説明

半導体装置、及び、半導体装置の製造方法

【課題】 窒化物半導体に対するコンタクト抵抗が低い電極を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 窒化物半導体層上に炭素を含有する炭素含有層を形成する炭素含有層形成工程S4と、炭素含有層上にチタンを含有するチタン含有層を形成するチタン含有層形成工程S6を有する半導体装置の製造方法。チタン含有層と窒化物半導体層との間にTiNとTiCの全率固溶体Ti(C,N)の層が形成される。これにより、チタン含有層が、その境界部全体で窒化物半導体層に対してオーミック接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体層に対してオーミック接続された電極を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、GaN層に対してオーミック接続される電極の材料には、一般に、Tiが用いられる。この電極を形成する際には、一般に、GaN層上にTi層が形成され、その後、半導体基板が熱処理される。半導体基板が熱処理されると、Ti層とGaN層との境界部にTiN層が形成される。TiN層は、GaN層に対して良好なオーミック性を示す。これによって、Ti層は、GaN層に対するオーミック電極となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−190749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電極形成方法では、Ti層とGaN層との境界部にアイランド状にTiN層が形成される。すなわち、Ti層とGaN層との境界部全体にはTiN層が形成されず、その境界部に部分的にTiN層が形成される。これは、熱処理時にTi層とGaN層の境界部においてTiNが偏析するためである。このように、Ti層とGaN層の境界部にアイランド状にTiN層が形成されると、Ti層とGaN層の間のコンタクト抵抗が大きくなる。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みて創作されたものであり、窒化物半導体に対するコンタクト抵抗が低い電極を有する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置の製造方法は、炭素含有層形成工程と、チタン含有層形成工程を有する。炭素含有層形成工程では、窒化物半導体層上に炭素を含有する炭素含有層を形成する。チタン含有層形成工程では、炭素含有層上にチタンを含有するチタン含有層を形成する。
【0007】
炭素含有層上にチタン含有層を形成すると、窒化物半導体層中のNと、炭素含有層中のCと、チタン含有層中のTiによって、TiNとTiCの全率固溶体であるTi(C,N)が形成される。Ti(C,N)は、窒化物半導体層に対して良好なオーミック性を示す。また、Ti(C,N)は全率固溶体であるため、偏析し難い。このため、チタン含有層は、窒化物半導体層と広い範囲でオーミック接続される。したがって、チタン含有層と窒化物半導体層の間のコンタクト抵抗が、従来の電極に比べて低くなる。この製造方法によれば、従来の電極よりも窒化物半導体層に対するコンタクト抵抗が低い電極(すなわち、チタン含有層)を有する半導体装置が得られる。
【0008】
上述した製造方法は、チタン含有層形成工程後に、半導体基板を加熱するアニール工程をさらに有していてもよい。
チタン含有層形成工程後にアニール工程を実施すると、窒化物半導体層とチタン含有層の間のコンタクト抵抗がさらに低くなる。これは、アニール工程によって、窒化物半導体層中のN、炭素含有層中のC、及び、チタン含有層中のTiから全率固溶体Ti(C,N)が生成される反応が促進されるためであると考えられる。
【0009】
また、本発明は、窒化物半導体層に対するコンタクト抵抗が低い電極を有する半導体装置を提供する。この半導体装置は、窒化物半導体層と、全率固溶体層と、チタン含有層を有する。全率固溶体層は、窒化物半導体層上に形成されており、炭化チタンと窒化チタンの全率固溶体からなる。チタン含有層は、全率固溶体層上に形成されており、チタンを含有する。
【0010】
この半導体装置では、チタン含有層が全率固溶体層を介して窒化物半導体層に接続されているので、チタン含有層と窒化物半導体層の間のコンタクト抵抗が低い。チタン含有層は、窒化物半導体層に対する良好なオーミック電極となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の半導体装置の製造方法における電極を形成する工程を示すフローチャート。
【図2】C層12形成後におけるn型GaN層10の表面近傍の断面図。
【図3】Ti層14形成後におけるn型GaN層10の表面近傍の断面図。
【図4】従来の方法により形成した電極の電流−電圧特性を示すグラフ。
【図5】実施例1及び実施例2の方法により形成した電極の電流−電圧特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
実施例に係る半導体装置の製造方法について説明する。なお、本製造方法は、電極を形成する工程に特徴を有するので、その他の工程(半導体基板内に各種の領域を形成する工程等)については説明を省略する。
【実施例1】
【0013】
実施例1の製造方法では、図1のフローチャートに従って、半導体基板の表面に電極を形成する。本実施例では、半導体基板のうち、n型のGaN層の表面に電極を形成する。ステップS2では、半導体基板の表面をスパッタクリーニングする。ステップS4では、図2に示すように、スパッタリングにより、n型のGaN層10の表面に炭素からなるC層12を形成する。ステップS6では、スパッタリングにより、C層12の表面にチタンからなるTi層14を形成する。ステップS6でTi層14を形成すると、図3に示すように、Ti層14とGaN層10の間に、TiCとTiNの全率固溶体であるTi(C,N)の層16が形成される。これは、Ti層14中のTiと、C層12中のCと、GaN層10中のNが、Ti層14のスパッタリング時に生じる熱により反応するためであると考えられる。ステップS6で形成されたTi層14が、半導体装置の電極となる。
