説明

半導体積層体の製造方法

【課題】信頼性の高い半導体積層体を製造することのできる半導体積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】貫通電極用溝2が形成されたウエハ1の貫通電極用溝2を有する面に、半導体加工用テープ4を介して支持体5を積層する工程(1)と、ウエハ1を半導体加工用テープ4と反対側の面から研削し、貫通電極用溝2を露出させる工程(2)と、露出した貫通電極用溝2に電極部6を形成する工程(3)と、ウエハ1の半導体加工用テープ4と反対側の面に封止樹脂層7を形成する工程(4A)と、封止樹脂層7を介してウエハ1にダイシング用テープ8を貼り合わせ、半導体加工用テープ4及び支持体5を剥離する工程(4B)と、ウエハ1を個片化して半導体チップを作製する工程(5)と、前記半導体チップを、封止樹脂層7を介して他の半導体チップ又は基板に積層する工程(6)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性の高い半導体積層体を製造することのできる半導体積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度実装の要求に伴い、内部に貫通電極が形成されたウエハ又は半導体チップを多段に積層する、TSV(through−silicon via)と呼ばれる三次元実装が検討されている。このような実装方法においては、一般的に、ウエハの一方の面から貫通電極用の導電溝を作製した後、ウエハを反対面から研削することにより、導電溝を貫通させる。その後、露出した導電溝の上又は周囲に電極パッド等を形成する。
しかしながら、このような実装方法においては、研削という物理的加工に加え、電極パッド等を形成する際に高温処理、化学エッチング等の厳しい条件下での加工が連続して施されるため、薄型化の進むウエハ又は半導体チップに割れ又は不良が起こるという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、例えば、ウエハを研削する際に補強用基材、バックグラインド用フィルム等を用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、補強用基材を半導体ウエハに接着させて半導体ウエハを切削し、貫通電極を露出させた後、半導体ウエハに、積層された複数の半導体チップを搭載し、複数の半導体チップを覆うように封止樹脂を形成する半導体パッケージの製造方法が記載されている。特許文献1には、同文献に記載の方法によれば、各工程でのハンドリング及び作業性が向上することが記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、チップ積層体の側面よりアンダーフィル樹脂を注入するか、あるいは、半導体チップを積層する前に半導体チップを搭載する中央付近にアンダーフィル樹脂を予め供給しておき、半導体チップの積層時に仮硬化させ、一段ずつ半導体チップを積層、樹脂封止する。近年、高密度実装の半導体パッケージにおいては電極間のピッチがますます狭くなっていることから、特許文献1に記載の方法では、アンダーフィル樹脂を注入しても完全に樹脂封止できなかったり、樹脂封止に長時間を要したりすることが問題である。また、一段ずつアンダーフィル樹脂を供給して半導体チップを積層、樹脂封止する場合には、半導体パッケージの製造に時間がかかり、生産性の観点から好ましくない。
【0005】
また、特許文献2には、バックグラインド用フィルムとアンダーフィル用フィルムとの積層体を、貫通溝を有するウエハに貼り付けた後、ウエハの反対面を研削し、その後、アンダーフィル用フィルムをウエハに残したままバックグラインド用フィルムを剥離して、このアンダーフィル用フィルムを封止樹脂層としてそのまま用いる半導体パッケージの製造方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、ウエハの研削面に電極パッド等を形成しようとすると、高温処理、化学エッチング等の厳しい条件下での加工が封止樹脂層に悪影響を及ぼしてしまい、良好な封止を行うことができず、信頼性の高い半導体パッケージが得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4390775号公報
【特許文献2】米国特許第780757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、信頼性の高い半導体積層体を製造することのできる半導体積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貫通電極用溝が形成されたウエハの前記貫通電極用溝を有する面に、半導体加工用テープを介して支持体を積層する工程(1)と、前記ウエハを前記半導体加工用テープと反対側の面から研削し、前記貫通電極用溝を露出させる工程(2)と、露出した前記貫通電極用溝に電極部を形成する工程(3)と、前記ウエハの前記半導体加工用テープと反対側の面に封止樹脂層を形成する工程(4A)と、前記封止樹脂層を介して前記ウエハにダイシング用テープを貼り合わせ、前記半導体加工用テープ及び前記支持体を剥離する工程(4B)と、前記ウエハを個片化して半導体チップを作製する工程(5)と、前記半導体チップを、前記封止樹脂層を介して他の半導体チップ又は基板に積層する工程(6)とを有する半導体積層体の製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、貫通電極用溝が形成されたウエハを用いた半導体積層体の製造方法において、支持体を積層した状態でウエハを研削して研削面に電極部を形成した後、新たに封止樹脂層を形成することにより、ウエハを損傷することなく研削を行うことができ、かつ、研削及び電極部の形成が封止樹脂層に悪影響を及ぼすこともないことを見出した。本発明者は、このような半導体積層体の製造方法によれば、信頼性の高い半導体積層体を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の半導体積層体の製造方法においては、まず、貫通電極用溝が形成されたウエハの上記貫通電極用溝を有する面に、半導体加工用テープを介して支持体を積層する工程(1)を行う。
上記ウエハは特に限定されず、TSV(through−silicon via)実装に通常用いられる、従来公知のウエハを用いることができる。上記ウエハの厚みは特に限定されないが、通常、700〜1000μm程度である。また、上記貫通電極用溝の深さは特に限定されないが、通常、5〜100μm程度である。
