説明

半導体装置の製造方法

【課題】蒸着装置を改造することなく、金属膜形成工程における側壁付着部の形成を防ぐことができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板11上に4層のレジスト層を形成するレジスト形成工程において、第1の難溶化層15及び第2の難溶化層19が、第1のレジスト層13及び第2のレジスト層17に対してアルカリ難溶性の材料よりなり、露光後に複数のレジスト層を現像する現像工程において、第1の難溶化層15及び第2の難溶化層19が、第1のレジスト層13及び第2のレジスト層17に対して庇形状に現像される。このような構成によれば、金属膜形成工程において、第1の難溶化層15及び第2の難溶化層19の突出部15a,19aが、蒸着金属粒子の進路を遮り、第1のレジスト層13の側壁部13sへの金属膜の付着を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフトオフ法により電極、配線となる金属膜のパターニングを行う金属膜形成工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置における電極や配線のパターン形成方法として、例えば、図4(a)及び図4(b)に示すようなリフトオフ法によるパターン形成方法が多く用いられている。
図4(a)及び図4(b)に示すように、従来のパターン形成方法は、まず、半導体ウエハ(半導体基板)11の上面11t上にパターン形成されたレジスト層13をマスクにして、真空蒸着処理により、レジスト層13上に金属膜25を形成する。その後、レジスト層13及び金属膜25が積層された半導体ウエハ11を、アセトン等の有機溶剤中に浸漬してレジスト層13、及びレジスト層13の上面13t上に形成された金属膜25を除去する。
【0003】
このリフトオフ法によるパターン形成方法にあっては、金属膜25の真空蒸着処理の際に、蒸着金属粒子の散乱に起因して、図4(a)に示すように、レジスト層13の側壁13sに金属膜25の側壁付着部25sが形成される。この側壁付着部25sの形成により、レジスト層13への有機溶剤の浸透が妨げられるため、リフトオフを困難にし、結果として処理時間が長くなるという問題が引き起こされる。また、側壁付着部25sは、図4(b)に示すように、半導体ウエハ11の上面11tにおいて電極として機能する金属膜25に連結された突起物(バリ27a)として残留する。バリ27aは、物理的外力により倒れこんだバリ27bとして近隣の金属膜25に接触したときに短絡の原因となる。
そこで、レジスト層13の側壁部13sに側壁付着部25sが形成されることを抑制する技術として、特許文献1に開示された技術がある。
【0004】
図5は、特許文献1に記載されたリフトオフ法によるパターン形成工程を示す断面図である。
特許文献1に開示されたパターン形成方法は、まず、図5(a)に示すように、半導体ウエハ11上にノボラック系のポジ型レジスト塗布液を所定の膜厚で塗布し、レジスト層13を形成する。
次に、図5(b)に示すように、レジスト層13が上面11tに形成された半導体ウエハ11を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む水溶液(東京応化工業製、NMD−3(2.38%)を60%に希釈した水溶液)に浸漬し、水洗する。これにより、レジスト層13の上面13tが改質され、後述する現像液に難溶な難溶化層15が形成される(難溶化処理)。
【0005】
次に、図5(c)に示すように、半導体ウエハ11の上面11tにレジスト層13及び難溶化層15がこの順に積層された積層体50の最上層となる難溶化層15側から、フォトマスクなどを使用して、目的とするパターンを露光する。
次に、図5(d)に示すように、積層体50を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む現像液(東京応化工業製、NMD−3(2.38%))に浸漬することにより露光された部分の現像処理を行う。
【0006】
このとき、難溶化処理によって形成された難溶化層15は、露光された幅に対して、狭い部分しか現像液に溶出しないため、現像処理後のレジストパターンは、レジスト層13よりも難溶化層15が突出した庇形状となる。
このように、難溶化層15がレジスト層13に対して突出している構造は、金属蒸着時にレジスト上の金属と、半導体上の金属との段切れを起こさせるため、リフトオフを容易にし、リフトオフレジスト構造として使われることがある。
