説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置

【課題】半導体基板上に積層構造からなる複数の金属膜を無電解めっき法により形成する半導体装置の製造方法において、遮光環境下に位置させるめっき槽を少なくする方法を提供する。
【解決手段】金属膜を形成する工程は、第1めっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき工程(ステップS52)と、第2めっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程(ステップS54)と、第3めっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程(ステップS56)を含む。第1めっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき工程は遮光環境下で行われ、第2めっき槽および第3めっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は非遮光環境下で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の電極には、ワイヤやバンプなどを接続するための金属膜が形成される。この金属膜の形成方法の一つに無電解めっき法がある。
【0003】
一方、半導体装置の電極は基板に形成された半導体素子に接続している。半導体素子の中にはp型不純物領域とn型不純物領域が接合した領域が含まれている。この接合領域に光が入射すると、光電効果によりp型不純物領域に接続された電極とn型不純物領域に接続された電極の間に光起電力が生じる。このため、無電解めっき法において処理中の半導体装置に光が入射すると、p型不純物領域に接続された電極とn型不純物領域に接続された電極の間でめっき金属膜の厚さに差が生じてしまう。
【0004】
これに対して特許文献1には、半導体基板に化学処理を行なった後に水洗処理を行う場合において、化学処理槽を遮光環境下に位置させ、水洗槽を遮光されていない環境下に位置させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−273958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年は、電極上の金属膜を複数のめっき金属膜からなる多層構造にすることが多い。このような場合、無電解めっきを行うめっき槽は複数準備されるが、すべてのめっき槽を遮光環境に位置させると、めっき槽の構築に必要な初期コストが上昇してしまう。また、めっき槽を目視で監視することができなくなるため、工程管理に必要な労力が増えてしまう。このため、遮光環境下に位置させるめっき槽を少なくすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、半導体基板上に積層構造からなる複数の金属膜を無電解めっき法により形成する半導体装置の製造方法であって、
前記金属膜を形成する工程は、第1のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき工程と、第2のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程と、を含み、
前記第1のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき工程は遮光環境下で行われ、
前記第2のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は非遮光環境下で行われる半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明によれば、半導体基板上に無電解めっき法により積層構造からなる複数の金属膜を形成する半導体装置の製造装置であって、
遮光環境下におかれ、還元反応を含む無電解めっきを行う第1のめっき槽と、
非遮光環境下におかれ、置換反応のみによる無電解めっきを行う第2のめっき槽と、
を有する半導体装置の製造装置が提供される。
【0009】
ここで還元反応を含む無電解めっき工程とは、当該めっき成膜の全過程が還元反応を伴って進行する場合だけでなく、当該めっき成膜の全過程のうち一部でも還元反応を伴っている場合をも含むものとする。また、置換反応のみによる無電解めっき工程とは、当該めっき成膜の全過程が置換反応によって進行することを意味し、当該めっき成膜の過程において還元反応が伴わないものとする。
【0010】
発明者は、半導体素子からの光起電力の影響と無電解めっきの成膜過程における反応機構との関係に着目し、詳細な検討を行った。その結果、還元反応を伴う無電解めっき工程においては、その成膜速度は光起電力に対して強い依存性を示すのに対し、置換反応のみによって進行する無電解めっき工程においては、成膜速度は光起電力に殆ど依存しないことを見出した。すなわち発明者は、光起電力の影響は、還元反応を伴う無電解めっき工程においては大きく、置換反応のみによって進行する無電解めっき工程においては無視できるほどに小さいことを見出した。このことは、置換反応のみによって進行するめっき工程においては、設備の複雑化が要求される遮光環境を必要としないことを意味する。なお、後述のように、この場合の置換反応のみによって進行するめっき工程とは、成膜の全過程が置換反応によって行われる場合を意味し、還元反応が伴わないことが必要である。
