説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ボンディングワイヤが接続された半導体チップを一対の放熱板によって挟んでなる半導体装置において、厚さ確保用のブロックを用いずに両放熱板の対向間隔を狭くしても、ボンディングワイヤ側に位置する放熱板と当該ワイヤとの接触を回避する。
【解決手段】ボンディングワイヤ8を、半導体チップ1の一面から離れる方向に凸となったループ状をなすものとし、第1の放熱板3における半導体チップ1の一面と対向する対向面3aを、ボンディングワイヤ8の頂部8aよりも半導体チップ1の一面に近くに位置させ、第1の放熱板3の対向面3aのうちボンディングワイヤ8に対向する部位を開口した開口部3dとし、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位を、第1の放熱板3とは離れた状態で開口部3dに入り込ませている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングワイヤが接続された半導体チップを一対の放熱板によって挟んでなる半導体装置、および、そのような半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の半導体装置としては、半導体チップの一面側に第1の放熱板を設け、半導体チップの一面とは反対側の他面側に第2の放熱板を設け、これら両放熱板により半導体チップを挟むとともに、半導体チップの一面にボンディングワイヤを接続してなるものが提案されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ここで、ボンディングワイヤは、半導体チップの一面から離れる方向、すなわち半導体チップの一面から第1の放熱板に向かう方向に凸となったループ状をなしている。そこで、従来では、ワイヤの頂部側と第1の放熱板との接触を回避して、ワイヤの高さを確保するために、半導体チップの一面と第1の放熱板との間に、厚さを確保するためのブロックを介在して配置させている。
【特許文献1】特許第3599057号公報
【特許文献2】特開2005−136018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置においては、体格の小型化が要望されているが、体格の小型化のためには、上記厚さ確保用のブロックをなくすことが考えられる。しかし、この場合、ボンディングワイヤと第1の放熱板とが接触しやすくなり、ボンディングワイヤの高さの確保が困難になる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ボンディングワイヤが接続された半導体チップを一対の放熱板によって挟んでなる半導体装置において、厚さ確保用のブロックを用いずに両放熱板の対向間隔を狭くしても、ボンディングワイヤ側に位置する放熱板と当該ワイヤとの接触を回避できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ボンディングワイヤ(8)を、半導体チップ(1)の一面から離れる方向に凸となったループ状をなすものとし、第1の放熱板(3)における半導体チップ(1)の一面と対向する対向面(3a)を、ボンディングワイヤ(8)の頂部(8a)よりも半導体チップ(1)の一面に近くに位置させ、第1の放熱板(3)の対向面(3a)のうちボンディングワイヤ(8)に対向する部位に開口した開口部(3d)を設け、ボンディングワイヤ(8)の頂部(8a)側の部位を、第1の放熱板(3)とは離れた状態で開口部(3d)に入り込ませたことを特徴としている。
【0007】
それによれば、厚さ確保用のブロックを用いずに第1の放熱板(3)と第2の放熱板(4)との対向間隔を狭くしても、ボンディングワイヤ(8)側に位置する第1の放熱板(3)と当該ワイヤ(8)との接触を回避することができる。
【0008】
ここで、請求項2に記載の発明のように、開口部(3d)を、第1の放熱板(3)の対向面(3a)側から第1の放熱板(3)の厚さ方向に貫通する切り欠きもしくは穴であるものにできる。
【0009】
また、このとき、請求項3に記載の発明のように、第1の放熱板(3)における対向面(3d)とは反対の面側に、外部に放熱を行う放熱面(3b)を設け、ボンディングワイヤ(8)の頂部(8a)側の部位を、開口部(3d)に入り込ませているが、第1の放熱板(1)における対向面(3a)と放熱面(3b)との間に留めたものにできる。
【0010】
それによれば、第1の放熱板(3)の放熱面(3b)に、外部の冷却部材(K)を接触させるときに、当該冷却部材(K)がボンディングワイヤ(8)に接触することがなくなり、好ましい。
【0011】
また、請求項4に記載の発明のように、開口部(3d)を、第1の放熱板(3)の対向面(3a)よりも当該第1の放熱板(3)の厚さ方向に凹んだものとしてもよい。
