説明

半導体装置

【課題】周囲温度や外部電源電圧の変化による高速OCOに与える参照電圧および参照電流の変動を防止し、電源モジュールの回路面積が小さい半導体装置を提供する。
【解決手段】高速OCO10は、参照電流および参照電圧で定まる大きさの高速クロックを出力する。温度センサ5は、高速OCO10の周囲温度を検出し、電圧センサ4は、高速OCO10の動作電圧を検出する。電源モジュール12は、BGRを含み、BGRが出力する基準電圧に基づいて、参照電圧、参照電流、高速OCOの動作電圧を生成する。フラッシュメモリ8は、高速OCO10の周囲温度および動作電圧に対応する、参照電圧および参照電流のトリミングコードを定めたテーブルを記憶する。ロジック部13は、検出された周囲温度および動作電圧に対応する参照電圧および参照電流のトリミングコードに基づいて、参照電流および参照電圧の値を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特にオンチップ発振器を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイコンにおいて、クロック信号を供給するオンチップ発振器は、周囲温度や外部電源電圧の変化によって、発振周波数が変動することが知られている。
【0003】
プロセス工程におけるテストによって、この発振周波数の変動を補償することが行なわれているが、プロセス工程のテストでは、すべての電圧条件、温度条件で実施することは困難である。また、高温領域では接合リーク、低温領域では閾値の急上昇、高電圧領域ではトランジスタの降伏現象による成分、低電圧領域ではトランジスタ動作の3極管動作化による影響等などあり、プロセス工程でのテストでは想定できない成分の影響を受けて発振周波数が変化する。
【0004】
そのため、特許文献1〜4には、実動作時に温度変化による発振周波数の変動を補償するための技術が開示されている。
【0005】
たとえば、特許文献1には、以下の技術が開示されている。温度検出回路50から温度情報が供給されたとき、CPU40が温度情報に基づいて記憶回路60から温度に適した制御電圧情報を読み出して制御電圧発生回路30に供給すると、制御電圧発生回路30は、制御電圧情報に基づいて生成し、基準クロック発生器20は、制御電圧に基づいて所望の周波数を有する基準クロックを発生する。これにより、装置の電源立ち上げ時において周辺温度に応じた制御電圧を効率良く取得し、装置の電源立ち上げ時における基準クロックの温度特性による周波数誤差を減少することが可能となる。
【0006】
また、特許文献2には、以下の技術が開示されている。温度補償発振回路10は、圧電振動子40を備えた発振回路42と、圧電振動子40の温度を間欠的に計測して、この計測結果をディジタル信号で出力する温度計測部22と、温度計測部22から出力されたディジタル信号のうちの上位ビットを入力して、ディジタル信号のうちの最下位ビットに応じて上位ビットを設定し、これをアドレス値として出力するカウンタ28と、容量アレイ44に設けられたスイッチのオン/オフを制御する補正値がアドレス値と1対1に対応させて保存され、カウンタ28から入力したアドレス値に応じた補正値を読み出して出力する記憶部30と、発振回路42に2つ設けられ、記憶部30から入力した補正値に基づいて容量値を設定する容量アレイ44を備える。
【0007】
また、特許文献3には、以下の技術が開示されている。補正間隔決定回路12は、温度センサ16からの検出温度に基づいて温度変化を求め、この温度変化に応じて発振回路7の発振周波数を補正する補正間隔を決定する。この補正間隔に応じた周波数のクロック信号が、選択回路14で選択されて補償動作制御回路15に供給される。そのクロック信号に基づき、温度−デジタル信号変換回路17は、温度センサ16の検出温度をディジタル信号の温度データに変換する。補正値決定回路18は、その温度データに対応する補正値を読み出し、その補正値が補正値レジスタ19にセットされる。補正値レジスタ6の格納内容に応じて、発振回路7のスイッチS1〜Snがオンオフされ、コンデンサC1〜Cnの容量が変化する。
【0008】
特許文献4には、以下の技術が開示されている。マイクロコンピュータのEEPROMに、温度により変動するCR発振回路の発振周期データを記憶しておき、CPUは、温度検出回路によって検出される温度に応じてEEPROMに記憶されているデータを読み出し(ステップS2,S3)、決定した逓倍値をDPLL回路に設定することで(ステップS4,S5)逓倍クロック信号の発振周波数を補正する。
【0009】
また、特許文献5および特許文献6には、実動作時に、外部電源電圧の変化による発振周波数の変動を補償するための技術が開示されている。