なお、図1に、本発明の半導体積層体の製造方法において用いられるウエハの一例を模式的に示す。図1に示すウエハ1には貫通電極用溝2が形成されており、貫通電極用溝2の片方の端は、ウエハ1の表面(下側)に露出している。また、図1に示すウエハ1においては、貫通電極用溝2の片方の端(下側)には電極部3が形成されている。このような電極部の材質は特に限定されないが、例えば、SnAg、SnPb、Cu+SnAg、Au+SnAg、Cu+Ni+Au、SnAgCu、SnAgBi、SnAgIn等が挙げられる。
【0011】
上記支持体の材質は特に限定されず、例えば、ガラス、シリコンウエハ等が挙げられる。後述する工程(4B)において光照射により上記半導体加工用テープの粘着剤層から気体を発生させて上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離する場合には、上記支持体は透明であることが好ましい。
上記支持体の厚みは特に限定されないが、好ましい下限が500μm、好ましい上限が1200μmである。厚みが500μm未満であると、上記ウエハを損傷することなく研削を行うことができないことがある。厚みが1200μmを超えると、上記ウエハと上記半導体加工用テープと上記支持体との積層体の厚みが大きすぎて、研削装置に入らないことがある。
【0012】
上記半導体加工用テープは特に限定されず、非硬化型の粘着剤層を有していてもよく、硬化型の粘着剤層を有していてもよい。後述する工程(3)においては電極部を形成するために200℃程度の高温処理を行うことから、上記半導体加工用テープは、200℃程度では剥離しない粘着剤層を有することが好ましい。
上記非硬化型の粘着剤層を構成する粘着成分として、例えば、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、ビニルアルキルエーテル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ウレタン系接着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系接着剤等が挙げられる。
【0013】
上記半導体加工用テープが硬化型の粘着剤層を有する場合には、後述する工程(4B)において、粘着剤層を硬化させて粘着力を低下させ、上記半導体加工用テープ及び上記支持体を容易に剥離することができる。
上記硬化型の粘着剤層を構成する粘着成分は特に限定されないが、ラジカル重合性の官能基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーを含有する光硬化性の粘着剤が好ましい。上記ラジカル重合性の官能基を有するポリマーは特に限定されず、例えば、分子内に反応性基を持った(メタ)アクリル系ポリマーを合成し、次いで、この(メタ)アクリル系ポリマーを、分子内に上記の反応性基と反応する官能基と光硬化性の不飽和結合とを有する化合物と反応させることにより得ることができる。
【0014】
上記光硬化性の粘着剤は、気体発生剤を含有することが好ましい。
後述する工程(3)においては電極部を形成するために200℃程度の高温処理を行うことから、上記気体発生剤は、200℃程度の加熱では気体を発生せず、かつ、光照射により気体を発生することが好ましい。上記光硬化性の粘着剤がこのような気体発生剤を含有することにより、後述する工程(4B)において、光照射により粘着剤層を硬化させるとともに粘着剤層から気体を発生させて、上記半導体加工用テープ及び上記支持体を容易に剥離することができる。
上記気体発生剤として、例えば、光分解により窒素ガスを発生する化合物が好ましい。上記気体発生剤として、具体的には、例えば、酸発生剤とアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素化塩との混合物や、テトラゾール化合物等が挙げられる。
【0015】
上記半導体加工用テープは、基材を有していてもよく、有していなくてもよい。
上記基材の材質として、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。後述する工程(4B)において光照射により上記半導体加工用テープの粘着剤層から気体を発生させて上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離する場合には、上記基材は透明であることが好ましい。
【0016】
上記半導体加工用テープの厚みは特に限定されないが、好ましい下限は75μm、好ましい上限は250μmである。厚みが75μm未満であると、後述する工程(3)において電極部を形成するために200℃程度の高温処理を行った場合等に、上記半導体加工用テープ及び上記支持体が剥離してしまうことがある。厚みが250μmを超えると、上記半導体加工用テープの密着性が強すぎて、後述する工程(4B)において上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離できないことがある。
【0017】
上記ウエハの上記貫通電極溝を有する面に、上記半導体加工用テープを介して支持体を積層する方法は特に限定されず、例えば、ラミネーターを用いて上記ウエハの上記貫通電極溝を有する面に上記半導体加工用テープを貼り合わせた後、上記支持体を積層する方法が用いられる。上記半導体加工用テープの貼り合わせは常圧下で行ってもよいが、上記半導体加工用テープの密着性をより向上させるためには、1torr程度の真空下で行うことが好ましい。
なお、図2に、上記工程(1)を行った後の状態の一例を模式的に示す。図2においては、ウエハ1の貫通電極用溝2及び電極部3を有する面に、半導体加工用テープ4を介して支持体5が積層されている。
【0018】
本発明の半導体積層体の製造方法においては、次いで、上記ウエハを上記半導体加工用テープと反対側の面から研削し、上記貫通電極用溝を露出させる工程(2)を行う。
上記工程(2)においては、上記ウエハを、例えば10〜50μm程度の目的とする厚みにまで薄化するとともに、上記貫通電極用溝を貫通させる。上記工程(2)においては、上記支持体を積層した状態で上記ウエハを研削するため、上記ウエハを損傷することなく研削を行うことができる。
【0019】