【0012】
また、請求項5に記載の発明では、半導体チップ(1)の一面と第1の放熱板(3)とを、はんだ(5a)を介して接合し、半導体チップ(1)の一面のうちの周辺部の全周に、半導体チップ(1)の一面と他面との電気絶縁性を確保するための絶縁材料よりなる耐圧保持部(1a)を設け、この耐圧保持部(1a)の少なくとも一部を半導体チップ(1)の一面上に突出した突出部(1b)とし、この突出部(1b)を、半導体チップ(1)の一面と第1の放熱板(3)との間に介在するはんだ(5a)の厚さを保持するスペーサとして構成したことを特徴としている。
【0013】
このように、半導体チップ(1)の一面と第1の放熱板(3)とを、はんだ(5a)を介して接合した場合には、第1の放熱板(3)と第2の放熱板(4)との対向間隔を狭くした構成では、もし、当該はんだ(5a)の厚さが薄かったり、両放熱板が傾いて組み付けられたりすると、当該はんだ(5a)のクラックが発生するおそれがある。さらに、対向する放熱板(3、4)の間が狭くなると、冶具を使用しても、当該はんだ(5a)の厚さの管理が難しいものとなる。
【0014】
このような点を考慮して、さらに請求項5の発明では、半導体チップ(1)の一面のうちの周辺部の全周に設けられている半導体チップ(1)の一面と他面との電気絶縁性を確保するための耐圧保持部(1a)を利用し、この耐圧保持部(1a)の少なくとも一部を、半導体チップ(1)の一面上に突出した突出部(1b)とし、当該突出部(1b)を、はんだ(5a)の厚さを保持するスペーサとして構成している。
【0015】
そのため、両放熱板(3、4)の対向間隔を狭くしても、半導体チップ(1)の一面と第1の放熱板(3)との間のはんだ(5a)の厚さを確保できるので当該対向間隔を精度よく保持しやすくなる。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明のように、第1の放熱板(3)側だけでなく、半導体チップ(1)の他面と第2の放熱板(4)とも、はんだ(5b)を介して接合した場合には、半導体チップ(1)の他面のうち、半導体チップ(1)の一面に設けられている突出部(1b)と同じ位置に、半導体チップ(1)の他面と第2の放熱板(4)との間に介在するはんだ(5b)の厚さを保持する電気絶縁性のスペーサ(1c)を設けてもよい。
【0017】
それによれば、第2の放熱板(4)側のはんだ(5b)についても、はんだ厚さを精度良く確保できる。また、半導体チップ(1)の両面にて同じ位置に、スペーサを設けることになるため、半導体チップ(1)の反りを抑制する点で好ましい。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、上記請求項2に記載の半導体装置のように、開口部(3d)を第1の放熱板(3)の厚さ方向に貫通する切り欠きもしくは穴とした半導体装置を製造する半導体装置の製造方法である。
【0019】
すなわち、本製造方法においては、開口部(3d)が形成された第1の放熱板(3)を半導体チップ(1)の一面側に設け、第2の放熱板(4)を半導体チップ(1)の他面側に設け、これら両放熱板(3、4)により半導体チップ(1)を挟んだ後、第1の放熱板(3)の開口部(3d)を介して半導体チップ(1)の一面にボンディングワイヤ(8)を接続することを特徴とする。
【0020】
上記請求項2のように、開口部(3d)が第1の放熱板(3)の厚さ方向に貫通するものである場合には、両放熱板(3、4)で半導体チップ(1)を挟んだ後であっても、当該開口部(3d)上に半導体チップ(1)が露出するので、その露出部分にワイヤボンディングを行うことができる。
【0021】
そのため、本製造方法によれば、上記請求項2の半導体装置を適切に製造できるとともに、ボンディングワイヤ(8)を半導体チップ(1)に接続しない状態で、半導体チップ(1)と両放熱板(3、4)との組み付けが可能になり、当該組み付けの簡略化が期待できる。
【0022】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置100の概略構成を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は同半導体装置100のA−A一点鎖線に沿った概略断面図である。この半導体装置100は、たとえば自動車などの車両に搭載され、車両用電子装置を駆動するための装置として適用されるものである。
【0025】
図1に示されるように、本半導体装置100は、平面的に配置された2個の半導体素子1、2を備える。本例では、第1の半導体素子1はIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)1であり、第2の半導体素子2は、FWD(フライホイールダイオード)2である。
