説明

半導体膜の作製方法、及び半導体装置の作製方法

【課題】電気的特性ばらつきの小さい酸化物半導体膜の作製方法を提供することを課題とする。電気的特性ばらつきの小さい酸化物半導体膜を用いた半導体装置の作製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】透光性を有する酸化物半導体層をパターニングする際に、基板ステージからの散乱光を低減、もしくはその回り込みを少なくするために、基板ステージに光が到達しないように、光の透過を防止する機能を有する層をフォトレジスト層よりも下層に配置し、パターニングを行えばよい。さらに上記パターニング方法で形成した酸化物半導体層を用いて半導体装置を作製すればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化物半導体膜の作製方法に関する。本発明は酸化物半導体膜を用いる半導体装置の作製方法に関する。ここで半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能する素子及び装置全般を指すものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成した半導体層を用いて半導体装置を構成する技術が知られている。例えば、シリコン系半導体材料を含む薄膜を用いてガラス基板上にトランジスタを形成し、液晶表示装置等に応用する技術が知られている。
【0003】
半導体材料としては、アモルファスシリコン、多結晶シリコンなどが知られている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が低いものの大面積のガラス基板に対応することができる。一方、多結晶シリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が高いもののレーザーアニールなどの結晶化工程が必要であり、大面積のガラス基板には必ずしも適応しないといった特性を有している。
【0004】
その他の材料としては、酸化物半導体が最近注目されている。例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、酸化物半導体を用いたトランジスタには幾つかの問題が指摘されている。その一つは特性の安定性であり、可視光及び紫外光を照射することで電気特性が変化することが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像表示デバイスやイメージセンサなどの半導体装置において、これらに用いられるトランジスタなどの半導体装置の電気的特性は特に重要であり、その特性ばらつきが小さいことが望まれる。例えば発光素子を組み合わせた画像表示デバイスであれば、画素トランジスタのオン電流のばらつきは、画素ごとの発光輝度に直接影響する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、電気的特性ばらつきの小さい酸化物半導体膜の作製方法を提供することを課題とする。また電気的特性ばらつきの小さい酸化物半導体膜を用いた半導体装置の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は半導体装置の作製工程における、光の影響に着目した。
【0010】
フォトリソグラフィ法で用いる露光装置からの光には、例えば高圧水銀灯のスペクトル光であるg線(波長436nm)、h線(波長405nm)及びi線(波長365nm)、またKrFレーザ光(波長248nm)やArFレーザ光(波長193nm)などの可視光から紫外領域の波長の光が多く用いられる。
【0011】
また、半導体膜に光を照射した場合、半導体膜の特性が変化する場合がある。例えば、酸化物半導体膜を半導体層として用いた薄膜トランジスタの場合、作製工程中に可視光又は紫外光を含む光が酸化物半導体膜に照射されることによって、該薄膜トランジスタの電気的特性が変化してしまう問題がある。
【0012】
一例として、図10にIn−Ga−Zn―O系酸化物半導体をターゲットとしてスパッタリング法を用いて成膜した厚さ50nmの酸化物半導体膜に連続した波長を持つ光を照射した時の、光の波長に対する透過率を測定した結果を示す。紫外光から可視光の波長帯において照射された光の波長が短くなるにつれ透過率が減少する傾向があり、これは酸化物半導体膜が照射された光の一部を吸収していることを示す。したがって、上記に示したようなフォトリソグラフィ法での露光に用いられる可視光又は紫外光を含む光、例えば高圧水銀灯のスペクトル光であるi線(波長365nm)等が酸化物半導体膜に照射されると、当該酸化物半導体膜による光の吸収が起こり、その電気的特性が変化してしまう。
【0013】
ここで、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングをする工程において、エッチングにより除去される不要な領域のみにフォトマスクを介して露光装置からの光が当たるように、ポジ型のフォトレジストを選択することが可能である。また、この露光装置からの光はフォトレジストを透過しその下層の膜に影響を及ぼす場合があるが、この領域はポジ型のレジストを用いる場合、エッチングにより除去されるためデバイスの特性に影響しない。
【0014】
しかしながら、露光装置から基板に照射する光に対して透光性を有する基板上に、同様な透光性を有する半導体膜を半導体層に用いた薄膜トランジスタを作製する方法においては、フォトリソグラフィ法を用いたパターニングの際に露光装置からの光の一部が基板、及び半導体層を透過した後に基板ステージで散乱され、再度、基板の裏面側から半導体層に照射されるという現象がおきる。
【0015】
基板ステージによる散乱光は、基板ステージの凹凸形状、例えば吸着孔などに由来する凹凸形状の影響を受ける。そのため、基板に裏面から照射される散乱光は、基板面内で強度や向きが異なり、その強度に分布が生じる。また、透光性を有する基板の厚さが厚いほど、基板ステージからの散乱光が、エッチングにより除去されない領域に回り込む距離が長くなる現象が生じる。
【0016】
したがって、基板ステージの形状に依存して強度に分布が生じた散乱光が半導体層のエッチングにより除去されない領域に照射されるため、当該半導体層への光による影響は基板面内でばらつく。
【0017】
したがって特に、基板ステージからの散乱光が、酸化物半導体層へ裏面側から照射されるような構造、例えば透光性を有する基板上に酸化物半導体層が設けられたトップゲート構造や、ゲート電極層に透光性材料を用いたボトムゲート構造においては、特性のばらつきへの散乱光の影響が大きくなる。
【0018】
したがって上記課題を解決するためには、透光性を有する酸化物半導体層に対してポジ型のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ法によってパターニングする際に、基板ステージからの散乱光を低減、もしくはその回り込みを少なくすればよい。具体的には、基板ステージに光が到達しなければよい。つまり、光の透過を防止する機能を有する層をフォトレジスト層よりも下層に配置し、パターニングを行えばよい。さらに上記課題を解決するためには、上記パターニング方法で形成した酸化物半導体層を用いて半導体装置を作製すればよい。
【0019】
すなわち、本発明の一態様は、透光性を有する基板上に酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層上に酸化物半導体が吸収する波長帯の光を吸収、又は反射する光透過防止層を形成し、光透過防止層上にポジ型の感光性を有するフォトレジスト層を形成する。次いでフォトレジスト層にフォトマスクを介してフォトレジスト層が感光する光を照射し、光透過防止層上にレジストマスクを形成する。さらにレジストマスクと重なる領域を残して光透過防止層を除去した後、光透過防止層と重なる領域を残して酸化物半導体層を除去する、半導体膜の作製方法である。
【0020】
上記のような作製方法で酸化物半導体層を形成することにより、フォトマスク、及びフォトレジスト層を透過した露光装置からの光の大部分は光透過防止層によって吸収、又は反射されるため、基板ステージに到達する光は効果的に抑制される。したがって、基板ステージに凹凸形状があったとしても、基板ステージからの散乱光が酸化物半導体層に基板側から照射されることが抑制され、その結果、電気的特性ばらつきの少ない酸化物半導体層を形成することができる。さらにこのような酸化物半導体層を半導体装置に適用することにより、電気的特性ばらつきの小さい半導体装置を作製することができる。
【0021】