【0010】
特許文献5には、以下の技術が開示されている。同一基板内にプロセッサ(CPU)と発振器(OSC)とが集積化された集積回路であって、上記プロセッサによってロードすることができるデータレジスタ(R1)を備え、上記発振器は、上記プロセッサのためのクロックとして機能し、上記発振器は、コンデンサ(C)と、該コンデンサの充放電のための電流源とを備え、上記データレジスタは、上記コンデンサの充放電用電流の値を制御することにより、上記し張発振器の周波数の調節を制御し、上記データレジスタは、上記同一集積回路基板に設けられ且つ周波数訂正データを記憶している電気的にプログラム可能な不揮発性メモリ(M1)から上記プロサッサによってロードされる。
【0011】
また、特許文献6には、以下の技術が開示されている。チップ内部でトリミング値を算出して不揮発性メモリに記憶し、必要に応じてトリミングデータを取り出して、リファレンスセルのVtレベルやオシレータの周波数を調整する。チップ毎に固有のランダムなトリミングをチップ内部で行えるので、外部装置により複数チップを同時測定している場合でも、チップ個別の制御が不要となる。このため、テスト時間・テストプログラム開発工数等のテストコストを削減でき、テストプログラム複雑化によるヒューマンエラーを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−44759号公報
【特許文献2】特開2007−67675号公報
【特許文献3】特開2003−258551号公報
【特許文献4】特開2007−194711号公報
【特許文献5】特開2003−84859号公報
【特許文献6】特開2007−164865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、マイコン内には、発振器が定められた周波数のクロックを出力させるために発振器に与える参照電圧および参照電流を生成する電源モジュールが必要となる。発振器の発振周波数の変動を高精度に防止するためには、周囲温度や外部電源電圧が変化しても、変動しない参照電圧および参照電流を生成する電源モジュールが必要となるが、マイコンの回路面積が増大してしまうという問題がある。引用文献1〜6には、このような、周囲温度や外部電源電圧が変化しても変動しない参照電圧および参照電流を生成すること、および回路面積の増大を緩和するための対策が記載されていない。
【0014】
それゆえに、本発明の目的は、周囲温度や外部電源電圧の変化による、オンチップ発振器に与える参照電圧および参照電流の変動を防止することができるととともに、電源モジュールの回路面積を小さくした半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態の半導体装置は、参照電流および参照電圧を受けて、参照電流および参照電圧で定まる大きさの第1の周波数のクロック信号を出力する第1のオンチップ発振器と、第1のオンチップ発振器の周囲温度を検出する温度センサと、第1のオンチップ発振器の動作電圧の値を検出する電圧センサと、基準電圧を生成するレファレンス回路を含み、レファレンス回路が出力する基準電圧に基づいて、参照電圧、参照電流、第1のオンチップ発振器の動作電圧を生成する電源モジュールと、第1のオンチップ発振器の周囲温度および第1のオンチップ発振器の動作電圧に対応する、参照電圧および参照電流のトリミングコードを定めたテーブルを記憶する記憶部と、検出された周囲温度および動作電圧に対応する参照電圧および参照電流のトリミングコードをテーブルから読み出して、読み出したトリミングコードに基づいて、参照電流および参照電圧の値を調整するロジック部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
この実施形態によれば、周囲温度や外部電源電圧の変化による、発振周波数の変動を防止することができるととともに、電源モジュールの回路面積を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態のマイコンの構成を表わす図である。
【図2】(a)は、温度コードの例を表わす図である。(b)は、電圧コードの例を表わす図である。
【図3】トリミングコードの例を説明するための図である。
【図4】(a)は、トリミングコードによる調整がなされない場合の、温度の変化に対する高速OCOが出力する高速クロックH_CLKの周波数の例を表わす図である。(b)は、トリミングコードによって参照電流および参照電圧が調整された後の温度の変化に対する高速クロックH_CLKの周波数の例を表わす図である。
【図5】電源モジュールおよび高速OCOの構成を表わす図である。