【0026】
このIGBT1は、本半導体装置100における半導体チップとして構成されているものであり、公知の半導体プロセスにより形成されるものである。IGBT1は、シリコン半導体などよりなり、ここでは矩形板状をなす。
【0027】
そして、これら両半導体素子1、2の両面は、当該半導体素子1、2の電極および放熱部材として機能する一対の放熱板3、4にて挟まれている。これら放熱板3、4は、銅合金もしくはアルミ合金等の熱伝導性および電気伝導性に優れた金属によって構成されており、図1に示されるように、実質的に矩形板状をなす。
【0028】
ここで、一対の放熱板3、4のうち第1の放熱板3は、IGBT1の一面(図1(b)中の上面)側に設けられ、第2の放熱板4は、IGBT1の一面とは反対側の他面(図1(b)の下面)側に設けられている。それにより、両放熱板3、4は、半導体素子1、2を挟むように対向して配置されている。
【0029】
そして、IGBT1の一面と第1の放熱板3との間、IGBT1の他面と第2の放熱板4との間は、それぞれ第1のはんだ5a、第2のはんだ5bによって電気的・熱的に接続されている。また、図示しないが、FWD2と両放熱板3、4との間も、IGBT1と同様に、はんだを介して接続されている。
【0030】
ここで、はんだ5a、5bとしては、特に限定されるものではないが、鉛フリーはんだなどが用いられる。たとえば、鉛フリーはんだとしては、Sn−Ag−Cu系はんだやSn−Ni−Cu系はんだ等を採用することができる。
【0031】
そして、図1に示されるように、本実施形態の半導体装置100においては、半導体素子1、2を挟み込んだ一対の放熱板3、4が、モールド樹脂6にて封止されている。このモールド樹脂6はエポキシ系樹脂などからなり、型成形によって形成されたものである。
【0032】
また、図1に示されるように、一対の放熱板3、4のそれぞれにおいて、半導体素子1、2と対向する対向面3a、4aとは反対側の面3b、4bが、モールド樹脂6から露出している。このモールド樹脂6から露出する各放熱板3、4の面3b、4bは、放熱面3b、4bとされている。
【0033】
そして、図1(b)に示されるように、各放熱板3、4の放熱面3b、4bには、アルミや銅などよりなる外部の冷却部材Kが接触されるようになっている。このような冷却部材としては、通常、内部に冷却水が流通可能なアルミや銅などの部材が使用される。
【0034】
そして、各放熱板3、4と冷却部材Kとの間で熱交換可能となっている。これにより、本半導体装置100は、各半導体素子1、2の両面のそれぞれにて、第1の放熱板3、第2の放熱板4を介した放熱が行われる両面放熱型の構成となっている。
【0035】
また、一対の放熱板3、4は、上記はんだを介して、両半導体素子1、2の各面における電極に電気的に接続されている。たとえば、一対の放熱板3、4は、それぞれIGBT1のコレクタ側の電極およびFWD2のカソード側の電極、IGBT1のエミッタ側の電極およびFWD2のアノード側の電極となる。
【0036】
ここで、半導体装置100においては、一対の放熱板3、4のそれぞれの一部が、矩形の辺部からモールド樹脂6の外部まで突出した端子3c、4cとして構成されており、この端子3c、4cは外部と電気的に接続されるようになっている。
【0037】
また、図1に示されるように、半導体装置100においては、第2の放熱板4の周囲に、複数本のリード部7が設けられている。これらリード部7は、ここでは、半導体チップであるIGBT1の制御用の端子として機能するものであり、一部がモールド樹脂6に封止され、残部が外部と接続されるためにモールド樹脂6から露出している。
【0038】
そして、IGBT1は、その一面すなわち第1の放熱板3側の面にてボンディングワイヤ8を介して、リード部7と電気的・機械的に接続されている。このボンディングワイヤ8は、Au(金)やAl(アルミ)などよりなる一般的なワイヤボンディングにより形成されたものである。
【0039】
ここで、図1(b)に示されるように、ボンディングワイヤ8は、一般のものと同様、IGBT1の一面から離れる方向すなわちIGBT1の一面から第1の放熱板3に向かう方向に凸となったループ状をなしている。
【0040】
また、第1の放熱板3におけるIGBT1の一面と対向する対向面3aは、ボンディングワイヤ8の頂部8aよりもIGBT1の一面に近い位置にある。この場合、従来の構成のままであれば、第1の放熱板3とボンディングワイヤ8の頂部8aとが接触するが、本実施形態では、当該接触を回避すべく改良された構成となっている。
【0041】
すなわち、本半導体装置100においては、図1に示されるように、第1の放熱板3の対向面3aのうちボンディングワイヤ8に対向する部位には、当該対向面3aが除去されて開口した開口部3dが設けられている。
【0042】