【特許文献1】特開昭63−114127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された半導体装置の製造方法は、蒸着時の蒸着源と半導体ウエハとの位置関係によっては、側壁付着部25sの形成を抑制することはできない。すなわち、側壁付着部25sの形成を防ぐためには、真空蒸着の条件、特に、蒸着源と半導体ウエハとの位置関係が制限されることになる。
この制限を緩和する方法としては、現像された領域に対する蒸着金属粒子の進入角度を深くする方法や、半導体ウエハに対して蒸着金属粒子を垂直に進入させる方法が挙げられる。蒸着金属粒子の進入角度を深くする方法として、蒸着機のチャンバーを大きくし、半導体ウエハと蒸着源の距離を大きくする方法が挙げられる。また、半導体ウエハに対して蒸着金属粒子を垂直に進入させる方法として、ウエハホルダをプラネタリ型に改造してどの半導体ウエハに対しても蒸着金属粒子が垂直に進入する方法が挙げられる。
【0008】
しかし、これらの方法は蒸着装置の改造が必要であり、大きなコストと手間が必要である点で、側壁付着部の形成を抑制するという目的を容易に達成することができない。
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、蒸着装置を改造することなく、金属膜形成工程における側壁付着部の形成を防ぐことができる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、レジスト層の構成を特定の構造としてパターニングすることにより、上記目的を達成できることを知見し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
本発明の請求項1による半導体装置の製造方法は、半導体基板上にレジスト層を形成するレジスト形成工程と、
前記レジスト層に露光する露光工程と、
露光後のレジスト層を現像する現像工程と、
現像工程によってパターン形成されたレジスト層上及び半導体基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
金属膜形成工程によって前記レジスト層上に形成された金属膜を除去する除去工程とを含む半導体装置の製造方法において、
前記レジスト形成工程は、第1のレジスト層及び第2のレジスト層の上面を、前記現像液を1倍以上に希釈した難溶化処理液により難溶化することによって、前記第1のレジスト層上に第1の難溶化層を形成すると共に、前記第2のレジスト層上に第2の難溶化層を形成する工程であり、前記現像工程は、第1のレジスト層及び第2のレジスト層が掘削されることによって、第1の難溶化層及び第2の難溶化層が、第1のレジスト層及び第2のレジスト層に対して庇形状をなすことを特徴とする。このような構成によれば、第1のレジスト層及び第2のレジスト層に対して庇形状をなす第2の難溶化層及び第1の難溶化層の突出部が、蒸着金属粒子の進路を遮り、第1のレジスト層の側壁部への金属付着を防ぐことで、蒸着装置の改造をすることなしに、側壁付着部の形成を抑制することができる。
【0010】
本発明の請求項2による半導体装置の製造方法は、請求項1において、前記第1のレジスト層の膜厚は、前記第2のレジスト層の膜厚よりも薄いことを特徴とする。このような構成によれば、側壁付着部が形成されない蒸着源の設置範囲が広まるので、蒸着効率の向上が可能となる。
本発明の請求項3による半導体装置の製造方法は、請求項1又は2において、前記現像工程において前記第1のレジスト層が掘削されることによって該第1のレジスト層に対して突出してなる第1の難溶化層の突出部の突出量は、該第1の難溶化層上に形成された第2のレジスト層に対して該第2のレジスト層の上面に形成された第2の難溶化層の突出部の突出量よりも大きいことを特徴とする。このような構成によれば、側壁付着部が形成されない蒸着源の設置範囲が広まるので、蒸着効率の向上が可能となる。
【0011】
本発明の請求項4による半導体装置の製造方法は、請求項1から3のいずれか1項において、前記第1のレジスト層及び前記第1の難溶化層の厚みaと、前記第1の難溶化層の突出部の突出量nと、前記半導体基板と蒸着源との距離xとにより下記式(1)に規定される蒸着源の設置範囲Z1が、前記第2のレジスト層及び前記第2の難溶化層の厚みbと、前記第1の難溶化層の突出部の突出量nと、前記第2の難溶化層の突出部の突出量mと、前記半導体基板と蒸着源との距離xと、前記半導体基板上に形成される前記金属膜のパターン幅Lとにより下記式(2)に規定される蒸着源の設置範囲Z2に対して等しい、もしくは、大であることを特徴とする。このような構成によれば、側壁付着部が形成されない蒸着が可能となる。
