説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体チップの高位置精度を実現して半導体装置の品質の安定化を図る。
【解決手段】SIPの組み立てのダイボンディング工程で、高い位置精度を要求されないマイコンチップ3を表面非接触型のコレットでピックアップして第1のチップ搭載部上にダイボンディングし、その後、高い位置精度が要求されるASICチップ4を表面接触型のコレットでピックアップして第2のチップ搭載部上にダイボンディングすることで、2種類のコレットを使い分けることにより、前記表面接触型のコレットによってダイボンディングを行ったASICチップ4の高い位置精度を実現するとともに、前記SIPの品質の安定化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、複数の半導体チップを有する半導体装置の品質の安定化に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体チップを有する半導体装置として、例えば、特開2005−303222号公報(特許文献1)に、マイコンチップとマイコンチップの横に並べてSDRAMとが配置された構造が記載されている。さらに、特開2005−327967号公報(特許文献2)に、ダイパッドに横置きに接着された第1のチップ及び第2のチップと、一端が第1のチップの上面にボンドされ、第2のチップを飛び越えて他端がリードの上面にボンドされたワイヤとを有する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−303222号公報
【特許文献2】特開2005−327967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、1つのパッケージ内に複数の半導体チップ(以降、単にチップともいう)が搭載されたSIP(System In Package)と呼ばれる半導体装置が開発されており、SIPには、複数の半導体チップを積層するタイプや同一平面に横並びで半導体チップを配置するタイプ等のさまざまな形態がある。
【0005】
それに伴ってワイヤリングのデザインも複雑化し、リードフレームのダイパッド(チップ搭載部又はタブとも呼ぶ)へのダイボンディングの位置もその高精度化が要求されるようになってきている。中には高い位置精度が要求される半導体チップと、高い位置精度が要求されない半導体チップとが混載される半導体装置もある。
【0006】
なお、半導体装置の組立て工程のダイボンディング工程では、コレットと呼ばれる治具を用いて半導体チップを吸着してピックアップし、樹脂系または半田のペースト材を接着材としてリードフレームのダイパッド上に搭載する。
【0007】
ここで、半導体チップをピックアップするコレットの種類と特性について説明する。
【0008】
半導体製造工程において用いられるチップピックアップ用のコレットには、大きく分けて、表面接触型と表面非接触型がある。表面接触型のコレットは、半導体チップの回路形成面もしくは裏面に接触してこの面を吸着保持してピックアップするものである。したがって、回路形成面を吸着する場合には、回路形成面の保護を考慮しなければならないこともある。
【0009】
一方、表面非接触型のコレットは、半導体チップの回路形成面には接触せずに回路形成面の外側の外周部(エッジ部)に接触させて、この状態で吸着保持してピックアップするものである。
【0010】
表面接触型のコレットでは、半導体チップの何れかの面を吸着するため、大きな吸着力で半導体チップを吸着することができ、半導体チップの高い位置精度を確保することが可能であるが、前述のように回路形成面を吸着する場合には、回路形成面の保護が必要となることもある。
【0011】
これに対して表面非接触型のコレットでは、前述のように半導体チップの面のエッジ部に接触して吸着保持を行うため、回路形成面の特別な保護は必要としないが、直接に面を吸着しないため、半導体チップの吸着力が表面接触型に比べて弱く、高い位置精度を確保することは困難である。
【0012】
本願発明者は、SIPにおいて、高い位置精度が要求される半導体チップと、高い位置精度が要求されない半導体チップとが混載される構造の組み立てについて検討した結果、以下のような課題を見出した。
【0013】
まず、高い位置精度が要求される半導体チップと、高い位置精度が要求されない半導体チップとが混載されるSIPにおいて、両タイプの半導体チップのピックアップを1種類のコレットで共用しようとすると、半導体チップの位置精度の確保と回路形成面の保護とを両立させるのが困難なことが課題である。
【0014】
また、単に2種類のコレットを用いて両タイプの半導体チップに対してピックアップを分けて行うと生産性が悪くなるとともに、生産コストが増加することが課題である。
【0015】
なお、前記特許文献1(特開2005−303222号公報)や前記特許文献2(特開2005−327967号公報)には、それぞれ2種類の半導体チップが搭載されたパッケージ構造が記載されているが、両特許文献とも2種類の半導体チップに対するピックアップ工程での使用されるべきコレットについての記載はない。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体チップの高位置精度を実現して半導体装置の品質の安定化を図ることができる技術を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、半導体装置のコストアップを最小限に抑えつつ生産性の向上を図ることができる技術を提供することにある。
【0018】
さらに、本発明の他の目的は、半導体装置の歩留りの向上を図ることができる技術を提供することにある。
【0019】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0021】
すなわち、本発明は、(a)第1のチップ搭載部と前記第1のチップ搭載部に並んで設けられた第2のチップ搭載部とを備えたチップ搭載部を有し、前記チップ搭載部の周囲に複数のリードが設けられたリードフレームを準備する工程と、(b)表面非接触型のコレットで第1半導体チップをピックアップし、前記ピックアップされた前記第1半導体チップを前記第1のチップ搭載部にダイボンディングする工程と、(c)前記(b)工程の後、表面接触型のコレットで第2半導体チップをピックアップし、前記ピックアップされた前記第2半導体チップを前記第2のチップ搭載部にダイボンディングする工程と、(d)前記(c)工程の後、前記第1及び第2半導体チップそれぞれにワイヤボンディングを行う工程と、を有するものである。
【0022】