ここでは、開口部3dは、第1の放熱板3の対向面3aから第1の放熱板3の厚さ方向に貫通する切り欠きである。より具体的には、この切り欠きは、第1の放熱板3の対向面3aのうち外周端部からボンディングワイヤ8に対向する部位までが平面的に切り欠かれたものとされている。このような切り欠きは、プレス、切削、エッチングなどにより容易に形成される。
【0043】
そして、図1に示されるように、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位が、開口部3dに入り込んでいる。このとき、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位は、開口部3dの開口縁部および内面のいずれにも接触しておらず、第1の放熱板3の対向面3aよりも当該第1の放熱板3の内部側にて、ボンディングワイヤ8と第1の放熱板3とは離れた状態とされている。
【0044】
また、上述したように、第1の放熱板3における対向面3aとは反対の面側には、冷却部材Kに接触して放熱を行う放熱面3bが設けられている。そして、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位は、開口部3dに入り込んでいるものの、開口部3dを通り抜けて放熱面3dよりも突出するようなことはなく、開口部3dの内部に留まっている。それにより、ボンディング8と冷却部材Kとが離れて配置されている。
【0045】
次に、本半導体装置100の製造方法について述べる。本製造方法では、まず、第1の放熱板3と第2の放熱板4との間に、はんだ5a、5bを介して各半導体素子1、2を挟み、はんだ5a、5bをリフローさせて、各半導体素子1、2および両放熱板3、4をはんだ接合する。
【0046】
次に、IGBT1の外側にリード部7を配置する。ここで、本実施形態では、第1の放熱板3の開口部3dは、上述したように、ボンディングワイヤ8と対向する部位が第1の放熱板3の厚さ方向に貫通する切り欠きであるので、IGBT1の一面のうちボンディングワイヤ8が接続される部位は、当該開口部3d上に臨んだ状態となっている。
【0047】
そこで、本製造方法においては、IGBT1が両放熱板3、4に挟まれた状態のワークに対して、第1の放熱板3の放熱面3b側から開口部3dを介して、IGBT1の一面にボンディングワイヤ8を接続する。この接続は、通常のワイヤボンディングツールにより行える。
【0048】
ここまでの工程により、上記図1においてモールド樹脂6を省略した状態のワークができあがる。その後、本製造方法では、このワークを金型に投入し、モールド樹脂6による封止を行う。
【0049】
このモールド工程より、半導体素子1、2、放熱板3、4、リード部7およびボンディングワイヤ8がモールド樹脂6で封止されるとともに、放熱板3、4の放熱面3b、4bはモールド樹脂6から露出する。以上が本実施形態の製造方法であり、こうして、上記図1に示される本実施形態の半導体装置100ができあがる。
【0050】
ところで、本実施形態によれば、第1の放熱板3に、ボンディングワイヤ8と当該第1の放熱板3との干渉を回避するための開口部3dを設けている。そのため、従来のような厚さ確保用のブロックを用いずに第1の放熱板3と第2の放熱板4との対向間隔を狭くしても、ボンディングワイヤ8側に位置する第1の放熱板3とボンディングワイヤ8との接触を回避することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位は、第1の放熱板3の開口部3dの内部すなわち第1の放熱板3の厚さの範囲に留まっている。つまり、当該頂部8a側の部位は、開口部3dに入り込んでいるものの、第1の放熱板3の放熱面3bよりも外方に突出しておらず、第1の放熱板3の厚さ方向にて第1の放熱板3における対向面3aと放熱面3bとの間に留まっている。
【0052】
ここで、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位は、当該開口部3dを通り抜けて、放熱面3bよりも突出していてもよいが、もし、ボンディングワイヤ8が放熱面3bより突出していると、当該放熱面3bに接触する冷却部材Kとボンディングワイヤ8とが接触してしまう。
【0053】
その場合、ボンディングワイヤ8にダメージが付与されたり、ボンディングワイヤ8と冷却部材Kとの短絡が発生するなどの不具合が生じる可能性がある。その点、ボンディングワイヤ8を放熱面3bより突出させないことで、冷却部材Kとボンディングワイヤ8との接触を防止し、これら不具合が抑制される。
【0054】
また、本実施形態の上記製造方法では、IGBT1の一面側、他面側に第1の放熱板3、第2の放熱板4を設け、これら両放熱板3、4によりIGBT1を挟んだ後、第1の放熱板3の開口部3dを介してIGBT1の一面にボンディングワイヤ8を接続するようにしている。
