半導体装置および半導体装置の製造方法
【課題】 薄板化の際に層間絶縁膜が破損することを抑制できる半導体装置を得る。
【解決手段】 第1の硬度を有する材料で構成された基板10と、基板10の第1主面10aに設けられたドリフト層11と、ドリフト層11上に絶縁膜60を介して形成されたゲート電極70と、ゲート電極70を覆うように形成され、第1の硬度よりも小さい第2の硬度を有する材料で構成された層間絶縁膜80とを備え、基板10とドリフト層11とを合わせた厚みは200μm以下であり、層間絶縁膜80に、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口90が設けられている半導体装置。
【解決手段】 第1の硬度を有する材料で構成された基板10と、基板10の第1主面10aに設けられたドリフト層11と、ドリフト層11上に絶縁膜60を介して形成されたゲート電極70と、ゲート電極70を覆うように形成され、第1の硬度よりも小さい第2の硬度を有する材料で構成された層間絶縁膜80とを備え、基板10とドリフト層11とを合わせた厚みは200μm以下であり、層間絶縁膜80に、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口90が設けられている半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、珪素(Si)半導体を用いた縦型電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)においては、Si基板を薄板化して装置抵抗を低減するものが知られている。この薄板化プロセスとしては、Si基板の表面にデバイス構造を形成した後で、Si基板を裏面から所望の厚さ分だけ研削する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−294853号公報(6〜7頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記薄板化プロセスを炭化珪素(SiC)半導体装置の製造方法に適用しようとすると、SiCの硬度(新モース硬度:13)がSiの硬度(新モース硬度:8)よりもはるかに高く削れにくいため、研削の際に、SiC半導体装置のデバイス構造に非常に大きなストレスがかかってしまう。特にデバイス構造中の層間絶縁膜は、その開口の角にストレスが集中して亀裂が発生してしまうことがあり、その結果、ゲート電極と配線電極とが亀裂によって導通してゲートリークが発生してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は上述のような問題を解決するためになされたもので、薄板化の際に層間絶縁膜が破損することを抑制できる半導体装置および半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置は、第1の硬度を有する材料で構成された基板と、基板の第1主面に設けられたドリフト層と、ドリフト層上に絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、ゲート電極を覆うように形成され、第1の硬度よりも小さい第2の硬度を有する材料で構成された層間絶縁膜とを備え、基板とドリフト層とを合わせた厚みは200μm以下であり、層間絶縁膜に、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口が設けられているものである。
【0007】
また、基板の第1主面に設けられたドリフト層上に、絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、ゲート電極を覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、層間絶縁膜に、平面視において全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を形成する工程と、層間絶縁膜が形成された基板を、第1主面と対向する第2主面側から薄板化する工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体装置によれば、層間絶縁膜に、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口が設けられているので、薄板化の際に層間絶縁膜の開口にかかる力が分散され、破損を抑制することができる。
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、層間絶縁膜に、平面視において全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を形成し、層間絶縁膜が形成された基板を薄板化するようにしたので、層間絶縁膜の開口にかかる力が分散され、破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の上面図である。
【図2】図1のA−A切断面およびB−B切断面における炭化珪素半導体装置を示す図である。
【図3】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるドリフト層を形成する工程を示す図である。
【図4】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるJTE領域を形成する工程を示す図である。
【図5】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるベース領域を形成する工程を示す図である。
【図6】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるソース領域を形成する工程を示す図である。
【図7】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるフィールド酸化膜およびゲート絶縁膜を形成する工程を示す図である。
【図8】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるゲート電極を形成する工程を示す図である。
【図9】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法における層間絶縁膜を形成する工程を示す図である。
【図10】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法における層間絶縁膜に開口を形成する工程およびソース電極を形成する工程を示す図である。
【図11】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法における基板を薄板化する工程を示す図である。
【図12】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるオーミック電極を形成する工程を示す図である。
【図13】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法における配線電極および配線電極上の絶縁膜を形成する工程を示す図である。
【図14】比較例の炭化珪素半導体装置において、層間絶縁膜に開口を形成した後に、基板を第2主面側から研削した後の、層間絶縁膜を示す光学顕微鏡写真である。
【図15】配線電極を形成した後の、図14のX−X’線断面のSEM写真である。
【図16】実施の形態1のシミュレーションに用いたモデルを示す立体図である。
【図17】実施の形態1のシミュレーションの結果を示す図である。
【図18】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示す図である。
【図19】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示す図である。
【図20】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示す図である。
【図21】実施の形態2の炭化珪素半導体装置を示す図である。
【図22】実施の形態2の炭化珪素半導体装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1および図2は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置を示すものであって、図1(a)は炭化珪素半導体装置の上面図、図1(b)は図1(a)の絶縁膜を除いた上面図、図2(a)は図1のA−A切断面を部分的に示す断面図、図2(b)は図1のB−B切断面を部分的に示す断面図、図2(c)は図2(b)におけるドリフト層の上面図、図2(d)は図2(a)における層間絶縁膜の上面図、図2(e)は図2(b)における層間絶縁膜の上面図である。なお、ここでは半導体装置の一例として、nチャネル縦型炭化珪素MOSFETについて説明する。
【0012】
まず、炭化珪素半導体装置を上面からみた構成について説明する。
実施の形態1の炭化珪素半導体装置は、図1(b)に示すように、その中央部に配線電極300aが形成されている。この配線電極300aの下部にはMOSFETの単位構造であるユニットセルが複数配置されており、配線電極300aは各ユニットセルのソース電極(ここでは図示せず)に電気的に接続されている。そして、配線電極300aの外周には層間絶縁膜80が形成されており、その外周には配線電極300bが形成されている。この配線電極300bは、各ユニットセルのゲート電極(ここでは図示せず)に接続され、ゲート電圧はこの配線電極300bを介して供給される。また、配線電極300bの外周には、ダイシングライン1000と一定の距離を隔てて、層間絶縁膜80が形成されている。これらの構造の上部には、図1(a)に示すように、配線電極300aおよび配線電極300bの一部を除いて、耐圧を向上させるための、例えばポリイミドからなる絶縁膜400が形成されている。
【0013】