また、本発明の一態様は、透光性を有する基板上に酸化物半導体が吸収する波長帯の光を吸収、又は反射する光透過防止層を形成し、光透過防止層上に酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層上にポジ型の感光性を有するフォトレジスト層を形成する。次いでフォトレジスト層にフォトマスクを介してフォトレジスト層が感光する光を選択的に照射し、酸化物半導体層上にレジストマスクを形成する。さらにレジストマスクと重なる領域を残して酸化物半導体層を除去する、半導体膜の作製方法である。
【0022】
上記のような作製方法で酸化物半導体層を形成することにより、フォトマスク、及びフォトレジスト層を透過した露光装置からの光の大部分は光透過防止層によって吸収、又は反射される。さらに、露光装置からの光が光透過防止層によって吸収しきれずに基板ステージに到達した場合でも、その基板ステージからの散乱光は酸化物半導体層に到達する前に再度光透過防止層によって吸収、又は反射される。したがってより効果的に基板ステージからの散乱光が酸化物半導体層へ照射されることを抑制することができ、その結果、電気的特性ばらつきの少ない酸化物半導体層を形成することができる。また、露光装置からの光を光透過防止層が反射する場合であっても、酸化物半導体層は充分に薄いため、当該酸化物半導体層に光が回り込む領域は少なく、電気特性のバラツキは実質的に生じない。さらにこのような酸化物半導体層を半導体装置に適用することにより、電気的特性ばらつきの小さい半導体装置を作製することができる。
【0023】
また、本発明の一態様は、透光性を有する基板上に互いに離間したソース電極層及びドレイン電極層を形成し、ソース電極層及びドレイン電極層の端部、並びにこれらの間隙を覆う酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層上に酸化物半導体が吸収する波長帯の光を吸収、又は反射する光透過防止層を形成した後、光透過防止層上に、ポジ型の感光性を有するフォトレジスト層を形成する。その後、フォトレジスト層にフォトマスクを介してフォトレジスト層が感光する光を照射し、光透過防止層上にソース電極層及びドレイン電極層の端部並びに当該間隙に重畳するレジストマスクを形成する。次いでレジストマスクと重なる領域を残して光透過防止層を除去し、光透過防止層と重なる領域を残して酸化物半導体層を除去する。また酸化物半導体層に接してゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層に接し、ソース電極層及びドレイン電極層の間隙と重畳するゲート電極層を形成する、半導体装置の作製方法である。
【0024】
上記のような作製方法で半導体装置を作製することにより、酸化物半導体層のパターニングの際、フォトマスク、及びフォトレジスト層を透過した露光装置からの光は光透過防止層によって吸収、又は反射され、基板ステージからの散乱光が酸化物半導体層に回り込むことを抑制できる。したがって酸化物半導体層への光によるダメージを抑制することができ、基板面内での電気的特性ばらつきの小さい半導体装置を作製することができる。このような半導体装置を例えば画像表示デバイスやイメージセンサなどに用いることで、発光輝度等にばらつきの少ない半導体装置を実現できる。
【0025】
また、本発明の一態様は、透光性を有する基板上に酸化物半導体が吸収する波長帯の光を吸収、又は反射する光透過防止層を形成し、光透過防止層上に酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層上にポジ型の感光性を有するフォトレジスト層を形成する。その後、フォトレジスト層にフォトマスクを介してフォトレジスト層が感光する光を照射し、酸化物半導体層上にレジストマスクを形成する。さらにレジストマスクと重なる領域を残して酸化物半導体層を除去し、酸化物半導体層と接し、互いに離間したソース電極層及びドレイン電極層を形成し、酸化物半導体層並びにソース電極層及びドレイン電極層の端部に接してゲート絶縁層を形成する。次いでゲート絶縁層と接し、酸化物半導体層並びに、ソース電極層及びドレイン電極層の間隙と重畳するゲート電極層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0026】
上記のような作製方法で半導体装置を作製することにより、酸化物半導体層のパターニングの際、フォトマスク、及びフォトレジスト層を透過した露光装置からの光の大部分は光透過防止層によって吸収、又は反射される。さらに、露光装置からの光が光透過防止層によって吸収しきれずに基板ステージに到達した場合でも、その基板ステージからの散乱光は酸化物半導体層に到達する前に再度光透過防止層によって吸収、又は反射される。したがってより効果的に基板ステージからの散乱光が酸化物半導体層へ照射されることを抑制することができ、基板ステージからの散乱光が酸化物半導体層に回り込むことを抑制できる。また、露光装置からの光を光透過防止層が反射する場合であっても、酸化物半導体層は充分に薄いため、当該酸化物半導体層に光が回り込む領域は少なく、電気特性のバラツキは実質的に生じない。その結果、酸化物半導体層へ基板ステージのパターンに依存した、光によるダメージを抑制することができ、基板面内での電気的特性ばらつきの小さい半導体装置を作製することができる。このような半導体装置を例えば画像表示デバイスやイメージセンサなどに用いることで、発光輝度等にばらつきの少ない半導体装置を実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様は、電気的特性ばらつきの小さい酸化物半導体膜の作製方法を提供することができる。本発明の一態様は、電気的特性ばらつきの小さい酸化物半導体膜を用いた半導体装置の作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一態様の酸化物半導体膜の作製方法を説明する図。
【図2】本発明の一態様の作製方法で作製する薄膜トランジスタを説明する図。
【図3】本発明の一態様の薄膜トランジスタの作製方法を説明する図。
【図4】本発明の一態様の作製方法で作製する薄膜トランジスタを説明する図。
【図5】本発明の一態様の光透過防止層の効果を説明する図。
【図6】本発明の一態様の酸化物半導体膜の作製方法を説明する図。
【図7】本発明の一態様の作製方法で作製する薄膜トランジスタを説明する図。
【図8】本発明の一態様の薄膜トランジスタの作製方法を説明する図。
【図9】本発明の一態様の作製方法で作製する薄膜トランジスタを説明する図。
【図10】酸化物半導体膜における光の波長に対する透過率の測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0030】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態では酸化物半導体層を、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする際、基板ステージからの散乱光の影響を抑制してパターニングを行い、酸化物半導体層を形成する方法の一例について、図1及び図5を用いて説明する。
【0032】
図1(D)及び図1(E)に例示する、透光性を有する基板100上に島状の酸化物半導体層111を形成する方法について説明する。
【0033】
まず、図1(A)に示すように、透光性を有する基板100上に、酸化物半導体層101、光透過防止層103及びフォトレジスト105を順に形成する。
【0034】
透光性を有する基板100として使用することができる基板は紫外光から可視光の波長帯の光に対して酸化物半導体膜よりも透過率の高いものを用いる。また、透光性を有する基板100に用いる基板は絶縁表面を有すればよく、大きな制限はないが、少なくとも後の工程で加熱処理を行う場合は、その温度に耐えうる耐熱性を有している必要がある。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0035】
酸化物半導体層101に用いる酸化物半導体は、少なくともIn、Ga、Sn、Zn、Al、Mg、Hf及びランタノイドから選ばれた一種以上の元素を含有する。例えば、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Hf−Zn−O系、In−La−Zn−O系、In−Ce−Zn−O系、In−Pr−Zn−O系、In−Nd−Zn−O系、In−Pm−Zn−O系、In−Sm−Zn−O系、In−Eu−Zn−O系、In−Gd−Zn−O系、In−Tb−Zn−O系、In−Dy−Zn−O系、In−Ho−Zn−O系、In−Er−Zn−O系、In−Tm−Zn−O系、In−Yb−Zn−O系、In−Lu−Zn−O系や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、Zn−Mg−O系、Sn−Mg−O系、In−Mg−O系、In−Ga−O系や、In−O系、Sn−O系、Zn−O系などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にSiOを含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、少なくともInとGaとZnを含む酸化物であり、その組成比に特に制限はない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。