また、本発明は、(a)第1のチップ搭載部と前記第1のチップ搭載部に並んで設けられた第2のチップ搭載部とを備えたチップ搭載部を有し、前記チップ搭載部の周囲に複数のボンディングリードが設けられた配線基板を準備する工程と、(b)表面非接触型のコレットで第1半導体チップをピックアップし、前記ピックアップされた前記第1半導体チップを前記第1のチップ搭載部にダイボンディングする工程と、(c)前記(b)工程の後、表面接触型のコレットで第2半導体チップをピックアップし、前記ピックアップされた前記第2半導体チップを前記第2のチップ搭載部にダイボンディングする工程と、(d)前記(c)工程の後、前記第1及び第2半導体チップそれぞれにワイヤボンディングを行う工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0024】
SIPの組み立てのダイボンディング工程で2種類のコレットを使い分けることで、半導体チップの高位置精度を実現するとともに、半導体装置の品質の安定化を図ることができる。
【0025】
また、半導体装置のコストアップを最小限に抑えつつ生産性の向上を図ることができる。さらに、半導体装置の歩留りを向上させることができるとともに、半導体装置の高品質を維持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の半導体装置の構造の一例を封止体を透過して示す平面図である。
【図2】図1に示すA−A線に沿って切断した構造の一例を示す断面図である。
【図3】図1に示すB−B線に沿って切断した構造の一例を示す断面図である。
【図4】図1に示す半導体装置におけるワイヤリング状態の一例を示す部分平面図である。
【図5】図1に示す半導体装置に搭載される第1半導体チップと第2半導体チップの外観構造の一例を示す断面図である。
【図6】図5に示す第1半導体チップにおける電極パッドの周辺の構造の一例を示す拡大部分断面図である。
【図7】図5に示す第2半導体チップにおける電極パッドの周辺の構造の一例を示す拡大部分断面図である。
【図8】図1に示す半導体装置の組み立て手順の一例を示す製造フロー図である。
【図9】図1に示す半導体装置の組み立てで用いられるリードフレームのダイパッド及びその周辺部の構造の一例を示す部分平面図である。
【図10】図1に示す半導体装置の組み立てにおける第1ダイボンディング後の構造の一例を示す部分平面図である。
【図11】図1に示す半導体装置の組み立てにおける第2ダイボンディング後の構造の一例を示す部分平面図である。
【図12】図10に示す第1ダイボンディング工程で用いられるピックアップ用のコレットの吸着時の構造の一例を示す断面図である。
【図13】図12に示すコレットの吸着時の構造の一例を示す裏面図である。
【図14】図11に示す第2ダイボンディング工程で用いられるピックアップ用のコレットの吸着時の構造の一例を示す断面図である。
【図15】図14に示すコレットの吸着時の構造の一例を示す裏面図である。
【図16】図12に示すコレットを薄型の半導体チップに用いた際の構造の一例を示す断面図である。
【図17】図14に示すコレットを用いた第2ダイボンディング時の構造の一例を示す断面図である。
【図18】図10に示す第1ダイボンディング工程で用いられる変形例のピックアップ用のコレットの吸着時の構造を示す断面図である。
【図19】図18に示す変形例のコレットの吸着時の構造を示す裏面図である。
【図20】図1に示す半導体装置の組み立てにおける第1半導体チップのワイヤボンディング後の構造の一例を示す部分平面図である。
【図21】図1に示す半導体装置の組み立てにおける第2半導体チップのワイヤボンディング後の構造の一例を示す部分平面図である。
【図22】図1に示す半導体装置の組み立てにおける樹脂モールディング時のレジン流動方向の一例を示す部分平面図である。
【図23】本発明の実施の形態の変形例の半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0028】
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0029】
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
【0030】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0031】
また、以下の実施の形態において、構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0033】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態の半導体装置の構造の一例を封止体を透過して示す平面図、図2は図1に示すA−A線に沿って切断した構造の一例を示す断面図、図3は図1に示すB−B線に沿って切断した構造の一例を示す断面図、図4は図1に示す半導体装置におけるワイヤリング状態の一例を示す部分平面図である。さらに、図5は図1に示す半導体装置に搭載される第1半導体チップと第2半導体チップの外観構造の一例を示す断面図、図6は図5に示す第1半導体チップにおける電極パッドの周辺の構造の一例を示す拡大部分断面図、図7は図5に示す第2半導体チップにおける電極パッドの周辺の構造の一例を示す拡大部分断面図である。
【0034】
本実施の形態の半導体装置は、リードフレームを用いて組み立てられる多ピンで、かつ樹脂封止型のものであり、さらにチップ搭載部(タブともいう)であるダイパッド上に2つの半導体チップが横並びに搭載された半導体パッケージである。本実施の形態では前記半導体装置の一例として、図1〜図3に示すようなQFP(Quad Flat Package)型のSIP1を取り上げて説明する。
【0035】
図1〜図3に示すSIP1の構成について説明すると、第1のチップ搭載部である第1のダイパッド2dと第2のチップ搭載部である第2のダイパッド2eを有するダイパッド2cと、第1のダイパッド2d上に搭載された第1半導体チップであるマイコンチップ3と、第2のダイパッド2e上に搭載された第2半導体チップであるASIC(Application Specific Integrated Circuit)チップ4と、マイコンチップ3及びASICチップ4の周囲に放射状に配置された複数のインナリード(リード)2aと、複数のインナリード2aそれぞれと一体に形成された複数のアウタリード2bとを有している。
【0036】
マイコンチップ3は、制御系の半導体集積回路が形成された回路形成面である主面3aと、その反対側の裏面3bとを有しており、主面3aにはその周縁部に複数の表面電極である電極パッド3cが設けられている。一方、ASICチップ4は、アナログ系のロジック回路が形成された回路形成面である主面4aと、その反対側の裏面4bとを有しており、主面4aにはその周縁部の一部に複数の表面電極である電極パッド4cが設けられている。
【0037】