上記ウエハを研削する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、市販の研削装置(例えば、Disco社製の「DFG8540」等)を用いて、2400rpmの回転で3〜0.2μm/sの研削量の条件にて研削を行い、最終的にはCMP、ドライポリッシュ等で仕上げる方法等が挙げられる。
なお、図3に、上記工程(2)を行った後の状態の一例を模式的に示す。図3においては、貫通電極用溝2がウエハ1を貫通し、ウエハ1の表面(上側)に露出している。
【0020】
本発明の半導体積層体の製造方法においては、次いで、露出した上記貫通電極用溝に電極部を形成する工程(3)を行う。本明細書中、露出した貫通電極用溝に電極部を形成するとは、露出した貫通電極用溝及び/又はその周囲に電極部を形成することを意味する。
上記電極部の材質は特に限定されないが、例えば、SnAg、SnPb、Cu+SnAg、Au+SnAg、Cu+Ni+Au、SnAgCu、SnAgBi、SnAgIn等が挙げられる。
なお、図4に、上記工程(3)を行った後の状態の一例を模式的に示す。図4においては、ウエハ1を貫通して露出した貫通電極用溝2に電極部6が形成されている。
【0021】
本発明の半導体積層体の製造方法においては、次いで、上記ウエハの上記半導体加工用テープと反対側の面に封止樹脂層を形成する工程(4A)を行う。
本発明の半導体積層体の製造方法においては、上記ウエハの研削及び上記電極部の形成を行った後で上記封止樹脂層を形成するため、上記ウエハの研削及び上記電極部の形成が上記封止樹脂層に悪影響を及ぼすことがなく、信頼性の高い半導体積層体を製造することができる。
【0022】
上記封止樹脂層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限が5μm、好ましい上限が75μmである。厚みが5μm未満であると、後述する工程(6)において半導体チップを他の半導体チップ又は基板に積層する際に完全に樹脂封止できないことがある。厚みが75μmを超えると、後述する工程(6)において半導体チップを他の半導体チップ又は基板に積層する際に上記封止樹脂層を構成する封止樹脂が半導体チップ上面に這い上がって、工程を最後まで行うことができないことがある。
【0023】
上記封止樹脂層を構成する封止樹脂は特に限定されないが、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、エピスルフィド樹脂等の硬化性化合物を主成分とすることが好ましい。
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、NBR変性エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物等が挙げられる。なかでも、Siとの密着性が良い点から、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。また、速硬化性が得られやすいことから、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂も好ましい。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち、市販品として、例えば、EXA−830−LVP、EXA−830−CRP(以上、DIC社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち、市販品として、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ポリエーテル変性エポキシ樹脂のうち、市販品として、例えば、EX−931(ナガセケムテックス社製)、EXA−4850−150(DIC社製)、EP−4005(アデカ社製)等が挙げられる。
【0025】
上記エピスルフィド樹脂は、エピスルフィド基を有していれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。
上記エピスルフィド樹脂として、具体的には例えば、ビスフェノール型エピスルフィド樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノール型エピスルフィド樹脂、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド樹脂、ビフェニル型エピスルフィド樹脂、フェノールノボラック型エピスルフィド樹脂、フルオレン型エピスルフィド樹脂、ポリエーテル変性エピスルフィド樹脂、ブタジエン変性エピスルフィド樹脂、トリアジンエピスルフィド樹脂、ナフタレン型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。なかでも、ナフタレン型エピスルフィド樹脂が好ましい。これらのエピスルフィド樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、酸素原子から硫黄原子への置換は、エポキシ基の少なくとも一部におけるものであってもよく、すべてのエポキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換されていてもよい。
【0026】
上記エピスルフィド樹脂のうち、市販品として、例えば、YL−7007(水添ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂、ジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。また、上記エピスルフィド樹脂は、例えば、チオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤を使用して、エポキシ樹脂から容易に合成される。
【0027】
上記封止樹脂が上記エピスルフィド樹脂を含有する場合、上記エピスルフィド樹脂の配合量は特に限定されないが、封止樹脂100重量部に占める好ましい下限が3重量部、好ましい上限が12重量部であり、より好ましい下限が6重量部、より好ましい上限が9重量部である。
【0028】
上記ビスマレイミド樹脂は特に限定されず、例えば、ケイアイ化成社製、大和化成工業社製、チバ・スペシャルティ・ケミカル社製、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社製等から市販されている熱開始型フリーラジカル硬化性ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。
