説明

半導体発光素子

【課題】発光むらが低減された半導体発光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の半導体発光素子1は、n型半導体層21、発光層22及びp型半導体層23が積層された半導体層20と、n型半導体層21に接続されたn側電極30と、p型半導体層23上にp側透光性電極44を有し、p側透光性電極44に接続されたp側電極40と、を備えた半導体発光素子であって、半導体発光素子1を上面から見て、p側電極40は、n側電極32を囲むように形成されたp側延伸部46、47、48とp側パッド電極42とを有し、n側電極30は、n側パッド電極32とn側延伸部36とを有し、n側延伸部36はp側パッド電極42方向に向かって延びるn側第1延伸部36とp側パッド電極42方向と異なる方向に延びるn側第2延伸部37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光むらが低減された半導体発光素子(Light Emitting Device:以下「LED」と記す)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体発光素子において、発光むらを改善させるために、外部電源と接続するpパッド電極から細長いp側電極を延伸させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに発光むらを改善するために、pパッド電極から伸びる直線状のp側電極と、nパッド電極から伸びるn側電極とを交互に配列した半導体発光素子が知られている(例えば、特許文献2〜3参照)。
【0003】
また、発光領域内部に設けられたn側電極を、延伸部を設けたp側電極で囲んだ半導体発光素子も知られている(例えば、特許文献4〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−281426号公報
【特許文献2】特開2002−319704号公報
【特許文献3】特開2001−345480号公報
【特許文献4】特開2005−183910号公報
【特許文献5】特開2003−179263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では一方のパッド電極から延びる電極が他方のパッド電極に直線上に延びていることから電流が集中する部分がある。特許文献2では電流が供給されるパッドから電極の短部が相当な距離で離隔されるので、他の隣接部分に比して低い光出力を示す部分がある。特許文献3では一方のパッド電極から延びる電極が他方のパッド電極に直線上に延びていることから電流が集中する部分がある。特許文献4及び5は電流が供給されるpパッド電極が一つであるため、pパッド電極とnパッド電極との間の発光と、pパッド電極を除く電極とnパッド電極との間の発光と、で明るさに違いが生じている。
【0006】
そこで、本発明は発光むらが低減された半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体発光素子は、n型半導体層及びp型半導体層が積層された半導体層と、前記n型半導体層に接続されたn側電極と、前記p型半導体層上にp側透光性電極を有し、該p側透光性電極に接続されたp側電極と、を備えた半導体発光素子であって、前記半導体発光素子を上面から見て、前記p側電極は、前記n側電極を囲むように形成されたp側延伸部とp側パッド電極とを有し、前記n側電極は、n側パッド電極とn側延伸部とを有し、該n側延伸部は前記p側パッド電極方向に向かって延びるn側第1延伸部と前記p側パッド電極方向と異なる方向に延びるn側第2延伸部とを備える。これにより発光むらを低減することができる。また、Vfを低減することもできる。ここで「n側電極を囲む」とは、O字のようにn側電極を完全に囲っていなくてもよく、C字のように一部開口していてもよい。
【0008】
前記半導体発光素子を上面から見て、前記n側延伸部は、略T字状であることが好ましい。これにより発光むらを低減することができる。これは電流せき止め効果によるものと考えられる。
前記半導体発光素子を上面から見て、前記p側延伸部は略U字状であることが好ましい。発光部分を広面積にすることができる。
前記半導体発光素子を上面から見て、前記p側延伸部は前記n側パッド電極方向に対し垂直な方向に延びるp側第1延伸部と該p側第1延伸部から垂直な方向に延びるp側第2延伸部とを備え、前記p側パッド電極と前記n側第2延伸部との最短距離は、前記p側第2延伸部と前記n側第2延伸部との最短距離よりも長いことが好ましい。p側パッド電極
とn側第2延伸部との間の過剰な電流集中を抑制することができる。
前記半導体発光素子を上面から見て、前記p側延伸部は前記n側第1延伸部方向に向かって延びるp側第3延伸部を有することが好ましい。これによりn側第1延伸部とp側延伸部との距離を短くすることができ発光むらをさらに低減することができる。
前記半導体発光素子を上面から見て、前記n側パッド電極は、前記p側パッド電極よりも大きいことが好ましい。これによりn側パッド電極とp側第2延伸部との距離を短くすることで発光むらを低減することができるからである。