配線電極300bの外周における層間絶縁膜80は、図1(b)に示すように、その角部80aが所定の曲率半径で丸められた形状に形成されている。この領域では、炭化珪素ドリフト層11の表面に、後述するフィールド酸化膜(ここでは図示せず)、層間絶縁膜80、絶縁膜400(図1(a)に図示されている)の順で、これらが3層に積層されており、フィールド酸化膜50および絶縁膜400の角部も、層間絶縁膜80の角部80aと同一の曲率半径で丸められた形状に形成されている。なお、曲率半径は炭化珪素半導体装置のサイズによって適宜決められ、例えば、装置サイズが3mm角の場合、0.1mm以上であることが望ましい。
【0014】
次に、図1のB−B切断面における炭化珪素半導体装置の断面構造について説明する。
実施の形態1の炭化珪素半導体装置は、図2(b)に示すように第1主面10aが(0001)面から4°あるいは8°オフしており、4Hのポリタイプを有するn型で低抵抗である炭化珪素基板10上に、n型の炭化珪素ドリフト層11が形成されている。なお、炭化珪素基板10と炭化珪素ドリフト層11とを合わせて炭化珪素基体12と呼ぶことにする。
【0015】
炭化珪素ドリフト層11の表層部には、ある幅だけ離間するようにアルミニウム(Al)をp型不純物として含有するp型のイオン注入領域であるベース領域30が形成されている。そして、それぞれのベース領域30内の表層部には、ある幅だけ離間した部位に、第2不純物である窒素(N)をn型不純物として含有するイオン注入領域であるソース領域40が、ベース領域30よりも浅く形成されている。ベース領域30およびソース領域40は、図2(c)に示すように、平面視においてそれぞれ正方形である。
【0016】
ベース領域30およびソース領域40を含む炭化珪素ドリフト層11の表面側には、ベース領域30およびソース領域40の表面側の一部を除き、酸化珪素で構成されるゲート絶縁膜60が形成されている。さらに、ゲート絶縁膜60上の1対のソース領域40間の領域を含む部位に対向する位置には、ゲート電極70が形成されている。そして、ゲート絶縁膜60の形成されていない炭化珪素ドリフト層11の表面上には、炭化珪素ドリフト層11の表面とオーミック接合しているソース電極100が形成されている。上述した配線電極300aはソース電極100と電気的に接続しており、配線電極300aとゲート電極70とは層間絶縁膜80により絶縁されている。
【0017】
層間絶縁膜80は、酸化珪素(例えば、SiO2)等の炭化珪素よりも硬度の低い材料で構成され、ゲート電極70を覆うように形成されている。即ち、層間絶縁膜80の内部にはゲート電極70による段差が形成されている。また、図2(e)に示すように、層間絶縁膜80にはソース電極100への開口90が平面視において円形に形成されており、この形状はイオン注入領域であるベース領域30およびソース領域40の平面視における形状に対して略相似形状とは異なる形状である。この開口90の直径は半導体装置ごとに異なるが、一例として、1〜5μmである。また、層間絶縁膜80の開口90の近傍にあるゲート電極70の開口91も円形に形成されており、層間絶縁膜80の開口90とゲート電極70の開口91とは平面視において相似形である。
【0018】
炭化珪素基板10の第2主面10b側には、炭化珪素と低コンタクト抵抗を形成するオーミック電極200が設けられており、その下部には裏面電極500が形成されている。炭化珪素基板10は、第2主面10bから研削により薄板化されており、炭化珪素基体12は200μm以下の厚さである。
【0019】
次に、図1のA−A切断面における炭化珪素半導体装置の断面構造について説明する。
図2(a)に示すように、炭化珪素基板10上に形成された炭化珪素ドリフト層11の表層部には、アルミニウム(Al)をp型不純物として含有するp型のベース領域30と、Alをp型不純物として含有し、耐圧を維持させるためのイオン注入領域であるJTE(Junction Termination Extention)領域20が設けられている。そして、ベース領域30とJTE領域20を含む炭化珪素ドリフト層11の表面側にはフィールド酸化膜50が形成されており、このフィールド酸化膜50上には、ゲート電極70が形成されている。
【0020】
ゲート電極70上には層間絶縁膜80が堆積されており、この層間絶縁膜80には部分的に開口90が設けられている。図2(d)に示すように、この開口90の形状は平面視において円形である。そして、層間絶縁膜80の上には上述の配線電極300bが形成され、開口90を介して配線電極300bとゲート電極70とが電気的に接続されている。また、配線電極300bの上部には、絶縁膜400が形成されている。
【0021】
炭化珪素基板10の第2主面10b側の構造については、上述した図1のB−B切断面における炭化珪素半導体装置の断面構造と同様であるので、説明を省略する。
【0022】
次に、図3ないし図13を用いて実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。ここで、図3は炭化珪素ドリフト層を形成する工程を示す図、図4はJTE領域を形成する工程を示す図、図5はベース領域を形成する工程を示す図、図6はソース領域を形成する工程を示す図、図7はフィールド酸化膜およびゲート絶縁膜を形成する工程を示す図、図8はゲート電極を形成する工程を示す図、図9は層間絶縁膜を形成する工程を示す図、図10は層間絶縁膜に開口を形成する工程およびソース電極を形成する工程を示す図、図11は炭化珪素基板を薄板化する工程を示す図、図12はオーミック電極を形成する工程を示す図、図13は配線電極および配線電極上の絶縁膜を形成する工程を示す図である。なお、図3〜図13において、(a)は図1のA−A切断面の部分的な断面を、(b)は図1のB−B切断面の部分的な断面を示している。
【0023】
まず、第1主面10aの面方位が(0001)面から4°または8°オフした、4Hのポリタイプを有するn型で低抵抗の炭化珪素基板10を準備する。そして、図3(a)および図3(b)に示すように、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により、炭化珪素ドリフト層11をエピタキシャル成長させる。この炭化珪素ドリフト層11はn型の不純物を有しており、その不純物濃度は想定する耐圧によって異なるが例えば、1×1015〜1×1017cm−3である。また、炭化珪素ドリフト層11の厚さは5〜50μmである。
【0024】
次に、図4(a)に示すように、炭化珪素ドリフト層11の表面に第1注入マスクを形成し、表面に第1注入マスクが形成された炭化珪素ドリフト層11にp型の不純物であるAlをイオン注入する。このとき、Alのイオン注入深さは炭化珪素ドリフト層11の厚さを超えない0.1〜3μm程度とする。また、イオン注入されたAlの不純物濃度は、1×1017〜1×1019cm−3の範囲で、炭化珪素ドリフト層11のn型不純物濃度より多いものとする。ここで形成されたイオン注入領域は、耐圧を維持させるためのものであり、上述したJTE領域20である。
【0025】
次に、図5(a)および図5(b)に示すように、炭化珪素ドリフト層11の表面に第2注入マスクを形成し、表面に第2注入マスクが形成された炭化珪素ドリフト層11にp型の不純物であるAlをイオン注入する。このとき、Alのイオン注入深さは炭化珪素ドリフト層11の厚さを超えない0.1〜3μm程度とする。また、イオン注入されたAlの不純物濃度は、1×1017〜1×1019cm−3の範囲で炭化珪素ドリフト層11のn型不純物濃度より多いものとする。ここで形成されたイオン注入領域は、ベース領域30である。
【0026】
第2注入マスクを除去後、図6(b)に示すように、炭化珪素ドリフト層11の表面に第3注入マスクを形成し、第3注入マスクが形成された炭化珪素ドリフト層11の表面に、n型の不純物であるNをイオン注入する。Nのイオン注入深さはベース領域30の厚さより浅いものとする。また、イオン注入したNの不純物濃度は、1×1018〜1×1021cm−3の範囲であり、この不純物濃度はベース領域30のAlの不純物濃度を超えるものとする。ベース領域30内のNが注入された領域のうちn型を示すイオン注入領域がソース領域40となる。さらに、第3注入マスクを除去後、熱処理装置によってアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガス雰囲気中で1300〜1900℃、30秒〜1時間のアニールを行う。このアニールにより、イオン注入されたN、Alを活性化させる。
【0027】
次に、図7(a)に示すように、CVD法などによってSiO2からなるフィールド酸化膜50を形成する。このフィールド酸化膜50は、上面から見たときに、その角部が所定の曲率半径で丸められた形状に形成する。次いで、図7(b)に示すように、ベース領域30およびソース領域40を含む炭化珪素ドリフト層11の表面を熱酸化し、所望の厚みのゲート絶縁膜60を形成する。
【0028】
次に、図8(a)および図8(b)に示すように、図1のA−A切断面においてはフィールド酸化膜50の上に、図1のB−B切断面においてはゲート絶縁膜60の上に、減圧CVD法により導電性を有する多結晶珪素膜をそれぞれ形成し、これをパターニングする。これにより、図1のA−A切断面ではフィールド酸化膜50を介してゲート電極70が形成され、図1のB−B切断面ではゲート絶縁膜60を介してゲート電極70が形成される。ここで、図8(c)は図8(b)のゲート電極の上面図であり、図1のB−B切断面におけるゲート電極70は、平面視において円形の開口91を有する形状に形成される。
【0029】
次に、図9(a)および図9(b)に示すように、ゲート電極70を覆うように、CVD法などによりSiO2からなる層間絶縁膜80を形成する。
【0030】
