半導体粒子の製造方法
【課題】所定量の半導体粉末からなる小塊を溶融して球状溶融体を形成し、これを冷却凝固させて半導体粒子を製造する方法において、質量バラツキが小さい多数の小塊を相互に確実に離間させた状態で加熱用基板上に形成する。これにより、半導体粒子の高品質化と生産性向上が可能となる。
【解決手段】相互に間隔を設けて型板の表側に形成された所定形状の多数の凹部内に半導体粉末を充填し、その型板の表側に加熱用基板の平面部を重ね合わせる。その状態を維持しつつ表裏を反転させる。次いで、加熱用基板上に配置されている型板を上方に引きあげて、凹部に充填された半導体粉末を加熱用基板上に転写する。上記の凹部の横断面積は開口部に近いほど大きいことが好ましい。
【解決手段】相互に間隔を設けて型板の表側に形成された所定形状の多数の凹部内に半導体粉末を充填し、その型板の表側に加熱用基板の平面部を重ね合わせる。その状態を維持しつつ表裏を反転させる。次いで、加熱用基板上に配置されている型板を上方に引きあげて、凹部に充填された半導体粉末を加熱用基板上に転写する。上記の凹部の横断面積は開口部に近いほど大きいことが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状光電変換素子などの球状半導体素子もしくはその前駆体となる半導体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、球状半導体素子を、光電変換素子やダイオード、あるいは、水分解による水素発生用の素子などに使用することが検討されている。特に、球状のp型半導体粒子の表面に沿ってn型半導体層を形成した光電変換素子が、安価で、高出力を期待できる太陽電池用素子として注目されている。これらの素子を用いる装置の代表的な例として、多数の凹部を有する支持体の各凹部内に球状の太陽電池素子を取り付け、凹部内面を反射鏡として働かせる方式の低集光型球状太陽電池が提案されている(たとえば、特許文献1)。これによれば、光電変換部を薄型化して、高価なシリコンの使用量を低減でき、太陽電池のコスト削減が可能となる。さらに、通常の設計による凹面反射鏡では、その集光作用により、直接照射光の4〜6倍の光が素子に照射されるので、照射光を光電変換に有効に利用することができる。
【0003】
半導体粒子の製造方法の一つに、溶融滴下法が提案されている。これは、坩堝に入れた半導体材料の融液を不活性ガスで加圧して、坩堝底部に設けられたノズル孔から連続的に滴下させ、液滴が冷却塔中を落下する間に凝固させることによって、半導体粒子を製造するものである(たとえば、特許文献2)。
【0004】
溶融滴下法によれば、直径が約0.3〜2mmのほぼ球状の半導体粒子を量産することができる。しかしながら、得られる粒子には、形状や質量にかなり大きなばらつきがある。得られる粒子にばらつきがあると、それを球状半導体素子の母体として用いるには、篩い分けして所定の粒径範囲の粒子を選別し、それを研磨などの方法によりさらに粒径を揃えるとともに、真球状に仕上げなければならない。半導体粒子の形状とその大きさが不揃いであればあるほど、篩い分けにより廃棄される粒子の量、および研磨の際の削り屑が多くなって、著しい材料損失と歩留まり低下とを生じてしまう。
【0005】
このため、溶融滴下法を工業的に実施するには、基本的な製造条件、設備等についてさらに検討し、それらについて最適の条件を見出す必要がある。たとえば坩堝の材質や構造、ノズル孔の寸法、形状や半導体融液の加圧力などの融液滴下条件、および、冷却塔中の雰囲気や温度などの更なる検討が必要である。半導体粒子の他の代表的な製造方法として、製造プロセスの自動化が容易で、それに要する費用も安価な粉末溶融法が提案されている(たとえば、特許文献3、4)。
【0006】
粉末溶融法では、半導体粉末の小塊(pile)を加熱して溶融し、この小塊を冷却して凝固させることにより、ほぼ球状の半導体粒子を製造する。具体的には、まず、シリコンなどの半導体の粉末の所定量からなる複数の小塊を互いに離間させて形成する。次いで、これらの小塊に向けて光学的エネルギーを与えて各小塊内の半導体粉末を溶融させることにより、各小塊を球状の溶融体に変化させ、これらを冷却して凝固させる(特許文献4)。
【0007】
上記の小塊は、例えば、耐火物層の上に、一定形状の多数の孔が所定のパターンで形成されたプレート(テンプレート)を置き、そのプレート上に半導体粉末を撒き、これをブラシで掃いて、前記の孔に半導体粉末を満たし、次いで、上記プレートを引き上げることにより形成されるものである。この方法により、耐火物層の上に所定量の半導体粉末が積み重なってできた複数の小塊が、所定のパターンで配列される(特許文献3)。
【0008】
上記の方法により半導体粉末の小塊を形成する場合の最大の問題点は、崩れた状態の小塊が形成され易く、一定の形状、寸法を備えた小塊が得られないので、小塊の質量バラツキが大きく、しかも隣接する小塊が接触し易いことである。そのため、得られた半導体粒子の質量と寸法、形状のバラツキが大きくなったり、複数の粒子が連結した形状不良品が多発するという弊害がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−164554号公報
【特許文献2】特開2002−292265号公報
【特許文献3】アメリカ特許第5431127号明細書
【特許文献4】特許第3754451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、粉末溶融法における上記の問題を解決し、質量バラツキが小さく、形状が良好な半導体粒子を安定的に製造する方法を提供することを目的とする。これにより、半導体原料の歩留まり、および半導体粒子の生産性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体粒子の製造方法は、
(1)所定形状の多数の凹部が相互に間隔を設けて形成された型板を用意し、その型板の前記凹部のそれぞれを満たすように半導体粉末を充填する工程、
(2)少なくとも片面に平面部を有する加熱用基板を用意し、その加熱用基板を、前記平面部が前記型板の凹部を有する側の表面と重なるように、前記型板上に配置する工程、
(3)前記型板上に加熱用基板が配置された状態を維持しつつ、前記加熱用基板上に前記型板が配置されるように、表裏を反転させる工程、
(4)前記加熱用基板上に配置された型板を上方に引きあげて、前記凹部に充填された半導体粉末を前記加熱用基板上に転写することにより、所定量の前記半導体粉末からなる多数の小塊を形成する工程、
(5)前記多数の小塊が形成された加熱用基板を加熱炉内に供給し、前記小塊中の半導体粉末を溶融し、融合させて、球状の溶融体を形成する工程、および
(6)前記溶融体を冷却し、凝固させる工程、
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明における型板に形成された凹部は、その横断面積が開口部に近いほど大きいことが好ましい。さらに、前記凹部は、その内壁面が凹面を有することが好ましい。
【0013】
本発明における半導体粉末は、ノンドープシリコンあるいは不純物がドープされたシリコンからなることが好ましい。さらに、この半導体粉末は、その平均粒径の範囲が、20〜70mμであることが好ましい。
【0014】
本発明における加熱用基板は、少なくともその表面層がシリコンカーバイドからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記の粉末溶融法において、半導体粉末からなる多数の小塊を、寸法、形状および質量のバラツキが小さく、相互に離間させた状態で容易に形成することができる。これらの小塊を溶融させ、凝固させることにより、質量バラツキが小さく、形状が良好な球状の半導体粒子が得られる。さらに、得られた半導体粒子同士が連結するという問題点なども解消される。これにより、原料半導体粉末の歩留まり、ならびに、半導体粒子の品質および生産性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の工程(1)の実施形態において用いる型板の平面図である。
【図2】図1の型板の凹部の平面図(A)および縦断面図(B)である。
【図3】図1の型板の他の形態の凹部の平面図(A)、および縦断面図(B)である。
【図4】本発明の工程(1)の実施形態において用いるスキージの正面図(A)、お よびそのIV−IV線に沿った断面図(B)である。
【図5】本発明の工程(1)の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の工程(2)の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の工程(3)の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の工程(4)の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の工程(5)の実施形態を示す縦断面図である。