【0036】
また、酸化物半導体層101は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0037】
酸化物半導体層101はスパッタリング法で成膜することができる。また希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下において成膜することができる。その際のガスは、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0038】
本実施の形態では、In−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体層101を100nm成膜する。
【0039】
光透過防止層103に用いることのできる材料としては、好ましくはパターニングの際に露光に用いる光を吸収、又は反射する膜であればよく、少なくとも酸化物半導体膜が吸収する波長帯の光を吸収、又は反射する膜であればよい。例えば露光に用いる光に高圧水銀灯のスペクトル光であるg線(波長436nm)を用いる場合、この波長の光に対する光透過率が20%以下、さらに好ましくは5%以下である膜を用いることができる。例えばアモルファスシリコンなどの半導体材料や、Alなどの金属材料を用いることができる。
【0040】
ここで、酸化物半導体層101のパターンを形成する際、酸化物半導体層101の不要な部分を除去するためのマスクとして、後に説明するレジストマスク115を用いても良いし、当該光透過防止層113をハードマスクとして用いることもできる。光透過防止層113をハードマスクとして用いる場合は、選択するエッチング方法に応じて光透過防止層103に対する酸化物半導体層101のエッチング速度、及び酸化物半導体層101に対する光透過防止層103のエッチング速度の選択比が大きくなるような材料を適宜選択し、光透過防止層103に用いるとよい。例えば、酸化物半導体層101にIn−Ga−Zn−O系材料を用いた場合は、光透過防止層103にアモルファスシリコンを用いることで、酢酸、硝酸及び燐酸を含む混酸や、シュウ酸水溶液などを用いて酸化物半導体層101のみを、また水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液などを用いて光透過防止層103のみを除去することができる。
【0041】
光透過防止層103は酸化物半導体層101に接するため、膜中にできるだけ水素を取り込まない方法で成膜することが好ましい。例えば酸化物半導体層101の成膜と同様に水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度ガス雰囲気下におけるスパッタリング法を用いることができる。
【0042】
本実施の形態では、光透過防止層103として膜厚100nmのアモルファスシリコンをスパッタリング法により成膜する。
【0043】
フォトレジスト105には、光を照射すると現像処理によって除去される性質を持つ、いわゆるポジ型のフォトレジストを用いる。ポジ型のフォトレジストを用いると、露光装置からの光は酸化物半導体層の不要な部分にのみ照射されるため、必要なパターン上に直接光が照射されることを防ぐことができる。
【0044】
次にフォトマスク107を用いて露光を行う(図1(B)参照)。フォトマスク107で覆われた領域は露光光109がフォトマスク107によって遮断されるため、フォトレジスト105は感光されない。一方、フォトマスク107に覆われていない領域へは、露光光109が照射される。露光光109はフォトレジスト105を感光させ、改質したフォトレジスト125に変化させる。
【0045】
露光光109には、例えば高圧水銀灯のスペクトル光であるg線(波長436nm)、h線(波長405nm)及びi線(波長365nm)、またKrFレーザ光(波長248nm)やArFレーザ光(波長193nm)などの可視光及び紫外領域の波長の光を用いることができる。本実施の形態では、露光光109として、高圧水銀灯のスペクトル光であるi線を用いる。
【0046】
ここで、露光光109としてi線(波長365nm)を用いた場合、これが酸化物半導体層に照射されると、酸化物半導体層による吸収が起こり、その電気的特性に影響を及ぼしてしまう。
【0047】
また、光透過防止層103として膜厚100nmのアモルファスシリコンを用いた場合は、露光光109として用いたi線(波長365nm)に対する透過率は1%未満であり、その大部分を吸収することができる。
【0048】
ここで、図5を用いて、基板ステージの形状による散乱光の影響が、光透過防止層の有無でどのように変わるかを説明する。なお、ここに示す基板ステージの形状は一例であり、これに限定されない。
【0049】
まず、図5(A)に光透過防止層103を設けない場合の、酸化物半導体層101の露光時の断面概略図を示す。基板100上に酸化物半導体層101及びフォトレジスト105を積層し、フォトマスク107越しに露光光109が照射される。基板100は基板ステージ117に配置され、基板ステージ117には凹凸形状が存在する。
【0050】
基板ステージ117の凹凸形状としては、例えば基板吸着のための吸着孔や基板を持ち上げるためのピンなどが挙げられる。またこの他にも、基板と基板ステージ117との接触などによる傷や材質自体の持つ表面粗さなども、この凹凸形状に含まれる。
【0051】
露光装置からの露光光109の一部はフォトレジスト125を通り抜けた後に酸化物半導体層101及び基板100を透過し、基板ステージ117に到達する。
【0052】
基板ステージ117に図中に示すような凹凸形状があった場合、基板ステージ117に到達した露光光109は該凹凸形状によって散乱され、その散乱光119が基板100の裏面側から再入射される。散乱光119は、基板ステージの凹凸形状に依存して、さまざまな散乱角を持つ。したがって、基板100の裏面から再入射された散乱光119の一部が、酸化物半導体層101のエッチングで除去しないパターンの内側へ回り込む現象が生じる。
【0053】
また、基板100の厚さが厚いほど、基板ステージ117からの散乱光119がエッチングで除去しないパターンの内側に回りこむ距離が長くなる。
【0054】
次に、光透過防止層103を設けた場合について図5(B)を用いて説明する。酸化物半導体層101とフォトレジスト105の間に光透過防止層103が配置されている他は、図5(A)の構成と同様である。
【0055】
露光光109の一部はフォトレジスト125を通り抜けた後、光透過防止層103に到達するが、その大部分は光透過防止層103によって吸収又は反射される。したがって酸化物半導体層101には露光光109はほとんど到達しない。さらに基板100側へ透過し、基板ステージ117に到達する露光光109も効果的に低減される。
【0056】
したがって、基板ステージ117に吸着孔などの凹凸形状があったとしても、基板ステージ117に到達する露光光109や、その凹凸形状で散乱される散乱光は効果的に低減される。その結果、基板ステージからの散乱光の、酸化物半導体層101のエッチングにより除去されないパターンの内側への回り込みが効果的に低減されるため、酸化物半導体層101への光の影響を防ぐことができる。
【0057】
このようにして、光透過防止層103をフォトレジスト105よりも基板側に配置することで、露光光109は光透過防止層103によって吸収され、基板ステージ117まで到達しない。その結果、基板ステージ117の凹凸形状によらず、酸化物半導体層101の必要なパターンへの光の影響を防ぐことができる。
【0058】
露光処理を終えた後に現像処理を行う。現像処理によりフォトマスク107で覆われていない領域のフォトレジスト125が除去される。このようにしてレジストマスク115が形成される。
【0059】
次いでレジストマスク115を用いて光透過防止層103の不要な部分をエッチングし、島状の光透過防止層113を形成する(図1(C))。その後レジストマスク115を用いて、酸化物半導体層101の不要な部分をエッチングした後、レジストマスク115を除去する。
【0060】
