランによって処理システムから概ね洗い流されるまでは、高度に汚染され一般に不良状態である可能性がある。この回復期間は、生産計画、資源活用及び全体的処理処置能力に悪影響を及ぼす。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に従った半導体処理装置用ガスフロー装置の内側表面200の側面断面図である。内側表面200は、吸込み配管110、処理チャンバ120、吐出し管140、吸込み多岐管150及び吐出し多岐管160、或いはそのいずれかに相当し得る。一般に内側表面200は、かかるガスフロー装置の全ての内側表面に相当する。
【0021】
内側表面200は、従来の厚さの構造材210(例えば316Lステンレス鋼)を含む。炭化珪素のコーティング220は、構造材210の内側表面を被膜する。コーティング220は、様々な厚さに良く適したものである。例えば、コーティング220は、30μm〜0.01μm(100Å)の厚さ230を有することができる。コーティング220は、ガス240の腐食作用から構造材210を保護する。加えてコーティング220は、構造材210の粒子又は構成要素が、例えばガス抜け及び放出、若しくはガス抜け又は放出を介して、ガス240内に出ないようにするために役立つ。
【0022】
一般に炭化珪素コーティングは、使用可能温度を大幅に向上させるために水素含有率が最小限であるべきである。従って一般に、炭化珪素コーティングを形成するために利用する炭素源ガスとしては、水素含有率の低いガス(例えばアセチレン(C))が好ましい。例えばメタン(CH)は、アセチレン(C)よりも水素/炭素比が高い。本発明に従った実施形態がその他のソースガスに良く適したものであることが、正しく理解される。
【0023】
半導体処理業界内では一般に、半導体ガスフロー装置の内側表面のコーティングが忌み嫌われてきたことが、正しく理解されるべきである。例えば、蓄積された従来の業界の教えでは、「コーティングは剥がれて」、粒子汚染(例えば被膜材からの粒子)を減らすというよりもむしろ、粒子汚染(例えばコーティングからの粒子を含む)の有害な増大の一因となるというものである。
【0024】
有利なことに、コーティング220は、その他のタイプのパイプに塗布される従来の炭化珪素コーティングよりも薄いものであることができる。例えば、半導体ガスフロー構成要素(例えば図1の吸込み配管110、処理チャンバ120、吐出し管140、吸込み多岐管150及び吐出し多岐管160、或いはそのいずれか)に共通する複雑な湾曲形状は、直管(例えば円管)又は曲率半径の大きい管に比べて相対的にコーティングが困難である。相対的に薄いコーティング(例えば0.5μm未満)によって、有益なことにコーティング材料内の応力が減り、有利なことに基材(例えば構造材210)へのコーティングの付着力が増してコーティングのひび割れ及び剥がれが減り、それによってコーティング材からの直接的な汚染が減る。
【0025】
加えて、「薄い」コーティング220は一般に、「厚い」コーティングに比べてコーティング処理時間、必要エネルギー及び材料消費量を含め、製造コストの点で有益である。よって、コーティング220を従来技術下のものよりも薄くすることには、多大な利益がある。
【0026】
ガスフロー装置からの汚染物質の有益な削減(例えば、処理装置の金属構造から放出される金属不純物が2分の1〜3分の1になる)が必ずしも、全ての湿潤表面、接触表面又は曝露表面から成る全面的且つ完全なコーティング範囲を要求しないことを、正しく理解するべきである。例えば、パイプの内側表面積の2分の1を被膜すると、金属汚染レベルが以前の2分の1になる場合がある。
【0027】
別の例示的な部分コーティング法は、最大汚染を引き起こすか又は引き起こす可能性が最も高いと見なされる曝露表面のコーティングになる場合がある。例えば、ガスが最も高温である領域(例えば処理チャンバ120、又は吸込み配管110、吸込み多岐管150、吐出し多岐管160の一部、若しくは吐出し管140の、処理チャンバ120に近い部分)が、汚染生成物源になると思われる場合がある。ガスフロー装置のかかる部分のコーティングによって、ガスフロー装置のその他の部分のコーティングに比べて汚染が大幅に減る可能性がある。
【0028】
更に、ガスフロー装置のある部分は、主に非腐食性ガスを運ぶこともできる。例えば水素(H)は、エピタキシャル珪素化学蒸着プロセスにおいて主流又はキャリアガスとして広く使用される。水素は一般に、ステンレス鋼に対して非腐食性である。よって、ガスフロー装置の、主に非腐食性ガスのみを運ぶ部分(例えば、その他の腐食性ガス(例えばジクロロシラン(SiHCl)と混合される手前の水素配管)のコーティングによっては、金属汚染は相対的にほとんど減らない可能性がある。
