説明

半導体装置、アクティブマトリクス型電気光学装置、電子機器、および半導体装置の製造方法

【課題】 基板と自発光素子との層間に誘電体多層膜を形成した場合でも、高い信頼性を確保することのできる発光装置、発光装置の製造方法、および電子機器を提供すること。
【解決手段】 半導体装置1では、ゲート電極15の上層側に第1層間絶縁膜50が形成され、ソース・ドレイン電極20、40は各々、第1層間絶縁膜60のコンタクトホール51、52を介してソース・ドレイン領域12、13に電気的に接続されている。ソース・ドレイン電極20、40の上層側には第2層間絶縁膜60が形成され、ITO層41は、第2層間絶縁膜60のコンタクトホール61を介してソース・ドレイン電極40に電気的に接続している。第1層間絶縁膜50および第2層間絶縁膜60は、膜内にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜で構成され、その誘電率は3.5未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間絶縁膜の下層および上層に導電膜を備えた半導体装置、この半導体装置を素子基板として備えたアクティブマトリクス型電気光学装置、この電気光学装置を備えた電子機器、および半導体装置の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、層間絶縁膜の組成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、一般に、半導体素子を備えた基板上に、異なる信号が印加される下層側導電膜および上層側導電膜が層間絶縁膜を挟むように形成された多層構造を備えている。例えば、マトリクス状に配置された多数の画素の各々に画素スイッチング素子、およびこの画素スイチング素子によって駆動制御される画素電極を備えた素子基板を半導体装置として備えたアクティブマトリクス型の液晶装置や、アクティブマトリクス型のEL(EL/Electro Luminescence)装置では、基板上に、半導体素子として、半導体膜と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極と、第1層間絶縁膜と、この第1層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して半導体膜のソース領域およびドレイン領域に各々電気的に接続し、ゲート電極とは異なる信号が印加されるソース電極およびドレイン電極とを下層側から上層側に向けてこの順に備えたTFT(Thin Film Transistor/薄膜トランジスタ)が形成されている。また、ソース・ドレイン電極の上層側には第2層間絶縁膜が形成されているとともに、この第2層間絶縁膜の上層側には、第2層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して、ソース電極およびドレイン電極のうちの一方側の電極に電気的に接続する画素電極が上層電極として形成され、このような画素電極は、他方側の電極とは異なる信号が印加される。
【0003】
このように構成した半導体装置において、層間絶縁膜としては、CVD法などで成膜されたシリコン酸化膜が用いられている。但し、CVD法などで成膜したシリコン酸化膜は、カバレッジ性に優れているため、その分、膜厚を増大させても平坦化が困難であるという問題点がある。そこで、層間絶縁膜として、ポリシラザンの変性膜を用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−243834号公報
【特許文献2】特開2004−145333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載のポリシラザンの変性膜であれば、ポリシラザン溶液を基板上に塗布した後、焼成して層間絶縁膜を形成するので、TFTや配線などで形成された凹凸を平坦化することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、無機ポリシランザンが用いられているため、その誘電率は、シリコン酸化膜(誘電率=4.0)より低いもの、配線間の寄生容量を解消するにはまだ高い。このため、層間絶縁膜の下層および上層に形成された導電膜間に寄生する容量の影響で、下層側導電膜と上層側導電膜に異なる信号を印加した際、信号波形に大きな歪みが発生し、消費電力の削減を図れないという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明では、平坦化性能に優れ、かつ、誘電率の低い絶縁膜を層間絶縁膜として用いた半導体装置、この半導体装置を素子基板として備えたアクティブマトリクス型電気光学装置、この電気光学装置を備えた電子機器、および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、少なくとも、半導体素子を備えた基板上に、異なる信号が印加される下層側導電膜および上層側導電膜が、ポリシラザン変性膜からなる層間絶縁膜を上下で挟むように形成された半導体装置において、前記ポリシラザン変性膜は、膜内にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜であることを特徴とする。本発明において、前記有機ポリシラザン変性膜は、例えば、前記アルキル基としてメチル基を含んでいる。
【0008】
本発明では、少なくとも、半導体素子を備えた基板上に、異なる信号が印加される下層側導電膜および上層側導電膜が、ポリシラザン変性膜からなる層間絶縁膜を上下で挟むように形成された半導体装置の製造方法において、前記半導体素子および前記下層側導電膜を形成した後、前記層間絶縁膜を形成する工程では、アルキル基を含む有機ポリシラザン溶液を前記基板上に塗布する塗布工程と、該塗布工程を行った前記基板を相対湿度が60%以上の雰囲気中に保持する加湿工程と、該加湿工程を行った前記基板を最高温度が400℃以下の加熱雰囲気中に保持する焼成工程とを行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の形態では、少なくとも、半導体素子を備えた基板上に、異なる信号が印加される下層側導電膜および上層側導電膜が、ポリシラザン変性膜からなる層間絶縁膜を挟む下層および上層に形成された半導体装置の製造方法において、前記半導体素子および前記下層側導電膜を形成した後、前記層間絶縁膜を形成する工程では、アルキル基を含む有機ポリシラザン溶液を前記基板上に塗布する塗布工程と、該塗布工程を行った前記基板を最高温度が400℃以下の酸素含有の加熱雰囲気中に保持する焼成工程とを行うことを特徴とする。
【0010】
本発明おいて、前記焼成工程における最高温度が350℃以下であることが好ましい。
【0011】