【図10】本発明の工程(6)の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】本発明により製造したシリコン粒子を母体とした光電変換装置の発電ユニ ットの平面図である。
【図12】図11の発電ユニットの要部の縦断面図である。
【図13】従来の半導体粒子の製造方法における半導体粉末の小塊を形成するための 前半の工程を示す縦断面図である。
【図14】同上の後半の工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の半導体粒子の製造方法の最大の特徴は、前記の粉末溶融法において、一定量の半導体粉末からなる多数の小塊を、その形を崩すことなく、互いに離間させた状態で形成するための好適な方法を提供したことにある。本発明は、これらの小塊を加熱して、各小塊内の半導体粉末を溶融させ、融合させて球状溶融体を形成し、これを冷却して凝固させることにより、質量バラツキが少ないほぼ球状の半導体粒子を高収率で製造することを可能にするものである。
【0018】
本発明により半導体粉末の小塊を形成する方法を説明する前に、まず、前記の特許文献3に開示されている従来の方法について説明する。前記のように、この方法の最大の問題点は、形成される小塊の寸法、形状、および質量のバラツキが大きく、さらに、隣接する小塊が相互に接触し易いことである。
【0019】
この方法を図13および図14により説明する。石英ボート201上の耐火物層202の上に、複数の貫通孔203が形成されたテンプレート204が置かれる。テンプレート204上の端部に置かれた半導体粉末を、ドクターブレイト゛により他端部に向けて移動させることにより、図13のように、貫通孔203に所定量の半導体粉末205が満たされる。
【0020】
特許文献3には、図13のテンプレート204を耐火物層202の上から上方へ取り除き、半導体粉末205を貫通孔203から分離させて耐火物層202上に留まらせることにより、耐火物層202上に多数の小塊が貫通孔203と同じ配列パターンで形成される旨が開示されている。
【0021】
しかし、実際に上記の方法に準じた実験を試みた結果、整った形状、寸法の複数の小塊を貫通孔203と同じ配列パターンで形成することができなかった。図14に、図13におけるテンプレート204を耐火物層202の上から取り除くことにより、半導体粉末の小塊206が実際に形成された状態を示す。テンプレート204を耐火物層202から垂直方向に静かに引き上げると、まず、貫通孔203内の半導体粉末205の大部分は、貫通孔203から分離し、裾部がやや広がった状態で耐火物層202上に堆積し、一部分は、貫通孔203から分離せずに内部に残存する。
【0022】
貫通孔203から分離せずに内部に残存した半導体粉末は、テンプレート204がさらに上方に引き上げられる過程で、その一部分は耐火物層202上に落下して、貫通孔203から分離した半導体粉末と一体になって、小塊206を形成する。テンプレート204の上方への引き上げが終了した時点においても、貫通孔203の内壁に沿って、若干量の半導体粉末207が残存している。
【0023】
図14に示すように、上記の過程で形成された小塊206の形状および寸法は不揃いであり、その底部は貫通孔203の横断面積よりも大きく広がっている。著しい場合には、隣接する小塊同士206A、206Bが、裾部において接触もしくは繋がり合っている。このような問題は、テンプレート204を耐火物層202の上から取り除く過程において、半導体粉末205が貫通孔203内から円滑に分離しないということに起因している。
【0024】
半導体粉末を貫通孔内から円滑に分離させるには、貫通孔の横断面積を、テンプレートの表面側から裏面側にかけて大きくすればよいが、このように間口部が狭い貫通孔には所定量の半導体粉末を満たすことが困難である。逆に、貫通孔の横断面積を、テンプレートの表面側から裏面側にかけて小さくすると、貫通孔に半導体粉末を満たすのは容易であるが、貫通孔内から半導体粉末を分離することが一層困難になる。これらのことから、特許文献3の技術においては、上記のいずれの方法によっても、質量バラツキが小さく、形状が整った半導体粉末の小塊を互いに離間させて形成することは困難であることが判明した。
【0025】
本発明は、下記の工程(1)〜(4)により上記の問題を解決し、質量バラツキが小さく、形状が整った小塊を、互いに離間させた状態で、形成することを容易にしたものである。まず、工程(1)により、型板に形成された所定形状の多数の凹部のそれぞれに半導体粉末を満たす。凹部は、その横断面積が開口部に近いほど大きくなるように形成されたものが好ましい。このように間口が広く底部に近いほど狭い凹部を設けることにより、一定量の半導体粉末を隙間なく容易に凹部内に充填することができ、それぞれの凹部に充填される半導体粉末の質量バラツキを効果的に縮小することができる。
【0026】
次いで、工程(2)、および(3)により、型板上に加熱用基板を重ねあわせ、その状態を維持したままで表裏を反転させて、加熱用基板上に型板が配置された状態にする。
【0027】
工程(4)により、型板を上方に引き上げることにより、型板の凹部から半導体粉末を分離して、加熱用基板上に転写する。これにより、型板の凹部と同じ配列パターンで半導体粉末の多数の小塊が形成される。特に、横断面積が開口部に近いほど大きくなるように凹部が形成されている場合には、凹部から半導体粉末を容易に分離させることができる。これにより、バラツキの小さい所定量の半導体粉末からなる形状の整った多数の小塊を、型板の凹部と同一の互いに分離したパターンで形成することができる。凹部の内壁面を凹面状とすることにより、半導体粉末を凹部内から分離する効果が一層顕著に得られる。
【0028】
本発明は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−砒素などの半導体粒子の製造に適用することができるが、多くの場合は以下の実施形態において述べるようなシリコン粒子の製造に適用される。原料となる半導体粉末はノンドープ半導体粉末、不純物がドープされた半導体粉末の何れであってもよい。
【0029】
前者の場合は、本発明により製造された半導体粒子に対して、所定の不純物を所定濃度でドープすれば、p型またはn型の半導体粒子が得られる。また、後者の場合には、半導体粉末のドーパント濃度を適切に選択すれば、本発明により得られた半導体粒子をそのまま、p型またはn型の半導体粒子として使用することができる。さらには、ドーパントを高濃度で含むp型またはn型の半導体粉末と、ノンドープもしくは低濃度のドーパントがドープされた半導体粉末とを、所定比率で混合した粉末を原料として使用しても、目的とするドーパント濃度のp型またはn型の半導体粒子を作製することができる。
【0030】
次に、本発明の半導体粒子の製造方法によりシリコン粒子を製造する場合の代表的な実施形態を工程毎に説明する。
【0031】
工程(1)
本工程では、所定形状の多数の凹部が相互に間隔を設けて形成された型板を用意し、それぞれの凹部を満たすように半導体粉末を充填する。
【0032】
まず、本工程で用意する型板の代表的な実施形態を説明する。図1に型板の平面図を示す。型板1は、33.5×31.5cmの方形で、厚み約5mmの石英板を切削加工したものである。その表側の端部2を残した約30cm角の凹部形成部3には、多数の凹部4(凹部形成部3の外殻部の凹部4のみを図示)が相互に近接した規則的なパターンで配列されている。上記の型板に形成される凹部の代表例を図2および図3に示す。図2(A)は半球状の凹部5の平面図、図2(B)はその縦断面図である。凹部5の深さ(H1)は約1.2mm、開口部の直径(D1)は約2.3mm、各凹部5の開口部の間隔(d1)は約0.4mmである。凹部形成部3内には、約15,000個の凹部5が密集して千鳥状に配列されている。図3(A)は六角錐状の凹部6の平面図、図3(B)はその縦断面図である。凹部6の深さ(H2)は約1.3mm、開口部の正六角形の一辺の長さ(L)は約1.2mm、開口部の横幅(D2)は約2.1mmである。各凹部6の間隔(d2)は約0.3mmであり、約18,000個の凹部6が密集して千鳥状に配列されている。
【0033】
凹部は、上記に拘ることなく、その横断面積が開口部から底部にかけて同一ないしは小さくなるような様々な形状を採ることができる。特に、凹部はその横断面積が底部に近いほど小さいのが好ましい。さらに、凹部は、その内壁面が放物面や球面のような凹面を有するものが一層好ましい。上記以外に、例えば、円錐状、円錐台状、角錐状、角錐台状、円柱状などの凹部であってもよく、底部は丸みを帯びていることが好ましい。このような形状の凹部を形成することにより、本工程(1)における半導体粉末の凹部への一定量の充填、および、工程(4)における凹部からの半導体粉末の分離を確実かつ容易に行うことができる。
【0034】
