説明

半導体素子

【課題】低誘電率材料と半導体材料との密着性を向上させることの可能な半導体素子を提供する。
【解決手段】基板10上に、下部DBR層11、下部スペーサ層12、活性層13、上部スペーサ層14、上部DBR層15およびコンタクト層16を基板10側からこの順に含む柱状のメサ部17が設けられている。メサ部17の上面には、環状の上部電極21が設けられており、メサ部17の周囲には、上部電極21に電気的に接続された電極パッド23が設けられている。電極パッド23の直下に台座部26が設けられている。台座部26は、酸化半導体からなる凹凸部26Aと、低誘電率材料からなる埋め込み部26Bとを有している。凹凸部26Aは凹凸構造を有しており、埋め込み部26Bはその凹凸構造の凹凸を埋め込むように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率材料と半導体との密着性が改善された半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光型半導体レーザは、端面発光型半導体レーザと比べて低消費電力であり、かつ、直接変調可能であることから、近年、安価な光通信用光源として使われている。
【0003】
面発光型半導体レーザでは、一般に、基板上に、下部DBR層、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、上部DBR層およびコンタクト層をこの順に積層してなる柱状のメサが設けられている。下部DBR層および上部DBR層のいずれか一方には、活性層への電流注入効率を高め、しきい値電流を下げるために、電流注入領域を狭めた構造を有する電流狭窄層が設けられている。メサの上面および基板の裏面にはそれぞれ、電極が設けられている。この半導体レーザでは、電極から注入された電流が電流狭窄層により狭窄されたのち活性層に注入され、これにより電子と正孔の再結合による発光が生じる。この光は、下部DBR層および上部DBR層により反射され、所定の波長でレーザ発振が生じ、メサの上面からレーザ光として射出される。
【0004】
ところで、メサの直径はせいぜい数十μm程度であり、メサ上の電極の面積は極めて狭い。そのため、メサ上の電極と電気的に接続されたワイヤボンディング用の電極パッドがメサの周囲に形成されている。しかし、電極パッドと下部DBR層との間に寄生容量が発生する。高速で直接変調するためには、この寄生容量を低く抑える必要があり、電極パッドの下に低誘電率材料を挿入するといった工夫が必要となる。
【0005】
上記の低誘電率材料に対して求められる特性は、(1)低誘電率で耐熱性・耐湿性に優れること、(2)スピンコートなどで簡便に厚膜を形成することが可能であること、(3)パターニングが容易であること、の3点である。ポリイミドはこれらの特性を全て兼ね備えた代表的な低誘電率材料であり、寄生容量を低減するために電極パッドや配線の下に形成される一般的な材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−35437号公報
【特許文献2】特開平01-308036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ポリイミドを成形する場合には、ポリイミドを、前駆体であるポリアミド酸の溶液状態で半導体層または絶縁層に塗布し、パターニングしたあとに、300℃以上の高温で乾燥、硬化(イミド化)させる。この硬化の際に、ポリイミドが伸縮(多くは収縮)するので、形成後のポリイミドは歪みを内包する。また、ポリイミドの熱膨張係数は周囲の半導体層や絶縁層とは異なるので、後の工程中に、亀裂や剥離が生じたりすることがある。また、電極パッドにワイヤをボンディングする際に加えられる超音波などにより、亀裂や剥離が生じたりする場合もある。
【0008】
なお、従来から、電極の密着性を向上させる手法は種々、提案されている。例えば、特許文献1では、電極の下の絶縁層に凹凸構造を設けることにより、電極と絶縁層との密着強度を向上させることが提案されている。また、特許文献2では、電極の下の絶縁層および半導体基板を部分的にくり抜いて、寄生容量を低減することが提案されている。しかし、ポリイミドなどの低誘電率材料と半導体材料との密着性を向上させる一般的な手法は特に提案されていない。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、低誘電率材料と半導体材料との密着性を向上させることの可能な半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体素子は、半導体層上に密着層および低誘電率材料層を半導体層側から順に備えたものである。密着層は凹凸構造を有しており、低誘電率材料層は凹凸構造の凹凸を埋め込むように形成されている。