【0029】
通常、かかるガスフロー製造プロセスには、幾らかの逆流、又はフロー全体と逆方向のガスフローが存在することが、認識されている。例えば、一部のガスは逆流して(例えば、優勢な流れに逆らって流れて)吐出し管140又は吐出し多岐管160から処理チャンバ120(図1)内に戻る可能性がある。即ち、吐出し多岐管160及び吐出し管140が名目上は処理チャンバ120の「下流」にあるにもかかわらず、吐出し多岐管160又は吐出し管140から放出された腐食性生成物が処理チャンバ120内に入り、製造プロセスに損害を与えてしまう可能性がある。同様に腐食性ガスも、主に非腐食性ガスを運ぶように意図された配管内に逆流する可能性がある。従って、ガスフロー装置の、逆流特性に基づく部分のコーティングによって、腐食に関して有益な軽減を達成することができる。
【0030】
汚染が極めて非直線的なプロセスであり、湿潤領域のコーティングによって必ずしも、汚染物質が被膜湿潤領域又はコーティング厚に比例して、直線的に減らない可能性があることが当然、理解される。それにもかかわらず、ガスフロー装置(例えば図1の吸込み配管110、処理チャンバ120、吐出し管140、吸込み多岐管150及び吐出し多岐管160、或いはそのいずれか)内の全ての露出表面の100%未満のコーティング(例えばコーティング220)を通じて、汚染物質の有益な削減を達成することもできる。
【0031】
即ち、本発明の実施形態に従い、コーティング220は、完全(例えば全ての湿潤表面のコーティング)又は連続したものである必要はない。その有益な結果として、半導体処理装置の製造者は、ガスフロー装置のある部分のコーティングを不必要であると確定することもできる。例えば、ある装置の複雑形状の表面にコーティングを塗布することは、相対的に困難である場合がある。むしろ、それほど複雑でないその他の表面のコーティングによって、処理区域内の汚染の有益な軽減を達成することもできる。
【0032】
あるいは半導体処理装置の製造者は、かかる複雑形状の表面に非常に薄いコーティングを塗布しようと試みることもできる。上記の通り、かかる薄いコーティングは、相対的に厚いコーティングよりも、受ける応力が少ないために付着力が高いと思われる。有益なことに、コーティングを相対的に薄くしようとする試みから生じる可能性のあるコーティング範囲の途切れは、破滅的なものではなく、かかる「不完全な」コーティングによってもなお、システム全体内としては望ましい汚染の軽減を実現することもできる。
【0033】
上記の通り、ガスフロー装置(例えば図2に示した通り)は一般に、定期的な保守及び洗浄を必要とする。本発明の実施形態に従って、かかるガスフロー装置の内側湿潤表面の少なくとも一部に塗布した薄い塩化珪素コーティング(例えばコーティング220)によって、定期的な保守及び洗浄活動の量及び頻度、若しくは量又は頻度を、例えば四半期に一回から一年に一回に、減らすこともできる。例えば、被膜配管部分は、従来型配管部分よりも洗浄が「容易」である場合がある。加えて、かかるコーティングは、システムを「洗い流して」望ましいプロセス収量を得るために必要な、保守後の時間及び処理ラン、若しくは保守後の時間又は処理ランの数を減らすこともできる。例えば、被膜配管部分を洗浄するためには、従来型配管部分に比べて、攻撃性の少ない洗浄剤を用いる少ない数の洗浄活動しか必要でない場合がある。更に、かかる攻撃性の少ない洗浄剤によって、要員に対する危険要因が減り、雇用主及び従業員に有利な健康及び安全利益をもたらす可能性がある。更にまた、かかるコーティングは、有利なことに、洗浄剤総量を減少させることができる可能性がある。洗浄剤総量のかかる減少は、洗浄剤コストの低下、エネルギー又は毒性の少ない洗浄剤の使用、及び環境への洗浄剤の影響の減少、或いはそのいずれかといった利益をもたらすこともできる。保守の軽減によるかかる数多くの付加的利益は、半導体製造業者に対する大きな金銭的利益(例えば「ダウンタイム」の短縮による全体的処理能力の向上)を、「通常」処理時の収量の改善(例えば汚染の軽減による)に加えてもたらすこともできる。
【0034】
図3は、本発明の別の実施形態に従った半導体処理装置用ガスフロー装置の内側表面300の側面断面図である。内側表面300は、吸込み配管110、処理チャンバ120、吐出し管140、吸込み多岐管150及び吐出し管160、或いはそのいずれかに相当し得る。一般に内側表面300は、かかるガスフロー装置の全ての内側表面に相当する。
【0035】
内側表面300は、従来の厚さの構造材310(例えば316Lステンレス鋼)を含む。内側表面200(図2)とは対照的に内側表面300は、異なる材料から成る複数のコーティングを含む。
【0036】