型板の材質は、耐熱性に格別の配慮は不要であるが、繰り返し使用しても変形や磨耗をすることがないような機械的強度および耐摩耗性などの耐久性を備えたものが好ましい。また、切削加工などにより、寸法および形状のバラツキが小さい多数の小さな凹部を容易に形成できるものが好ましい。上記の条件を満たす型板の材料としては、石英ガラス、アルミナ、およびシリコンカーバイトが好ましいが、比較的安価な材料として、青板ガラス、および白板ガラスなども使用できる。
【0035】
シリコン粒子の原料としての半導体粉末には、ノンドープシリコンあるいは不純物がドープされたシリコンの粉末を用いることができる。また、シリコン粉末は、その平均粒径が、20〜70mμであることが好ましく、特に、30〜50μmであることが好ましい。上記の粒径範囲のシリコン粉末を使用すると、型板の凹部のそれぞれに充填されるシリコン粉末の質量のバラツキを小さくすることができる。これにより、後の工程で一定質量のシリコン粉末からなる小塊が形成され易くなり、さらにシリコン粉末を短時間にすべてを溶融させることが可能となる。
【0036】
次に、本工程(1)の実施形態を具体的に説明する。まず、その実施形態における工程で用いるスキージを、図4により説明する。図4(A)は、スキージの正面図、図4(B)はそのIV−IV線に沿った断面図である。スキージ10は、一対のアクリル板11、
および、これらのアクリル板11に挟まれ、締め付け金具12及び間座13を用いて固定された、板状のウレタンゴム14からなり、ウレタンゴムの下部15が露出している。
【0037】
上記のスキージ10を用いて、型板の凹部のそれぞれを満たすように半導体粉末を充填する工程(1)の実施形態を図5により説明する。まず、図5(A)のように、図2に示した半球状の凹部5が形成された図1の型板1を用意し、凹部5が形成されていない一方の端部2Aに、平均粒径約40μm、質量約70gの半導体粉末20を載せ、その外側に図4のスキージ10を配置する。次いで、このスキージ10を垂直に立てた状態でウレタンゴムの露出部15の底面を、型板1の上面に滑らせながら、型板1の他端部2Bに向けて約17cm/秒の速度で移動させる。これに沿って、半導体粉末20は該露出部15の側面で押されながら型板上を移動する。これにより、図5(B)のように、半導体粉末20の一部がそれぞれの凹部5の内部に入り込む。凹部5に入り込んだ半導体粉末21以外の残余の半導体粉末22は型板1の他端部2Bに堆積する。さらに、図5(C)のように、残余の半導体粉末22の外側にスキージ10を配置し、このスキージ10を型板1の一方の端部2Aに向けて、約17cm/秒の速度で移動させる。上記のように、スキージ10を型板1上に往復して滑らせることにより、図5(D)のように、全ての凹部5が半導体粉末23によりほぼ満たされる。必要に応じて、上記のようにスキージ10の移動を繰り返えすことにより、より確実に凹部5内を半導体粉末20により均一に満たすことができる。最終的に型板1上に残った半導体粉末24は、スキージ10により型板1から掃き落とした後、再利用される。
【0038】
工程(2)
本工程では、工程(1)により半導体粉末がその凹部に充填された型板の表側に重なるように加熱用基板を配置する。型板の凹部の開口部と加熱用基板の表面との間に隙間が生じないように、型板の表側に重なる部分の加熱用基板の表面は平面状にする。
【0039】
加熱用基板は、半導体粉末が溶融する温度に曝されても、変形や変質をしない程度の耐熱性を有することが好ましい。例えば、シリコン粒子を製造する場合には、加熱用基板の材料として、シリコンとの反応性が低いシリコンカーバイドまたは石英ガラスなどの耐熱性の材料が好ましい。特に、シリコンカーバイドは、耐熱衝撃性に優れ、石英ガラスのように高温下で軟化することもない。従って、加熱用基板はシリコンカーバイドそのもの、もしくは、アルミナやカーボンなどの比較的安価な耐熱性材料からなる基体の少なくとも表側(シリコン粉末が転写される側)にシリコンカーバイド層を結合させたものが好ましい。
【0040】
シリコンカーバイドを用いた上記の加熱用基板は、工程(4)における加熱により溶融したシリコンが加熱用基板の表面に付着することを防止するために、大気などの酸化雰囲気中で、例えば1450℃程度の高温で熱処理を施し、表面のシリコンカーバイドを酸化させることが好ましい。加熱用基板の表面に窒化珪素を被覆することによっても上記と同様の効果が得られる。
【0041】
石英ガラスを加熱用基板の材料として用いる場合には、シリコン粉末の溶融時に加熱用基板から不純物が混入する心配は無いが、軟化により変形し易い難点がある。従って、シリコン粉末が転写される側を石英ガラス層とし、上記のような耐熱性材料からなる基体と結合させて強度補強したものを、加熱用基板として使用することが好ましい。
【0042】
図6に、図5のようにシリコン粉末23が充填された型板1の表側に、加熱用基板30を載置した状態の縦断面図を示す。これは、型板1の端部2Aおよび2Bを除いた部分に、厚み約3mmで、約31.5×31.5cmの正方形のシリコンカーバイドの薄板からなる加熱用基板30を載置したものである。
【0043】
工程(3)および工程(4)
工程(3)では、工程(2)により型板上に加熱用基板が載置された状態を維持しつつ、表裏を反転させることにより、型板が加熱用基板上に配置された状態にする。工程(4)では、加熱用基板上に配置された型板を上方に引き上げて、型板の凹部に充填された半導体粉末を凹部から分離し、加熱用基板上に転写する。これにより、所定量の半導体粉末からなる多数の小塊が、型板の凹部と同一のパターンで形成される。
【0044】
図7および図8は、工程(3)および工程(4)の実施形態を示す縦断面図である。まず、工程(2)により重ね合わされた型板1と加熱用基板30をそのままの状態で持ち上げ、図7のように、表裏を反転させて、板状の台座31上に静置する。次工程において、加熱用基板30を台座31に載せた状態で加熱炉内に入れる場合には、台座31は十分な耐熱性が必要であり、例えば、アルミナなどからなっている。次いで、図8のように、型板1の両方の端部2Aおよび2Bをそれぞれを同じ速度で緩やかに持ち上げる。
【0045】
これにより、型板1の凹部5と同一のパターンで加熱用基板30上に半導体粉末の小塊32群が形成される。この際、半導体粉末23の凹部5からの分離を一層容易にするために、加熱用基板30上に配置された型板1を数回軽く叩いた後に上方に引き上げてもよい。形成されたシリコン粉末の小塊32は、型板1の凹部5を逆さにした形状のほぼ半球状であり、質量は約2.5mgである。加熱基板30上には、約18000個の小塊が規則正しく、互いに分離した状態で配列されている。
【0046】
工程(5)
本工程では、工程(4)により多数の小塊が形成された加熱用基板を加熱炉内に供給し、各小塊を当該半導体の融点以上の温度で加熱して、小塊中の半導体粉末を溶融し、融合させて一体化する。これにより、それぞれの小塊が、当該半導体からなる球状の溶融体に変化する。
【0047】
本発明の実施にあたっては、本工程および次工程(6)を、それぞれバッチ処理で実施することもできるが、これら二つの工程を連続して実施できる連続熱処理炉を使用するのが合理的である。シリコン粒子を製造する場合には、連続熱処理炉として、例えば、炉内の壁が耐熱性、耐蝕性に優れているセラミックス焼成用の炉を転用することができる。
【0048】
連続熱処理炉は、例えば、搬入部、予備加熱部、溶融部、凝固部、および搬出部からなり、これらを貫通するよう搬送用のローラーコンベアが配置されている。熱処理炉内の各部は所定の雰囲気に保持され、所定の温度プロファイルになるよう設定される。
【0049】
図9は、上記の連続熱処理炉を用いて実施した本工程(5)の実施形態により、シリコンの球状溶融体が形成された状態の縦断面図である。本実施形態では、多数の小塊33が配列された加熱用基板30を載せた図8の台座31を、上記熱処理炉の搬入部から予備加熱部を経て、連続的に溶融部内に搬入し、それぞれの小塊33に含まれるシリコン粉末を溶融、融合させて、小球状の溶融体33を形成する。加熱基板30上には、図8における小塊32とほぼ同じ配列パターンで球状の溶融体33が加熱基板30上に配列している。
【0050】
本工程における加熱中には、シリコン粉末あるいはシリコン溶融体の過度の酸化を防止することが必要であるが、シリコン溶融体を球状に保つためには、その表面に適度なシリコン酸化物を形成することが好ましい。そのために、予備加熱部、溶融部の雰囲気中には適度な濃度に管理された酸素が含まれることが好ましい。予備加熱部での加熱温度はシリコンの溶融温度(1413℃)未満であればよいが、通常は1000〜1350℃である。シリコン粉末を溶融するための溶融部での加熱温度は、1413℃以上であれば良いが、シリコンの溶融体を球状に保ち、かつ、基板の軟化や消耗あるいは炉材や加熱源の消耗を抑制するために、1500℃以下であることが好ましく、1460℃以下であることがさらに好ましい。予備加熱部および溶融部における小塊の加熱時間は、例えば、それぞれ約3〜7分間程度である。