Z1=n・x/a ・・・・・式(1)
Z2=x・(L−(n+m))/b ・・・式(2)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸着装置を改造することなく、金属膜形成工程における側壁付着部の形成を防ぐことができる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示されている。
(半導体装置の製造方法)
<第1のレジスト層の形成>
図1(a)〜(f)は、本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態における各工程を示す断面図である。
まず、図1(a)に示すように、半導体ウエハ11の上面11tに、ノボラック系のポジ系レジスト塗布液を0.8μm〜1.2μmの膜厚で塗布し、第1のレジスト層13を形成する。
【0014】
<第1の難溶化層の形成>
次に、第1のレジスト層13が上面11tに形成された半導体ウエハ11を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む水溶液(東京応化工業製、NMD−3(2.38%)を60%に希釈した水溶液、以下、難溶化処理液と呼ぶ。)に6分間浸漬し、水洗する。これにより、第1のレジスト層13の上面13tが改質され、図1(b)に示すように、後述する現像液に難溶な第1の難溶化層15が形成される(第1の難溶化処理)。なお、この浸漬時間が長いほど、第1の難溶化層15の厚みを増加させることができ、後述する現像工程において第1の難溶化層15を溶出しにくくすることができる。
【0015】
<第2のレジスト層の形成>
次に、図1(c)に示すように、第1の難溶化層15の上面15tに、ノボラック系のポジ型レジスト塗布液を0.8μm〜1.2μmの膜厚で塗布し、第2のレジスト層17を形成する。
<第2の難溶化層の形成>
次に、第1のレジスト層13、第1の難溶化層15、及び第2のレジスト層17がこの順で上面11tに形成された半導体ウエハ11を、難溶化処理液に6分間浸漬し、水洗する。これにより、第2のレジスト層17の上面17tが改質され、図1(d)に示すように、後述する現像液に難溶な第2の難溶化層19が形成される(第2の難溶化処理)。なお、この浸漬時間が長いほど、第2の難溶化層19の厚みを増加させることができ、後述する現像工程において第2の難溶化層19が溶出しにくくすることができる。
次に、図示はしないが、半導体ウエハ11の上面11tに第1のレジスト層13、第1の難溶化層15、第2のレジスト層17、及び第2の難溶化層19がこの順で積層された積層体10を、90℃の温度で2分間加熱してソフトベーク工程を行う。このソフトベーク工程は、各レジスト層13,15,17,19に含まれる溶媒を蒸発させるために行われる。
【0016】
<露光工程>
次に、図1(e)に示すように、積層体10の最上層となる第2の難溶化層19側から、適当なフォトマスクなどを使用して、目的とするパターンを露光する。
<現像工程>
次に、図1(f)に示すように、積層体10に対して、120℃で1分間、熱処理を行い、積層体10を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む水溶液(東京応化工業製、NMD−3(2.38%)を60%に希釈した水溶液、以下、現像液と呼ぶ。)に2分間浸漬することにより露光された領域を現像する。この現像処理としては、例えば、等方性エッチング処理が挙げられる。
【0017】
このとき、難溶化処理によって形成された第1の難溶化層15及び第2の難溶化層19は、露光された幅に対して、狭い部分しか現像液に溶出しないため、現像工程後のレジストパターンは、第1のレジスト層13よりも第1の難溶化層15が突出し、第2のレジスト層17よりも第2の難溶化層19が突出した庇形状となる。
【0018】
