説明

半導体装置の製造方法

【課題】半田バンプの位置決めが容易であり、ボイドが無く信頼性の高いアンダーフィルを形成することができる方法を提供する。
【解決手段】シリコンウエハの表面上に塗付するアンダーフィル剤を2層構成とし、半田バンプ側面部を囲む第1アンダーフィル剤に高濃度の充填剤を配合し、B−ステージ化し、半田バンプの高さの0.5〜1.0倍の厚さに形成し、その上に、フラックス成分を含む第2アンダーフィル剤を塗付し、B−ステージ化して、第1アンダーフィル剤の層との合計の厚みが、半田バンプの高さの1.0〜1.3倍となるる層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリップチップ接続におけるアンダーフィルの方法、及び、その方法を用いて製作された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ接続法は、シリコンチップの、電子回路が形成された面(以下「回路面」という)を基板側に向けて、該回路面に設けられた半田バンプを介して、該チップを基板に接続する方法である。アンダーフィル剤は、半田接続部のクラック等を防止して、装置の信頼性を確保するために、シリコンチップと基板の間に施与される。従来、アンダーフィル剤は、基板とシリコンチップの間に、毛細管現象を利用して充填されていた。しかしながら、ダイサイズの一辺が10mm、20mmを超える物も有り、このような大型ダイを用いたフリップチップ半導体装置では、未充填が起き易い。アンダーフィル剤中の充填剤の量を低減すると充填され易くなるが、アンダーフィル剤の熱膨張係数が大きくなる為、アンダーフィル剤とチップ又は基板との界面で剥離が生じる等の問題が起こる。
【0003】
更に、毛細管現象を利用する工程は、工数が多く製造コストアップの原因になっている。そこで、半導体素子を基盤に接続する際に、予めフラックス剤を混合したアンダーフィル剤を基板上に滴下し、その後、半田接続と同時にアンダーフィル剤を硬化させる方法、所謂ノンフロー型アンダーフィルが提案されている(特許文献1)。この方法によれば、製造コストを下げることができる。
【0004】
前記フラックス剤は、アビエチン酸等のプロトン供与性物質であり、半田バンプ表面の酸化膜を還元する。しかし、この還元反応の際、水が生成され、この水が半田リフロー工程で水蒸気となり接続部のボイドとなる場合がある。
【0005】
シリコンウエハにアンダーフィル剤を塗布してB−ステージ化し、その後ダイシングする方法が開示されている(特許文献2)。いわゆるB−ステージアンダーフィル若しくはウエハレベルアンダーフィルと呼ばれる手法である。さらに、この改良方法として、アンダーフィル剤を2層とし、半田バンプの周囲にフラックス作用を有するアンダーフィル剤を、基板の接合パッド上に、フィラーを含むアンダーフィル剤を用いることが提案されている(特許文献3)。しかし、ウエハと基板の夫々にアンダーフィル剤を施与する工程が必要であり、煩瑣である。また、パッド上でのフラックス成分が不足し、接続不良が生じる場合がある。さらに、フィラーを多く含む層は透明性が悪く、半田バンプの高さを越えて塗布されると、半田バンプの位置を特定することが困難になり、即ち、半田バンプの視認性が悪くなり、ダイシング時や、接続時の位置決めが困難となる。また、フラックス作用を有するアンダーフィル剤が半田バンプの周囲を覆っており、前述した水蒸気によるボイドの発生の問題が起こり易い。
【0006】
アンダーフィル剤の塗布量を半田ボールの先端が突出する程度の厚みとし、予めB−ステージ化した後、半田ボールの先端にフラックスを塗付する方法が知られている(特許文献4)。しかしながら該方法はパッケージ個別にアンダーフィル剤を塗布しその後仮硬化を行った後さらに個別のパーケージに対しフラックスを塗布しなければならず工程が煩雑であるし、また塗布するフラックスとアンダーフィル剤が反応することによりアンダーフィル剤のモル比がずれアンダーフィル剤の硬化物物性を低下させる恐れがある。また、ウエハレベルアンダーフィルにおいて、ホットメルトタイプのアンダーフィル剤を、バンプの頂部が露出するまで研削し、その後ダイシングを行なう方法が提案されている(特許文献5)。しかし、これらの方法は、アンダーフィル剤の硬化収縮により、接続部にボイドが形成され易く、また、チップ周囲を覆うフィレットも形成され難い。さらに、半田露出部には酸化膜が形成され易く、接続工程において、市販のフラックス剤を基板等に塗布することになるが、通常の市販フラックスは希釈剤(溶剤)を大量に含んでいるため、ボイドの原因となり易い。
【特許文献1】特開平04−280443号公報
【特許文献2】特開2000−174044号公報
【特許文献3】特開2003−243449号公報
【特許文献4】特開2005−268704号公報