【0051】
工程(6)
本工程では、前工程で形成された半導体の球状溶融体を冷却し、凝固させることにより、溶融体を半導体粒子に変化させる。
【0052】
図10は、上記の連続熱処理炉を用いて実施した本工程(6)の実施形態により、球状のシリコン粒子が形成された状態を示す縦断面図である。シリコンの球状の溶融体33が所定パターンで配列された加熱用基板30を載せた図9の台座31を、溶融部から凝固部に搬送し、冷却、凝固させてシリコンの球状の粒子とした。これらシリコン粒子は搬出部から搬出される。
【0053】
凝固部に移送されたシリコン溶融体を急冷すると、固化した外殻部内に溶融状態のシリコンが閉じ込められる。冷却が進むにつれて内部のシリコンが凝固すると、内部のシリコンの体積が増大するので、形成されたシリコン粒子にストレスが内蔵される。このストレスにより、粒子の外殻が破れて異常な突起部が形成されたり、クラックが生じたりする場合がある。
【0054】
これらの現象を抑制するために、生産性を損なわない範囲で、冷却速度が適切なものとなるよう、凝固部内の温度プロファイルとローラーコンベアによる搬送速度との関係を設定するのが好ましい。例えば、凝固部の温度を、2〜5分間かけて1450℃から1370〜1300℃まで降温させて、シリコン溶融体を凝固させる。その後、凝固部内および回収容器までの経路において自然冷却させてシリコン粒子を回収する。
【0055】
図9の溶融体は、例えば、上記の条件で冷却することにより、図10に示すように、ほぼそのままの配列パターンを保った状態で凝固してシリコン粒子34となり、相互に分離された状態で加熱用基板30上に形成される。形成されたシリコン粒子34のなかには、ほぼ球状のもの34A、上記のような理由により発生した突起部35を多少なりとも有するもの34Bが混在している。本実施形態における小塊の質量は約2.4mgであり、この小塊32から、粒径が約1.25mmの球状のシリコン粒子34が得られる。
【0056】
本発明により得られる半導体粒子は、ダイオード、センサー、および太陽電池などに用いる球状半導体素子の母体となるものである。その代表例として、前記の実施形態により得られた直径約1.25mmのシリコン粒子を加工して製造される代表的な球状光電変換素子、およびこれを用いた光電変換装置(低集光型球状太陽電池)について以下に説明する。
【0057】
上記の実施形態において、ノンドープシリコン粉末を原料として用いた場合には、球状光電変換素子を作製するために、まず、得られたシリコン粒子をp型あるいはn型の球状半導体とする。例えば、p型球状半導体を作製する場合は、まず、エッチングにより表面を清浄化したシリコン粒子に、臭化硼素(BBr3)を含む窒素ガス雰囲気中にて、約1200℃の熱処理を施し、表面に硼素の拡散層を形成する。
【0058】
次いで、このシリコン粒子を、適度の酸素を含む不活性ガス雰囲気中で、シリコンの融点よりやや高い温度で加熱してシリコン粒子を再溶融した後、徐冷する。これにより、表面層から内部に硼素がドープされたp型シリコン粒子が得られる。同時に、シリコン粒子が再溶融され、徐冷されることにより、シリコン粒子の単結晶化が進み、さらに粒子の真球度合が高まる効果もある。予め所定の濃度のドーパントがドープされたシリコン粉末を用いた場合には、上記のドーピング工程を省略することができる。
【0059】
次いで、研磨などにより、上記のp型シリコン粒子の突起部を除去するとともに真球度を高めて、約1.1mmの球径に揃える。この球状のp型シリコン粒子の表面に燐の拡散層(n型半導体層)を形成することにより、p−n接合を備えた球状光電変換素子が得られる。上記の拡散層は、例えば、POCl3の溶液のミストを表面に吹き付けたp型シリコン粒子を900℃程度の温度で熱処理することにより形成される。次に、必要に応じて、上記の光電変換素子の表面に、例えば、フッ素あるいはアンチモンをドープすることにより導電性を付与した厚さ50〜100nmのSnO2膜を反射防止膜として形成する。
【0060】
次に、上記の光電変換素子を用いた光電変換装置について説明する。図11は、光電変換装置を構成する発電ユニット101の平面図であり、図12はその発電部102の要部の縦断面図である。直径約1.1mmの光電変換素子(以下、「素子」と略称)103はアルミニウム製の支持板104に設けられた約1800個の凹部105のそれぞれに一個ずつ固定されて発電部102が形成される。凹部105の内面に照射された光を素子103に向けて反射させることにより、素子の光電変換効率が高められる。凹部105の底部に設けられた開口部から素子103の一部が支持板104の裏面側に突出している。その突出部分上のn型拡散層106および導電性反射防止膜(図示せず)はエッチングなどで除去され、素子103のp型半導体107の表面が露出している。その露出部には電極層108が形成されている。支持板104の凹部105内には、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)からなる透光性の保護樹脂116が埋め込まれ、凹部105内に固定された素子103がより強固に固定されている。
【0061】
支持板104の裏面には電気絶縁層110が接着され、電極層108に対向する部位の電気絶縁層110には透孔が開けられている。電気絶縁層110の裏側にはアルミニウム製の導電板109が接着され、電気絶縁層110の透孔に対向する部位の導電板109には透孔が開けられており、これらの透孔によって連通孔が形成されている。支持体104における凹部105の底部開口部の周縁端部と素子103のn型拡散層106は導電性反射防止膜(図示せず)を介して、導電性接着剤からなる接続部111によって電気的に接続されている。素子のp型半導体107の電極層108と導電板109とは、前記の連通孔を満たすよりやや多量に充填された導電性ペースト113により、電気的に接続されている。
【0062】
支持板104の一端は発電ユニット101の一方の端子115を構成し、これに対向する端部の裏側から突出させた導電板109の一端が他方の端子114を構成している。
上記の発電ユニットの出力は約1Wであるが、上記の端子114、115と他の発電ユニットの端子とを電気溶接などで接続することにより、任意の数の発電ユニットが直列または並列に電気的に接続することができる。これにより、希望する電圧の電力を出力する光電変換装置を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により製造された半導体粒子は、特に、住宅などの建築物の自家発電用などの光電変換装置に用いる球状光電変換素子の母体として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 型板
3 凹部形成部
4 凹部
5 半球状の凹部
6 六角錐の凹部
10 スキージ
20、21、22、23,24 半導体粉末(ノンドープシリコン粉末)
30 加熱用基板
31 台座
32 (半導体粉末の)小塊
33 (シリコンの)球状の溶融体
34、34A,34B 半導体粒子(シリコン粒子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状光電変換素子などの球状半導体素子もしくはその前駆体となる半導体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、球状半導体素子を、光電変換素子やダイオード、あるいは、水分解による水素発生用の素子などに使用することが検討されている。特に、球状のp型半導体粒子の表面に沿ってn型半導体層を形成した光電変換素子が、安価で、高出力を期待できる太陽電池用素子として注目されている。これらの素子を用いる装置の代表的な例として、多数の凹部を有する支持体の各凹部内に球状の太陽電池素子を取り付け、凹部内面を反射鏡として働かせる方式の低集光型球状太陽電池が提案されている(たとえば、特許文献1)。これによれば、光電変換部を薄型化して、高価なシリコンの使用量を低減でき、太陽電池のコスト削減が可能となる。さらに、通常の設計による凹面反射鏡では、その集光作用により、直接照射光の4〜6倍の光が素子に照射されるので、照射光を光電変換に有効に利用することができる。
【0003】
半導体粒子の製造方法の一つに、溶融滴下法が提案されている。これは、坩堝に入れた半導体材料の融液を不活性ガスで加圧して、坩堝底部に設けられたノズル孔から連続的に滴下させ、液滴が冷却塔中を落下する間に凝固させることによって、半導体粒子を製造するものである(たとえば、特許文献2)。
【0004】
溶融滴下法によれば、直径が約0.3〜2mmのほぼ球状の半導体粒子を量産することができる。しかしながら、得られる粒子には、形状や質量にかなり大きなばらつきがある。得られる粒子にばらつきがあると、それを球状半導体素子の母体として用いるには、篩い分けして所定の粒径範囲の粒子を選別し、それを研磨などの方法によりさらに粒径を揃えるとともに、真球状に仕上げなければならない。半導体粒子の形状とその大きさが不揃いであればあるほど、篩い分けにより廃棄される粒子の量、および研磨の際の削り屑が多くなって、著しい材料損失と歩留まり低下とを生じてしまう。