【0055】
それによれば、ボンディングワイヤ8をIGBT1に接続しない状態で、IGBT1と両放熱板3、4との組み付けが可能になり、当該組み付けの簡略化が期待できる。たとえば、従来の組み付け方法では、ワイヤ接続した後のIGBT1を、取り扱うため、当該組み付け時にボンディングワイヤ8が切断するなどの恐れがあったが、本製造方法によれば、そのような問題が回避される。
【0056】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置200の概略構成を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は同半導体装置200のB−B一点鎖線に沿った概略断面図である。本半導体装置200は、上記第1実施形態に比べて開口部3dを一部変形したところが相違するものであり、この相違点を中心に述べることにする。
【0057】
上記第1実施形態の開口部3dは、第1の放熱板3の対向面3aのうちボンディングワイヤ8に対向する部位を第1の放熱板3の厚さ方向に貫通する切り欠きであった。それに対して、本半導体装置200の開口部3dは、図2に示されるように、第1の放熱板3の厚さ方向に貫通する穴、すなわち、第1の放熱板3の対向面3aから放熱面3b側まで貫通する穴である。このような穴としての開口部3dは、プレス、切削、エッチングなどにより容易に形成される。
【0058】
ここで、本実施形態では、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位が、第1の放熱板3とは離れた状態で開口部3dに入り込んでいるが、ボンディングワイヤ8は、第1の放熱板3の対向面3a側から放熱面3b側まで開口部3dを通り抜けることで、リード部7に接続されている。
【0059】
そして、本実施形態では、図2(b)に示されるように、開口部3dにおける放熱面3b側の開口縁部のうちボンディングワイヤ8が横切る部位を、当該放熱面3bよりも引っ込んだ面としている。それにより、ボンディングワイヤ8のうち開口部3dから放熱面3b側まで通り抜けた部分を、当該放熱面3bよりも突出させずに第1の放熱板3の内部側に留めている。
【0060】
このような本実施形態の半導体装置200も、上記第1実施形態と同様の製造方法により製造されるため、ボンディングワイヤ8をIGBT1に接続しない状態で、IGBT1と両放熱板3、4との組み付けが可能になり、当該組み付けの簡略化が期待できる。
【0061】
そして、上記第1実施形態と同様に、厚さ確保用のブロックを用いずに第1の放熱板3と第2の放熱板4との対向間隔を狭くしても、ボンディングワイヤ8側に位置する第1の放熱板3とボンディングワイヤ8との接触を回避することができる。
【0062】
また、本実施形態によっても、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位は、開口部3dに入り込んでいるものの放熱面3bよりも突出しておらず、第1の放熱板1における対向面3aと放熱面3bとの間に留まっているため、上記冷却部材Kとボンディングワイヤ8との接触を防止できる。
【0063】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置300の概略構成を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は同半導体装置300のC−C一点鎖線に沿った概略断面図である。
【0064】
上記各実施形態では、開口部3dは、第1の放熱板3の対向面3aから第1の放熱板3の厚さ方向に貫通する切り欠きもしくは穴であったが、本実施形態の半導体装置300では、開口部3dは、第1の放熱板3の対向面3aのうちボンディングワイヤ8に対向する部位を、当該対向面3aよりも当該第1の放熱板3の厚さ方向に凹ませた凹部としたものであることが相違する。
【0065】
具体的には、この凹部は、第1の放熱板3の対向面3a側から凹むことにより第1の放熱板3における当該凹部以外の部位よりも薄い薄肉部とされている。このような凹部としての開口部3dも、プレス、切削、エッチングなどにより容易に形成される。
【0066】
そして、ここでも、ボンディングワイヤ8の頂部8a側の部位は、凹部としての開口部3dに入り込んではいるものの、当該凹部の開口縁部、側面、底部とは離れている。つまり、ボンディングワイヤ8と第1の放熱板3とは離れている。
【0067】
また、本実施形態においても、ボンディングワイヤ8は、開口部3dの底部とは離れていることによって、第1の放熱板1における対向面3aと放熱面3bとの間に留まっており、第1の放熱板3の放熱面3bより突出していない。
【0068】