前記n側電極及び前記p側電極は、少なくとも各2以上複数有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体発光素子は、発光むらを低減することができる。「発光むら」とは、光取出し面側から見たときに、発光部の発光が不均一に見えることであり、例えば光が他と比べて暗部があるものなどをいい、発光むらが改善されるとは、発光部の発光が均一に近づくことをいう。また、Vfを低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略平面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略斜視図である。
【図4】第2の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略平面図である。
【図5】実施例1に係る半導体発光素子の発光分布を示すシミュレーション図である。
【図6】実施例2に係る半導体発光素子の発光分布を示すシミュレーション図である。
【図7】比較例1に係る半導体発光素子の発光分布を示すシミュレーション図である。
【図8】比較例2に係る半導体発光素子の発光分布を示すシミュレーション図である。
【図9】実施例1及び2、比較例1及び2に係る半導体発光素子のVf変動のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及び、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。また発明を理解しやすくするために、実施形態を分けて説明するが、これらの実施形態はそれぞれ独立するものではなく、共有できるところは他の実施形態の説明を適用できる。
【0012】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態に係る半導体発光素子について図面を用いて詳述する。図1は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略平面図である。図2は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略断面図である。図3は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略斜視図である。ただし、説明の便宜上、図1と図2は同一縮尺ではない。半導体発光素子の平面を上面と呼ぶ。
【0013】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子1は、基板10の上にn型半導体層21、発光層22及びp型半導体層23を順に積層した半導体層20を備えている。半導体発光素子1を上面から見て、p型半導体層23及び発光層22を部分的に除去してn型半導体層21を露出させている。通電時、発光部5は、露出されたn型半導体層21を除いてp型半導体層23が発光しているように見える。半導体発光素子1の上面はn側パッド電極32、p側パッド電極42の一部を除いて短絡防止のために絶縁性の保護膜50で覆われている。基板10の裏面はメタライズ60が施されている。
【0014】
半導体発光素子1は、一対のn側電極30とp側電極40と2つ備えている。
p側電極40は、p側パッド電極42と、p側透光性電極44と、p側延伸部(p側第1延伸部46、p側第2延伸部47、p側第3延伸部48)と、を備えている。p側透光性電極44はp型半導体層23上に備えられており、p側透光性電極44はp側パッド電極42と電気的に接続されており、p側パッド電極42はp側延伸部と電気的に接続されている。p側第1延伸部46、p側第2延伸部47,p側第3延伸部48は、連続的に形成されており、U字状を2つ並べた形状を成している。
【0015】
n側電極30は、n側パッド電極32と、n側延伸部(n側第1延伸部36、n側第2延伸部37)と、を備えている。n側パッド電極32は、n型半導体層21上に備えられており、n側パッド電極32はn側延伸部と電気的に接続されている。n側第1延伸部36、n側第2延伸部37は、連続的に形成されており、T字状に形成されたものを2つ有している。n側電極30は、p側半導体層23の上面に伸びて、外部電極(図示せず)と電気的に接続される。そして、n側電極30とp型半導体層23と間には絶縁膜(図示せず)が形成されており、n側電極30とp型半導体層23との短絡を防止している。
【0016】
p側パッド電極42を半導体発光素子1の外周付近に配置している。ワイヤーボンディングを行いやすくするためである。しかし、p側パッド電極42を半導体発光素子1のやや内側に配置してもよい。例えば、半導体発光素子1の一辺を1とした場合、n側パッド電極32が配置されている側と対向する一辺からp側パッド電極42の中心までは0.15〜0.30の位置に配置してもよい。p側パッド電極42と最も近い半導体発光素子1の外周までの間も発光しているからである。
【0017】