【0011】
また、めっき膜の材料やめっき液中の添加剤(例えば還元剤)によっては、(1)成膜の全過程が、還元反応または置換反応のいずれか一方の反応機構を伴って進行する場合と、(2)成膜の初期段階においては置換反応を伴って進行するものの、その後(ある膜厚を境に)還元反応を伴う成膜へと反応機構が変化する場合、とがある。(1)の場合の還元反応のみで成膜が進行する場合は当然であるが、(2)の場合においても、反応機構の変化に伴い、光起電力の影響により、成膜途中から成膜速度が急激に変化してしまうため、成膜ロットごとの膜厚ばらつきを生じさせることになる。このような不具合を抑制するため、成膜の全過程が還元反応を伴って進行する場合だけでなく、成膜の全過程の一部に還元反応を含む無電解めっき工程においても、遮光環境とすることが必要である。
【0012】
本発明は、上記無電解めっき成膜における反応機構に基づいて、めっき工程の環境を非遮光とする場合と遮光とする場合とに設定するものである。すなわち、めっき成膜の全過程が還元反応を含まない、置換反応のみによる無電解めっき工程は非遮光環境で行い、めっき成膜の全過程のうち一部でも還元反応を含む無電解めっき工程は遮光環境で行う。このことにより、製造設備の簡略化が図られるととともに、工程の監視負担が低減された半導体装置の製造方法と製造装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遮光環境下に位置するめっき槽の数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の要部を示すフローチャートである。
【図2】第1の実施形態に用いる半導体製造装置の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の全体を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態によって処理された後の被処理基板(半導体装置)の断面図である。
【図5】図4に示した被処理基板の電極パッドに半田バンプを接合した状態を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の要部を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態において処理された後の被処理基板(半導体装置)の断面図である。
【図8】図7に示した被処理基板の電極パッドにボンディングワイヤを接合した状態を示す断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の対象となる半導体装置の構成を示す断面図である。
【図10】第3の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図11】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図12】第5の実施形態に係る半導体製造装置の構成を示す図である。
【図13】各図はホルダーの断面図である。
【図14】第6の実施形態に係る半導体製造装置の構成を示す図である。
【図15】第6の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
また以下の各実施形態において、「還元反応」とは、対象物質が、電子を受け取る化学反応をいう。また、その反応を助長するための物質を「還元剤」という。例えば、無電解ニッケルめっきにおける還元反応は、還元剤としてめっき液中に添加されている次亜リン酸から放出される電子を、ニッケルイオンが受け取り、ニッケル金属が析出する反応である。
【0017】
また「置換反応」とは、相対的にイオン化傾向の大きい金属元素がイオン化し、相対的にイオン化傾向の小さい金属元素が置換するように析出する反応をいう。例えば、金めっきにおける置換反応は、めっき液中にニッケル金属を浸漬させると、相対的にイオン化傾向の高いニッケルがイオン化し、相対的にイオン化傾向の小さい金が、ニッケルと置換するようにニッケル上に析出する反応である。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の要部を示すフローチャートである。この半導体装置の製造方法は、半導体装置の電極上に第1めっき膜を形成する工程(ステップS52)と、第1めっき膜上に第2めっき膜を形成する工程(ステップS54)と、第2めっき膜上に第3めっき膜を形成する工程(ステップS56)とを備える。第1めっき膜を形成する工程(ステップS52)では、電極を有する被処理基板を第1めっき槽に浸漬させ、還元反応を用いた第1の無電解めっきを電極に行うことにより、電極上に第1めっき膜を形成する。第2めっき膜を形成する工程(ステップS54)では、被処理基板を第2めっき槽に浸漬させ、非遮光環境下で電極に第2の無電解めっきを行うことにより、第1めっき膜上に第2めっき膜を形成する。第2めっき膜は、第1めっき膜より薄い。第3めっき膜を形成する工程(ステップS56)では、被処理基板を第3めっき槽に浸漬させ、電極に第3の無電解めっきを行うことにより、第2めっき膜上に第3めっき膜を形成する。