なお、本実施の形態では光透過防止層103と酸化物半導体層101のそれぞれに対して別々にエッチングを行ったが、レジストマスク115を用いて光透過防止層103と酸化物半導体層101の不要な部分を同時にエッチングすることもできる。エッチング方法としてはウェットエッチングを用いても良いし、ドライエッチングを用いても良い。ドライエッチングを用いることで、ウェットエッチングを用いた場合よりもパターン形状のばらつきが小さくなるため、好ましい。
【0061】
このようにして、酸化物半導体層111上に光透過防止層113が積層されたパターンが形成される(図1(D))。
【0062】
なお、酸化物半導体層111のパターンを形成する際、光透過防止層113のパターンを形成した段階でレジストマスク115を除去し、光透過防止層113のパターンをハードマスクとして用いて、酸化物半導体層をエッチングすることもできる。その場合、光透過防止層113は酸化物半導体層111に対するプラズマ保護膜としての機能も有するため、レジストマスク115を除去した後でもプラズマを用いたドライエッチングを用いることができる。ドライエッチングを用いることで、ウェットエッチングを用いた場合よりもパターン形状のばらつきが小さくなるため、好ましい。なお、この方法で形成した場合も、図1(D)と同様の形状となる。
【0063】
さらに、酸化物半導体層111のパターンを形成後、エッチングにより光透過防止層113を除去することもできる。その場合の形状は図1(E)のようになる。
【0064】
以上のようにして酸化物半導体層111を形成することで、パターニングの際の露光装置からの光の影響を受けずに酸化物半導体層111を形成することができる。したがって、このような作製工程を経て形成された酸化物半導体層を薄膜トランジスタなどの半導体装置に適用することで、電気的特性ばらつきの小さい半導体装置を作製することができる。
【0065】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0066】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した作製方法で作製した酸化物半導体層を用いて、薄膜トランジスタを作製する方法の一例について図2乃至図4を用いて説明する。
【0067】
本実施の形態で例示する順スタガ型薄膜トランジスタ200(以降、薄膜トランジスタ200)の構成を図2に示す。図2(A)は薄膜トランジスタ200の上面概略図であり、図2(B)は図2(A)に示す切断線P−Qにおける断面概略図である。
【0068】
薄膜トランジスタ200は透光性を有する基板100上に、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bを有する。また、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bと接し、且つこれらの間隙を覆うように、酸化物半導体層211を有する。さらに基板100、ソース電極層217a、ドレイン電極層217b及び酸化物半導体層211の露出した部分を覆うゲート絶縁層207を有する。また、ゲート絶縁層207に接してソース電極層217a及びドレイン電極層217bの端部、並びにこれらの間隙と重畳するゲート電極層219と、ゲート絶縁層207及びゲート電極層219を覆う保護絶縁層209を有する。
【0069】
次に、薄膜トランジスタ200の作製方法について図3を用いて説明する。
【0070】
まず、基板100上に、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bを形成する。
【0071】
基板100は実施の形態1と同様に透光性を有する基板を用いる。したがって本実施の形態で示すような順スタガ型の薄膜トランジスタの場合、酸化物半導体層のパターニング工程中に基板側から酸化物半導体層211のチャネル形成領域に光が照射されると、酸化物半導体層211は直接光の影響を受けてしまう。
【0072】
ソース電極層217a及びドレイン電極層217bに用いる材料としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金等を用いることができる。また、Al膜、Cu膜などの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi膜、Mo膜、W膜などの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、Al膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素(Si、Nd、Scなど)が添加されているAl材料を用いることで耐熱性を向上させることが可能となる。ソース電極層217a及びドレイン電極層217bは、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In−SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化珪素を含ませたものを用いることができる。
【0073】
また、基板100とソース電極層217a及びドレイン電極層217bとの間には、下地層となる絶縁膜を設けても良い。下地層は、基板100からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜、又は酸化窒化珪素膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0074】
なお、下地層はできるだけ水素や水などの不純物を含まないように形成することが好ましい。
【0075】
ソース電極層217aとドレイン電極層217bは、基板100上に導電層を形成し、第1のフォトリソグラフィ工程により該導電層を選択的にエッチングすることで形成することができる。
【0076】
本実施の形態では、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bに用いる導電層として、厚さ150nmのTi膜をスパッタリング法により成膜し、第1のフォトリソグラフィ工程により、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bを形成した。
【0077】
こうして形成されたソース電極層217a及びドレイン電極層217bと基板100を覆うように、酸化物半導体層201、光透過防止層203及びフォトレジスト205を順に成膜する(図3(A))。
【0078】
酸化物半導体層201、光透過防止層203及びフォトレジスト205としては、実施の形態1で示したような材料を用いることができる。
【0079】
本実施の形態では、In−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体層201を100nm成膜する。また光透過防止層203としてアモルファスシリコンをスパッタリング法により100nm成膜する。
【0080】
次に、第2のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層201を選択的にエッチングする方法について説明する。
【0081】
まず、フォトマスク(図示しない)を用いて露光を行う。実施の形態1で示したように、フォトマスクに覆われていない領域へ照射される露光光の一部はレジストマスクを通り抜けた後、光透過防止層203に到達するが、その大部分は光透過防止層203によって吸収される。したがって酸化物半導体層201には露光光はほとんど到達しない。さらに、基板100側へ透過し、基板ステージ(図示しない)に到達する露光光も効果的に低減される。
【0082】
したがって、基板ステージに吸着孔などの凹凸形状があったとしても、基板ステージに到達する露光光や、その凹凸形状で散乱される散乱光は効果的に低減される。その結果、基板ステージでの散乱光の、酸化物半導体層201のチャネル形成領域への回り込みが効果的に低減される。
【0083】
このようにして、光透過防止層203をフォトレジスト205よりも基板側に配置することで、露光光(図示しない)は光透過防止層203によって吸収され、基板ステージ(図示しない)まで到達しない。その結果、基板ステージの凹凸形状によらず、酸化物半導体層201のチャネル形成領域への光の影響を防ぐことができる。
【0084】
なお、露光光には、上記に示した光を用いることができる。本実施の形態では、露光光として、高圧水銀灯のスペクトル光であるi線を用いた。
【0085】
露光処理を終えた後に現像処理を行うことで、レジストマスク215が形成される(図3(B))。
【0086】