【0029】
上記封止樹脂は、上記硬化性化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)を含有することが好ましい。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することにより、得られる封止樹脂は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が向上する。
【0030】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記封止樹脂が上記エポキシ樹脂を含有する場合には、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、上記封止樹脂の硬化物は、上記エポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた可撓性とを兼備することができ、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性及び寸法安定性等に優れ、高い接着信頼性及び高い導通信頼性を発現する。
【0031】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は特に限定されず、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であればよく、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ化合物、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含有することができ、得られる封止樹脂の硬化物の機械的強度及び耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は1万である。上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量が1万未満であると、得られる封止樹脂の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。
【0033】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が200未満であると、得られる封止樹脂の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が1000を超えると、得られる封止樹脂の硬化物の機械的強度及び耐熱性が低下することがある。
【0034】
上記封止樹脂が上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有する場合、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が1重量部未満であると、得られる封止樹脂は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が低下することがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が30重量部を超えると、得られる封止樹脂の硬化物は、機械的強度、耐熱性及び耐湿性が低下することがある。
【0035】
上記封止樹脂は、硬化剤を含有することが好ましい。
上記硬化剤は特に限定されず、従来公知の硬化剤を上記硬化性化合物に合わせて適宜選択することができる。上記封止樹脂が上記エポキシ樹脂を含有する場合、上記硬化剤として、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物の官能基と等量反応する硬化剤を用いる場合、上記硬化性化合物の官能基量に対して、60〜100当量であることが好ましい。また、触媒として機能する硬化剤を用いる場合、上記硬化剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
上記硬化剤の配合量が少なすぎると、得られる半導体積層体において半導体チップと他の半導体チップ又は基板とが反りによって剥離してしまうことがある。上記硬化剤の配合量が多すぎると、得られる半導体積層体の接続信頼性が低下することがある。
【0037】
上記封止樹脂は、硬化速度又は硬化温度を調整する目的で、上記硬化剤に加えて硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、フジキュア7000(富士化成工業社製)、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記硬化促進剤として、例えば、2MZ、2MZ−P、2PZ、2PZ−PW、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNS、2PZCNS−PW、2MZ−A、2MZA−PW、C11Z−A、2E4MZ−A、2MA−OK、2MAOK−PW、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2PHZ−PW、2P4MHZ、2P4MHZ−PW、2E4MZ・BIS、VT、VT−OK、MAVT、MAVT−OK(以上、四国化成工業社製)等も挙げられる。
【0039】
上記硬化促進剤の配合量は特に限定されず、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。
【0040】
上記封止樹脂が上記エポキシ樹脂を含有し、かつ、上記硬化剤と上記硬化促進剤とをともに含有する場合、用いる硬化剤の配合量は、用いるエポキシ樹脂中のエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。上記硬化剤の配合量が理論的に必要な当量を超えると、得られる封止樹脂を硬化して得られる硬化物から、水分によって塩素イオンが溶出しやすくなることがある。即ち、硬化剤が過剰であると、例えば、得られる封止樹脂の硬化物から熱水で溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度となるため、エポキシ樹脂から塩素イオンが多量溶出することがある。従って、得られる封止樹脂の硬化物1gを、100℃の純水10gで2時間浸した後の純水のpHが6〜8であることが好ましく、pHが6.5〜7.5であることがより好ましい。