構造材310上に隣接して配置されているのが、第一コーティング材320である。第一コーティング材320は、例えば珪素を含むこともできる。第一コーティング材320上に隣接して配置されているのが、第二コーティング材330である。第二コーティング材330は、例えば炭化珪素を含むこともできる。第二コーティング材330上に隣接して配置されているのが、第三コーティング材340である。第三コーティング材340は、例えばダイアモンド状炭素を含むこともできる。ダイアモンド状炭素コーティングは、「半導体処理装置用の薄膜ダイアモンド状コーティング」という標題で2007年12月21日に出願されたディーコンの所有者共通の同時係属米国特許出願第12/004,755号、代理人整理番号EPIC?P001において、より完全に説明され、かかる出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。図3に示した材料の順序及び層の数は例示的なものであることが、正しく理解される。本発明に従った実施形態は、珪素、炭化珪素及びダイアモンド状炭素、或いはそのいずれかを何らかの順序又は組み合わせで含む複数層から成る多層スタックコーティングに良く適したものである。
【0037】
本発明の実施形態に従って多層スタックのコーティングは、単層コーティングに比べて、付着力、耐食性及び製造、或いはそのいずれかの点で有利である可能性がある。例えば、第一コーティングの珪素(例えば層320)は、「下塗り」コーティングの役割を果たし、炭化珪素(例えば層330)と当該珪素コーティングとの間の結合を、炭化珪素と構造材310との間の結合よりも強いものにできる可能性がある。同様にダイアモンド状炭素薄膜は、低温PECVD堆積の炭化珪素よりも、塩酸(HCl)に対して抵抗性が高い可能性がある。対照的に炭化珪素の最内層(例えば層340)は、ダイアモンド状炭素薄膜よりも使用可能温度が高いと思われる。
【0038】
更に炭化珪素は、多結晶を形成する可能性の高い炭素(例えば「ダイアモンド状」又は「グラファイト状」)とは対照的に、安定した単結晶相を形成する。機械的及び化学的耐久性のためには、「ダイアモンド状」結晶形態が一般に好ましい可能性がある。しかしながら、炭素のダイアモンド状構造は確かなものではなく、むしろ、様々な堆積条件(例えばソースガスの不純物、真空の完全さ、温度及びその他の類似のものを含む)によって左右される。1種類の結合だけで構成された薄膜(例えば炭化珪素)を堆積させることが、望ましい場合がある。当業者は、ガスフロー装置の製造及び実利用上の特定のニーズを満たすために、これらの材料の最良の組み合わせを確定することができるはずである。
【0039】
図4は、本発明の実施形態に従った例示的なコンピュータ制御式半導体基板処理方法400のフローチャートである。410において半導体処理ガスは、吸込み配管を介して処理チャンバに運ばれる。例示的な処理ガスには、四塩化珪素(SiCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、シラン(SiH)及び塩酸(HCl)、或いはそのいずれかが含まれるが、それらに限定されない。吸込み配管は、その内側表面が半導体処理ガスに曝露される。内側表面は少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで希望の厚さに被膜される。
【0040】
一実施形態において希望の厚さは、約0.5μm未満とすることができる。本発明に従った実施形態が、その他の厚さの炭化水素コーティングにもまた良く適したものであることが、正しく理解される。別の実施形態において炭化珪素コーティングは概ね、非晶質の炭化珪素(例えば、幾つかの分子寸法を含む固体薄膜内の短範囲規則度を有することを特徴とする炭化珪素)を含む。更に、本発明に従った実施形態が、その他の形態の炭化珪素を含むコーティングに良く適したものであることが、正しく理解される。
【0041】
420において半導体基板は、処理チャンバ内で処理ガスを用いて処理される。本発明の実施形態に従って処理は、基板上でのエピタキシャル層の成長、ウェハ洗浄、エッチング、化学蒸着、化学機械研磨、スパッタリング、イオン注入及び拡散、或いはそのいずれかを含むことができる。本発明の実施形態に従って処理チャンバを少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで約0.5μm未満の希望の厚さに被膜することもできる。
【0042】
任意的な415において処理ガスは、吸込み配管(例えば吸込み配管110(図1))から処理チャンバ(例えば処理チャンバ120(図1))へ吸込み多岐管(例えば吸込み多岐管150(図1))を介して運ばれる。
【0043】
