説明

半導体封止用エポキシ樹脂シート部材及びその製造方法

【課題】半導体素子の圧着成形による樹脂封止において、成形時の不良発生(未充填、金線変形、ボイド発生、半導体移動等)が極めて少ない優れた半導体封止用エポキシ樹脂シート部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも(A)融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンの粒径50μm以下の粉体及び/又は霧状体、(B)エポキシ樹脂、並びに(C)無機充填材を溶融混練してなり、かつ、該結晶性ポリアルファオレフィンを0.2〜5質量%含有する封止材料からなる封止層を有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材であって、さらに、該封止層の片面又は両面に保護フィルムを有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、及び、融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で噴霧して封止材料を製造する工程と、保護フィルムに融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で塗布又は噴霧して剥離層を形成する工程とを含む半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂シート部材及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、半導体装置を圧着成形法により樹脂封止する場合、特に、半導体装置を一括封止法により樹脂封止する場合に適した半導体封止用エポキシ樹脂シート部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信分野に於ける急速な技術進歩に呼応して、電子機器の性能向上、軽薄短小化および低コスト化が強く求められている。この要求は、半導体を廉価な成形材料を用いてトランスファー成形により封止する大量生産方法を普及させた。この方法は、成形材料を金型内で溶融流動させ半導体を封止する方法である。現在は、多数の半導体を個別に樹脂封止する方法が主流である。近年、更なる合理化および低コスト化を進めるため、一括封止法が提案され一部で採用される動きとなっている。ここでいう一括封止法とは、半導体素子を整列搭載した子基板を樹脂封止する方法の総称であり、半導体業界ではMAP(モールディングアレイパッケージ)と呼ばれる半導体装置の樹脂封止方法を示す。一括封止法は、従来の方法に比べて効率面で大きく優れる。例えば、子基板や成形材料の使用量を少なくできる、金型の寸法を小さく且つ種類を少なくできる等の利点がある。
【0003】
しかしながら、一括封止法は様々な技術課題があり汎用化には至っていない。例えば、成形時に反りを生じ個別の半導体装置に切断することが難しい、外部電極接続用金線の間隙が狭い3DP(積層型パッケージ)では金線変形が発生し易い、異種半導体を搭載するSiP(システムインパッケージ)では成形材料が細部へ充填し難い等の問題がある。
【0004】
一括封止法においては、130℃以上の高温で半導体搭載子基板上に成形材料を注入し硬化する。反りは、成形品が室温に冷却される時に収縮率の大きい樹脂側に曲がる現象である。この低減方法は、成形材料の熱膨張率を小さくし半導体に近づけるのが一般的である。具体的には、シリカ配合量を増やし樹脂成分(エポキシ樹脂、硬化剤)の軟化点を下げる手法が採用されている。しかし、成形材料の粘度上昇による成形不良(未充填、ボイド発生)や樹脂成分の金型面への流出による作業性低下等の問題を抱えている。また、細部充填が重要な3DPやSiPでは、成形材料の固形成分であるシリカを微粒化する必要があり成形材料の粘度上昇を避けることが難しい。この結果、金線変形や半導体移動といった不良が発生する。
【0005】
この問題を解決すべく、封止材料の流動距離を短くする成形方法が検討されている。封止材料を半導体基板全体に拡げ加熱溶融させた後に圧着し更に加圧加熱し半導体装置を製造する方法(以下、圧着成形と称する)である。しかし、圧着成形を利用しても既存の封止材料を使用すると成形不良問題は改善されない。すなわち、実用性や工業性の技術検討が未だに不十分で問題の解決には至っていない。
【0006】
半導体業界では、合理的で効率的な一括封止法への期待は極めて高く、この方法が抱える問題の解決が強く要求されている。本発明者らは、半導体装置の更なる薄短小化および低コスト化を可能とする圧着成形による一括封止法に適した新しい封止材料を提供するものである。
【0007】
一般的に、剥離性フィルムは熱可塑性樹脂製フィルムの上に剥離層を形成している。例えば、易剥離性樹脂(ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系の樹脂類)や離型剤(シリコーン系、フッソ系の樹脂類)で被膜している。フィルム材質は耐熱性や耐溶剤性等の要求水準に合ったものが使用されている。
【0008】
また、従来のトランスファー成形材料では、ポリオレフィン類を離型剤として使用する例が報告されている。これは、金型から成形品を円滑に取り出すために微量添加するもので、主に長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸金属塩および長鎖脂肪酸等が使用される。ポリオレフィン類を微量使用する例もあるが、半導体やリードフレームとの密着性を良くするため変性品(酸化型ポリエチエンワックス等)が用いられる。また、成形品の反りで生じる応力を緩和するため熱可塑性樹脂類を添加する例も報告されている。この場合、主に柔軟性に優れるが流動性で劣る熱可塑性エラストマーが用いられている。