ここで、前述したように、第1のレジスト層13に対する第1の難溶化層15の突出部15aの突出量及び第2のレジスト層17に対する第2の難溶化層19の突出部19aの突出量は、前記難溶化処理における浸漬時間を制御することによって、第1の難溶化層15の厚み及び第2の難溶化層19の厚みに伴って制御することができる。なお、第1の難溶化層15の突出部15aの突出量nは、半導体ウエハ11の上面11t上に形成予定の金属膜のパターン幅Lの端部に対して、現像工程によって開口された側に第1の難溶化層15が突出した寸法と定義される。また、第2の難溶化層19の突出部19aの突出量mは、半導体ウエハ11の上面11t上に形成予定の金属膜のパターン幅Lの端部に対して、現像工程によって開口された側に第2の難溶化層19が突出した寸法と定義される(図3参照)。
【0019】
また、第1のレジスト層13の膜厚は、第2のレジスト層17の膜厚よりも薄いことが好ましい。このような構成によれば、側壁付着部が形成されない蒸着源の設置範囲が広まるので、蒸着効率の向上が可能となる。
また、第1の難溶化層15の突出部15aの突出量は、第2の難溶化層19の突出部19aの突出量よりも大きいことが好ましい。このような構成によれば、側壁付着部が形成されない蒸着源の設置範囲が広まるので、蒸着効率の向上が可能となる。
【0020】
また、本発明では、難溶化処理液及び現像液のそれぞれにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドが含まれることとしたので、使用する薬品の数が抑えられ、コストを削減することができる。例えば、現像液をそのまま難溶化処理液として用いることで、製造工程において使用される薬品の数を抑え、作業効率を向上させることができる。また、これにより、コーター/デベロッパーでの難溶化処理も可能になり、プロセスの手間、工程、廃液処理等の簡略化が可能になる。
【0021】
<金属膜形成工程>
現像工程後、パターン形成されたレジスト層13,15,17,19及び半導体ウエハ11上に、蒸着により金属膜25を形成する金属膜形成工程が行われる。
図2は、本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態における金属膜形成工程後の積層体の断面図である。
図2に示すように、金属膜形成工程においては、第2の難溶化層19、特に第2の難溶化層19の突出部19aの形成条件により、蒸着金属粒子の進路を妨害し、第1のレジスト層13の側壁部13sに側壁付着部が形成されない。
【0022】
<除去工程>
その後、パターン形成されたレジスト層13,15,17,19を溶剤で溶解させるとともに第2の難溶化層19上の金属膜25を除去する除去工程が行われる。この除去工程により半導体ウエハ11上に所望のパターンの金属膜25が形成される。
なお、図2に示すように、金属膜形成工程において、第2のレジスト部15の上面15t及び第2のレジスト層17の側壁部17sに蒸着金属粒子が蒸着して金属膜25が形成されることがある。しかし、第2のレジスト部15の上面15t及び第2のレジスト層17の側壁部17sに形成された金属膜25は除去工程において除去される。本実施形態では、第1のレジスト層13の側壁部13sに側壁付着部が形成されないため、半導体ウエハ11上に形成された金属膜15にバリなどが形成されず、リフトオフが容易となる。
【0023】
<蒸着条件>
次に、第2の難溶化層19の突出部19aの形成条件について説明する。
図3は、本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態における金属膜形成工程の蒸着条件を示す断面図、及び従来の金属膜形成工程の蒸着条件を示す断面図であり、図3(a)は、半導体ウエハ11の上面11tに第1のレジスト層13及び第1の難溶化層15が形成された特許文献1の積層体50についての断面図であり、図3(b)は、半導体ウエハ11の上面11tに第1のレジスト層13、第1の難溶化層15、第2のレジスト層17、及び第2の難溶化層19が形成された本発明の積層体10についての断面図である。
【0024】
図3(a)に示すように、特許文献1の積層体50に対する金属膜形成工程の蒸着条件では、側壁付着部が形成されない蒸着源の設置範囲位置(以下、蒸着源範囲Z1と呼ぶ。)は、半導体ウエハ11と蒸着源との距離xと、第1のレジスト層13及び第1の難溶化層15(以下、下段レジスト層14と呼ぶ。)の厚さaと、第1の難溶化層15の突出部15aの突出量nとによって決まる。つまり、蒸着源が蒸着源範囲Z1より外側に存在するときは、側壁付着部が形成されることになる。
【0025】