【0019】
本発明者が検討した結果、還元反応を伴う無電解めっき工程においては、その成膜速度は光起電力に対して強い依存性を示すのに対し、置換反応のみによって進行する無電解めっき工程においては、成膜速度は光起電力に殆ど依存しないことを見出した。すなわち発明者は、光起電力の影響は、還元反応を伴う無電解めっき工程においては大きく、置換反応のみによって進行する無電解めっき工程においては無視できるほどに小さいことを見出した。第1めっき膜は還元反応を伴っており、第2めっき膜の形成工程は還元反応を伴わずに置換反応のみによって進行する。そこで本実施形態では、第1めっき膜の形成を遮光環境下で行い、第2めっき膜の形成を非遮光環境下で行っている。なお、置換反応のみによりめっきが進行する場合としては、例えばめっき膜の厚さが薄くて還元反応が生じる前にめっきが終了する場合がある。なお、めっき液に還元剤が含まれている場合においても、下地のイオン化傾向が大きい場合、めっき初期には置換反応のみによりめっきが進行する。
【0020】
被処理基板に形成されている電極は、外部端子と接続する電極パッドであってもよいし、貫通電極に接続する電極であっても良い。電極は単層の金属膜から形成されていても良いし、多層の金属膜から形成されていても良い。そして電極は、少なくとも最表層が、Cu、Cu合金、Al、Al合金、W、W合金、Ag、及びAg合金からなる群から選ばれた少なくとも一つから形成されている。例えば電極は、TiW、Ti、及びCuをこの順に積層した膜の上に、Ni及びCuをこの順にめっきした構成を有していてもよい。
【0021】
第1めっき膜はNi膜又はNiを含有する金属膜(例えばNiP膜又はNiB膜)である。第2めっき膜はPd膜又はPdを含有する金属膜(例えばPdP合金)である。第3めっき膜はAu膜である。第1めっき膜の厚さは、例えば1μm以上100μm以下である。第2めっき膜の厚さは第1めっき膜より薄く、例えば0.1μm以上0.3μm以下である。第3めっき膜の厚さは第2めっき膜より薄く、例えば0.01μm以上0.05μm以下である。本実施形態では、第3めっき膜も置換反応のみにより形成されるため、第3めっき膜を形成する工程(ステップS56)も、非遮光環境下で行う。
【0022】
図2は、本実施形態に用いる半導体製造装置の構成を示す図である。この半導体製造装置は、ホルダー100、レール110、脱脂槽210、酸化膜除去槽220、活性化処理槽230、酸処理槽240、第1めっき槽250、第2めっき槽260、第3めっき槽270、及び第4めっき槽280を備える。
【0023】
ホルダー100は、被処理基板300を保持する。レール110は、ホルダー100のアーム101が図中直線の点線で示す方向に移動できるように接続されている。脱脂槽210は、被処理基板300の表面(電極表面を含む)に付着している油脂成分を除去するための洗浄液が注入されている。酸化膜除去槽220は、電極表面に形成されている酸化膜を除去するためのエッチング液が注入されている。活性化処理槽230は、電極表面に無電解めっき膜が形成されやすくする処理を行うための処理液が注入されている。ここで行う処理は、例えば第1めっき膜が成長するための核生成処理である。下地(電極)がCuやWであり、第1めっき膜がNiである場合、めっき成長の核はPd核である。酸処理槽240は、電極表面以外に形成された核を除去するための酸洗液が注入されている。
【0024】
第1めっき槽250は、第1めっき膜を無電解めっきにより形成するためのめっき液を保持している。このめっき液は還元剤を含んでいる。このため、被処理基板300を保持しているホルダー100が浸漬されると、還元反応を用いた第1の無電解めっきが被処理基板300の電極に行われ、この電極上に第1めっき膜が形成される。なお第1めっき槽250は開閉可能な蓋252を有している。ホルダー100を浸漬させるとき蓋252は開く。そしてホルダー100が浸漬されると、第1の無電解めっきを遮光環境下で行うために、蓋252は閉じる。なお蓋252には、蓋252とアーム101の干渉を防ぐための穴(図示せず)が形成されている。また蓋252は、光を透過しない材質であることは言うまでもなく、めっき液に侵されない材質であることが好ましい。
【0025】
第2めっき槽260は、第2めっき膜を無電解めっきにより形成するためのめっき液が注入されている。このめっき液は還元剤を含んでいる。ただし、上記したように第2めっき膜は薄く形成されるため、第2めっき膜は、置換反応のみにより形成される。そして第2めっき膜の形成処理は非遮光環境下で行われる。
【0026】
第3めっき槽270は、第3めっき膜を無電解めっきにより形成するためのめっき液が注入されている。このめっき液は還元剤を含んでいない。このため、第2めっき膜は、置換反応により形成される。そして第3めっき膜の形成処理は非遮光環境下で行われる。
【0027】
第4めっき槽280は、第3めっき膜上に第4めっき膜を無電解めっき法により形成するためのめっき液が注入されている。第4めっき膜は第3めっき膜と同一材料により形成され、第3めっき膜より厚い。第4めっき槽280に注入されているめっき液は、還元剤を含んでいる。このため、第4めっき膜は、還元反応を含む無電解めっき工程により形成される。なお第4めっき槽280は開閉可能な蓋282を有している。蓋282の構成は蓋252の構成と同様である。そして、ホルダー100を浸漬させるとき蓋282は開く。またホルダー100が浸漬されると、無電解めっきを遮光環境下で行うために、蓋282は閉じる。蓋282は、光を透過しない材質であることは言うまでもなく、めっき液に侵されない材質であることが好ましい。