【0011】
本発明の半導体素子では、半導体層と低誘電率材料層との間に、凹凸構造を有する密着層が設けられており、密着層の凹凸構造を埋め込むように低誘電率材料層が形成されている。これにより、密着層と低誘電率材料層との接触面積が大きくなっている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体素子によれば、半導体層と低誘電率材料層との間に設けられた密着層と、低誘電率材料層との接触面積が大きくなるようにしたので、低誘電率材料層が密着層から剥離し難い。これにより、低誘電率材料と半導体との密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る半導体レーザの斜視図である。
【図2】図1の半導体レーザのA−A矢視方向の断面図である。
【図3】図1の凹凸部26Aの断面図である。
【図4】図1の半導体レーザの製造過程を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く過程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く過程を説明するための断面図である。
【図7】一変形例に係る半導体レーザの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.構成
2.製造方法
3.作用・効果
4.変形例
【0015】
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る面発光型の半導体レーザ1を斜視的に表したものである。図2は、図1の半導体レーザ1のA−A矢視方向の断面構成の一例を表したものである。なお、図1、図2は模式的に表したものであり、実際の寸法、形状とは異なっている。
【0016】
本実施の形態の半導体レーザ1は、基板10の一面側に、下部DBR層11、下部スペーサ層12、活性層13、上部スペーサ層14、上部DBR層15およびコンタクト層16をこの順に積層してなる積層構造20を備えている。この積層構造20の上部、具体的には、下部DBR層11の一部、下部スペーサ層12、活性層13、上部スペーサ層14、上部DBR層15およびコンタクト層16には、例えば幅30μm程度の柱状のメサ部17が形成されている。
【0017】
なお、本実施の形態では、下部DBR層11が本発明の「半導体層」および「第1多層膜反射鏡」の一具体例に相当する。上部DBR層15が本発明の「第2多層膜反射鏡」の一具体例に相当する。積層構造20が本発明の「共振器構造」の一具体例に相当する。
【0018】
基板10は、例えばn型GaAs基板である。なお、n型不純物としては、例えば、ケイ素(Si)またはセレン(Se)などが挙げられる。積層構造20は、例えば、AlGaAs系の化合物半導体によりそれぞれ構成されている。なお、AlGaAs系の化合物半導体とは、短周期型周期表における3B族元素のうち少なくともアルミニウム(Al)およびガリウム(Ga)と、短周期型周期表における5B族元素のうち少なくともヒ素(As)とを含む化合物半導体のことをいう。
【0019】
下部DBR層11は、低屈折率層(図示せず)および高屈折率層(図示せず)を交互に積層して形成されたものである。この低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n1 (λ0は発振波長、n1 は屈折率)のn型Alx1Ga1-x1As(0<x1<1)により構成されている。高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n2(n2 は屈折率)のn型Alx2Ga1-x2As(0<x2<x1)により構成されている。
【0020】
下部スペーサ層12は、例えばn型Alx3Ga1-x3As(0<x3<1)により構成されている。活性層13は、例えばアンドープのAlx4Ga1-x4As(0<x4<1)により構成されている。この活性層13では、後述の電流注入領域18Aとの対向領域が発光領域13Aとなる。上部スペーサ層14は、例えばp型Alx5Ga1-x5As(0≦x5<1)により構成されている。なお、p型不純物としては、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などが挙げられる。
【0021】