次に、レジストマスク215を用いて光透過防止層203の不要な部分をエッチングする。エッチングは酸化物半導体層201に対する光透過防止層203のエッチング速度の選択比が大きな条件であればどのような方法を用いてもよい。本実施の形態では、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて光透過防止層203のエッチングを行う。
【0087】
このようにして光透過防止層213を得る。
【0088】
続いて酸化物半導体層201のエッチングを行う。本実施の形態では、光透過防止層213をハードマスクとして使用して酸化物半導体層211のパターンを形成する方法について説明する。
【0089】
まず、光透過防止層213を形成後、レジストマスク215を除去する(図3(C))。
【0090】
次に光透過防止層213のパターンをハードマスクとして、酸化物半導体層201の不要な部分をエッチングする。エッチングは光透過防止層213に対すると酸化物半導体層201のエッチング速度の選択比が大きな条件であればどのような方法を用いても良いが、ドライエッチングを用いることで、パターンサイズの制御が容易となり、ばらつきを抑制することができる。
【0091】
また、光透過防止層213はドライエッチングの際のプラズマ保護層としての役割も果たす。したがって酸化物半導体層201の光透過防止層213に覆われた領域は、ドライエッチングを用いた場合においてもプラズマによるダメージが低減される。
【0092】
本実施の形態では、ドライエッチングを用いて酸化物半導体層201の不要な部分をエッチングし、酸化物半導体層211のパターンを得る。
【0093】
続いて、酸化物半導体層211上の光透過防止層213をエッチングにより除去する。エッチング方法は酸化物半導体層211に対する光透過防止層213のエッチング速度の選択比が大きければ何を選択してもよいが、酸化物半導体層211へのプラズマダメージの影響をなくすため、ウェットエッチングを用いることが好ましい。
【0094】
本実施の形態では、光透過防止層213を水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いたウェットエッチングで除去する。
【0095】
以上の工程で、酸化物半導体層211が形成される。なお、この段階の断面概略図を図3(D)に示す。
【0096】
次いで、第1の加熱処理を行ってもよい。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層211中の過剰な水(水酸基を含む)や水素などを除去することができる。第1の加熱処理の温度は、350℃以上基板の歪み点未満、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とすることができる。
【0097】
第1の加熱処理の温度を350℃以上にすることにより、酸化物半導体層211の脱水化または脱水素化が行え、膜中の水素濃度を低減することができる。また第1の加熱処理の温度を450℃以上とすることにより、膜中の水素濃度をさらに低減することができる。また第1の加熱処理の温度を550℃以上とすることにより、膜中の水素濃度をさらに低減することができる。
【0098】
第1の加熱処理を行う雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする不活性気体であって、水、水素などが含まれない気体を用いるのが望ましい。例えば、加熱処理装置に導入する気体の純度を6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上とすることができる。これにより、第1の加熱処理の間、酸化物半導体層211は、大気に触れることなく、水や水素の再混入が行われないようにすることができる。
【0099】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置などのRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガスまたは窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0100】
本実施の形態では、第1の加熱処理として、GRTA装置を用い、窒素雰囲気下で650℃6分の加熱処理を行った。
【0101】
続いて、スパッタリング法を用いて30nmの酸化珪素膜を成膜し、ゲート絶縁層207を形成する。
【0102】
本実施の形態ではゲート絶縁層207として単層の酸化珪素膜を用いたが、ゲート絶縁層はこれに限らず、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜等の単層、または積層構造とすることができる。酸化物半導体層と接する層は酸化物絶縁層を用いることが好ましい。ゲート絶縁層の成膜方法としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いることができるが、層中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法で成膜することが好ましい。ゲート絶縁層の厚さは特に限定されないが、例えば10nm以上500nm以下とすることができる。
【0103】
次に、ゲート電極層219を形成する。ゲート電極層219は、ゲート絶縁層207上に導電層を形成し、第3のフォトリソグラフィ工程により該導電層を選択的にエッチングすることで形成することができる。
【0104】
ゲート電極層219を形成する導電層の材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層でまたは積層して形成することができる。このような材料を用いることで、ゲート電極層219のパターニングの際の露光光は導電層で反射されるため基板側へ透過することはなく、基板ステージによる散乱光が酸化物半導体層211のチャネル形成領域へ回り込む恐れがない。
【0105】
本実施の形態では、ゲート電極層219として膜厚200nmのタングステン膜を用いる。
【0106】
続いて保護絶縁層209を形成する。保護絶縁層209は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタリング法など、水、水素などの不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。保護絶縁層209に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層211への浸入、又は水素による酸化物半導体層211中の酸素の引き抜きが生じ、酸化物半導体層211の一部が低抵抗化してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。したがって、保護絶縁層209はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0107】
本実施の形態では保護絶縁層209として、30nmの酸化珪素膜をスパッタリング法により成膜した。
【0108】
保護絶縁層209を形成した後、第2の加熱処理を行っても良い。第2の加熱処理は大気中、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で好ましくは100℃以上200℃以下で行うことができる。また、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を繰り返し行っても良い。例えば、窒素雰囲気下で150℃、1時間の第2の加熱処理を行う。
【0109】
以上の工程により、薄膜トランジスタ200が形成される。なお、この段階の断面概略図を図3(E)に示す。
【0110】
なお、本実施の形態では酸化物半導体層211のパターンを形成する際、光透過防止層213をハードマスクとして用いたが、レジストマスク215を用いて形成してもよい。またその場合は、酸化物半導体層201と光透過防止層203とを別々にエッチングすることもできるし、同時にエッチングすることもできる。また、エッチング方法としてドライエッチングを用いると、パターンサイズの制御が容易となり、ばらつきを低減することができるため好ましい。
【0111】
また、本実施の形態では順スタガ構造の薄膜トランジスタを作製したが、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bを形成する前に、酸化物半導体層211を形成することもできる。このような工程を用いることで、図4に示すようなソース電極層217a及びドレイン電極層217bが平坦な酸化物半導体層211の上方から接している形状の、いわゆるトップコンタクト型の薄膜トランジスタを作製することができる。ここで図4(A)は薄膜トランジスタ220の上面概略図であり、図4(B)は図4(A)に示す切断線R−Sにおける断面概略図である。
【0112】