【図6】(a)は、容量C0の温度依存性を表わす図である。(b)は、参照電圧VREFCの温度依存性を表わす図である。(c)は、参照電流Iconstの温度依存性を表わす図である。(d)は、高速クロックH_CLKの発振周波数Fの温度依存性を表わす図である。
【図7】VCCとVDDOCOの相違を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態のマイコンにおける発振周波数の変動の補償動作の手順を表わすフローチャートである。
【図9】トリミングコードを変更するときのシーケンス例を表わす図である。
【図10】電源投入、スリープ、およびウエイクアップのシーケンス例を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(マイコンの構成)
図1は、本発明の実施形態のマイコンの構成を表わす図である。
【0019】
図1を参照して、このマイコン(半導体装置)1は、パワーオンリセット部2と、LVD(Low Voltage Detector)3と、電圧センサ4と、温度センサ5と、フラッシュメモリ8と、ロジック部13と、低速OCO(On-chip Oscillator)6と、高速OCO10と、スイッチSWと、ウオッチドグタイマ9と、通信インタフェース11と、電源モジュール12とを備える。
【0020】
低速OCO6は、低速クロックS_CLKを出力する。
高速OCO10は、高速クロックH_CLKを出力する。
【0021】
温度センサ5は、高速OCO10の周囲温度を検出して、2ビットの温度コードを出力する。
【0022】
図2(a)は、温度コードの例を表わす図である。
図2(a)を参照して、温度センサ5は、−45℃以上20℃未満の温度を検出したときに、温度コード「00」を出力する。温度センサ5は、−20℃以上90℃未満の温度を検出したときに、温度コード「01」を出力する。温度センサ5は、90℃以上150℃未満の温度を検出したときに、温度コード「10」を出力する。
【0023】
電圧センサ4は、高速OCOの動作電圧VDDOCOの値を検出して、1ビットの電圧コードを出力する。
【0024】
図2(b)は、電圧コードの例を表わす図である。
図2(b)を参照して、電圧センサ4は、1.8V以上3.6V未満の電圧VDDOCOを検出したときに、電圧コード「0」を出力する。電圧センサ4は、3.6V以上5.5V未満の電圧VDDOCOを検出したときに、電圧コード「1」を出力する。
【0025】
フラッシュメモリ8は、温度コードおよび電圧コードに対応する3つのトリミングコードを定めたトリミングテーブルを記憶する。
【0026】
図3は、トリミングコードの例を説明するための図である。
TRIMCODE1[2:0]は、3ビットのトリミングコードである。TRIMCODE2[4:0]は、5ビットのトリミングコードである。TRIMCODE3[7:0]は、8ビットのトリミングコードである。これらのトリミングコードは、温度および/または電圧が変化しても、高速OCO10に供給される参照電流および参照電圧を一定に保ち、したがって高速クロックH_CLKの発振周波数を一定に保つためのものである。
【0027】
ロジック部13は、温度センサ5から出力される温度コードと、電圧センサ4から出力される電圧コードに対応するトリミングコードをフラッシュメモリ8内のトリミングテーブルから読出す。ロジック部13は、読み出したトリミングコードによって電源モジュール12で生成されて高速OCO10に供給される参照電流および参照電圧を調整する。ロジック部13は、CPU(Central Processing Unit)で構成される。
【0028】
図4(a)は、トリミングコードによる調整がなされない場合の、温度の変化に対する高速OCO10が出力する高速クロックH_CLKの周波数の変化の例を表わす図である。
【0029】
図4(a)に示すように、温度が変化すると、高速クロックH_CLKの周波数が変化している。
【0030】
図4(b)は、トリミングコードによって参照電流および参照電圧が調整された後の温度の変化に対する高速クロックH_CLKの周波数の変化の例を表わす図である。
【0031】
図4(b)に示すように、温度が変化しても、高速クロックH_CLKは、ほぼ一定に保たれている。
【0032】
スイッチSWは、低速OCO6および高速OCO10と接続し、ロジック部13および通信インタフェース11に与えるクロックを低速OCO6から出力される低速クロックS_CLKにするか、高速OCO10から出力される高速クロックH_CLKにするかを切替える。
【0033】
ウオッチドグタイマ9は、マイコンの異常動作や暴走を検出するためのものである。ウオッチドグタイマ9は、高速な処理を必要としないため、低速OCO6から出力される低速クロックS_CLKで動作する。