【0005】
このため、溶融滴下法を工業的に実施するには、基本的な製造条件、設備等についてさらに検討し、それらについて最適の条件を見出す必要がある。たとえば坩堝の材質や構造、ノズル孔の寸法、形状や半導体融液の加圧力などの融液滴下条件、および、冷却塔中の雰囲気や温度などの更なる検討が必要である。半導体粒子の他の代表的な製造方法として、製造プロセスの自動化が容易で、それに要する費用も安価な粉末溶融法が提案されている(たとえば、特許文献3、4)。
【0006】
粉末溶融法では、半導体粉末の小塊(pile)を加熱して溶融し、この小塊を冷却して凝固させることにより、ほぼ球状の半導体粒子を製造する。具体的には、まず、シリコンなどの半導体の粉末の所定量からなる複数の小塊を互いに離間させて形成する。次いで、これらの小塊に向けて光学的エネルギーを与えて各小塊内の半導体粉末を溶融させることにより、各小塊を球状の溶融体に変化させ、これらを冷却して凝固させる(特許文献4)。
【0007】
上記の小塊は、例えば、耐火物層の上に、一定形状の多数の孔が所定のパターンで形成されたプレート(テンプレート)を置き、そのプレート上に半導体粉末を撒き、これをブラシで掃いて、前記の孔に半導体粉末を満たし、次いで、上記プレートを引き上げることにより形成されるものである。この方法により、耐火物層の上に所定量の半導体粉末が積み重なってできた複数の小塊が、所定のパターンで配列される(特許文献3)。
【0008】
上記の方法により半導体粉末の小塊を形成する場合の最大の問題点は、崩れた状態の小塊が形成され易く、一定の形状、寸法を備えた小塊が得られないので、小塊の質量バラツキが大きく、しかも隣接する小塊が接触し易いことである。そのため、得られた半導体粒子の質量と寸法、形状のバラツキが大きくなったり、複数の粒子が連結した形状不良品が多発するという弊害がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−164554号公報
【特許文献2】特開2002−292265号公報
【特許文献3】アメリカ特許第5431127号明細書
【特許文献4】特許第3754451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、粉末溶融法における上記の問題を解決し、質量バラツキが小さく、形状が良好な半導体粒子を安定的に製造する方法を提供することを目的とする。これにより、半導体原料の歩留まり、および半導体粒子の生産性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体粒子の製造方法は、
(1)所定形状の多数の凹部が相互に間隔を設けて形成された型板を用意し、その型板の前記凹部のそれぞれを満たすように半導体粉末を充填する工程、
(2)少なくとも片面に平面部を有する加熱用基板を用意し、その加熱用基板を、前記平面部が前記型板の凹部を有する側の表面と重なるように、前記型板上に配置する工程、
(3)前記型板上に加熱用基板が配置された状態を維持しつつ、前記加熱用基板上に前記型板が配置されるように、表裏を反転させる工程、
(4)前記加熱用基板上に配置された型板を上方に引きあげて、前記凹部に充填された半導体粉末を前記加熱用基板上に転写することにより、所定量の前記半導体粉末からなる多数の小塊を形成する工程、
(5)前記多数の小塊が形成された加熱用基板を加熱炉内に供給し、前記小塊中の半導体粉末を溶融し、融合させて、球状の溶融体を形成する工程、および
(6)前記溶融体を冷却し、凝固させる工程、
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明における型板に形成された凹部は、その横断面積が開口部に近いほど大きいことが好ましい。さらに、前記凹部は、その内壁面が凹面を有することが好ましい。
【0013】
本発明における半導体粉末は、ノンドープシリコンあるいは不純物がドープされたシリコンからなることが好ましい。さらに、この半導体粉末は、その平均粒径の範囲が、20〜70mμであることが好ましい。
【0014】
本発明における加熱用基板は、少なくともその表面層がシリコンカーバイドからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記の粉末溶融法において、半導体粉末からなる多数の小塊を、寸法、形状および質量のバラツキが小さく、相互に離間させた状態で容易に形成することができる。これらの小塊を溶融させ、凝固させることにより、質量バラツキが小さく、形状が良好な球状の半導体粒子が得られる。さらに、得られた半導体粒子同士が連結するという問題点なども解消される。これにより、原料半導体粉末の歩留まり、ならびに、半導体粒子の品質および生産性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の工程(1)の実施形態において用いる型板の平面図である。
【図2】図1の型板の凹部の平面図(A)および縦断面図(B)である。
【図3】図1の型板の他の形態の凹部の平面図(A)、および縦断面図(B)である。
【図4】本発明の工程(1)の実施形態において用いるスキージの正面図(A)、お よびそのIV−IV線に沿った断面図(B)である。
【図5】本発明の工程(1)の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の工程(2)の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の工程(3)の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の工程(4)の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の工程(5)の実施形態を示す縦断面図である。
【図10】本発明の工程(6)の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】本発明により製造したシリコン粒子を母体とした光電変換装置の発電ユニ ットの平面図である。
【図12】図11の発電ユニットの要部の縦断面図である。
【図13】従来の半導体粒子の製造方法における半導体粉末の小塊を形成するための 前半の工程を示す縦断面図である。
【図14】同上の後半の工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の半導体粒子の製造方法の最大の特徴は、前記の粉末溶融法において、一定量の半導体粉末からなる多数の小塊を、その形を崩すことなく、互いに離間させた状態で形成するための好適な方法を提供したことにある。本発明は、これらの小塊を加熱して、各小塊内の半導体粉末を溶融させ、融合させて球状溶融体を形成し、これを冷却して凝固させることにより、質量バラツキが少ないほぼ球状の半導体粒子を高収率で製造することを可能にするものである。
【0018】
本発明により半導体粉末の小塊を形成する方法を説明する前に、まず、前記の特許文献3に開示されている従来の方法について説明する。前記のように、この方法の最大の問題点は、形成される小塊の寸法、形状、および質量のバラツキが大きく、さらに、隣接する小塊が相互に接触し易いことである。
【0019】
この方法を図13および図14により説明する。石英ボート201上の耐火物層202の上に、複数の貫通孔203が形成されたテンプレート204が置かれる。テンプレート204上の端部に置かれた半導体粉末を、ドクターブレイト゛により他端部に向けて移動させることにより、図13のように、貫通孔203に所定量の半導体粉末205が満たされる。
【0020】
特許文献3には、図13のテンプレート204を耐火物層202の上から上方へ取り除き、半導体粉末205を貫通孔203から分離させて耐火物層202上に留まらせることにより、耐火物層202上に多数の小塊が貫通孔203と同じ配列パターンで形成される旨が開示されている。
【0021】
しかし、実際に上記の方法に準じた実験を試みた結果、整った形状、寸法の複数の小塊を貫通孔203と同じ配列パターンで形成することができなかった。図14に、図13におけるテンプレート204を耐火物層202の上から取り除くことにより、半導体粉末の小塊206が実際に形成された状態を示す。テンプレート204を耐火物層202から垂直方向に静かに引き上げると、まず、貫通孔203内の半導体粉末205の大部分は、貫通孔203から分離し、裾部がやや広がった状態で耐火物層202上に堆積し、一部分は、貫通孔203から分離せずに内部に残存する。
【0022】