次に、図10(b)に示すように、C3H8などを含むガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチングにより、層間絶縁膜80の所定位置に開口90を形成する。図10(d)は、図10(b)における層間絶縁膜の上面図であり、層間絶縁膜80に形成する開口90は、平面視において円形にする。そして、開口90を形成した部分の炭化珪素ドリフト層11の表面に、ニッケル(Ni)などの金属膜を成膜し、熱処理及び薬品処理などによりソース電極100を形成する。その後、図10(a)に示すように、ドライエッチング、フッ化水素などを用いたウエットエッチングまたはドライエッチングとウエットエッチングを組み合わせた方法で、層間絶縁膜80に開口90を形成する。図10(c)は、図10(a)における層間絶縁膜の上面図であり、層間絶縁膜80に形成する開口90は円形にする。また、このときダイシングライン1000上に形成されている層間絶縁膜80を除去し、層間絶縁膜80を、平面視において、その角部80a(図1(b)に図示されている)が所定の曲率半径で丸められた形状にする。
【0031】
次に、図11(a)および図11(b)に示すように、層間絶縁膜80が形成された炭化珪素基板10を、第1主面10aと対向する第2主面10b側から研削により薄板化する。この薄板化により、炭化珪素基体12の厚みを200μm以下にする。
【0032】
なお、研削に用いる研削機としては、基板を真空吸着により固定するチャックテーブルと、このチャックテーブルの上方に配置され、回転しながらチャックテーブルの方向へ向かって一定速度で下降して基板を加工する砥石とを備えるものが挙げられる。この種の研削機を用いる場合、炭化珪素基板10の第1主面10a側をチャックテーブルに固定し、チャックテーブルが自転した状態で、第2主面10b側に回転する砥石を押圧することにより研削を行う。また、研削中、第一主面10a側に形成されている層間絶縁膜80には保護テープを貼り付けるか、またはワックスなどを塗布しサポート基板を貼り付けることで保護されている。また、研削に用いる砥石としては、例えばダイヤモンド砥粒をビトリファイドで結合したものが用いられる。
【0033】
そして、薄板化した炭化珪素基体12を洗浄し、図12(a)および図12(b)に示すように、炭化珪素基板10の第2主面10bの全面にNiの金属膜を成膜し、成膜後、急速アニール処理(RTA:Rapid Thermal Anneal)により1000℃以上の高温熱処理を行い、第2主面10bの全面にオーミック電極200を形成する。なお、ここでは金属膜としてNiを例に挙げたが、炭化珪素とオーミック接合が得られる金属膜であればNi以外でも適用可能である。
【0034】
次いで、図13(a)および図13(b)に示すように、ゲート電極70への配線電極300bと、ソース電極100への配線電極300aとをパターニングする。配線電極300a、300bとしては、例えばAl膜などが挙げられる。さらに、炭化珪素基板10の第1主面10a側に形成した装置構造の上部の所定位置に、耐圧を維持するための、ポリイミドなどからなる絶縁膜400を堆積させる。この絶縁膜400は、上面からみたときに、その角部が所定の曲率半径で丸められた形状に形成する。
【0035】
最後に、炭化珪素基板10の第2主面10bに形成したオーミック電極200の下部に、裏面電極500(図2(a)および図2(b)に図示されている)を形成する。以上により実施の形態1の炭化珪素半導体装置が完成する。
【0036】
次に、比較例の炭化珪素半導体装置について説明する。実施の形態1の炭化珪素半導体装置においては、層間絶縁膜80の開口90およびゲート電極70の開口91はともに円形であるが、比較例の炭化珪素半導体装置においては、層間絶縁膜の開口およびゲート電極の開口がともに正方形である。そして、その他の構成は実施の形態1の炭化珪素半導体装置と同様である。また、比較例の炭化珪素半導体装置の製造方法は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法と、層間絶縁膜の開口およびゲート電極の開口の形状を正方形に形成することのみが異なる。
【0037】
図14は、比較例の炭化珪素半導体装置において、層間絶縁膜に開口を形成した後に、炭化珪素基板を第2主面側から研削した後の、層間絶縁膜を示す光学顕微鏡写真である。図14において、表面に見える正方形の領域の外側は層間絶縁膜が形成されている領域であり、正方形の領域の内側はソース電極が形成されている領域である。中央部に見られる層間絶縁膜の開口には、開口の4つの角から外側に向かってそれぞれ亀裂が発生していることが分かる。図15は、配線電極を形成した後の、図14のX−X’線断面のSEM(Secondary Electron Microscope)写真である。図15において、ゲート電極と配線電極とが亀裂によって導通しており、これによりゲートリークが発生していることが分かる。
【0038】
表1は、研削前の炭化珪素基体の厚みが380μmである比較例の炭化珪素半導体装置において、研削後の炭化珪素基体の厚みと層間絶縁膜の開口の亀裂との関係を示すものである。表1において、研削後に層間絶縁膜の開口に亀裂が発生しなかった場合は○、発生した場合は×とした。研削後の厚みが360μm、340μmの場合では、比較例の炭化珪素半導体装置でも層間絶縁膜に亀裂は発生していないが、厚みが200μm以下になると層間絶縁膜の開口に亀裂が発生することがわかる。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、比較例の炭化珪素半導体装置の層間絶縁膜の開口に亀裂が発生した原因を説明する。
炭化珪素半導体装置の研削による薄板化は、炭化珪素基板の第1主面側をチャックテーブルに固定した状態で、自転するチャックテーブル上の第2主面側に回転する砥石を押圧することにより行うが、炭化珪素基板は非常に硬く削れにくいため、下降する砥石が第2主面を押圧する力は非常に大きくなる。これにより、第1主面側に形成されている層間絶縁膜には、チャックテーブルから非常に大きなストレスが加えられる。層間絶縁膜を形成する酸化珪素は新モース硬度が8と炭化珪素と比較して軟らかいので、ストレスが集中しやすい開口の角から亀裂が発生する。
なお、Si半導体装置では、Siの硬度は新モース硬度で8であり、炭化珪素と比較して軟らかく削れやすいため、砥石がSi基板の第2主面を押圧する力は比較的小さい。このため、Si基板の第1主面側に形成した層間絶縁膜にかかるストレスは小さく上記のような亀裂は発生しない。
【0041】
次に、実施の形態1の炭化珪素半導体装置を炭化珪素基板の第2主面側から加圧した場合の、層間絶縁膜の開口の形状と、この開口の各頂点にかかる圧力との関係を簡易的なモデルでシミュレーションしたものについて説明する。
【0042】
図16は、このシミュレーションに用いたモデルを表す立体図である。シミュレーションに用いたモデルは、図16に示すように、直方体25の下面25aの中央に、平面形状が正方形の開口26を設け、この開口26の底面26aを固定した状態で、直方体の上面25bから加圧するものである。このモデルと実施の形態1の炭化珪素半導体装置とは、上面25bが炭化珪素基板10の第2主面10b、下面25aが炭化珪素基板10の第1主面10a上に形成された層間絶縁膜80の表面、開口26が層間絶縁膜の開口90、上面に加えられる圧力が砥石による押圧にそれぞれ対応する。なお、図16は開口26が正方形の場合のモデルを図示しており、シミュレーションは正五角形、正六角形、円形についても行った。
【0043】
図17にシミュレーションの結果を示す。図17において、横軸は開口の形状、縦軸は開口の各頂点にかかる圧力の値を、開口の形状が正四角形の値で規格化したものを示している。図17より、開口の形状を正五角形、正六角形、円形にすると、各頂点にかかる圧力は正四角形の場合と比較して、それぞれ14%、17%、26%減少する。即ち、開口の頂点を増やすとともに、各頂点の内角の角度を大きくすることで各頂点にかかる圧力を減少させることができる。したがって、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を有する層間絶縁膜を形成することで、層間絶縁膜の開口にかかる力が分散され、亀裂の発生を抑制できる。
【0044】
また、上述したように、層間絶縁膜にはゲート電極による段差が形成されているため、層間絶縁膜はゲート電極の開口部分にも角を有することとなる。したがって、ゲート電極を、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を有する形状に形成することで、ゲート電極との接触点から層間絶縁膜にかかる力が分散され、亀裂の発生を抑制できる。さらに、層間絶縁膜の角部にもストレスが集中するが、角部を所定の曲率半径で丸められた形状に形成することで、層間絶縁膜の角部にかかるストレスを低減できる。
【0045】
実施の形態1の炭化珪素半導体装置によれば、層間絶縁膜80に設けられている開口90を円形としたので、炭化珪素基体12の厚みを200μm以下に薄板化する場合でも、薄板化の際に層間絶縁膜80の開口にかかるストレスが分散され、破損を抑制できる。
【0046】
また、ゲート電極70を円形の開口90を有する形状に形成したので、薄板化の際にゲート電極70と層間絶縁膜80の接触点から層間絶縁膜80が破損してしまうことを抑制することができる。
【0047】
また、層間絶縁膜80の開口90およびゲート電極70の開口91をそれぞれ円形としたので、薄板化の際にかかるストレスを等方的に分散することができる。
【0048】
また、層間絶縁膜80の角部80aを所定の曲率半径で丸められた形状に形成したので、薄板化の際に角部80aにかかるストレスが分散され破損を抑制できる。
【0049】
また、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、円形の開口90を有する層間絶縁膜80を形成し、層間絶縁膜80が形成された炭化珪素基板10を、第1主面10aと対向する第2主面側10bから薄板化するようにしたので、薄板化の際に層間絶縁膜80にかかるストレスが分散され、破損を抑制できる。
【0050】