【0041】
上記封止樹脂層を形成する方法は特に限定されず、コンマコート、スピンコート等により上記ウエハに封止樹脂ペーストを塗布する方法、ラミネート等により上記ウエハに封止樹脂シートを貼り付ける方法等が挙げられる。
なお、図5に、上記工程(4A)を行った後の状態の一例を模式的に示す。図5においては、ウエハ1の半導体加工用テープ4と反対側の面に封止樹脂層7が形成されている。
【0042】
本発明の半導体積層体の製造方法においては、次いで、上記封止樹脂層を介して上記ウエハにダイシング用テープを貼り合わせ、上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離する工程(4B)を行う。
上記ウエハから上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離する方法は特に限定されず、例えば、光照射により上記半導体加工用テープの粘着剤層を硬化させるとともに粘着剤層から気体を発生させて、上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離する方法等が挙げられる。
なお、図6(a)に、上記封止樹脂層を介して上記ウエハにダイシング用テープを貼り合わせた後の状態の一例を模式的に示す。また、図6(b)に、上記ウエハから上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離した後の状態の一例を模式的に示す。
【0043】
上記ダイシング用テープは特に限定されず、従来公知のダイシング用テープを用いることができる。上記ダイシング用テープの基材も特に限定されず、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。なかでも、上記ウエハへの貼り合せ時にローラーの荷重による沈み込みが原因で発生するボイドを抑制できることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の比較的硬い基材が好ましい。
【0044】
本発明の半導体積層体の製造方法においては、次いで、上記ウエハを個片化して半導体チップを作製する工程(5)を行う。
上記ウエハを個片化して半導体チップを作製する方法は特に限定されず、例えば、ブレードダイシングにより上記ウエハを個片化する方法等が挙げられる。また、本発明の半導体積層体の製造方法においては、上記工程(4A)において、上記封止樹脂層を形成する前又は後に上記ウエハにダイシングラインを形成しておき、上記工程(5)において、エキスパンドにより上記ウエハを個片化してもよい。
【0045】
上記ウエハにダイシングラインを形成する方法は特に限定されず、例えば、ブレードダイシングにより上記ウエハの厚みを約10μm切り残す程度にダイシングラインを形成する方法、上記ウエハの厚み方向の一部のみに改質領域を形成する、いわゆるステルスダイシング法等が挙げられる。なかでも、非接触で加工するため上記ウエハの表層部へのダメージが小さく、加工速度を向上できることから、ステルスダイシング法が好ましい。
なお、ステルスダイシング法に用いられるレーザー装置として、例えば、MAHOH DICING MACHINE(東京精密社製)等が挙げられる。
【0046】
上記エキスパンドにより上記ウエハを個片化する方法は特に限定されないが、通常、UH130−12(ULTRON SYSTEM,Inc社製)等のエキスパンダー装置を用い方法が用いられる。
【0047】
本発明の半導体積層体の製造方法においては、次いで、上記半導体チップを、上記封止樹脂層を介して他の半導体チップ又は基板に積層する工程(6)を行う。
なお、本発明の半導体積層体の製造方法は、基板上に半導体チップを積層する場合と、基板上に積層されている1以上の半導体チップ上に、更に半導体チップを積層する場合との両方を含む。
本発明の半導体積層体の製造方法においては、上記工程を行った後、更に、得られた半導体積層体を加熱することにより上記封止樹脂層を完全に硬化させる工程を行ってもよい。これにより、より安定した積層を行うことができる。
【0048】
本発明の半導体積層体の製造方法においては、上記ウエハに上記封止樹脂層を形成した後で上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離したが(工程(4A)及び(4B))、上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離した後で上記ウエハに上記封止樹脂層を形成してもよい。
即ち、上記工程(4A)及び(4B)の代わりに、上記ウエハの上記半導体加工用テープと反対側の面にダイシング用テープを貼り合わせ、上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離する工程(4C)と、上記ウエハの上記ダイシング用テープと反対側の面に封止樹脂層を形成する工程(4D)とを行ってもよい。このような半導体積層体の製造方法を、第2の本発明の半導体積層体の製造方法ともいう。
【0049】
第2の本発明の半導体積層体の製造方法においては、上記工程(1)〜(3)を行った後、上記ウエハの上記半導体加工用テープと反対側の面にダイシング用テープを貼り合わせ、上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離する工程(4C)を行う。
上記ウエハから上記半導体加工用テープ及び上記支持体を剥離する方法は特に限定されず、上記工程(4B)における方法と同様の方法を用いることができる。
【0050】
第2の本発明の半導体積層体の製造方法においては、次いで、上記ウエハの上記ダイシング用テープと反対側の面に封止樹脂層を形成する工程(4D)を行う。
上記封止樹脂層を構成する封止樹脂及び厚みは特に限定されず、上記工程(4A)における封止樹脂及び厚みと同様の封止樹脂及び厚みを用いることができる。また、上記封止樹脂層を形成する方法は特に限定されず、上記工程(4A)における方法と同様の方法を用いることができる。
【0051】
第2の本発明の半導体積層体の製造方法においては、次いで、上記工程(5)及び(6)を行い、更に、得られた半導体積層体を加熱することにより上記封止樹脂層を完全に硬化させる工程を行ってもよい。また、第2の本発明の半導体積層体の製造方法においては、上記工程(4D)において、上記封止樹脂層を形成する前又は後に上記ウエハにダイシングラインを形成しておき、上記工程(5)において、エキスパンドにより上記ウエハを個片化してもよい。