【特許文献5】特開2006−229199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アンダーフィル剤を2層構成とし、半田バンプ側面部を囲む第1アンダーフィル剤に高濃度の充填剤を配合し、その上、即ち、基板側に、熱硬化性樹脂とフラックス成分を含む第2アンダーフィル剤を施与すれば、上記問題を解決することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、下記の方法である。
(1)フリップチップ接続用の半田バンプを備えたシリコンウエハの、該半田バンプを備えた表面上にアンダーフィル剤を塗付し、次いで、塗付されたアンダーフィル剤をB−ステージ化する工程、及び
(2)B−ステージ状態のアンダーフィル剤付きの前記シリコンウエハを切断して個片化する工程、
(3)前記個片を、基板上の接続すべき位置に、位置決めする工程、及び
(4)前記個片を、前記半田バンプを溶融して基板に接続する工程、
を含む半導体装置の製造方法において、
前記アンダーフィル剤が、第1アンダーフィル剤と第2アンダーフィル剤からなり、
前記工程(1)が、
(i)第1アンダーフィル剤をシリコンウエハの表面上に塗付し、次いで、該第1アンダーフィル剤をB−ステージ化して、半田バンプの高さの0.5〜1.0倍の厚みの、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤の層を形成する工程、
及び
(ii)B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤の上に、第2アンダーフィル剤を塗付し、次いで、該第2アンダーフィル剤をB−ステージ化して、前記B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤の層と合計の厚みが、半田バンプの高さの1.0〜1.3倍である層を形成する工程を含み、
第1アンダーフィル剤はエポキシ樹脂及び固形分の30〜85質量%の充填剤を含有し、及び第2アンダーフィル剤はエポキシ樹脂、フラックス剤及び/又はフラックス性を有する硬化剤を含有することを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の方法によれば、アンダーフィル剤をウエハ上に連続的に施与可能であると共に、半田バンプの位置合わせに支障が無い。また、第2アンダーフィル剤にフラックス性能の高い物質を配合すれば、パッドと半田バンプとの接続性がさらに高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法を、図1を参照しながら説明する。先ず、工程(i)において、ウエハの回路面に第1アンダーフィル剤を塗布する。該ウエハは、複数の個片(チップ)に区切るスクライブが形成されており、各個片には回路と、フリップチップ接続用の複数の半田バンプが備えられている。塗布方法としては、公知の方法であってよいが、バンプ保護の観点からステンシル印刷、スピンコートによることが望ましい。スクリーン印刷では、マスクの網目を半田バンプに接触させることによりバンプを破壊する恐れがあるため好ましく無い。第1アンダーフィル剤が室温で固体状である場合には、該アンダーフィル剤が流動性を有する温度で、アンダーフィル剤及びウエハを加熱しながら、塗布してもよい。
【0011】
次に、塗布された第1アンダーフィル剤をB−ステージ、即ち、組成物が流動性の無い状態であるが、完全には硬化していない状態にする。B−ステージ化は、第1アンダーフィル剤が溶剤を含む場合には、加熱して溶剤を揮発させることによって、又、室温で固体の場合は、塗布温度から室温に戻すことによって行なう。いずれの場合においても、第1アンダーフィル剤の硬化を進行させないよう、硬化開始温度より充分低い温度、好ましくは硬化開始温度(オンセット温度)から40℃程度以上低い温度で行う。
【0012】
好ましくは、B−ステージ化した後、半田バンプの頂上が現れるまで、研削又はアッシング等によりエッチングする。この工程を加えると、半田接続性、半田バンプの視認性が向上する。
【0013】
得られたB−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層の厚みは、半田バンプの高さの0.5倍〜1.0倍である。前記下限値より薄いと、半田接続部を保護する性能が不足し、前記上限値を超えると、半田バンプの接続性及び工程(3)で位置決めする際の半田バンプの視認性が低下する。
【0014】
次いで、工程(ii)において、第2アンダーフィル剤を、第1アンダーフィル剤に関して述べたのと同様の方法で、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤の上に塗布する。次いで、第2アンダーフィル剤をB−ステージ化して、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層と第2アンダーフィル剤層の合計の厚みが、半田バンプの高さの1.0〜1.3倍、好ましくは1.1〜1.2倍である2層構造のアンダーフィル剤層を得る。厚みが、前記下限値を下回ると、工程(4)の半田接続時に、アンダーフィル剤が流動して広がることによって、シリコンチップと基板の間を満たさず、ボイドが生じる恐れがある。一方、前記上限値を超えると、アンダーフィル剤が半導体素子上面に回りこみ、該素子を汚染し、また、フィレットが大きくなり、素子の高密度化を妨げる。
