説明

半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法

【課題】ダイシング工程における半導体装置の歩留低下が抑制できる半導体ウェハ及び半導体装置を安価に提供することを目的とする。

【解決手段】基板1と、前記基板1上に形成され且つ素子形成領域2を有する化合物半導体層3と、前記素子形成領域2に形成された少なくとも1つの半導体素子と、を備える半導体装置であって、前記化合物半導体層3が、前記基板1上において選択的に形成された低結晶膜31と、前記基板1上に隣接して形成され且つ前記素子形成領域2を有する第1の化合物成長層32と、平面的に見て前記素子形成領域2を包囲するように前記低結晶膜31上に隣接して形成され且つ前記第1の化合物成長層32よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層33と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、半導体基板上に複数の素子形成領域及びダイシング領域が設けられた半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、高周波特性に優れ且つ低リーク電流な半導体装置として、Si(シリコン)基板と化合物半導層とを備える従来の半導体装置及びその製造方法を開示する。従来の半導体装置における化合物半導体層は、GaN(窒化ガリウム)、AlGaN(アルミ窒化ガリウム)等が用いられる。従来技術のように半導体ウェハがダイシングにより分割される場合、まず、化合物半導体層上における複数の素子形成領域間を分断するように、2本のトレンチ(溝)が形成される。次に、複数の素子形成領域に化合物半導体素子が形成される。次に、2本のトレンチに挟まれたダイシング領域に沿って化合物半導体層及び基板がダイシングされ、半導体ウェハが個別の半導体装置に分割される。
【0003】
従来技術によれば、ダイシング工程において発生するクラックやダメージが化合物半導体素子に伝達することが抑制され、半導体装置の歩留低下が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−272492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来技術における2本のトレンチは、化合物半導体層の表面からシリコン基板の内部に到達するように形成される。従って、トレンチが非常に深く(特許文献1[0028]段落)形成されなければならず、長時間の異方性エッチング処理が必要とされ、半導体装置の製造コストが増大されてしまう。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ダイシング工程における半導体装置の歩留低下が抑制できる半導体ウェハ及び半導体装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る半導体装置は、基板1と、前記基板1上に形成され且つ素子形成領域2を有する化合物半導体層3と、前記素子形成領域2に形成された少なくとも1つの半導体素子と、を備える半導体装置であって、前記化合物半導体層3が、前記基板1上において選択的に形成された低結晶膜31と、前記基板1上に隣接して形成され且つ前記素子形成領域2を有する第1の化合物成長層32と、平面的に見て前記素子形成領域2を包囲するように前記低結晶膜31上に隣接して形成され且つ前記第1の化合物成長層32よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層33と、を備えることを特徴とする。

また、上記課題を解決するために本発明に係る半導体ウェハは、基板1と、前記基板1上に形成され且つ複数の素子形成領域2を有する化合物半導体層3と、を備える半導体ウェハ100であって、前記化合物半導体層3が、前記基板1上において選択的に形成された低結晶膜31と、前記基板1上に隣接して形成され且つ前記複数の素子形成領域2を有する第1の化合物成長層32と、平面的に見て前記複数の素子形成領域2を包囲するように前記低結晶膜31上に隣接して形成され且つ前記第1の化合物成長層32よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層33と、を備えることを特徴とする。

また、上記課題を解決するために本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板1と、前記基板1上に形成され且つ素子形成領域2を有する化合物半導体層3と、前記素子形成領域2に形成された少なくとも1つの半導体素子と、を備える半導体装置の製造方法であって、前記基板1上に低結晶膜31が選択的に形成される第1の工程と、前記基板1上に第1の化合物成長層32が形成されるとともに、平面的に見て前記複数の素子形成領域2を包囲するように前記低結晶膜31上に前記第1の化合物成長層32よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層33が形成される第2の工程と、前記素子形成領域2に前記少なくとも1つの半導体素子が形成される第3の工程と、を備えることを特徴とする。

