説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】 半導体チップの放熱性を十分に確保できながら、半導体チップの接合材の鉛フリー化を達成することができる半導体装置およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 半導体チップ2と、半導体チップ2が接合されるダイパッド3と、半導体チップ2とダイパッド3との間に介在され、BiSn系材料からなる接合材8とを有する半導体装置1において、接合材8に、半導体チップ2とダイパッド3との間の熱伝導性を向上させるためのAgネットワーク9を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境負荷の観点から、半導体装置における鉛の使用量の低減が要求されている。たとえば、2006年7月施行のRoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令などによって提唱されている。
半導体装置では、たとえば、SOP(Small Outline Package)、QFP(Quad Flat Package)におけるアウターリードの外装めっき、BGA(Ball Grid Array)における半田ボールなど、装置外部で使用される外部構成材、およびパッケージ内部における半導体チップの接合材など、装置内部で使用される内部構成材に鉛が使用されている。
【0003】
外部構成材については、鉛の含有量を一定比率以下とする鉛フリー化が、代替材料の研究によってほぼ達成されている。これに対し、内部構成材については、代替に適した材料がない。そのため、たとえば、95Pb−5Sn(鉛含有量95wt%)など、鉛含有率の高い金属が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−67158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々な組成の金属材料を、内部構成材の代替材料として評価する過程において、環境負荷の小さいビスマスが、代替材料の選択肢として着目される。ビスマスは、たとえば、装置内部で使用される接合材に要求される融点や接合性、さらには環境負荷の諸特性を満たす。
しかし、ビスマスの熱伝導率(約9W/m・K)は、鉛の熱伝導率(約35W/m・K)に比べて低い。そのため、ビスマスを単に使用したのでは、半導体チップで生じる熱が放散されにくいといった不具合を生じる。
【0006】
本発明の目的は、半導体チップの放熱性を十分に確保できながら、半導体チップの接合材の鉛フリー化を達成することができる半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、半導体チップと、前記半導体チップが接合される固体板と、前記半導体チップと前記固体板との間に介在され、BiSn系材料からなる接合材とを含み、前記接合材は、前記半導体チップと前記固体板との間の熱伝導性を向上させるためのAgからなる熱伝導経路を有する、半導体装置である。
この構成によれば、半導体チップと固体板とを接合する接合材がBiSn系材料からなるので、接合材の鉛フリー化を達成することができる。
【0008】
さらに、半導体チップと固体板との間が、Agからなる熱伝導経路によって熱伝導可能に接続されている。これにより、半導体チップと固体板との間を熱が伝達しやすくなる。そのため、半導体チップで発生する熱を、熱伝導経路を介してAgの熱伝導率で固体板に逃がすことができる。したがって、半導体チップの放熱性を十分に確保することができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記接合材における前記半導体チップおよび/または前記固体板との界面近傍には、Sn−Ag合金からなる金属層が形成されている、請求項1に記載の半導体装置である。
この構成では、接合材における半導体チップおよび/または固体板との界面近傍に、Sn−Ag合金からなる金属層が形成されている。金属に対するSn−Ag合金の濡れ性は、BiSn系材料の濡れ性よりも優れている。そのため、この金属層によって、接合材と、半導体チップおよび/または固体板との接合強度を向上させることができる。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、前記接合材におけるSnの含有量が、0wt%を超過し、4wt%以下である、請求項1または2に記載の半導体装置である。
SnはAgと合金化し易い金属であるが、上記のように、接合材におけるSnの含有量が上記範囲であれば、熱伝導経路の形成に寄与するAgの不要な合金化を抑制することができる。その結果、熱伝導経路を効率よく形成することができる。
【0011】
