説明

半導体装置の製造方法

【課題】窒化物半導体層の表面平坦性を向上させることができる半導体装置の製造方法を得る。
【解決手段】まず、低転位領域10と、低転位領域10よりも転位密度が高い高転位領域12とを有するGaN基板14を準備する。次に、高転位領域12を覆わずに高転位領域12を囲むように低転位領域10上に絶縁膜16を形成する。次に、GaN基板14上に窒化物半導体層18を形成する。これにより、高転位領域12上で発生した異常成長が低転位領域10に伝播するのを防ぎつつ、原料拡散により絶縁膜16の近傍で窒化物半導体層18の厚みが増大するのを防ぐことができる。この結果、窒化物半導体層18の表面平坦性を向上させることができ、半導体装置の歩留まりを向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低転位領域と高転位領域を有する基板上に窒化物半導体層を形成する半導体装置の製造方法に関し、特に窒化物半導体層の表面平坦性を向上させることができる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低転位領域と高転位領域を有する基板上に窒化物半導体層を形成する場合、高転位領域上で発生した異常成長が低転位領域に伝播して窒化物半導体層の平坦性が悪化することがある。そこで、高転位領域を覆うように絶縁膜を形成して、高転位領域上での異常成長を防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−221480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、高転位領域を覆うように絶縁膜を形成していたため、どうしても絶縁膜の幅が大きくなる。このため、窒化物半導体層を成長中に絶縁膜上から原料が拡散して、絶縁膜の近傍において窒化物半導体層の厚みが増大する。その結果、窒化物半導体層の表面平坦性が悪化して、素子の歩留まりが低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、窒化物半導体層の表面平坦性を向上させることができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、低転位領域と、前記低転位領域よりも転位密度が高い高転位領域とを有する基板を準備する工程と、前記高転位領域を覆わずに前記前記高転位領域を囲むように前記低転位領域上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜を形成した後に前記基板上に窒化物系半導体層を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、窒化物半導体層の表面平坦性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図4】比較例に係る製造方法により製造した半導体装置を示す上面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る製造方法により製造した半導体装置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。図1−3は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0010】
まず、図1に示すように、低転位領域10と、低転位領域10よりも転位密度が高い高転位領域12とを有するGaN基板14を準備する。低転位領域10はGa極性を有し、高転位領域12はN極性を有する。
【0011】
次に、図2に示すように、高転位領域12を覆わずに高転位領域12を囲むように低転位領域10上に、SiO又はSiNからなる絶縁膜16を形成する。絶縁膜16の幅wは10μmであり、厚みは1000Åである。絶縁膜16の成膜方法は、蒸着法、スパッタ法、又はCVD等を用いる。ここでは、高転位領域12の外端から10μm離して絶縁膜16を形成する。
【0012】
次に、図3に示すように、GaN基板14上にAlInGa(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1)からなる窒化物半導体層18を形成する。この際に、低転位領域10と極性が反転している高転位領域12上や、絶縁膜16上には、窒化物半導体層18はほとんど成長しない。なお、高転位領域12と絶縁膜16の間のGaN基板14上には窒化物半導体層18が形成される。
【0013】
なお、低転位領域10上に形成された窒化物半導体層18に、発光素子(図示せず)が周期的に形成される。窒化物半導体層18は、具体的にはGaN基板14から順次積層された厚さ1μmのn型GaN層、厚さ1μmのn型Al0.07Ga0.93N、厚さ100nmのn型GaN層、活性層、厚さ20nmのp型Al0.2Ga0.8N層、厚さ10nmのp型GaN層、厚さ400nmのp型Al0.07Ga0.93N、及び、厚さ100nmのp型GaN層である。活性層は、厚さ3.5nmのIn0.1Ga0.9N層と厚さ7nmのIn0.02Ga0.98Nを3周期積層した多重量子井戸である。
【0014】
本実施の形態の効果について比較例と比較しながら説明する。図4は、比較例に係る製造方法により製造した半導体装置を示す上面図である。なお、図中において窒化物半導体層18を透視している。比較例では絶縁膜16を形成しないため、高転位領域12上で発生した異常成長20が低転位領域10に伝播する。
【0015】
図5は、本発明の実施の形態に係る製造方法により製造した半導体装置を示す上面図である。本実施の形態では高転位領域12を囲むように低転位領域10上に絶縁膜16を形成するため、高転位領域12上で発生した異常成長20が低転位領域10に伝播するのを防ぐことができる。
【0016】
また、絶縁膜16で高転位領域12を覆わないため、絶縁膜16の幅wを狭くすることができる。従って、原料拡散により絶縁膜16の近傍で窒化物半導体層18の厚みが増大するのを防ぐことができる。この結果、窒化物半導体層18の表面平坦性を向上させることができ、半導体装置の歩留まりを向上できる。具体的には、表面平坦性を向上させるために絶縁膜16の幅wを30μm以下にする。ただし、異常成長の伝播を防ぐために絶縁膜16の幅wを1μm以上にする必要がある。
【0017】
また、絶縁膜16の厚みを500Å〜5000Åとするのが好ましい。絶縁膜16が500Åより薄いと窒化物半導体層18が絶縁膜16上に横方向成長して絶縁膜16を覆ってしまい、5000Åより厚いと絶縁膜16形成による応力が非常に大きくなり基板が反ってしまうためである。絶縁膜16の厚みを1000〜2000Åにするのが更に好ましい。
【0018】
また、絶縁膜16はSiO又はSiNからなることが好ましい。これにより、絶縁膜16上に窒化物半導体層18がほとんど成長しない。また、SiOやSiNは1000℃程度の高温でも安定である。
【0019】
なお、本実施の形態では高転位領域12及び絶縁膜16はストライプ状であるが、絶縁膜16が高転位領域12を囲むような形状であればストライプ以外の形状でも良い。
【符号の説明】
【0020】
10 低転位領域
12 高転位領域
14 GaN基板(基板)
16 絶縁膜
18 窒化物半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低転位領域と、前記低転位領域よりも転位密度が高い高転位領域とを有する基板を準備する工程と、
前記高転位領域を覆わずに前記前記高転位領域を囲むように前記低転位領域上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜を形成した後に前記基板上に窒化物系半導体層を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁膜の幅は30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁膜はSiO又はSiNからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板は窒化ガリウム基板であり、
前記低転位領域はGa極性を有し、
前記高転位領域はN極性を有することを特徴とする請求項1−3の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151119(P2011−151119A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10056(P2010−10056)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】