また、上記課題を解決するために本発明に係る半導体ウェハの製造方法は、基板1と、前記基板1上に形成され且つ複数の素子形成領域2を有する化合物半導体層3と、を備える半導体ウェハの製造方法であって、前記基板1上に低結晶膜31が選択的に形成される第1の工程と、前記基板1上に第1の化合物成長層32が形成されるとともに、平面的に見て前記複数の素子形成領域2を包囲するように前記低結晶膜31上に前記第1の化合物成長層32よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層33が形成される第2の工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法によれば、ダイシング工程における半導体装置の歩留低下が抑制できる半導体ウェハ及び半導体装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体ウェハの平面図(a)及び部分拡大図(b)である。
【図2】図1(b)におけるA−A断面における半導体ウェハの断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る半導体ウェハの製造方法及び半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体ウェハの製造方法及び半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の半導体装置及びその製造方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【実施例1】
【0011】
図1(a)は、本発明の実施例1に係る半導体ウェハ100の平面図である。図1(b)は、半導体ウェハ100の部分拡大平面図である。図2は、図1(b)におけるA−A断面における半導体ウェハ100の断面図である。
【0012】
(半導体装置の構成)
本発明に係る半導体ウェハ100は、基板1と、複数の素子形成領域2を有する化合物半導体層3と、低結晶膜31と、第1の化合物成長層32と、第2の化合物成長層33と、を備える。
また、本発明に係る半導体装置50は、基板1と、素子形成領域2を有する化合物半導体層3と、低結晶膜31と、第1の化合物成長層32と、を備える。
【0013】
基板1は、例えばSi(シリコン)、SiC(炭化シリコン)、GaN(窒化ガリウム)、又はサファイア等の材料からなる単結晶基板である。本実施例における基板1は、単結晶Siからなる。
【0014】
素子形成領域2は、化合物半導体層3における第1の化合物成長層32に含まれる領域であって、且つ、第2の化合物成長層33によって包囲される領域である。素子形成領域2は、アクティブ領域と換言されても良く、FET(Field Effect Transistor)或いはSBD(Schottky Barrier Diode)等の半導体素子が形成される領域である。
【0015】
化合物半導体層3は、基板1上に形成され且つ素子形成領域2を有する。さらに、化合物半導体層3は、低結晶膜31と、第1の化合物成長層32と、第2の化合物成長層33と、第1及び第2の主電極34、35と、制御電極36と、保護膜37と、を備える。
【0016】
低結晶膜31は、基板1上において選択的に形成される。低結晶膜31は、基板1と第2の化合物半成長層33との間に位置し、第2の化合物成長層33が形成されるための下地膜と換言されても良い。低結晶膜31は、非晶質(アモルファス)又は多結晶質であって、第2の化合物成長層33と化学的に結合される材料からなり、例えば、AlN(窒化アルミニウム)、TiN(窒化チタン)等の金属窒化物からなる。低結晶膜31に適用される材料は、化合物半導体層3の成長プロセスにおける高温度に曝されても結晶性が回復しにくい、高融点を有する材料が好ましい。一方、SiO2(酸化シリコン)のように、第1の化合物成長層32を選択成長又は横方向成長(ELO)させる材料又はSiのように低融点を有する材料は、低結晶膜31の材料として適用されない。本実施例における低結晶膜31は、非晶質のAlNからなる。
【0017】
第1の化合物成長層32は、基板1上に隣接して形成され且つ素子形成領域2を有する。さらに、第1の化合物成長層32は、バッファ層321と、キャリア走行層322と、キャリア供給層323と、二次元キャリアガス層324と、を備える。即ち、本実施例における素子形成領域2には、二次元キャリアガス層324をチャネルとする半導体素子が形成される。
【0018】
バッファ層321は、基板1とキャリア走行層322との間に生じる格子不整合及び格子不整合に起因する応力を緩和するために形成される。バッファ層321は、基板1上に形成され、例えばGaN層及びAlN層を繰り返し積層した構造を有する。バッファ層321は、半導体素子の動作に直接関係しないので、省略されても良い。キャリア走行層322とキャリア供給層323とは、これらのヘテロ接合界面付近に二次元キャリアガス層324を生成するために形成される。キャリア走行層322は、例えばノンドープのGaNで形成される。ここで、ノンドープとは、不純物が意図的に添加されないことを意味する。キャリア供給層323は、キャリア走行層322よりも大きいバンドギャップを有し、且つ、キャリア走行層322よりも小さい格子定数を有する。キャリア供給層323は、例えばノンドープのAlxGa1−xN(アルミ窒化ガリウム)で形成される。ここで、例えばxは0.2以上0.4以下の範囲にある数値であって、本実施例においては0.26である。なお、キャリア供給層323上にキャップ層としてGaN層が形成されても良い。