また、SIP1は、マイコンチップ3の電極パッド3cもしくはASICチップ4の電極パッド4cとこれらに対応するインナリード2aとを電気的に接続する複数のワイヤ6と、樹脂モールディング等によって樹脂から形成され、かつマイコンチップ3、ASICチップ4、複数のワイヤ6及び複数のインナリード2aを樹脂封止する封止体5とを有している。
【0038】
なお、ダイパッド2cにおいて第1のダイパッド2dの上面2fと第2のダイパッド2eの上面2gとは、同一平面となっており、同じ高さに位置している。マイコンチップ3は、第1のダイパッド2dの上面2fにペースト材7から成るダイボンド材を介して接合しており、一方、ASICチップ4は、第2のダイパッド2eの上面2gに、同様にペースト材7から成るダイボンド材を介して接合している。すなわち、マイコンチップ3の裏面3bがペースト材7を介して第1のダイパッド2dの上面2fと接合されており、さらにASICチップ4の裏面4bがペースト材7を介して第2のダイパッド2eの上面2gと接合されている。したがって、マイコンチップ3とASICチップ4は、ダイパッド2cの同じ高さの同一平面上に横並びに搭載されている。
【0039】
ここで、第1のダイパッド2dと第2のダイパッド2eから成るダイパッド2cは、その4つのコーナ部で、吊りリード2iと接続しており、吊りリード2iによって支持されている。
【0040】
また、ダイパッド2cにおいて、第1のダイパッド2dは、図9に示すように小型の円形を成し、マイコンチップ3の裏面3bより小さい形状となっている。すなわち、第1のダイパッド2dは小タブ構造となっている。円形の第1のダイパッド2dは、4箇所で支持リード2jによって支持されており、かつこれらの支持リード2jは、ダイパッド2cの枠部2hに接続されている。
【0041】
このように第1のダイパッド2dが小タブ構造であることにより、封止体5(封止用の樹脂)とマイコンチップ3の裏面3bとの接合面積を増やして封止体5にクラック(パッケージクラック)が形成されることを抑制できる。
【0042】
なお、本実施の形態のSIP1は、QFP型であるため、複数のインナリード2aそれぞれと一体に形成された複数のアウタリード2bは、封止体5の4辺それぞれから外部に向かって突出しており、各アウタリード2bは、全てガルウィング状に曲げ成形されている。
【0043】
ここで、マイコンチップ3やASICチップ4は、例えば、シリコン基板によって形成された半導体チップである。また、ダイパッド2c、吊りリード2i、インナリード2a及びアウタリード2bは、例えば、銅合金又は鉄−ニッケル合金等の薄板状の部材によって形成され、さらに、封止体5は、例えば、熱硬化性のエポキシ系樹脂等から成り、樹脂モールディングによって形成されたものである。また、マイコンチップ3やASICチップ4の各電極パッドと、これに対応するインナリード2aとを電気的に接続する複数のワイヤ6は、例えば、金線であり、さらにマイコンチップ3やASICチップ4をダイパッド2cに固着するペースト材7は、例えば、銀ペースト等である。
【0044】
本実施の形態のSIP1では、図4に示すように、大きく分けて3通りのワイヤリングのパターンが存在している。1つめは、マイコンチップ3とインナリード2aとを接続する第1ワイヤ6aであり、2つめは、マイコンチップ3とASICチップ4とを接続する第4ワイヤ6dであり、3つめはASICチップ4とインナリード2aとを接続するワイヤ6である。さらに、このASICチップ4とインナリード2aとを接続するワイヤ6は、ASICチップ4において、ダイパッド2cの外周寄りに配置された電極パッド4cとインナリード2aとを電気的に接続する第2ワイヤ6bと、ダイパッド2cの中央寄りに配置された電極パッド4cとインナリード2aとを電気的に接続する第3ワイヤ6cとに分けられる。
【0045】
これらワイヤリングパターンのうち、SIP1では、図4のP部に示すように、ASICチップ4において、ダイパッド2cの外周寄りに配置された電極パッド4cとインナリード2aとを電気的に接続する第2ワイヤ6b(W1)と、ダイパッド2cの中央寄りに配置された電極パッド4cとインナリード2aとを電気的に接続する第3ワイヤ6c(W2)とが非常に接近している。その際、第2ワイヤ6b(W1)と第3ワイヤ6c(W2)とでは、第3ワイヤ6cの方がワイヤ長さが遥かに長い。また、P部の断面構造を表す図3に示すように、第2ワイヤ6bと第3ワイヤ6cとでは、第3ワイヤ6cの方がワイヤループの高さが高い。第2ワイヤ6bのワイヤループの高さと第3ワイヤ6cのワイヤループの高さの差(K)は、例えば、80数μm〜90数μm程度であり、第3ワイヤ6cのワイヤ長が長いことによる垂れ下がり等を考慮すると、第2ワイヤ6b(W1)と第3ワイヤ6c(W2)は外周寄りの電極パッド4c上(P部上)において非常に接近した位置関係にある。
【0046】
したがって、SIP1において、ASICチップ4のダイボンディングの位置精度は非常に高いものが要求される。
【0047】
一方、マイコンチップ3は、ダイボンディングの位置精度はASICチップ4ほどの高いものは要求されない。したがって、本実施の形態のSIP1は、高い位置精度が要求されるASICチップ(第2半導体チップ)4と、高い位置精度が要求されないマイコンチップ(第1半導体チップ)3とが混載された半導体パッケージである。
【0048】
そこで、SIP1では、その組み立てのダイボンディング工程において、2種類のコレットを使い分けることで、ASICチップ4の高い位置精度の要求に応じている。すなわち、表面接触型のコレットと表面非接触型のコレットを使い分けることでASICチップ4の高い位置精度の要求に応じている。
【0049】
具体的には、高い位置精度が要求されないマイコンチップ3は、ダイボンディング工程で表面非接触型のコレットを用いてピックアップし、これをダイボンディングし、一方、高い位置精度が要求されるASICチップ4は、表面接触型のコレットを用いてピックアップし、これをダイボンディングする。前述のように表面接触型のコレットでは、半導体チップの面を吸着するため、大きな吸着力で半導体チップを吸着することができ、ダイボンディング時に半導体チップの高い位置精度を確保することが可能である。
【0050】
これに対して、表面非接触型のコレットでは、半導体チップの面のエッジ部に接触して吸着保持を行うため、半導体チップの吸着力が表面接触型に比べて弱く、高い位置精度を確保することは困難である。
【0051】
これにより、ASICチップ4を高い位置精度でダイボンディングすることが可能となる。
【0052】
本実施の形態では、表面非接触型のコレットの一例として、図12及び図13に示すゲタ型コレット8を用い、かつ表面接触型のコレットの一例として、図14及び図15に示す丸型コレット9を用いた場合を取り上げて説明する。
【0053】