第2の本発明の半導体積層体の製造方法によれば、本発明の半導体積層体の製造方法と同様に、支持体を積層した状態でウエハを研削して研削面に電極部を形成した後、新たに封止樹脂層を形成するため、ウエハを損傷することなく研削を行うことができ、かつ、研削及び電極部の形成が封止樹脂層に悪影響を及ぼすこともない。そのため、信頼性の高い半導体積層体を製造することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、信頼性の高い半導体積層体を製造することのできる半導体積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の半導体積層体の製造方法において用いられるウエハの一例を示した模式図である。
【図2】本発明の半導体積層体の製造方法の工程(1)を行った後の状態の一例を示した模式図である。
【図3】本発明の半導体積層体の製造方法の工程(2)を行った後の状態の一例を示した模式図である。
【図4】本発明の半導体積層体の製造方法の工程(3)を行った後の状態の一例を示した模式図である。
【図5】本発明の半導体積層体の製造方法の工程(4A)を行った後の状態の一例を示した模式図である。
【図6】本発明の半導体積層体の製造方法の工程(4B)を行った後の状態の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0055】
(実施例1)
(1)半導体加工用テープの製造
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、2−エチルヘキシルアクリレート94重量部、アクリル酸1重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部及びラウリルメルカプカプタン0.01重量部と、酢酸エチル180重量部とを加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt−ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して、重合反応を継続させた。重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万のアクリル共重合体を含有する酢酸エチル溶液を得た。
得られたアクリル共重合体を含有する酢酸エチル溶液に対して、樹脂固形分100重量部に対して2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させた。反応後の酢酸エチル溶液に対して、樹脂固形分100重量部に対して光重合開始剤(エサキュアワン、日本シイベルヘグナー社製)0.1重量部、ポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL45、日本ポリウレタン社製)2.5重量部を混合し、粘着剤溶液(1)を得た。更に、粘着剤溶液(1)に対して、樹脂固形分100重量部に対してケトプロフェン(東京化成工業社製)20重量部、光増感剤として9,10−ジグリシジルオキシアントラセン1重量部を混合し、粘着剤溶液(2)を得た。
【0056】
得られた粘着剤溶液(2)を、両面にコロナ処理を施した厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃5分間加熱して粘着剤溶液(2)を乾燥させ、粘着剤溶液(2)からなる粘着剤層を形成した。また、粘着剤溶液(1)を、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面上に、乾燥皮膜の厚さが50μmとなるように塗布し、粘着剤溶液(1)からなる粘着剤層を形成した。この粘着剤溶液(1)からなる粘着剤層を、粘着剤溶液(2)からなる粘着剤層を有するポリエチレンテレフタレートの粘着剤層とは反対側の面にラミネートし、コロナ処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に粘着剤層を有する両面テープを作製した。その後、40℃、3日間静置養生を行い、半導体加工用テープを得た。
【0057】
(2)封止樹脂シートの製造
基材層としての厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム(商品名「テトロン」、帝人デュポン社製)の片側に、アクリル樹脂(モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを含むポリアルキルアクリレート)と、このアクリル樹脂100重量部に対して1.5重量部のコロネートL−45(日本ポリウレタン工業社製)とを酢酸エチルで希釈した塗液を、コンマコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥した後、40℃で3日間養生し、厚さ5μmの電極保護層を形成した。また、表1の組成に従って、下記に示す各材料を、ホモディスパーを用いて攪拌混合して封止樹脂組成物を調製した。離型PETフィルム上に、コンマコート法により、得られた封止樹脂組成物を乾燥後の封止樹脂層の厚みが20μmとなるように塗工し、100℃で5分間乾燥させて封止樹脂層を形成した。次いで、得られた電極保護層と封止樹脂層とをラミネーターによって貼り合わせることにより、封止樹脂シートを得た。
【0058】
(エポキシ樹脂)
・HP−7200L(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC社製)
・EXA−4710(ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製)
【0059】
(エポキシ基含有アクリル樹脂)
・G−2050−M(グリシジル基含有アクリル樹脂、重量平均分子量20万、日油社製)
・G−017581(グリシジル基含有アクリル樹脂、重量平均分子量1万、日油社製)
【0060】
(硬化剤)
・YH−309(酸無水物系硬化剤、JER社製)
【0061】
(硬化促進剤)
・フジキュア7000(常温で液状のイミダゾール化合物、富士化成工業社製)
【0062】
(無機フィラー)