【0028】
なお、図1に示す例では、第4めっき槽280は使用しない。また図2に示した各処理槽は、処理後の被処理基板300を水洗するための水洗槽(図示せず)を有している。これらの水洗槽における水洗処理は、非遮光環境下で行われる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の全体を示すフローチャートである。本図に示した処理は、電極がCuもしくはCuを含む金属、AlもしくはAlを含む金属、WもしくはWを含む金属、AgもしくはAgを含む金属からなる群から選ばれた少なくとも一つを含む金属層、又はこれらの積層構造からなる場合、例えばCu膜もしくはCuを含む金属膜から形成される場合に行われる。まず、ホルダー100に被処理基板300を保持させる。被処理基板300には、トランジスタなどの半導体素子及び多層配線層が形成されている。そしていずれかの配線層に、第1めっき膜〜第3めっき膜が形成される電極が設けられている。この電極には、電極パッドと貫通電極が含まれる。
【0030】
次いで、ホルダー100をレール110に沿って移動させ、脱脂槽210の上方に位置させる。次いでホルダー100を下降させて、脱脂槽210の洗浄液に浸漬させる。これにより、電極表面を含む被処理基板300の表面に付着している油脂成分が除去される(ステップS10)。
【0031】
次いで、ホルダー100を上昇させた後、ホルダー100をレール110に沿って移動させ、酸化膜除去槽220の上方に位置させる。次いでホルダー100を下降させて、酸化膜除去槽220のエッチング液に浸漬させる。これにより、被処理基板300の電極表面に形成されている酸化膜が除去される(ステップS20)。
【0032】
次いで、ホルダー100を上昇させた後、ホルダー100をレール110に沿って移動させ、活性化処理槽230の上方に位置させる。次いでホルダー100を下降させて、活性化処理槽230の処理液に浸漬させる。これにより、被処理基板300の電極表面に、第1めっき膜が成長するための核が生成される(ステップS30)。このとき、被処理基板300の電極以外の部分に核が生成されることがある。
【0033】
次いで、ホルダー100を上昇させた後、ホルダー100をレール110に沿って移動させ、酸処理槽240の上方に位置させる。次いでホルダー100を下降させて、酸処理槽240の処理液に浸漬させる。これにより、被処理基板300の電極表面以外に生成した核が除去される(ステップS40)。
【0034】
その後、第1めっき槽250、第2めっき槽260、及び第3めっき槽270を用いて、第1めっき膜の形成処理、第2めっき膜の形成処理、及び第3めっき膜の形成処理を行う(ステップS50)。これらの処理の詳細は、図1を用いて説明した通りである。
【0035】
図4は、本実施形態によって処理された後の被処理基板300(半導体装置)の断面図である。この被処理基板300は、シリコン基板などの半導体基板であり、表面にトランジスタ等の半導体素子(図示せず)が形成されている。そして被処理基板300の表面上には、多層配線層320が形成されている。多層配線層320の最上層の配線層には、電極パッド310が形成されている。多層配線層320の最上層には保護膜322が形成されている。保護膜322には、電極パッド310を露出させるための開口が形成されている。
【0036】
電極パッド310上には、第1めっき膜400、第2めっき膜420、及び第3めっき膜440が形成されている。第1めっき膜400、第2めっき膜420、および第3めっき膜440は、半田バンプ500を電極パッド310に接合するために設けられている。電極パッド310がCuである場合、第1めっき膜400は厚さが1μm以上10μm以下のNiめっき膜であり、第2めっき膜420は厚さが0.1μm以上0.3μm以下のPdめっき膜であり、第3めっき膜440は厚さが0.01μm以上0.05μm以下のAuめっき膜である。
【0037】
図5は、図4に示した被処理基板300の電極パッド310に半田バンプ500を接合した状態を示す断面図である。図4に示した第2めっき膜420、及び第3めっき膜440は、半田バンプ500中に溶け込み、なくなっている。
【0038】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。上記したように、還元反応を伴う無電解めっき工程においては、その成膜速度は光起電力に対して強い依存性を示すのに対し、置換反応のみによって進行する無電解めっき工程においては、成膜速度は光起電力に殆ど依存しない。そして、第2めっき膜420の厚さは第1めっき膜400の厚さに対して小さく、無電解めっきの初期で行われる置換反応によって必要な厚さが形成される。このため、第2めっき槽260を非遮光環境下においても、光起電力に起因して第2めっき膜420の膜厚が被処理基板300上の複数の電極パッド310間でばらつくことが抑制される。このため、遮光環境下に位置するめっき槽の数を少なくすることができる。