上部DBR層15は、低屈折率層(図示せず)および高屈折率層(図示せず)を交互に積層して形成されている。低屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n3(n3 は屈折率)のp型Alx6Ga1-x6As(0<x6<1)により構成されている。高屈折率層は、例えば厚さがλ0/4n4(n4 は屈折率)のp型Alx7Ga1-x7As(0<x7<x6)により構成されている。コンタクト層16は、例えばp型Alx8Ga1-x8As(0<x8<1)により構成されている。
【0022】
また、この半導体レーザ1では、例えば、上部DBR層15内に、電流狭窄層18が設けられている。電流狭窄層18は、上部DBR層15内において、活性層13側から数えて例えば数層離れた低屈折率層の部位に、低屈折率層に代わって設けられたものである。この電流狭窄層18は、その外縁領域に電流狭窄領域18Bを有しており、その中央領域が電流注入領域18Aとなっている。電流注入領域18Aは、例えばp型Alx9Ga1-x9As(0<x9≦1)からなる。電流狭窄領域18Bは、例えば、酸化アルミニウム(Al2 3)を含んで構成され、後述するように、側面から被酸化層18Dに含まれる高濃度のAlを酸化することにより得られたものである。これにより、電流狭窄層18は電流を狭窄する機能を有している。なお、電流狭窄層18は、例えば、下部DBR層11の内部や、下部スペーサ層12と下部DBR層11との間、または、上部スペーサ層14と上部DBR層15との間に形成されていてもよい。
【0023】
メサ部17の上面(コンタクト層16の上面)には、電流注入領域18Aとの対向領域に開口(光射出口21A)を有する環状の上部電極21が形成されている。また、メサ部17の側面および周辺の表面には、絶縁層22が形成されている。絶縁層22の表面上には、ワイヤ(図示せず)をボンディングするための電極パッド23と、接続部24とが設けられている。電極パッド23と上部電極21とが接続部24を介して互いに電気的に接続されている。また、基板10の裏面には、下部電極25が設けられている。
【0024】
ここで、絶縁層22は、例えば酸化物または窒化物などの絶縁材料からなる。上部電極21、電極パッド23および接続部24は、例えば、チタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層して構成されたものであり、メサ部17上部のコンタクト層16と電気的に接続されている。下部電極25は、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)とを基板10側から順に積層した構造を有しており、基板10と電気的に接続されている。
【0025】
ところで、本実施の形態では、例えば、図2に示したように、電極パッド23の直下に台座部26が設けられている。台座部26は、下部DBR層11のうちメサ部17の裾野(メサ部17の非形成領域)と、絶縁層22との間に形成されている。台座部26は、例えば、図2に示したように、メサ部17の形成箇所(11A)よりも低い箇所(11B)に形成されている。台座部26は、凹凸部26Aと、埋め込み部26Bとを有している。
【0026】
なお、本実施の形態では、凹凸部26Aが本発明の「密着層」の一具体例に相当する。また、埋め込み部26Bが本発明の「低誘電率材料層」の一具体例に相当する。
【0027】
図3(A)は、図2の半導体レーザ1のA−A矢視方向の断面構成の一例を、埋め込み層24Bおよび絶縁層22を省略して表したものである。凹凸部26Aは、下部DBR層11に接して形成されており、下部DBR層11と一体に(連続して)形成されている。凹凸部26Aは、例えば、図3(A)に示したように、複数の柱状の突起27が所定の間隔で配置された凹凸構造を有している。各突起27は、凹凸部26Aの底部において互いに連結されていることが好ましい。また、凹凸部26Aは、埋め込み部26Bが下部DBR層11のうち凹凸部26Aの直下の部分に接触するような開口を有していないことが好ましい。つまり、凹凸部26Aは、埋め込み部26Bと下部DBR層11とを空間分離していることが好ましい。
【0028】
凹凸部26Aは、図3(A)に例示した構造以外の凹凸構造を有していてもよい。図3(B),(C)は、図2の半導体レーザ1のA−A矢視方向の断面構成の他の例を、埋め込み層24Bおよび絶縁層22を省略して表したものである。凹凸部26Aは、例えば、図3(B)に示したように、基板10と平行な面内に延在する複数の板状の突起28が所定の間隔で配置された凹凸構造を有していてもよい。各突起28は、凹凸部26Aの底部において互いに連結されていることが好ましい。また、凹凸部26Aは、例えば、図3(C)に示したように、基板10と平行な面内に延在する複数の環状の突起29が所定の間隔で同心円状に配置された凹凸構造を有していてもよい。各突起29は、凹凸部26Aの底部において互いに連結されていることが好ましい。