本発明では、層間絶縁膜を形成する際、有機ポリシラザン溶液を塗布する構成を採用したため、この有機ポリシラザン溶液を焼成してなる層間絶縁膜(有機ポリシラザン変性膜)は平坦化特性に優れている。従って、下層側導電膜を厚くしてその電気的抵抗を低減することにより低消費電力化や応答速度の向上を図った場合でも、上層側導電膜については、平坦な層間絶縁膜の表面に形成できる。また、本発明では、アルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜を層間絶縁膜として用い、その誘電率は3.5未満である。従って、層間絶縁膜の下層および上層に形成された導電膜間に形成される寄生容量が小さいため、下層側導電膜と上層側導電膜に異なる信号を印加した際でも、信号に歪みなどが発生せず、駆動周波数を高周波数化することができる。
【0012】
本発明において、前記基板上に、前記半導体素子として、半導体膜と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極と、第1層間絶縁膜と、該第1層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して前記半導体膜のソース領域およびドレイン領域に各々電気的に接続し、前記ゲート電極とは異なる信号が印加されるソース電極およびドレイン電極とを備えた薄膜トランジスタが下層側から上層側に向かってこの順に形成され、前記ソース・ドレイン電極の上層側には第2層間絶縁膜が形成されているとともに、当該第2層間絶縁膜の上層側には、当該第2層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの一方側の電極に電気的に接続し、他方側の電極とは異なる信号が印加される上層電極が形成されている場合、前記第1層間絶縁膜および前記第2層間絶縁膜のうちの少なくとも一方が前記有機ポリシラザン変性膜からなる層間絶縁膜として構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明を適用した半導体装置は、例えば、アクティブマトリクス型のEL装置(電気光学装置)の素子基板として構成される。この場合、前記素子基板には、マトリクス状に配置された多数の画素の各々に、前記薄膜トランジスタ、該薄膜トランジスタによって駆動が制御される前記上層電極としての画素電極、該画素電極に積層された自発光素子の発光層、および当該発光層を前記画素電極との間に挟む対向電極が形成されている。
【0014】
この場合、前記発光層からみて前記画素電極の側は、当該発光層が発する光に対して反射性を備え、前記発光層からみて前記対向電極の側は、当該発光層が発する光に対して透過性を備えていることが好ましい。このような、いわゆる「トップエミッション型EL装置」では、TFTなどを覆うように発光層を形成することができため、各画素において表示光が出射される領域の面積の比率(画素開口率)が高い。但し、トップエミッション型EL装置では、光の反射効率などの観点から、発光層の下層側(反射層)が平坦であることが厳しく求められる。また、液滴を吐出して発光層を形成する場合、一定の膜厚で形成するという観点からしても、発光層の下層側(反射層)が平坦であることが厳しく求められる。しかるに本発明では、平坦化特性に優れた層間絶縁膜(アルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜)を用いているため、層間絶縁膜の下層側に配線が通っている場合でも、発光層の下層側(反射層)が平坦である。それ故、トップエミッション型EL装置では画素開口率に優れている分、表示光量のレベルが高いという特徴を最大限、発揮させることができる。
【0015】
本発明に係る半導体装置は、アクティブマトリクス型液晶装置(電気光学装置)の素子基板として用いることもできる。この場合、前記素子基板には、マトリクス状に配置された多数の画素の各々に、前記薄膜トランジスタ、および該薄膜トランジスタによって駆動が制御される前記上層電極としての画素電極を備え、前記素子基板と、当該素子基板に対向配置された対向基板との間には、液晶層が保持されている。
【0016】
本発明を適用したアクティブマトリクス型電気光学装置は、携帯電話機やモバイルコンピュータなどの電子機器として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る半導体装置、半導体装置の製造方法、電気光学装置、およびそれを用いた電子機器について説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺が各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0018】
[半導体装置]
(全体構成)
図1は、本発明を適用した半導体装置の特徴部分を模式的に示す断面図である。図2(a)、(b)は、本発明において、アルキル基を含む有機ポリシラザン溶液を焼成して有機ポリシラザン変性膜とする反応の説明図、および焼成前後の赤外分光分析結果の説明図である。
【0019】
図1に示すように、本発明を適用した半導体装置1は、基板2の表面側に、ポリシリコン膜11を用いたTFT10(半導体素子)を備えており、このTFT10は、ソース・ドレイン領域12、13を有するとともに、ソース・ドレイン領域12、13の間には、ゲート絶縁膜14を介してゲート電極15に対峙するチャネル領域16を有している。ゲート電極15の上層側には、第1層間絶縁膜50が形成されている。第1層間絶縁膜50の表面には、厚さが約50nmのチタン層と、厚さが約400nmのアルミニウム−銅合金層と、厚さが約100nmの窒化チタン層からなるバリア層がこの順に積層されたソース・ドレイン電極20、40が形成され、これらのソース・ドレイン電極20、40は各々、第1層間絶縁膜60に形成されたコンタクトホール51、52を介してソース・ドレイン領域12、13に電気的に接続されている。
【0020】
ソース・ドレイン電極20、40の上層側には第2層間絶縁膜60が形成されている。第2層間絶縁膜60の上層には、厚さが例えば50nmのITO層41(上層電極)が形成され、ITO層41は、第2層間絶縁膜60に形成されたコンタクトホール61を介してソース・ドレイン電極40に電気的に接続している。
【0021】
なお、ITO層41の下層側に窒化チタンからなる導電性下地層(図示せず)を形成し、この導電性下地層がソース・ドレイン電極40に電気的に接続する構成を採用してもよい。ここで、バリア層および導電性下地層の例として、窒化チタン層を例示したが、バリア層には、高融点金属(Mo、Ti、Ta、W)、高融点金属窒化物(TiN、TiON、TaN)、あるいは高融点金属シリサイド(MoSi2、TiSi2、TaSi2、WSi2)を用いることができ、導電性下地層にも、高融点金属(Mo、Ti、Ta、W)、高融点金属窒化物(TiN、TiON、TaN)、あるいは高融点金属シリサイド(MoSi2、TiSi2、TaSi2、WSi2)を用いることができる。また、バリア層と導電性下地層は、同一の材料で構成してもよいが、異なる材料で構成してもよい。