【0039】
また、第2めっき膜420上に形成される第3めっき膜440の厚さも薄いため、無電解めっきの初期で行われる置換反応によって必要な厚さが形成される。このため、第3めっき槽270を非遮光環境下においても、光起電力に起因して第3めっき膜440の膜厚が被処理基板300上の複数の電極パッド310間でばらつくことが抑制される。このため、遮光環境下に位置するめっき槽の数をさらに少なくすることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の要部を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図1に相当している。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第3めっき膜440上に第4めっき膜を形成する点を除いて、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法と同様の構成である。
【0041】
具体的には、第3めっき膜440を形成した後に、図2に示したホルダー100を第4めっき槽280に浸漬させる。これにより、被処理基板300には第4の無電解めっきが行われ、第3めっき膜440上に第4めっき膜が形成される。上記したように、第4めっき膜は第3めっき膜と同一材料により形成され、第3めっき膜より厚い。そして、第4めっき膜は、第4めっき槽280において、還元反応を含む無電解めっき処理工程で形成される。このため、第4めっき膜は遮光環境下で還元反応により形成される。なお第4めっき槽280の構成については、図2を用いて第1の実施形態において説明した通りである。
【0042】
図7は、本実施形態において処理された後の被処理基板300(半導体装置)の断面図である。この被処理基板300は、第3めっき膜440上に第4めっき膜442が形成されている点を除いて、第1の実施形態において図4に示した被処理基板300と同様の構成である。第4めっき膜442は、第3めっき膜440と同じ材料の金属膜、例えばAu膜であり、その厚さは、0.03μm以上1μm以下である。そして電極パッド310には、半田バンプ又はボンディングワイヤが接合される。なお、第3めっき膜440と第4めっき膜442の境界が不明確な場合もある。
【0043】
図8は、図7に示した被処理基板300の電極パッド310にボンディングワイヤ520を接合した状態を示す断面図である。ボンディングワイヤ520のうち第4めっき膜442に接合している部分はボール状になっている。
【0044】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の対象となる半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、以下の点を除いて、第1の実施形態に示した半導体装置(被処理基板300)と同様の構成である。
【0046】
まず、この半導体装置は、電極パッド310の代わりに電極312を有している。電極312は、被処理基板300の表面側に位置する多層配線320中に形成されている。電極312は、被処理基板300の表面側に形成された絶縁膜324により、被処理基板300と絶縁されている。
【0047】
被処理基板300には貫通孔302が形成されている。貫通孔302は、例えば、被処理基板300を裏面側から研削して薄くして、その後被処理基板300を裏面側からドライエッチングすることにより形成される。貫通孔302の内側面及び被処理基板300の裏面には、絶縁膜330が形成されている。絶縁膜330は、例えば貫通孔302を形成した後、CVD法を用いて形成される。そして貫通孔302には、貫通電極402が埋め込まれている。貫通電極402は、電極312に接続しており、第1めっき槽250における無電解めっき処理により形成されている。貫通電極402のうち電極312とは反対側の端面は、被処理基板300の裏面から突出していない。そしてこの端面には第2めっき膜420及び第3めっき膜440が形成されている。第2めっき膜420及び第3めっき膜440の厚さは、第1の実施形態と同様である。
【0048】
図10は、第3の実施形態の変形例を示す断面図である。図10に示す例において、貫通電極402は、電極312とは反対側の端面が被処理基板300の裏面から突出しており、バンプとして機能する。そしてこのバンプの表面に、第2めっき膜420及び第3めっき膜440が形成されている。
【0049】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
図11は、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートであり、第1の実施形態における図3に相当する図である。この半導体装置の製造方法は、被処理基板300の電極がAl又はAl合金で形成されているときに用いられる方法である。
【0051】
この半導体装置の製造方法は、第1めっき膜が成長するための核の生成処理(ステップS30)、及び余分な核を除去する処理(ステップS40)の代わりに、ジンケート処理(ステップS35)が行われる点を除いて、第1〜第3の実施形態のいずれとも同様である。そして本実施形態で用いられる半導体製造装置は、活性化処理槽230及び酸処理槽240の代わりにジンケート処理槽を備える点を除いて、第1の実施形態において図2に示した半導体製造装置と同様の構成である。