一方、図3(b)に示すように、本発明の積層体10に対する金属膜形成工程の蒸着条件では、蒸着源範囲Z1より外側に蒸着源が外側に存在するときは、側壁付着部が形成されるが、半導体ウエハと蒸着源との距離xと、第2のレジスト層17及び第2の難溶化層19(以下、上段レジスト層18と呼ぶ。)の厚さbと、第1の難溶化層15の突出部15aの突出量nと、第2の難溶化層19の突出部19aの突出量mと、パターニング幅Lとによって決まる蒸着可能範囲Z2より外側に蒸着源が存在すると、側壁付着部は形成されない。これは、庇形状を有するレジストパターンを1層おきに積層した多層構造とすることで側壁付着部が形成される蒸着源の位置が限定され、側壁付着部が形成しにくくなるためである。
【0026】
以上のことより、蒸着源範囲Z1と蒸着源範囲Z2との値が近ければ近いほど、側壁付着部が形成されにくくなる。
さらに、Z1≧Z2となるときには、側壁付着部が形成しない蒸着が可能となり、この様な条件に近づけるためには、蒸着源範囲Z1をより大きく、蒸着源範囲Z2をより小さい値にすることが重要である。
特に、蒸着源範囲Z1は、その値が大きい程、所望の配線部に金属を蒸着する効率が上がり、プロセスとしてはより良いものとなるので、蒸着源範囲Z1を大きくする条件を優先的に達成することが望ましい。
【0027】
そこで、まず蒸着源範囲Z1をより大きくするための条件を考える。蒸着源範囲Z1の値は、下段レジスト層14の厚さa、及び第1の難溶化層15の突出量nを斜辺以外の二辺とした直角三角形と、半導体ウエハ11と蒸着源との距離x、並びに、蒸着源の設置範囲Z1及び金属膜のパターン幅Lの半分(L/2)を斜辺以外の二辺とした直角三角形との相似関係から求めることができ、下記式(1)によって表される。なお、下記式(1)において、金属膜のパターン幅Lは、蒸着源の設置範囲Z1に対して無視できる程度に小さい値なので、Z1+L/2≒Z1とした。
Z1=n・x/a ・・・・・式(1)
【0028】
上記式(1)からわかるように、蒸着源範囲Z1の値を大きくするためには、下段レジスト層14の厚さaをより薄くすることが好ましい。また、第1の難溶化層15の突出部15aの突出量nをより大きくすることが好ましい。例えば、下段レジスト層14の厚さaを一定としたときには、第1の難溶化層15の突出部15aの突出量nをより大きくすることでZ1の値を大きくすることができる。同様に、第1の難溶化層15の突出部15aの突出量nを一定としたときには、下段レジスト層14の厚さaをより薄くすることでZ1の値を大きくすることができる。
以上のように、上記式(1)の右辺の値が大となるように、各項を制御することで、本発明の効果は高くなる。
【0029】
次に、蒸着源範囲Z2をより小さくするための条件を考える。
蒸着源範囲Z2の値も、蒸着源範囲Z1と同様に相似を用いることで求められ、下記式(2)の関係が得られる。
Z2=x・(L−(n+m))/b ・・・式(2)
上記式(2)からわかるように、蒸着源範囲Z2の値を小さくするためには、上段レジスト層18の厚さbをより厚くすることが好ましい。また、半導体ウエハと蒸着源との距離x及びパターン幅Lをより狭くすることが好ましい。また、突出量m及び突出量nを大きくするにすることが好ましい。例えば、上段レジスト層18の厚さbを一定としたときには、突出量m及び突出量nをより大きくすることでZ2の値を小さくすることができる。
【0030】
以上のように、上記式(2)の右辺の値が小となるように、各項を制御することで、本発明の効果は高くなる。
これらを踏まえ、側壁付着部が生成しない条件を考える。この条件は下記式(3)で表される。
Z2−Z1=0 ・・・式(3)
したがって、上記式(1)、式(2)、及び式(3)より、下記式(4)が導出される。
b・n=a・(L−(n+m)) ・・・式(4)
すなわち、上記式(4)を満たす条件で積層体10を形成することにより、バリ及び側壁付着部を生成することなく、所望の配線を半導体ウエハにパターニングすることが可能である。