任意的な430において使用済み処理ガスは、処理チャンバから吐出し管を介して排出され、吐出し管内側表面が使用済み処理ガスに曝露される。吐出し管内側表面は少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで希望の厚さに被膜される。
【0044】
任意的な435において処理ガスは、処理チャンバ(例えば処理チャンバ120(図1))から吐出し管(例えば吐出し管140(図1))へ吐出し多岐管(例えば吐出し多岐管160(図1))を介して運ばれる。
【0045】
本発明に従った実施形態は、半導体処理装置用の炭化珪素コーティングのシステム及び方法を提供する。また、本発明に従った実施形態は、ガスフロー装置から放出される金属汚染を減らす半導体処理装置用炭化珪素コーティングのシステム及び方法をも提供する。加えて、保守要求事項が少ない半導体処理装置用炭化珪素コーティングのシステム及び方法も提供される。更に、本発明に従った実施形態は、既存の半導体製造のシステム及び方法と適合性及び補完性を有する半導体処理装置用炭化珪素コーティングのシステム及び方法も提供する。
【0046】
これに伴い、発明の様々な実施形態が説明される。本発明を特定の実施形態において説明してきたが、かかる実施形態によって発明が制限されると解釈せず、むしろ、発明を下記請求項に従って解釈すべきであることが、正しく理解されるべきである。
【0047】
本明細書に組み込まれてその一部を形成する添付の図面は、発明の実施形態を図で示したものであり、説明文と併せて、本発明の原理を説明するために役立つ。別途記載のない限り、図面は正しい縮尺では描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に従った一般化した半導体処理装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に従った半導体処理装置用ガスフロー装置の内側表面の側面断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に従った半導体処理装置用ガスフロー装置の内側表面の側面断面図である。
【図4】本発明の実施形態に従った例示的なコンピュータ制御式半導体基板処理方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
100 処理装置
110 吸込み配管
120 処理チャンバ
130 基板
140 吐出し管
150 吸込み多岐管
160 吐出し多岐管
200 内側表面
210 構造材
220 コーティング
230 コーティングの厚さ
240 ガス
300 内側表面
310 構造材
320 第一コーティング材
330 第二コーティング材
340 第三コーティング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板処理システムであって、
半導体処理ガスを封じ込めるエンクロージャであって、内側表面を有する前記エンクロージャを含み、
前記内側表面が少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで希望の厚さに被膜される
半導体基板処理システム。
【請求項2】
前記エンクロージャが、前記半導体基板を処理する処理チャンバを含む
請求項1に記載の半導体基板処理システム。
【請求項3】
前記エンクロージャが、前記半導体基板を処理する処理チャンバへ前記半導体処理ガスを運ぶ吸込み配管を含む
請求項1または請求項2に記載の半導体基板処理システム。
【請求項4】
前記エンクロージャが、前記吸込み配管を前記処理チャンバに連結する吸込み多岐管を含む
請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体基板処理システム。
【請求項5】
前記内側表面が更に少なくとも部分的に、珪素及びダイアモンド状炭素を含むセットの材料で被膜される
請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体基板処理システム。
【請求項6】
前記エンクロージャが、前記半導体基板を処理する処理チャンバから離れた場所へ使用済み半導体処理ガスを運ぶ吐出し管を含む
請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体基板処理システム。
【請求項7】
前記エンクロージャが、前記処理チャンバを前記吐出し管に連結する吐出し多岐管を含む
請求項6に記載の半導体基板処理システム。
【請求項8】
前記炭化珪素コーティングが、前記吐出し多岐管の、前記半導体処理ガスを再び前記処理チャンバへ運ぶ可能性のある部分に塗布される
請求項7に記載の半導体基板処理システム。
【請求項9】