なお、実施の形態1では層間絶縁膜80の開口90を円形としたが、全ての内角が90°よりも大きい多角形または楕円形としても開口90にかかるストレスが分散され、破損を抑制できる。また、ゲート電極70の開口91を円形としたが、全ての内角が90°よりも大きい多角形または楕円形としても、ゲート電極70と層間絶縁膜80の接触点から層間絶縁膜80が破損してしまうことを抑制することができる。図18は実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示しており、図18(a)はその断面図、図18(b)は図18(a)における層間絶縁膜の上面図を示している。この変形例においては、層間絶縁膜80の開口90およびゲート電極70の開口91をともに正六角形としている。また、層間絶縁膜80の開口90の内角の頂点と、ゲート電極70の開口91の内角の頂点とは、同一直線時に乗らないようにしている。このようにすることで、特定の箇所にストレスが集中することを防止することができる。
【0051】
また、層間絶縁膜80の開口90とゲート電極70の開口91とを、相似形ではない形状としてもよい。図19は実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示しており、図19(a)はその断面図、図19(b)は図19(a)における層間絶縁膜の上面図を示している。この変形例においては、層間絶縁膜80の開口90の形状を六角形、ゲート電極70の開口91の形状を円形としている。同様に、図20は実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示しており、図20(a)はその断面図、図20(b)は図20(a)における層間絶縁膜の上面図を示している。この変形例においては、層間絶縁膜80の開口90を正八角形とし、ゲート電極70の開口を正六角形としている。これらのように構成しても上記と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、実施の形態1の炭化珪素半導体の製造方法では、層間絶縁膜80を形成した後に、炭化珪素基板10を薄板化するようにしたが、層間絶縁膜80を形成し、配線電極300a、300bを形成した後に炭化珪素基板10を薄板化するようにしても上記と同様の効果を得ることができる。また、層間絶縁膜80を形成し、配線電極300a、300bを形成し、さらに絶縁膜400を形成した後に、炭化珪素基板10を薄板化するようにしても上記と同様の効果を得ることができる。これらのようにする場合は、第2主面10b側に形成するオーミック電極200は、RTA処理ではなく、nsecオーダーのパルスを有するレーザアニール処理により形成することが望ましい。
【0053】
なお、炭化珪素半導体装置の製造方法において、炭化珪素基板を薄板化した後で層間絶縁膜に開口を形成するようにした場合、亀裂の発生は抑制されるが、以下のような問題が生じる。即ち、研削によって炭化珪素基板の第2主面には加工変質層が形成される。形成された加工変質層は応力を発生させ、さらに炭化珪素基板の第1主面に形成したデバイス構造による応力も発生しているため、これらの応力により炭化珪素基板に反りが発生する。この反り量は、薄板化前後の基板厚みの比の二乗に比例して大きくなるため、基板厚みが薄くなるにつれて反り量は顕著になる。
【0054】
炭化珪素基板に発生した大きな反りは、露光工程での搬送エラーや、露光装置内のステージでウエハチャック時にLTV(Local Thickness Variation)が劣化することで高精度な露光が行えなくなるという問題を発生させる。これは円滑な基板搬送やプロセスの妨げとなるため、半導体製造システム自動化の妨げとなる。したがって、炭化珪素半導体装置の製造プロセスに薄板化を適用する場合、層間絶縁膜に開口を形成した後で、炭化珪素基板を第2主面側から薄板化することが望ましい。
【0055】
実施の形態2.
図21は実施の形態2の炭化珪素半導体装置を示すものであって、図21(a)は実施形態2の炭化珪素半導体装置の断面図、図21(b)は図21(a)における層間絶縁膜の上面図、図21(c)は図21(a)における炭化珪素ドリフト層の上面図である。実施の形態1の炭化珪素半導体装置におけるベース領域30およびソース領域40の形状は平面視においてそれぞれ正方形であったが、実施の形態2の炭化珪素半導体装置におけるベース領域30およびソース領域40の形状は、図21(c)に示すように平面視においてそれぞれ六角形である。そして、層間絶縁膜80の開口90の形状およびゲート電極70の開口91の形状は、図21(b)に示すように、平面視においてそれぞれ円形である。このように構成しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。なお、実施の形態2の炭化珪素半導体装置は、イオン注入領域であるベース領域30およびソース領域40の形状以外は実施の形態1と同様であるので、その説明を省略した。また、実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法は、ベース領域30およびソース領域40の形状を正六角形としたこと以外は実施の形態1と同様であるのでその説明を省略した。
【0056】
なお、実施の形態2では層間絶縁膜80の開口90を円形としたが、全ての内角が90°よりも大きい多角形または楕円形としてもよい。また、ゲート電極70の開口91を円形としたが、全ての内角が90°よりも大きい多角形または楕円形としてもよい。図22は実施の形態2の炭化珪素半導体装置の変形例を示しており、図22(a)はその断面図、図22(b)は図22(a)における層間絶縁膜の上面図、図22(c)は図22(a)における炭化珪素ドリフト層の上面図である。この変形例においては、層間絶縁膜80の開口90を円形、ゲート電極70の開口91を正六角形としており、このように構成しても上記と同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、上記各実施の形態において、ベース領域やソース領域等のイオン注入領域や、フィールド酸化膜、層間絶縁膜等の詳細な構造はこれらに限られるわけではなく、異なる構造であってもよい。
【0058】
また、上記各実施の形態において、レジスト等のマスクを用いて層間絶縁膜の開口を形成する場合、多角形のマスクでのレジストのオーバーエッチにより、各角が丸められた場合や、円形や楕円形になる場合があるが、これらの場合でも上記の効果を得ることができる。
【0059】
また、上記各実施の形態ではプレーナ型MOSFETについて説明したが、トレンチ型MOSFETを用いた場合でも同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
また、上記各実施の形態では炭化珪素半導体装置としてnチャネル縦型炭化珪素MOSFETを示したが、炭化珪素IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)にも適用可能である。
【0061】
また、上記各実施の形態では半導体装置として炭化珪素半導体装置を用いて説明したが、半導体装置は材料が炭化珪素に限られるものではない。本発明は、基板の硬度よりも層間絶縁膜の硬度が小さい半導体装置に対してであれば適用可能である。
【0062】
また、上記各実施の形態は組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 炭化珪素基板
10a 第1主面
10b 第2主面
11 炭化珪素ドリフト層
60 ゲート絶縁膜
70 ゲート電極
80 層間絶縁膜
80a 角部
90 層間絶縁膜の開口
91 ゲート電極の開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、珪素(Si)半導体を用いた縦型電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)においては、Si基板を薄板化して装置抵抗を低減するものが知られている。この薄板化プロセスとしては、Si基板の表面にデバイス構造を形成した後で、Si基板を裏面から所望の厚さ分だけ研削する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−294853号公報(6〜7頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記薄板化プロセスを炭化珪素(SiC)半導体装置の製造方法に適用しようとすると、SiCの硬度(新モース硬度:13)がSiの硬度(新モース硬度:8)よりもはるかに高く削れにくいため、研削の際に、SiC半導体装置のデバイス構造に非常に大きなストレスがかかってしまう。特にデバイス構造中の層間絶縁膜は、その開口の角にストレスが集中して亀裂が発生してしまうことがあり、その結果、ゲート電極と配線電極とが亀裂によって導通してゲートリークが発生してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は上述のような問題を解決するためになされたもので、薄板化の際に層間絶縁膜が破損することを抑制できる半導体装置および半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置は、第1の硬度を有する材料で構成された基板と、基板の第1主面に設けられたドリフト層と、ドリフト層上に絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、ゲート電極を覆うように形成され、第1の硬度よりも小さい第2の硬度を有する材料で構成された層間絶縁膜とを備え、基板とドリフト層とを合わせた厚みは200μm以下であり、層間絶縁膜に、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口が設けられているものである。
【0007】