【0015】
工程(2)では、シリコンウエハを個片化(ダイシング)する。ダイシングは、公知のダイサーを用いて行なってよい。この際、B−ステージ状態の第1及び第2アンダーフィル剤も個片化される。次いで、工程(3)で、個片(以下「チップ」という)がピックアップされて、回路基板上の該チップを接続すべきパッドに位置決めされる。位置決めは、公知のフリップチップボンダーを用い、下記工程(4)と連続して行なってよい。
【0016】
工程(4)で、半田バンプを溶融して、チップを基板に半田接続する。半田接続は、パルスヒート型のフリップチップボンダーを用い200℃以上に急速加熱を行ない上記位置決めと、半田接続を同一装置で行なう方法、第2アンダーフィル剤層の表面が液状となる程度の温度に基板及び/又はチップを加熱して、該アンダーフィル剤表面を基板に圧着し、その後、IRリフロー装置において、半田接続を行なう方法等で行なうことができる。加熱によって、第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤が低粘度になって、半田バンプと基板とのパッドが接触して半田接続されると共に、アンダーフィル剤の硬化が開始する。硬化触媒を選択する等によって、該硬化性を高め、半田接続終了と同時に樹脂の硬化過程を終了するようにできる。また、反応性の遅いアンダーフィル剤の場合は、半田接続後にさらにオーブン等で加熱し硬化を完了させることも可能である。
【0017】
第1アンダーフィル剤に用いられるエポキシ樹脂は、2官能性以上であれば特に限定されない。例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。B−ステージ状態で、タックフリー、即ち表面が粘着性で無いこと、が後工程で望ましいため、常温で固形である材料が望ましい。常温で液状の材料を用いると、B−ステージ状態で粘着性が残り、タックフリーとするために加熱して半硬化すると、半田接続時に低粘度にならず、半田接続性を阻害する恐れがある。より好ましくは、不純物の少ない、特にイオン性不純物が少ないグレードの樹脂を使用する。第2アンダーフィル剤のエポキシ樹脂としては、上述のものを使用することができ、第1アンダーフィル剤に含まれるものと異なっていてもよい。
【0018】
第1アンダーフィル剤に含まれる充填剤は、アンダーフィル剤の機械的強度の向上及び熱膨張係数の低減のために配合される。無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカチタニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート、アルミニウム等を挙げることができ、これらは1種単独あるいは2種類以上組み合せて使用することができる。特に、真球状の溶融シリカが、工程(4)におけるアンダーフィル剤の低粘度化のため望ましい。また充填剤の粒径としては、半田バンプ間を良く充填させるため、平均粒径(D50)が0.5〜10μmであることが好ましい。最大粒径(D90)は、バンプの高さの1/2以下とすることが望ましい。また、均一な厚みのアンダーフィル剤層が形成されるように、アンダーフィル剤は高チクソ性であることが好ましく、充填剤の一部として、平均粒径が0.2μm以下の微粉充填剤、特に、微粉シリカを含む。該微粉シリカとしては、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380(全て日本アエロジル(株)製、比表面積は順に130、200、300、380m/g)等のヒュームドシリカが挙げられる。上記平均粒径は、遠心沈降法、レーザー回折法で、及び最大粒径は篩法で、夫々測定することができる。
【0019】
第1アンダーフィル剤中のフィラーの量は、その固形分、即ち、揮発分を除いた重量、に対して、30質量〜85質量%であることが必要であり、より好ましくは50〜85質量%である。30質量%未満であると、上述した機械的強度の向上及び熱膨張係数の低減が不足する傾向がある。第2アンダーフィル剤は必ずしも充填剤を含む必要は無い。位置合わせ工程(3)におけるバンプの視認性及び半田接続性の観点から、その固形分の30質量%未満であり、好ましくは20質量%未満である。30質量%以上であると、第2アンダーフィル剤の透明性が低下し、基板に対し半導体素子を位置決めする際半田バンプの認識が困難となる。またフィラー噛み込みのため半田接続性が低下する。ここで、固形分は、各アンダーフィル剤から溶剤等の揮発性分を除外した質量である。
【0020】