まず、ゲタ型コレット8について説明すると、図12に示すようにゲタ型コレット8では、チップピックアップ時に半導体チップ(マイコンチップ3)のエッジ部に接触してこの状態で中央部の吸引孔8aから吸引を行って吸着保持する。つまり、ゲタ型コレット8とは、四角形状の半導体チップの主面において、対向する一組の辺にコレットの傾斜面が接触するように、半導体チップを保持するものである。
【0054】
したがって、マイコンチップ3の主面3aとゲタ型コレット8の吸引部8bとの間に空間が形成されるとともに、ゲタ型コレット8の吸引部8bの側部においてエアーが漏れるため、吸着力は弱くなり、チップピックアップにおいて高い位置精度は出せない。本実施の形態のSIP1では、マイコンチップ3は、高い位置精度が要求されないため、ゲタ型コレット8によるピックアップであっても特に問題はない。
【0055】
また、ゲタ型コレット8の場合、マイコンチップ3の回路形成面である主面3aには、エッジ部を除いて接触しないため、マイコンチップ3の主面3aへのダメージは回避できる。
【0056】
一方、丸型コレット9では、図14に示すようにチップピックアップ時に半導体チップ(ASICチップ4)の回路形成面(上面)に接触してこの状態で中央部の吸引孔9aから吸引を行って吸着保持する。したがって、丸型コレット9では、その先端の吸引部9bと半導体チップの回路形成面との間で隙間は形成されにくいため、エアーは漏れにくく、吸着力を高い状態で維持することができ、その結果、チップピックアップにおいて高い位置精度を出すことができる。
【0057】
すなわち、本実施の形態のSIP1では、高い位置精度が要求されるASICチップ4を、表面接触型の丸型コレット9を用いてピックアップし、ダイボンディングすることで高い位置精度でASICチップ4をダイボンディングすることができる。なお、ASICチップ4では、丸型コレット9でチップ表面を吸着するため、このチップ表面へのダメージを低減するためにチップ表面に図7に示すようにポリイミドコート膜4gを施した上で丸型コレット9を使用して高位置精度を確保している。
【0058】
ここで、マイコンチップ3は、チップピックアップ時、図12に示すように、その主面3aのエッジ部にゲタ型コレット8の吸引部8bが接触するため、図5に示すように、主面(回路形成面)3aの縁部に凹状の段差部であるステップカット部3gが形成されている。すなわち、マイコンチップ3の主面3aのエッジ部には凹状のステップカット部3gが形成されており(マイコンチップ3の主面3aのエッジ部に段差が形成されており)、これにより、ゲタ型コレット8の吸引部8bとの接触を低減することができる。その結果、マイコンチップ3から発生するアルミニウム屑を少なくすることができるとともに、異物発生によるゲタ型コレット8の吸着力低下を抑制することができる。
【0059】
一方、ASICチップ4は、チップピックアップ時、図14に示すように、その主面(回路形成面)4aに丸型コレット9の吸引部9bが接触するため、図7に示すように主面4a上に保護膜であるポリイミドコート膜4gが形成されている。すなわち、主面4aの表面にポリイミドコート膜4gが形成されていることで、その回路形成面である主面4aを強い吸着力で吸着しても主面4aに形成された回路を保護することができるとともに、高い位置精度でダイボンディングを行うことができる。言い換えると、ASICチップ4には、ダイボンディング時の高い位置精度を確保するために、主面4aの表面にポリイミドコート膜4gが形成されている。
【0060】
なお、ダイボンディング時に高い位置精度が必要とされないマイコンチップ3においては、コレット(ゲタ型コレット8)による表面吸着は行われないため、図6に示すように、主面3aの表面にASICチップ4のポリイミドコート膜4gのような保護膜は形成されていない。
【0061】
ここで、図6、図7はそれぞれマイコンチップ3とASICチップ4のそれぞれの電極パッド3c,4cとその周囲の構造を示すものであるが、図6に示すマイコンチップ3は、その表面に絶縁膜3dとガラスコート膜3eが形成されているだけなのに対して、一方、図7に示すASICチップ4では、その表面に絶縁膜4dとガラスコート膜4eとさらに保護膜であるポリイミドコート膜4gが形成されており、主面4aに形成された回路がポリイミドコート膜4gによって一層保護される構造となっている。なお、マイコンチップ3においても、ASICチップ4においても、それぞれの電極パッド3c,4cは、チタン層3f,4f上に形成されている。
【0062】
さらに、ASICチップ4のピックアップにおいて、丸型コレット9を用いた方が好ましい他の理由について説明する。本実施の形態のSIP1では、第1半導体チップであるマイコンチップ3とインナリード2aとを電気的に接続する複数の第1ワイヤ6aの一部に、図4のM部や図5のM部に示すように、第2半導体チップであるASICチップ4を飛び越えてインナリード2aに接続される第1ワイヤ6aを含んでいる。
【0063】
したがって、このようなASICチップ4を飛び越える第1ワイヤ6aとASICチップ4とが接触しないように、マイコンチップ3はASICチップ4より厚く形成されている。すなわち、ASICチップ4の厚さがマイコンチップ3の厚さより薄いことで、ASICチップ4を飛び越える第1ワイヤ6aがASICチップ4と接触することを防止できる。
【0064】
このようにASICチップ4は、薄型の半導体チップである。ところが、薄型の半導体チップをコレットでピックアップする際に、図16に示すように、ゲタ型コレット8のような構造のコレットでピックアップすると、ASICチップ4の裏面4bからはみ出したダイボンド用のペースト材7がゲタ型コレット8の吸引部8bに付着する場合があり、コレットに付着したペースト材7がコレットを介して他の半導体チップに付着することがある。つまり、薄型の半導体チップの場合、図16の距離(L)が非常に小さくなり、ペースト材7がゲタ型コレット8の吸引部8bに付着するという問題が発生する。
【0065】
したがって、SIP1の組み立てにおいて、薄型のASICチップ4をピックアップする際には、図17に示すような丸型コレット9を採用することが好ましい。
【0066】
次に、本実施の形態の半導体装置(SIP1)の製造方法を、図8に示す製造フロー図に沿って説明する。
【0067】