貫通孔203から分離せずに内部に残存した半導体粉末は、テンプレート204がさらに上方に引き上げられる過程で、その一部分は耐火物層202上に落下して、貫通孔203から分離した半導体粉末と一体になって、小塊206を形成する。テンプレート204の上方への引き上げが終了した時点においても、貫通孔203の内壁に沿って、若干量の半導体粉末207が残存している。
【0023】
図14に示すように、上記の過程で形成された小塊206の形状および寸法は不揃いであり、その底部は貫通孔203の横断面積よりも大きく広がっている。著しい場合には、隣接する小塊同士206A、206Bが、裾部において接触もしくは繋がり合っている。このような問題は、テンプレート204を耐火物層202の上から取り除く過程において、半導体粉末205が貫通孔203内から円滑に分離しないということに起因している。
【0024】
半導体粉末を貫通孔内から円滑に分離させるには、貫通孔の横断面積を、テンプレートの表面側から裏面側にかけて大きくすればよいが、このように間口部が狭い貫通孔には所定量の半導体粉末を満たすことが困難である。逆に、貫通孔の横断面積を、テンプレートの表面側から裏面側にかけて小さくすると、貫通孔に半導体粉末を満たすのは容易であるが、貫通孔内から半導体粉末を分離することが一層困難になる。これらのことから、特許文献3の技術においては、上記のいずれの方法によっても、質量バラツキが小さく、形状が整った半導体粉末の小塊を互いに離間させて形成することは困難であることが判明した。
【0025】
本発明は、下記の工程(1)〜(4)により上記の問題を解決し、質量バラツキが小さく、形状が整った小塊を、互いに離間させた状態で、形成することを容易にしたものである。まず、工程(1)により、型板に形成された所定形状の多数の凹部のそれぞれに半導体粉末を満たす。凹部は、その横断面積が開口部に近いほど大きくなるように形成されたものが好ましい。このように間口が広く底部に近いほど狭い凹部を設けることにより、一定量の半導体粉末を隙間なく容易に凹部内に充填することができ、それぞれの凹部に充填される半導体粉末の質量バラツキを効果的に縮小することができる。
【0026】
次いで、工程(2)、および(3)により、型板上に加熱用基板を重ねあわせ、その状態を維持したままで表裏を反転させて、加熱用基板上に型板が配置された状態にする。
【0027】
工程(4)により、型板を上方に引き上げることにより、型板の凹部から半導体粉末を分離して、加熱用基板上に転写する。これにより、型板の凹部と同じ配列パターンで半導体粉末の多数の小塊が形成される。特に、横断面積が開口部に近いほど大きくなるように凹部が形成されている場合には、凹部から半導体粉末を容易に分離させることができる。これにより、バラツキの小さい所定量の半導体粉末からなる形状の整った多数の小塊を、型板の凹部と同一の互いに分離したパターンで形成することができる。凹部の内壁面を凹面状とすることにより、半導体粉末を凹部内から分離する効果が一層顕著に得られる。
【0028】
本発明は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−砒素などの半導体粒子の製造に適用することができるが、多くの場合は以下の実施形態において述べるようなシリコン粒子の製造に適用される。原料となる半導体粉末はノンドープ半導体粉末、不純物がドープされた半導体粉末の何れであってもよい。
【0029】
前者の場合は、本発明により製造された半導体粒子に対して、所定の不純物を所定濃度でドープすれば、p型またはn型の半導体粒子が得られる。また、後者の場合には、半導体粉末のドーパント濃度を適切に選択すれば、本発明により得られた半導体粒子をそのまま、p型またはn型の半導体粒子として使用することができる。さらには、ドーパントを高濃度で含むp型またはn型の半導体粉末と、ノンドープもしくは低濃度のドーパントがドープされた半導体粉末とを、所定比率で混合した粉末を原料として使用しても、目的とするドーパント濃度のp型またはn型の半導体粒子を作製することができる。
【0030】
次に、本発明の半導体粒子の製造方法によりシリコン粒子を製造する場合の代表的な実施形態を工程毎に説明する。
【0031】
工程(1)
本工程では、所定形状の多数の凹部が相互に間隔を設けて形成された型板を用意し、それぞれの凹部を満たすように半導体粉末を充填する。
【0032】
まず、本工程で用意する型板の代表的な実施形態を説明する。図1に型板の平面図を示す。型板1は、33.5×31.5cmの方形で、厚み約5mmの石英板を切削加工したものである。その表側の端部2を残した約30cm角の凹部形成部3には、多数の凹部4(凹部形成部3の外殻部の凹部4のみを図示)が相互に近接した規則的なパターンで配列されている。上記の型板に形成される凹部の代表例を図2および図3に示す。図2(A)は半球状の凹部5の平面図、図2(B)はその縦断面図である。凹部5の深さ(H1)は約1.2mm、開口部の直径(D1)は約2.3mm、各凹部5の開口部の間隔(d1)は約0.4mmである。凹部形成部3内には、約15,000個の凹部5が密集して千鳥状に配列されている。図3(A)は六角錐状の凹部6の平面図、図3(B)はその縦断面図である。凹部6の深さ(H2)は約1.3mm、開口部の正六角形の一辺の長さ(L)は約1.2mm、開口部の横幅(D2)は約2.1mmである。各凹部6の間隔(d2)は約0.3mmであり、約18,000個の凹部6が密集して千鳥状に配列されている。
【0033】
凹部は、上記に拘ることなく、その横断面積が開口部から底部にかけて同一ないしは小さくなるような様々な形状を採ることができる。特に、凹部はその横断面積が底部に近いほど小さいのが好ましい。さらに、凹部は、その内壁面が放物面や球面のような凹面を有するものが一層好ましい。上記以外に、例えば、円錐状、円錐台状、角錐状、角錐台状、円柱状などの凹部であってもよく、底部は丸みを帯びていることが好ましい。このような形状の凹部を形成することにより、本工程(1)における半導体粉末の凹部への一定量の充填、および、工程(4)における凹部からの半導体粉末の分離を確実かつ容易に行うことができる。
【0034】
型板の材質は、耐熱性に格別の配慮は不要であるが、繰り返し使用しても変形や磨耗をすることがないような機械的強度および耐摩耗性などの耐久性を備えたものが好ましい。また、切削加工などにより、寸法および形状のバラツキが小さい多数の小さな凹部を容易に形成できるものが好ましい。上記の条件を満たす型板の材料としては、石英ガラス、アルミナ、およびシリコンカーバイトが好ましいが、比較的安価な材料として、青板ガラス、および白板ガラスなども使用できる。
【0035】
シリコン粒子の原料としての半導体粉末には、ノンドープシリコンあるいは不純物がドープされたシリコンの粉末を用いることができる。また、シリコン粉末は、その平均粒径が、20〜70mμであることが好ましく、特に、30〜50μmであることが好ましい。上記の粒径範囲のシリコン粉末を使用すると、型板の凹部のそれぞれに充填されるシリコン粉末の質量のバラツキを小さくすることができる。これにより、後の工程で一定質量のシリコン粉末からなる小塊が形成され易くなり、さらにシリコン粉末を短時間にすべてを溶融させることが可能となる。
【0036】
次に、本工程(1)の実施形態を具体的に説明する。まず、その実施形態における工程で用いるスキージを、図4により説明する。図4(A)は、スキージの正面図、図4(B)はそのIV−IV線に沿った断面図である。スキージ10は、一対のアクリル板11、
および、これらのアクリル板11に挟まれ、締め付け金具12及び間座13を用いて固定された、板状のウレタンゴム14からなり、ウレタンゴムの下部15が露出している。
【0037】
上記のスキージ10を用いて、型板の凹部のそれぞれを満たすように半導体粉末を充填する工程(1)の実施形態を図5により説明する。まず、図5(A)のように、図2に示した半球状の凹部5が形成された図1の型板1を用意し、凹部5が形成されていない一方の端部2Aに、平均粒径約40μm、質量約70gの半導体粉末20を載せ、その外側に図4のスキージ10を配置する。次いで、このスキージ10を垂直に立てた状態でウレタンゴムの露出部15の底面を、型板1の上面に滑らせながら、型板1の他端部2Bに向けて約17cm/秒の速度で移動させる。これに沿って、半導体粉末20は該露出部15の側面で押されながら型板上を移動する。これにより、図5(B)のように、半導体粉末20の一部がそれぞれの凹部5の内部に入り込む。凹部5に入り込んだ半導体粉末21以外の残余の半導体粉末22は型板1の他端部2Bに堆積する。さらに、図5(C)のように、残余の半導体粉末22の外側にスキージ10を配置し、このスキージ10を型板1の一方の端部2Aに向けて、約17cm/秒の速度で移動させる。上記のように、スキージ10を型板1上に往復して滑らせることにより、図5(D)のように、全ての凹部5が半導体粉末23によりほぼ満たされる。必要に応じて、上記のようにスキージ10の移動を繰り返えすことにより、より確実に凹部5内を半導体粉末20により均一に満たすことができる。最終的に型板1上に残った半導体粉末24は、スキージ10により型板1から掃き落とした後、再利用される。