・SX009−MJF(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.05μm、アドマテックス社製)
・SE−1050−SPT(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.3μm、アドマテックス社製)
【0063】
(その他)
・AC−4030(応力緩和ゴム系高分子、ガンツ化成社製)
【0064】
(3)半導体積層体の製造
(3−1)工程(1)
直径20cm、厚み750μmのウエハを用意した。このウエハには、Cuからなる深さ40μmの貫通電極用溝が形成されており、この貫通電極用溝の上に、Cuからなる高さ20μmの柱状部と半田からなる高さ5μmの先端部とを有する、直径15μmの突起状電極が形成されていた。
半導体加工用テープの粘着剤溶液(1)からなる粘着剤層を、ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、真空下(1torr)、80℃、10秒間の条件でウエハの貫通電極用溝及び突起状電極を有する面に貼り付けた。次いで、半導体加工用テープの粘着剤溶液(2)からなる粘着剤層を、ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、真空下(1torr)、80℃、10秒間の条件で貼り合わせることにより、支持体としてのガラス基板(直径20.5mm、厚み700μm)を積層した。
【0065】
(3−2)工程(2)
ウエハを研削装置に取りつけ、半導体加工用テープと反対側の面を、ウエハの厚さが約25μmになるまで研削し、貫通電極用溝を露出させた。このとき、研削の摩擦熱によりウエハの温度が上昇しないように、ウエハに水を散布しながら作業を行った。研削後は、研磨装置を用いて、CMP(Chemical Mechanical Polishing)プロセスによりアルカリのシリカ分散水溶液による研磨を行うことにより、ウエハの研磨を行った。
【0066】
(3−3)工程(3)
研磨装置からウエハを取り外し、露出した貫通電極用溝にドライエッチング処理を施すことにより、ウエハのSiを0.5μmエッチングして貫通電極用溝のCuの頭出しを行い、次いで、レジストによりパターンを形成してCuをめっきした後、レジストを除去することにより、貫通用電極溝の上に直径15μm、高さ5μmのCuからなる電極部を形成した。
【0067】
(3−4)工程(4A)及び(4B)
半導体加工用テープとは反対側の面からウエハにレーザー光を照射してステルスダイシングを行い、ウエハの内部にダイシングラインを形成した。次いで、ウエハの半導体加工用テープと反対側の面に、上記で得られた封止樹脂シートを、ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、真空下(1torr)、80℃、10秒間の条件でラミネートした。その後、封止樹脂層から基材層と電極保護層とを剥離した。
次いで、封止樹脂層を介してウエハにダイシング用テープを貼り合わせ、ダイシング用テープの外周部にはステンレス製のダイシングフレームを貼り付けた。その後、ガラス基板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が40mW/cmとなるよう照度を調節して2分間照射して、半導体加工用テープ及びガラス基板を剥離した。
【0068】
(3−5)工程(5)
ウエハを冷却した後、エキスパンダー装置(UH130−12、ULTRON SYSTEM,Inc社製)を用いて、ダイシングフレームを固定してダイシング用テープをエキスパンドすることによりウエハを個片化して、10mm角の半導体チップとした。なお、予めエキスパンダー装置のステージを、保冷剤、ドライアイス等で冷却して0℃に調整した。エキスパンド条件は、エキスパンド速度8mm/sec、エキスパンド量10mm、温度0℃の条件であった。
【0069】
(3−6)工程(6)
半導体チップをダイシング用テープからピックアップし、他の半導体チップ(半導体チップ2)の上に180℃1秒1N、300℃2秒1Nの条件で実装を行い、半導体積層体を得た。なお、半導体チップ2は、基板に150℃1秒1N、280℃2秒1Nの条件で積層した後、通常のアンダーフィルを基板と半導体チップ2との間に充填させることで基板に実装されたものであった。
【0070】
(実施例2)
(1)半導体加工用テープの製造
実施例1と同様にして、半導体加工用テープを得た。
【0071】
(2)封止樹脂シートの製造
実施例1と同様にして、封止樹脂シートを得た。
【0072】
(3)半導体積層体の製造
(3−1)工程(1)
実施例1と同様にして、ウエハの貫通電極用溝を有する面に、半導体加工用テープを介して支持体を積層した。
【0073】
(3−2)工程(2)
実施例1と同様にして、ウエハを研削し、貫通電極用溝を露出させた。
【0074】
(3−3)工程(3)
実施例1と同様にして、貫通用電極溝に電極部を形成した。
【0075】
(3−4)工程(4C)及び(4D)
ウエハの半導体加工用テープと反対側の面にダイシング用テープを貼り合わせ、ダイシング用テープの外周部にはステンレス製のダイシングフレームを貼り付けた。その後、ガラス基板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が40mW/cmとなるよう照度を調節して2分間照射して、半導体加工用テープ及びガラス基板を剥離した。
次いで、ダイシング用テープとは反対側の面からウエハにレーザー光を照射してステルスダイシングを行い、ウエハの内部にダイシングラインを形成した。次いで、ウエハのダイシング用テープと反対側の面に、上記で得られた封止樹脂シートを、ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、真空下(1torr)、80℃、10秒間の条件でラミネートした。その後、封止樹脂層から基材層と電極保護層とを剥離した。
【0076】
(3−5)工程(5)
実施例1同様にして、ウエハを個片化して、半導体チップとした。
【0077】
(3−6)工程(6)
実施例1と同様にして、半導体積層体を得た。
【0078】
(比較例1)
(1)封止樹脂シート(BG−NCF)の製造