以上のように、酸化物半導体層のパターニングの際、基板ステージからの散乱光が酸化物半導体層に回り込むことを抑制した方法で薄膜トランジスタを作製することで、酸化物半導体層への、基板ステージのパターンに依存した、光によるダメージを抑制することができ、基板面内での電気的特性ばらつきの小さい薄膜トランジスタを作製することができる。このような薄膜トランジスタを例えば画像表示デバイスやイメージセンサなどの半導体装置に用いることで、発光輝度等にばらつきの少ない半導体装置を実現できる。
【0113】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0114】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示した方法とは異なる方法により、パターニングの際の光の影響を抑制した酸化物半導体層を形成する方法について、図6を用いて説明する。
【0115】
図6(D)及び図6(E)に例示する、透光性を有する基板100上に形成された、光透過防止層103(又は113)及び下地層121(又は131)で構成された積層膜上に、島状の酸化物半導体層111のパターンを形成する方法について説明する。
【0116】
まず、図6(A)に示すように、透光性を有する基板100上に、光透過防止層103、下地層121、酸化物半導体層101及びフォトレジスト105を順に形成する。
【0117】
透光性を有する基板100としては、実施の形態1で示したような材料を用いることができる。
【0118】
本実施の形態では、透光性を有する基板100としてガラス基板を用いる。
【0119】
光透過防止層103、及び酸化物半導体層101も同様に、実施の形態1で示したような材料を用いることができる。
【0120】
本実施の形態では、光透過防止層103として厚さ100nmのアモルファスシリコン膜を用いる。アモルファスシリコン膜は水、水素、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガス雰囲気下におけるスパッタリング法を用いて形成した。
【0121】
また、酸化物半導体層101として厚さ100nmのIn−Ga−Zn系酸化物半導体膜を用いる。酸化物半導体層101は実施の形態1と同様にスパッタリング法により形成した。
【0122】
下地層121は、光透過防止層103と酸化物半導体層101とに挟持され、基板100からの不純物元素の拡散を防止する機能がある。したがって下地層121は必要なければ設けなくてもよい。また、下地層121は酸化物半導体層101と接するため、できるだけ水素や水などの不純物を含まないように形成することが好ましい。
【0123】
下地層121は絶縁性を有する窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜、または酸化窒化珪素膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0124】
本実施の形態では、下地層121として50nmの酸化珪素膜を、水、水素、水酸基及び水素化物等の不純物を除去した高純度不活性ガス下におけるスパッタリング法により形成した。
【0125】
フォトレジスト105は、実施の形態1と同様にポジ型のフォトレジストを用いる。したがってパターニングの際、フォトレジスト105は光の照射された領域がその後の現像処理により除去される。
【0126】
次に、フォトマスク107を用いて露光処理を行う(図6(B)参照)。フォトマスク107で覆われた領域は露光光109がフォトマスク107によって遮断されるため、フォトレジスト105は感光されない。一方、フォトマスク107に覆われていない領域へは露光光109が照射される。露光光109はフォトレジスト105を感光させ、改質したフォトレジスト125に変化させる。
【0127】
なお、露光光109には、実施の形態1に示した光を用いることができる。本実施の形態では、露光光109として、高圧水銀灯のスペクトル光であるi線を用いる。
【0128】
ここで、フォトマスク107に覆われた領域は露光光109がフォトマスク107によって遮断されるため、酸化物半導体層101においてフォトマスク107に覆われた領域へは露光光109は照射されない。したがって、この領域の酸化物半導体層101は光の影響を受けない。
【0129】
また、露光光109の一部はフォトレジスト125を通り抜けた後、酸化物半導体層101においてフォトマスク107に覆われていない領域に達する。しかし、この領域は後のエッチング処理によって除去されるため、光の影響を受けても問題とされない。
【0130】
また酸化物半導体層101を通り抜け、さらに下地層121を透過した露光光109の一部は光透過防止層103に到達するが、その大部分は光透過防止層103によって吸収される。そのため、基板100側へ透過し、基板ステージ(図示しない)に到達する露光光109は効果的に低減される。
【0131】
したがって、基板ステージに吸着孔などの凹凸形状があったとしても、露光光109が基板ステージに到達し、その凹凸形状で散乱される散乱光は効果的に低減される。その結果、基板ステージからの散乱光の、酸化物半導体層101のエッチングにより除去されないパターンの内側への回り込みが効果的に低減されるため、酸化物半導体層101への光の影響を防ぐことができる。
【0132】
さらに、本実施の形態では光透過防止層103は酸化物半導体層101よりも基板側に配置されている。そのため、露光光109が光透過防止層103で吸収しきれずにその一部が基板ステージに到達した場合でも、基板ステージからの散乱光は酸化物半導体層101に到達する前に、光透過防止層103により再度吸収される。したがって、このような構成とすることで、より効果的に基板ステージからの散乱光の酸化物半導体層101への影響を防ぐことができる。
【0133】
なお、光透過防止層に露光光109を反射する材料を用いた場合、光透過防止層によって反射された露光光109の一部が酸化物半導体層101のエッチングにより除去されないパターンの内側へ回り込む場合がある。しかし酸化物半導体層101、及び下地層121は十分に薄いため、この回り込む領域は小さく、電気的特性のばらつきは実質的に生じない。
【0134】
続いて、露光処理を終えた後に現像処理を行う。現像処理によりフォトマスク107で覆われていない領域のフォトレジスト125が除去され、レジストマスク115が形成される。
【0135】
次いで、レジストマスク115を用いて酸化物半導体層101の不要な部分をエッチングし、島状の酸化物半導体層111を形成する(図6(C))。その後レジストマスク115を除去する。
【0136】
このようにして、光透過防止層103及び下地層121上に形成された、島状の酸化物半導体層111のパターンを得る(図6(D))。
【0137】
なお、光透過防止層103及び下地層121を酸化物半導体層111と同様の島状のパターンに形成することもできる。その場合は、酸化物半導体層111の不要な部分をエッチングした後に、続けてレジストマスク115を用いて光透過防止層103及び下地層121の不要な部分をエッチングし、島状の光透過防止層113及び下地層131のパターンを形成する。その後レジストマスク115を除去することで、図6(E)に示すような光透過防止層113、下地層131及び酸化物半導体層111が順に積層した島状のパターンが形成される。
【0138】
以上のようにして酸化物半導体層111を形成することで、パターニングの際の露光装置からの光の影響を受けずに酸化物半導体層111を形成することができる。したがって、このような作製工程を経て形成された酸化物半導体層を薄膜トランジスタなどの半導体装置に適用することで、電気的特性ばらつきの小さい半導体装置を作製することができる。
【0139】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3で示した作製方法で作製した酸化物半導体層を用いて、実施の形態2とは構成の異なる薄膜トランジスタを作製する方法の一例について図7及び図8を用いて説明する。
【0140】
本実施の形態で例示するボトムゲート構造の薄膜トランジスタ240(以降、薄膜トランジスタ240)の構成を図7に示す。図7(A)は薄膜トランジスタ240の上面概略図であり、図7(B)は図7(A)に示す切断線T−Uにおける断面概略図である。
【0141】