【0029】
凹凸部26Aは、絶縁性の酸化半導体により構成されている。凹凸部26Aは、後述したように、下部DBR層11、下部スペーサ層12、活性層13、上部スペーサ層14および上部DBR層15を選択的エッチングによって凹凸構造に成形したのち、その凹凸構造を側面から酸化することにより形成されたものである。なお、上記の凹凸構造が、後述の凹凸部26D(図5(A)参照)に相当する。
【0030】
凹凸部26Aの幅D(図3(A)〜(C)参照)は、後述の酸化工程において、凹凸部26D全体を酸化(絶縁化)することの可能な程度であることが好ましい。幅Dは、例えば、メサ部17の幅の半分以下程度(例えば10μm以下)となっていることが好ましい。そのようにした場合には、被酸化層18Dの酸化と同時に、凹凸部26Dの酸化を行うことができ、製造工程を簡略化することができる。凹凸部26Aの高さは、電極パッド23と下部DBR層11とによって形成される寄生容量を低減する観点からは、できるだけ高いことが好ましく、メサ部17の高さと同等の高さを有していることが好ましい。凹凸部26Aの高さは、例えば、0.1μm〜5μm程度となっている。
【0031】
埋め込み部26Bは、凹凸部26Aと絶縁層22との間に形成されており、凹凸部26Aおよび絶縁層22に接して形成されている。埋め込み部26Bは、凹凸部26Aの凹凸を埋め込むように形成されており、埋め込み部26Bの上面は、平坦面となっている。埋め込み部26Bは、絶縁性の低誘電率材料により構成されている。埋め込み部26Bに用いられる絶縁性の低誘電率材料としては、例えばスピンコート法などにより凹凸部26Dの凹凸を簡便に埋め込むことが可能であって、かつパターニングの容易な材料であることが好ましい。また、上記の絶縁性の低誘電率材料としては、耐熱性や耐湿性に優れていることも重要である。そのような特徴を全て兼ね備えた絶縁性の低誘電率材料としては、例えば、ポリイミド、BCB樹脂(Benzocyclobutene)などが挙げられる。
【0032】
[製造方法]
本実施の形態の半導体レーザ1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0033】
図4(A),(B)〜図6(A),(B)は、その製造方法を工程順に表したものである。なお、図4(A),(B)〜図6(A),(B)は、製造過程の素子を図1のA−A矢視線に対応する箇所で切断した断面の構成をそれぞれ表したものである。
【0034】
ここでは、GaAsからなる基板10上の化合物半導体層を、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition ;有機金属化学気相成長)法により形成する。この際、III−V族化合物半導体の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMIn)、アルシン (AsH3)を用い、ドナー不純物の原料としては、例えば、H2Seを用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えば、ジメチルジンク(DMZ)を用いる。
【0035】
具体的には、まず、基板10上に、下部DBR層11、下部スペーサ層12、活性層13、上部スペーサ層14、上部DBR層15およびコンタクト層16をこの順に積層する(図4(A))。このとき、上部DBR層15内の一部に、被酸化層18Dを形成しておく。なお、被酸化層18Dは、後述の酸化工程で酸化されることにより、電流狭窄層18になる層であり、例えば、AlAsを含んで構成されている。
【0036】
次に、コンタクト層16の表面に、後の工程で電極パッド23を形成することとなる領域に対応して開口を有するレジスト層(図示せず)を形成する。続いて、例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)法により、レジスト層をマスクとして、コンタクト層16および上部DBR層15を選択的に除去する。このとき、被酸化層18Dに達する手前でエッチングをやめる。これにより、後の工程で凹凸部26Dを形成することとなる部位に段差30が形成される(図3(B))。その後、レジスト層を除去する。
【0037】
次に、コンタクト層16の表面に、メサ部17の径と等しい径の円形状のレジスト層(図示せず)を形成する。さらに、上部DBR層15のうち先の工程で露出した部分の表面に、例えば、図2(A)〜(C)に例示した台座部26のパターンと同様のパターンを有するレジスト層(図示せず)を形成する。このとき、パターンの幅を、後述の酸化工程における酸化速度を勘案して、例えば、メサ部17の径の半分以下の大きさにしておく。