【0038】
工程(2)
本工程では、工程(1)により半導体粉末がその凹部に充填された型板の表側に重なるように加熱用基板を配置する。型板の凹部の開口部と加熱用基板の表面との間に隙間が生じないように、型板の表側に重なる部分の加熱用基板の表面は平面状にする。
【0039】
加熱用基板は、半導体粉末が溶融する温度に曝されても、変形や変質をしない程度の耐熱性を有することが好ましい。例えば、シリコン粒子を製造する場合には、加熱用基板の材料として、シリコンとの反応性が低いシリコンカーバイドまたは石英ガラスなどの耐熱性の材料が好ましい。特に、シリコンカーバイドは、耐熱衝撃性に優れ、石英ガラスのように高温下で軟化することもない。従って、加熱用基板はシリコンカーバイドそのもの、もしくは、アルミナやカーボンなどの比較的安価な耐熱性材料からなる基体の少なくとも表側(シリコン粉末が転写される側)にシリコンカーバイド層を結合させたものが好ましい。
【0040】
シリコンカーバイドを用いた上記の加熱用基板は、工程(4)における加熱により溶融したシリコンが加熱用基板の表面に付着することを防止するために、大気などの酸化雰囲気中で、例えば1450℃程度の高温で熱処理を施し、表面のシリコンカーバイドを酸化させることが好ましい。加熱用基板の表面に窒化珪素を被覆することによっても上記と同様の効果が得られる。
【0041】
石英ガラスを加熱用基板の材料として用いる場合には、シリコン粉末の溶融時に加熱用基板から不純物が混入する心配は無いが、軟化により変形し易い難点がある。従って、シリコン粉末が転写される側を石英ガラス層とし、上記のような耐熱性材料からなる基体と結合させて強度補強したものを、加熱用基板として使用することが好ましい。
【0042】
図6に、図5のようにシリコン粉末23が充填された型板1の表側に、加熱用基板30を載置した状態の縦断面図を示す。これは、型板1の端部2Aおよび2Bを除いた部分に、厚み約3mmで、約31.5×31.5cmの正方形のシリコンカーバイドの薄板からなる加熱用基板30を載置したものである。
【0043】
工程(3)および工程(4)
工程(3)では、工程(2)により型板上に加熱用基板が載置された状態を維持しつつ、表裏を反転させることにより、型板が加熱用基板上に配置された状態にする。工程(4)では、加熱用基板上に配置された型板を上方に引き上げて、型板の凹部に充填された半導体粉末を凹部から分離し、加熱用基板上に転写する。これにより、所定量の半導体粉末からなる多数の小塊が、型板の凹部と同一のパターンで形成される。
【0044】
図7および図8は、工程(3)および工程(4)の実施形態を示す縦断面図である。まず、工程(2)により重ね合わされた型板1と加熱用基板30をそのままの状態で持ち上げ、図7のように、表裏を反転させて、板状の台座31上に静置する。次工程において、加熱用基板30を台座31に載せた状態で加熱炉内に入れる場合には、台座31は十分な耐熱性が必要であり、例えば、アルミナなどからなっている。次いで、図8のように、型板1の両方の端部2Aおよび2Bをそれぞれを同じ速度で緩やかに持ち上げる。
【0045】
これにより、型板1の凹部5と同一のパターンで加熱用基板30上に半導体粉末の小塊32群が形成される。この際、半導体粉末23の凹部5からの分離を一層容易にするために、加熱用基板30上に配置された型板1を数回軽く叩いた後に上方に引き上げてもよい。形成されたシリコン粉末の小塊32は、型板1の凹部5を逆さにした形状のほぼ半球状であり、質量は約2.5mgである。加熱基板30上には、約18000個の小塊が規則正しく、互いに分離した状態で配列されている。
【0046】
工程(5)
本工程では、工程(4)により多数の小塊が形成された加熱用基板を加熱炉内に供給し、各小塊を当該半導体の融点以上の温度で加熱して、小塊中の半導体粉末を溶融し、融合させて一体化する。これにより、それぞれの小塊が、当該半導体からなる球状の溶融体に変化する。
【0047】
本発明の実施にあたっては、本工程および次工程(6)を、それぞれバッチ処理で実施することもできるが、これら二つの工程を連続して実施できる連続熱処理炉を使用するのが合理的である。シリコン粒子を製造する場合には、連続熱処理炉として、例えば、炉内の壁が耐熱性、耐蝕性に優れているセラミックス焼成用の炉を転用することができる。
【0048】
連続熱処理炉は、例えば、搬入部、予備加熱部、溶融部、凝固部、および搬出部からなり、これらを貫通するよう搬送用のローラーコンベアが配置されている。熱処理炉内の各部は所定の雰囲気に保持され、所定の温度プロファイルになるよう設定される。
【0049】
図9は、上記の連続熱処理炉を用いて実施した本工程(5)の実施形態により、シリコンの球状溶融体が形成された状態の縦断面図である。本実施形態では、多数の小塊33が配列された加熱用基板30を載せた図8の台座31を、上記熱処理炉の搬入部から予備加熱部を経て、連続的に溶融部内に搬入し、それぞれの小塊33に含まれるシリコン粉末を溶融、融合させて、小球状の溶融体33を形成する。加熱基板30上には、図8における小塊32とほぼ同じ配列パターンで球状の溶融体33が加熱基板30上に配列している。
【0050】
本工程における加熱中には、シリコン粉末あるいはシリコン溶融体の過度の酸化を防止することが必要であるが、シリコン溶融体を球状に保つためには、その表面に適度なシリコン酸化物を形成することが好ましい。そのために、予備加熱部、溶融部の雰囲気中には適度な濃度に管理された酸素が含まれることが好ましい。予備加熱部での加熱温度はシリコンの溶融温度(1413℃)未満であればよいが、通常は1000〜1350℃である。シリコン粉末を溶融するための溶融部での加熱温度は、1413℃以上であれば良いが、シリコンの溶融体を球状に保ち、かつ、基板の軟化や消耗あるいは炉材や加熱源の消耗を抑制するために、1500℃以下であることが好ましく、1460℃以下であることがさらに好ましい。予備加熱部および溶融部における小塊の加熱時間は、例えば、それぞれ約3〜7分間程度である。
【0051】
工程(6)
本工程では、前工程で形成された半導体の球状溶融体を冷却し、凝固させることにより、溶融体を半導体粒子に変化させる。
【0052】
図10は、上記の連続熱処理炉を用いて実施した本工程(6)の実施形態により、球状のシリコン粒子が形成された状態を示す縦断面図である。シリコンの球状の溶融体33が所定パターンで配列された加熱用基板30を載せた図9の台座31を、溶融部から凝固部に搬送し、冷却、凝固させてシリコンの球状の粒子とした。これらシリコン粒子は搬出部から搬出される。
【0053】
凝固部に移送されたシリコン溶融体を急冷すると、固化した外殻部内に溶融状態のシリコンが閉じ込められる。冷却が進むにつれて内部のシリコンが凝固すると、内部のシリコンの体積が増大するので、形成されたシリコン粒子にストレスが内蔵される。このストレスにより、粒子の外殻が破れて異常な突起部が形成されたり、クラックが生じたりする場合がある。
【0054】
これらの現象を抑制するために、生産性を損なわない範囲で、冷却速度が適切なものとなるよう、凝固部内の温度プロファイルとローラーコンベアによる搬送速度との関係を設定するのが好ましい。例えば、凝固部の温度を、2〜5分間かけて1450℃から1370〜1300℃まで降温させて、シリコン溶融体を凝固させる。その後、凝固部内および回収容器までの経路において自然冷却させてシリコン粒子を回収する。
【0055】
図9の溶融体は、例えば、上記の条件で冷却することにより、図10に示すように、ほぼそのままの配列パターンを保った状態で凝固してシリコン粒子34となり、相互に分離された状態で加熱用基板30上に形成される。形成されたシリコン粒子34のなかには、ほぼ球状のもの34A、上記のような理由により発生した突起部35を多少なりとも有するもの34Bが混在している。本実施形態における小塊の質量は約2.4mgであり、この小塊32から、粒径が約1.25mmの球状のシリコン粒子34が得られる。
【0056】
本発明により得られる半導体粒子は、ダイオード、センサー、および太陽電池などに用いる球状半導体素子の母体となるものである。その代表例として、前記の実施形態により得られた直径約1.25mmのシリコン粒子を加工して製造される代表的な球状光電変換素子、およびこれを用いた光電変換装置(低集光型球状太陽電池)について以下に説明する。
【0057】
上記の実施形態において、ノンドープシリコン粉末を原料として用いた場合には、球状光電変換素子を作製するために、まず、得られたシリコン粒子をp型あるいはn型の球状半導体とする。例えば、p型球状半導体を作製する場合は、まず、エッチングにより表面を清浄化したシリコン粒子に、臭化硼素(BBr3)を含む窒素ガス雰囲気中にて、約1200℃の熱処理を施し、表面に硼素の拡散層を形成する。
【0058】