前記炭化珪素コーティングが、前記吐出し管の、前記半導体処理ガスを再び前記処理チャンバへ運ぶ可能性のある部分に塗布される
請求項6に記載の半導体基板処理システム。
【請求項10】
前記内側表面上の前記炭化珪素コーティングが、前記半導体基板に対する金属汚染を、無被膜エンクロージャに比べて少なくとも50%減らすために十分なものである
請求項1〜9のいずれか1つに記載の半導体基板処理システム。
【請求項11】
前記炭化珪素コーティングが、非晶質の炭化珪素を含む
請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体基板処理システム。
【請求項12】
半導体基板を処理する方法であって、該方法が、
吸込み配管を介して半導体処理ガスを処理チャンバへ運ぶステップであって、
前記吸込み配管の内側表面が、前記半導体処理ガスに曝露され、
前記内側表面が少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで希望の厚さに被膜されているステップと、
前記処理チャンバ内で前記処理ガスを用いて前記半導体基板を処理するステップとを含む
半導体基板を処理する方法。
【請求項13】
前記処理するステップが、前記半導体基板上でのエピタキシャル層の成長を含む
請求項12に記載の半導体基板を処理する方法。
【請求項14】
前記処理するステップが、ウェハ洗浄、エッチング、化学蒸着、化学機械研磨、スパッタリング、イオン注入、フォトリソグラフィ、ストリッピング及び拡散の少なくとも1つを含む
請求項12または請求項13に記載の半導体基板を処理する方法。
【請求項15】
前記炭化珪素コーティングが、非晶質の炭化珪素を含む
請求項12〜14のいずれか1つに記載の半導体基板を処理する方法。
【請求項16】
前記炭化珪素コーティングの前記希望の厚さが約0.5μm未満である
請求項12〜15のいずれか1つに記載の半導体基板を処理する方法。
【請求項17】
前記処理チャンバから吐出し管を介して使用済み処理ガスを排出し、吐出し管内側表面が前記使用済み処理ガスに曝露されるステップであって、前記吐出し管内側表面が少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで希望の厚さに被膜されているステップを更に含む
請求項12〜16のいずれか1つに記載の半導体基板を処理する方法。
【請求項18】
前記処理チャンバの内側表面が少なくとも部分的に、炭化珪素コーティングで約0.5μm未満の希望の厚さに被膜される
請求項12〜17のいずれか1つに記載の半導体基板を処理する方法。
【請求項19】
半導体基板処理システムであって、
半導体基板を処理する処理チャンバであって前記処理において半導体処理ガスが用いられる処理チャンバと、
前記半導体処理ガスを前記処理チャンバへ運ぶ吸込み配管と、
使用済み半導体処理ガスを前記処理チャンバから離れた場所へ運ぶ吐出し管とを含み、
前記処理チャンバ、前記吸込み配管及び前記吐出し管の内側表面が少なくとも部分的に、少なくとも2つの層で被膜され、各層が、炭化珪素、珪素及びダイアモンド状炭素を含むセットから取られた異なる材料から成る
半導体基板処理システム。
【請求項20】
前記炭化珪素コーティングが、非晶質の炭化珪素を含む
請求項19に記載の半導体基板処理システム。
【請求項21】
前記炭化珪素コーティングが約0.5μm未満の厚さである
請求項19または請求項20に記載の半導体基板処理システム。
【請求項22】
前記処理チャンバ、前記吸込み配管及び前記吐出し管、或いはそのいずれかの内側表面から放出された前記処理チャンバ内の金属汚染物質が、前記処理チャンバ、前記吸込み配管及びは前記吐出し管、或いはそのいずれかが無被膜の場合に比べて少なくとも50%減少する
請求項19〜21のいずれか1つに記載の半導体基板処理システム。
【請求項23】
前記処理チャンバ、前記吸込み配管及び前記吐出し管、或いはそのいずれかの定期的保守が、前記処理チャンバ、前記吸込み配管及び前記吐出し管、或いはそのいずれかが無被膜の場合に比べて少なくとも50%軽減される
請求項19〜22のいずれか1つに記載の半導体基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−152534(P2009−152534A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197261(P2008−197261)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(503424196)エピクルー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】