【0038】
次に、例えばRIE法により、上記のレジスト層をマスクとして、下部DBR層11の一部、下部スペーサ層12、活性層13、上部スペーサ層14、上部DBR層15、コンタクト層16および被酸化層18Dを選択的に除去する(図5(A))。これにより、円形状のレジスト層の直下にメサ部17が形成される。このとき、メサ部17の側面に被酸化層18Dが露出している。また、図2(A)〜(C)に例示した台座部26のパターンと同様のパターンを有するレジスト層の直下に、そのパターンを反映した形状を有する凹凸部26Dが形成される。凹凸部26Dは、メサ部17の形成箇所(11A)よりも低い箇所(11B)に形成される。その後、上記したレジスト層を除去する。なお、メサ部17と凹凸部26Dを同時に形成してもよいし、別個に形成してもよい。
【0039】
次に、水蒸気雰囲気中において、高温で酸化処理を行い、メサ部17の側面から被酸化層18Dに含まれるAlを選択的に酸化すると共に、凹凸部26Dに含まれるAlを選択的に酸化する。これにより、メサ部17内において、被酸化層18Dの外縁領域が絶縁層(酸化アルミニウム)となり、電流狭窄層18が形成される(図5(B))。さらに、電流狭窄層18よりも幅の狭い凹凸部26Dは完全に酸化され、それにより絶縁性の凹凸部26Aが形成される(図5(B))。
【0040】
次に、例えばスピンコート法により、凹凸部26Aの上面を含む表面全体に、感光性ポリイミドなどの感光性樹脂材料を塗布する。このとき、凹凸部26Aの凹凸がほぼ平坦に埋まる程度に感光性樹脂材料を塗布する。次に、パターニングにより、塗布した感光性樹脂材料のうち凹凸部26Aの上面に対応する部分だけを残したのち、残した部分を乾燥、固化する。これにより、凹凸部26Aの上面に絶縁性の埋め込み部26Bが形成され、その結果、台座部26が形成される(図6(A))。
【0041】
次に、表面全体に、例えばシリコン酸化物(SiO2)などの絶縁性無機材料からなる絶縁層22を形成する(図6(B))。続いて、リッジ部17の上面に環状の開口を有するレジスト層(図示せず)を表面全体に形成したのち、例えばRIE法により、レジスト層をマスクとして、絶縁層22を選択的に除去する。これにより、上部電極21の形成される部分に開口22Aが形成される(図6(B))。その後、レジスト層を除去する。
【0042】
次に、例えば真空蒸着法により、表面全体に前述の金属材料を積層させる。その後、例えば選択エッチングにより、開口22Aを埋め込むようにして環状の上部電極21を形成すると共に、絶縁層22のうち下地層25の直上の部分に電極パッド23を形成し、さらに、これらの間に接続部24を形成する(図2)。さらに、基板10の裏面を適宜研磨してその厚さを調整した後、この基板10の裏面に下部電極25を形成する(図2)。このようにして、本実施の形態の半導体レーザ1が製造される。
【0043】
次に、本実施の形態の半導体レーザ1の作用および効果について説明する。
【0044】
[作用・効果]
本実施の形態の半導体レーザ1では、下部電極25と上部電極21との間に所定の電圧が印加されると、電流狭窄層18における電流注入領域18Aを通して活性層13に電流が注入され、これにより電子と正孔の再結合による発光が生じる。この光は、一対の下部DBR層11および上部DBR層15により反射され、所定の波長でレーザ発振を生じ、レーザビームとして光射出口21Aから外部に射出される。
【0045】
ところで、本実施の形態では、半導体材料からなる下部DBR層11と、低誘電率材料からなる埋め込み部26Bとの間に、凹凸構造を有する凹凸部26Aが設けられている。さらに、凹凸部26Aの凹凸構造を埋め込むように埋め込み部26Bが形成されている。これにより、凹凸部26Aと埋め込み部26Bとの接触面積が大きくなるので、凹凸部26Aと埋め込み部26Bとの間に亀裂が生じ難くなり、かつ埋め込み部26Bが凹凸部26Aから剥離し難くなる。ここで、凹凸部26Aは下部DBR層11と一体に(連続して)形成されており、通常のプロセスでは、凹凸部26Aと下部DBR層11との間に亀裂が生じたり、凹凸部26Aが下部DBR層11から剥離したりすることはない。
【0046】