【0009】
【特許文献1】特開平6−211963号公報
【特許文献2】特開平8−012850号公報
【特許文献3】特開平11−333869号公報
【特許文献4】特開2002−212529号公報
【特許文献5】特開2004−155853号公報
【特許文献6】特開2004−224849号公報
【特許文献7】特開2004−300239号公報
【特許文献8】特開2006−117919号公報
【特許文献7】特開2007−031585号公報
【非特許文献1】日経マイクロデバイス 1984.6.11、P82−92
【非特許文献2】電子材料2003年3月号、P87−90
【非特許文献3】電子材料2004年8月号、P44−70
【非特許文献4】電子材料2007年7月号別冊、P68−70
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような状況下で、半導体素子の圧着成形による樹脂封止において、成形時の不良発生(未充填、金線変形、ボイド発生、半導体移動等)が極めて少ない優れた半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、特に、圧着成形一括封止法に最適な半導体封止用エポキシ樹脂シート部材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、好ましくは溶融状態で噴霧添加された特定の融点と粒径を有する結晶性ポリアルファオレフィンと、エポキシ樹脂及び無機充填材を溶融混練してなる半導体封止用エポキシ樹脂シート部材により、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
1.少なくとも(A)融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンの粒径50μm以下の粉体及び/又は霧状体、(B)エポキシ樹脂、並びに(C)無機充填材を溶融混練してなり、かつ、該結晶性ポリアルファオレフィンを0.2〜5質量%含有する封止材料からなる封止層を有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材であって、さらに、該封止層の片面又は両面に保護フィルムを有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、
2.前記結晶性ポリアルファオレフィンが、融点の−15℃以内で融解を開始し+3℃以内で融解を終了するものである上記1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、
3.前記保護フィルムの封止層側に、融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを含む厚さ0.1〜10μmの剥離層を有する上記1又は2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、及び
4.融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で噴霧して封止材料を製造する工程と、保護フィルムに融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で塗布又は噴霧して剥離層を形成する工程とを含むことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材は、半導体素子の圧着成形による樹脂封止において、成形時の不良発生(未充填、金線変形、ボイド発生、半導体移動等)が極めて少ない、優れた半導体封止用エポキシ樹脂シート部材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材は、少なくとも(A)融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンの粒径50μm以下の粉体及び/又は霧状体、(B)エポキシ樹脂、並びに(C)無機充填材を溶融混練してなり、かつ、該結晶性ポリアルファオレフィンを0.2〜5質量%含有する封止材料からなる封止層を有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材であって、さらに、該封止層の片面又は両面に保護フィルムを有する。
【0014】
上記融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィン(以下、結晶性ポリアルファオレフィンと略すことがある。)としては、上記規定を満たすものであれば特に限定されないが、炭素数10以上のα−オレフィン単量体を1種以上重合して、あるいは、炭素数10以上のα−オレフィン単量体を1種以上と他のオレフィンとを重合して得られたものが好ましい。
上記炭素数10以上のα−オレフィン単量体の具体例としては、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ヘンエイコセン、1−ドコセン、1−トリコセン、1−テトラコセン、1−ペンタコセン、1−ヘキサコセン、1−ヘプタコセン、1−オクタコセン、1−ノナコセン、1−トリアコンテン、1−ヘントリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−トリトリアコンテン、1−テトラトリアコンテン、1−ペンタトリアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−テトラコンテン、1−ペンタコンテン、1−ヘキサコンテン、1−ヘプタコンテン、1−オクタコンテン、1−ノナコンテン、1−オクタノナコンテン、1−ノナノナコンテン、1−ヘクテン、1−ヘンヘクテン、1−ドヘクテン、1−トリヘクテン等が挙げられ、これらのうち炭素数18〜40のものが好ましく用いられる。