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、半導体装置の製造プロセスにおける金属蒸着に際し、側壁付着部(バリ)形成を抑制することが可能となる。さらに、半導体装置製造工程に要する時間が短縮され、歩留まりが向上し、半導体装置の生産性が向上する。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、レジスト形成工程において、下段レジスト層14及び上段レジスト層18からなる二段のレジスト層を形成したが、三段以上のレジスト層を形成してもよい。この場合、半導体ウエハ11上に積層形成される順序として、奇数番目にレジスト層が形成され、偶数番目に難溶化層が形成され、最表面層は難溶化層である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態における多層のレジストパターンの製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態における金属膜形成工程後の積層体の断面図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態における金属膜形成工程の蒸着条件を示す断面図、及び従来の金属膜形成工程の蒸着条件を示す断面図である。
【図4】従来における金属膜形成工程により形成された金属膜のパターン形状を示す断面図であり、(a)はポジ型のレジスト膜をマスクにして金属膜を形成した状態を示す断面図であり、(b)は(a)の半導体ウエハにリフトオフ処理を施した状態を示す断面図である。
【図5】従来の半導体装置の製造方法における2層のレジストパターンの製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 半導体装置
10 積層体
11 半導体ウエハ
13 第1のレジスト層
15 第1の難溶化層
15a 突出部
17 第2のレジスト層
19 第2の難溶化層
19a 突出部
25 金属膜
27 側壁付着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にレジスト層を形成するレジスト形成工程と、
前記レジスト層に露光する露光工程と、
露光後のレジスト層を現像する現像工程と、
現像工程によってパターン形成されたレジスト層上及び半導体基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
金属膜形成工程によって前記レジスト層上に形成された金属膜を除去する除去工程とを含む半導体装置の製造方法において、
前記レジスト形成工程は、第1のレジスト層及び第2のレジスト層の上面を、前記現像液を1倍以上に希釈した難溶化処理液により難溶化することによって、前記第1のレジスト層上に第1の難溶化層を形成すると共に、前記第2のレジスト層上に第2の難溶化層を形成する工程であり、
前記現像工程は、第1のレジスト層及び第2のレジスト層が掘削されることによって、第1の難溶化層及び第2の難溶化層が、第1のレジスト層及び第2のレジスト層に対して庇形状をなすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1のレジスト層の膜厚は、前記第2のレジスト層の膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記現像工程において前記第1のレジスト層が掘削されることによって該第1のレジスト層に対して突出してなる第1の難溶化層の突出部の突出量は、該第1の難溶化層上に形成された第2のレジスト層に対して該第2のレジスト層の上面に形成された第2の難溶化層の突出部の突出量よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1のレジスト層及び前記第1の難溶化層の厚みaと、前記第1の難溶化層の突出部の突出量nと、前記半導体基板と蒸着源との距離xとにより下記式(1)に規定される蒸着源の設置範囲Z1が、前記第2のレジスト層及び前記第2の難溶化層の厚みbと、前記第1の難溶化層の突出部の突出量nと、前記第2の難溶化層の突出部の突出量mと、前記半導体基板と蒸着源との距離xと、前記半導体基板上に形成される前記金属膜のパターン幅Lとにより下記式(2)に規定される蒸着源の設置範囲Z2に対して等しい、もしくは、大であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
Z1=n・x/a ・・・・・式(1)
Z2=x・(L−(n+m))/b ・・・式(2)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−245983(P2009−245983A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87625(P2008−87625)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】