p側パッド電極42及びp側第1延伸部46、p側第2延伸部47,p側第3延伸部48は、p型半導体層23上に備えたp側透光性電極44の表面の一部に形成されている。p側第1延伸部46、p側第2延伸部47,p側第3延伸部48は、n側電極30をC字状に囲むように形成されている。p側第1延伸部46は、p側パッド電極42からn側パッド電極32に向かう方向に対し垂直な方向に延びており、p側第2延伸部47はp側第1延伸部46から垂直な方向に延びており、p側第3延伸部48はp側第2延伸部47から垂直な方向に延びている。p側第1延伸部46とp側第2延伸部47との交点は丸みを帯びているが、直交していてもよい。p側第2延伸部47は直線上に延びる部分と先端の湾曲状の部分とを有する。このp側第2延伸部47の先端の湾曲状はn側パッド電極32の円形状と距離を同じにするように円弧状となっていることが好ましい。n側p側パッド電極32とp側第2延伸部47の先端付近の距離が等距離となり均一に発光しやすいからである。さらにp側第3延伸部48は、n側第1延伸部方向36に向かって延びている。
【0018】
また、p側第1延伸部46、p側第2延伸部47(3本のうち真ん中は除く)は半導体発光素子1の外周に配置されていることが好ましい。これにより発光面積を広くとることができ、半導体発光素子1の外周が暗くなるのを抑制することができる。
【0019】
n側パッド電極32は、発光する領域内に孤立して形成される。p型半導体層23及び発光層22を上面から見て円形状にエッチングしている。半導体発光素子1の一辺を1とした場合、p側パッド電極42が配置されている側と対向する一辺からn側パッド電極32の中心までは0.20〜0.35の位置に配置されている。つまりn側パッド電極32の中心とp側パッド電極42の中心との距離は0.75〜0.60離れている。より好ましくは、半導体発光素子1の一辺を1とした場合、p側パッド電極42が配置されている側と対向する一辺からn側パッド電極32の中心までは0.25〜0.30の位置に配置されている。つまりn側パッド電極32の中心とp側パッド電極42の中心との距離は0.65〜0.60離れている。
【0020】
n側パッド電極32及びn側第1延伸部36、n側第2延伸部37は、n型半導体層21上に形成されている。n側第1延伸部36、n側第2延伸部37は、T字状に形成されている。n側第1延伸部36は、n側パッド電極32からp側パッド電極42に向かって直線上に延びている。n側第2延伸部37はn側第1延伸部36から垂直な方向に延びている。
n側第1延伸部36とp側第2延伸部47は平行な部分を有している。また、n側第2延伸部37とp側第1延伸部46は平行な部分を有している。また、n側第2延伸部37とp側第3延伸部48は平行な部分を有している。
n側第2延伸部37の長さはp側パッド電極42の直径よりも大きいことが好ましい。これにより電流せき止め効果をより効果的に実現することができるからである。また、n側第2延伸部37の長さはn側パッド電極32の直径よりも大きいことが好ましい。これにより電流せき止め効果をより効果的に実現することができるからである。
【0021】
半導体発光素子1を上面から見て、n側パッド電極32はp側パッド電極42よりも大きい方が好ましい。p側第2延伸部47とn側パッド電極32との距離を縮めることができるからである。p側第2延伸部47の先端部分とn側パッド電極32との距離は等距離であることが好ましい。p側第2延伸部47の直線部分とn側第1延伸部36との距離も等距離であることが好ましい。また、p側第2延伸部47の先端部分及び直線部分とp側第3延伸部48で囲まれた部分とn側パッド電極32との距離は等距離であってもよいが、n側第1延伸部36があるため、p側第2延伸部47の先端方向(p側パッド電極42と離れる方向)にずれていることが好ましい。p側パッド電極42とn側第2延伸部37との最短距離は、p側第2延伸部47の直線部分とn側第2延伸部37との最短距離よりも広いことが好ましい。電流集中を抑制することができるからである。n側第2延伸部37の長さはp側第1延伸部46の長さの半分であることが好ましく、p側第3延伸部48の長さはp側第1延伸部46の長さの半分であることが好ましい。n側第2延伸部37とp側第2延伸部47との距離と、p側第3延伸部48とn側第1延伸部36との距離が等しくなることが好ましい。
ただし、半導体発光素子1を上面から見て、n側パッド電極32はp側パッド電極42と同等若しくは小さくすることもできる。n側パッド電極32を小さくすることで発光部5を拡大することができるからである。このときはn側パッド電極32とp側第2延伸部47との距離を近くすることが好ましい。
【0022】
一対のn側電極30とp側電極40とが2つ用いられている。2つのp側電極40を別々に形成しても良いが、p側第2延伸部47を共通にすることが好ましい。このときp側第2延伸部47の先端はそれぞれに対応するn側パッド電極32と等距離となるように分岐していることが好ましい。
【0023】
また、2つのp側パッド電極42を有することで上面から見たとき半導体発光素子1を正方形にすることができる。このとき2つのp側パッド電極42の間のp側第2延伸部47を共通にすることでp側第2延伸部47を3本としている。これにより発光むらを低減することができる。これはp側第2延伸部47を4本とした場合、内側2本の間が暗くなるためである。