また、基板の第1主面に設けられたドリフト層上に、絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、ゲート電極を覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、層間絶縁膜に、平面視において全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を形成する工程と、層間絶縁膜が形成された基板を、第1主面と対向する第2主面側から薄板化する工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体装置によれば、層間絶縁膜に、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口が設けられているので、薄板化の際に層間絶縁膜の開口にかかる力が分散され、破損を抑制することができる。
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、層間絶縁膜に、平面視において全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を形成し、層間絶縁膜が形成された基板を薄板化するようにしたので、層間絶縁膜の開口にかかる力が分散され、破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の上面図である。
【図2】図1のA−A切断面およびB−B切断面における炭化珪素半導体装置を示す図である。
【図3】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるドリフト層を形成する工程を示す図である。
【図4】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるJTE領域を形成する工程を示す図である。
【図5】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるベース領域を形成する工程を示す図である。
【図6】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるソース領域を形成する工程を示す図である。
【図7】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるフィールド酸化膜およびゲート絶縁膜を形成する工程を示す図である。
【図8】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるゲート電極を形成する工程を示す図である。
【図9】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法における層間絶縁膜を形成する工程を示す図である。
【図10】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法における層間絶縁膜に開口を形成する工程およびソース電極を形成する工程を示す図である。
【図11】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法における基板を薄板化する工程を示す図である。
【図12】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法におけるオーミック電極を形成する工程を示す図である。
【図13】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法における配線電極および配線電極上の絶縁膜を形成する工程を示す図である。
【図14】比較例の炭化珪素半導体装置において、層間絶縁膜に開口を形成した後に、基板を第2主面側から研削した後の、層間絶縁膜を示す光学顕微鏡写真である。
【図15】配線電極を形成した後の、図14のX−X’線断面のSEM写真である。
【図16】実施の形態1のシミュレーションに用いたモデルを示す立体図である。
【図17】実施の形態1のシミュレーションの結果を示す図である。
【図18】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示す図である。
【図19】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示す図である。
【図20】実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示す図である。
【図21】実施の形態2の炭化珪素半導体装置を示す図である。
【図22】実施の形態2の炭化珪素半導体装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1および図2は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置を示すものであって、図1(a)は炭化珪素半導体装置の上面図、図1(b)は図1(a)の絶縁膜を除いた上面図、図2(a)は図1のA−A切断面を部分的に示す断面図、図2(b)は図1のB−B切断面を部分的に示す断面図、図2(c)は図2(b)におけるドリフト層の上面図、図2(d)は図2(a)における層間絶縁膜の上面図、図2(e)は図2(b)における層間絶縁膜の上面図である。なお、ここでは半導体装置の一例として、nチャネル縦型炭化珪素MOSFETについて説明する。
【0012】
まず、炭化珪素半導体装置を上面からみた構成について説明する。
実施の形態1の炭化珪素半導体装置は、図1(b)に示すように、その中央部に配線電極300aが形成されている。この配線電極300aの下部にはMOSFETの単位構造であるユニットセルが複数配置されており、配線電極300aは各ユニットセルのソース電極(ここでは図示せず)に電気的に接続されている。そして、配線電極300aの外周には層間絶縁膜80が形成されており、その外周には配線電極300bが形成されている。この配線電極300bは、各ユニットセルのゲート電極(ここでは図示せず)に接続され、ゲート電圧はこの配線電極300bを介して供給される。また、配線電極300bの外周には、ダイシングライン1000と一定の距離を隔てて、層間絶縁膜80が形成されている。これらの構造の上部には、図1(a)に示すように、配線電極300aおよび配線電極300bの一部を除いて、耐圧を向上させるための、例えばポリイミドからなる絶縁膜400が形成されている。
【0013】
配線電極300bの外周における層間絶縁膜80は、図1(b)に示すように、その角部80aが所定の曲率半径で丸められた形状に形成されている。この領域では、炭化珪素ドリフト層11の表面に、後述するフィールド酸化膜(ここでは図示せず)、層間絶縁膜80、絶縁膜400(図1(a)に図示されている)の順で、これらが3層に積層されており、フィールド酸化膜50および絶縁膜400の角部も、層間絶縁膜80の角部80aと同一の曲率半径で丸められた形状に形成されている。なお、曲率半径は炭化珪素半導体装置のサイズによって適宜決められ、例えば、装置サイズが3mm角の場合、0.1mm以上であることが望ましい。
【0014】
次に、図1のB−B切断面における炭化珪素半導体装置の断面構造について説明する。
実施の形態1の炭化珪素半導体装置は、図2(b)に示すように第1主面10aが(0001)面から4°あるいは8°オフしており、4Hのポリタイプを有するn型で低抵抗である炭化珪素基板10上に、n型の炭化珪素ドリフト層11が形成されている。なお、炭化珪素基板10と炭化珪素ドリフト層11とを合わせて炭化珪素基体12と呼ぶことにする。
【0015】
炭化珪素ドリフト層11の表層部には、ある幅だけ離間するようにアルミニウム(Al)をp型不純物として含有するp型のイオン注入領域であるベース領域30が形成されている。そして、それぞれのベース領域30内の表層部には、ある幅だけ離間した部位に、第2不純物である窒素(N)をn型不純物として含有するイオン注入領域であるソース領域40が、ベース領域30よりも浅く形成されている。ベース領域30およびソース領域40は、図2(c)に示すように、平面視においてそれぞれ正方形である。
【0016】
ベース領域30およびソース領域40を含む炭化珪素ドリフト層11の表面側には、ベース領域30およびソース領域40の表面側の一部を除き、酸化珪素で構成されるゲート絶縁膜60が形成されている。さらに、ゲート絶縁膜60上の1対のソース領域40間の領域を含む部位に対向する位置には、ゲート電極70が形成されている。そして、ゲート絶縁膜60の形成されていない炭化珪素ドリフト層11の表面上には、炭化珪素ドリフト層11の表面とオーミック接合しているソース電極100が形成されている。上述した配線電極300aはソース電極100と電気的に接続しており、配線電極300aとゲート電極70とは層間絶縁膜80により絶縁されている。
【0017】
層間絶縁膜80は、酸化珪素(例えば、SiO2)等の炭化珪素よりも硬度の低い材料で構成され、ゲート電極70を覆うように形成されている。即ち、層間絶縁膜80の内部にはゲート電極70による段差が形成されている。また、図2(e)に示すように、層間絶縁膜80にはソース電極100への開口90が平面視において円形に形成されており、この形状はイオン注入領域であるベース領域30およびソース領域40の平面視における形状に対して略相似形状とは異なる形状である。この開口90の直径は半導体装置ごとに異なるが、一例として、1〜5μmである。また、層間絶縁膜80の開口90の近傍にあるゲート電極70の開口91も円形に形成されており、層間絶縁膜80の開口90とゲート電極70の開口91とは平面視において相似形である。
【0018】
炭化珪素基板10の第2主面10b側には、炭化珪素と低コンタクト抵抗を形成するオーミック電極200が設けられており、その下部には裏面電極500が形成されている。炭化珪素基板10は、第2主面10bから研削により薄板化されており、炭化珪素基体12は200μm以下の厚さである。
【0019】
次に、図1のA−A切断面における炭化珪素半導体装置の断面構造について説明する。