また、Bi(融点:約270℃)がSn(融点:約232℃)よりも多量に含有されるため、接合材に比較的高い融点を保持させることができる。そのため、半導体装置を実装するときのリフロー時において、優れた耐リフロー性を発揮することができる。
また、請求項4記載の発明は、前記固体板が金属からなるリードフレームのアイランドである、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置である。
【0012】
この構成では、固体板が金属からなるアイランドなので、Agめっきを容易に施すことができ、そのAgめっきから熱伝導経路を形成することができる。
また、請求項5記載の発明は、半導体チップおよびその半導体チップが接合される固体板を備える半導体装置の製造方法であって、前記半導体チップおよび前記固体板の少なくとも一方における他方との接合面に、Agからなるめっき層を形成する工程と、前記めっき層形成後、前記半導体チップと前記固体板との間に、Snの含有量が0wt%を超過し、4wt%以下であるBiSnからなる接合材を挟む工程と、熱処理により、前記半導体チップと前記固体板とを前記接合材を介して接合する工程とを含む、半導体装置の製造方法である。
【0013】
この方法によれば、半導体チップにおける接合面および/または固体板における接合面にAgからなるめっき層が形成された後、半導体チップと固体板との間に、Snの含有量が0wt%を超過し、4wt%以下であるBiSnからなる接合材が挟まれ、その後、熱処理される。上記の工程が実行されることによって、めっき層から他方の接合面に達するAgネットワーク(網状組織)を接合材に形成することができる。このAgネットワークによって、半導体チップと固体板との間の熱伝導性を向上させることができる。
【0014】
そして、この製造方法によって得られる半導体装置によれば、接合材がBiSn系材料からなるので、接合材の鉛フリー化を達成することができる。
さらに、半導体チップと固体板との間がAgネットワークによって接続されるため、これらの間を熱が伝達しやすくなる。そのため、半導体チップで発生する熱を、Agネットワークを介してAgの熱伝導率で固体板に逃がすことができる。したがって、半導体チップの放熱性を十分に確保することができる。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、前記めっき層を形成する工程が、前記半導体チップにおける前記接合面および前記固体板における前記接合面の両方に前記めっき層を形成する工程である、請求項5に記載の半導体装置の製造方法である。
この方法では、半導体チップにおける接合面および固体板における接合面の両方にめっき層が形成される。そのため、いずれか一方の接合面にのみめっき層が形成される場合よりも、Agネットワークの密度を大きくすることができる。その結果、半導体チップの放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置の製造方法を工程順に示す図である。
【図3】本発明の変形例に係る半導体装置(QFNタイプ)の模式断面図である。
【図4】実施例1の半導体装置のSEM写真である。
【図5】実施例2の半導体装置のSEM写真である。
【図6】実施例3の半導体装置のSEM写真である。
【図7】実施例4の半導体装置のSEM写真である。
【図8】比較例1の半導体装置のSEM写真である
【図9】比較例2の半導体装置のSEM写真である。
【図10】比較例3の半導体装置のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式断面図である。
半導体装置1は、QFPが適用された半導体装置1である。半導体装置1は、半導体チップ2と、半導体チップ2に接合される固体板としてのダイパッド3と、半導体チップ2と電気的に接続される複数のリード4と、これらを封止する樹脂パッケージ5とを備えている。
【0018】
半導体チップ2は、その内部に複数の機能素子を搭載している。半導体チップ2は、たとえば、300〜400μm厚の四角板状に形成され、機能素子と電気的に接続された配線パッド(図示せず)が厚さ方向一方面21に露出している。一方、半導体チップ2の他方面22には、たとえば、Au、Ni、Agなどを含有する裏面メタル(図示せず)が形成されている。
【0019】
その裏面メタル上には、Agからなるチップめっき層6が形成されている。チップめっき層6の厚さは、たとえば、0.1〜2.0μmである。
ダイパッド3は、たとえば、0.1〜5.0mm厚のCu薄板からなり、四角状に形成されている。ダイパッド3の厚さ方向一方面31には、Agからなるパッドめっき層7が形成されている。パッドめっき層7の厚さは、たとえば、1.0〜10.0μmである。
【0020】
そして、半導体チップ2およびダイパッド3は、他方面22および一方面31が接合面として互いに対向した状態で、他方面22と一方面31との間に接合材8が介在することによって、互いに接合されている。すなわち、半導体チップ2は、一方面21を上方に向けた姿勢でダイパッド3に支持される。