そして、本半導体装置300においても、第1の放熱板3とボンディングワイヤ8との接触を回避できること、上記冷却部材Kとボンディングワイヤ8との接触を防止できることは、上記同様である。
【0069】
また、本半導体装置300では、開口部3dが第1の放熱板3の厚さ方向に貫通するものではないため、本半導体装置300の製造方法は、従来のこの種の半導体装置に準じたものとなる。すなわち、第2の放熱板4に、第2のはんだ5bを介して各半導体素子1、2を搭載し、IGBT1とリード部7とのワイヤボンディングを行った後、第1のはんだ5aを介して第1の放熱板3を搭載する。その後、はんだリフローを行い、モールド樹脂6による封止を行うことにより本半導体装置300ができあがる。
【0070】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置400の概略断面構成を示す図である。また、図5は、本半導体装置400中のIGBT1の一面側の概略平面構成を示す図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示す。なお、図5において後述する突出部1bの表面には、識別のため便宜上、ハッチングを施してある。ここでは、上記第1実施形態との相違点を中心に述べる。
【0071】
本半導体装置400においても、上記同様に、IGBT1の一面と第1の放熱板3とは、第1のはんだ5aを介して接合されている。ここで、本実施形態では、図4に示されるように、IGBT1の一面と第1の放熱板3との間には、第1のはんだ5aの厚さを保持するスペーサとしての突出部1bが設けられている。このスペーサとしての突出部1bは、IGBT1の一面に設けられたものである。
【0072】
図5(a)に示されるように、IGBT1の一面のうちの周辺部には、ガードリング1aが全周に渡って環状に設けられており、上記突出部1bは、このガードリング1aを利用したものである。
【0073】
ガードリング1aは、耐圧保持部として、通常の半導体チップに設けられる絶縁材料よりなるものであり、ここでは、IGBT1の一面と他面との電気絶縁性を確保するものとして構成されている。もし、ガードリング1aが無い場合には、IGBT1の外周端面を介して一面と他面とが短絡する恐れがあるが、ガードリング1aを設ければ、絶縁耐圧が保持される。
【0074】
このガードリング1aは、IGBT1の一面に、ポリイミドなどの絶縁性樹脂を塗布・硬化したり、酸化シリコンなどの無機絶縁材料をスパッタや蒸着したりすることにより、形成される。
【0075】
ここで、図5(a)に示される第1の例では、矩形環状をなすガードリング1aの全体がIGBT1の一面上に突出した突出部1bとなっており、図5(b)に示される第2の例では、矩形環状をなすガードリング1aのうちの4隅部が、IGBT1の一面上に突出した突出部1bとなっている。本実施形態では、これら両例のどちらでもよい。
【0076】
そして、このIGBT1の一面に設けられている突出部1bは、図4に示されるように、IGBT1の一面と第1の放熱板3とを支持し、第1のはんだ5aの厚さを保持するスペーサとして機能する。具体的には、突出部1bの高さが第1のはんだ5aの厚さに実質相当する。
【0077】
このような突出部1bは、ガードリング1aを絶縁性樹脂の塗布・硬化によって形成する場合には、突出部1bとなる部位にて樹脂厚さを厚くすることで形成される。また、ガードリング1aを無機絶縁材料のスパッタや蒸着によって成膜する場合には、突出部1bとなる部位にて膜厚を大きくすれば、突出部1bを形成できる。
【0078】
このように、本実施形態によれば、IGBT1の一面の全外周に設けられているガードリング1aを利用し、このガードリング1aの全部もしくは一部をIGBT1の一面上に突出させて突出部1bを構成している。
【0079】
そして、この突出部1bをスペーサとして、IGBT1と第1の放熱板3との間の第1のはんだ5aの厚さを保持するようにしているため、両放熱板3、4の対向間隔を狭くしても、第1のはんだ5aの厚さを精度良く確保できる。
【0080】
なお、ガードリング1aの一部が突出部1bとなっている構成としては、上記図5(b)に示される4隅部の例に限定されるものではないことは、もちろんであり、たとえば、矩形環状のガードリング1aの辺部の中間部に突出部を設けてもよい。また、本実施形態は、上記第1実施形態だけでなく、それ以外の上記各実施形態に適用可能である。
【0081】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置500の概略断面構成を示す図である。本実施形態では、上記第4実施形態に対して、さらに、IGBT1の他面と第2の放熱板4との間に介在する第2のはんだ5bについても、はんだ厚さを保持するスペーサ1cを設けたものである。
【0082】