上記のα−オレフィン単量体は、1種を単独で用いることもできるが、2種以上のα−オレフィン単量体の混合物を用いることもできる。
また、2種以上のα−オレフィン単量体として、単量体の市販品同士のブレンド品や混合体の市販品を用いることが可能であり、例えば、リニアレン2024〔出光興産株式会社製:商品名〕等の市販品を用いることができる。
【0015】
本発明において、上記α−オレフィン単量体を重合して、結晶性ポリアルファオレフィンを得るに際しては、触媒として、メタロセン化合物やTi−Mg系化合物などが好適に用いられる。
メタロセン化合物としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−トリメチルシリルメチル−インデニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'− ジメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(3−n−ブチル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(n−ブチル−インデニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、1,1'−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロライド、及びジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ジルコニウムジクロライド等のジルコニウムジクロライド化合物;並びにこれらのジルコニウムジクロライド化合物のジクロライドをジメチル或いはジベンジルに置換した化合物等のジルコニウム化合物;並びにこれらのジルコニウム化合物のジルコニウムをチタニウム又はハフニウムに置換したチタニウム化合物やハフニウム化合物等が挙げられる。これらのメタロセン化合物は、2種以上を併用してもよい。
また、この触媒として、通常、前記メタロセン化合物に加えて、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等の有機ホウ素化合物が用いられる。
【0016】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材に用いられる封止材料は、上記結晶性ポリアルファオレフィンを0.2〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%含有することで、流動性に優れるものである。結晶性ポリアルファオレフィンの含有量が0.2質量%未満であると、流動性の向上効果が得られず、5質量%を超えると成形品の強度低下等の問題が起こる。
上記結晶性ポリアルファオレフィンとしては、融点が30〜90℃、好ましくは40〜80℃のものが用いられる。結晶性ポリアルファオレフィンの融点が30℃未満であると粉砕時や打錠時に融着等の問題が発生するため、半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の製造時の作業性が悪化し、また、結晶性ポリアルファオレフィンが封止材料より分離溶出する。上記融点が90℃を超えると成形時の流動性が低下するため、封止材料の品質バラツキ等の問題が起こる可能性がある。
また、上記結晶性ポリアルファオレフィンは、粒径が50μm以下、好ましくは20μm以下の粉体及び/又は霧状体として用いられる。粒径が50μmを超えると、成形時に溶出する等の問題が発生する可能性がある。
上記(A)成分として結晶性ポリアルファオレフィンの粉体を用いる場合には、例えば、原料のポリアルファオレフィンをカッターミル等を用いて微粉砕し、所定の目開きの篩を用いることで、所望の粒径以下の粉体を得ることができる。また、結晶性ポリアルファオレフィンの霧状体を用いる場合には、結晶性ポリアルファオレフィンを溶融噴霧して添加するが、溶融噴霧時の噴霧条件(溶融温度、ノズル径、噴霧圧力等)を適宜調節することで粒径を任意に制御することができるので霧状体の使用が好ましい。霧状の(A)結晶性ポリアルファオレフィンの粒径は透明フィルムに結晶性ポリアルファオレフィンを噴霧しフィルム上の液滴の粒径を計測して確認することができる。
上記(A)結晶性ポリアルファオレフィンは、融解温度幅が狭いものを用いることが好ましく、具体的には、融点の−15℃以内で融解を開始し+3℃以内で融解を終了するものが好ましい。ここで、(A)結晶性ポリアルファオレフィンが融解を開始する温度は、パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用い、試料を窒素雰囲気下190℃で5分保持した後、−30℃まで、5℃/分で降温させ、−30℃で5分保持した後、190℃まで10℃/分で昇温させる際の吸熱を開始する温度とし、融解を終了する温度は吸熱が完全に無くなる温度とした。
【0017】
一般に、結晶性ポリアルファオレフィンの競合として、同程度の融点を持つパラフィンワックスが知られている。両者の融解特性を比較すると、本願発明において用いられる結晶性ポリアルファオレフィンは結晶性であるため、上述のように融解温度幅が極めて狭いという特徴を有する。融点40℃程度の両者を比べると、パラフィンワックスは室温で融解を始めるため成形材料の室温加工には不適であるが、結晶性ポリアルファオレフィンは室温で固体のため全く問題がない。また、結晶性ポリアルファオレフィンは40℃になると直ちに融解し粘度が低下する。すなわち、本願発明において用いられる結晶性ポリアルファオレフィンは、融解温度幅が極めて狭いため、成形材料の製造加工時の作業性および成形時の流動性に優れるという特徴を有する。