図8は図1に示す半導体装置の組み立て手順の一例を示す製造フロー図、図9は図1に示す半導体装置の組み立てで用いられるリードフレームのダイパッド及びその周辺部の構造の一例を示す部分平面図、図10は図1に示す半導体装置の組み立てにおける第1ダイボンディング後の構造の一例を示す部分平面図、図11は図1に示す半導体装置の組み立てにおける第2ダイボンディング後の構造の一例を示す部分平面図である。また、図12は図10に示す第1ダイボンディング工程で用いられるピックアップ用のコレットの吸着時の構造の一例を示す断面図、図13は図12に示すコレットの吸着時の構造の一例を示す裏面図、図14は図11に示す第2ダイボンディング工程で用いられるピックアップ用のコレットの吸着時の構造の一例を示す断面図、図15は図14に示すコレットの吸着時の構造の一例を示す裏面図である。さらに、図16は図12に示すコレットを薄型の半導体チップに用いた際の構造の一例を示す断面図、図17は図14に示すコレットを用いた第2ダイボンディング時の構造の一例を示す断面図、図18は図10に示す第1ダイボンディング工程で用いられる変形例のピックアップ用のコレットの吸着時の構造を示す断面図、図19は図18に示す変形例のコレットの吸着時の構造を示す裏面図である。また、図20は図1に示す半導体装置の組み立てにおける第1半導体チップのワイヤボンディング後の構造の一例を示す部分平面図、図21は図1に示す半導体装置の組み立てにおける第2半導体チップのワイヤボンディング後の構造の一例を示す部分平面図、図22は図1に示す半導体装置の組み立てにおける樹脂モールディング時のレジン流動方向の一例を示す部分平面図、図23は本発明の実施の形態の変形例の半導体装置の構造を示す断面図である。
【0068】
まず、図8のステップS1に示すリードフレーム準備を行う。ここでは、第1のダイパッド2dとこの第1のダイパッド2dに並んで設けられた第2のダイパッド2eとを備えたチップ搭載部であるダイパッド2cを有し、かつダイパッド2cの周囲に複数のインナリード2aが設けられた図9に示すリードフレーム2を準備する。リードフレーム2は、例えば、銅合金から成る薄板状の部材である。
【0069】
なお、ダイパッド2cは、略四角形を成し、その4つの角部において対角線上に配置された4本の吊りリード2iによって支持されている。さらに、ダイパッド2cは、その中に第1のダイパッド2dの領域と第2のダイパッド2eの領域とを有しており、枠部2hで囲まれた第1のダイパッド2dの領域と略長方形の第2のダイパッド2eの領域とが接合された形状となっている。ここで、第1のダイパッド2dは、ダイパッド2cの枠部2hから内方に向かって延在する4本の支持リード2jによって支持されており、小タブ構造となっている。
【0070】
その後、図8のステップS2に示すダイボンディングを行う。まず、ステップS2−1の第1ダイボンディングを行う。ここでは、第1ダイボンディングとして、図10に示すように、リードフレーム2のダイパッド2cにおける第1のダイパッド2d上にマイコンチップ3を搭載する。すなわち、本実施の形態のSIP1では、高い位置精度が要求されないマイコンチップ3と、高い位置精度が要求されるASICチップ4が搭載されるため、その組み立てにおいては、まず、第1ダイボンディングとして、高い位置精度が要求されないマイコンチップ3からダイボンディングし、その後、第2ダイボンディングとして、高い位置精度が要求されるASICチップ4をボンディングする。
【0071】
これは、第1ダイボンディング工程から第2ダイボンディング工程に移る際にリードフレーム2の搬送を行うため、先に高い位置精度が要求されないマイコンチップ3を搭載し、後に高い位置精度が要求されるASICチップ4を搭載することで、後に搭載されるASICチップ4の位置精度をより高めることが可能になるためである。
【0072】
そこで、まず、図3に示す第1のダイパッド2dの上面2fにダイボンド材であるペースト材7を塗布する。その後、図12に示すように表面非接触型のコレットであるゲタ型コレット8によってマイコンチップ3をピックアップし、さらに、前記ピックアップされたマイコンチップ3を第1のダイパッド2d上にペースト材7を介してダイボンディングする。
【0073】
なお、ピックアップの際には、ピックアップ装置がマイコンチップ3の回路パターンを検出してマイコンチップ3のセンターを算出し、これによってマイコンチップ3のセンターをピックアップする。この状態を維持して図10に示すようにマイコンチップ3を第1のダイパッド2dのセンターに搭載する。
【0074】
また、図5に示すように、マイコンチップ3の主面3aのエッジ部には凹状のステップカット部3gが形成されているため、マイコンチップ3の主面3aのエッジ部に段差が形成されており、これにより、ゲタ型コレット8の吸引部8bとの接触を低減することができる。その結果、マイコンチップ3から発生するアルミニウム屑を少なくすることができるとともに、異物発生によるゲタ型コレット8の吸着力低下を抑制することができる。
【0075】
以上により、マイコンチップ3のダイボンディングである第1ダイボンディングを完了する。
【0076】
その後、リードフレーム2の搬送を行った後、図8のステップS2−2の第2ダイボンディングを行う。
【0077】
まず、図3に示す第2のダイパッド2eの上面2gにダイボンド材であるペースト材7を塗布する。その後、図14に示すように表面接触型のコレットである丸型コレット9によってASICチップ4をピックアップし、さらに、前記ピックアップされたASICチップ4を第2のダイパッド2e上にペースト材7を介してダイボンディングする。
【0078】
なお、ピックアップの際には、マイコンチップ3の場合と同様に、ピックアップ装置がASICチップ4の回路パターンを検出してASICチップ4のセンターを算出し、これによってASICチップ4のセンターをピックアップする。この状態を維持して図11に示すようにASICチップ4を第2のダイパッド2eのセンターに搭載する。
【0079】
また、ASICチップ4では、その主面(回路形成面)4aに丸型コレット9の吸引部9bが接触するため、図7に示すように主面4a上にポリイミドコート膜4gが形成されている。つまり、主面4aの表面にポリイミドコート膜4gが形成されていることで、その回路形成面(主面4a)を丸型コレット9の強い吸着力で吸着しても主面4aに形成された回路を保護することができるとともに、高い位置精度を確保してダイボンディングを行うことができる。
【0080】
以上により、ASICチップ4のダイボンディングである第2ダイボンディングを完了する。
【0081】
その後、図3に示す第1のダイパッド2d上のマイコンチップ3と接合したペースト材7と、第2のダイパッド2e上のASICチップ4と接合したペースト材7とを一括して熱硬化する。すなわち、第1ダイボンディング及び第2ダイボンディングそれぞれの工程では、マイコンチップ3及びASICチップ4はそれぞれ仮止め程度の固定とし、第1ダイボンディングと第2ダイボンディングが終了した後に両者のペースト材7を一括して熱処理して熱硬化させる。
【0082】
このようにマイコンチップ3用のペースト材7とASICチップ4用のペースト材7を一括で熱処理して熱硬化させることで、SIP1の組み立ての生産性を向上させることができる。
【0083】
つまり、高い位置精度が要求されないマイコンチップ3を先にダイボンディングし、その後、高い位置精度が要求されるASICチップ4をダイボンディングすることで、両者のペースト材7を一括して(纏めて)熱硬化させることができ、その結果、SIP1の生産性を向上できる。
【0084】