【0019】
本実施例における第1及び第2の主電極34、35は、ソース電極34及びドレイン電極35であって、キャリア供給層323上において、互いに離間するように、且つ、二次元キャリアガス層324にオーミック接続するように形成される。或いは、ソース電極34及びドレイン電極35は、キャリア走行層322上に形成されても良い。ゲート電極36は、二次元キャリアガス層324のキャリア濃度を制御するためのものである。ゲート電極36は、電子供給層323上においてソース電極34とドレイン電極35との間に形成される。保護膜37は、化合物半導体層3及び各電極上に形成され、半導体素子を機械的、電気的に外部から保護する。即ち、本実施例において素子形成領域2に形成される半導体素子は、二次元電子ガス層(二次元キャリアガス層324)をチャネルとするHEMT(High Electron Mobility Transistor)である。なお、本実施例に係る半導体装置50は、1の素子形成領域2に1の半導体素子が形成されるが、1の素子形成領域2に複数の及び/又は異種の半導体素子が形成されても良い。
【0020】
第2の化合物成長層33は、断面的に見て、低結晶膜31上に隣接して形成される。さらに、第2の化合物成長層33は、第1の化合物成長層32を構成する半導体材料よりも低い結晶性を有する半導体材料からなる。本実施例における第2の化合物成長層33は、平面的に見て、図中のX及びY方向に直線的に延伸し、且つ、素子形成領域2を包囲するように形成され、例えば、第1の化合物成長層32を構成する半導体材料を含むように、非晶質又は多結晶のGaN及びAlGaNからなる。或いは、第2の化合物成長層33は、第1の化合物成長層32よりも多数の結晶欠陥が含まれるように形成されても良い。本実施例における第2の化合物成長層33は、説明の便宜上、単一の半導体層として記載されるが、詳細には第1の化合物成長層と同様の積層構造を有すると理解されたい。また、第2の化合物成長層33は、第1の領域331と第2の領域332とを有する。第1の領域331は、第2の化合物成長層33の中心付近に設けられる領域である。第1の領域331は、半導体ウェハ100が複数の半導体装置50に分割される際、ダイシング領域として利用され、ダイシングブレードによって切断及び除去される領域である。従って、第1の領域331の幅は、ダイシングブレードの幅よりも広く、例えば20〜60μm程度に形成される。第2の領域332は、素子形成領域2と第1の領域331との間に設けられる領域である。
【0021】
(半導体装置の製造方法)
図3は、本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法を示す工程断面図である。
本発明に係る半導体ウェハの製造方法は、基板1上に低結晶膜31が形成される第1の工程と、第1の化合物成長層32及び第2の化合物成長層33が形成される第2の工程と、を備える。
また、半導体装置の製造方法は、基板1上に低結晶膜31が形成される第1の工程と、第1の化合物成長層32及び第2の化合物成長層33が形成される第2の工程と、素子形成領域2に半導体素子が形成される第3の工程と、を備える。
【0022】
まず、図3(a)に示すように、例えば、単結晶シリコンからなる基板1の表面上にAr(アルゴン)及びN2(窒素)が供給されながらAlをターゲットとした反応性スパッタリングが施されることで、基板1上に非晶質(アモルファス)のAlNからなる低結晶材料膜31aが形成される。低結晶材料膜31aは、AlNをターゲットとしたスパッタリングによって形成されても良い。一般的に低結晶材料膜は、単結晶材料膜よりも容易に形成される。或いは、その他の製造方法として、周知のMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)が適用されても良い。基板1の温度が400〜600℃程度に保たれるとともに、基板1にTMA(トリメチルアルミニウム)、及びNH3(アンモニア)が適宜供給されることで、低結晶材料膜31aが形成される。低結晶材料膜31aは、例えば10〜200nm程度の厚さに形成される。
【0023】
次に、図3(b)に示すように、SiO2からなるマスク42が低結晶材料膜31a上に形成される。マスク42は、所定の開孔41を有するように周知のフォトリソグラフィ及びエッチングによって形成される。例えば、SiO2膜上に開孔41を形成するためのパターンを有するフォトレジスト(図示されない)が形成され、フォトレジスト上からF(フッ素)を含むガスによるRIE(Reactive Ion Etching)等の異方性エッチングが施され、その後にフォトレジストが除去される。マスク42は、低結晶材料膜31a上の低結晶膜31が形成される領域に形成され、それ以外の領域における低結晶材料膜31aは露出される。