【0018】
結晶性ポリアルファオレフィンは熱安定性に優れ、汎用のポリオレフィンワックスに比べて高温保管時の品質変化(酸化等)が少ない。通常、ポリオレフィンワックスは融点が100℃以上と高く、熱可塑性樹脂成形材料の離型剤として使用される。熱硬化性樹脂成形材料の場合には、離型性の効果はあまり期待できず密着性や粘着性を向上させる添加剤として利用される。この場合も予め変質させた酸化型製品を用い成形材料中での品質安定性の保持を図っている。すなわち、結晶性ポリアルファオレフィンは従来の離型剤として使用されるポリオレフィンワックスとは特性が異なる。
【0019】
上記(B)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールGジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ビスフェノールCジグリシジルエーテル等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートなどの脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂などの含フッ素エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(B)エポキシ樹脂の具体例としては、半導体封止材料用として市販されている各種製品が挙げられるが、例えば、日本化薬、大日本インキ化学工業、JER社製のエポキシ樹脂を挙げることができる。一括封止用成形材料では、エポキシ樹脂は多芳香環型低分子量品が主に用いられている。
上記(B)エポキシ樹脂は、常温で固形でも液状でもよいが、一般に、使用する(B)エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は100〜2000のものが好ましい。平均エポキシ当量が100より小さい場合には、半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の硬化体が脆くなる場合がある。また、平均エポキシ当量が2000を超える場合には、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる場合がある。
【0020】
上記(C)無機充填材としては、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タルク、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレイ、チタンホワイト等の粉体、ガラス、カーボン等の短繊維が例示される。これらの中で熱膨張率と熱伝導率の点から、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素粉体が好ましく、特にシリカ粉体が好ましい。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材に用いられる封止材料は流動性に優れるが、シリカ粉体を含有するものであると、流動性の向上効果が顕著に得られる。さらに、上記封止材料の流動性を考えるとその形状は球状、又は球形と不定形の混合物が好ましい。上記シリカとしては、例えば、半導体封止材料用として市販されている製品より任意に選択できる。具体的には、龍森、電気化学工業又はマイクロン社製のシリカ粉体を挙げることができ、粗粒を除去した熔射型球状品が主に用いられている。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材に用いられる封止材料は(C)無機充填材を80〜98質量%含有するものが好ましく、85〜95質量%含有するものがより好ましい。特に、封止材料が、粒径50μm以下のシリカを85質量%以上含有する場合には、従来では封止材料の粘度が極めて高くなり半導体装置の樹脂封止が困難であったところ、本願発明において用いられる封止材料は結晶性ポリアルファオレフィンを含むため、流動性に優れるという顕著な効果が発現する。
【0021】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材に用いられる封止材料は、本発明の効果に悪影響を与えない範囲において、エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、改質剤、難燃剤、顔料、離型剤 やその他の添加剤を含有してもよく、これらの成分としては、使用可能な特性を有しているものを適宜用いることができ、半導体封止材料用として市販されている製品等より任意に選択できる。これらの成分の具体例としては、大日本インキ化学工業、群栄化学工業、明和化成社製のエポキシ樹脂硬化剤、四国化成・北興化学工業・サンアプロ社製のエポキシ樹脂硬化促進剤を挙げることができる。一括封止用成形材料では、エポキシ樹脂硬化剤は多芳香環型低分子量品、エポキシ樹脂硬化促進剤はリン化合物が主に用いられている。
【0022】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材は、封止層の片面又は両面に保護フィルムを有する。上記保護フィルムとしては、高純度で圧着成形に耐える材質のものならば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、液晶ポリマー、ポリイミド(PI)等を挙げることができる。また、剥離性は特に必要としないので、品質とコストを勘案し任意に選択することができる。