第2アンダーフィル剤は、良好な半田接続を形成するため、フラックス剤及び/又はフラックス性能を有する硬化剤(以下「フラックス成分」という)を含む。該フラックス成分は、冒頭に述べたように、半田表面の酸化膜を還元する性能を有する物質であり、代表的にはプロトン供与性の物質である。プロトン供与性のフラックス剤としては、例えばアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、イソピマール酸、ピマール酸、レボピマール酸、パラストリン酸、後者では安息香酸、ステアリン酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。フラックス性能を有する硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、アミン系硬化剤等が挙げられ、これらとアビエチン酸等の混合物であってもよい。フラックス成分の添加量としては、樹脂分、即ち、フィラーを含む場合には固形分からフィラーを除いた量、100重量部に対し0.5〜3重量部程度が好ましい。前記下限値未満であるとフラックス性が低下し、またこれを超えると樹脂硬化物の物性が低下する恐れがある。また、硬化剤としての作用があるフェノール樹脂や酸無水物を用いる場合は、上述のとおり、エポキシ基と反応性の基の量/エポキシ基の量のモル比が0.95〜1.25の範囲とすることが望ましい。前記下限値を下回るとフラックス性が低下し接続性が低下する恐れがある。また前記モル比が1.0以下の場合はアビエチン酸等を併用することが望ましい。
【0021】
第1アンダーフィル剤において、硬化剤は必須成分ではないが、本発明の目的を阻害しない範囲において硬化剤を含んでもよい。該硬化剤としては、第2アンダーフィル剤に関して上記したものを使うことができる。これらのうちでも、フェノール樹脂及び酸無水物硬化剤が好ましく用いられ、上述の理由により、不純物の少ないこと及び常温で固体であるものがより好ましい。硬化剤の量としては、硬化剤中の官能基とエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル比(硬化剤中の官能基のモル量/エポキシ基のモル量)が0.9〜1.05の範囲が望ましく、特に望ましくは0.95〜1.0である。上記範囲を超えると硬化物物性が低下する恐れがあり、また、硬化の際、揮発ガスの増大を招き、硬化物中にボイドを発生させる恐れがある。また前記上限値を超えると、フラックス作用によりボイドを発生する恐れがある。また、第1アンダーフィル剤は、フラックス剤を含んでもよいが、その量は樹脂分100重量部に対して0.5重量部未満であり、より好ましくはフラックス剤を含まない。
【0022】
第1及び第2アンダーフィル剤に、上記各成分に加えて、塗布工程における作業性を向上するために、各種揮発性溶剤を添加してもよい。溶剤としては、例えばカルビトール系、セルソルブ系やPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)等を用いることができる。
【0023】
また、ダイシング時の機械的強度を向上するため、熱可塑性ポリマーを添加することも可能である。その他、重合触媒、シランカップリング剤、イオントラップ材等を、本発明の目的を阻害しない範囲で、添加してよい。第1及び第2アンダーフィル剤は、これらの各材料をロール混練機等を用いて混練することによって、調製することができる。
【0024】
実施例
以下実施例及び比較例を用い本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
実施例1、比較例1〜3
表1に示す量(質量%)で、各成分を室温で、プラネタリーミキサーで混合した後、3本ロールを通過させ、再度プラネタリーミキサーで混合して、アンダーフィル剤組成物A〜Cを得た。
【0025】
表1中の各成分は以下の通りである。
エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量200、室温で固形
硬化剤:フェノールノボラック樹脂、フェノール当量110、室温で固形
充填剤:平均粒子径 2.0μm、最大粒径 30μmの真球状シリカ
微粉シリカ:アエロジル130(商品名、日本アエロジル(株)製、平均粒径:0.15μm)
希釈剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート
硬化触媒A:トラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、北興化学製TPP-K
硬化触媒B:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ)、四国化成製
熱可塑性樹脂:重量平均分子量10000のフェノキシ樹脂
【0026】
【表1】

【0027】