次に、各構成部材について詳述する。
【0024】
(基板10)
基板は、半導体結晶をエピタキシャル成長させるのに適した材料から形成される。窒化物半導体のエピタキシャル成長に適した基板としては、C面、A面、R面のいずれかを主面とするサファイア(A1)やスピネル(MgA12)のような絶縁性基板、またSiC(6H、4H、3C)、シリコン、ZnS、ZnO、GaAs、ダイヤモンド;LiNbO、NdGaO等の酸化物基板、窒化物半導体基板(GaN、AlN等)等が挙げられる。また、半導体成長面がオフアングルした基板、或いは凹凸構造が設けられた基板であってもよい。なお、基板は、最終的に除去することもできる。さらに、透光性を有する基板であれば、半導体素子構造を積層した主面に対向するもう一方の主面側を光取り出し面とすることも可能である。
【0025】
(半導体層20)
半導体発光素子を構成する発光部としては、いわゆる発光ダイオード、レーザーダイオードなどが好適である。発光部の形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形又はこれに近い形状のものを利用することができる。特に、三角形、四角形、六角形などの形状であると、半導体発光素子を形成する際に、複数の発光部を緻密に配置できるので好ましい。
【0026】
発光部の構造としては、MIS接合、PIN接合、PN接合等のホモ構造、ヘテロ結合あるいはダブルヘテロ結合のものが挙げられる。また、半導体発光層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造、多重量子井戸構造としてもよい。発光層には、Si、Ge等のドナー不純物及び/又はZn、Mg等のアクセプター不純物がドープされる場合もある。得られる半導体発光素子の発光波長は、半導体の材料、混晶比、発光層のInGaNのIn含有量、発光層にドープする不純物の種類を変化させる等によって、紫外領域から赤外領域まで変化させることができる。
【0027】
発光部に含まれるn型半導体層、発光層及びp型半導体層23は、例えば、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等、種々の半導体から形成することができる。特に、n型半導体層、発光層、p型半導体層は、窒化物半導体から形成するのが好ましい。
【0028】
窒化物半導体から成る発光部の具体例としては、例えば、AlGaNよりなるバッファ層、アンドープGaN層、Siドープn型GaNよりなるn側コンタクト層、GaN層とInGaN層とを交互に積層させた超格子構造のn側クラッド層、GaN層とInGaN層とを交互に積層させた多重量子井戸構造の発光層、MgドープAlGaN層とMgドープInGaN層とを交互に積層させた超格子構造のp側クラッド層、MgドープGaNよりなるp側コンタクト層を含むことができる。
【0029】
(n側電極30、p側電極40(以下、特に指摘なければ「電極」と呼ぶ))
n側電極はパッド電極と延伸部とにより構成され、p側電極はパッド電極、透光性電極、延伸部とにより構成される。各延伸部は対応するパッド電極と電気的に接続される。よって、延伸部が低抵抗な状態で接続できるように、電極の材料が選択される。電極を積層構造で設ける場合、例えばAu、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Tiのいずれかの金属またはこれらの合金やそれらの組み合わせとすることができる。具体的な一例として、窒化物半導体層やp側透光性電極44と接続する側からTi/Rh/Au、W/Pt/Au、Rh/Pt/Au、W/Pt/Au/Ni、Pt/Au、Ti/Rhなどを用いて構成することができる。
【0030】
発光部上のp型半導体層に設けられるp側透光性電極は、p型半導体層の全面に設けられることが好ましい。発光層からの光は、このp側透光性電極を通って外部に放出される。そのため、p側透光性電極には、特に、発光層で発生する光の波長域における光透過率が大きい材料が好適に用いられる。例えば、p側透光性電極としては、In、Zn、Sn、Ga、W、Tiから選択される少なくとも1種を含む導電性の酸化物、具体的には、ITO、IZO、ZnO、In、SnO、TiO及びこれらの複合酸化物が挙げられる。
【0031】
(保護膜50)
保護膜は、n側パッド電極、p側パッド電極の上面の一部を除いて、発光部の全面を覆っている。保護膜の材料として、SiO、Al、ZrO、TiOなどの単層膜または多層膜を用いることができる。保護膜を備えることにより、ショート等を防ぎ、歩留まりや信頼性を向上することができる。
【0032】
(メタライズ60)
半導体発光素子の裏面にはメタライズを施している。半導体層から放出された光を上面側に効率よく反射させるためである。メタライズは基板の全面に反射率の高い材料を設けることが好ましい。メタライズの材料はAl、Agなどである。