その後、図8のステップS3のワイヤボンディングを行う。すなわち、マイコンチップ3及びASICチップ4それぞれにワイヤボンディングを行う。ここでは、一例として、第1半導体チップであるマイコンチップ3からワイヤボンディングを行う場合を説明する。
【0085】
まず、図20に示すように、第1半導体チップであるマイコンチップ3に接続する第1ワイヤをワイヤボンディングする。その際、先に、図20のA部範囲に示す、マイコンチップ3とインナリード2aとを電気的に接続する第1ワイヤ6aを接続する。
【0086】
なお、複数の第1ワイヤ6aには、図21のM部に示すように、ASICチップ4を飛び越えてインナリード2aに接続されるワイヤが含まれている。そこで、マイコンチップ3とASICチップ4とでは、ASICチップ4の方がその厚さが薄く形成されている。すなわち、ASICチップ4の厚さがマイコンチップ3の厚さより薄いことで、ASICチップ4を飛び越える第1ワイヤ6aが存在していても、この第1ワイヤ6aとASICチップ4が接触することを防止できる。
【0087】
その後、図21のB部範囲に示す、マイコンチップ3とASICチップ4とを電気的に接続する第4ワイヤ6dをワイヤボンディングする。すなわち、マイコンチップ3とASICチップ4のチップ間ワイヤ(第4ワイヤ6d)のワイヤボンディングを行う。
【0088】
その後、図21のC部範囲に示す、ASICチップ4とインナリード2aとを電気的に接続する複数の第2ワイヤ6bのワイヤボンディングを行う。さらに、図21のD部範囲に示す、ASICチップ4とインナリード2aとを電気的に接続する複数の第3ワイヤ6cのワイヤボンディングを行う。なお、第2ワイヤ6bと第3ワイヤ6cとでは、第3ワイヤ6cの方が主面4aの周縁部から反対側のインナリード2aに対して主面4a上を飛び越えてワイヤリングしている分、第2ワイヤ6bに比較してワイヤループが高く、かつワイヤ長さが長い。
【0089】
そこで、本実施の形態のSIP1では、図4及び図21それぞれのP部における隣り合って接近した第2ワイヤ6bと第3ワイヤ6cの間で、高さ方向に、図3の距離(K)に示すような間隔を設けることができる(Kは、例えば、80数μm〜90数μm程度)。すなわち、SIP1では、ASICチップ4のダイボンディング時に、丸型コレット9を採用することで、ダイボンディングの位置精度を高めることができ、その結果、ASICチップ4が高い位置精度でダイボンディングされているため、隣り合って接近した第2ワイヤ6bと第3ワイヤ6cに対して、両者の間に所望の間隔(K)を設けることができる。
【0090】
なお、図21のASICチップ4において、その主面4aの周縁部のP部の電極パッド4cを含むパッド列の続き(図21中のP部の右側の周縁部)にそのまま電極パッド4cを配置できず、わざわざその反対側の周縁部に第3ワイヤ6cと接続する複数の電極パッド4cが設けられているのは、チップ内に両パッド列(第2ワイヤ6bと接続する電極パッド4cのパッド列と、第3ワイヤ6cと接続する電極パッド4cのパッド列)を分断する内部回路が形成されているためである。
【0091】
したがって、SIP1では、第3ワイヤ6cのように主面4aを飛び越えて反対側のインナリード2aに接続さぜるを得ないワイヤ6が存在するとともに、P部における第2ワイヤ6bと第3ワイヤ6cの接触を防止する上でもASICチップ4を高い位置精度でダイボンディングする必要があり、丸型コレット9を採用してダイボンディングすることが非常に有効である。
【0092】
なお、第1ワイヤ6a、第2ワイヤ6b、第3ワイヤ6c及び第4ワイヤ6dのワイヤボンディングの順番については、前述の順番に限定されるものではなく、任意の順番であるが、水平方向の位置でクロスする、または接近する可能性があるワイヤ同士については、高低差を付けたワイヤリングとし、その際には、ワイヤループの高さが低い方から先にワイヤボンディングを行う。
【0093】
ワイヤボンディング完了後、図8のステップS4の樹脂モールディングを行う。ここでは、マイコンチップ3、ASICチップ4、複数のワイヤ6及び複数のインナリード2aを樹脂封止する樹脂モールディングを行う。その際、樹脂モールディング時には、図22のレジン流動方向11に示すように、P部の接近した第2ワイヤ6b(W1)と第3ワイヤ6c(W2)において、第2ワイヤ6b(W1)側の近傍の吊りリード2iに対応した箇所にモールドゲート13を配置し、このモールドゲート13から注入される封止用樹脂12が、第3ワイヤ6c(W2)がこれより低いワイヤループの第2ワイヤ6b(W1)から離れる方向に第3ワイヤ6c(W2)を押すように封止用樹脂12を注入する。
【0094】
すなわち、本実施の形態のSIP1の樹脂モールディング工程では、ワイヤループが高い(ワイヤ長さが長い)ワイヤ6が、ワイヤループが低い(ワイヤ長さが短い)ワイヤ6から離れる方向にワイヤループが高いワイヤ6を押すように、封止用樹脂12が流れるようにモールドゲート13が設けられている。
【0095】
これにより、封止用樹脂12によってワイヤループが高い第3ワイヤ6cが押されてワイヤ流れが起こり、その結果、第3ワイヤ6cと第2ワイヤ6bが接触するワイヤショートの発生を防ぐことができる。
【0096】
また、第2ワイヤ6bより長い第3ワイヤ6cが第2ワイヤ6bから離れる方向に封止用樹脂12によって押されるため、第2ワイヤ6bとの間隔が広がり、よりワイヤショートを発生しにくくすることができる。
【0097】
封止用樹脂12の注入完了後、封止用樹脂12を硬化させた封止体5を形成する。
【0098】
なお、本実施の形態のSIP1では、マイコンチップ3は小タブ構造の第1のダイパッド2dに搭載されているため、マイコンチップ3と封止用樹脂12の接触面積を増やすことができる。その結果、両者の接合力を高めてパッケージクラックの発生を抑制することができ、SIP1の信頼性を向上させることができる。
【0099】
樹脂モールディング完了後、図8のステップS5の外装めっき・切断・成形を行う。ここでは、封止体5が形成されたリードフレーム2における複数のアウタリード2bに外装めっきを施し、それぞれの端部で切断を行い、図2に示すように複数のアウタリード2bをガルウィング状に曲げ成形してSIP1の組み立て完了となる。
【0100】
本実施の形態の半導体装置(SIP1)の製造方法によれば、SIP1の組み立てのダイボンディング工程においてゲタ型コレット8と丸型コレット9の2種類のコレットを使い分けることで、丸型コレット9によってダイボンディングを行った一方の半導体チップ(ASICチップ4)の高い位置精度を実現するとともに、SIP1の品質の安定化を図ることができる。
【0101】
また、ダイボンディングにおいて高い位置精度が要求されるASICチップ4と、高い位置精度が要求されないマイコンチップ3とで2種類のコレットを使い分け、かつ2つの半導体チップに対するペースト材7を第2ダイボンディング終了後に一括して熱硬化させることで、SIP1のコストアップを最小限に抑えつつ生産性の向上を図ることができる。