【0024】
次に、図3(c)に示すように、基板1上に低結晶膜31が形成される。低結晶膜31は、マスク42を介して低結晶材料膜31a上にRIE等の異方性エッチングが施され、低結晶材料膜31aの一部がエッチングされることで形成される。
図3(a)、(b)及び(c)に示される製造工程は、本発明に係る第1の工程と換言される。
【0025】
次に、図3(d)に示すように、基板1上に、化合物半導体層3が形成される。即ち、基板1上にバッファ層321、キャリア走行層322及びキャリア供給層323からなる第1の化合物成長層32が形成されるとともに、低結晶膜31上に第2の化合物成長層33が形成される。第1の化合物成長層32及び第2の化合物成長層33は、低結晶膜31が形成された基板1が、MOCVD装置のチャンバ内に配置され、TMA、TMG(トリメチルガリウム)及びNH3がチャンバ内に適宜供給されることで形成される。本実施例において、バッファ層321の厚さは2μm、キャリア走行層322の厚さは3.2μm、キャリア供給層323の厚さは25nmに形成され、二次元キャリアガス層324がキャリア走行層322内に生成される。この工程において、第1の化合物成長層32は、基板1を構成する単結晶シリコンの結晶性を引き継いで成長するため、特にキャリア走行層322及びキャリア供給層323は、結晶欠陥が比較的少なく良好な結晶性を有する。また、第2の化合物成長層33は、低結晶膜31を構成する非晶質AlNの結晶性を引き継いで成長するため、第1の化合物成長層32よりも低い結晶性を有する。
【0026】
図3(d)に示される製造工程は、本発明に係る第2の工程と換言される。また、第2の工程を行った結果、第1の化合物成長層32及び第2の化合物成長層33の表面が凹凸を有する場合、CMP(Chemical Mechanical Polishing)又はエッチバックのような平坦化工程が第2の工程に含まれても良い。
【0027】
次に、図3(e)に示すように、化合物半導体層3上に所定の開孔43を有するマスク44が形成され、金属膜45が形成される。マスク44及び開孔43は、前述のマスク42及び開孔41と同様に形成される。開孔43は、ソース電極34及びドレイン電極35が形成される領域に形成される。マスク44上からTi(チタン)及びAl(アルミニウム)をターゲットとしたスパッタリングが施され、Ti及びAlの積層構造を有する金属膜45が形成される。ソース電極34及びドレイン電極35以外の金属膜45は、リフトオフ法により除去される。
【0028】
次に、図3(f)に示すように、化合物半導体層3上に所定の開孔46を有するマスク47が形成され、金属膜48が形成される。マスク47及び開孔46は、前述のマスク42及び開孔41と同様に形成される。開孔46は、ゲート電極36が形成される領域に形成される。マスク47上からNi(ニッケル)及びAu(金)をターゲットとしたスパッタリングが施され、Ni及びAuの積層構造を有する金属膜45が形成される。ゲート電極36以外の金属膜45は、リフトオフ法により除去される。
【0029】
次に、図3(g)に示すように、化合物半導体層3上に保護膜37が形成される。保護膜37は、例えばSiO2からなり、化合物半導体層3上に周知のCVD法を施すことで得られる。
図3(e)、(f)及び(g)に示される製造工程は、本発明に係る第3の工程と換言される。
【0030】
次に、図3(h)に示すように、第2の化合物成長層33における第1の領域331をダイシング領域として、半導体ウェハ100が複数の半導体素子(半導体装置50)に分割される。第1の領域331を構成する第2の化合物成長層33及び基板1の一部は、化合物半導体層3の表面から裏面に向かってダイシングブレードにより切断及び除去される。この工程において、第2の化合物成長層33における第2の領域332は切断されないため、ダイシングによる切断面と半導体素子との間には、少なくとも第2の化合物成長層33の一部が残存する。
図3(h)に示される製造工程は、本発明に係る第4の工程と換言される。
【0031】
前述のように構成された本実施例に係る半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法によって得られる効果について説明する。
本実施例に係る半導体装置及び半導体ウェハは、低結晶膜31と、非晶質又は多結晶の半導体材料から構成される第2の化合物成長層33と、を備える。また、第2の化合物成長層33は、第1の化合物成長層32よりも結晶性が低く結晶結合強度が弱い。また、その中心付近にはダイシング領域としての第1の領域331が設けられる。
【0032】
半導体ウェハ100から半導体装置50が分割されるダイシング工程において、物理的強度が低い第1の領域331が切断及び除去されるため、第1の化合物成長層32のように結晶性が高い半導体層が切断される場合に比べ、クラック及びダメージの発生が抑制される。さらに、ダイシングブレードの損傷が軽減されるため、ダイシングブレードとして低硬度且つ安価なSi用ブレードを用いることができる。従って、本実施例に係る半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法によれば、ダイシング工程における歩留低下が抑制される半導体ウェハ及び半導体装置が安価に提供される。