図2(a)に示すように、炭化珪素基板10上に形成された炭化珪素ドリフト層11の表層部には、アルミニウム(Al)をp型不純物として含有するp型のベース領域30と、Alをp型不純物として含有し、耐圧を維持させるためのイオン注入領域であるJTE(Junction Termination Extention)領域20が設けられている。そして、ベース領域30とJTE領域20を含む炭化珪素ドリフト層11の表面側にはフィールド酸化膜50が形成されており、このフィールド酸化膜50上には、ゲート電極70が形成されている。
【0020】
ゲート電極70上には層間絶縁膜80が堆積されており、この層間絶縁膜80には部分的に開口90が設けられている。図2(d)に示すように、この開口90の形状は平面視において円形である。そして、層間絶縁膜80の上には上述の配線電極300bが形成され、開口90を介して配線電極300bとゲート電極70とが電気的に接続されている。また、配線電極300bの上部には、絶縁膜400が形成されている。
【0021】
炭化珪素基板10の第2主面10b側の構造については、上述した図1のB−B切断面における炭化珪素半導体装置の断面構造と同様であるので、説明を省略する。
【0022】
次に、図3ないし図13を用いて実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。ここで、図3は炭化珪素ドリフト層を形成する工程を示す図、図4はJTE領域を形成する工程を示す図、図5はベース領域を形成する工程を示す図、図6はソース領域を形成する工程を示す図、図7はフィールド酸化膜およびゲート絶縁膜を形成する工程を示す図、図8はゲート電極を形成する工程を示す図、図9は層間絶縁膜を形成する工程を示す図、図10は層間絶縁膜に開口を形成する工程およびソース電極を形成する工程を示す図、図11は炭化珪素基板を薄板化する工程を示す図、図12はオーミック電極を形成する工程を示す図、図13は配線電極および配線電極上の絶縁膜を形成する工程を示す図である。なお、図3〜図13において、(a)は図1のA−A切断面の部分的な断面を、(b)は図1のB−B切断面の部分的な断面を示している。
【0023】
まず、第1主面10aの面方位が(0001)面から4°または8°オフした、4Hのポリタイプを有するn型で低抵抗の炭化珪素基板10を準備する。そして、図3(a)および図3(b)に示すように、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により、炭化珪素ドリフト層11をエピタキシャル成長させる。この炭化珪素ドリフト層11はn型の不純物を有しており、その不純物濃度は想定する耐圧によって異なるが例えば、1×1015〜1×1017cm−3である。また、炭化珪素ドリフト層11の厚さは5〜50μmである。
【0024】
次に、図4(a)に示すように、炭化珪素ドリフト層11の表面に第1注入マスクを形成し、表面に第1注入マスクが形成された炭化珪素ドリフト層11にp型の不純物であるAlをイオン注入する。このとき、Alのイオン注入深さは炭化珪素ドリフト層11の厚さを超えない0.1〜3μm程度とする。また、イオン注入されたAlの不純物濃度は、1×1017〜1×1019cm−3の範囲で、炭化珪素ドリフト層11のn型不純物濃度より多いものとする。ここで形成されたイオン注入領域は、耐圧を維持させるためのものであり、上述したJTE領域20である。
【0025】
次に、図5(a)および図5(b)に示すように、炭化珪素ドリフト層11の表面に第2注入マスクを形成し、表面に第2注入マスクが形成された炭化珪素ドリフト層11にp型の不純物であるAlをイオン注入する。このとき、Alのイオン注入深さは炭化珪素ドリフト層11の厚さを超えない0.1〜3μm程度とする。また、イオン注入されたAlの不純物濃度は、1×1017〜1×1019cm−3の範囲で炭化珪素ドリフト層11のn型不純物濃度より多いものとする。ここで形成されたイオン注入領域は、ベース領域30である。
【0026】
第2注入マスクを除去後、図6(b)に示すように、炭化珪素ドリフト層11の表面に第3注入マスクを形成し、第3注入マスクが形成された炭化珪素ドリフト層11の表面に、n型の不純物であるNをイオン注入する。Nのイオン注入深さはベース領域30の厚さより浅いものとする。また、イオン注入したNの不純物濃度は、1×1018〜1×1021cm−3の範囲であり、この不純物濃度はベース領域30のAlの不純物濃度を超えるものとする。ベース領域30内のNが注入された領域のうちn型を示すイオン注入領域がソース領域40となる。さらに、第3注入マスクを除去後、熱処理装置によってアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガス雰囲気中で1300〜1900℃、30秒〜1時間のアニールを行う。このアニールにより、イオン注入されたN、Alを活性化させる。
【0027】
次に、図7(a)に示すように、CVD法などによってSiO2からなるフィールド酸化膜50を形成する。このフィールド酸化膜50は、上面から見たときに、その角部が所定の曲率半径で丸められた形状に形成する。次いで、図7(b)に示すように、ベース領域30およびソース領域40を含む炭化珪素ドリフト層11の表面を熱酸化し、所望の厚みのゲート絶縁膜60を形成する。
【0028】
次に、図8(a)および図8(b)に示すように、図1のA−A切断面においてはフィールド酸化膜50の上に、図1のB−B切断面においてはゲート絶縁膜60の上に、減圧CVD法により導電性を有する多結晶珪素膜をそれぞれ形成し、これをパターニングする。これにより、図1のA−A切断面ではフィールド酸化膜50を介してゲート電極70が形成され、図1のB−B切断面ではゲート絶縁膜60を介してゲート電極70が形成される。ここで、図8(c)は図8(b)のゲート電極の上面図であり、図1のB−B切断面におけるゲート電極70は、平面視において円形の開口91を有する形状に形成される。
【0029】
次に、図9(a)および図9(b)に示すように、ゲート電極70を覆うように、CVD法などによりSiO2からなる層間絶縁膜80を形成する。
【0030】
次に、図10(b)に示すように、C3H8などを含むガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチングにより、層間絶縁膜80の所定位置に開口90を形成する。図10(d)は、図10(b)における層間絶縁膜の上面図であり、層間絶縁膜80に形成する開口90は、平面視において円形にする。そして、開口90を形成した部分の炭化珪素ドリフト層11の表面に、ニッケル(Ni)などの金属膜を成膜し、熱処理及び薬品処理などによりソース電極100を形成する。その後、図10(a)に示すように、ドライエッチング、フッ化水素などを用いたウエットエッチングまたはドライエッチングとウエットエッチングを組み合わせた方法で、層間絶縁膜80に開口90を形成する。図10(c)は、図10(a)における層間絶縁膜の上面図であり、層間絶縁膜80に形成する開口90は円形にする。また、このときダイシングライン1000上に形成されている層間絶縁膜80を除去し、層間絶縁膜80を、平面視において、その角部80a(図1(b)に図示されている)が所定の曲率半径で丸められた形状にする。
【0031】
次に、図11(a)および図11(b)に示すように、層間絶縁膜80が形成された炭化珪素基板10を、第1主面10aと対向する第2主面10b側から研削により薄板化する。この薄板化により、炭化珪素基体12の厚みを200μm以下にする。
【0032】
なお、研削に用いる研削機としては、基板を真空吸着により固定するチャックテーブルと、このチャックテーブルの上方に配置され、回転しながらチャックテーブルの方向へ向かって一定速度で下降して基板を加工する砥石とを備えるものが挙げられる。この種の研削機を用いる場合、炭化珪素基板10の第1主面10a側をチャックテーブルに固定し、チャックテーブルが自転した状態で、第2主面10b側に回転する砥石を押圧することにより研削を行う。また、研削中、第一主面10a側に形成されている層間絶縁膜80には保護テープを貼り付けるか、またはワックスなどを塗布しサポート基板を貼り付けることで保護されている。また、研削に用いる砥石としては、例えばダイヤモンド砥粒をビトリファイドで結合したものが用いられる。
【0033】
そして、薄板化した炭化珪素基体12を洗浄し、図12(a)および図12(b)に示すように、炭化珪素基板10の第2主面10bの全面にNiの金属膜を成膜し、成膜後、急速アニール処理(RTA:Rapid Thermal Anneal)により1000℃以上の高温熱処理を行い、第2主面10bの全面にオーミック電極200を形成する。なお、ここでは金属膜としてNiを例に挙げたが、炭化珪素とオーミック接合が得られる金属膜であればNi以外でも適用可能である。
【0034】
次いで、図13(a)および図13(b)に示すように、ゲート電極70への配線電極300bと、ソース電極100への配線電極300aとをパターニングする。配線電極300a、300bとしては、例えばAl膜などが挙げられる。さらに、炭化珪素基板10の第1主面10a側に形成した装置構造の上部の所定位置に、耐圧を維持するための、ポリイミドなどからなる絶縁膜400を堆積させる。この絶縁膜400は、上面からみたときに、その角部が所定の曲率半径で丸められた形状に形成する。
【0035】
最後に、炭化珪素基板10の第2主面10bに形成したオーミック電極200の下部に、裏面電極500(図2(a)および図2(b)に図示されている)を形成する。以上により実施の形態1の炭化珪素半導体装置が完成する。
【0036】
次に、比較例の炭化珪素半導体装置について説明する。実施の形態1の炭化珪素半導体装置においては、層間絶縁膜80の開口90およびゲート電極70の開口91はともに円形であるが、比較例の炭化珪素半導体装置においては、層間絶縁膜の開口およびゲート電極の開口がともに正方形である。そして、その他の構成は実施の形態1の炭化珪素半導体装置と同様である。また、比較例の炭化珪素半導体装置の製造方法は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法と、層間絶縁膜の開口およびゲート電極の開口の形状を正方形に形成することのみが異なる。