上記保護フィルムは、封止層側の面に0.1〜10μm程度の厚みで結晶性ポリアルファオレフィンを含む剥離層が設けられていることが好ましく、結晶性ポリアルファオレフィンからなる剥離層が設けられていることがより好ましい。剥離層の厚みが0.1μm以上であると、封止層からの保護フィルムの剥離が容易となり、10μm以下であると、成形品の外観不良等の問題が起こりにくい。
【0023】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材に用いられる封止材料を製造する方法は特に限定されないが、結晶性ポリアルファオレフィンを均一分散することが好ましいため、結晶性ポリアルファオレフィンを微粉砕して用いる方法や、溶融状態で噴霧する方法が挙げられるが、以下に示す本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の製造方法における封止材料を製造する工程によれば、結晶性ポリアルファオレフィンを均一分散することができるため特に好ましい。
また、保護フィルム上に、結晶性ポリアルファオレフィンを用いて剥離層を形成する方法も、保護フィルムの封止層側の面に結晶性ポリアルファオレフィンが均一に分散される方法であれば特に限定されず、結晶性ポリアルファオレフィンを溶媒に溶解し、得られた溶液を保護フィルムに塗布した後、溶媒を乾燥除去する方法等を用いることもできるが、以下に示す本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の製造方法における結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で塗布又は噴霧する工程によれば、結晶性ポリアルファオレフィンを均一に分散可能であり、簡便であり、かつ、異物混入の問題も起こりにくい。
【0024】
本発明はまた、融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で噴霧して封止材料を製造する工程と、保護フィルムに融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で塗布又は噴霧して剥離層を形成する工程とを含む、上記半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の製造方法をも提供する。
結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で噴霧する工程における溶融温度、ノズル径、噴霧圧力等の噴霧条件は、結晶性ポリアルファオレフィンの霧状体の粒径が50μm以下となる条件であれば特に限定されず、また、用いられる結晶性ポリアルファオレフィンの性状によっても異なるが、例えば、溶融温度50〜200℃程度、ノズル径0.001〜0.1mm程度、噴霧圧力0.1〜10atm程度である。
上記工程においては、結晶性ポリアルファオレフィンを、溶融状態で噴霧して封止材料を製造するが、少なくとも(B)エポキシ樹脂及び(C)無機充填材を含む原料を混合しつつ、結晶性ポリアルファオレフィンを噴霧して添加する方法が好ましく、結晶性ポリアルファオレフィン以外の全ての原料を混合しつつ、結晶性ポリアルファオレフィンを噴霧して添加する方法が特に好ましい。
【0025】
保護フィルムに結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で塗布又は噴霧する工程では、例えば、保護フィルム上に、溶融状態の結晶性ポリアルファオレフィンを、ナイフコーター、バーコーター又はロールコーティング等の公知の方法により塗布したり、スプレー等の公知の方法により噴霧したりして、所望の膜厚となるように塗布することができる。
【0026】
図1は、半導体素子を一括封止法により樹脂封止した半導体装置の例(3DP、SiP)を模式図で示したものである。1は成形材料、2は半導体素子、3は金線、4は子基板、5は半導体装置である。この図の3DPは、半導体を3個積層し金線で子基板と電気接続した構造である。SiPは、左から半導体、反転型半導体、半導体装置を子基板に搭載したものである。これら3DPおよびSiPは、半導体部品間の間隙が非常に狭いので、高粘度の成形材料を注入した場合、成形時に不良(金線変形、未充填、半導体移動等)が発生する可能性が高い。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の成形材料およびその製造方法に関して、実施例及び比較例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0028】
製造例1((1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの製造)
シュレンク瓶に(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)のリチウム塩 3.0g(6.97ミリモル)をTHF(テトラヒドロフラン)50ミリリットルに溶解し−78℃に冷却した。
ヨードメチルトリメチルシラン2.1ミリリットル(14.2ミリモル)をゆっくりと滴下し室温で12時間撹拌した。
溶媒を留去しエーテル50ミリリットルを加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。
分液後、有機相を乾燥し溶媒を除去して(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88ミリモル)を得た(収率84%)。
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に前記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88ミリモル)とエーテル50ミリリットルとを入れた。