このスペーサ1cは、半導体チップとしてのIGBT1の他面に設けられた電気絶縁性の部材であり、当該他面より突出する突起状のものである。このスペーサ1cが、IGBT1の他面と第2の放熱板4とを支持し、第2のはんだ5bの厚さを保持する。そして、このスペーサ1cの高さが第2のはんだ5bの厚さに実質相当する。
【0083】
このスペーサ1cは、IGBT1の他面に対して、電気絶縁性樹脂を塗布・硬化したり、無機絶縁材料のスパッタや蒸着によって成膜したりすることにより形成される。ここで、スペーサ1cは、IGBT1の一面に設けられている突出部1bと同じ位置に、設けられている。
【0084】
具体的には、IGBT1の一面における上記突出部1bの形成位置が上記図5のようなものである場合、当該図5中の各例に対応して、IGBT1の他面におけるスペーサ1cの形成位置も、上記図5と同様のものとなる。
【0085】
このように、本実施形態によれば、第1のはんだ5aだけでなく第2のはんだ5bについても、はんだ厚さを精度良く確保することができる。また、IGBT1の一面と他面の両面にて同じ位置に、スペーサ1b、1cを設けてIGBT1を支持することになるため、IGBT1の反りを抑制することができる。
【0086】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、第1、第2の放熱板3、4とIGBT1との間に、はんだ5a、5bが介在し、これらはんだ5a、5bによって接合が行われていたが、これらの間に、はんだは無くてもよい。たとえば、直接接触によって各放熱板3、4とIGBT1とが電気的に接続されている構成であってもよい。また、第1の放熱板3とIGBT1との間は、はんだ接続であり、第2の放熱板4とIGBT1とは、直接接触による電気接続でもよい。
【0087】
また、両放熱板に挟まれる半導体チップとしては、上記したIGBT1に限定されるものではなく、その一面にボンディングワイヤが接続されるものであるならば、MOSトランジスタやマイコンなどのICチップなどでもよい。さらに、当該半導体チップは2個以上でもよい。
【0088】
また、半導体装置としては、ボンディングワイヤが接続された半導体チップを一対の放熱板によって挟んでなるものであればよく、モールド樹脂6は無いものであってもよい。また、上記各実施形態では、放熱板3、4の放熱面3b、4bに冷却部材Kが接触する放熱構成であったが、放熱板3、4の放熱面3b、4bに何も接触させずに、放熱板3、4から外気に放熱する構成でもよい。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、第1の放熱板3の厚さ方向に貫通する開口部3dとして、半導体チップ1を両放熱板3、4で挟んだ後に開口部3dを介してワイヤボンディングする製造方法としたが、これら第1および第2実施形態においても、従来の製造方法のように、半導体チップ1にワイヤボンディングを施した後に、半導体チップ1を両放熱板3、4で挟むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略平面図、(b)は同半導体装置のA−A概略断面図である。
【図2】(a)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略平面図、(b)は同半導体装置のB−B概略断面図である。
【図3】(a)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の概略平面図、(b)は同半導体装置のC−C概略断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【図5】図4におけるIGBTの一面側の概略平面図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示す。
【図6】本発明の第5実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体チップとしてのIGBT
1a 耐圧保持部としてのガードリング
1b 突出部
1c スペーサ
3 第1の放熱板
3a 第1の放熱板の対向面
3b 第1の放熱板の放熱面
3d 開口部
4 第2の放熱板
5a 第1のはんだ
5b 第2のはんだ
8 ボンディングワイヤ
8a ボンディングワイヤの頂部
K 冷却部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(1)の一面側に第1の放熱板(3)を設け、前記半導体チップ(1)の前記一面とは反対側の他面側に第2の放熱板(4)を設け、これら両放熱板(3、4)により前記半導体チップ(1)を挟むとともに、前記半導体チップ(1)の前記一面にボンディングワイヤ(8)を接続してなり、
前記ボンディングワイヤ(8)は、前記半導体チップ(1)の前記一面から離れる方向に凸となったループ状をなしており、