【0037】
図14は、比較例の炭化珪素半導体装置において、層間絶縁膜に開口を形成した後に、炭化珪素基板を第2主面側から研削した後の、層間絶縁膜を示す光学顕微鏡写真である。図14において、表面に見える正方形の領域の外側は層間絶縁膜が形成されている領域であり、正方形の領域の内側はソース電極が形成されている領域である。中央部に見られる層間絶縁膜の開口には、開口の4つの角から外側に向かってそれぞれ亀裂が発生していることが分かる。図15は、配線電極を形成した後の、図14のX−X’線断面のSEM(Secondary Electron Microscope)写真である。図15において、ゲート電極と配線電極とが亀裂によって導通しており、これによりゲートリークが発生していることが分かる。
【0038】
表1は、研削前の炭化珪素基体の厚みが380μmである比較例の炭化珪素半導体装置において、研削後の炭化珪素基体の厚みと層間絶縁膜の開口の亀裂との関係を示すものである。表1において、研削後に層間絶縁膜の開口に亀裂が発生しなかった場合は○、発生した場合は×とした。研削後の厚みが360μm、340μmの場合では、比較例の炭化珪素半導体装置でも層間絶縁膜に亀裂は発生していないが、厚みが200μm以下になると層間絶縁膜の開口に亀裂が発生することがわかる。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、比較例の炭化珪素半導体装置の層間絶縁膜の開口に亀裂が発生した原因を説明する。
炭化珪素半導体装置の研削による薄板化は、炭化珪素基板の第1主面側をチャックテーブルに固定した状態で、自転するチャックテーブル上の第2主面側に回転する砥石を押圧することにより行うが、炭化珪素基板は非常に硬く削れにくいため、下降する砥石が第2主面を押圧する力は非常に大きくなる。これにより、第1主面側に形成されている層間絶縁膜には、チャックテーブルから非常に大きなストレスが加えられる。層間絶縁膜を形成する酸化珪素は新モース硬度が8と炭化珪素と比較して軟らかいので、ストレスが集中しやすい開口の角から亀裂が発生する。
なお、Si半導体装置では、Siの硬度は新モース硬度で8であり、炭化珪素と比較して軟らかく削れやすいため、砥石がSi基板の第2主面を押圧する力は比較的小さい。このため、Si基板の第1主面側に形成した層間絶縁膜にかかるストレスは小さく上記のような亀裂は発生しない。
【0041】
次に、実施の形態1の炭化珪素半導体装置を炭化珪素基板の第2主面側から加圧した場合の、層間絶縁膜の開口の形状と、この開口の各頂点にかかる圧力との関係を簡易的なモデルでシミュレーションしたものについて説明する。
【0042】
図16は、このシミュレーションに用いたモデルを表す立体図である。シミュレーションに用いたモデルは、図16に示すように、直方体25の下面25aの中央に、平面形状が正方形の開口26を設け、この開口26の底面26aを固定した状態で、直方体の上面25bから加圧するものである。このモデルと実施の形態1の炭化珪素半導体装置とは、上面25bが炭化珪素基板10の第2主面10b、下面25aが炭化珪素基板10の第1主面10a上に形成された層間絶縁膜80の表面、開口26が層間絶縁膜の開口90、上面に加えられる圧力が砥石による押圧にそれぞれ対応する。なお、図16は開口26が正方形の場合のモデルを図示しており、シミュレーションは正五角形、正六角形、円形についても行った。
【0043】
図17にシミュレーションの結果を示す。図17において、横軸は開口の形状、縦軸は開口の各頂点にかかる圧力の値を、開口の形状が正四角形の値で規格化したものを示している。図17より、開口の形状を正五角形、正六角形、円形にすると、各頂点にかかる圧力は正四角形の場合と比較して、それぞれ14%、17%、26%減少する。即ち、開口の頂点を増やすとともに、各頂点の内角の角度を大きくすることで各頂点にかかる圧力を減少させることができる。したがって、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を有する層間絶縁膜を形成することで、層間絶縁膜の開口にかかる力が分散され、亀裂の発生を抑制できる。
【0044】
また、上述したように、層間絶縁膜にはゲート電極による段差が形成されているため、層間絶縁膜はゲート電極の開口部分にも角を有することとなる。したがって、ゲート電極を、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を有する形状に形成することで、ゲート電極との接触点から層間絶縁膜にかかる力が分散され、亀裂の発生を抑制できる。さらに、層間絶縁膜の角部にもストレスが集中するが、角部を所定の曲率半径で丸められた形状に形成することで、層間絶縁膜の角部にかかるストレスを低減できる。
【0045】
実施の形態1の炭化珪素半導体装置によれば、層間絶縁膜80に設けられている開口90を円形としたので、炭化珪素基体12の厚みを200μm以下に薄板化する場合でも、薄板化の際に層間絶縁膜80の開口にかかるストレスが分散され、破損を抑制できる。
【0046】
また、ゲート電極70を円形の開口90を有する形状に形成したので、薄板化の際にゲート電極70と層間絶縁膜80の接触点から層間絶縁膜80が破損してしまうことを抑制することができる。
【0047】
また、層間絶縁膜80の開口90およびゲート電極70の開口91をそれぞれ円形としたので、薄板化の際にかかるストレスを等方的に分散することができる。
【0048】
また、層間絶縁膜80の角部80aを所定の曲率半径で丸められた形状に形成したので、薄板化の際に角部80aにかかるストレスが分散され破損を抑制できる。
【0049】
また、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、円形の開口90を有する層間絶縁膜80を形成し、層間絶縁膜80が形成された炭化珪素基板10を、第1主面10aと対向する第2主面側10bから薄板化するようにしたので、薄板化の際に層間絶縁膜80にかかるストレスが分散され、破損を抑制できる。
【0050】
なお、実施の形態1では層間絶縁膜80の開口90を円形としたが、全ての内角が90°よりも大きい多角形または楕円形としても開口90にかかるストレスが分散され、破損を抑制できる。また、ゲート電極70の開口91を円形としたが、全ての内角が90°よりも大きい多角形または楕円形としても、ゲート電極70と層間絶縁膜80の接触点から層間絶縁膜80が破損してしまうことを抑制することができる。図18は実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示しており、図18(a)はその断面図、図18(b)は図18(a)における層間絶縁膜の上面図を示している。この変形例においては、層間絶縁膜80の開口90およびゲート電極70の開口91をともに正六角形としている。また、層間絶縁膜80の開口90の内角の頂点と、ゲート電極70の開口91の内角の頂点とは、同一直線時に乗らないようにしている。このようにすることで、特定の箇所にストレスが集中することを防止することができる。
【0051】
また、層間絶縁膜80の開口90とゲート電極70の開口91とを、相似形ではない形状としてもよい。図19は実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示しており、図19(a)はその断面図、図19(b)は図19(a)における層間絶縁膜の上面図を示している。この変形例においては、層間絶縁膜80の開口90の形状を六角形、ゲート電極70の開口91の形状を円形としている。同様に、図20は実施の形態1の炭化珪素半導体装置の変形例を示しており、図20(a)はその断面図、図20(b)は図20(a)における層間絶縁膜の上面図を示している。この変形例においては、層間絶縁膜80の開口90を正八角形とし、ゲート電極70の開口を正六角形としている。これらのように構成しても上記と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、実施の形態1の炭化珪素半導体の製造方法では、層間絶縁膜80を形成した後に、炭化珪素基板10を薄板化するようにしたが、層間絶縁膜80を形成し、配線電極300a、300bを形成した後に炭化珪素基板10を薄板化するようにしても上記と同様の効果を得ることができる。また、層間絶縁膜80を形成し、配線電極300a、300bを形成し、さらに絶縁膜400を形成した後に、炭化珪素基板10を薄板化するようにしても上記と同様の効果を得ることができる。これらのようにする場合は、第2主面10b側に形成するオーミック電極200は、RTA処理ではなく、nsecオーダーのパルスを有するレーザアニール処理により形成することが望ましい。
【0053】
なお、炭化珪素半導体装置の製造方法において、炭化珪素基板を薄板化した後で層間絶縁膜に開口を形成するようにした場合、亀裂の発生は抑制されるが、以下のような問題が生じる。即ち、研削によって炭化珪素基板の第2主面には加工変質層が形成される。形成された加工変質層は応力を発生させ、さらに炭化珪素基板の第1主面に形成したデバイス構造による応力も発生しているため、これらの応力により炭化珪素基板に反りが発生する。この反り量は、薄板化前後の基板厚みの比の二乗に比例して大きくなるため、基板厚みが薄くなるにつれて反り量は顕著になる。
【0054】
炭化珪素基板に発生した大きな反りは、露光工程での搬送エラーや、露光装置内のステージでウエハチャック時にLTV(Local Thickness Variation)が劣化することで高精度な露光が行えなくなるという問題を発生させる。これは円滑な基板搬送やプロセスの妨げとなるため、半導体製造システム自動化の妨げとなる。したがって、炭化珪素半導体装置の製造プロセスに薄板化を適用する場合、層間絶縁膜に開口を形成した後で、炭化珪素基板を第2主面側から薄板化することが望ましい。
【0055】
実施の形態2.