【0022】
このように構成した半導体装置1において、ゲート電極15を第1層間絶縁膜50の下層側導電層とみなした場合、ソース・ドレイン電極20、40については第1層間絶縁膜50の上層側導電層とみなすことができ、ゲート電極15と、ソース・ドレイン電極20、40には、各々異なる信号が印加される。また、図示を省略するが、ゲート電極15から延びる配線部分と、ソース・ドレイン電極20あるいはソース・ドレイン電極40から延びる配線部分とは、第1層間絶縁膜50の下層と上層で交差している。
【0023】
また、本形態の半導体装置1において、ソース・ドレイン電極20を第2層間絶縁膜50の下層側導電層とみなした場合、ITO層41は、第2層間絶縁膜60の上層側導電層とみなすことができ、ソース・ドレイン電極20とITO層41には、各々異なる信号が印加される。また、ソース・ドレイン電極20およびそれから延びた配線部分とITO層41とは、第2層間絶縁膜60の下層と上層で重なっている。
【0024】
そこで、本形態では、第1層間絶縁膜50および第2層間絶縁膜60については、ポリシラザン変性膜から構成し、かつ、ポリシラザン変性膜として、膜内にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜が用いられている。
【0025】
このように本形態では、第1層間絶縁膜50を形成する際、後述するように、有機ポリシラザン溶液を塗布する構成を採用するため、この有機ポリシラザン溶液を焼成してなる第1層間絶縁膜50(有機ポリシラザン変性膜)は平坦化特性に優れている。従って、下層側導電膜(ゲート電極15)の厚さを例えば、約500nmまで厚くしてその電気的抵抗を低減することにより低消費電力化を図った場合でも、上層側導電膜(ソース・ドレイン電極20、40)については、凹凸が200nm以下の平坦な第1層間絶縁膜50の表面に形成できる。
【0026】
また、第2層間絶縁膜60を形成する際も、後述するように、有機ポリシラザン溶液を塗布する構成を採用するため、この有機ポリシラザン溶液を焼成してなる第2層間絶縁膜60(有機ポリシラザン変性膜)は平坦化特性に優れている。従って、下層側導電膜(ソース・ドレイン電極20、40)の厚さを例えば、約500nmまで厚くしてその電気的抵抗を低減することにより低消費電力化を図った場合でも、上層側導電膜(ITO層41)については、凹凸が200nm以下の平坦な層間絶縁膜の表面に形成できる。
【0027】
さらに、本形態では、アルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜を第1層間絶縁膜50および第2層間絶縁膜60として用いているため、それらの誘電率は3.5未満、例えば、2.7〜3.0である。従って、層間絶縁膜50、60の下層および上層に形成された導電膜間に形成される寄生容量が小さいため、下層側導電膜と上層側導電膜に異なる信号を印加した際でも、信号に歪みなどが発生しない。
【0028】
(製造方法1)
本形態の半導体装置1を製造するには、まず、各種の半導体プロセス(成膜プロセス、フォトリソグラフィ技術、不純物の導入プロセス)を用いて、基板2上に、ポリシリコン膜11、ゲート絶縁膜14、ゲート電極15、第1層間絶縁膜50、この第1層間絶縁膜50のコンタクトホール51、52を介してポリシリコン膜11のソース・ドレイン領域12、13に各々電気的に接続するソース・ドレイン電極20、40を備えたTFT10を低温プロセス(最高温度が600℃以下の条件)で形成する。次に、ソース・ドレイン電極20、40の上層側に第2層間絶縁膜60を形成する。その際、コンタクトホール61を形成する。次に、第2層間絶縁膜60の上層側には、第2層間絶縁膜60に形成されたコンタクトホール61を介して、ソース・ドレイン電極40に電気的に接続するITO層41を形成する。
【0029】
このような工程のうち、本形態では、第1層間絶縁膜50および第2層間絶縁膜60の形成工程では、まず、アルキル基を含む有機ポリシラザン溶液(例えば、30重量%のポリシラザンのPEGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)を基板2上に約200rpm〜約1000rpmの条件でのスピンコート法で塗布する塗布工程を行う。次に、乾燥工程を行い、溶剤を除去する。
【0030】
次に、塗布工程および乾燥工程を行った基板2を相対湿度が60%以上の雰囲気中に約1時間、保持する加湿工程を行う。より具体的には、相対湿度が60%の条件を保持したまま、雰囲気温度を室温から350℃に上昇させた後、温度が350℃の状態を保持する。その結果、図2に示すように、有機ポリシラザンA([Si(CH3)NH2n)は、水分を吸って、中間生成物B([−Si(CH3)NH−]になる。
【0031】
次に、加湿工程を行った基板2を400℃以下、好ましくは350℃以下の加熱雰囲気中に約1時間保持する焼成工程を行う。より具体的には、雰囲気温度を350℃から室温に戻す間、雰囲気を乾燥状態にして焼成工程を行う。その結果、中間生成物B([−Si(CH3)NH−]は、水分を放出して多量化し、メチルシルセスキオキサン膜C([Si(CH3)O]n)となる。
【0032】
このように構成したメチルシルセスキオキサン膜Cは、焼成工程における最高温度が400℃以下、本形態では350℃以下であるため、その赤外分光分析結果を図2(b)に示すように、アルキル基(メチル基)を多量に含む有機ポリシラザン変性膜が形成されており、その誘電率は、3.5未満、例えば2.7〜3.0である。
【0033】
すなわち、図2(b)に示す分析結果からわかるように、焼成前は、シラザン(Si−N)が多く残っており、かつ、シラノール由来のO−Hピーク(Si−O−Hピーク)と、アンモニア由来のN−Hピークが多く残っているが、焼成後、シラザンやアンモニアはほとんど残っておらず、Si−Oピークと、Si−Cピーク(Si−CH3ピーク)のみが検出されている。このように、焼成工程における最高温度を400℃以下に設定すれば、アルキル基(メチル基)を多量に含む有機ポリシラザン変性膜を形成することができる。
【0034】
(製造方法2)
本形態においては、第1層間絶縁膜50および第2層間絶縁膜60の形成工程では、まず、アルキル基を含む有機ポリシラザン溶液を基板2上にスピンコート法により塗布する塗布工程を行う。次に、乾燥工程を行い、溶剤を除去する。
【0035】
次に、塗布工程および乾燥工程を行った基板2を酸素含有の加熱雰囲気中に保持する焼成工程を行う。その結果、有機ポリシラザンA([Si(CH3)NH2n)は、酸化されて、メチルシルセスキオキサン膜C([Si(CH3)O]n)となる。この焼成工程における最高温度も、製造方法1と同様、400℃以下、好ましくは350℃以下である。
【0036】
このように構成したメチルシルセスキオキサン膜Cも、製造方法1と同様、アルキル基(メチル基)を含む有機ポリシラザン変性膜であり、誘電率が3.5未満、例えば2.7〜3.0である。