評価用の半導体チップとしては、半田バンプが576個搭載された日立超LSIシステムズ社製フリップチップキットのJTEG Phase2E175鉛フリー仕様、バンプ高さ70μm(以下「評価用TEG」と呼ぶ)を、基板として同社製JKIT TYPE−IIIを用いた。この半導体チップと基板は両者の接続によりデイジーチェーンを構成し、チップ内の全ての半田バンプが接続されたときに導通が可能となるものである。即ち576個のバンプの内1個でも接続できなければ導通試験で絶縁性を示し、接続性が良好な実装方法を用いなければ接続が困難である。
【0028】
実施例1
第1アンダーフィル剤として組成物Aを用い、個片化する前、即ちウエハの状態である評価用TEGに、ステンシル印刷法を用いて塗布した。その後、ウエハを110℃のオーブンに2時間投入し、希釈剤を除去して、B−ステージ状態にした。B−ステージ状態での平均膜厚を膜厚計で測定したところ、60μmであった。得られた組成物A層上に、第2アンダーフィル剤として、組成物Bを、スピンコート法を用いて塗布後、組成物Aと同様の条件にてB−ステージ化した。組成物AとBの合計平均膜厚が90μmであった。
【0029】
比較例1
第2アンダーフィル剤として、組成物Bに代えて組成物Aを用いことを除き、実施例1と同様にして、評価TEGウエハ上に平均膜厚が90μmの層を形成した。
【0030】
比較例2
第1アンダーフィル剤として、組成物Aに代えて組成物Bを用いことを除き、実施例1と同様にして、評価TEGウエハ上に平均膜厚が90μmの層を形成した。
【0031】
各ウエハにつき、以下の評価を行なった。
(1)位置決め性
ダイシングにより得られた個片を、フリップチップボンダー(アスリート社製 CB−50)を用い、困難なく基板上のパッドと位置合わせできるかどうかを評価した。
(2)半田接続性
フリップチップボンダーで位置決めして、チップを配置した後、IRリフロー炉(最高温度260℃)を通し、次いで、150℃のオーブンに4時間入れて、アンダーフィル剤を硬化させた。得られた装置10個につき、テスターを用い導通性を確認した。
(3)信頼性
試験(3)で得られた装置を、熱サイクル試験(TCT)(−55℃〜125℃)を1000サイクル行なった後、テスターを用い導通性を確認した。
【0032】
下表2に上記4項目の評価結果を示す。
【0033】
【表2】

【0034】
比較例1は、半田バンプが充填剤濃度の高いアンダーフィル剤で覆われ、フリップチップボンダーで位置決めをする際、バンプが認識されず、位置決め不能であったため、接続性、信頼性試験を行なうことができなかった。比較例2は、充填剤の量が少なく、温度サイクル試験の間にクラックが生じ、接続不良となった。これらに対して、実施例1の装置は、全ての項目で良好であった。
【0035】
実施例2、3及び比較例3、4
表3に示す量(質量%)で、各成分を室温で、プラネタリーミキサーで混合した後、3本ロールを通過させ、再度プラネタリーミキサーで混合して、アンダーフィル剤組成物D〜Fを得た。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例2
第2アンダーフィル剤として、組成物Cを使用した点を除き、実施例1と同様にして、評価TEGウエハ上に平均合計膜厚が90μmの層を形成した。
【0038】
実施例3
第1アンダーフィル剤として組成物E、第2アンダーフィル剤として組成物Fを用い、実施例1と同様の方法で、評価TEGウエハ上に平均合計膜厚が90μmの層を形成した。
【0039】
実施例4
第2アンダーフィル剤として組成物Fを用いたことを除き、実施例1と同様にして、評価TEGウエハ上に平均合計膜厚が90μmの層を形成した。
【0040】
比較例3
第2アンダーフィル剤として組成物Gを使用した点を除き、実施例3と同様にして、評価TEGウエハ上に平均合計膜厚が90μmの層を形成した。
【0041】
比較例4
第1アンダーフィル剤として組成物Dを、第2アンダーフィル剤として組成物Cを用い、実施例1と同様の方法で、評価TEGウエハ上に平均合計膜厚が90μmの層を形成した。
【0042】
比較例5
第1アンダーフィルとして組成物D、第2アンダーフィル剤として組成物Gを用い、実施例1と同様の方法で、評価TEGウエハ上に平均合計膜厚が90μmの層を形成した。
【0043】
得られたウエハを、外周刃切断方式によるダイシング装置にて切断し個片化を行なった後、フリップチップボンダーを用い基板に位置決めを行ない、以下の評価を行なった。
(1)半田接続性
フリップチップボンダーで位置決めされたものを更にIRリフロー炉(最高温度260℃)を通して半田バンプを接合し、次いで、150℃のオーブンに4時間入れて、アンダーフィル剤を硬化させた。得られた装置10個につき、テスターを用い導通の確認を行なった。
(2)ボイド
接続性試験を行なった半導体装置を、超音波断面観察装置(SAT)を用いボイドの発生状況を観察した。
【0044】
下記表4に評価結果を示す。
【0045】
【表4】