【0102】
つまり、若干のコストアップはあるものの、半導体チップの位置精度の安定化を図ることが可能になるため、検査(ダイボンディング工程でのペースト材7の目視検査等)の簡略化や、SIP1の歩留りを向上させることができるとともに、SIP1の高品質を維持することもできる。
【0103】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。図18及び図19は変形例のコレットの図であり、表面非接触型のコレットの変形例として、角錐型コレット10を示している。角錐型コレット10は、ゲタ型コレット8と同様に、SIP1の組み立てのダイボンディング工程において、高い位置精度が要求されない半導体チップ(例えば、マイコンチップ3)を吸引孔10aを介してエアーを吸引し、吸引部10bで吸着保持してピックアップ及びダイボンディングするものであり、本実施の形態のSIP1の組み立てでは、第1ダイボンディング工程でダイボンディングする際に用いられるものである。
【0104】
なお、角錐型コレット10は、四角形状の半導体チップの主面において、対向する二組の辺にコレットの傾斜面が接触するように、半導体チップを保持するものである。
【0105】
すなわち、SIP1の組み立てにおいて、この角錐型コレット10を、高い位置精度が要求されないマイコンチップ3を第1ダイボンディング工程でダイボンディングする際に用いることで、ゲタ型コレット8を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0106】
次に、図23に示す変形例は、半導体装置がBGA(Ball Grid Array)型のSIP16の場合を示すものである。
【0107】
BGA型のSIP16は、半導体チップが搭載される上面14aとその反対側の下面14bを有し、上面14aに第1のチップ搭載領域(第1のチップ搭載部)14cと第2のチップ搭載領域(第2のチップ搭載部)14dと複数のボンディングリード14eが形成された配線基板14と、配線基板14の上面14a上に搭載されたマイコンチップ3及びASICチップ4と、配線基板14の下面14bに設けられた複数の半田ボール15とを有している。
【0108】
なお、配線基板14の上面14aにおいて、第1のチップ搭載領域14cと第2のチップ搭載領域14dは並んで設けられており、これらチップ搭載領域の周囲に複数のボンディングリード14eが設けられている。マイコンチップ3は、配線基板14の上面14aの第1のチップ搭載領域14cにペースト材7を介して搭載され、一方、ASICチップ4は、配線基板14の上面14aの第2のチップ搭載領域14dにペースト材7を介して搭載されている。
【0109】
また、マイコンチップ3及びASICチップ4は、両者とも配線基板14の上面14a上にフェイスアップ実装され、それぞれ複数のワイヤ6を介して配線基板14のボンディングリード14eと電気的に接続されている。すなわち、配線基板14上にフェイスアップ実装されたマイコンチップ3の主面3aの電極パッド3cと配線基板14のボンディングリード14eとがワイヤ6によって電気的に接続されており、同じく配線基板14上にフェイスアップ実装されたASICチップ4の主面4aの電極パッド4cと配線基板14のボンディングリード14eとがワイヤ6によって電気的に接続されている。
【0110】
また、SIP1と同様に、マイコンチップ3とASICチップ4との間もワイヤ6を介して両者が電気的に接続されている。
【0111】
また、マイコンチップ3、ASICチップ4及び複数のワイヤ6は、配線基板14の上面14a上において封止体5によって樹脂封止されている。
【0112】
なお、配線基板14の下面14bに設けられた複数の半田ボール15は、SIP16の外部接続用端子である。
【0113】
このようなBGA型のSIP16においてもその組み立てのダイボンディング工程で、まず、高い位置精度を要求されないマイコンチップ3をゲタ型コレット(表面非接触型のコレット)8でピックアップして配線基板14上にダイボンディングし、その後、高い位置精度が要求されるASICチップ4を丸型コレット(表面接触型のコレット)9でピックアップして配線基板14上にダイボンディングすることで、SIP1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0114】
すなわち、BGA型のSIP16においても、その組み立てのダイボンディング工程においてゲタ型コレット8と丸型コレット9の2種類のコレットを使い分けることで、丸型コレット9によってダイボンディングを行った一方のASICチップ4の高い位置精度を実現するとともに、SIP16の品質の安定化を図ることができる。
【0115】
さらに、このダイボンディングにおいて高い位置精度が要求されるASICチップ4と、高い位置精度が要求されないマイコンチップ3とで2種類のコレットを使い分け、かつ2つの半導体チップに対するペースト材7を第2ダイボンディング終了後に一括して熱硬化させることで、SIP16のコストアップを最小限に抑えつつ生産性の向上を図ることができる。
【0116】
なお、SIP16のその他の製造方法及びその製造方法によって得られるその他の効果については、SIP1の製造方法の場合と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0117】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0118】
例えば、前記実施の形態では、半導体装置にマイコンチップ3とASICチップ4の2つの半導体チップが搭載されている場合を説明したが、前記半導体装置は、3つ以上の半導体チップが搭載されているものであってもよく、これらの半導体チップが表面接触型のコレットと表面非接触型のコレットの2種類のコレットを使い分けてダイボンディングされるものであれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、ダイボンディングが行われて組み立てられる電子装置の組み立てに好適である。
【符号の説明】
【0120】
1 SIP(半導体装置)
2 リードフレーム
2a インナリード(リード)
2b アウタリード
2c ダイパッド(チップ搭載部)
2d 第1のダイパッド(第1のチップ搭載部)
2e 第2のダイパッド(第2のチップ搭載部)
2f 上面
2g 上面
2h 枠部
2i 吊りリード
2j 支持リード
3 マイコンチップ(第1半導体チップ)
3a 主面(回路形成面)
3b 裏面
3c 電極パッド
3d 絶縁膜
3e ガラスコート膜
3f チタン層
3g ステップカット部(段差部)
4 ASICチップ(第2半導体チップ)
4a 主面(回路形成面)
4b 裏面
4c 電極パッド
4d 絶縁膜
4e ガラスコート膜
4f チタン層