接合材8は、BiSn系材料からなる。BiSn系材料は、BiSnを主として含有する材料である。BiSn系材料は、主成分BiSnの他に、たとえば、半導体チップ2ダイパッド3間の熱の伝達、接合材8の機械的物性の向上、接合材8の融点調節および接合材8の濡れ性の向上などといった目的で、Ag、Sn、Co、Cu、Au、Ni、Znなどの副成分を含有することができる。これら副成分は、単独で含有されていてもよいし、複数の金属が合金化した状態で含有されていてもよい。
【0021】
上記のように、接合材8にはSnが必ず含有され、BiSn成分におけるSnの含有量は、たとえば、0wt%を超過し、4wt%以下、好ましくは、1〜3wt%、さらに好ましくは、1.5〜2.5wt%である。
上記した副成分として、接合材8は、チップめっき層6およびパッドめっき層7の両方に接触する熱伝導経路としてのAgネットワーク9を有している。Agネットワーク9は、多数のAg細線が蜘蛛の巣状に広がってなり、接合材8のほぼ全域に達している。このAgネットワーク9によって、半導体チップ2とダイパッド3との間は理想的には、Agの熱伝導率(約425W/m・K)で熱伝導可能に接続されている。
【0022】
また、接合材8は、副成分として、チップめっき層6およびパッドめっき層7との界面近傍にSn−Ag合金からなる合金層10を有している。合金層10は、チップめっき層6およびパッドめっき層7の両方との界面近傍全域にわたって形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。
そして、上記のような接合材8の融点は、たとえば、260〜270℃、好ましくは、260〜263℃である。
【0023】
リード4は、ダイパッド3と同じCu薄板(たとえば、0.1〜5.0mm厚)からなり、ダイパッド3の各側面と直交する各方向における両側に、それぞれ同数ずつ設けられている。ダイパッド3の各側面に対向するリード4は、その対向する側面と平行な方向に等間隔に配置されている。各リード4は、樹脂パッケージ5によって封止されたインナーリード41と、樹脂パッケージ5から露出したアウターリード42とを一体的に備えている。
【0024】
インナーリード41は、ダイパッド3と同一平面上に配置され、ダイパッド3との対向方向に長尺な矩形状に形成されている。インナーリード41は、金属ワイヤ11を介して半導体チップ2の配線パッドと電気的に接続されている。
アウターリード42は、下方へ屈曲する屈曲部を有する略クランク形状に形成されている。アウターリード42は、半導体装置1をプリント配線基板に実装するときの外部接続部として機能する。
【0025】
樹脂パッケージ5としては、エポキシ樹脂など公知の材料を適用することができる。
上記のような半導体装置1は、その許容損失が、たとえば、1〜10W、好ましくは、4〜10Wである。許容損失は、半導体装置1の放熱性の指標とされる。また、半導体装置1は、プリント配線基板のランドにアウターリード42がはんだ接合され、たとえば、240〜260℃でリフローすることによって、実装することができる。
【0026】
図2は、図1に示す半導体装置1の製造方法を工程順に示す図である。
半導体装置1の製造工程では、図2(a)に示すように、半導体チップ2およびリードフレーム12が用意される。
リードフレーム12は、Cu薄板を加工することにより形成される。このリードフレーム12は、格子状のフレーム部(図示せず)と、フレーム部に取り囲まれる各矩形領域内に配置されるアイランドとしてのダイパッド3と、ダイパッド3の周囲に配置される複数のリード4と、フレーム部とダイパッド3との間に架設された吊りリード(図示せず)とを一体的に備えている。
【0027】
続いて、めっき法によって、半導体チップ2の他方面22(裏面メタル)およびダイパッド3の一方面31の両方にAgめっきが施される。これにより、チップめっき層6およびパッドめっき層7が形成される。なお、これらのめっき工程は、同じ工程で行なってもよいし、別工程で行なってもよい。
次いで、図2(b)に示すように、BiSnからなる接合材8をパッドめっき層7上に塗布し、その接合材8に対してチップめっき層6を対向させた姿勢で、半導体チップ2およびダイパッド3によって接合材8を挟み込む。
【0028】
次いで、図2(c)に示すように、たとえば、280〜300℃でリフロー(熱処理)が行なわれる。これによって、接合材8にAgネットワーク9および合金層10が形成されて、半導体チップ2とダイパッド3とが接合される。
次いで、図2(d)に示すように、金属ワイヤ11の一端が半導体チップ2の配線パッドに接続され、金属ワイヤ11の他端がリード4のインナーリード41に接続される。
【0029】