【0033】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係る半導体発光素子101は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子1と、n側電極、p側電極の数が異なる以外はほぼ同じである。図4は、第2の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略平面図である。
【0034】
第2の実施の形態に係る半導体発光素子101は、基板110の上にn型半導体層121、発光層122及びp型半導体層123を順に積層した半導体層120を備えている。半導体発光素子101を上面から見て、p型半導体層123及び発光層122を部分的に除去してn型半導体層121を露出させている。通電時、発光部105は、露出されたn型半導体層121を除いてp型半導体層123が発光しているように見える。半導体発光素子101の上面はn側パッド電極132、p側パッド電極142の一部を除いて短絡防止のために絶縁性の保護膜150で覆われている。基板110の裏面はメタライズ160が施されている。
【0035】
半導体発光素子101は、一対のn側電極130とp側電極140を備えている。
p側電極140は、p側パッド電極142と、p側透光性電極144と、p側延伸部(p側第1延伸部146、p側第2延伸部147、p側第3延伸部148)と、を備えている。p側透光性電極144はp型半導体層123上に備えられており、p側透光性電極144はp側パッド電極142と電気的に接続されており、p側パッド電極142はp側延伸部と電気的に接続されている。p側第1延伸部146、p側第2延伸部147,p側第3延伸部148は、連続的に形成されており、U字状を成している。p側第2延伸部147の先端はn側パッド電極132と等間隔となるように円弧状となっている。
このように半導体発光素子101を上面から見て、長方形であっても発光むらを低減することができる。
【実施例】
【0036】
実施例1及び2に係る半導体発光素子は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子1に基づいている。図1は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略平面図である。図2は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略断面図である。図3は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子を示す概略斜視図である。図5は、実施例1に係る半導体発光素子の発光分布を示すシミュレーション図である。図6は、実施例2に係る半導体発光素子の発光分布を示すシミュレーション図である。図7は、比較例1に係る半導体発光素子の発光分布を示すシミュレーション図である。図8は、比較例2に係る半導体発光素子の発光分布を示すシミュレーション図である。図9は実施例1及び2、比較例1及び2に係る半導体発光素子のVf変動のシミュレーション結果である。図5乃至9は有限要素法によりn側第2延伸部の効果を比較した結果である。実施例に係る半導体発光素子について説明するに際し、第1の実施の形態に係る半導体発光素子1と同一のところは説明を省略することもある。
【0037】
実施例1と実施例2はn型半導体層21の厚みが異なる以外は同様の構成を採る。つまり実施例1のn型半導体層21の厚みに対し、実施例2のn型半導体層21の厚みは1/2である。
実施例1及び2に係る半導体発光素子1は、基板10の上にn型半導体層21、発光層22及びp型半導体層23を順に積層した半導体層20を備えている。半導体発光素子1を上面から見て、p型半導体層23及び発光層22を部分的に除去してn型半導体層21を露出させている。半導体発光素子1の上面はn側パッド電極32、p側パッド電極42の一部を除いて保護膜50で覆われている。基板10の裏面はメタライズ60が施されている。
【0038】
半導体発光素子1は、一対のn側電極30とp側電極40と2つ備えている。
p側電極40は、p側パッド電極42と、p側透光性電極44と、p側延伸部(p側第1延伸部46、p側第2延伸部47、p側第3延伸部48)と、を備えている。p側透光性電極44はp型半導体層23上に備えられており、p側透光性電極44はp側パッド電極42と電気的に接続されており、p側パッド電極42はp側延伸部と電気的に接続されている。p側第1延伸部46、p側第2延伸部47,p側第3延伸部48は、連続的に形成されており、U字状を2つ並べた形状を成している。
n側電極30は、n側パッド電極32と、n側延伸部(n側第1延伸部36、n側第2延伸部37)と、を備えている。n側パッド電極32は、n型半導体層21上に備えられており、n側パッド電極32はn側延伸部と電気的に接続されている。n側第1延伸部36、n側第2延伸部37は、連続的に形成されており、T字状に形成されたものを2つ有している。そして、n側電極30とp型半導体層23と間には絶縁膜(図示せず)が形成されている。
【0039】