前記第1の放熱板(3)における前記半導体チップ(1)の前記一面と対向する対向面(3a)は、前記ボンディングワイヤ(8)の頂部(8a)よりも前記半導体チップ(1)の前記一面に近い位置にあり、
前記第1の放熱板(3)の前記対向面(3a)のうち前記ボンディングワイヤ(8)に対向する部位には、開口した開口部(3d)が設けられており、
前記ボンディングワイヤ(8)の前記頂部(8a)側の部位が、前記第1の放熱板(3)とは離れた状態で前記開口部(3d)に入り込んでいることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記開口部(3d)は、前記第1の放熱板(3)の前記対向面(3a)側から前記第1の放熱板(3)の厚さ方向に貫通する切り欠きもしくは穴であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の放熱板(3)における前記対向面(3d)とは反対の面側には、外部に放熱を行う放熱面(3b)が設けられており、
前記ボンディングワイヤ(8)の前記頂部(8a)側の部位は、前記開口部(3d)に入り込んでいるが、前記第1の放熱板(3)における前記対向面(3a)と前記放熱面(3b)との間に留まっていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記開口部(3d)は、前記第1の放熱板(3)の前記対向面(3a)よりも当該第1の放熱板(3)の厚さ方向に凹んだものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップ(1)の前記一面と前記第1の放熱板(3)とは、はんだ(5a)を介して接合されており、
前記半導体チップ(1)の一面のうちの周辺部の全周には、前記半導体チップ(1)の前記一面と前記他面との電気絶縁性を確保するための絶縁材料よりなる耐圧保持部(1a)が設けられており、この耐圧保持部(1a)の少なくとも一部が前記半導体チップ(1)の前記一面上に突出した突出部(1b)となっており、
この耐圧保持部(1a)の突出部(1b)が、前記半導体チップ(1)の前記一面と前記第1の放熱板(3)との間に介在する前記はんだ(5a)の厚さを保持するスペーサとして構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
さらに、前記半導体チップ(1)の前記他面と前記第2の放熱板(4)とは、はんだ(5b)を介して接合されており、
前記半導体チップ(1)の前記他面のうち、前記半導体チップ(1)の前記一面に設けられている前記突出部(1b)と同じ位置に、前記半導体チップ(1)の前記他面と前記第2の放熱板(4)との間に介在する前記はんだ(5b)の厚さを保持する電気絶縁性のスペーサ(1c)が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体チップ(1)の一面側に第1の放熱板(3)を設け、前記半導体チップ(1)の前記一面とは反対側の他面側に第2の放熱板(4)を設け、これら両放熱板(3、4)により前記半導体チップ(1)を挟むとともに、前記半導体チップ(1)の前記一面に、前記半導体チップ(1)の前記一面から離れる方向に凸となったループ状をなすボンディングワイヤ(8)を接続し、
前記第1の放熱板(3)における前記半導体チップ(1)の前記一面と対向する対向面(3a)を、前記ボンディングワイヤ(8)の頂部(8a)よりも前記半導体チップ(1)の前記一面に近い位置にあるようにし、
前記第1の放熱板(3)の前記対向面(3a)のうち前記ボンディングワイヤ(8)に対向する部位に、前記第1の放熱板(3)の厚さ方向に貫通する切り欠きもしくは穴よりなる開口部(3d)を設け、
前記ボンディングワイヤ(8)の前記頂部(8a)側の部位を、前記第1の放熱板(3)とは離れた状態で前記開口部(3d)に入り込ませるようにした半導体装置の製造方法であって、
前記開口部(3d)が形成された前記第1の放熱板(3)を前記半導体チップ(1)の一面側に設け、前記第2の放熱板(4)を前記半導体チップ(1)の前記他面側に設け、これら両放熱板(3、4)により前記半導体チップ(1)を挟んだ後、
前記第1の放熱板(3)の前記開口部(3d)を介して前記半導体チップ(1)の前記一面に前記ボンディングワイヤ(8)を接続することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−224560(P2009−224560A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67426(P2008−67426)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】