−78℃に冷却しn−BuLiのヘキサン溶液(1.54モル/L、7.6ミリリットル(11.7ミリモル))を滴下した。
温度を室温とし12時間撹拌後、エーテルを留去した。
得られた固体をヘキサン40ミリリットルで洗浄することによりリチウム塩をエーテル付加体として3.06g(5.07ミリモル)を得た(収率73%)。
1H−NMR(90MHz、THF−d8)による測定の結果は、δ:0.04(s、18H、トリメチルシリル);0.48(s、12H、ジメチルシリレン);1.10(t、6H、メチル);2.59(s、4H、メチレン);3.38(q、4H、メチレン)、6.2−7.7(m,8H,Ar−H)であった。
【0029】
窒素気流下で得られたリチウム塩をトルエン50ミリリットルに溶解した。
−78℃に冷却し、ここへ予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1ミリモル)のトルエン(20ミリリットル)懸濁液を滴下した。
滴下後、室温で6時間撹拌した。その反応溶液の溶媒を留去した。
得られた残渣をジクロロメタンにより再結晶化することにより、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを0.9g(1.33ミリモル)を得た(収率26%)。
1H−NMR(90MHz、CDCl3)による測定の結果は、δ:0.0(s、18H、トリメチルシリル);1.02,1.12(s、12H、ジメチルシリレン);2.51(dd、4H、メチレン);7.1−7.6(m,8H,Ar−H)であった。
【0030】
製造例2(CPAO−70の製造)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、Chevron Phillips Chemical社製アルファオレフィンC26−28 400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを加え、110℃に昇温した。ついで攪拌しながら、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1.0マイクロモル、ジメチルアニリニウムボレートを4.0マイクロモル加え、更に水素を0.2MPa導入し、240分間重合した。重合反応終了後、アセトンで再沈操作を繰り返すことにより、反応物を析出させ、減圧下、加熱乾燥することにより、高級αオレフィン重合体(CPAO−70)を195g得た。
【0031】
上記CPAO−70について、パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用い、試料を窒素雰囲気下190℃で5分保持した後、−30℃まで、5℃/分で降温させ、−30℃で5分保持した後、190℃まで10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから観測されるピークトップを測定し、融点を求めたところ、70℃であった。また、融解を開始する温度は、55℃であり、融解を終了する温度を求めたところ、71℃であった。
【0032】
製造例3(CPAO−60の製造)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、Chevron Phillips Chemical社製アルファオレフィンC20−24 400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを加え、110℃に昇温した。ついで攪拌しながら、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1.0マイクロモル、ジメチルアニリニウムボレートを4.0マイクロモル加え、更に水素を0.2MPa導入し、240分間重合した。重合反応終了後、アセトンで再沈操作を繰り返すことにより、反応物を析出させ、減圧下、加熱乾燥することにより、高級αオレフィン重合体(CPAO−60)を203g得た。
また、上記CPAO−60について、製造例2と同様にして融点を求めたところ、60℃であり、融解を開始する温度を求めたところ、45℃であり、融解を終了する温度を求めたところ、61℃であった。
【0033】
製造例4(CPAO−50の製造)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、出光興産(株)製「リニアレン2024」400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを加え、110℃に昇温した。ついで攪拌しながら、製造例1で得られた(1,2‘−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1.0マイクロモル、ジメチルアニリニウムボレートを4.0マイクロモル加え、更に水素0.2MPa導入し、240分間重合した。
重合反応終了後、アセトンで再沈操作を繰り返すことにより、反応物を析出させ、減圧下、加熱乾燥することにより、高級αオレフィン重合体(CPAO−50)を210g得た。
また、上記CPAO−50について、製造例2と同様にして融点を求めたところ、52℃であり、融解を開始する温度を求めたところ、37℃であり、融解を終了する温度を求めたところ、53℃であった。
【0034】