基板10にはサファイアを用いる。n型半導体層21が形成される側のサファイアの上面は凹凸加工がなされている。n型半導体層21、発光層22及びp型半導体層23は窒化物半導体が積層されている。主波長は405nmである。半導体発光素子1の大きさは1000μm×1000μm×150μmである。実施例1のn型半導体層21の厚みは6.0μmであるのに対し、実施例2のn型半導体層21の厚みは3.0μmである。
n側パッド電極32は直径140μmであり、p側パッド電極42は直径100μmである。n側パッド電極32及びp側パッド電極42はTi、Rh、W、Auを含む積層構造であり、p側透光性電極44はITOである。保護膜50はSiOを用い200nmで被覆している。メタライズ60はAlを用いている。
【0040】
比較例1はn側第2延伸部を有していない以外は実施例1と同様の構成を採る。また同様に、比較例2はn側第2延伸部を有していない以外は実施例2と同様の構成を採る。比較例1のn型半導体層の厚みは6.0μmであるのに対し、比較例2のn型半導体層の厚みは3.0μmである。
【0041】
以上の構成にすることにより、実施例1のn側第2延伸部37を設けた方が比較例1のn側第2延伸部を設けないよりも、電流密度分布が均一となっている。特にn側第1延伸部36の周囲の電流密度分布が均一となっている。
また、実施例1の方が、比較例1よりもVfが低く抑えられている。特に、実施例1と比較例1の差よりも実施例2と比較例2との差の方が大きく、n型半導体層21の厚みを薄くしたときにVf低減の効果が顕れている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の半導体発光素子は、照明用光源、各種インジケーター用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、液晶のバックライト用光源、センサー用光源、信号機、車載部品、看板用チャンネルレター等、種々の光源に使用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1、101 半導体発光素子
5、105 発光部
10、110 基板
20、120 半導体層
21、121 n型半導体層
22、122 発光層
23、123 p型半導体層
30、130 n側電極
32、132 n側パッド電極
36、136 n側第1延伸部
37、137 n側第2延伸部
40、140 p側電極
42、142 p側パッド電極
44、144 p側透光性電極
46、146 p側第1延伸部
47、147 p側第2延伸部
48、148 p側第3延伸部
50、150 保護膜
60、160 メタライズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体層及びp型半導体層が積層された半導体層と、
前記n型半導体層に接続されたn側電極と、
前記p型半導体層上にp側透光性電極を有し、該p側透光性電極に接続されたp側電極と、を備えた半導体発光素子であって、
前記半導体発光素子を上面から見て、
前記p側電極は、前記n側電極を囲むように形成されたp側延伸部とp側パッド電極とを有し、
前記n側電極は、n側パッド電極とn側延伸部とを有し、該n側延伸部は前記p側パッド電極方向に向かって延びるn側第1延伸部と前記p側パッド電極方向と異なる方向に延びるn側第2延伸部とを備えることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記半導体発光素子を上面から見て、前記n側延伸部は、略T字状であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記半導体発光素子を上面から見て、前記p側延伸部は略U字状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記半導体発光素子を上面から見て、前記p側延伸部は前記n側パッド電極方向に対し垂直な方向に延びるp側第1延伸部と該p側第1延伸部から垂直な方向に延びるp側第2延伸部とを備え、
前記p側パッド電極と前記n側第2延伸部との最短距離は、前記p側第2延伸部と前記n側第2延伸部との最短距離よりも長いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記半導体発光素子を上面から見て、前記p側延伸部は前記n側第1延伸部方向に向かって延びるp側第3延伸部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記半導体発光素子を上面から見て、前記n側パッド電極は、前記p側パッド電極よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記n側電極及び前記p側電極は、少なくとも各2以上複数有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−164782(P2012−164782A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23491(P2011−23491)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】