比較例3は第2アンダーフィル剤のフラックス性が無く接続性が低い。比較例4は、第1アンダーフィル剤にも、硬化剤として作用しないフラックス成分が配合されている。接続性は良好であったが、接続部にボイドがあった。比較例5は、第1アンダーフィル剤がフラックス剤を含むが、接続部に当たる第2アンダーフィル剤のフラックス性が低いため接続性が悪く、かつボイド性も悪い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の方法によれば、半導体装置の位置決めが容易であり、信頼性の高い半田接続部を備える装置を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)フリップチップ接続用の半田バンプを備えたシリコンウエハの、該半田バンプを備えた表面上にアンダーフィル剤を塗付し、次いで、塗付されたアンダーフィル剤をB−ステージ化する工程、及び
(2)B−ステージ状態のアンダーフィル剤付きの前記シリコンウエハを切断して個片化する工程、
(3)前記個片を、基板上の接続すべき位置に、位置決めする工程、及び
(4)前記個片を、前記半田バンプを溶融して基板に接続する工程、
を含む半導体装置の製造方法において、
前記アンダーフィル剤が、第1アンダーフィル剤と第2アンダーフィル剤からなり、
前記工程(1)が、
(i)第1アンダーフィル剤をシリコンウエハの表面上に塗付し、次いで、該第1アンダーフィル剤をB−ステージ化して、半田バンプの高さの0.5〜1.0倍の厚みの、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤の層を形成する工程、
及び
(ii)B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤の上に、第2アンダーフィル剤を塗付し、次いで、該第2アンダーフィル剤をB−ステージ化して、前記B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤の層と合計の厚みが、半田バンプの高さの1.0〜1.3倍である層を形成する工程を含み、
第1アンダーフィル剤はエポキシ樹脂及び固形分の30〜85質量%の充填剤を含有し、及び第2アンダーフィル剤はエポキシ樹脂、フラックス剤及び/又はフラックス性を有する硬化剤を含有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程(3)が、第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤の表面が液状となる温度に基板及び/又は個片を加熱して、基板に圧着する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2アンダーフィル剤が充填剤を含有しないか、該第2アンダーフィル剤の固形分の30質量%未満で充填剤を含有する請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第1アンダーフィル剤が、フラックス剤及び硬化剤を含有しないか、又は、フラックス剤を樹脂分100重量部に対して0.5重量部未満でもしくはフラックス性を有する硬化剤を、該硬化剤中のエポキシ基と反応性の基の量のエポキシ樹脂中のエポキシ基の量に対するモル比が1.0未満である量で含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記フラックス性能を有する硬化剤が、フェノール樹脂、酸無水物硬化剤及びアミン硬化剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記工程(i)及び(ii)における塗付が、ステンシル印刷又はスピンコートにより行なわれる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
エポキシ樹脂、固形分の30〜85質量%の充填剤を含み、フラックス剤又は硬化剤を含有しないか、又は、フラックス剤を樹脂分100重量部に対して0.5重量部未満でもしくはフラックス性を有する硬化剤を、該硬化剤中のエポキシ基と反応性の基の量のエポキシ樹脂中のエポキシ基の量に対するモル比が1.0未満である量で含む、第1アンダーフィル剤、及び
エポキシ樹脂、フラックス剤及び/又はフラックス性を有する硬化剤を含み、充填剤を含有しないか、該第2アンダーフィル剤の固形分の30質量%未満で充填剤を含有し、第1アンダーフィル剤の上に塗付する第2アンダーフィル剤
からなる2剤型アンダーフィル剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法を用いて製作された半導体装置。
【請求項9】
請求項7記載の2剤型アンダーフィル剤の硬化物を含む半導体装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−135308(P2009−135308A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310970(P2007−310970)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】