【0033】
また、第1の領域331と素子形成領域2との間に第2の領域332が設けられるため、ダイシング工程において発生するクラック及びダメージが、第2の領域332により緩和され、素子形成領域2に伝達されることが抑制される。従って、ダイシング工程における半導体装置の歩留低下が抑制できる。
【0034】
また、本実施例に係る半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法によれば、低結晶膜31及び第2の化合物成長層33は、周知の製造技術を組み合わせることで形成できる。従って、前述のようなダイシング領域が従来の製造方法に比べ簡易な製造方法で得られるため、歩留低下が抑制される半導体ウェハ及び半導体装置が安価に提供される。
【0035】
また、基板1上に化合物半導体層3が形成される場合、化合物半導体層3がヘテロエピタキシャル成長するため、半導体ウェハ100には基板1と化合物半導体層3との熱膨張率の差に起因する応力が生じ、反りやクラックが発生する懸念がある。しかし、本実施例に係る半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法によれば、素子形成領域2の周囲に形成される第2の化合物成長層33は、前述の応力を緩和し、反り及びクラックの発生を抑制することができ、半導体ウェハ及び半導体装置の歩留が改善される。
【0036】
また、第2の化合物成長層33は、結晶性が低く電気的に高抵抗な領域であるため、半導体装置50の終端領域として機能する。即ち、半導体装置50の動作時、半導体装置50の切断面を介して流れるリーク電流が抑制される。また、1の素子形成領域2に複数の及び/又は異種の半導体素子が形成される場合、第2の化合物成長層33は、各半導体素子間の素子分離領域としても機能する。従って、本実施例に係る半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法によれば、半導体装置の電気特性が改善される。なお、第2の化合物成長層33が、半導体装置50における各半導体素子間の素子分離領域としてのみ形成されても、半導体装置の電気特性が改善される。
【実施例2】
【0037】
図4は、本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法を示す工程断面図である。
本実施例に係る半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法は、基板1上に低結晶膜31が形成される第1の工程において、異方性エッチングに替わりリフトオフ法が用いられる点で実施例1における半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法と異なり、その他は同様の製造方法が用いられる。
【0038】
まず、図4(a)に示すように、単結晶シリコンからなる基板1上に、所定の開孔41’を有しSiO2からなるマスク42’が形成される。本実施例におけるマスク42’は、実施例1におけるマスク42及び開孔41と同様に、フォトリソグラフィ及びエッチングによって形成される。マスク42’は、基板1上の低結晶膜31が形成される領域に形成され、それ以外の領域における基板1は露出される。
【0039】
次に、図4(b)に示すように、基板1及びマスク42’上に低結晶材料膜31bが形成される。本実施例における低結晶材料膜31bは、実施例1における低結晶材料膜31aと同様に、MOCVD又はスパッタリングによって形成される。
【0040】
次に、図4(c)に示すように、基板1上に低結晶膜31が形成される。低結晶膜31は、マスク42’上に形成された低結晶膜31bがマスク42’と同時に除去(リフトオフ)されることで形成される。マスク42’は、例えばフッ酸系のエッチング液を用いたウェットエッチングにより除去される。図4(c)に示す構造は、実施例1の図3(c)に示す構造と実質的に同一である。従って、低結晶膜31を形成するためにリフトオフ法を用いることができる。
【0041】
本実施例に係る半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法によれば、実施例1に係る半導体装置、半導体ウェハ、半導体装置の製造方法及び半導体ウェハの製造方法と同様の効果が得られる。
【0042】
(変形例)
以上、本発明の実施例の一例について説明したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、低結晶膜31を構成する材料は、前述の材料に限定されず、非晶質(アモルファス)又は多結晶質であって、第2の化合物成長層33と化学的に結合される材料が適用される。また、低結晶膜31は前述の単層構造に限定されず、多層構造であっても良い。また、半導体素子として、二次元ホールガス層をチャネルとするHEMTの他、MOS(Metal Oxide Semiconductor)FET、SBD或いはこれらの複合素子が形成されても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 基板