【0014】
なお、ステップS4、S6では、電極を形成すべき範囲に選択的にC層12及びTi層14を形成する。C層12及びTi層14は、従来公知の技術により、選択的に形成することができる。また、ステップS6では、Ti層14を、ステップS4で形成したC層12よりも厚く形成する。
【0015】
Ti層14を形成すると、Ti層14とGaN層10の間でコンタクト抵抗が低いオーミック接続が得られる。これは、以下のように考えられる。n型のGaNの仕事関数は約3.1eVである。一方、TiCの仕事関数は約3.5eVであり、TiNの仕事関数は約3.75eVであり、TiC及びTiNは何れもn型のGaNよりも高い仕事関数を有する。このため、TiC及びTiNは、n型のGaNに対してオーミック性を有する。したがって、TiCとTiNの全率固溶体であるTi(C,N)も、n型のGaNに対してオーミック性を有する。また、Ti(C,N)は全率固溶体であるので、偏析し難い。したがって、ステップS6において、Ti(C,N)層16が、Ti層14とGaN層10の間に均一に形成される。このため、ステップS6で形成されたTi層14は、GaN層10との境界部の全体に亘って、GaN層10とオーミック接続される。このため、GaN層に対してアイランド状にオーミック接続される従来の電極に比べて、Ti層14はGaN層に対するコンタクト抵抗が低い。
【0016】
図4は、従来の方法(すなわち、n型GaN層上に直接、Ti層を形成し、その後、半導体基板をアニールする方法)によりTi層を形成した場合における、Ti層とn型GaN層の間の電流−電圧特性を示している。また、図5のグラフA1は、実施例1の製造方法により形成したTi層14とn型GaN層10の間の電流−電圧特性を示している。図4及び5を比較することで明らかなように、実施例1の製造方法により形成されたTi層14は、従来技術により形成されたTi層に比べて、コンタクト抵抗が低い。したがって、実施例1の製造方法により形成されたTi層14は、良好なオーミック電極となる。
【実施例2】
【0017】
次に実施例2の半導体装置の製造方法について説明する。実施例2の製造方法では、実施例1の製造方法と同様に、ステップS2〜S6を実施する。さらに、実施例2の製造方法では、ステップS6の後に、半導体基板をアニール処理する。アニール処理では、半導体基板を約873Kの温度に約300秒間保持する。
【0018】
図5のグラフA2は、実施例2の製造方法により形成したTi層14とn型GaN層10の間の電流−電圧特性を示している。図5に示すように、半導体基板をアニール処理することで、Ti層14のGaN層10に対するコンタクト抵抗がさらに低くなる。実施例2の製造方法によれば、よりコンタクト抵抗が低い電極を有する半導体装置を製造することができる。
【0019】
以上に説明したように、実施例1及び実施例2の製造方法によれば、従来に比べてn型GaN層10に対するコンタクト抵抗が低い電極(すなわち、Ti層14)を有する半導体装置を製造することができる。また、実施例1の製造方法によれば、Ti層14形成後に半導体基板をアニールしなくても、Ti層14とGaN層10がオーミック接続される。したがって、従来に比べて高い製造効率で半導体装置を製造することができる。また、実施例2の製造方法によれば、実施例1よりもさらにコンタクト抵抗が低い電極を有する半導体装置を製造することができる。
【0020】
また、上述した実施例1及び実施例2では、ステップS6において、Ti層14をC層12より厚く形成した。Ti層14をC層12より厚く形成することで、C層12の全体を反応させて、GaN層10とTi層14の間全体にTi(C,N)層16を形成することができる。すなわち、GaN層10とTi層14の間にC層12が残存することが防止される。これによって、Ti層14のコンタクト抵抗をより低減させることができる。
【0021】
なお、上述した実施例1及び実施例2では、スパッタリングによりC層12を形成したが、蒸着等によりC層12を形成してもよい。また、実施例1及び実施例2では、スパッタリングによりTi層14を形成したが、蒸着等によりTi層14を形成してもよい。実施例1及び実施例2において、蒸着によりTi層14を形成しても、低いコンタクト抵抗が得られる。
【0022】
また、上述した実施例1及び実施例2では、Ti層14が最表面に露出していたが、Ti層14上に他の金属層(例えば、Al,Ni,Au等)を形成し、電極を多層構造としてもよい。
【0023】
また、実施例1及び実施例2の製造方法は、種々の半導体装置の製造に用いることができる。例えば、LEDや、GaN系パワーデバイス(ダイオード、トランジスタ等)の製造に用いることができる。
【0024】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0025】
10:n型GaN層
12:C層
14:Ti層
16:Ti(C,N)層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体層上に炭素を含有する炭素含有層を形成する炭素含有層形成工程と、
炭素含有層上にチタンを含有するチタン含有層を形成するチタン含有層形成工程、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
チタン含有層形成工程後に、半導体基板を加熱するアニール工程をさらに有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
窒化物半導体層と、
窒化物半導体層上に形成されており、炭化チタンと窒化チタンの全率固溶体からなる全率固溶体層と、
全率固溶体層上に形成されており、チタンを含有するチタン含有層、
を有する半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−77428(P2011−77428A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229381(P2009−229381)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】