【0037】
(変形例)
上記形態では、2つの層間絶縁膜50、60の双方にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜を用いたが、いずれか一方の層間絶縁膜にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜を用いてもよい。また、層間絶縁膜を1層のみ備えた半導体装置に本発明を適用してもよい。
【0038】
[トップエミッション型の有機EL表示装置への適用例]
(全体構成)
図3、図4および図5を参照して、図1および図2を参照して説明した構成をトップエミッション型の有機EL表示装置(アクティブマトリクス型電気光学装置)に適用した場合を説明する。図3は、有機EL表示装置の電気的構成を示す等価回路図である。図4および図5は、図3に示す有機EL表示装置における画素を拡大して示す平面図、および断面図である。
【0039】
図3に示す有機EL表示装置200では、後述する素子基板の素子形成面側に、複数の走査線231と、走査線231に対して交差する方向に延びる複数の信号線232と、信号線に並列に延びる複数の電源線233とが配線されている。また、画像表示領域では、走査線231および信号線232の各交点に対応する位置に画素200aが形成されている。信号線232には、例えば、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオラインおよびアナログスイッチを含むデータ側駆動回路203が接続されている。また、走査線231にはシフトレジスタおよびレベルシフタを含む走査側駆動回路204が接続されている。各画素200aには、走査線231を介して走査信号がゲート電極に供給される画素スイッチング用のTFT223と、このTFT223を介して信号線232から供給される画像信号を保持する保持容量235と、保持容量235によって保持された画像信号がゲート電極に供給される画素スイッチング用(駆動用)のTFT224とが形成されている。
【0040】
図4および図5に示すように、有機EL表示装置200を構成するにあたって、素子基板250(半導体装置)には、ガラス基板からなる基板251上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜252が形成され、この下地保護膜252上に、TFT223、224(半導体素子)などを構成するための低温ポリシリコン膜からなる半導体膜241、261が島状に形成されている。半導体膜241、261には不純物の導入によってソース・ドレイン領域241a、241b、261a、261bが形成され、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域241c、261cとなっている。下地保護膜252および半導体膜241、261の上層側にはゲート絶縁膜242が形成され、ゲート絶縁膜242上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極243、263が形成されている。ゲート電極243、263およびゲート絶縁膜242の上層側には、第1層間絶縁膜244aと第2層間絶縁膜244bとが形成されている。
【0041】
第1層間絶縁膜244aの上層には、第1層間絶縁膜244aのコンタクトホール245a、245b、246a、246bを介してソース・ドレイン領域241a、241b、261a、261bにそれぞれ接続するソース・ドレイン電極247a、247b、248a、248bが形成されている。
【0042】
これらのソース・ドレイン電極247a、247b、248a、248bのうち、ソース・ドレイン電極247bの延設部分が電源線233になっており、ソース・ドレイン電極248bの延設部分がデータ線232になっている。また、ゲート電極263の延設部分は、走査線231になっており、ゲート電極243とソース・ドレイン電極248aとは電気的に接続している。
【0043】
第2層間絶縁膜244b上には、ITO層からなる透明な画素電極211(上層電極)が形成され、この画素電極211は、第2層間絶縁膜244bのコンタクトホール281を介してソース・ドレイン電極247aに電気的に接続している。従って、画素電極211は、TFT224を介して電源線233に電気的に接続したときに電源線233から駆動電流が流れ込む。
【0044】
各画素200aには、陽極層としてのITO膜からなる画素電極211と、陰極層222(対向電極)との間に挟み込まれた発光機能層210(有機機能層)を備えた有機EL素子201(自発光素子)が形成されている。有機機能層210は、例えば、画素電極211上に積層された正孔注入/輸送層と、正孔注入/輸送層上に形成された発光層(有機EL層)とから構成されている。なお、発光層と陰極層222との間に電子注入/輸送層が形成される場合もある。正孔注入/輸送層は、正孔を発光層に注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層内部において輸送する機能を有する。発光層では、正孔注入/輸送層から注入された正孔と、陰極層222の側から注入された電子が再結合し、発光が得られる。ここで、多数の画素200aは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色に対応しており、このような色の対応は、有機機能層210を構成する材料の種類によって規定されている。
【0045】
本形態の有機EL表示装置200は、矢印Lで示すように、基材と反対側に向けて表示光を出射するトップエミッション型であり、陰極層222は、薄いカルシウム層222aと、ITO層などからなる光透過性陰極層222bとから構成され、素子基板250の端子形成領域を除く略全面に形成されている。また、画素電極211の下層側には、画素電極211の略全体と重なるようにアルミニウム膜などからなる光反射層213が形成されている。
【0046】
画素200aには、画素電極211の周縁部を取り囲むように隔壁212がバンクとして形成されている。隔壁212は、有機機能層210を形成する際、インクジェット法(液体吐出法)により吐出、塗布される液状組成物の塗布領域を規定するものであり、その表面張力によって、液状組成物が均一な厚さで形成される。
【0047】