続いて、リードフレーム12が成形金型にセットされ、半導体チップ2、ダイパッド3、インナーリード41、金属ワイヤ11および吊りリードの一部が、樹脂パッケージ5によって封止される。
その後、リードフレーム12の不要部分(たとえば、吊りリードにおける樹脂パッケージ5から露出する部分など)が切断される。こうして、図1に示す構造の半導体装置1の個片が得られる。
【0030】
上記の方法によれば、半導体チップ2の他方面22およびダイパッド3の一方面31の両方にAgめっき層(チップめっき層6およびパッドめっき層7)が形成された後、半導体チップ2とダイパッド3との間にBiSnからなる接合材8が挟まれ、その後、リフローされる。上記の工程が実行されることによって、各めっき層6,7から他方のめっき層6,7に達するAgネットワーク9を接合材8に形成することができる。このAgネットワーク9によって、半導体チップ2とダイパッド3との間の熱伝導性をさらに向上させることができる。
【0031】
そして、得られる半導体装置1によれば、接合材8がBiSn系材料からなるので、接合材8の鉛フリー化を達成することができる。
さらに、半導体チップ2とダイパッド3との間がAgネットワーク9によって接続されるため、これらの間を熱が伝達可能となる。そのため、半導体チップ2で発生する熱を、Agネットワーク9を介して、理想的にはAgの熱伝導率(約425W/m・K)でダイパッド3に逃がすことができる。したがって、半導体チップ2の放熱性を十分に確保することができる。
【0032】
また、半導体チップ2の他方面22およびダイパッド3の一方面31の両方にAgからなるめっき層(チップめっき層6およびパッドめっき層7)が形成され、各めっき層6,7のAgによって蜘蛛の巣状のAgネットワーク9が形成される。そのため、いずれか一方の接合面(他方面22もしくは一方面31)にのみめっき層が形成される場合よりも、Agネットワーク9の密度を大きくすることができる。その結果、半導体チップ2の放熱性を向上させることができる。
【0033】
また、チップめっき層6およびパッドめっき層7との界面近傍に、Sn−Ag合金からなる合金層10が形成される。チップめっき層6およびパッドめっき層7に対するSn−Ag合金の濡れ性は、BiSnの濡れ性よりも優れる。そのため、この合金層10によって、接合材8と、半導体チップ2およびダイパッド3との接合強度を向上させることができる。
【0034】
また、SnはAgと合金化し易い金属であるが、接合材8におけるSnの含有量が0wt%を超過し、4wt%以下であれば、Agネットワーク9の形成に寄与するAgの不要な合金化を抑制することができる。その結果、各めっき層6,7のAgを有効活用できるので、Agネットワーク9を効率よく形成することができる。
また、Bi(融点:約270℃)がSn(融点:約232℃)よりも多量に含有されるため、接合材8に比較的高い融点(たとえば、260〜270℃)を保持させることができる。そのため、半導体装置1を実装するときのリフロー時において、優れた耐リフロー性を発揮することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、QFPが適用された半導体装置1を取り上げたが、本発明は、たとえば、図3に示すようなQFNが適用された半導体装置51(図3において、52および53は、たとえば、錫(Sn)、錫−銀合金(Sn−Ag)などの金属からなるめっき層)、その他には、BGA、SOPなどといった他の種類のパッケージが適用された半導体装置に適用することもできる。
【0036】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、この発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜4および比較例1〜3
上述した製造方法に基づき、図1に示した構造の半導体装置を作製した。ただし、各実施例および比較例における接合材の組成は、以下の通りに設計した。なお、下記の組成において、Snの直前に記載される数字は、接合材におけるSnの含有量(wt%)を表わしている。
(接合材の組成)
実施例1:Bi−1Sn 実施例2:Bi−2Sn 実施例3:Bi−3Sn
実施例4:Bi−4Sn 比較例1:Bi−5Sn 比較例2:Bi−6Sn
比較例3:Bi−10Sn
評価試験
(1)SEM画像の撮影
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた半導体装置の接合材に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子ビームを照射し、それによって作り出される像を撮影した。撮影された写真を図4〜図10に示す。
【0038】