【0034】
通信インタフェース11は、スレーブとなる装置を制御するための信号を出力する。
ロジック部13および通信インタフェース11は、高速な処理が必要となるため、高速OCO10から出力される高速クロックH_CLKで動作する。
【0035】
LVD3は、判定電圧LVDDET0〜LVDDET2との比較によって、外部から供給される電圧VCCの値を検出する。
【0036】
電源モジュール12は、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCO、高速OCO10に与える参照電圧VREFC、参照電流Iconst、ロジック部13および通信インタフェース11を動作させる電圧VDD、LVD3での判定用の電圧LVDDET0、LVDDET1、LVDDET2を生成する。
【0037】
パワーオンリセット部2は、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCOが立上がったことを検出する。
【0038】
(電源モジュールおよび高速OCOの構成)
図5は、電源モジュールおよび高速OCOの構成を表わす図である。
【0039】
図5を参照して、BGR(Band Gap Reference)52は、バンドギャップにより基準電圧を生成する。BGR52は、BGR52の出力を調整するための4ビットの信号を受けるピンであるTRIMBGR[3:0]を含む。この調整は、プロセス工程でのテストで行われる。
【0040】
アンプ51、調整回路53、および可変抵抗R0によって、基準電圧VREFが生成される。アンプ51は、BGR52から出力された基準電圧を受ける。調整回路53は、複数のMOSトランジスタと可変抵抗R0との接続を調整し、その結果アンプ51から出力される基準電圧VREFの値を一定値(たとえば、1.5V)に調整するための5ビットの信号を受けるピンであるTRIMBUF[4:0]を含む。この調整は、プロセス工程でのテストで行われる。
【0041】
可変抵抗R0、および調整回路54によって、高速OCO10に与える参照電圧VREFCが生成される。調整回路54は、複数のMOSトランジスタと可変抵抗R0との接続を調整することによって、参照電圧VREFCの値を一定値(たとえば、1.0V)に調整するための3ビットの信号TRIMCODE1[2:0]を受けるピンであるOSC_VREF_TRIM[2:0]を含む。TRIMCODE1[2:0]は、電圧および/または温度の変動を調整するために、実動作時に、ロジック部13から供給される。
【0042】
調整回路55は、BGR52から出力された信号の大きさを調整するための5ビットの信号を受けるピンであるTRIMBGR_OSC[4:0]を含む。この調整は、プロセス工程でのテストで行われる。
【0043】
アンプ56、調整回路59、可変抵抗部57、および調整回路59によって、高速OCO10に与える参照電流Iconstが生成される。可変抵抗部57は、参照電流Iconstの値を微調整するための8ビットの信号TRIMCODE3[8:0]を受けるピンであるOCOIMULE[7:0]を含む。TRIMCODE3[8:0]は、電圧および/または温度の変動を調整するために、実動作時に、ロジック部13から供給される。調整回路59は、カレントミラー回路と、参照電流Iconstの値を粗調整するための5ビットの信号TRIMCODE2[4:0]を受けるピンであるSELIGEN[4:0]を含む。TRIMCODE3[4:0]は、電圧および/または温度の変動を調整するために、実動作時に、ロジック部13から供給される。
【0044】
アンプ57は、基準電圧VREFを基にして、ロジック部13および通信インタフェース11を動作させる電圧VDDを生成する。
【0045】
アンプ58は、基準電圧VREFを基にして、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCOを生成する。
【0046】
LVD判定電圧生成モジュール60は、基準電圧VREFを基にして、LVD3での判定用の電圧LVDDET0、LVDDET1、LVDDET2を生成する。
【0047】
高速OCO10は、スイッチング回路76、容量C0、C1、抵抗74、比較器72、容量73、VCO(voltage controlled oscillator)71とを含む。
【0048】
VCO71は、電圧(制御電圧)によって、高速クロックH_CLKの発振周波数を制御する発振器である。
【0049】
参照電流Iconstは、容量ノードVSIGに伝達されて、コンデンサC0を充電する。
【0050】
スイッチング回路76は、高速クロックH_CLKが「H」レベルのときに、参照電流Iconstを容量ノードVSIGに入力させる。