これらのことから、半導体材料からなる下部DBR層11と、低誘電率材料からなる埋め込み部26Bとの間に亀裂が生じたり、低誘電率材料からなる埋め込み部26Bが半導体材料からなる下部DBR層11から剥離したりすることはない。従って、絶縁性の低誘電率材料を平坦な半導体材料に直接接触させた場合と比べて、半導体材料と低誘電率材料との密着性を向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、電極パッド23と下部DBR層11との間に、絶縁性の台座部26が設けられている。これにより、電極パッド23と下部DBR層11との間に形成される寄生容量の大きさを低減することができる。
【0048】
[変形例]
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【0049】
例えば、上記実施の形態では、凹凸部26Aは絶縁性の酸化半導体によって構成されていたが、他の材料によって構成されていてもよく、例えば、導電性の半導体によって構成されていてもよい。この場合には、例えば、図7に示したように、凹凸部26Aに代わって設けられた凹凸部27Aが下部DBR層11の一部によって構成されていてもよい。このとき、凹凸部27Aは、下部DBR層11と同一の材料によって構成されている。なお、凹凸部27Aは、上記実施の形態の凹凸部26Aと同様、例えば、図2(A)〜(C)に例示したような突起27,28または29を有していてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、AlGaAs系の化合物半導体レーザを例にして本発明を説明したが、他の化合物半導体レーザ、例えば、酸化可能な化合物半導体からなる半導体レーザにも適用可能である。また、上記実施の形態では、本発明を面発光型の半導体レーザに適用した場合について説明したが、他の半導体装置に適用することはもちろん可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…半導体レーザ、10…基板、11…下部DBR層、12…下部クラッド層、13…活性層、13A…発光領域、14…上部クラッド層、15…上部DBR層、16…コンタクト層、17…メサ部、18…電流狭窄層、18A…電流注入領域、18B…電流狭窄領域、18D…被酸化層、20…積層構造、21…上部電極、21A…光射出口、22…絶縁層、23…電極パッド、24…接続部、25…下部電極、26…台座部、26A,26D,27A…凹凸部、26B…埋め込み部、27,28,29…突起、30…段差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層上に密着層および低誘電率材料層を前記半導体層側から順に備え、
前記密着層は、凹凸構造を有し、
前記低誘電率材料層は、前記凹凸構造の凹凸を埋め込むように形成されている
半導体素子。
【請求項2】
前記半導体層上であって、かつ前記密着層とは異なる領域に、第1多層膜反射鏡、活性層および第2多層膜反射鏡を前記半導体層側からこの順に含む共振器構造を備えると共に、前記低誘電率材料層上に前記第2多層膜反射鏡と電気的に接続された電極を備える
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記密着層は、酸化半導体によって構成されている
請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記密着層は、前記第1多層膜反射鏡、前記活性層および前記第2多層膜反射鏡を含む積層構造を選択的エッチングによって凹凸構造に成形したのち、酸化することによって絶縁化されたものである
請求項3に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記半導体層のうち前記密着層と接する箇所は、前記半導体層のうち前記共振器構造と接する箇所よりも低くなっている
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記低誘電率材料層は、ポリイミドによって構成されている
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記密着層は、半導体によって構成されている
請求項2に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記密着層は、前記半導体層と同一の材料によって構成されている
請求項7に記載の半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−182973(P2010−182973A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26673(P2009−26673)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】