図4〜図10によると、Snの含有量が1〜4wt%(実施例1〜4)の接合材には、半導体チップとダイパッドとを接続するAgネットワークが形成されていることが確認できた。それに対し、Snの含有量が4wt%を超える(比較例1〜3)接合材には、Agネットワークが形成されず、SnがBi中に分散していることが確認された。
(2)融点の測定
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた半導体装置の接合材に対して、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ社製 DSC6200)を用いて融点測定した。なお、測定条件は、昇温速度:5℃/分、温度範囲:115〜300℃とした。これにより、各接合材について、以下のことが確認された。
【0039】
実施例1(Bi−1Sn):接合材の全てが263℃で溶融する。
実施例2(Bi−2Sn):接合材の全てが264.1℃で溶融する。
実施例3(Bi−3Sn):接合材の全体積中13.2%が139℃で溶融する。
実施例4(Bi−4Sn):接合材の全体積中48.0%が139℃で溶融する。
比較例1(Bi−5Sn):接合材の全体積中81.7%が139℃で溶融する。
【0040】
比較例2(Bi−6Sn):接合材の全体積中93.2%が139℃で溶融する。
比較例3(Bi−10Sn):接合材の全てが139℃で溶融する。
実施例5および比較例4〜5
JEDEC標準基板(114.3×76.2×1.6mm3)上に、表1に示す組成の接合材を用いてトランジスタを搭載した半導体装置を実装した。ただし、JEDEC標準基板は、74.2mm角の銅箔を3層重ねることによって、全体として4層構造とした。また、各銅箔間は、サーマルビアで接続されている。
評価試験
(1)許容損失の測定
実施例5および比較例4〜5の半導体装置について、桑野電機社製TH−156を用いて許容損失を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
表1によると、接合材にBi−2Snを用いた実施例5の許容損失は、Pb含有接合材を用いた比較例4に及ばないものの、理想的ではないが、Agペーストを用いた比較例5よりも高いことが確認された。これにより、実施例5が十分な放熱性を確保していることが確認された。
【0042】
【表1】

【符号の説明】
【0043】
1 半導体装置
2 半導体チップ
3 ダイパッド
6 チップめっき層
7 パッドめっき層
8 接合材
9 Agネットワーク
10 合金層
12 リードフレーム
22 他方面
31 一方面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップが接合される固体板と、
前記半導体チップと前記固体板との間に介在され、BiSn系材料からなる接合材とを含み、
前記接合材は、前記半導体チップと前記固体板との間の熱伝導性を向上させるためのAgからなる熱伝導経路を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記接合材における前記半導体チップおよび/または前記固体板との界面近傍には、Sn−Ag合金からなる金属層が形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記接合材におけるSnの含有量が、0wt%を超過し、4wt%以下である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記固体板が金属からなるリードフレームのアイランドである、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体チップおよびその半導体チップが接合される固体板を備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップおよび前記固体板の少なくとも一方における他方との接合面に、Agからなるめっき層を形成する工程と、
前記めっき層形成後、前記半導体チップと前記固体板との間に、Snの含有量が0wt%を超過し、4wt%以下であるBiSnからなる接合材を挟む工程と、
熱処理により、前記半導体チップと前記固体板とを前記接合材を介して接合する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記めっき層を形成する工程が、前記半導体チップにおける前記接合面および前記固体板における前記接合面の両方に前記めっき層を形成する工程である、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−258231(P2010−258231A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106906(P2009−106906)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】