【0051】
容量ノードVSIGの電位が、参照電圧VREFCに達したら、比較器72、VCO71、スイッチング回路76によってコンデンサC0の充電が停止される。これによって、高速クロックH_CLKの周波数は、参照電流Iconstおよび参照電圧VREFCの大きさに応じた値に設定される。
【0052】
(温度依存性について)
次に、高速クロックH_CLKの発振周波数の温度依存性について説明する。
【0053】
図6(a)は、コンデンサC0の容量の温度依存性を表わす図である。
図6(a)に示すように、コンデンサC0の容量は、温度によって変化する。変化する割合は、±0.27%である。
【0054】
図6(b)は、参照電圧VREFCの温度依存性を表わす図である。
図6(b)に示すように、容量VREFCは、温度によって変化する。変化する割合は、±0.34%である。
【0055】
図6(c)は、参照電流Iconstの温度依存性を表わす図である。
図6(c)に示すように、参照電流Iconstは、温度によって変化する。変化する割合は、±2.20%である。
【0056】
図6(d)は、高速クロックH_CLKの発振周波数Fの温度依存性を表わす図である。
【0057】
図6(d)に示すように、高速クロックH_CLKの発振周波数Fは、温度によって変化する。変化する割合は、±0.45%である。高速クロックH_CLKの発振周波数Fの変動が、参照電流Iconstの変動に比べて小さいのは、F=Iconst/(C0×VREFC)の関係によって、温度による参照電流Iconstの変動が、温度による容量C0および参照電圧VREFCの変動によって相殺されるからである。
【0058】
高速クロックH_CLKの発振周波数Fの変動は、トリミングコードを用いた参照電流Iconstおよび参照電圧VREFCの値の調整によって、さらに小さくなる。
【0059】
(VDDOCOの安定化)
図7は、アンプ58が、安定して電圧VDDOCOを出力することを説明するための図である。
【0060】
図7に示すように、外部電源電圧VCCは、時刻tとともに変動している。アンプ58は、外部電源電圧VCCで動作するが、アンプ58におけるフィードバック経路によって、アンプ58から出力される電圧VDDOCOは、安定化される。
【0061】
(発振周波数の変動の補償動作)
図8は、本発明の実施形態のマイコンにおける発振周波数の変動の補償動作の手順を表わすフローチャートである。
【0062】
図8を参照して、ロジック部13は、スイッチSWの出力を高速OCO10の出力である高速クロックH_CLKに設定する(ステップS100)。
【0063】
ロジック部13は、温度センサ5から出力される温度コード、および電圧センサ4から出力される電圧コードを取得する(ステップS101)。
【0064】
次に、ロジック部13は、取得した温度コードおよび電圧コードに対応するトリミングコードTRIMCODE1[2:0]、TRIMCODE2[4:0]、TRIMCODE3[7:0]をフラッシュメモリ8内のトリミングテーブルから読出す。ロジック部13は、トリミングコードTRIMCODE1[2:0]、TRIMCODE2[4:0]、TRIMCODE3[7:0]の値を表わす制御信号を電源モジュール12に出力する。電源モジュール12は、制御信号に基づいて参照電圧VREFCおよび参照電流Iconstの値を調整する。高速OCO10は、調整された参照電圧VREFCおよび参照電流Iconstに基づいて動作する(ステップS102)。
【0065】
次に、ロジック部13は、所定時間Δtが経過した後(ステップS103でYES)、再び、温度センサ5から出力される温度コード、および電圧センサ4から出力される電圧コードを取得する(ステップS104)。
【0066】
ロジック部13は、取得した温度コードが前回取得した温度コードから変化したか、または取得した電圧コードが前回取得した電圧コードから変化した場合には(ステップS105でYES)、スイッチSWの出力を高速OCO10の出力である高速クロックH_CLKから低速OCO6の出力である低速クロックS_CLKに切替える(ステップS106)。
【0067】
次に、ロジック部13は、取得した温度コードおよび電圧コードに対応するトリミングコードTRIMCODE1[2:0]、TRIMCODE2[4:0]、TRIMCODE3[7:0]をフラッシュメモリ8内のトリミングテーブルから読出す。ロジック部13は、トリミングコードTRIMCODE1[2:0]、TRIMCODE2[4:0]、TRIMCODE3[7:0]の値を表わす制御信号を電源モジュール12に出力する。電源モジュール12は、制御信号に基づいて参照電圧VREFCおよび参照電流Iconstを調整する。高速OCO10は、調整された参照電圧VREFCおよび参照電流Icostに基づいて動作する(ステップS107)。