図21は実施の形態2の炭化珪素半導体装置を示すものであって、図21(a)は実施形態2の炭化珪素半導体装置の断面図、図21(b)は図21(a)における層間絶縁膜の上面図、図21(c)は図21(a)における炭化珪素ドリフト層の上面図である。実施の形態1の炭化珪素半導体装置におけるベース領域30およびソース領域40の形状は平面視においてそれぞれ正方形であったが、実施の形態2の炭化珪素半導体装置におけるベース領域30およびソース領域40の形状は、図21(c)に示すように平面視においてそれぞれ六角形である。そして、層間絶縁膜80の開口90の形状およびゲート電極70の開口91の形状は、図21(b)に示すように、平面視においてそれぞれ円形である。このように構成しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。なお、実施の形態2の炭化珪素半導体装置は、イオン注入領域であるベース領域30およびソース領域40の形状以外は実施の形態1と同様であるので、その説明を省略した。また、実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法は、ベース領域30およびソース領域40の形状を正六角形としたこと以外は実施の形態1と同様であるのでその説明を省略した。
【0056】
なお、実施の形態2では層間絶縁膜80の開口90を円形としたが、全ての内角が90°よりも大きい多角形または楕円形としてもよい。また、ゲート電極70の開口91を円形としたが、全ての内角が90°よりも大きい多角形または楕円形としてもよい。図22は実施の形態2の炭化珪素半導体装置の変形例を示しており、図22(a)はその断面図、図22(b)は図22(a)における層間絶縁膜の上面図、図22(c)は図22(a)における炭化珪素ドリフト層の上面図である。この変形例においては、層間絶縁膜80の開口90を円形、ゲート電極70の開口91を正六角形としており、このように構成しても上記と同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、上記各実施の形態において、ベース領域やソース領域等のイオン注入領域や、フィールド酸化膜、層間絶縁膜等の詳細な構造はこれらに限られるわけではなく、異なる構造であってもよい。
【0058】
また、上記各実施の形態において、レジスト等のマスクを用いて層間絶縁膜の開口を形成する場合、多角形のマスクでのレジストのオーバーエッチにより、各角が丸められた場合や、円形や楕円形になる場合があるが、これらの場合でも上記の効果を得ることができる。
【0059】
また、上記各実施の形態ではプレーナ型MOSFETについて説明したが、トレンチ型MOSFETを用いた場合でも同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
また、上記各実施の形態では炭化珪素半導体装置としてnチャネル縦型炭化珪素MOSFETを示したが、炭化珪素IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)にも適用可能である。
【0061】
また、上記各実施の形態では半導体装置として炭化珪素半導体装置を用いて説明したが、半導体装置は材料が炭化珪素に限られるものではない。本発明は、基板の硬度よりも層間絶縁膜の硬度が小さい半導体装置に対してであれば適用可能である。
【0062】
また、上記各実施の形態は組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 炭化珪素基板
10a 第1主面
10b 第2主面
11 炭化珪素ドリフト層
60 ゲート絶縁膜
70 ゲート電極
80 層間絶縁膜
80a 角部
90 層間絶縁膜の開口
91 ゲート電極の開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の硬度を有する材料で構成された基板と、
前記基板の第1主面に設けられたドリフト層と、
前記ドリフト層上に絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように形成され、前記第1の硬度よりも小さい第2の硬度を有する材料で構成された層間絶縁膜とを備え、
前記基板と前記ドリフト層とを合わせた厚みは200μm以下であり、
前記層間絶縁膜に、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口が設けられている半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極は、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を有する形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極の開口と前記層間絶縁膜の開口とは、平面視において相似となる形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記層間絶縁膜の角部は、平面視において所定の曲率半径で丸められた形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板は、炭化珪素で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記層間絶縁膜は、酸化珪素で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
基板の第1主面に設けられたドリフト層上に、絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極を覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に、平面視において全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を形成する工程と、
前記層間絶縁膜が形成された前記基板を、前記第1主面と対向する第2主面側から薄板化する工程とを備えた半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記基板を、前記基板と前記ドリフト層とを合わせた厚みが200μm以下になるように薄板化することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ゲート電極を、平面視において全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の平面形状の開口を有する形状に形成することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記薄板化を研削により行うことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ゲート電極の開口と前記層間絶縁膜の開口とを、平面視において相似となる形状に形成することを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記層間絶縁膜の角部を、平面視において所定の曲率半径で丸められた形状に形成することを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記基板は、炭化珪素で構成されていることを特徴とする請求項7ないし請求項12のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記層間絶縁膜は、酸化珪素で構成されていることを特徴とする請求項7ないし請求項13のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
第1の硬度を有する材料で構成された基板と、
前記基板の第1主面に設けられたドリフト層と、
前記ドリフト層上に絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように形成され、前記第1の硬度よりも小さい第2の硬度を有する材料で構成された層間絶縁膜とを備え、
前記基板と前記ドリフト層とを合わせた厚みは200μm以下であり、
前記層間絶縁膜に、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口が設けられている半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極は、平面視において、全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を有する形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極の開口と前記層間絶縁膜の開口とは、平面視において相似となる形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記層間絶縁膜の角部は、平面視において所定の曲率半径で丸められた形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板は、炭化珪素で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記層間絶縁膜は、酸化珪素で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
基板の第1主面に設けられたドリフト層上に、絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極を覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に、平面視において全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の開口を形成する工程と、
前記層間絶縁膜が形成された前記基板を、前記第1主面と対向する第2主面側から薄板化する工程とを備えた半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記基板を、前記基板と前記ドリフト層とを合わせた厚みが200μm以下になるように薄板化することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ゲート電極を、平面視において全ての内角が90°より大きい多角形、円形または楕円形の平面形状の開口を有する形状に形成することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記薄板化を研削により行うことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ゲート電極の開口と前記層間絶縁膜の開口とを、平面視において相似となる形状に形成することを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記層間絶縁膜の角部を、平面視において所定の曲率半径で丸められた形状に形成することを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記基板は、炭化珪素で構成されていることを特徴とする請求項7ないし請求項12のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記層間絶縁膜は、酸化珪素で構成されていることを特徴とする請求項7ないし請求項13のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−248572(P2012−248572A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117039(P2011−117039)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]