次いで、このシリコン粒子を、適度の酸素を含む不活性ガス雰囲気中で、シリコンの融点よりやや高い温度で加熱してシリコン粒子を再溶融した後、徐冷する。これにより、表面層から内部に硼素がドープされたp型シリコン粒子が得られる。同時に、シリコン粒子が再溶融され、徐冷されることにより、シリコン粒子の単結晶化が進み、さらに粒子の真球度合が高まる効果もある。予め所定の濃度のドーパントがドープされたシリコン粉末を用いた場合には、上記のドーピング工程を省略することができる。
【0059】
次いで、研磨などにより、上記のp型シリコン粒子の突起部を除去するとともに真球度を高めて、約1.1mmの球径に揃える。この球状のp型シリコン粒子の表面に燐の拡散層(n型半導体層)を形成することにより、p−n接合を備えた球状光電変換素子が得られる。上記の拡散層は、例えば、POCl3の溶液のミストを表面に吹き付けたp型シリコン粒子を900℃程度の温度で熱処理することにより形成される。次に、必要に応じて、上記の光電変換素子の表面に、例えば、フッ素あるいはアンチモンをドープすることにより導電性を付与した厚さ50〜100nmのSnO2膜を反射防止膜として形成する。
【0060】
次に、上記の光電変換素子を用いた光電変換装置について説明する。図11は、光電変換装置を構成する発電ユニット101の平面図であり、図12はその発電部102の要部の縦断面図である。直径約1.1mmの光電変換素子(以下、「素子」と略称)103はアルミニウム製の支持板104に設けられた約1800個の凹部105のそれぞれに一個ずつ固定されて発電部102が形成される。凹部105の内面に照射された光を素子103に向けて反射させることにより、素子の光電変換効率が高められる。凹部105の底部に設けられた開口部から素子103の一部が支持板104の裏面側に突出している。その突出部分上のn型拡散層106および導電性反射防止膜(図示せず)はエッチングなどで除去され、素子103のp型半導体107の表面が露出している。その露出部には電極層108が形成されている。支持板104の凹部105内には、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)からなる透光性の保護樹脂116が埋め込まれ、凹部105内に固定された素子103がより強固に固定されている。
【0061】
支持板104の裏面には電気絶縁層110が接着され、電極層108に対向する部位の電気絶縁層110には透孔が開けられている。電気絶縁層110の裏側にはアルミニウム製の導電板109が接着され、電気絶縁層110の透孔に対向する部位の導電板109には透孔が開けられており、これらの透孔によって連通孔が形成されている。支持体104における凹部105の底部開口部の周縁端部と素子103のn型拡散層106は導電性反射防止膜(図示せず)を介して、導電性接着剤からなる接続部111によって電気的に接続されている。素子のp型半導体107の電極層108と導電板109とは、前記の連通孔を満たすよりやや多量に充填された導電性ペースト113により、電気的に接続されている。
【0062】
支持板104の一端は発電ユニット101の一方の端子115を構成し、これに対向する端部の裏側から突出させた導電板109の一端が他方の端子114を構成している。
上記の発電ユニットの出力は約1Wであるが、上記の端子114、115と他の発電ユニットの端子とを電気溶接などで接続することにより、任意の数の発電ユニットが直列または並列に電気的に接続することができる。これにより、希望する電圧の電力を出力する光電変換装置を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により製造された半導体粒子は、特に、住宅などの建築物の自家発電用などの光電変換装置に用いる球状光電変換素子の母体として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 型板
3 凹部形成部
4 凹部
5 半球状の凹部
6 六角錐の凹部
10 スキージ
20、21、22、23,24 半導体粉末(ノンドープシリコン粉末)
30 加熱用基板
31 台座
32 (半導体粉末の)小塊
33 (シリコンの)球状の溶融体
34、34A,34B 半導体粒子(シリコン粒子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)所定形状の多数の凹部が相互に間隔を設けて形成された型板を用意し、その型板の前記凹部のそれぞれを満たすように半導体粉末を充填する工程、
(2)少なくとも片面に平面部を有する加熱用基板を用意し、その加熱用基板を、前記平面部が前記型板の凹部を有する側の表面と重なるように、前記型板上に配置する工程、
(3)前記型板上に加熱用基板が配置された状態を維持しつつ、前記加熱用基板上に前記型板が配置されるように、表裏を反転させる工程、
(4)前記加熱用基板上に配置された型板を上方に引きあげて、前記凹部に充填された半導体粉末を前記加熱用基板上に転写することにより、所定量の前記半導体粉末からなる多数の小塊を形成する工程、
(5)前記多数の小塊が形成された加熱用基板を加熱炉内に供給し、前記小塊中の半導体粉末を溶融し、融合させて、球状の溶融体を形成する工程、および
(6)前記溶融体を冷却し、凝固させる工程、
を有する半導体粒子の製造方法。
【請求項2】
前記凹部の横断面積が開口部に近いほど大きい請求項1に記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項3】
前記凹部の内壁面が凹面を有する請求項2に記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項4】
前記半導体粉末が、ノンドープシリコンあるいは不純物がドープされたシリコンからなる請求項1〜3の何れかに記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記半導体粉末の平均粒径範囲が20〜70μmである請求項4に記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記加熱用基板の少なくとも表面層がシリコンカーバイドからなる請求項1〜5の何れかに記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項1】
(1)所定形状の多数の凹部が相互に間隔を設けて形成された型板を用意し、その型板の前記凹部のそれぞれを満たすように半導体粉末を充填する工程、
(2)少なくとも片面に平面部を有する加熱用基板を用意し、その加熱用基板を、前記平面部が前記型板の凹部を有する側の表面と重なるように、前記型板上に配置する工程、
(3)前記型板上に加熱用基板が配置された状態を維持しつつ、前記加熱用基板上に前記型板が配置されるように、表裏を反転させる工程、
(4)前記加熱用基板上に配置された型板を上方に引きあげて、前記凹部に充填された半導体粉末を前記加熱用基板上に転写することにより、所定量の前記半導体粉末からなる多数の小塊を形成する工程、
(5)前記多数の小塊が形成された加熱用基板を加熱炉内に供給し、前記小塊中の半導体粉末を溶融し、融合させて、球状の溶融体を形成する工程、および
(6)前記溶融体を冷却し、凝固させる工程、
を有する半導体粒子の製造方法。
【請求項2】
前記凹部の横断面積が開口部に近いほど大きい請求項1に記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項3】
前記凹部の内壁面が凹面を有する請求項2に記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項4】
前記半導体粉末が、ノンドープシリコンあるいは不純物がドープされたシリコンからなる請求項1〜3の何れかに記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記半導体粉末の平均粒径範囲が20〜70μmである請求項4に記載の半導体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記加熱用基板の少なくとも表面層がシリコンカーバイドからなる請求項1〜5の何れかに記載の半導体粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−17234(P2012−17234A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156848(P2010−156848)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(502139910)株式会社クリーンベンチャー21 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(502139910)株式会社クリーンベンチャー21 (33)
【Fターム(参考)】
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