2 素子形成領域
3 化合物半導体層
31 低結晶膜
32 第1の化合物成長層
33 第2の化合物成長層
34 ソース電極
35 ドレイン電極
36 ゲート電極
37 保護膜
321 バッファ層
322 キャリア走行層
323 キャリア供給層
324 二次元キャリアガス層
331 第1の領域(ダイシング領域)
332 第2の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成され且つ素子形成領域を有する化合物半導体層と、前記素子形成領域に形成された少なくとも1つの半導体素子と、を備える半導体装置であって、前記化合物半導体層が、前記基板上において選択的に形成された低結晶膜と、前記基板上に隣接して形成され且つ前記素子形成領域を有する第1の化合物成長層と、平面的に見て前記素子形成領域を包囲するように前記低結晶膜上に隣接して形成され且つ前記第1の化合物成長層よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層と、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2の化合物成長層が、ダイシング領域として切断される第1の領域と、前記第1の領域と前記素子形成領域との間に配設される第2の領域と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記低結晶膜が、非晶質又は多結晶の半導体膜又は金属窒化膜からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記化合物半導体層が、三族窒化物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板が、単結晶のSi又はSiCからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
基板と、前記基板上に形成され且つ複数の素子形成領域を有する化合物半導体層と、を備える半導体ウェハであって、前記化合物半導体層が、前記基板上において選択的に形成された低結晶膜と、前記基板上に隣接して形成され且つ前記複数の素子形成領域を有する第1の化合物成長層と、平面的に見て前記複数の素子形成領域を包囲するように前記低結晶膜上に隣接して形成され且つ前記第1の化合物成長層よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層と、を備えることを特徴とする半導体ウェハ。
【請求項7】
基板と、前記基板上に形成され且つ素子形成領域を有する化合物半導体層と、前記素子形成領域に形成された少なくとも1つの半導体素子と、を備える半導体装置の製造方法であって、前記基板上に低結晶膜が選択的に形成される第1の工程と、前記基板上に第1の化合物成長層が形成されるとともに、平面的に見て前記複数の素子形成領域を包囲するように前記低結晶膜上に前記第1の化合物成長層よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層が形成される第2の工程と、前記素子形成領域に前記少なくとも1つの半導体素子が形成される第3の工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2の化合物成長層が、ダイシング領域として切断される第1の領域と、前記第1の領域と前記素子形成領域との間に配設される第2の領域と、を有し、前記第1の領域が切断される第4の工程を備えることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記低結晶膜が、非晶質又は多結晶の半導体膜又は金属窒化膜からなることを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記化合物半導体層が、三族窒化物からなることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記基板が、単結晶のSi又はSiCからなることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板と、前記基板上に形成され且つ複数の素子形成領域を有する化合物半導体層と、を備える半導体ウェハの製造方法であって、前記基板上に低結晶膜が選択的に形成される第1の工程と、前記基板上に第1の化合物成長層が形成されるとともに、平面的に見て前記複数の素子形成領域を包囲するように前記低結晶膜上に前記第1の化合物成長層よりも低い結晶性を有する第2の化合物成長層が形成される第2の工程と、を備えることを特徴とする半導体ウェハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−171639(P2011−171639A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35949(P2010−35949)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】