4g ポリイミドコート膜(保護膜)
5 封止体
6 ワイヤ
6a 第1ワイヤ
6b 第2ワイヤ
6c 第3ワイヤ
6d 第4ワイヤ
7 ペースト材
8 ゲタ型コレット(表面非接触型のコレット)
8a 吸引孔
8b 吸引部
9 丸型コレット(表面接触型のコレット)
9a 吸引孔
9b 吸引部
10 角錐型コレット(表面非接触型のコレット)
10a 吸引孔
10b 吸引部
11 レジン流動方向
12 封止用樹脂
13 モールドゲート
14 配線基板
14a 上面
14b 下面
14c 第1のチップ搭載領域(第1のチップ搭載部)
14d 第2のチップ搭載領域(第2のチップ搭載部)
14e ボンディングリード
15 半田ボール
16 SIP(半導体装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1のチップ搭載部と前記第1のチップ搭載部に並んで設けられた第2のチップ搭載部とを備えたチップ搭載部を有し、前記チップ搭載部の周囲に複数のリードが設けられたリードフレームを準備する工程と、
(b)表面非接触型のコレットで第1半導体チップをピックアップし、前記ピックアップされた前記第1半導体チップを前記第1のチップ搭載部にダイボンディングする工程と、
(c)前記(b)工程の後、表面接触型のコレットで第2半導体チップをピックアップし、前記ピックアップされた前記第2半導体チップを前記第2のチップ搭載部にダイボンディングする工程と、
(d)前記(c)工程の後、前記第1及び第2半導体チップそれぞれにワイヤボンディングを行う工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程で、前記第1半導体チップを前記第1のチップ搭載部上にペースト材を介して搭載し、
前記(c)工程で、前記第2半導体チップを前記第2のチップ搭載部上にペースト材を介して搭載することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程の後でかつ前記(d)工程の前に、前記第1のチップ搭載部上の前記ペースト材と前記第2のチップ搭載部上の前記ペースト材とを一括して熱硬化することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、前記第2半導体チップはその回路形成面上に保護膜を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、前記第2半導体チップはロジック回路を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、前記第1半導体チップはその回路形成面の縁部に凹状の段差部を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置の製造方法において、前記第1半導体チップはマイコンチップであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、前記第1半導体チップに接続する第1ワイヤをワイヤボンディングするとともに、前記第2半導体チップに接続する第2ワイヤと前記第2ワイヤのワイヤループよりワイヤループの高さが高い第3ワイヤをワイヤボンディングし、
前記(d)工程の後、前記第1及び第2半導体チップを封止する樹脂モールディングを行う(e)工程を有し、
前記(e)工程では、封止用樹脂が、前記第3ワイヤが前記第2ワイヤから離れる方向に前記第3ワイヤを押すように前記封止用樹脂を注入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、前記第1半導体チップに接続する第1ワイヤをワイヤボンディングするとともに、前記第2半導体チップに接続する第2ワイヤと前記第2ワイヤのワイヤループよりワイヤループの高さが高い第3ワイヤをワイヤボンディングし、
前記第1ワイヤは、前記第2半導体チップを飛び越えて前記リードに接続するワイヤを含んでいることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、前記第2半導体チップの厚さは、前記第1半導体チップの厚さより薄いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、前記第1半導体チップに接続する第1ワイヤをワイヤボンディングするとともに、前記第2半導体チップに接続する第2ワイヤと前記第2ワイヤのワイヤループよりワイヤループの高さが高い第3ワイヤをワイヤボンディングし、さらに、前記第1半導体チップと前記第2半導体チップとを接続する第4ワイヤをワイヤボンディングすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
(a)第1のチップ搭載部と前記第1のチップ搭載部に並んで設けられた第2のチップ搭載部とを備えたチップ搭載部を有し、前記チップ搭載部の周囲に複数のボンディングリードが設けられた配線基板を準備する工程と、
(b)表面非接触型のコレットで第1半導体チップをピックアップし、前記ピックアップされた前記第1半導体チップを前記第1のチップ搭載部にダイボンディングする工程と、
(c)前記(b)工程の後、表面接触型のコレットで第2半導体チップをピックアップし、前記ピックアップされた前記第2半導体チップを前記第2のチップ搭載部にダイボンディングする工程と、
(d)前記(c)工程の後、前記第1及び第2半導体チップそれぞれにワイヤボンディングを行う工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程で、前記第1半導体チップを前記第1のチップ搭載部上にペースト材を介して搭載し、
前記(c)工程で、前記第2半導体チップを前記第2のチップ搭載部上にペースト材を介して搭載することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程の後でかつ前記(d)工程の前に、前記第1のチップ搭載部上の前記ペースト材と前記第2のチップ搭載部上の前記ペースト材とを一括して熱硬化することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法において、前記第2半導体チップはその回路形成面上に保護膜を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法において、前記第2半導体チップはロジック回路を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−40573(P2011−40573A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186701(P2009−186701)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】