製造例5(CPAO−40の製造)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、1−オクタデセン(C18)400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを加え、110℃に昇温した。ついで攪拌しながら、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1.0マイクロモル、ジメチルアニリニウムボレートを4.0マイクロモル加え、更に水素0.2MPa導入し、240分間重合した。重合反応終了後、アセトンで再沈操作を繰り返すことにより、反応物を析出させ、減圧下、加熱乾燥することにより、高級αオレフィン重合体(CPAO−40)を211g得た。
また、上記CPAO−40について、製造例2と同様にして融点を求めたところ、42℃であり、融解を開始する温度を求めたところ、30℃であり、融解を終了する温度を求めたところ、45℃であった。
【0035】
製造例6(CPAO−28の製造)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、1−ヘキサデセン(C16)400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを加え、110℃に昇温した。ついで攪拌しながら、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1.0マイクロモル、ジメチルアニリニウムボレートを4.0マイクロモル加え、更に水素を0.2MPa導入し、240分間重合した。重合反応終了後、アセトンで再沈操作を繰り返すことにより、反応物を析出させ、減圧下、加熱乾燥することにより、高級αオレフィン重合体(CPAO−28)を205g得た。
また、上記CPAO−28について、製造例2と同様にして融点を求めたところ、28℃であり、融解を開始する温度を求めたところ、15℃であり、融解を終了する温度を求めたところ、30℃であった。
【0036】
図2に製造例5で得られた結晶性ポリアルファオレフィンとパラフィンワックス(日本精鑞株式会社製:パラフィンワックス115)の融解特性を示す。図2に示されている、製造例5で得られた融点42℃の結晶性ポリアルファオレフィン(CPAO−40)とパラフィンワックスの融解特性を比べると、結晶性ポリアルファオレフィンの融解温度幅が狭いことが一目瞭然である。図3は融点の異なる結晶性ポリアルファオレフィン(28℃、40℃、70℃)の融解特性を示す図である。融解温度幅が狭いという特徴は融点が変化しても同じである。
【0037】
実施例1
封止材料基準で85.5質量%の球状シリカ粉体(FB9454FD、粒径≦45μm、電気化学工業株式会社製)、エポキシ樹脂(YX4000H、ジャパンエポキシレジン株式会社製)7質量%、エポキシ樹脂硬化剤(MEH7800、明和化成株式会社製)5質量%、エポキシ樹脂硬化促進剤(TPP、ケイアイ化成株式会社製)0.2質量%および改質剤(S530、チッソ株式会社製)0.3質量%をヘンシェル型混合機に入れ、製造例4で得られたCPAO−50(融点52℃)2質量%を、粒径が15±5μmとなるように調整しつつ、溶融噴霧しながら攪拌混合し、封止材料を得た。CPAO−50の粒径は、透明フィルムにCPAO−50を噴霧しフィルム上の液滴の粒径を計測したところ、25μm以下であった。つぎに、混合物を押出機(SK1、株式会社栗本鐵工所製)で混錬した後、製造例5で得られたCPAO−40を溶融塗布した保護フィルム(PET、75μm厚、東レ株式会社製)に挟み込み半導体封止用エポキシ樹脂シート部材を得た。CPAO−40の溶融塗布時の厚みは、6±3μmになるように調整した。この部材の片面の保護フィルムを剥した後、模擬半導体基板(チップサイズ 10mm×10mmの176pinLQFP、外形24mm×24mm×1.4mm)を圧着成形(金型温度150℃、硬化時間3分)により封止し、剥離性、充填性、金線変形、外観について、下記の方法で評価した。なお、剥離性、充填性、金線変形、外観評価に用いた模擬半導体部品は、片面銅箔基板に半導体を整列配置する擬似回路配線を加工し、半導体は搭載せずに半導体相当部と外部接続用端子部を金線で結線したものである。
【0038】
(剥離性)
エポキシ樹脂シート部材よりフィルムを剥がし、フィルム上に付着した封止材料を目視で確認し、以下の基準で評価した。
◎: 封止材料の付着は認められない。
○: 封止材料の付着が全体の1%以下(面積)、封止材料はシート原型を保持した。
△: 封止材料の付着が全体の5%未満、封止材料はシート原型を保持した。
×: 封止材料の付着が全体の5%以上、又は、封止材料は原型を保持せず。
(外観)
成形により封止された模擬半導体部品の外観を顕微鏡で観察し、以下の基準で評価した。
◎: 10μm以上の外観異常(割れ・欠け・へこみ・異物等)が無い。
○: 10〜30μmの外観異常は2個以下/成形品であり、かつ、30μm以上の外観異常は無い。
△: 10〜30μmの外観異常は5個以下/成形品であり、かつ、30μm以上の外観異常は無い。
×: 10〜30μmの外観異常は6個以上/成形品であるか、又は、30μm以上の外観異常が有る。
(充填性)
成形により封止された模擬半導体部品を0.1mm研磨しその表面を顕微鏡で観察し、外観と同様の基準で評価した。
◎: 10μm以上の外観異常(割れ・欠け・へこみ・異物等)が無い。
○: 10〜30μmの外観異常は2個以下/成形品であり、かつ、30μm以上の外観異常は無い。
△: 10〜30μmの外観異常は5個以下/成形品であり、かつ、30μm以上の外観異常は無い。
×: 10〜30μmの外観異常は6個以上/成形品であるか、又は、30μm以上の外観異常が有る。
(金線変形)
成形により封止された模擬半導体部品を軟X線装置で観察し、以下の基準で評価した。
無: 金線変形率(金線流れ幅/金線長さ、%表示)<2%
小: 金線変形率 <5%
大: 金線変形率 ≧5%
【0039】
実施例2