基材層としての厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム(商品名「テトロン」、帝人デュポン社製)の片側に、アクリル樹脂(モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを含むポリアルキルアクリレート)と、このアクリル樹脂100重量部に対して1.5重量部のコロネートL−45(日本ポリウレタン工業社製)とを酢酸エチルで希釈した塗液を、コンマコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥した後、40℃で3日間養生し、厚さ5μmの電極保護層を形成した。また、表1の組成に従って、下記に示す各材料を、ホモディスパーを用いて攪拌混合して封止樹脂組成物を調製した。離型PETフィルム上に、コンマコート法により、得られた封止樹脂組成物を乾燥後の封止樹脂層の厚みが20μmとなるように塗工し、100℃で5分間乾燥させて封止樹脂層を形成した。次いで、得られた電極保護層と封止樹脂層とをラミネーターによって貼り合わせることにより、封止樹脂シートを得た。
【0079】
(2)半導体積層体の製造
(2−1)工程(1’)
実施例1と同様のウエハを用意した。封止樹脂シート(BG−NCF)の封止樹脂層を、ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、真空下(1torr)、80℃、10秒間の条件でウエハの貫通電極用溝及び突起状電極を有する面に貼り付けた。
【0080】
(2−2)工程(2’)
実施例1と同様にして、ウエハを研削し、貫通電極用溝を露出させた。
【0081】
(2−3)工程(3’)
実施例1と同様にして、貫通用電極溝に電極部を形成した。
【0082】
(2−4)工程(4’)
封止樹脂シート(BG−NCF)とは反対側の面からウエハにレーザー光を照射してステルスダイシングを行い、ウエハの内部にダイシングラインを形成した。次いで、ウエハの封止樹脂シート(BG−NCF)とは反対側の面にダイシング用テープを貼り合わせ、ダイシング用テープの外周部にはステンレス製のダイシングフレームを貼り付けた。その後、封止樹脂層から基材層と電極保護層とを剥離した。
【0083】
(2−5)工程(5’)
実施例1同様にして、ウエハを個片化して、半導体チップとした。
【0084】
(2−6)工程(6’)
実施例1と同様にして、半導体積層体を得ようとしたが、工程(3’)で熱履歴を受けたことにより封止樹脂層が硬化してしまい、加熱しても流動しない状態になっており、他の半導体チップ(半導体チップ2)の上に実装することができなかった。
【0085】
<評価>
実施例で得られた半導体積層体について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0086】
(1)ボイドの有無
超音波測定装置(日立建機社製)用いて半導体積層体を測定し、ボイドの有無を評価した。
【0087】
(2)冷熱サイクル試験(TCT試験)
半導体積層体について、−55〜125℃(30分/1サイクル)の冷熱サイクル試験を行った。導通抵抗値が、冷熱サイクル試験前の初期導通抵抗値に比べ5%以上変化した時点をNG判定とし、10サンプルのうちの良品数を評価した。
【0088】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、信頼性の高い半導体積層体を製造することのできる半導体積層体の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 ウエハ
2 貫通電極用溝
3 電極部
4 半導体加工用テープ
5 支持体
6 電極部
7 封止樹脂層
8 ダイシング用テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通電極用溝が形成されたウエハの前記貫通電極用溝を有する面に、半導体加工用テープを介して支持体を積層する工程(1)と、
前記ウエハを前記半導体加工用テープと反対側の面から研削し、前記貫通電極用溝を露出させる工程(2)と、
露出した前記貫通電極用溝に電極部を形成する工程(3)と、
前記ウエハの前記半導体加工用テープと反対側の面に封止樹脂層を形成する工程(4A)と、
前記封止樹脂層を介して前記ウエハにダイシング用テープを貼り合わせ、前記半導体加工用テープ及び前記支持体を剥離する工程(4B)と、
前記ウエハを個片化して半導体チップを作製する工程(5)と、
前記半導体チップを、前記封止樹脂層を介して他の半導体チップ又は基板に積層する工程(6)とを有する
ことを特徴とする半導体積層体の製造方法。
【請求項2】
ウエハの半導体加工用テープと反対側の面に封止樹脂層を形成する工程(4A)において、前記封止樹脂層を形成する前又は後に前記ウエハにダイシングラインを形成しておき、ウエハを個片化して半導体チップを作製する工程(5)において、エキスパンドにより前記ウエハを個片化することを特徴とする請求項1記載の半導体積層体の製造方法。
【請求項3】
貫通電極用溝が形成されたウエハの前記貫通電極用溝を有する面に、半導体加工用テープを介して支持体を積層する工程(1)と、
前記ウエハを前記半導体加工用テープと反対側の面から研削し、前記貫通電極用溝を露出させる工程(2)と、
露出した前記貫通電極用溝に電極部を形成する工程(3)と、
前記ウエハの前記半導体加工用テープと反対側の面にダイシング用テープを貼り合わせ、前記半導体加工用テープ及び前記支持体を剥離する工程(4C)と、
前記ウエハの前記ダイシング用テープと反対側の面に封止樹脂層を形成する工程(4D)と、
前記ウエハを個片化して半導体チップを作製する工程(5)と、
前記半導体チップを、前記封止樹脂層を介して他の半導体チップ又は基板に積層する工程(6)とを有する
ことを特徴とする半導体積層体の製造方法。
【請求項4】
ウエハのダイシング用テープと反対側の面に封止樹脂層を形成する工程(4D)において、前記封止樹脂層を形成する前又は後に前記ウエハにダイシングラインを形成しておき、ウエハを個片化して半導体チップを作製する工程(5)において、エキスパンドにより前記ウエハを個片化することを特徴とする請求項3記載の半導体積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−209545(P2012−209545A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50847(P2012−50847)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】