すなわち、正孔注入層の形成工程では、隔壁212で囲まれた凹部内に、有機機能材料の液状物(正孔輸送層形成用液状物)の液滴を吐出した後、乾燥、焼成により、正孔注入層形成用液状物を固化させて正孔注入層を形成する。このような液滴の吐出には、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドなどが用いられる。インクジェット方式としては、圧電体素子の体積変化により流動体を吐出させるピエゾジェット方式や、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式などが採用される。なお、液滴吐出装置としてはディスペンサー装置でもよい。ここで、液体材料とは、吐出ヘッドのノズルから吐出可能な粘度を備えた媒体をいう。水性であると油性であるとを問わない。ノズル等から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。また、液体材料に含まれる固体物質は融点以上に加熱されて溶解されたものでも、溶媒中に微粒子として分散させたものでもよく、溶媒の他に染料や顔料その他の機能性材料を添加したものであってもよい。なお、正孔注入層は、例えば、高分子系材料として、ポリチオフェン、ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール、ポリアニリンおよびこの誘導体などが例示される。また、低分子系材料を使用する場合は、正孔注入層と正孔輸送層を積層して形成するのが好ましい。正孔注入層の形成材料としては、例えば、ポリオレフィン誘導体である3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を有機溶剤を主溶媒として分散させてなる分散液が好適に用いられる。但し、正孔注入材料としては、前記のものに限定されることなく、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等を用いることもできる。
【0048】
発光層の形成工程でも、正孔注入層の形成工程と同様、有機機能材料の液状物(発光層形成用液状物)の液滴を吐出した後、乾燥、焼成により、発光層形成用液状物を固化させて発光層を形成する。発光層の形成材料としては、例えば、分子量が1000以上の高分子材料が用いられる。具体的には、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープしたものが用いられる。なお、このような高分子材料としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、すなわちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。また、このような材料以外にも、例えば特開平11−40358号公報に示される有機EL素子用組成物、すなわち共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる有機EL素子用組成物も、発光層形成材料として使用可能である。このような発光材料を溶解あるいは分散する有機溶媒としては、非極性溶媒が好適とされ、特に発光層が正孔注入層の上に形成されることから、この正孔注入層に対して不溶なものが用いられる。具体的には、キシレン、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等が好適に用いられる。なお、発光層の形成にあたっては、赤色の発色光を発光する発光層の形成材料、緑色の発色光を発光する発光層の形成材料、青色の発色光を発光する発光層の形成材料を、それぞれ対応する画素に吐出し塗布することによって行う。
【0049】
なお、素子基板250の素子形成面側には、水や酸素の侵入を防ぐことによって陰極層222あるいは有機機能層210の酸化を防止する封止樹脂240が形成されている。また、素子基板250の素子形成面側には封止基板が貼られることがあるが、図示を省略してある。
【0050】
(動作)
このように構成した有機EL表示装置200において、走査線231が駆動されてTFT223がオン状態になると、そのときの信号線232の電位が保持容量235に保持され、この保持容量235の状態に応じて駆動用のTFT224の導通状態が制御される。また、駆動用のTFT224がオン状態になったとき、TFT224を介して電源線233から画素電極211に電流が流れ、有機EL素子201では、有機機能層210を通じて陰極層222に電流が流れる。そして、このときの電流量に応じて有機機能層210が発光する。そして、有機機能層210から発した光は、陰極層222を透過して、矢印Lで示すように、観測者側に出射される一方、有機機能層210から基板251に向けて出射された光は、反射層222によって反射され、矢印Lで示すように、観測者側に出射される。
【0051】
(層間絶縁膜の構成)
このように構成した有機EL表示装置200において、本形態では、第1層間絶縁膜244a、および第2層間絶縁膜244bについては、ポリシラザン変性膜から構成し、かつ、ポリシラザン変性膜として、膜内にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜が用いられている。このため、本形態では、第1層間絶縁膜244aを形成する際、有機ポリシラザン溶液を塗布する構成を採用するため、この有機ポリシラザン溶液を焼成してなる第1層間絶縁膜244a(有機ポリシラザン変性膜)は平坦化特性に優れている。従って、下層側導電膜(ゲート電極243、246)の厚さを約500nmまで厚くしてその電気的抵抗を低減することにより低消費電力化を図った場合でも、上層側導電膜(ソース・ドレイン電極247a、247b、248a、248b、電源線233、データ線232)については、凹凸が200nm以下の平坦な層間絶縁膜の表面に形成できる。また、第2層間絶縁膜244bを形成する際も、有機ポリシラザン溶液を塗布する構成を採用するため、この有機ポリシラザン溶液を焼成してなる第2層間絶縁膜244b(有機ポリシラザン変性膜)は平坦化特性に優れている。従って、下層側導電膜(ソース・ドレイン電極247a、247b、248a、248bや電源線233、データ線232)の厚さを約500nmまで厚くしてその電気的抵抗を低減することにより低消費電力化を図った場合でも、上層側導電膜(画素電極211)については、凹凸が200nm以下の平坦な層間絶縁膜の表面に形成できる。
【0052】
従って、インクジェット法で発光層などの有機機能層210を形成する際、液滴を平坦な面に吐出できるので、膜厚が一定の有機機能層210を形成することができる。また、光反射層213も平坦な面に形成できるので、所定の方向に光を反射することができる。それ故、本形態によれば、トップエミッション型の有機EL装置200では画素開口率に優れている分、表示光量のレベルが高いという特徴を最大限、発揮させて、品位の高い画像を表示することができる。
【0053】
また、本形態では、アルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜を第1層間絶縁膜244aおよび第2層間絶縁膜244bとして用いているため、その誘電率は3.5未満、例えば2.7〜3.0である。従って、下層側導電膜(ゲート電極243、246、走査線231)と上層側導電膜(ソース・ドレイン電極247a、247b、248a、248bや電源線233、データ線232)との間に形成される寄生容量が小さいため、これらの電極や配線に異なる信号を印加した際でも、信号に歪みなどが発生しない。また、下層側導電膜(ソース・ドレイン電極247b、248a、248bや電源線233、データ線232)と上層側導電膜(画素電極211)との間に形成される寄生容量が小さいため、これらの電極や配線に異なる信号を印加した際でも、信号に歪みなどが発生しない。