薄膜トランジスタ240は透光性を有する基板100上に、光透過防止層203、下地層221が順に積層され、さらに下地層221に接して透光性を有するゲート電極層229を有する。また、下地層221の露出した部分とゲート電極層229を覆うようにゲート絶縁層207を有する。また、ゲート絶縁層207と接してゲート電極層229と重畳する酸化物半導体層211、及び酸化物半導体層211に接し、ゲート電極層229の端部と重畳するソース電極層217aとドレイン電極層217bとを有する。さらにゲート絶縁層207及び酸化物半導体層211の露出した部分と、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bを覆う保護絶縁層209を有する。
【0142】
次に、薄膜トランジスタ240の作製方法について図8を用いて説明する。
【0143】
まず、基板100上に光透過防止層203、下地層221を形成する。
【0144】
基板100には実施の形態1で用いた基板と同様に、透光性を有する基板を用いる。
【0145】
光透過防止層203には、実施の形態1で示したような材料を用いることができる。本実施の形態では、光透過防止層203としてアモルファスシリコンをスパッタリング法により100nm成膜する。
【0146】
下地層221は実施の形態3で示したものと同様の材料を用いることができる。本実施の形態では、下地層221として50nmの酸化珪素膜を高純度不活性ガス下でのスパッタリング法により形成する。
【0147】
下地層221を以下の工程で形成する酸化物半導体層201と基板100との間に形成することで、基板100からの酸化物半導体層201への不純物元素の拡散を効果的に抑制することができる。また、本実施の形態においては、光透過防止層203に半導体であるアモルファスシリコンを用いるため、これと酸化物半導体層201とが接触すると電気的特性に影響を及ぼす恐れがあり、これらの層の接触を防ぐ機能も有する。
【0148】
次に下地層221上に透光性を有するゲート電極層229を形成する。
【0149】
ゲート電極層229には、透光性を有する材料を用いる。本実施の形態で示すボトムゲート構造の薄膜トランジスタは、光透過防止層203を有しているので、酸化物半導体層のパターニング工程中に基板100側へ透過し、基板ステージに到達する露光光109は効果的に低減される。さらに、露光光109が光透過防止層103で吸収しきれずにその一部が基板ステージに到達した場合でも、基板ステージからの散乱光は酸化物半導体層101に到達する前に、光透過防止層103により再度吸収される。よって、基板側からの散乱光がゲート電極層229を透過することはないので、酸化物半導体層211のチャネル形成領域が光の影響を受けることは無い。
【0150】
透光性を有するゲート電極層229に用いる材料としては、例えば導電性の金属酸化物を用いることができる。導電性の金属酸化物としては、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In−SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化珪素を含ませたものを用いることができる。
【0151】
本実施の形態では透光性を有する材料をゲート電極層229に用いたが、実施の形態2に示すような透光性を有しない材料を用いても良い。その場合、基板ステージからの散乱光が光透過防止層103で吸収しきれなかったとしても、ゲート電極層によって反射されるため、酸化物半導体層211のチャネル形成領域はさらに光の影響を受けにくい。
【0152】
ゲート電極層229は下地層221上に導電層を形成し、第1のフォトリソグラフィ工程により該導電層を選択的にエッチングすることで形成することができる。本実施の形態では、ゲート電極層229に用いる導電層として厚さ150nmのITO膜をスパッタリング法により成膜する。この時点での断面概略図を図8(A)に示す。
【0153】
こうして形成されたゲート電極層229と、下地層221の露出した部分とを覆うように、ゲート絶縁層207、酸化物半導体層201及びフォトレジスト205を順に成膜する(図8(B))。
【0154】
ゲート絶縁層207には実施の形態2で示したような材料を用いることができる。本実施の形態ではゲート絶縁層207として30nmの酸化珪素膜をスパッタリング法により形成する。
【0155】
また酸化物半導体層201には実施の形態1で示したような材料を用いることができる。本実施の形態では酸化物半導体層201としてIn−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体層201を100nm成膜する。
【0156】
またフォトレジストには実施の形態1で示したものと同様に、ポジ型の感光性を有する材料を用いる。
【0157】
次に第2のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層201を選択的にエッチングする方法について説明する。
【0158】
まず、フォトマスク(図示しない)を用いて露光を行う。前述のように、フォトマスクに覆われた領域は露光光がフォトマスクによって遮断されるため、酸化物半導体層201においてフォトマスクに覆われた領域へは露光光は照射されない。したがって、この領域の酸化物半導体層201は光の影響を受けない。また、フォトマスクに覆われていない領域へ照射される露光光(図示しない)の一部はフォトレジスト205を通り抜けた後、酸化物半導体層201に照射されるが、この領域は後のエッチングにより除去されるため、光の影響を受けても問題とされない。
【0159】
酸化物半導体層201を通り抜けた露光光の一部はゲート絶縁層207及び下地層221を透過し、光透過防止層203に到達するが、その大部分は光透過防止層203によって吸収される。そのため、基板100側へ透過し、基板ステージ(図示しない)に到達する露光光は効果的に低減される。
【0160】
したがって、基板ステージに吸着孔などの凹凸形状があったとしても、露光光が基板ステージに到達し、その凹凸形状で散乱される散乱光は効果的に低減される。その結果、基板ステージからの散乱光の、酸化物半導体層201のエッチングにより除去されないパターン内部への回り込みが効果的に低減されるため、酸化物半導体層201への光の影響を防ぐことができる。
【0161】
さらに、本実施の形態では光透過防止層203は酸化物半導体層201よりも基板側に配置されている。そのため、露光光が光透過防止層203で吸収しきれずにその一部が基板ステージに到達した場合でも、基板ステージからの散乱光は酸化物半導体層201に到達する前に、光透過防止層203により再度吸収される。したがって、このような構成とすることで、より効果的に基板ステージからの散乱光の酸化物半導体層201への影響を防ぐことができる。
【0162】
なお、光透過防止層に露光光を反射する材料を用いた場合、光透過防止層によって反射された露光光の一部が酸化物半導体層201のエッチングにより除去されないパターンの内側へ回り込む場合がある。しかし酸化物半導体層201、ゲート絶縁層207、及び下地層221は十分に薄いため、この回り込む領域は小さく、電気的特性のばらつきは実質的に生じない。
【0163】
このようにして光透過防止層203を酸化物半導体層201よりも基板側に配置することで、露光光及び基板ステージからの散乱光は光透過防止層203によって吸収される。その結果、基板ステージの凹凸形状によらず、酸化物半導体層201のチャネル形成領域への光の影響を防ぐことができる。
【0164】
なお、露光光には、実施の形態1に示した光を用いることができる。本実施の形態では、露光光として、高圧水銀灯のスペクトル光であるi線を用いた。
【0165】
続いて、露光処理を終えた後に現像処理を行うことで、レジストマスク215が形成される(図8(C))。
【0166】
次に、レジストマスク215を用いて、酸化物半導体層201の不要な部分をエッチングする。ここでエッチング方法としてウェットエッチングを用いると、酸化物半導体層201へのプラズマダメージの影響をなくすことができるため好ましい。本実施の形態では、酢酸、硝酸及び燐酸を含む混酸を用いて酸化物半導体層201をエッチングすることにより、島状の酸化物半導体層211を形成する。
【0167】
酸化物半導体層211を形成後、レジストマスク215を除去することで、図8(D)に示す形状となる。
【0168】
酸化物半導体層211を形成し、レジストマスク215を除去した後、第1の加熱処理を行っても良い。第1の加熱処理の温度、時間などの条件はゲート電極層229に用いる材料の耐熱性を考慮して最適に適宜設定すればよい。
【0169】
また、第1の加熱処理は島状の酸化物半導体層211に加工する前の酸化物半導体層201に対して行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に第2のフォトリソグラフィ工程を行う。
【0170】