【0052】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
図12は、第5の実施形態に係る半導体製造装置の構成を示す図である。この半導体製造装置は、ホルダー100が被処理基板300を遮光状態で各槽に浸漬させる点、並びに第1めっき槽250及び第4めっき槽280に蓋252,282が設けられていない点を除いて、第1の実施形態において図2に示した半導体製造装置と同様の構成である。
【0054】
図13の各図は、ホルダー100の断面図である。このホルダー100は遮光カバー103を有している。遮光カバー103は、被処理基板300を囲んでおり、かつ下面に開口部102を有している。開口部102からは、各槽が有している処理液が遮光カバー103の内部に入り込む。なお処理液が遮光カバー103の内部に入り込むとき、遮光カバー103の内部に存在していた空気は、遮光カバー103の上面に形成された空気抜き用の穴104から外部に抜ける。そしてホルダー100は、遮光カバー103によって被処理基板300を囲んだ状態で、図中点線で示すように、上下に移動する。
【0055】
なお図13(a)に示している例では、遮光カバー103の下端は被処理基板300の下端より下方に位置しているが、図13(b)に示している例では、遮光カバー103の下端は被処理基板300の下端より上方に位置している。後者の例においても、各槽の中に浸漬された状態では、被処理基板300は遮光環境下に位置する。
【0056】
本実施形態によれば、ホルダー100が被処理基板300を遮光状態で各槽に浸漬させるため、第1めっき槽250及び第4めっき槽280に蓋252,282を設けなくても、被処理基板300に光起電力が生じることを抑制できる。従って、めっき槽を遮光環境下に位置させる必要が無くなる。
【0057】
図14は、第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。本図に示す半導体装置の製造方法は、半導体基板上に積層構造からなる複数の金属膜を無電解めっき法により形成する半導体装置の製造方法である。金属膜を形成する工程は、例えば図2に示した半導体製造装置の第1めっき槽250及び第3めっき槽270を用いて行われる。すなわち金属膜を形成する工程は、第1めっき槽250を用いた還元反応を含む無電解めっき工程と、第3めっき槽270を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程と、を含む。第1めっき槽250を用いた還元反応を含む無電解めっき工程は遮光環境下で行われ、第3めっき槽270を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は非遮光環境下で行われる。第1めっき槽250を用いた無電解めっき工程、及び第3めっき槽を用いた無電解めっき工程それぞれの詳細は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0058】
図15は、本実施形態によって製造される半導体装置の断面図である。この半導体装置は、第2めっき膜420を有していない点を除いて、第1の実施形態において図4で示した半導体装置と同様の構成である。すなわち電極パッド310上には、第1めっき膜400及び第3めっき膜440が形成されている。例えば電極パッド310がCuである場合、第1めっき膜400は厚さが1μm以上10μm以下のNiめっき膜であり、第3めっき膜440は厚さが0.01μm以上0.05μm以下のAuめっき膜である。
【0059】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0061】
100 ホルダー
101 アーム
102 開口部
103 遮光カバー
110 レール
210 脱脂槽
220 酸化膜除去槽
230 活性化処理槽
240 酸処理槽
250 第1めっき槽
252 蓋
260 第2めっき槽
270 第3めっき槽
280 第4めっき槽
282 蓋
300 被処理基板
302 貫通孔
310 電極パッド
312 電極
320 多層配線層
322 保護膜
324 絶縁膜
330 絶縁膜
400 第1めっき膜
402 貫通電極
420 第2めっき膜
440 第3めっき膜
442 第4めっき膜
500 半田バンプ
520 ボンディングワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に積層構造からなる複数の金属膜を無電解めっき法により形成する半導体装置の製造方法であって、
前記金属膜を形成する工程は、第1のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき工程と、第2のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程と、を含み、
前記第1のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき工程は遮光環境下で行われ、