【0054】
(変形例)
上記形態では、2つの層間絶縁膜244a、244bの双方にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜を用いたが、いずれか一方の層間絶縁膜にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜を用いてもよい。また、上記形態では、トップエミッション型の有機EL表示装置に本発明を適用した例であったが、基板251側から表示光が出射されるボトムエミッション型の有機EL表示装置に本発明を適用してもよい。さらに、層間絶縁膜を1層のみ備えた有機EL装置に本発明を適用してもよい。
【0055】
[アクティブマトリクス型の液晶装置への適用例]
(全体構成)
図6、図7および図8を参照して、図1および図2を参照して説明した構成を液晶装置(電気光学装置)に適用した場合を説明する。図6は、画素スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス型液晶装置の電気的構成を示す等価回路図である。図7は、本形態の半透過反射型の電気光学装置に用いた素子基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図8は、半透過反射型の電気光学装置の画素の断面図である。
【0056】
図6に示すように、画素スイッチング素子としてTFTを用いたアクティブマトリクス型液晶装置100では、マトリクス状に形成された複数の画素の各々に、画素電極109aを制御するための画素スイッチング用のTFT130(半導体素子)が形成されており、画像信号を供給するデータ線106aが当該TFT130のソースに電気的に接続されている。データ線106aに書き込む画像信号は、データ線駆動回路102から供給される。また、TFT130のゲートには走査線103aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線103aにパルス的に走査信号が走査線駆動回路103から供給される。画素電極109aは、TFT130のドレインに電気的に接続されており、半導体素子であるTFT130を一定期間だけそのオン状態とすることにより、データ線106aから供給される画像信号を各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極109aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板(図省略)に形成された対向電極との間で一定期間保持される。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐことを目的に、画素電極109aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量160(キャパシタ)を付加することがある。この蓄積容量160によって、画素電極109aの電圧は、例えば、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い表示を行うことのできる電気光学装置が実現できる。なお、蓄積容量160を形成する方法としては、容量を形成するための配線である容量線103bとの間に形成する場合、あるいは前段の走査線103aとの間に形成する場合もいずれであってもよい。
【0057】
(素子基板の構成)
図7に示すように、アクティブマトリクス型液晶装置100を構成するにあたって、素子基板110(半導体装置)上には、複数の透明なITO(Indium Tin Oxide)膜からなる画素電極109aがマトリクス状に形成されており、これら各画素電極109aに対して画素スイッチング用のTFT130がそれぞれ接続している。また、画素電極109aの縦横の境界に沿って、データ線106a、走査線103a、および容量線103bが形成され、TFT130は、データ線106aおよび走査線103aに対して接続している。すなわち、データ線106aは、コンタクトホールを介してTFT130の高濃度ソース領域101dに電気的に接続し、走査線103aは、その突出部分がTFT130のゲート電極を構成している。なお、蓄積容量160は、画素スイッチング用のTFT130を形成するための半導体膜101aの延設部分101fを導電化したものを下電極とし、この下電極141に容量線103bが上電極として重なった構造になっている。
【0058】
このように構成した画素領域のC−C′線における断面は、図8に示すように表され、素子基板110の基体たる透明な基板の表面にシリコン酸化膜(絶縁膜)からなる下地保護膜111が形成され、この下地保護膜111の表面には、厚さが30nm〜100nmの島状の半導体膜101aが形成されている。半導体膜101aの表面には、厚さが約50〜150nmのシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜102が形成され、このゲート絶縁膜102の表面に、厚さが300nm〜800nmの走査線103aが形成されている。半導体膜101aのうち、走査線103aに対してゲート絶縁膜102を介して対峙する領域がチャネル領域101a′になっている。このチャネル領域101a′に対して一方側には、低濃度ソース領域101bおよび高濃度ソース領域101dを備えるソース領域が形成され、他方側には低濃度ドレイン領域101cおよび高濃度ドレイン領域101eを備えるドレイン領域が形成されている。
【0059】
画素スイッチング用のTFT130の上層側には第1層間絶縁膜104が形成されている。第1層間絶縁膜104の表面には、厚さが300nm〜800nmのデータ線106aが形成され、このデータ線106aは、第1層間絶縁膜104に形成されたコンタクトホールを介して高濃度ソース領域101dに電気的に接続している。第1層間絶縁膜104の表面にはデータ線106aと同時形成されたドレイン電極106bが形成され、このドレイン電極106bは、層間絶縁膜4に形成されたコンタクトホールを介して高濃度ドレイン領域101eに電気的に接続している。
【0060】
第1層間絶縁膜104の上層には、第1の感光性樹脂からなる凹凸形成層113a(第2層間絶縁膜)が所定のパターンで形成され、この凹凸形成層113aの表面には、第2の感光性樹脂からなる上層絶縁膜107a(第2層間絶縁膜)が形成されている。また、上層絶縁膜107aの表面には、アルミニウム膜などからなる光反射膜108aが形成されている。従って、光反射膜108aの表面には、凹凸形成層113aの凹凸が上層絶縁膜107aを介して反映されて、凹部108cおよび凸部108bからなる凹凸パターン108gが形成されている。
【0061】