【0068】
次に、ロジック部13は、スイッチSWの出力を低速OCO6の出力である低速クロックS_CLKから高速OCO10の出力である高速クロックH_CLKに切替える(ステップS108)。
【0069】
(トリミングコード変更時の動作)
図9は、トリミングコードを変更するときのシーケンス例を表わす図である。
【0070】
図9を参照して、スイッチSWは、通常時には、高速OCO10が出力する高速クロックH_CLKを出力する。スイッチSWは、トリミングコードを変更する時には、切替えられて低速OCO6が出力する低速クロックS_CLKを出力する。その間、高速OCO10は、新たなトリミングコードで調整された参照電流Iconstおよび参照電圧VREFCによって動作する。高速OCO10が出力する高速クロックH_CLKが安定するまでの所定時間が経過した後、スイッチSWは、切替えられて高速OCO10が出力する高速クロックH_CLKを出力する。
【0071】
このように、参照電流Iconstおよび参照電圧VREFCの調整中は、スイッチSWが、低速OCO6が出力する低速クロックS_CLKをロジック部13および通信インタフェース11に供給する。これにより、ロジック部13および通信インタフェース11に供給されるクロック信号にハザードが発生したり、Dutyがくずれたりするのを防止することができる。
【0072】
(高速OCOを動作させる電圧)
図10は、電源投入、スリープ、およびウエイクアップのシーケンス例を表わす図である。
【0073】
図10を参照して、電源モジュール12は、外部電源電圧VCCが立上がると、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCOもオンに立上げる。これは、起動時にロジック部13が自己診断などを実行できるように、高速クロックH_CLKを生成する必要があるからである。
【0074】
次に、パワーオンリセット部2は、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCOが立上がったことを検出し、パワーオンリセット信号PONRST_Nを「H」レベルに活性化する。パワーオンリセット信号PONRST_Nが「H」レベルに活性化されると、高速OCO10は、高速クロックH_CLKの生成を開始する。
【0075】
スリープ状態となると、パワーダウン信号PWDNが「H」レベルとなる。パワーダウン信号PWDNが「H」レベルとなると、まず、高速OCO10は、高速クロックH_CLKの生成を停止する。その後、電源モジュール12は、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCOを立下げる。これにより、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCOが立ち下がったにも係らず、不安定な高速クロックH_CLKが生成されるのを防止することができる。
【0076】
ウエイクアップ状態となると、パワーダウン信号PWDNが「L」レベルとなる。パワーダウン信号PWDNが「L」レベルとなると、まず、電源モジュール12は、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCOを立上げる。その後、高速OCO10は、高速クロックH_CLKの生成を再開する。これにより、高速OCO10を動作させる電圧VDDOCOが立ち上がっていないにも係らず、不安定な高速クロックH_CLKが生成されるのを防止することができる。
【0077】
以上のように、本発明の実施形態によれば、高速OCOの周囲の温度と高速OCO動作電圧を検出して、これらに基づいて、高速OCOに与える参照電流および参照電圧の値を調整するので、周囲温度や外部電源電圧の変化による、発振周波数の変動を防止することができる。また、高速OCOに与える参照電流および参照電圧、ロジック部を動作させる電源電圧VDD、高速OCOを動作させる電源電圧VDDOCOは、BGRで生成された基準電圧を共通に用いて生成されるので、回路の共有化を図ることができ、電源モジュールの回路面積を小さくすることができる。
【0078】
(変形例)
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例も含む。
【0079】
(1) トリミングコード
本発明の実施形態では、温度および/または外部電源電圧が変化しても、高速OCO10に供給される参照電流および参照電圧、したがって高速クロックH_CLKの発振周波数を一定に保つための値にトリミングコードを設定したが、これに限定するものではない。高速クロックH_CLKの発振周波数は一定値にするのではなく、発振周波数が温度および/または外部電源電圧に応じた最適な値になるように、トリミングコードの値を設定するものとしてもよい。