続いて、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bを形成する。ソース電極層217a及びドレイン電極層217bは、ゲート絶縁層207の露出した部分及び酸化物半導体層211上に導電層を形成し、第3のフォトリソグラフィ工程により該導電層を選択的にエッチングすることで形成することができる。
【0171】
ソース電極層217a及びドレイン電極層217bを形成する導電層の材料としては、実施の形態1で示したような材料を用いることができる。
【0172】
本実施の形態では、ソース電極層217a及びドレイン電極層217bを形成する導電層として、厚さ200nmのTi膜を用いた。
【0173】
なお、導電層のエッチングの際に酸化物半導体層211がエッチングされ、分断することのないようにエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体層211をまったくエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電層のエッチングの際に酸化物半導体層211は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層211となることもある。
【0174】
次いで保護絶縁層209を形成する。保護絶縁層209は実施の形態2で示したような材料、方法で形成することができる。なお、保護絶縁層209はできるだけ水素が含まれないようにするため、成膜方法に水素を用いないことが重要である。保護絶縁層209に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層211への浸入、又は水素による酸化物半導体層211中の酸素の引き抜きが生じ、酸化物半導体層211のバックチャネルが低抵抗化してしまい寄生チャネルが形成されるおそれがある。
【0175】
本実施の形態では保護絶縁層209として、30nmの酸化珪素膜をスパッタリング法により成膜した。
【0176】
保護絶縁層209を形成した後、第2の加熱処理を行っても良い。第2の加熱処理の温度、時間などの条件はゲート電極層229に用いる材料の耐熱性を考慮して最適な温度に適宜設定すればよい。
【0177】
以上の工程により、薄膜トランジスタ240が形成される。この時点の断面概略図を図8(E)に示す。
【0178】
なお、本実施の形態ではボトムゲート型の薄膜トランジスタ240の作製方法を説明したが、本発明は例えば図9に示すようなトップゲート型の薄膜トランジスタの作製過程にも適用できる。図9(A)にはソース電極層217a及びドレイン電極層217bが酸化物半導体層211の下側に接触する、いわゆるボトムコンタクト型の薄膜トランジスタ260の構成を示し、図9(B)にはこれらが酸化物半導体層211の上側に接触する、いわゆるトップコンタクト型の薄膜トランジスタ280の構成を示す。このような薄膜トランジスタにおいても、酸化物半導体層よりも基板側に光透過防止層を配置することで、酸化物半導体層のパターニング工程において効果的に基板ステージからの散乱光の影響を抑制することができる。
【0179】
以上のように、酸化物半導体層のパターニングの際、基板ステージからの散乱光が酸化物半導体層に回り込むことを抑制した方法で薄膜トランジスタを作製することで、酸化物半導体層へ基板ステージのパターンに依存した、光によるダメージを抑制することができ、基板面内での電気的特性ばらつきの小さい薄膜トランジスタを作製することができる。このような薄膜トランジスタを例えば画像表示デバイスやイメージセンサなどの半導体装置に用いることで、発光輝度等にばらつきの少ない半導体装置を実現できる。
【0180】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0181】
100 基板
101 酸化物半導体層
103 光透過防止層
105 フォトレジスト
107 フォトマスク
109 露光光
111 酸化物半導体層
113 光透過防止層
115 レジストマスク
117 基板ステージ
119 散乱光
121 下地層
125 フォトレジスト
131 下地層
200 薄膜トランジスタ
201 酸化物半導体層
203 光透過防止層
205 フォトレジスト
207 ゲート絶縁層
209 保護絶縁層
211 酸化物半導体層
213 光透過防止層
215 レジストマスク
217a ソース電極層
217b ドレイン電極層
219 ゲート電極層
220 薄膜トランジスタ
221 下地層
229 ゲート電極層
240 薄膜トランジスタ
260 薄膜トランジスタ
280 薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する基板上に酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層上に酸化物半導体が吸収する波長帯の光を吸収又は反射する光透過防止層を形成し、
前記光透過防止層上にポジ型の感光性を有するフォトレジスト層を形成し、
前記フォトレジスト層にフォトマスクを介して前記フォトレジスト層が感光する光を照射し、
前記光透過防止層上にレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクと重なる領域を残して前記光透過防止層を除去し、
前記光透過防止層と重なる領域を残して前記酸化物半導体層を除去する、半導体膜の作製方法。
【請求項2】
透光性を有する基板上に酸化物半導体が吸収する波長帯の光を吸収又は反射する光透過防止層を形成し、
前記光透過防止層上に酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層上にポジ型の感光性を有するフォトレジスト層を形成し、
前記フォトレジスト層にフォトマスクを介して前記フォトレジスト層が感光する光を照射し、
前記酸化物半導体層上にレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクと重なる領域を残して前記酸化物半導体層を除去する、半導体膜の作製方法。
【請求項3】
透光性を有する基板上に互いに離間したソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記ソース電極層及び前記ドレイン電極層の端部並びに当該間隙を覆う酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層上に酸化物半導体が吸収する波長帯の光を吸収又は反射する光透過防止層を形成し、
前記光透過防止層上に、ポジ型の感光性を有するフォトレジスト層を形成し、
前記フォトレジスト層にフォトマスクを介して前記フォトレジスト層が感光する光を照射し、
前記光透過防止層上に前記ソース電極層及び前記ドレイン電極層の端部並びに当該間隙に重畳するレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクと重なる領域を残して前記光透過防止層を除去し、
前記光透過防止層と重なる領域を残して前記酸化物半導体層を除去し、
前記酸化物半導体層に接してゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層に接し、前記間隙と重畳するゲート電極層を形成する、半導体装置の作製方法。
【請求項4】
透光性を有する基板上に酸化物半導体が吸収する波長帯の光を吸収、又は反射する光透過防止層を形成し、
前記光透過防止層上に酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層上にポジ型の感光性を有するフォトレジスト層を形成し、
前記フォトレジスト層にフォトマスクを介して前記フォトレジスト層が感光する光を照射し、
前記酸化物半導体層上にレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクと重なる領域を残して前記酸化物半導体層を除去し、
前記酸化物半導体層と接し、互いに離間したソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記酸化物半導体層並びに前記ソース電極層及び前記ドレイン電極層に接してゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層と接し、前記酸化物半導体層並びに前記ソース電極層及び前記ドレイン電極層の間隙と重畳するゲート電極層を形成する、半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−4550(P2012−4550A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109717(P2011−109717)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】