ここで、光反射層108aには光透過窓としての開口部108dが形成されている。このため、光反射層108aは、画素電極109aと対向電極121とが対向する画素領域100aに反射領域100bを構成するとともに、光反射層108aの形成されていない残りの領域(開口部108d)は、透過領域100cを構成している。
【0062】
光反射膜108aの上層にはITO膜からなる画素電極109a(上層電極)が形成されている。画素電極109aは、光反射膜108aの表面に直接、積層され、画素電極109aと光反射膜108aとは電気的に接続されている。また、画素電極109aは、上層絶縁膜107aおよび第1層間絶縁膜104に形成されたコンタクトホールを介してドレイン電極106bに電気的に接続している。
【0063】
画素電極109aの上層側にはポリイミド膜からなる配向膜112が形成されている。この配向膜112は、ポリイミド膜に対してラビング処理が施された膜である。
【0064】
また、高濃度ドレイン領域101eからの延設部分101f(下電極)に対しては、ゲート絶縁膜102と同時形成された絶縁膜(誘電体膜)を介して容量線103bが上電極として対向することにより、蓄積容量160が構成されている。
【0065】
さらに、本形態では、容量線103bの上層側には、透明なポリイミド樹脂などからなる、高さ2μm〜3μmの柱状突起140が各画素100毎に複数、形成され、これらの柱状突起140によって、素子基板110と対向基板120との間隔が規定されている。このため、本形態の半透過反射型液晶装置100では、素子基板110と対向基板120との間にギャップ材が散布されていない。
【0066】
(対向基板の構成)
対向基板120では、素子基板110に形成されている画素電極109aの縦横の境界領域と対向する領域にブラックマトリクス、あるいはブラックストライプなどと称せられる遮光膜123が形成され、その上層側には、ITO膜からなる対向電極121が形成されている。また、対向電極121の上層側には、ポリイミド膜からなる配向膜122が形成され、この配向膜122は、ポリイミド膜に対してラビング処理が施された膜である。対向基板120において対向電極121の下層側には、フォトリソグラフィ技術、フレキソ印刷法、あるいはインクジェット法を利用して反射領域100bおよび透過領域100cに対向する領域にRGBのカラーフィルタ124が1μm〜数μmの厚さに形成されている。
【0067】
さらに、本形態では、対向電極121とカラーフィルタ124との層間、すなわち、対向電極121の下層側には、反射領域100bにおける基板間隔dR(μm)を透過領域100cにおける基板間隔dT(μm)よりも薄くする層厚調整層125が形成されている。本形態において、層厚調整層125は、フォトリソグラフィ技術、フレキソ印刷法、あるいはインクジェット法を利用して反射領域100bに選択的に形成された、厚さが2μm〜3μmのアクリル樹脂やポリイミド樹脂などの透明層である。
【0068】
(動作)
このような構成のアクティブマトリクス型液晶装置100では、素子基板110の背面側に配置されたバックライト装置(図示せず)から出射された光のうち、透過領域100cに入射した光は、矢印LTで示すように、素子基板110の側から液晶層150に入射し、液晶層150で光変調された後、対向基板120の側から透過表示光として出射されて画像を表示する(透過モード)。また、対向基板120の側から入射した外光のうち、反射領域100bに入射した光は、矢印LRで示すように、液晶層150を通って反射層108aに届き、この反射層108aで反射されて再び、液晶層150を通って対向基板120の側から反射表示光として出射されて画像を表示する(反射モード)。このような表示を行う際、透過表示光は、液晶層150を一度だけ通過して出射されるのに対して、反射表示光は、液晶層150を2度、通過することになるが、本形態では、対向基板120に形成された層厚調整層125によって、反射領域100bにおける液晶層50の層厚は、透過領域100cにおける液晶層50の層厚よりもかなり薄い。このため、透過表示光および反射表示光の双方において、リタデーションを最適化することができるので、品位の高い表示を行うことができる。
【0069】
(層間絶縁膜の構成)
このように構成したアクティブマトリクス型液晶装置100において、本形態では、第1層間絶縁膜104については、ポリシラザン変性膜から構成し、かつ、ポリシラザン変性膜として、膜内にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜が用いられている。このため、本形態では、第1層間絶縁膜104を形成する際、有機ポリシラザン溶液を塗布する構成を採用するため、この有機ポリシラザン溶液を焼成してなる第1層間絶縁膜104は平坦化特性に優れている。従って、下層側導電膜(走査線103a)の厚さを約500nmまで厚くしてその電気的抵抗を低減することにより低消費電力化を図った場合でも、上層側導電膜(ソース・ドレイン電極106b、データ線106a)については、凹凸が200nm以下の平坦な第1層間絶縁膜104の表面に形成できる。
【0070】
また、本形態では、アルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜を第1層間絶縁膜104として用いているため、その誘電率は3.5未満、例えば2.7〜3.0である。従って、下層側導電膜(走査線103a)と上層側導電膜(データ線106a)との間に形成される寄生容量が小さいため、これらの電極や配線に異なる信号を印加した際でも、信号に歪みなどが発生しない。
【0071】
(変形例)
上記形態では、半透過反射型の液晶装置に本発明を適用した例であったが、全透過型の液晶装置に本発明を適用してもよい。さらに、層間絶縁膜を1層のみ備えた有機EL装置に本発明を適用してもよい。
【0072】
[電子機器]
次に、上述の有機EL装置を備えた電子機器の例について説明する。図9は上述した実施形態に係る表示装置を備えたモバイル型のパーソナルコンピュータ(情報処理装置)の構成を示す斜視図である。同図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、上述した有機EL装置や液晶装置を表示装置1106として備えた表示装置ユニットとから構成されている。なお、上述した例に加えて、他の例として、携帯電話、腕時計型電子機器、液晶テレビ、ビューファインダ型やモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、電子ペーパー、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。本発明の電気光学装置は、こうした電子機器の表示部としても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明を適用した半導体装置の特徴部分を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)、(b)は、本発明において、アルキル基を含む有機ポリシラザン溶液を焼成して有機ポリシラザン変性膜とする反応の説明図、および焼成前後の赤外分光分析結果の説明図である。