【0080】
(2) 高速クロックH_CLK
本発明の実施形態では、ロジック部および通信インタフェースに高速クロックH_CLKを供給するものとしたが、これら以外のマイコン内の構成要素にも高速クロックH_CLKを供給するものとしてもよい。たとえば、周辺バスに高速クロックH_CLKを供給するものとしてもよい。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 マイコン、2 パワーオンリセット部、3 LVD、4 電圧センサ、5 温度センサ、6 低速OCO、8 フラッシュメモリ、9 ウオッチドグタイマ、10 高速OCO、11 通信インタフェース、12 電源モジュール、13 ロジック部、51,56,57,58 アンプ、52 BGR、R0 可変抵抗、57 可変抵抗部、53,54,55,59 調整回路、60 LVD判定電圧生成モジュール、C0,C1,73 容量、74 抵抗、71 VCO、72 比較器、76 スイッチング回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照電流および参照電圧を受けて、前記参照電流および前記参照電圧で定まる大きさの第1の周波数のクロック信号を出力する第1のオンチップ発振器と、
前記第1のオンチップ発振器の周囲温度を検出する温度センサと、
前記第1のオンチップ発振器の動作電圧の値を検出する電圧センサと、
基準電圧を生成するレファレンス回路を含み、前記レファレンス回路が出力する基準電圧に基づいて、前記参照電圧、前記参照電流、前記第1のオンチップ発振器の動作電圧を生成する電源モジュールと、
前記第1のオンチップ発振器の周囲温度および前記第1のオンチップ発振器の動作電圧に対応する、前記参照電圧および前記参照電流のトリミングコードを定めたテーブルを記憶する記憶部と、
前記検出された周囲温度および動作電圧に対応する前記参照電圧および前記参照電流のトリミングコードを前記テーブルから読み出して、前記読み出したトリミングコードに基づいて、前記参照電流および前記参照電圧の値を調整するロジック部とを備えた、半導体装置。
【請求項2】
前記レファレンス回路は、バンドギャップにより基準電圧を生成する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体装置は、さらに、
前記第1の周波数よりも低い第2の周波数のクロック信号を出力する第2のオンチップ発振器と、
前記第1のオンチップ発振器の出力と前記第2のオンチップ発振器の出力を受けるスイッチとを備え、
前記スイッチは、温度または電圧の少なくとも一方が変化したときには、新たなトリミングコードで前記参照電流および前記参照電圧の値が調整されている間、前記第2のオンチップ発振器の出力を出力する、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ロジック部は、前記スイッチが出力するクロック信号で動作する、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体装置は、さらに、
前記第2のオンチップ発振器が出力する前記第2の周波数のクロック信号で動作するウオッチドグタイマを備える、請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電源モジュールは、さらに、前記レファレンス回路が出力する基準電圧に基づいて前記ロジック部を動作させる電圧を生成する、請求項2記載の半導体装置。
【請求項7】
スリープ時には、前記第1のオンチップ発振器が前記第1の周波数のクロック信号の出力を停止した後、前記電源モジュールが前記第1のオンチップ発振器を動作させる電源電圧の生成を停止する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
ウエイクアップ時には、前記電源モジュールが前記第1のオンチップ発振器を動作させる電源電圧の生成を再開した後、前記第1のオンチップ発振器が前記第1の周波数のクロック信号の出力を再開する、請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−166368(P2011−166368A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25698(P2010−25698)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】