製造例4で得られたCPAO−50に代えて、製造例2で得られたCPAO−70(融点70℃)を溶融噴霧した以外は実施例1と同様にして半導体封止用エポキシ樹脂シート部材を製造し、剥離性、充填性、金線変形、外観について評価した。
【0040】
実施例3
製造例5で得られたCPAO−40に代えて、製造例3で得られたCPAO−60(融点60℃)を保護フィルムに溶融塗布した以外は実施例1と同様にして半導体封止用エポキシ樹脂シート部材を製造し、剥離性、充填性、金線変形、外観について評価した。
【0041】
実施例4
製造例5で得られたCPAO−40を溶融し、保護フィルムに噴霧して厚さ12±4μmの塗膜を形成した以外は実施例1と同様にして半導体封止用エポキシ樹脂シート部材を製造し、剥離性、充填性、金線変形、外観について評価した。
【0042】
比較例1
実施例1において、結晶性ポリアルファオレフィンを使用せず、球状シリカ粉体の配合量を87.5質量%としてシート部材を製造し剥離性、充填性、金線変形、外観について評価した。得られた部材の剥離性は非常に悪く、封止材料の一部が保護フィルムに付着した。また、封止材料の溶融粘度が高く、注入性が非常に悪く正常な成形品が得られなかった。
【0043】
比較例2
製造例4で得られたCPAO−50の代わりに製造例6で得られたCPAO−28(融点28℃)を使用した以外は実施例1と同様にしてシート部材を製造し、剥離性、充填性、金線変形、外観について評価した。
【0044】
比較例3
実施例2において、製造例2で得られたCPAO−70を溶融噴霧する方法に代えて、CPAO−70の粗粒(粒径50μm以上)を使用した以外は実施例2と同様にしてシート部材を製造し、剥離性、充填性、金線変形、外観について評価した。CPAO−70の粗粒は、CPAO−70を微粉砕し、目開き50μmの篩網を用いて篩分した後、篩網上に残ったものを使用した。
【0045】
比較例4
製造例4で得られたCPAO−50の添加量を6質量%に増加し、球状シリカ粉体を81.5質量%に減少した以外は実施例1と同様にしてシート部材を製造し、剥離性、充填性、金線変形、外観について評価した。この材料のフィルム剥離性は良好であったが、成形品のバラツキが非常に大きく正しい評価結果が得られなかった。
【0046】
実施例1〜4及び比較例1〜4の内容と評価結果を第1表に示す。実施例1〜4及び比較例1〜4で得られたシート部材の剥離性、充填性、金線変形、外観を比較すると、実施例1〜4の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材が抜群に優れることがわかる。また、比較例2および比較例3の封止材料は、剥離性、充填性、金線変形及び外観評価のバラツキも大きかった。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材は、半導体封止用圧着成形用シート部材として用いた場合に成形性に優れており、特に、一括封止法において抜群の性能を発揮する。成形時の諸問題のため実用化が困難であった最先端半導体装置の樹脂封止を可能とするシート部材であり、既存の設備を使用して最先端の半導体装置を工業的に生産することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一括封止型半導体装置の例を示す図である。
【図2】製造例5で得られた結晶性ポリアルファオレフィン及びパラフィンワックスの融解特性を示す図である。
【図3】製造例2、5及び6で得られた融点の異なる結晶性ポリアルファオレフィンの融解特性を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1:成形材料
2:半導体
3:金線
4:子基板
5:半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンの粒径50μm以下の粉体及び/又は霧状体、(B)エポキシ樹脂、並びに(C)無機充填材を溶融混練してなり、かつ、該結晶性ポリアルファオレフィンを0.2〜5質量%含有する封止材料からなる封止層を有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材であって、さらに、該封止層の片面又は両面に保護フィルムを有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材。
【請求項2】
前記結晶性ポリアルファオレフィンが、融点の−15℃以内で融解を開始し+3℃以内で融解を終了するものである請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材。
【請求項3】
前記保護フィルムの封止層側に、融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを含む厚さ0.1〜10μmの剥離層を有する請求項1又は2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材。
【請求項4】
融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で噴霧して封止材料を製造する工程と、保護フィルムに融点が30〜90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で塗布又は噴霧して剥離層を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−3897(P2010−3897A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161657(P2008−161657)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】