【図3】アクティブマトリクス型の有機EL装置(発光装置)の電気的構成を示す等価回路図である。
【図4】有機EL装置の画素構成の一例を示す平面図である。
【図5】有機EL装置の画素構成を示す断面図である。
【図6】画素スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス型液晶装置の電気的構成を示す等価回路図である。
【図7】半透過反射型の電気光学装置に用いた素子基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。
【図8】半透過反射型の電気光学装置の画素の断面図である。
【図9】本実施形態の電気光学装置を備えた電子機器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 半導体装置、10 TFT(半導体素子)、12、13 ソース・ドレイン領域、14 ゲート絶縁膜、15 ゲート電極、20、40 ソース・ドレイン電極、41 ITO層(上層電極)、50、104、244a 第1層間絶縁膜、60、244b 第2層間絶縁膜、100 アクティブマトリクス型液晶装置(電気光学装置)、110、250 素子基板(半導体装置)、200 有機EL装置(電気光学装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、半導体素子を備えた基板上に、異なる信号が印加される下層側導電膜および上層側導電膜が、ポリシラザン変性膜からなる層間絶縁膜を上下で挟むように形成された半導体装置において、
前記ポリシラザン変性膜は、膜内にアルキル基を含む有機ポリシラザン変性膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、前記有機ポリシラザン変性膜は、前記アルキル基としてメチル基を含んでいることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記有機ポリシラザン変性膜は、誘電率が3.5未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記基板上には、前記半導体素子として、半導体膜と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極と、第1層間絶縁膜と、該第1層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して前記半導体膜のソース領域およびドレイン領域に各々電気的に接続し、前記ゲート電極とは異なる信号が印加されるソース電極およびドレイン電極とを下層側から上層側に向けてこの順に備えた薄膜トランジスタが形成され、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の上層側には第2層間絶縁膜が形成されているとともに、当該第2層間絶縁膜の上層側には、当該第2層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの一方側の電極に電気的に接続し、他方側の電極とは異なる信号が印加される上層電極が形成されており、
前記第1層間絶縁膜および前記第2層間絶縁膜のうちの少なくとも一方が前記有機ポリシラザン変性膜からなる層間絶縁膜として構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に規定する半導体装置を素子基板として備えたアクティブマトリクス型電気光学装置であって、
前記素子基板には、マトリクス状に配置された多数の画素の各々に、前記薄膜トランジスタ、該薄膜トランジスタによって駆動制御される前記上層電極としての画素電極、該画素電極に積層された自発光素子の発光層、および当該発光層を前記画素電極との間に挟む対向電極が形成されていることを特徴とするアクティブマトリクス型電気光学装置。
【請求項6】
請求項5において、前記発光層からみて前記画素電極の側は、当該発光層が発する光に対して反射性を備え、
前記発光層からみて前記対向電極の側は、当該発光層が発する光に対して透過性を備えていることを特徴とするアクティブマトリクス型電気光学装置。
【請求項7】
請求項4に規定する半導体装置を素子基板として備えたアクティブマトリクス型電気光学装置であって、
前記素子基板には、マトリクス状に配置された多数の画素の各々に、前記薄膜トランジスタ、および該薄膜トランジスタによって駆動制御される前記上層電極としての画素電極を備え、
前記素子基板と、当該素子基板に対向配置された対向基板との間に液晶層が保持されていることを特徴とするアクティブマトリクス型電気光学装置。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載のアクティブマトリクス型電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
少なくとも、半導体素子を備えた基板上に、異なる信号が印加される下層側導電膜および上層側導電膜が、ポリシラザン変性膜からなる層間絶縁膜を上下で挟むように形成された半導体装置の製造方法において、
前記半導体素子および前記下層側導電膜を形成した後、
前記層間絶縁膜を形成する工程では、アルキル基を含む有機ポリシラザン溶液を前記基板上に塗布する塗布工程と、該塗布工程を行った前記基板を相対湿度が60%以上の雰囲気中に保持する加湿工程と、該加湿工程を行った前記基板を最高温度が400℃以下の加熱雰囲気中に保持する焼成工程とを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
少なくとも、半導体素子を備えた基板上に、異なる信号が印加される下層側導電膜および上層側導電膜が、ポリシラザン変性膜からなる層間絶縁膜を上層で挟むように形成された半導体装置の製造方法において、
前記半導体素子および前記下層側導電膜を形成した後、
前記層間絶縁膜を形成する工程では、アルキル基を含む有機ポリシラザン溶液を前記基板上に塗布する塗布工程と、該塗布工程を行った前記基板を最高温度が400℃以下の酸素含有の加熱雰囲気中に保持する焼成工程とを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10において、前記焼成工程における最高温度が350℃であることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−203121(P2006−203121A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15448(P2005−15448)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】