前記第2のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は非遮光環境下で行われる半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のめっき槽に用いられるめっき液が還元剤を含有する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記金属膜を形成する工程が、さらに第3のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程を含み、
前記第3のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は非遮光環境下で行われる半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき工程は、Ni膜又はNiを含有する金属膜を形成する工程であり、
前記第2のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は、Pd膜又はPdを含有する金属膜を形成する工程であり、
前記第3のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は、Au膜を形成する工程であり、
前記Ni膜又はNiを含有する金属膜、前記Pd膜又はPdを含有する金属膜、及び前記Au膜の順に形成される半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のめっき槽に用いられるめっき液が還元剤を含有し、前記第2のめっき槽に用いられるめっき液が還元剤を含有し、前記第3のめっき槽に用いられるめっき液が還元剤を含有しない半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記金属膜を形成する工程が、さらに第4のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき処理工程を含み、前記第4のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき処理工程は遮光環境下で行われる半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第4のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき処理工程が、前記第3のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程により形成した金属膜上に行われ、かつ前記第3のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程により形成した金属膜と同じ材料の金属膜を形成する工程である半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第4のめっき槽に用いられるめっき液が還元剤を含有する半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のめっき槽を用いた還元反応を含む無電解めっき工程は、Ni膜又はNiを含有する金属膜を形成する工程であり、
前記第2のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は、Pd膜又はPdを含有する金属膜を形成する工程であり、
前記第3のめっき槽を用いた置換反応のみによる無電解めっき工程は、第1のAu膜を形成する工程であり、
前記第4のめっき膜を用いた還元反応を含む無電解めっき工程は、第2のAu膜を形成する工程であり、
前記Ni膜又はNiを含有する金属膜、前記Pd膜又はPdを含有する金属膜、前記第1のAu膜、及び前記第2のAu膜の順に形成される半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において
前記金属膜は前記半導体基板に形成された電極上に形成され、前記電極はCuもしくはCuを含む金属、AlもしくはAlを含む金属、WもしくはWを含む金属、AgもしくはAgを含む金属からなる群から選ばれた少なくとも一つを含む金属層、又はこれらの積層構造からなる半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体基板上に無電解めっき法により積層構造からなる複数の金属膜を形成する半導体装置の製造装置であって、
遮光環境下におかれ、還元反応を含む無電解めっきを行う第1のめっき槽と、
非遮光環境下におかれ、置換反応のみによる無電解めっきを行う第2のめっき槽と、
を有する半導体装置の製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造装置において、
前記半導体基板を保持し、前記半導体基板を遮光状態で前記第1のめっき槽に浸漬させるホルダーをさらに有する半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−26680(P2011−26680A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175739(P2009−175739)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】